特開2020-198298(P2020-198298A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-198298粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に予備加熱する粉粒体予備加熱装置およびその粉粒体予備加熱方法並びに粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に予備加熱または予備冷却する粉粒体温度調節装置およびその粉粒体温度調節方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-198298(P2020-198298A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に予備加熱する粉粒体予備加熱装置およびその粉粒体予備加熱方法並びに粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に予備加熱または予備冷却する粉粒体温度調節装置およびその粉粒体温度調節方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/80 20060101AFI20201113BHJP
   A23G 3/02 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   H05B6/80 Z
   A23G3/02
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-82332(P2020-82332)
(22)【出願日】2020年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-99230(P2019-99230)
(32)【優先日】2019年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】沖山 丈嗣
(72)【発明者】
【氏名】尾形 泰久
(72)【発明者】
【氏名】上野 真耶
(72)【発明者】
【氏名】勝又 健太
(72)【発明者】
【氏名】田中 理子
(72)【発明者】
【氏名】野口 明徳
【テーマコード(参考)】
3K090
4B014
【Fターム(参考)】
3K090AA01
3K090AA02
3K090AB01
3K090BA01
3K090BB03
3K090CA01
3K090CA18
3K090EA09
3K090EB14
3K090EB21
3K090GC06
3K090PA05
4B014GG01
4B014GP14
(57)【要約】
【課題】粉粒体の食品材料8を加工した加工食品の品質をさらに向上させることが望まれる。
【解決手段】粉粒体予備加熱装置1は、低温貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に加工に適した所定の予備加熱温度まで予備加熱する粉粒体予備加熱装置であって、粉粒体の食品材料を収容する筐体2と、筐体の中で攪拌羽根32を回転させて粉粒体の食品材料を攪拌する攪拌軸3、筐体の中の粉粒体の食品材料の上方からマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置4と、攪拌軸で攪拌中の粉粒体の食品材料を、10分以内の所定の予備加熱時間内に加工に適する25℃以上30℃以下の所定の予備加熱温度に均一に昇温するまで予備加熱するように、少なくともマイクロ波照射装置を制御する制御装置7と、を備える。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に加工に適した所定の予備加熱温度まで予備加熱する粉粒体予備加熱装置であって、
前記食品材料を収容する筐体と、
前記筐体の中で攪拌羽根を回転させて前記食品材料を攪拌する攪拌軸と、
前記筐体の中の前記食品材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、
前記攪拌軸で攪拌中の前記食品材料を10分以内の所定の予備加熱時間内に加工に適する25℃以上30℃以下の前記所定の予備加熱温度に均一に昇温するまで予備加熱するように、少なくとも前記マイクロ波照射装置を制御する制御装置と、を備える粉粒体予備加熱装置。
【請求項2】
前記筐体の中の前記食品材料の上方で回転して前記マイクロ波を前記食品材料の上方で散らすスターラーファンを備え、
前記マイクロ波が前記スターラーファンの上方から照射されている、請求項1の粉粒体予備加熱装置。
【請求項3】
前記筐体は、水平方向に横置きされて、
前記攪拌軸の回転軸の軸方向は、水平方向である、請求項1の粉粒体予備加熱装置。
【請求項4】
前記筐体は、鉛直方向に縦置きされて、
前記攪拌軸の回転軸の軸方向は、鉛直方向である、請求項1の粉粒体予備加熱装置。
【請求項5】
前記攪拌羽根は、前記筐体の壁の内面に沿うように螺旋状に巻き回した形状に形成されている、請求項1の粉粒体予備加熱装置。
【請求項6】
前記攪拌羽根は、主羽根と補助羽根で構成されている、請求項5の粉粒体予備加熱装置。
【請求項7】
前記攪拌羽根は、棒の形状に形成されていて、前記筐体の内面に対面している前記棒の先端面の面積が前記棒の胴部における前記棒の長手方向に垂直な断面の面積よりも大きく形成されている、請求項1の粉粒体予備加熱装置。
【請求項8】
前記攪拌軸の回転軸は、前記筐体の壁を貫通する貫通孔に回転可能に挿通されていて、
前記回転軸は、前記筐体の中でかつ前記貫通孔の近傍の外周に蛇腹状の環状部を有している、請求項1の粉粒体予備加熱装置。
【請求項9】
