【解決手段】永久磁石の製造方法は、重希土類元素及びバインダを含む拡散材シート4を用いる。永久磁石の製造方法は、磁石基材2及び拡散材シート4のうち少なくとも一方の表面に溶剤を付着させる付着工程と、溶剤が付着した表面において拡散材シート4が磁石基材2に接するように、磁石基材2の表面の少なくとも一部を、拡散材シート4で覆う被覆工程と、被覆工程後、拡散材シート4及び磁石基材2を加熱することにより、重希土類元素を磁石基材2内へ拡散させる拡散工程と、を備える。磁石基材2は、希土類元素R、遷移金属元素T、及びホウ素を含む。少なくとも一部の希土類元素Rが、ネオジムである。少なくとも一部の遷移金属元素Tが、鉄である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
拡散材シートが磁石基材の表面に配置される場合、拡散材シートが磁石基材の表面に均一に密着し難く、拡散材シートと磁石基材の表面との間に隙間が形成され易い。また拡散材シートが重ねられた磁石基材のハンドリングに伴って、拡散材シートの位置が所定の位置からずれたり、拡散材シートが磁石基材の表面から剥離したりする。これらの問題により、拡散材シート中の重希土類元素が磁石基材の表面へ均一に拡散し難い。その結果、R‐T‐B系永久磁石の組成及び磁気特性がばらつき、R‐T‐B系永久磁石の保磁力が十分に向上しない。上記の問題は、磁石基材の表面が曲面である場合に顕著である。
【0008】
上記特許文献1及び2に記載の製造方法では、磁石基材の表面を拡散材シートで覆った後、溶剤(例えばエタノール)が拡散材シートの上部から拡散材シートへ噴霧される。つまり、磁石基材の表面に接していない拡散材シートの表面へ溶剤が噴霧される。その結果、拡散材シート中のバインダの一部が溶解して、拡散材シートが磁石基材の表面に密着する。したがって、拡散材シート及び磁石基材のハンドリングが容易になる。
【0009】
拡散材シートを均一に磁石基材の表面へ密着させるためには、磁石基材の表面に接する拡散材シートの表面においてバインダが溶解する必要がある。しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の製造方法では、磁石基材を覆う拡散材シートの上部から溶剤が拡散材シートの表面へ噴霧されるので、溶剤が拡散材シートの表面からその裏面まで均一に浸透し難い。つまり、溶剤が、拡散材シートと磁石基材との界面へ到達し難い。拡散材シートへ噴霧される溶剤が少ないほど、溶剤が拡散材シートの表面から裏面まで均一に浸透し難い。その結果、磁石基材に接する拡散材シートの表面において、樹脂成分が均一に溶解し難い。したがって、溶剤を拡散材シートの表面からその裏面まで均一に浸透させるために、多量の溶剤を拡散材シートへ噴霧する必要がある。拡散材シートが厚いほど、より多量の溶剤が必要となる。しかし、拡散材シートへ噴霧される溶剤が多いほど、拡散材シートが過度に変形して、拡散材シートの厚みが不均一になる。その結果、重希土類元素が磁石基材の表面へ均一に拡散し難い。また拡散材シートへ噴霧される溶剤が多いほど、拡散材シートに含まれる拡散材の一部が溶剤中に分散し易く、溶剤の蒸発(拡散材シートの乾燥)に伴って拡散材が凝集し易い。その結果、重希土類元素が磁石基材の表面へ均一に拡散し難い。
【0010】
上述の理由から、上記特許文献1及び2に記載の製造方法では、拡散材シートが均一に磁石基材の表面に密着し難く、重希土類元素が磁石基材の表面へ均一に拡散し難い。上記特許文献1及び2に記載の製造方法の問題を解決するためには、拡散材シートへ噴霧される溶剤の量を、狭い許容範囲(tоlerence)内に管理する必要がある。しかし、溶剤の量の許容範囲は拡散材シートの組成及び厚みによって変動する。また拡散材シートが厚いほど許容範囲は狭い。したがって、磁石基材を覆う拡散材シートの上部から溶剤が噴霧される場合、溶剤の量を許容範囲内に制御することは容易でない。このため、溶剤が拡散材シートへ噴霧された後、上述のような拡散材シートの状態のばらつきが生じ易く、最終的にR‐T‐B系永久磁石の磁気特性のばらつきが大きくなってしまう。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、重希土類元素を磁石基材の内部へ均一に拡散させることができるR‐T‐B系永久磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面に係るR‐T‐B系永久磁石の製造方法は、重希土類元素及びバインダを含む拡散材シートを用いるR‐T‐B系永久磁石の製造方法であって、磁石基材及び拡散材シートのうち少なくとも一方の表面に溶剤を付着させる付着工程と、溶剤が付着した表面において拡散材シートが磁石基材に接するように、磁石基材の表面の少なくとも一部を、拡散材シートで覆う被覆工程と、被覆工程後、拡散材シート及び磁石基材を加熱することにより、重希土類元素を磁石基材内へ拡散させる拡散工程と、を備え、磁石基材が、希土類元素R、遷移金属元素T、及びホウ素を含み、少なくとも一部の希土類元素Rが、ネオジムであり、少なくとも一部の遷移金属元素Tが、鉄である。
