【解決手段】コイル部品(インダクタ1)は、鉄を含有する軟磁性金属粒子を含む磁性基体と、磁性基体内に設けられ、上下方向に延伸するコイル軸CLの周りに設けられた周回部を有するコイル導体25と、を備える。磁性基体は、波長488nmの励起レーザーを用いたラマンスペクトルにおいて、波数712cm
付近に存在する第2ピークのピーク強度との比をピーク強度比としたときに、導体近接領域におけるピーク強度比である第1ピーク強度比とコア領域におけるピーク強度比である第2ピーク強度比とがともに1.0以上であり、第1ピーク強度比に対する前記第2ピーク強度比の比が1.1よりも大きくなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から
図5を参照して本発明の一実施形態によるコイル部品について説明する。これらの図には、本発明の一実施形態によるコイル部品の例としてインダクタ1が示されている。
図1は、本発明の一実施形態による磁性基体を備えるインダクタ1の斜視図であり、
図2は、
図1のインダクタ1をI−I線で切断した断面を模式的に示す図であり、
図3は、
図2の一部(左上の領域)を拡大して模式的に示す図であり、
図4は、磁性基体の断面の一部のSEM像を模式的に示す図であり、
図5は、
図1のインダクタ1の分解斜視図である。
図2及び
図5においては、説明の便宜のために、外部電極の図示が省略されている。
【0012】
これらの図に示されているインダクタ1は、本発明を適用可能なコイル部品の一例である。本発明は、インダクタ以外にも、トランス、フィルタ、リアクトル、及びこれら以外の様々なコイル部品に適用され得る。本発明は、カップルドインダクタ、チョークコイル、及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品にも適用することができる。本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、インダクタ1の「長さ」方向、「幅」方向、及び「厚さ」方向はそれぞれ、
図1の「L」方向、「W」方向、及び「T」方向とする。インダクタ1の上下方向に言及する際には、
図1の上下方向を基準とする。つまり、「T」方向の正方向が上方向と呼び、「T」方向の負方向を下方向と呼ぶ。
【0013】
図示のように、インダクタ1は、磁性基体10と、この磁性基体10内に設けられたコイル導体25と、当該コイル導体25の一端と電気的に接続された外部電極21と、当該コイル導体25の他端と電気的に接続された外部電極22と、を備える。
図2に示されているように、コイル導体25は、上下方向に延びるコイル軸CLの周りにらせん状に延びる周回部25aを有する。図示の実施形態において、周回部25aは、7層の導体パターンと、この7層の導体パターンのうち隣接している導体パターン同士を接続するビア導体と、を有する。周回部25aの一端には引出導体25b1が接続され、周回部25aの他端には引出導体25b2が接続されている。周回部25aは、引出導体25b1を介して外部電極22と電気的に接続され、引出導体25b2を介して外部電極21と電気的に接続されている。コイル導体25は、導電性に優れた導電材料からなり、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金を用いることができる。好ましくは、Cu又はAgの少なくとも一方を含むことができる。コイル導体25は、平均粒径の異なる導電性の粒子を含むことができる。この導電性の粒子は、例えば、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金から成る粒子であってもよい。
【0014】
インダクタ1は、回路基板2に実装されている。回路基板2には、ランド部3が設けられてもよい。インダクタ1が2つの外部電極21,22を備える場合には、これに対応して回路基板2には2つのランド部3が設けられる。インダクタ1は、外部電極21,22の各々と回路基板2の対応するランド部3とを接合することにより、当該回路基板2に実装されてもよい。回路基板2は、様々な電子機器に実装され得る。回路基板2が実装され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。インダクタ1は、回路基板2の内部に埋め込まれる内蔵部品であってもよい。
【0015】
磁性基体10は、第1の主面10a、第2の主面10b、第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fを有する。磁性基体10は、これらの6つの面によってその外面が画定される。第1の主面10aと第2の主面10bとは互いに対向し、第1の端面10cと第2の端面10dとは互いに対向し、第1の側面10eと第2の側面10fとは互いに対向している。