前記攪拌軸の回転軸は、前記筐体の壁を貫通する貫通孔に回転可能に挿通されていて、
前記筐体は、前記筐体の中でかつ前記貫通孔の近傍に前記攪拌軸を回転可能に挿通する蛇腹状の環状部を有している、請求項1の粉粒体予備加熱装置。
【請求項10】
前記筐体の中の前記食品材料の温度を検出する温度センサを備えて、
前記制御装置が、前記温度センサが検出する温度に基づいて、少なくとも前記マイクロ波照射装置を制御する、請求項1の粉粒体予備加熱装置。
【請求項11】
前記食品材料は、小麦粉、大麦粉、コーンスターチ、エンバク粉、ライ麦粉、米粉、ジャガイモ粉、そば粉、大豆粉、小麦粒、大麦粒、トウモロコシ粒、オート麦、ライ麦粒、米粒、そばの実および大豆を含む、請求項1の粉粒体予備加熱装置。
【請求項12】
前記食品加工機械は、菓子、パン又は麺の生地を生成する、請求項1粉粒体予備加熱装置。
【請求項13】
前記食品加工機械は、前記食品材料を加水し混錬して前記生地を生成するミキサである、請求項12の粉粒体予備加熱装置。
【請求項14】
前記食品加工機械は、回転するスクリュを有し前記生地を特定の形状へ押し出す押出機である請求項12に記載の粉粒体予備加熱装置。
【請求項15】
低温貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に加工に適する所定の予備加熱温度まで予備加熱する粉粒体予備加熱方法において、
筐体に収容した前記食品材料を攪拌しながらマイクロ波を照射して均一に予備加熱し、10分以内の所定の予備加熱時間内に25℃以上30℃以下の前記所定の予備加熱温度に昇温するまで予備加熱する、粉粒体予備加熱方法。
【請求項16】
スターラーファンで前記マイクロ波を散らす、請求項15の粉粒体予備加熱方法。
【請求項17】
貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に加工に適した所定の温度まで予備加熱または予備冷却する粉粒体温度調節装置であって、
食品材料を収容する筐体と、
前記筐体の中で攪拌羽根を回転させて前記食品材料を攪拌する攪拌軸と、
前記筐体の中の前記食品材料を予備冷却する粉粒体予備冷却部と、
前記筐体の中の前記食品材料を予備加熱する粉粒体予備加熱部と、
前記筐体の中の前記食品材料の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサが検出する温度に基づいて、少なくとも前記粉粒体予備冷却部および前記粉粒体予備加熱部を制御する制御装置と、を備えて、
前記粉粒体予備加熱部は、
前記筐体の中の前記食品材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置を備えて、
前記制御装置は、
前記筐体の中の前記食品材料が前記所定の温度を下回っているときに、前記攪拌軸で攪拌中の前記食品材料を、10分以内の所定の予備加熱時間内に加工に適する25℃以上30℃以下の前記所定の温度に均一に昇温するまで予備加熱するように、少なくとも前記マイクロ波照射装置を制御する、粉粒体温度調節装置。
【請求項18】
貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に加工に適する所定の温度まで予備加熱または予備冷却する粉粒体温度調節方法において、
筐体に収容した前記食品材料が前記所定の温度を下回っているときに、前記筐体に収容した前記食品材料を攪拌しながらマイクロ波を照射して均一に予備加熱し、10分以内の所定の予備加熱時間内に25℃以上30℃以下の所定の温度に昇温するまで予備加熱する、粉粒体温度調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に加工に適した所定の温度まで予備加熱するための粉粒体予備加熱装置およびその粉粒体予備加熱方法並びに粉粒体温度調節装置およびその粉粒体温度調節方法に関する。特に、本発明は、菓子、パン又は麺の生地を製造する装置で加工する前に貯蔵されていた穀物又はマメ科植物(legume)から成る粉粒体を加工に適する所定の温度まで予備加熱する粉粒体予備加熱装置および粉粒体予備加熱方法並びに粉粒体温度調節装置およびその粉粒体温度調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工機械で加工される食品材料の温度は、加工後の製品の品質に直接影響を与える要素である。食品加工機械で加工される直前における食品材料の加工に適する温度は、食品材料の各成分の加工特性と温度の関係から導き出される。
【0003】
広く知られているほとんどの粉粒体の食品材料の場合、加工直前における適する温度は、25℃以上30℃以下の常温である。したがって、加工直前までに粉粒体の食品材料を予備加熱または予備冷却して全体の温度を均一に常温まで昇温または降温しておく必要がある。なお、粉粒体の食品材料を加工する食品加工機械とは、例えば、ミキサ、押出機、攪拌機、および粉砕機などである。
【0004】
また、一般的な粉粒体の食品材料は、例えば、小麦粉、大麦粉、コーンスターチ、エンバク粉、ライ麦粉、米粉、ジャガイモ粉、サツマイモ粉、そば粉、大豆粉、小麦粒、大麦粒、トウモロコシ粒、オート麦、ライ麦粒、米粒、そばの実、砂糖、塩、および大豆などである。
【0005】
公知の粉粒体予備加熱装置は、筐体の中に収容した粉粒体の食品材料を各種ヒータで加熱する。例えば、ヒータは、筐体の外周に巻き回すバンドヒータ、筐体の中に設けられるカートリッジヒータおよび熱風ヒータなどがある。
【0006】