【0013】
R‐T‐B系永久磁石の製造方法は、被覆工程後、拡散材シート及び磁石基材を加熱炉内へ搬送する搬送工程を更に備えてよく、加熱炉内において拡散工程が実施されてよい。
【0014】
R‐T‐B系永久磁石の製造方法は、被覆工程後、溶剤の少なくとも一部を除去する乾燥工程を更に備えてよく、乾燥工程後、拡散工程が実施されてよい。
【0015】
R‐T‐B系永久磁石の製造方法は、乾燥工程後、拡散材シート及び磁石基材を加熱炉内へ搬送する搬送工程を更に備えてよく、加熱炉内において拡散工程が実施されてよい。
【0016】
R‐T‐B系永久磁石の製造方法は、被覆工程後、磁石基材の表面の少なくとも一部を覆う拡散材シートを加熱することにより、バインダを軟化させる加熱工程と、加熱工程後、拡散材シートを冷却することにより、バインダを硬化させる冷却工程と、を更に備えてよく、冷却工程後、拡散工程が実施されてよい。
【0017】
R‐T‐B系永久磁石の製造方法は、乾燥工程後、磁石基材の表面の少なくとも一部を覆う拡散材シートを加熱することにより、バインダを軟化させる加熱工程と、加熱工程後、拡散材シートを冷却することにより、バインダを硬化させる冷却工程と、を更に備えてよく、冷却工程後、拡散工程が実施されてよい。
【0018】
R‐T‐B系永久磁石の製造方法は、冷却工程後、拡散材シート及び磁石基材を加熱炉内へ搬送する搬送工程を更に備えてよく、加熱炉内において拡散工程が実施されてよい。
【0019】
加熱工程では、拡散材シート及び磁石基材のうち少なくとも一方を加圧することにより、拡散材シート及び磁石基材を互いに密着させてよい。
【0020】
冷却工程では、拡散材シート及び磁石基材のうち少なくとも一方を加圧することにより、拡散材シート及び磁石基材を互いに密着させてよい。
【0021】
フィルムとフィルムに重なる拡散材シートとを含む積層体が用いられてよく、被覆工程では、拡散材シートが磁石基材の表面に接するように、磁石基材の表面の少なくとも一部が積層体で覆われてよい。
【0022】
フィルムとフィルムに重なる拡散材シートとを含む積層体が用いられてよく、拡散材シートの第一表面は、積層体においてフィルムに接しない表面であり、拡散材シートの第二表面は、積層体において前記フィルムに接する表面であり、被覆工程前に、フィルムが拡散材シートから剥離及び除去されてよく、被覆工程では、第二表面が磁石基材の表面に接するように、磁石基材の表面の少なくとも一部が拡散材シートで覆われてよい。
【0023】
フィルムとフィルムに重なる拡散材シートとを含む積層体が用いられてよく、拡散材シートの第一表面は、積層体において前記フィルムに接しない表面であり、拡散材シートの第二表面は、積層体においてフィルムに接する表面であり、被覆工程前に、フィルムが拡散材シートから剥離及び除去されてよく、被覆工程では、第一表面が磁石基材の表面に接するように、磁石基材の表面の少なくとも一部が拡散材シートで覆われてよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、重希土類元素を磁石基材の内部へ均一に拡散させることができるR‐T‐B系永久磁石の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態が説明される。図面において、同等の構成要素には同等の符号が付される。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。以下に記載の「永久磁石」はいずれも、「R‐T‐B系永久磁石」を意味する。
【0027】
[原料合金の調製工程]
原料合金の調製工程では、永久磁石を構成する各元素を含む金属原料から、合金材が作製される。原料合金は、ストリップキャスティング法、ブックモールド法、又は遠心鋳造法によって作製されてよい。金属原料は、例えば、希土類元素の単体(金属単体)、希土類元素を含む合金、純鉄、フェロボロン、又はこれらを含む合金であってよい。これらの金属原料は、所望の磁石基材の組成に一致するように秤量される。原料合金として、組成が異なる二種以上の合金が作製されてもよい。
【0028】