図1において第1の主面10aは磁性基体10の上側にあるため、第1の主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2の主面10bを「下面」と呼ぶことがある。インダクタ1は、第2の主面10bが回路基板2と対向するように配置されるので、第2の主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。本発明の一実施形態において、磁性基体10は、長さ寸法(L方向の寸法)が1.0mm〜2.6mm、幅寸法(W方向の寸法)が0.5〜2.1mm、高さ寸法(H方向の寸法)が0.5〜1.0mmとなるように形成される。長さ方向の寸法は、0.3mm〜1.6mmとされてもよい。
【0016】
図2及び
図3に示されているように、磁性基体10は複数の領域に区画される。具体的には、一実施形態における磁性基体10は、コイル導体25の周回部25aから基準距離d内にある導体近接領域10Aと、この導体近接領域10Aの内側にあるコア領域10Bと、導体近接領域10Aと磁性基体10の外面との間にあるマージン領域10Cと、を有する。基準距離dは、例えば、10μm〜200μmの範囲、20μm〜100μm、又は30μm〜80μmの範囲の値とされる。一実施形態において、基準距離dは、50μmとされてもよい。
図2及び
図3には、各領域の境界が模式的に示されている。
図2及び
図3に示されている境界は、必ずしも各領域の境界を正確に示すものではない点に留意されたい。
【0017】
コア領域10Bは、周回部25aの内側の領域である。つまり、コア領域10Bは、周回部25aよりもコイル軸CLに近い領域である。コア領域10Bは、コイル軸CLによって貫かれている。
【0018】
マージン領域10Cは、導体近接領域10A及びコア領域10Bと磁性基体10の上面10aとの間にある上側カバー領域10C1と、導体近接領域10A及びコア領域10Bと磁性基体10の下面10bとの間にある下側カバー領域10C2と、導体近接領域10Aと第1の端面10c、第2の端面10d、第1の側面10e、及び第2の側面10fの各々との間にあるサイドマージン部10C3と、にさらに区画されてもよい。上側カバー領域10C1は、後述する上側カバー層18と一致していてもよいし一致していなくともよい。下側カバー領域10C2は、後述する下側カバー層19と一致していてもよいし一致していなくともよい。
【0019】
外部電極21は、磁性基体10の第1の端面10cに設けられる。外部電極22は、磁性基体10の第2の端面10dに設けられる。各外部電極は、図示のように、磁性基体10の上面及び下面まで延伸してもよい。各外部電極の形状及び配置は、図示された例には限定されない。例えば、外部電極21,22はいずれも磁性基体10の下面10bに設けられてもよい。この場合、コイル導体25は、ビア導体を介して、磁性基体10の下面10bに設けられた外部電極21,22と接続される。外部電極21と外部電極22とは、長さ方向において互いから離間して配置されている。外部電極21と外部電極22との間の距離は、磁性基体10の長さ方向の寸法である0.3mm〜1.6mmと同じかそれよりも若干小さい。
【0020】
本発明の一実施形態において、磁性基体10は、表面に酸化膜が設けられた複数の軟磁性金属粒子を結合させることによって形成される構造体である。
図4に示されているように、磁性基体10に含まれる軟磁性金属粒子30の各々は、隣接する軟磁性金属粒子30と酸化膜40を介して結合される。一部の軟磁性金属粒子30同士は、酸化膜を介さずに直接結合されてもよい。軟磁性金属粒子30間には空隙が存在していてもよい。この空隙の一部又は全部には樹脂が充填されていてもよい。
【0021】
磁性基体10に含まれる軟磁性金属粒子30は、鉄を含有する軟磁性合金から形成される。一実施形態において、磁性基体10に含まれる軟磁性金属粒子30は、例えば、Fe−Si合金、Fe−Si−Al合金、又はFe−Si−Cr合金であってもよい。軟磁性金属粒子30は、単一の種類の合金の粒子のみを含んでいてもよい。磁性基体10用の磁性材料に含まれる軟磁性金属粒子30は、複数の異なる種類の合金の粒子を含んでいてもよい。例えば、軟磁性金属粒子30は、Fe−Si合金から成る複数の粒子と、Fe−Si−Al合金から成る複数の粒子と、を含んでいても良い。軟磁性金属粒子30がFeを含む合金から形成される場合には、軟磁性金属粒子30におけるFeの含有比率は、90wt%以上とされてもよい。これにより、良好な磁気飽和特性を有する磁性基体10が得られる。
【0022】