しかしながら、澱粉や蛋白のような成分を含む粉粒体の食品材料は、熱に因る加工特性の変化が大きいので、直接加熱による昇温は適当でない。また、粉粒体の食品材料が密集している状態のとき、各粉粒体同士は、互いに十分な面積をもって接触しておらず、点接触している。点接触している各粉粒体は、熱伝導面積が小さい。したがって、粉粒体の食品材料の総体熱伝導率は、低い。さらに各粉粒体の間に存在する空気の層は、間隙内を通過するときの圧力損失によって対流することが期待できず、したがって、熱対流の現象をほとんど期待できない。
【0007】
そのため、この種の粉粒体予備加熱装置による食品材料の昇温は、粉粒体の量が多いほど食品材料の全体を均一に適温にするまでにより長い時間を要し、時間を短縮するために温度勾配を大きく取れば、食品材料の中に含まれる澱粉や蛋白がより変化しやすく、食品材料を変質させて製品の品質を低下させるおそれがある。とりわけ、食品材料の保存方法にもよるが、小麦粉のような一般的な粉粒体の食品材料は、巨大な屋外サイロのような貯蔵庫に集積して保管されているので、日本の冬場で、平均的に0℃から9℃程度の低温で保存されている状態であり、食品材料を適温まで昇温するために一層長時間かかってしまい、食品加工機械の稼働率を低下させる要因になるので、生産性向上への課題になっている。
【0008】
例えば、特許文献1の粉体のマイクロ波殺菌方法及び装置は、粉体を縦型ミキサ内に投入し、ミキサ内に中央部を上昇し周辺部を沈降する粉体流を生ぜしめ、攪拌混合させながら複数段配置したマイクロ波発振器から各マイクロ波誘導管を介してマイクロ波を粉体に照射し、粉体を70以上83℃以下に加熱して殺菌することを開示している。ミキサ内の粉体は、マイクロ波によって1分間に1℃ずつ上昇し、最終的に80℃まで加熱されることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3557583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されているようなマイクロ波殺菌装置は、例えば、9℃で低温貯蔵されていた粉体を25度の常温まで均一に昇温しようとすると16分かかることがわかる。限られた水分の粉体の中に存在することが問題となっている微生物は主に土壌細菌の胞子であり、こうした胞子の失活のために100℃を超える高温処理であるレトルト処理が為されているのが現状である。また、例えば、食品材料が小麦粉の場合では、食品加工する際の特性で重要な役割を果たす蛋白は70℃付近から熱変性を起こしやすく、よって、殺菌が目的であっても加工特性が低下してしまっては何にもならない。さらに生産現場でのミキサの使用サイクルは約10分であるために、これを大幅に超える時間は生産工程上で望ましくない。
【0011】
粉粒体の食品材料は、数℃の低温から25℃以上30℃以下の常温までより短時間にそして全体を均一に予備加熱することが望まれる。例えば、主成分の澱粉または蛋白に対する熱的変化をできる限り抑えながら、食品加工機械で加工する前の粉粒体の食品材料を均一にかつ速やかに常温まで予備加熱できれば、各成分の加工特性を保持しつつ、加工食品の品質が安定しかつ向上することになる。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に攪拌しながらマイクロ波を照射して均一に予備加熱し、より短時間に、望ましくは、10分以内に、加工に適した所定の予備加熱温度の、好ましくは、25℃以上30℃以下の所定の予備加熱温度に昇温する、粉粒体予備加熱装置およびその粉粒体予備加熱方法並びに粉粒体温度調節装置およびその粉粒体温度調節方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の粉粒体予備加熱装置では、低温貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に加工に適する予備加熱温度まで予備加熱する粉粒体予備加熱装置であって、前記食品材料を収容する筐体と、前記筐体の中で攪拌羽根を回転させて前記食品材料を攪拌する攪拌軸と、前記筐体の中の前記食品材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、前記攪拌軸で攪拌中の前記食品材料を、10分以内の所定の予備加熱時間内に加工に適する25℃以上30℃以下の前記所定の予備加熱温度に均一に昇温するまで予備加熱するように、少なくとも前記マイクロ波照射装置を制御する制御装置と、を備える。
【0014】
本発明の粉粒体予備加熱方法では、低温貯蔵されていた粉粒体の食品材料を加工する前に加工に適する所定の予備加熱温度まで予備加熱する粉粒体予備加熱方法において、筐体に収容した前記食品材料を攪拌しながらマイクロ波を照射して均一に予備加熱し、10分以内の所定の予備加熱時間内に25℃以上30℃以下の前記所定の予備加熱温度に昇温するまで予備加熱する。
【0015】
本発明の粉粒体温度調節装置は、貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に加工に適した所定の温度まで予備加熱または予備冷却する粉粒体温度調節装置であって、食品材料を収容する筐体と、前記筐体の中で攪拌羽根を回転させて前記食品材料を攪拌する攪拌軸と、前記筐体の中の前記食品材料を予備冷却する粉粒体予備冷却部と、前記筐体の中の前記食品材料を予備加熱する粉粒体予備加熱部と、前記筐体の中の前記食品材料の温度を検出する温度センサと、前記温度センサが検出する温度に基づいて、少なくとも前記粉粒体予備冷却部および前記粉粒体予備加熱部を制御する制御装置と、を備えて、前記粉粒体予備加熱部は、前記筐体の中の前記食品材料にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置を備えて、前記制御装置は、前記筐体の中の前記食品材料が前記所定の温度を下回っているときに、前記攪拌軸で攪拌中の前記食品材料を、10分以内の所定の予備加熱時間内に加工に適する25℃以上30℃以下の前記所定の温度に均一に昇温するまで予備加熱するように、少なくとも前記マイクロ波照射装置を制御する制御装置と、を備える。