磁性基体10の材料として用いられる軟磁性金属粒子30は、互いに平均粒径の異なる2種類以上の軟磁性金属粒子30を含んでもよい。例えば、磁性基体10の材料として用いられる軟磁性金属粒子30は、第1平均粒径を有する第1の軟磁性金属粒子と、この第1平均粒径よりも小さな第2平均粒径を有する第2軟磁性金属粒子と、を含んでもよい。一実施形態において、第2軟磁性金属粒子の平均粒径は、第1軟磁性金属粒子の平均粒径の1/2以下とされる。第2軟磁性金属粒子の平均粒径が第1軟磁性金属粒子の平均粒径よりも小さい場合、第2軟磁性金属粒子が隣接する第1軟磁性金属粒子の間の隙間に入り込み易く、その結果、磁性基体10における軟磁性金属粒子の充填率(Density)を高めることができる。一実施形態において、磁性基体10の材料として用いられる軟磁性金属粒子30は、第2平均粒径よりも小さな第3平均粒径を有する第3軟磁性金属粒子をさらに含んでもよい。
【0023】
磁性基体10に含まれる軟磁性金属粒子30の平均粒径は、当該磁性基体10をその厚さ方向(T方向)に沿って切断して断面を露出させ、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により2000倍〜5000倍の倍率で撮影した写真に基づいて粒度分布を求め、この粒度分布に基づいて定められる。例えば、SEM写真に基づいて求められた粒度分布の50%値を軟磁性金属粒子30の平均粒径とすることができる。
【0024】
磁性基体10用の磁性材料として用いられる軟磁性金属粒子30は、その表面に絶縁膜を有していてもよい。この絶縁膜は、軟磁性金属粒子30の表面全体を覆うように形成されることが望ましい。軟磁性金属粒子30の表面に設けられる絶縁膜によって軟磁性金属粒子30同士のショートを抑制することにより渦電流損失を抑制することができる。この絶縁膜は、例えば、シリカ等の酸化ケイ素膜である。軟磁性金属粒子30の表面に形成される絶縁膜の厚さは、例えば5nm以上100nm以下とされる。軟磁性金属粒子30に設けられる絶縁膜の厚さは、当該軟磁性金属粒子30の平均粒径に応じて変更され得る。
【0025】
酸化膜40は、軟磁性金属粒子30に含まれる金属元素の酸化物を含む。例えば、軟磁性金属粒子30がFe−Si−Cr合金である場合には、酸化膜40はFe及びCrの酸化物を含み、軟磁性金属粒子30がFe−Si−Al合金である場合には、酸化膜40はFe及びAlの酸化物を含む。本発明に用いられる軟磁性金属粒子30は、Feを含有するので、どの種類の合金を使用する場合でも酸化膜40はFeの酸化物を含む。酸化膜40に含まれるFeの酸化物には、マグネタイト(Fe
3O
4)及びヘマタイト(Fe
2O
3)が含まれる。
【0026】
本発明の一実施形態においては、インダクタ1として望ましい透磁率及び絶縁性を実現するという観点から、磁性基体10の各領域におけるマグネタイトとヘマタイトとの比率が適切な範囲に定められる。磁性基体10の各領域におけるマグネタイトとヘマタイトとの比率は、測定領域に波長488nmの励起レーザーを照射したときの散乱光を測定して得られるラマンスペクトルにおいて、波数712cm
-1付近に存在するピークのピーク強度(ピーク強度M)と波数1320cm
-1付近に存在するピークのピーク強度(ピーク強度H)との比であるピーク強度比(M/H)によって特定される。波数712cm
-1付近に存在するピークは、マグネタイト(Fe
3O
4)に由来するピークであり、波数1320cm
-1付近に存在するピークは、ヘマタイト(Fe
2O
3)に由来するピークである。マグネタイト(Fe
3O
4)に由来するピークは、ラマンスペクトルにおいて波数660cm
-1〜760cm
-1の範囲に現れる。本明細書においては、「波数712cm
-1付近に存在するピーク」は、波長488nmの励起レーザーを用いたラマンスペクトルにおいて波数660cm
-1〜760cm
-1の範囲にピークトップが現れるピークを意味する。ヘマタイト(Fe
2O
3)に由来するピークは、ラマンスペクトルにおいて波数1270cm
-1〜1370cm
-1の範囲に現れる。本明細書においては、「波数1290cm
-1付近に存在するピーク」は、マグネタイト(Fe
3O
4)に由来するピークであり、波長488nmの励起レーザーを用いたラマンスペクトルにおいて波数1270cm
-1〜1370cm
-1の範囲にピークトップが現れるピークを意味する。本明細書においては、磁性基体10に波長488nmの励起レーザーを照射したときの散乱光を測定して得られるラマンスペクトルにおいて、マグネタイトに由来するピーク強度(ピーク強度M)のヘマタイトに由来するピーク強度(ピーク強度H)との比であるピーク強度比(M/H)を「M/Hピーク比」又は「M/H比」ということがある。
【0027】