【0016】
本発明の粉粒体温度調節方法は、貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に加工に適する所定の温度まで予備加熱または予備冷却する粉粒体温度調節方法において、筐体に収容した前記食品材料が前記所定の温度を下回っているときに、前記筐体に収容した前記食品材料を攪拌しながらマイクロ波を照射して均一に予備加熱し、10分以内の所定の予備加熱時間内に25℃以上30℃以下の所定の温度に昇温するまで予備加熱する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粉粒体予備加熱装置およびその粉粒体予備加熱方法並びに粉粒体温度調節装置およびその粉粒体温度調節方法は、貯蔵されていた粉粒体の食品材料を食品加工機械で加工する前に加工に適する25℃〜30℃間の常温まで均一にかつ10分以内に昇温することで、食品加工機械で加工した後の加工食品の品質をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る、粉粒体予備加熱装置の内部構造を正面から見た概要図である。
図2】蓋部材を閉じたときの粉粒体予備加熱装置の内部構造を左側から見た概要図である。
図3】蓋部材を開いたときの粉粒体予備加熱装置の内部構造を左側から見た概要図である。
図4】蓋部材を開いた状態で筐体を横転させたときの粉粒体予備加熱装置の内部構造を左側から見た概要図である。
図5】棒状の攪拌羽根の先端形状の概要図である。
図6】棒状の攪拌羽根の別の先端形状の概要図である。
図7】棒状の攪拌羽根のさらに別の先端形状の概要図である。
図8】粉粒体の食品材料がサイロから粉粒体予備加熱装置を通して食品加工機械まで移動する一連のシステムの概要図である。
図9】本発明の実施形態に係る、別の実施形態の粉粒体予備加熱装置の正面模式図である。
図10】別の実施形態の粉粒体予備加熱装置の平面模式図である。
図11】別の実施形態の粉粒体予備加熱装置の攪拌部材の正面模式図である。
図12】別の実施形態の粉粒体予備加熱装置の攪拌部材の平面模式図である。
図13】本発明の実施形態に係る、粉粒体温度調節装置の正面模式図である。
図14】粉粒体温度調節装置の平面模式図である。
図15】粉粒体温度調節装置の攪拌部材の正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る、粉粒体予備加熱装置の内部構造を正面から見た概要図である。図2は、蓋部材を閉じたときの粉粒体予備加熱装置の内部構造を左側から見た概要図である。図3は、蓋部材を開いたときの粉粒体予備加熱装置の内部構造を左側から見た概要図である。図4は、蓋部材を開いた状態で筐体を横転させたときの粉粒体予備加熱装置の内部構造を左側から見た概要図である。図5は、棒状の攪拌羽根の先端形状の概要図である。図6は、棒状の攪拌羽根の別の先端形状の概要図である。図7は、棒状の攪拌羽根のさらに別の先端形状の概要図である。図8は、粉粒体の食品材料がサイロから粉粒体予備加熱装置を通して食品加工機械まで移動する一連のシステムの概要図である。図9は、本発明の実施形態に係る、別の実施形態の粉粒体予備加熱装置の正面模式図である。図10は、別の実施形態の粉粒体予備加熱装置の平面模式図である。図11は、別の実施形態の粉粒体予備加熱装置の攪拌部材の正面模式図である。図12は、別の実施形態の粉粒体予備加熱装置の攪拌部材の平面模式図である。図13は、本発明の実施形態に係る、粉粒体温度調節装置の正面模式図である。図14は、粉粒体温度調節装置の平面模式図である。図15は、粉粒体温度調節装置の攪拌部材の正面模式図である。なお、上下方向は、図1および図9を正面から見たときの上下方向である。左右方向は、図1および図9を正面から見たときの左右方向である。前後方向は、図1および図9を正面から見たときの手前側が前方向で奥側が後方向である。水平方向は、前後方向および左右方向で形成される水平2軸方向である。鉛直方向は、上下方向である。
【0020】
本発明の粉粒体予備加熱装置1は、例えば図1から図7に示す実施形態のように、筐体2と、攪拌軸3と、マイクロ波照射装置4と、スターラーファン5と、温度センサ6と、制御装置7とを備えている。
【0021】
筐体2は、後述される食品加工機械で加工する前の粉粒体の食品材料8を収容する。筐体2は、水平方向に横置きされている。筐体2は、横長であるとよい。筐体2は、長手方向が左右方向になるように横置きされている。筐体2の下部は、筐体2の長手方向に対して垂直方向の断面が円弧形状であるとよい。筐体2は、例えば、金属製であるとよい。筐体2は、例えば、ステンレス鋼製であるとよい。
【0022】
筐体2の上部に開口する材料給排口2aを開閉可能な蓋部材21が取り付けられている。粉粒体の食品材料8は、蓋部材21を開いて、材料給排口2aから筐体2の中に出し入れされる。筐体2の中に粉粒体の食品材料8は、図3に示すように蓋部材21を開いたあと、図4に示すように筐体2の長手方向を回転軸にして筐体2を横転させて材料給排口2aから自重で排出されてもよい。筐体2を横転させる際に、攪拌軸3を回転させることで、粉粒体の食品材料8の流動性を維持して、粉粒体の食品材料8を速やかに材料給排口2aから排出するようにしてもよい。
【0023】
攪拌軸3は、筐体2の中の粉粒体の食品材料8を攪拌する。攪拌軸3は、筐体2の中で回転可能に設けられている。攪拌軸3の回転軸31の軸方向は、水平方向に設けられている。攪拌軸3の回転軸31の軸方向は、横置きの筐体2の長手方向と同じ左右方向になるように設けられている。攪拌軸用回転駆動装置35は、攪拌軸3の回転軸31を回転させる。攪拌軸3は、攪拌羽根32を備えている。攪拌羽根32は、回転軸31に取り付けられている。筐体2の中の粉粒体の食品材料8は、回転する攪拌羽根32で攪拌される。攪拌軸3は、例えば、金属製であるとよい。攪拌軸は、例えば、ステンレス鋼製であるとよい。