本発明の一実施形態において、磁性基体10は、その導体近接領域10AにおけるM/Hピーク比がコア領域10BにおけるM/Hピーク比よりも低くなるように構成される。つまり、導体近接領域10Aは、コア領域10Bとの比較において、ヘマタイトの存在比率がより高い領域である。本発明の一実施形態において、導体近接領域10AにおけるM/Hピーク比は1〜75となる。
【0028】
本発明の一実施形態において、磁性基体10は、そのマージン領域10CにおけるM/Hピーク比がコア領域10BにおけるM/Hピーク比よりも低くなるように構成される。つまり、マージン領域10Cは、コア領域10Bとの比較において、ヘマタイトの存在比率が高い領域である。本発明の一実施形態において、マージン領域10CにおけるM/Hピーク比は1〜75となる。
【0029】
磁性基体10の各領域のラマンスペクトルは、磁性基体10の破断面の測定対象となる領域に波長488nmの励起レーザーを照射し、この磁性基体10からの散乱光を一般的な分光測定装置を用いて測定することにより得られる。分光測定装置としては、例えば、日本分光株式会社製のラマン分光光度計(NRS−3300)を用いることができる。
【0030】
磁性基体におけるマグネタイトの含有比率が高くなると透磁率が向上する一方で絶縁性が劣化する(耐電圧が低くなる)。磁性基体におけるヘマタイトの含有比率が高くなると透磁率が低下する一方で絶縁性が改善する(耐電圧が高くなる)。電源系のインダクタ等の大電流が流れる電子部品においては、透磁率が25以上で耐電圧が1V/μm以上であることが望ましい。
【0031】
次に、
図5を参照して、インダクタ1が有する積層構造について説明する。
図5には、積層プロセスによって作成されたインダクタ1の分解斜視図が示されている。
図5に示すように、磁性体層20は、磁性膜11〜17を備える。磁性体層20においては、T軸方向の正方向側から負方向側に向かって、磁性膜11、磁性膜12、磁性膜13、磁性膜14、磁性膜15、磁性膜16、磁性膜17の順に積層されている。インダクタ1は、積層プロセス以外の方法で作成されてもよい。例えば、インダクタ1は、薄膜プロセスにより作成されてもよい。
【0032】
磁性膜11〜17の各々の上面には、導体パターンC11〜C17が形成されている。導体パターンC11〜C17は、例えば、導電性に優れた金属又は合金から成る導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷することにより形成される。この導電ペーストの材料としては、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金を用いることができる。導体パターンC11〜C17は、これ以外の材料及び方法により形成されてもよい。導体パターンC11〜C17、例えば、スパッタ法、インクジェット法、又はこれら以外の公知の方法で形成されてもよい。
【0033】
磁性膜11〜磁性膜16の所定の位置には、ビアV1〜V6がそれぞれ形成される。ビアV1〜V6は、磁性膜11〜磁性膜16の所定の位置に、磁性膜11〜磁性膜16をT軸方向に貫く貫通孔を形成し、当該貫通孔に導電材料を埋め込むことにより形成される。
【0034】
導体パターンC11〜C17の各々は、隣接する導体パターンとビアV1〜V6を介して電気的に接続される。このようにして接続された導体パターンC11〜C17が、スパイラル状の周回部25aを形成する。すなわち、コイル導体25の周回部25aは、導体パターンC11〜C17及びビアV1〜V6を有する。
【0035】
導体パターンC11のビアV1に接続されている端部と反対側の端部は、引出導体25b1を介して外部電極22に接続される。導体パターンC17のビアV6に接続されている端部と反対側の端部は、引出導体25b2を介して外部電極21に接続される。
【0036】
上側カバー層18は、磁性材料から成る磁性膜18a〜18dを備え、下側カバー層19は、磁性材料から成る磁性膜18a〜18dを備える。本明細書においては、磁性膜18a〜18d及び磁性膜18a〜18dを総称して「カバー層磁性膜」と呼ぶことがある。
【0037】
次に、インダクタ1の製造方法の一例を説明する。インダクタ1は、例えば積層プロセスによって製造することができる。以下では、積層プロセスによるインダクタ1の製造方法の一例を説明する。
【0038】
まず、磁性基体10を構成する各磁性膜(上側カバー層18を構成する磁性膜18a〜18d、磁性体層20を構成する磁性膜11〜磁性膜17、及び下側カバー層19を構成する磁性膜19a〜19d)となる磁性体シートを作成する。磁性体シートを作成するために、まず軟磁性金属粒子30を準備する。軟磁性金属粒子30を準備する工程においては、軟磁性金属粒子30の表面に絶縁膜を形成してもよい。一実施形態において、軟磁性金属粒子30の表面に設けられる絶縁膜は、酸化ケイ素膜である。酸化ケイ素膜は、例えばゾルゲル法を用いたコートプロセスによって、軟磁性金属粒子30の各々の表面に設けられる。具体的には、まず、軟磁性金属粒子30、エタノール、及びアンモニア水を含む混合液中に、TEOS(テトラエトキシシラン、Si(OC
2H
5)
4)、エタノール、及び水を含む処理液を混合して混合液を作成し、次に、この混合液を撹拌し、その後にこの攪拌された混合液を濾過することで、各々の表面に酸化ケイ素膜が設けられた軟磁性金属粒子30が分離される。酸化ケイ素膜が形成された軟磁性金属粒子30に熱処理を行ってもよい。この熱処理は、例えば、還元雰囲気において、400〜800℃で20〜60分間行われる。
【0039】
次に、軟磁性金属粒子30の粒子群、樹脂組成物、及び溶剤を混合してスラリー(混合物)を作成する。この樹脂組成物は、バインダー樹脂を含む。このバインダー樹脂は、溶剤に溶解する任意のバインダー樹脂が用いられる。バインダー樹脂は、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂であってもよい。より具体的に、バインダー樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの混合物であってもよい。
【0040】
次に、上記のスラリーを圧縮成形することで板状の磁性体シートが得られる。具体的には、スラリーを成型金型に入れ、成形金型内でスラリーに成形圧力が加えられる。磁性体シートは、温間成形によって成形されてもよく、冷間成形によって成形されてもよい。温間成形による場合には、結合材の硬化温度よりも高い温間で成形が行われる。例えば、温間成形においては、150°〜400°の温間で成形が行われる。成形圧力は、例えば、40MPa〜120MPaとされる。成形圧力は、所望の充填率を得るために適宜調整され得る。磁性体シートを得るための加圧処理は、複数のシートに対してまとめて行われてもよい。具体的には、上記のスラリーをプラスチック製のベースフィルムの表面に塗布して乾燥させ、この乾燥後のスラリーを所定サイズに切断することでシート体を形成し、このシート体を複数枚積層して得られる積層体に対して加圧処理を行ってもよい。
【0041】
次に、上記のようにして作成された磁性体シートに対してコイル導体を設ける。具体的には、磁性膜11〜磁性膜16となる各磁性体シートの所定の位置に、各磁性体シートをT軸方向に貫く貫通孔を形成する。次に、磁性膜11〜磁性膜17となる磁性体シートの各々の上面に、導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷することで、当該磁性体シートに導体パターンを形成する。また、各磁性体シートに形成された各貫通孔に導電ペーストを埋め込む。このようにして磁性膜11〜磁性膜17となる第1磁性体シートに形成された導体パターンは、それぞれ導体パターンC11〜導体パターンC17となり、各貫通孔に埋め込まれた金属がビアV1〜V6となる。各導体パターンは、スクリーン印刷法以外にも公知の様々な方法で形成され得る。
【0042】
次に、磁性膜11〜磁性膜17となる各第1磁性体シートを積層してコイル積層体を得る。磁性膜11〜磁性膜17となる各磁性体シートは、当該各磁性体シートに形成されている導体パターンC11〜C17の各々が隣接する導体パターンとビアV1〜Va6を介して電気的に接続されるように積層される。
【0043】
次に、複数の磁性体シートを積層して上側カバー層18となる上側積層体を形成する。また、複数の磁性体シートを積層して下側カバー層19となる下側積層体を形成する。
【0044】
次に、下側積層体、コイル積層体、上側積層体をT軸方向の負方向側から正方向側に向かってこの順序で積層し、この積層された各積層体をプレス機により熱圧着することで本体積層体が得られる。本体積層体は、下側積層体、コイル積層体、及び上側積層体を形成せずに、準備した磁性体シート全てを順番に積層して、この積層された磁性体シートを一括して熱圧着することにより形成しても良い。次に、ダイシング機やレーザー加工機等の切断機を用いて上記本体積層体を所望のサイズに個片化することで、チップ積層体が得られる。チップ積層体の端部に対しては、必要に応じて、バレル研磨等の研磨処理を行ってもよい。
【0045】