【0024】
攪拌羽根32は、棒状に形成されていてもよい。攪拌羽根32は、好ましくは、筐体2の壁2bの内面に対面している棒の先端面33の面積が当該棒の胴部における当該棒の長手方向に垂直な断面34の面積よりも大きく形成されているとよい。例えば、棒状の攪拌羽根32の先端面33は、図5に示すように、90度屈曲させた棒の先端部分のうちの筐体2の壁2bの内面に対面している面であるとよい。また例えば、棒状の攪拌羽根32の先端面33は、図6に示すように、外縁の一部が曲線の面であるとよい。また例えば、棒状の攪拌羽根32の先端面33は、図7に示すように、外縁の一部が直線の面であるとよい。特に、棒状の攪拌羽根32の先端面33は、マイクロ波によるエネルギを集中させないように、角部を少なくしかつ平面であるとよい。
【0025】
マイクロ波照射装置4は、筐体2の中の粉粒体の食品材料8にマイクロ波を照射する。なお、蓋部材21が閉じられた筐体2の中に照射されるマイクロ波は、筐体2の外に漏れることがなく、粉粒体の食品材料8を効率よく加熱する。粉粒体の食品材料8を筐体2の中に出し入れする際に、マイクロ波照射装置4は、マイクロ波の照射を停止している。
【0026】
マイクロ波照射装置4は、マイクロ波発振器41と、アイソレータ42と、EHチューナ43と、導波管44と、を少なくとも備えている。マイクロ波照射装置4は、マイクロ波発振器41、アイソレータ42、EHチューナ43、そして筐体2の順に導波管44で接続されている。
【0027】
マイクロ波発振器41は、マイクロ波を発振する。マイクロ波発振器41は、例えば、一般的な2450MHz帯のマグネトロンである。粉粒体の食品材料8に含まれている水分は、マイクロ波を吸収して発熱する。
【0028】
アイソレータ42は、マイクロ波発振器41から発振されるマイクロ波のうちの進行波を伝搬し、マイクロ波のうちの反射波を吸収する。アイソレータ42は、マイクロ波発振器41から発振されるマイクロ波のうちの反射波がマイクロ波発振器41に戻らないようにする。
【0029】
EHチューナ43は、筐体2内から戻る反射波と同じ振幅でかつ位相が逆の波を発生する。EHチューナ43は、筐体2内から戻る反射波を打ち消したマッチング状態を作り出す。
【0030】
導波管44は、マイクロ波を伝搬させる。導波管44は、筐体2上部の蓋部材21の筐体側開口44aに接続して、筐体2の中までマイクロ波を伝搬する。マイクロ波は、筐体2内の粉粒体の食品材料8の上方から照射されるとよい。
【0031】
スターラーファン5は、筐体2の中に照射されたマイクロ波のキャビテーションを増加する。スターラーファン5は、筐体2の中で回転可能に設けられている。スターラーファン5の回転軸51の軸方向は、上下方向に設けられている。スターラーファン用回転駆動装置53は、スターラーファン5の回転軸51を回転させる。
【0032】
スターラーファン5は、反射板52が取り付けられている。スターラーファン5の反射板52は、導波管44の筐体側開口44aと、筐体2内の粉粒体の食品材料8との間の空間に配置されている。スターラーファン5は、粉粒体の食品材料8の上方に配置されている。スターラーファン5は、導波管44の筐体側開口から照射されるマイクロ波を筐体2内の粉粒体の食品材料8の上方で散らして、粉粒体の食品材料8の上面に向けてマイクロ波を均一に照射させる。
【0033】
温度センサ6は、筐体2の中の粉粒体の食品材料8の温度を検出する。例えば温度センサ6は、図1に示すように、粉粒体の食品材料8の温度を非接触で検出できる放射温度計でもよい。温度センサ6は、例えば光ファイバーセンサーを用いて温度を検出するものを採用してもよい。
【0034】
制御装置7は、マイクロ波照射装置4と接続して、筐体2の中で攪拌軸3によって攪拌中の粉粒体の食品材料8にマイクロ波を照射して、筐体2の中の粉粒体の食品材料8を所定の予備加熱時間内に、所定の予備加熱温度に均一に昇温するまで予備加熱するように、少なくともマイクロ波照射装置4を制御する。制御装置7は、温度センサ6と接続して、温度センサ6が検出する温度を示す信号を受信して、温度センサ6が検出する温度に基づき少なくともマイクロ波照射装置4を制御するとよい。また制御装置7は、攪拌軸用回転駆動装置35およびスターラーファン用回転駆動装置53と接続して、それらを制御してもよい。
【0035】
特に、本発明の粉粒体予備加熱装置1および粉粒体予備加熱方法は、低温貯蔵されていた粉粒体の食品材料8を食品加工機械で加工する前に筐体2の中に収容し、筐体2の中で粉粒体の食品材料8を攪拌し、筐体2の中で攪拌されている最中の粉粒体の食品材料8にマイクロ波を照射することによって、低温貯蔵されていた粉粒体の食品材料8が、10分以内の所定の予備加熱時間内に、食品加工機械での加工に適する25℃以上30℃以下の所定の予備加熱温度に均一に昇温されるまで予備加熱することができる。
【0036】
ほとんどの粉粒体の食品材料8の温度を上昇させるために必要な熱エネルギの量は、水の温度を上昇させるために必要な熱エネルギの量よりも小さい。例えば、小麦の比熱は、1.524J/g・Kである。水の比熱は、4.217J/g・Kである。小麦の比熱は、水の比熱の3分の1程度である。
【0037】
例えば、澱粉および蛋白を主成分とするような食品材料は、それら成分の表層に自由水として自然に存在している水分の昇温を利用すると、温度差が15℃から30℃の範囲でより短時間に昇温できる。なお、一般的に市場に流通している粉粒体の食品材料の水分量は、一定の範囲に規制されている。例えば、小麦粉の含水率は、13〜15%程度である。
【0038】
そこで、水に対する誘導損失係数が非常に大きいマイクロ波を予備加熱に利用する。マイクロ波は、粉粒体の食品材料8に含まれる水分の方を積極的に加熱する。マイクロ波は、粉粒体の食品材料8を加工前に加工に適する常温まで短時間で昇温することができる。また短い予備加熱時間は、澱粉および蛋白などのような熱に因る加工特性の変化が大きい成分に、熱による変化が生じる温度帯まで昇温すること無く、マイクロ波で発熱する水分の熱を必要最小限に抑えて、粉粒体の食品材料8の品質の低下を抑えることができる。
【0039】
さらにマイクロ波は、粉粒体の食品材料8に含まれる澱粉および蛋白などのような熱に因る加工特性の変化が大きい成分を直接加熱しないので、粉粒体の食品材料8の品質の低下を抑えることができる。
【0040】
筐体2内に供給された粉粒体の食品材料8は、各粉体間の隙間または各粒体間の隙間が広い場所と、それらの隙間が狭い場所とができる場合がある。隙間が広い場所は、隙間の狭い場所よりもマイクロ波が減衰せずに浸透する距離が長い。隙間が広い場所の粉粒体の食品材料8は、隙間の狭い場所の粉粒体の食品材料8よりも加熱されやすい。
【0041】
そこで、粉粒体の食品材料8は、筐体2の中で撹拌されながらマイクロ波が照射されて予備加熱される。撹拌によって、粉粒体の食品材料は、より均一に短時間で昇温することができる。このとき、筐体内でのキャビテーションにより、粉粒体の食品材料は一層迅速で均一な昇温ができる。
【0042】
本発明の粉粒体予備加熱装置1は、筐体2内に粉粒体の食品材料8が供給され、筐体2内の攪拌軸3で粉粒体の食品材料8を撹拌しながら、筐体2内で粉粒体の食品材料8にマイクロ波が照射されていることによって、粉粒体の食品材料を効率よく予備加熱できる。マイクロ波は、筐体2によって漏洩が防止されているので、加熱効率が高い。
【0043】
ここからは本発明の粉粒体予備加熱装置1を別の実施形態によってさらに詳しく説明する。なお、前述の実施形態と同じ構成要素については説明を省略する。
【0044】
粉粒体予備加熱装置1は、図8に示すように、サイロ110に低温貯蔵されていた粉粒体の食品材料8を食品加工機械100で加工する前に加工に適した所定の予備加熱温度まで予備加熱する。
【0045】
サイロ110の中に貯蔵されている粉粒体の食品材料8は、ブロワ151によってユースビン120に送られる。ユースビン120は、一時貯蔵タンクである。ユースビン120の中に貯蔵されている粉粒体の食品材料8は、スケール130によって所定量計量される。スケール130は、計量装置である。所定量の粉粒体の食品材料8は、ブロワ152によってインラインシフタ140に送られる。インラインシフタ140は、粉粒体の食品材料8を振動するふるいに連続的にかけて異物を除去する。異物が除去された粉粒体の食品材料8は、ブロワ153によって粉粒体予備加熱装置1に送られる。ブロワ151,152,153は、空気式移動装置である。
【0046】
粉粒体予備加熱装置1に送られた粉粒体の食品材料8は、食品加工に適した所定の予備加熱温度まで予備加熱される。予備加熱された粉粒体の食品材料8は、自重によって食品加工機械100に移動する。なお、粉粒体の食品材料8の移送手段は、必要に応じて各種方式を採用すればよい。
【0047】
食品加工機械100は、例えば、菓子、パン又は麺の生地を生成する機械である。例えば食品加工機械100は、粉粒体の食品材料8を加水し混錬して生地を生成するミキサである。また例えば食品加工機械100は、回転するスクリュを有し生地を特定の形状へ押し出す押出機である。
【0048】
粉粒体の食品材料8は、粉状の食品材料または粒状の食品材料うちのどちらか一方またはそれらが混ざりあったものである。粉粒体の食品材料8は、例えば、小麦粉、大麦粉、コーンスターチ、エンバク粉、ライ麦粉、米粉、ジャガイモ粉、そば粉、大豆粉、小麦粒、大麦粒、トウモロコシ粒、オート麦、ライ麦粒、米粒、そばの実および大豆である。
【0049】
粉粒体予備加熱装置1の筐体2は、図9および図10に示すように、鉛直方向に縦置きにしてもよい。筐体2は、縦長であるとよい。筐体2は、長手方向が上下方向になるように縦置きされている。筐体2の上部から胴部までの部分は、円筒形状である。筐体2の上部に材料供給口2cが形成されている。筐体2の下部は、下方に向かって縮径されている逆円錐形状であり、内側が漏斗形状である。筐体2の下部に材料排出口2dが形成されている。筐体2は、例えば、金属製であるとよい。筐体2は、例えば、ステンレス鋼製であるとよい。
【0050】
筐体2の材料供給口2cは、インラインシフタ140で異物が除去されたあとの粉粒体の食品材料8を筐体2の中に供給するための入口である。筐体2の材料排出口2dは、筐体2の中で予備加熱した粉粒体の食品材料8を食品加工機械100に向けて排出する出口である。材料供給口2cと材料排出口2dは、それぞれ開閉弁161,162で開閉することができる。
【0051】
筐体2の正面および背面に点検扉22,22が設けられている。点検扉22,22は、筐体の内部を清掃する際に開放される。筐体2の上部に点検窓23が設けられている。点検窓23は、例えば無色透明のガラスまたはプラスチックなどであって、筐体2の中を目視可能にする。筐体の上部に照明部材24が設けられている。照明部材24は、点検窓23から筐体2の中を目視する際に、筐体2の中を照らす。筐体2の側面に加振部材25が設けられている。加振部材25は、例えば、エアー式または電磁式のノッカーなどであって、筐体2に振動を与えることで、筐体2の壁2bの内面に付着した粉粒体の食品材料を確実に材料排出口2dから落下させることができる。
【0052】