次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を焼成することでコイル導体25が埋め込まれた磁性基体10が得られる。この熱処理により、軟磁性金属粒子30に含まれる金属元素が酸化し、軟磁性金属粒子30の表面に酸化膜40が形成される。これにより、隣り合う軟磁性金属粒子30同士が酸化膜40を介して結合する。チップ積層体の焼成は、50ppm〜1000ppmの範囲の酸素を含有する酸素雰囲気において600℃〜900℃で、20分間〜120分間の加熱時間だけ行われる。チップ積層体のうち導体近接領域10Aに相当する領域においては、コイル導体25の周回部25aに含まれるAg、Pd、Cu、Al又はこれらの合金からなる金属元素と軟磁性金属粒子30に含まれるFe及びそれ以外の金属元素との酸化還元電位の差により、軟磁性金属粒子30に含まれるFe及びそれ以外の金属元素の酸化が促進されると考えられる。コイル導体25の周回部25aに含まれる金属元素は、Ag又はCuとすることにより、軟磁性金属粒子30に含まれるFe及びそれ以外の金属元素とコイル導体25の周回部25aに含まれる金属元素との酸化還元電位の差を大きくすることができる。また、チップ積層体のうちマージン領域10Cに相当する領域においては、軟磁性金属粒子30に含まれるFe及びそれ以外の金属元素が雰囲気中の酸素により酸化される。チップ積層体のうちコア領域10Bに相当する領域においては、導体近接領域10Aに相当する領域及びマージン領域10Cに相当する領域に比べて酸素が不足しているため、酸化の進行が抑制される。このように、チップ積層体のうちコア領域10Bに相当する領域においては、導体近接領域10Aに相当する領域及びマージン領域10Cに相当する領域に比べて酸素が不足しているため、コア領域10Bに相当する領域では、導体近接領域10Aに相当する領域及びマージン領域10Cに相当する領域よりもFeの酸化物としてマグネタイトが多く生成されやすい。
【0046】
次に、このチップ積層体の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成する。外部電極21及び外部電極22には、必要に応じて、半田バリア層及び半田濡れ層の少なくとも一方が形成されてもよい。以上により、インダクタ1が得られる。
【0047】
上記の製造方法に含まれる工程の一部は、適宜省略可能である。インダクタ1の製造方法においては、本明細書において明示的に説明されていない工程が必要に応じて実行され得る。上記のインダクタ1の製造方法に含まれる各工程の一部は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。上記のインダクタ1の製造方法に含まれる各工程の一部は、可能であれば、同時に又は並行して実行され得る。
【実施例】
【0048】
続いて、本発明の実施例について説明する。まず、Fe―Si−Cr(Fe:95wt%、Si:3.5%、Cr:1.5wt%)の組成を有する軟磁性金属粒子30を準備した。
【0049】
続いて、この軟磁性金属粒子30の粒子群とポリビニルブチラールとを混練してスラリーを作成した。次に、このスラリーをダイコータなどの塗工機を用いて長尺状にシート化し、これを裁断することで、8μmの厚さを有する直方体形状の磁性体シートを複数作成した。次に、このようにして作成された磁性体シートの所定位置にビア導体用の貫通孔を設けた。次に、平均粒径の異なるAg粒子を2種類準備した。このうち、大径のAg粒子は平均粒径が10μmであり、小径のAg粒子は平均粒径が0.5μmであった。以下、この大径のAg粒子を粗粉Agもしくは単に粗粉と呼び、小径のAg粒子を微粉Agもしくは単に微粉と呼ぶ。これらを用いて、粗粉のみを含む(つまり、微粉を含まない)導電性ペースト、粗粉と微粉とを重量比で70:30の割合で混合した混合粉を含む導電性ペースト、粗粉と微粉とを重量比で50:50の割合で含む導電性ペーストを作成した。次に、当該貫通孔に粗粉Agのみを含む導電性ペーストを埋め込むとともに、当該磁性体シートと別の磁性体シートの表面に所定パターンで当該導電性ペーストを印刷した。このようにして導体パターンが形成された磁性体シートを、異なる磁性体シートに形成された導体パターン同士が貫通孔に埋め込まれた導電体を介して電気的に接続されるように積層して60℃にて仮圧着を行い第1の種類の積層体を得た。この第1の種類の積層体は、コイル導体として粗粉Agのみを含む。また、粗粉Agのみを含む導電性ペーストに代えて粗粉と微粉とを重量比で70:30の割合で含む導電性ペーストを使用し、導電性ペースト以外は上記と同じ工程を経て第2の種類の積層体を作成した。この第2の種類の積層体は、コイル導体として粗粉と微粉とを重量比で70:30の割合で含む。また、粗粉Agのみを含む導電性ペーストに代えて粗粉と微粉とを重量比で50:50の割合で含む導電性ペーストを使用し、導電性ペースト以外は上記と同じ工程を経て第3の種類の積層体を作成した。この第3の種類の積層体は、コイル導体として粗粉と微粉とを重量比で50:50の割合で含む。この3種類の積層体の各々を、長さ寸法が1.6mm、幅寸法が0.8mm、高さ寸法が1.0mmとなるように個片化した。