筐体2の上部にマイクロ波照射装置4が設けられている。マイクロ波照射装置4は、筐体2の中の粉粒体の食品材料8にマイクロ波を照射する。マイクロ波は、粉粒体の食品材料8の上方から照射されている。マイクロ波は、例えば、ステンレス鋼製の筐体2の中で乱反射を繰り返して、粉粒体の食品材料8を加熱する。
【0053】
筐体2に複数の温度センサ6a,6b,6cが設けられている。複数の温度センサ6a,6b,6cは、材料排出口2dからの高さがそれぞれ異なるように配置されている。例えば、温度センサ6aは、温度センサ6bおよび温度センサ6cよりも低い位置に設けられている。温度センサ6cは、温度センサ6aおよび温度センサ6bよりも高い位置に設けられている。温度センサ6bは、温度センサ6aと温度センサ6cの間に設けられている。複数の温度センサ6a,6b,6cは、材料排出口2dからの高さがそれぞれ異なる位置にある粉粒体の食品材料8の温度を検出する。なお、例えば筐体2の中の粉粒体の食品材料8が温度センサ6bと温度センサ6cの間の高さまで収容されている場合、温度センサ6cのみ使用するとよい。複数の温度センサ6a,6b,6cは、例えば、測温抵抗体であるとよい。
【0054】
攪拌軸3の回転軸31は、図11および図12に示すように、軸方向が垂直方向を向くように設けられている。攪拌軸3の回転軸31は、縦置きの筐体2の上下方向と同じ方向になるように設けられている。回転軸31の基端部は、筐体2の上部に設けられた攪拌軸用回転駆動装置35に接続されている。回転軸31の先端部は、材料排出口2dに面している。攪拌軸3は、攪拌羽根32を有する。攪拌羽根32は、主攪拌羽根36と補助攪拌羽根37で構成されている。攪拌軸3は、例えば、金属製であるとよい。攪拌軸3は、例えば、ステンレス鋼製であるとよい。
【0055】
主攪拌羽根36は、主羽根本体36aと主羽根取付軸36bで構成されている。主羽根本体36aは、図11に示すように正面視すると回転軸31の周面から一定の間隔を空けて帯状の羽根を筐体2の壁2bの内面に沿うように螺旋状に巻回した形状に形成されている。また主羽根本体36aは、図12に示すように平面視すると帯状の羽根が旋回するにつれて回転軸31に近づくように渦巻状に形成されていて、筐体2の上方から下方に向かって曲率半径が小さくなっている。また主羽根本体36aの外周に主羽根切欠部36c,36c,36cが形成されている。主羽根切欠部36c,36c,36cは、筐体2に設けられている温度センサ6a,6b,6cに主羽根本体36aが衝突しないように形成されたものである。
【0056】
補助攪拌羽根37は、補助羽根本体37aと補助羽根取付軸37bで構成されている。補助攪拌羽根37は、主攪拌羽根36の下方に配置された羽根であり、回転軸31の先端部に補助羽根取付軸37bを介して取り付けられる。補助羽根本体37aも主羽根本体36aと同様、回転軸31の周面から一定の間隔を空けて帯状の羽根を筐体2の壁2bの内面に沿うように螺旋状に半回転分巻回した形状に形成されており、帯状の羽根が旋回するにつれて回転軸31に近づくように渦巻状に形成されている。また主羽根本体36aと補助羽根本体37aは、回転軸31を中心として点対称な位置に設けられる。補助羽根本体37aも主羽根本体36aと同様、不図示の補助羽根切欠部が形成されていてもよい。
【0057】
主攪拌羽根36および補助攪拌羽根37が筐体2の壁2bの内面に沿う螺旋かつ渦巻状の形状をしているため、攪拌軸3が回転したときに筐体2の中の粉粒体の食品材料8を筐体2の底のほうから上下層が入れ替わるように大きく混ぜることができ、粉粒体同士の間に隙間が形成され下層の圧密化を防止することができる。
【0058】
攪拌軸3の回転軸31は、筐体2の壁2bを貫通する貫通孔2eに回転可能に挿通されている。回転軸31と貫通孔2eの間は、オイルシールおよびOリングなどのシールリングでシールされている。シール取付部材39が回転軸31と貫通孔2eの間に設けられていてもよい。シール取付部材39は、例えば、第1シールリング、第2シールリングおよび第3シールリングが取り付けられている。シール取付部材39と回転軸31の間は、例えば、第1シールリングでシールされている。シール取付部材39と貫通孔2eの間は、例えば、第2シールリングおよび第3シールリングでシールされている。
【0059】
攪拌軸3の回転軸31は、筐体2の中でかつ貫通孔2eの近傍の外周に蛇腹状の環状部38を有するとよい。蛇腹状の環状部38は、前記筐体の中でかつ前記貫通孔の近傍に前記攪拌軸を回転可能に挿通するように筐体2に設けられていてもよい。蛇腹状の環状部38は、筐体2の中でかつシールリングまたはシール取付部材39の近傍に設けられている。筐体2は、シールリングまたはシール取付部材39を含んでもよい。蛇腹状の環状部38は、シールリングまたはシール取付部材39に取り付けられてもよい。蛇腹状の環状部38は、外径が大きい部分と外径が小さい部分が中心軸の軸方向に交互に並べられているとよい。蛇腹状の環状部38は、例えば、金属製であるとよい。蛇腹状の環状部38は、例えば、ステンレス鋼製であるとよい。筐体2の中を反射するマイクロ波は、シールリングおよびシール取付部材39に到達する前に蛇腹状の環状部38によって反射させられる。蛇腹状の環状部38は、例えば、樹脂製のシール取付部材39およびシールリングがマイクロ波によって加熱されることを防止することができる。
【0060】
ここからは本発明の粉粒体温度調節装置10を説明する。なお前述の粉粒体予備加熱装置1と同じ構成要素については説明を省略する。その他、食品加工機械100、サイロ110、ユースビン120、スケール130、インラインシフタ140、ブロワ151,152,153、および開閉弁161,162も前述のものと同じ構成なので説明を省略する。
【0061】