【0050】
次に、このようにして個片化されたチップ積層体に対して熱処理を行った。具体的には、コイル導体に粗粉を含む3個のチップ積層体のうちの1つに対して大気中で熱処理を行い、別の1つに対して雰囲気ガスとして酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いて熱処理を行い、最後の1つに対して雰囲気ガスとして窒素ガスを用いて熱処理を行った。コイル導体に粗粉と微粉とを重量比で70:30の割合で含む6個のチップ積層体のうち1つに対して大気中で熱処理を行い、別の一つに対して雰囲気ガスとして窒素ガスを用いて熱処理を行い、残りの4つに対して雰囲気ガスとして酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いて熱処理を行った。4つの積層体に対する加熱処理に用いた混合ガスの酸素濃度は、積層体ごとに変更した。同様に、コイル導体に粗粉と微粉とを重量比で50:50の割合で含む6個のチップ積層体のうち1つに対して大気中で熱処理を行い、別の一つに対して雰囲気ガスとして窒素ガスを用いて熱処理を行い、残りの4つに対して雰囲気ガスとして酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いて熱処理を行った。4つの積層体に対する加熱処理に用いた混合ガスの酸素濃度は、積層体ごとに変更した。
【0051】
熱処理が施された15個のチップ積層体の各々に対して、2つの外部電極の各々がコイル導体の端部と接続されるように取り付けた。すなわち、この2つの外部電極のうち一方の外部電極を導体パターンの一端と接続し、他方の外部電極を当該導体パターンの他端と接続し、15個のインダクタを得た。この15個のインダクタを試料番号1〜試料番号15とする。試料番号1〜試料番号3の試料が導体パターンに粗粉Agのみを含み、試料番号4〜試料番号9の試料が導体パターンに粗粉と微粉とを70:30の割合で含み、試料番号10〜試料番号15の試料導体パターンに粗粉Agと微粉Agとを重量比50:50の割合で含む。
【0052】
このようにして得られた試料番号1〜試料番号15の15個のインダクタの各々について、日本分光株式会社製のラマン分光光度計(NRS−3300)を用いてラマンスペクトルを測定した。具体的には、試料番号1〜試料番号15の各々を長さ方向の中心を通り高さ方向及び幅方向に平行な切断面で切断して断面を露出させ、この断面の2箇所に励起用レーザーを照射し、各測定領域からの散乱光をNRS−3300を用いて測定した。励起用レーザーの波長は488nm、スポットサイズの直径は50μmとした。測定領域の一方である測定領域Aは導体近接領域10Aに相当する領域であり、他方である測定領域Bはコア領域10Bに相当する領域である。具体的には、測定領域Aは、各試料の上記断面において導体パターンよりも外側にあり、導体パターンからの距離が50μmの位置を中心とする領域とした。測定領域Bは、各試料の上記断面において導体パターンの内側にあり各試料の幅方向の中央を中心とする領域とした。測定領域Bは、導体パターンからの距離が200μm以上離れている。以上により、15個の試料の各々について2つずつ、合計30通りのラマンスペクトルを得た。このようにして得られた15個の試料についての30通りのラマンスペクトルについて、波数712cm
-1付近に存在するピークのピーク強度(ピーク強度M)と波数1320cm
-1付近に存在するピークのピーク強度(ピーク強度H)との比であるピーク強度比(M/H)を求めた。
【0053】
また、試料番号1〜試料番号15のインダクタの各々について、LCRメーターを用いてインダクタンスを測定した。
【0054】
また、試料番号1〜試料番号15のインダクタの各々について、外部電極間に加える電圧を段階的に増加させ、ショートが発生したときの電圧を計測した。このショートが発生したときの電圧を導体パターン間の間隔で除した値を各試料の耐電圧とした。
【0055】
以上のようにして得られた試料番号1〜試料番号15の各々についてのピーク強度比、インダクタンス、及び耐電圧を表1にまとめた。表1において、測定領域AにおけるM/H比をM/H比(R
A)とし、測定領域BにおけるM/H比をM/H比(R
B)とした。
【表1】
【0056】
電源系のインダクタ等の大電流が流れる電子部品においては、インダクタンスが高く耐電圧(絶縁性能)が高いことが望ましい。耐電圧(絶縁性能)が低いと部品の内部にて短絡が発生しやすくなる。耐電圧が0.1V/μm以下であれば、電源系の回路に通常使用できない。表1においては、このような試料を使用不可能と判定し、判定欄の評価を「不可」と表記した。耐電圧は、1V/μm以上が望ましい。耐電圧は、透磁率(又はインダクタンス)とトレードオフの関係にあるため、要求性能に応じて耐電圧と透磁率又はインダクタンスとのバランスを取る必要がある。試料番号1から15のインダクタにおいては、インダクタンスが200nH以上で耐電圧が1.0V/μmよりも大きければ実用可能である。そこで、表1においては、インダクタンスが200nH以上で耐電圧が1.0V/μmよりも大きい試料について判定欄の評価を「可」又は「良」とした。インダクタンスが270nH以上でかつ耐電圧が1.0V/μmよりも大きい試料は、インダクタンス及び耐電圧がともに優れている。表1においては、インダクタンスが270nH以上でかつ耐電圧が1.0V/μmよりも大きい試料について、判定欄の評価を「良」とした。判定欄に「良」と記載されている試料が本発明の実施例である。
【0057】
表1に示されている測定結果から、導体近傍領域10Aに相当する測定領域AにおけるM/Hピーク比R
Aとコア領域10Bに相当する測定領域BにおけるM/Hピーク比R
Bがともに1.0以上であり、コア領域10Bに相当する測定領域BにおけるM/Hピーク比R
Bと測定領域AにおけるM/Hピーク比R
Aとの比(すなわち、R
B/R
A)が1.1以上であれば、インダクタンスが270nH以上で耐電圧が1.0V/μmよりも大きくなることが分かった。逆に、測定領域AにおけるM/Hピーク比R
Aとコア領域10Bに相当する測定領域BにおけるM/Hピーク比R
Bがともに1.0未満の場合にはインダクタンスが270nHよりも大幅に低いことが分かる。また、R
B/R
Aが1.1未満の場合には、耐電圧が小さくなり、概ね0.1V/μmとなることが分かる。このように、測定領域AにおけるM/Hピーク比R
Aとコア領域10Bに相当する測定領域BにおけるM/Hピーク比R
Bがともに1.0以上であり、測定領域BにおけるM/Hピーク比R
Bと測定領域AにおけるM/Hピーク比R
Aとの比(R
B/R
A)が1.1より大きいときに、望ましい高透磁率及び高絶縁性が実現される。
【0058】
コイル導体が粗粉及び微粉を含む場合、耐電圧(絶縁性能)が向上する。コイル導体においては微粉の割合が多くなると耐電圧(絶縁性能)がより向上する。しかしながら、粗粉と微粉の重量比が50:50よりも微粉の割合が多くなると、コイル導体を磁性体シートへ形成するときに当該磁性体シートの磁性粒子間の間隙部にAg微粉が入り込みやすくなり、この間隙部に入り込んだAg微粉によりコイル導体の導体パターン間で短絡を引き起こしやすくなってしまう。このため、コイル導体における微粉の含有比率は、粗粉と微粉との重量比が50:50よりも多くならないようにすることが望ましい。コイル導体における微粉の含有比率が高くなると耐電圧(絶縁性能)が高くなる理由は、微粉の含有比率が高いほどコイル導体間の磁性膜中の磁性粒子とコイル導体の導電性の粒子との接触性が向上し、この接触がヘマタイトの生成を促進しているためと考えられる。
【0059】
次に、上記の実施形態による作用効果について説明する。上記の一実施形態による磁性基体10は、コイル導体25の周回部25aから基準距離d以内にある導体近接領域10Aと、この導体近接領域10Aの内側にあるコア領域10Bと、を有しており、導体近接領域10Aにおけるピーク強度比である第1ピーク強度比とコア領域10Bにおけるピーク強度比である第2ピーク強度比がともに1.0以上であり、コア領域10Bにおけるピーク強度比である第2ピーク強度比と上記第1ピーク強度比との比が1.1より大きくなっている。このように、導体近接領域10Aにおけるピーク強度比である第1ピーク強度比とコア領域10Bにおけるピーク強度比である第2ピーク強度比がともに1.0以上とすることで、コイル導体25から生じる磁束が通る導体近接領域10Aとコア領域10Bの両方の領域においてヘマタイトよりもマグネタイトの比率が高くなる。このため、導体近接領域10Aとコア領域10Bの両方の領域において透磁率を高めることができるので、インダクタ1のインダクタンスを向上させることができる。また、コア領域10Bにおけるピーク強度比である第2ピーク強度比と上記第1ピーク強度比との比が1.1より大きいので、コア領域10Bの透磁率を導体近接領域10Aの透磁率よりも高くし、且つ、導体近接領域10Aにおけるヘマタイトの比率を相対的に高めて耐電圧(絶縁性能)を確保することができる。これによりインダクタ1において高インダクタンスと高絶縁性とを両立させることができる。
【0060】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。