粉粒体温度調節装置10は、図8に示すように、サイロ110に貯蔵されていた粉粒体の食品材料8を食品加工機械100で加工する前に加工に適した所定の温度まで予備加熱または予備冷却する。
【0062】
粉粒体温度調節装置10は、図13から図15に示すように、筐体2と、攪拌軸3と、粉粒体予備加熱部11と、粉粒体予備冷却部12と、温度センサ6a,6b,6cと、制御装置13とを備えている。
【0063】
粉粒体予備加熱部11は、筐体2の中の粉粒体の食品材料8を予備加熱する。粉粒体予備加熱部11は、マイクロ波照射装置4を備えて、筐体2の中の粉粒体の食品材料8にマイクロ波を照射する。筐体2の中の粉粒体の食品材料は、攪拌軸3で攪拌されながらマイクロ波照射装置4が照射するマイクロ波で予備加熱される。
【0064】
粉粒体予備冷却部12は、筐体2の中の粉粒体の食品材料8を予備冷却する。粉粒体予備冷却部12は、例えば、不図示の真空装置を備えて、粉粒体の食品材料8を収容した筐体2の中を減圧する。真空装置は、例えば、真空ポンプであり、筐体2の中の圧力を水分が蒸発する圧力以下に低下させて、筐体2の中の粉粒体の食品材料8が保持している水分の一部を強制的に蒸発させて、その際の潜熱を利用して筐体2の中の粉粒体の食品材料8を冷却する。筐体2の中の粉粒体の食品材料8は、攪拌軸3で攪拌されながら冷却されることで均一に冷却される。また筐体2と真空ポンプの間に不図示のコールドトラップが設けられてもよい。コールドトラップは、気体に含まれる水分を除去することができる装置であり、真空ポンプによって粉粒体の食品材料8から強制的に蒸発させた水蒸気を迅速に回収することができる。コールドトラップは、筐体2の中の水蒸気量を急速に減少させて、筐体2の中の真空度の上昇速度を速めて、筐体2の中の粉粒体の食品材料8の温度をさらに迅速に低下させる。コールドトラップは、例えば、冷媒を配管内に循環させて気体の水分が凝縮されるように構成された熱交換器などである。なお、粉粒体予備冷却部12は、前述の真空装置に限定されず、各種冷却手段を採用することができる。
【0065】
制御装置13は、粉粒体予備加熱部11および粉粒体予備冷却部12と接続して、それらを制御している。また制御装置13は、温度センサ6a,6b,6cと接続して、温度センサ6a,6b,6cが検出する温度を示す信号を受信して、温度センサ6a,6b,6cが検出する温度に基づき粉粒体予備加熱部11および粉粒体予備冷却部12を制御するとよい。また制御装置13は、攪拌軸用回転駆動装置35と接続して、攪拌軸用回転駆動装置35を制御してもよい。また制御装置13は、スターラーファンを備えている場合にはスターラーファン用回転駆動装置を制御してもよい。
【0066】
制御装置13は、筐体2の中の粉粒体の食品材料8が所定の温度を下回っているときに、攪拌軸3で筐体2の中で食品材料を攪拌させながら、10分以内の所定の予備加熱時間内に加工に適する25℃以上30℃以下の所定の温度に均一に昇温するまで予備加熱するように、少なくともマイクロ波照射装置4を制御する。このときの所定の温度は、予備加熱温度である。
【0067】
また制御装置13は、筐体2の中の粉粒体の食品材料8が所定の温度を上回っているときに、筐体2の中の粉粒体の食品材料8を所定の温度に均一に冷却するまで予備冷却するように、粉粒体予備冷却部12を制御する。このときの所定の温度は、予備冷却温度である。
【0068】
特に、本発明の粉粒体温度調節装置10および粉粒体温度調節方法は、貯蔵されていた粉粒体の食品材料8を食品加工機械100で加工する前に筐体2の中に収容し、筐体2の中の粉粒体の食品材料8が所定の温度を下回っているときに、筐体2の中に収容した粉粒体の食品材料8を攪拌しながらマイクロ波を照射することによって均一に予備加熱し、10分以内の所定の予備加熱時間内に、食品加工機械100での加工に適する25℃以上30℃以下の所定の温度に昇温するまで予備加熱することができる。
【0069】
以上説明した本発明は、この発明の精神および必須の特徴的事項から逸脱することなく他のいろいろな形態で実施することができる。したがって、本明細書に記載した実施例は例示的なものであり、これに限定して解釈されるべきものではない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、粉状または粒状の食品材料の予備加熱装置およびその予備加熱方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 粉粒体予備加熱装置
2 筐体
2a 材料給排口
2b 壁
2c 材料供給口
2d 材料排出口
2e 貫通孔
3 攪拌軸
4 マイクロ波照射装置
5 スターラーファン
6 温度センサ
7 制御装置
8 粉粒体の食品材料
10 粉粒体温度調節装置
11 粉粒体予備加熱部
12 粉粒体予備冷却部
13 制御装置
21 蓋部材
22 点検扉
23 点検窓
24 照明部材
25 加振部材
31 回転軸
32 攪拌羽根
33 先端面
34 胴部の断面
35 攪拌軸用回転駆動装置
36 主攪拌羽根
36a 主羽根本体
36b 主羽根取付軸
36c 主羽根切欠部
37 補助攪拌羽根
37a 補助羽根本体
37b 補助羽根取付軸
38 蛇腹状の環状部
39 シール取付部材
41 マイクロ波発振器
42 アイソレータ
43 EHチューナ
44 導波管
44a 筐体側開口
51 回転軸
52 反射板
53 スターラーファン用回転駆動装置
100 食品加工機械
110 サイロ
120 ユースビン
130 スケール
140 インラインシフタ
151 ブロワ
152 ブロワ
153 ブロワ
161 開閉弁
162 開閉弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15