原料合金は、少なくとも希土類元素R、遷移金属元素T、及びホウ素(B)を含む。
【0029】
原料合金に含まれる少なくとも一部のRは、ネオジム(Nd)である。永久磁石は、他のRとして、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)からなる群より選ばれる少なくとも一種を更に含んでよい。原料合金はPrを含んでよい。原料合金はPrを含まなくてもよい。原料合金はTb及びDyのうち一方又は両方を含んでよい。原料合金はTb及びDyのうち一方又は両方を含まなくてもよい。
【0030】
原料合金に含まれる少なくとも一部の遷移金属元素Tは、鉄(Fe)である。Tは、Fe及びコバルト(Co)であってもよい。全てのTがFeであってよい。全てのTが、Fe及びCoであってよい。原料合金は、Fe及びCo以外の他の遷移金属元素を更に含んでよい。以下に記載のTは、Feのみ、又はFe及びCoを意味する。
【0031】
原料合金は、R、T及びBに加えて他の元素を更に含んでよい。例えば、原料合金は、他の元素として、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、塩素(Cl)、硫黄(S)及びフッ素(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0032】
[粉砕工程]
粉砕工程では、上記の原料合金を非酸化的雰囲気中で粉砕することにより、合金粉末が調製されてよい。原料合金は、粗粉砕工程及び微粉砕工程の二段階で粉砕されてよい。粗粉砕工程では、例えば、スタンプミル、ジョークラッシャー、又はブラウンミル等の粉砕方法が用いられてよい。粗粉砕工程は、不活性ガス雰囲気中で行われてよい。水素を原料合金へ吸蔵させた後、原料合金が粉砕されてよい。つまり、粗粉砕工程として水素吸蔵粉砕が行われてもよい。粗粉砕工程においては、原料合金は、その粒径が数百μm程度となるまで粉砕されてよい。粗粉砕工程に続く微粉砕工程では、粗粉砕工程を経た原料合金は、その平均粒径が数μmとなるまで更に粉砕されてよい。微粉砕工程では、例えば、ジェットミルが用いられてよい。原料合金は、一段階の粉砕工程のみによって粉砕されてもよい。例えば、微粉砕工程のみが行われてもよい。複数種の原料合金が用いられる場合、各原料合金が別々に粉砕された後、各原料合金が混合されてもよい。合金粉末は、脂肪酸、脂肪酸エステル及び脂肪酸の金属塩(金属石鹸)からなる群より選ばれる少なくとも一種の潤滑剤(粉砕助剤)を含んでいてよい。換言すれば、原料合金は粉砕助剤と共に粉砕されてよい。
【0033】
[成形工程]
成形工程では、上記の合金粉末を磁場中で成形することにより、磁場に沿って配向した合金粉末を含む成形体が得られてよい。例えば、金型内の合金粉末に磁場を印加しながら、合金粉末を金型で加圧することにより、成形体が得られてよい。金型が合金粉末に及ぼす圧力は、20MPa以上300MPa以下であってよい。合金粉末に印加される磁場の強さは、950kA/m以上1600kA/m以下であってよい。
【0034】
[焼結工程]
焼結工程では、上述の成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結することにより、焼結体が得られてよい。焼結条件は、目的とする永久磁石の組成、原料合金の粉砕方法及び粒度等に応じて、適宜設定されてよい。焼結温度は、例えば、1000℃以上1200℃以下であってよい。焼結時間は、1時間以上20時間以下であってよい。
【0035】
[時効処理工程]
時効処理工程では、焼結体が焼結温度よりも低温で加熱されてよい。時効処理工程では、焼結体が真空又は不活性ガス雰囲気中で加熱されてよい。後述される拡散工程が時効処理工程を兼ねていてよい。その場合、拡散工程とは別の時効処理工程は実施されなくてよい。時効処理工程は、第一時効処理と、第一時効処理に続く第二処理とから構成されていてよい。第一時効処理は、焼結体が700℃以上900℃以下の温度で加熱されてよい。第一時効処理の時間は、1時間以上10時間以下であってよい。第二時効処理では、焼結体が500℃以上700℃以下の温度で加熱されてよい。第二時効処理の時間は、1時間以上10時間以下であってよい。
【0036】
以上の工程により、焼結体が得られる。焼結体は、後述される拡散工程に用いられる磁石基材である。磁石基材は、互いに焼結された複数の主相粒子を備える。主相粒子は、少なくともNd、Fe及びBを含む。主相粒子は、R
2T
14Bの結晶を含んでよく、少なくとも一部のRがNdであってよく、少なくとも一部のTがFeであってよい。主相粒子の一部又は全体は、R
2T
14Bの結晶(単結晶又は多結晶)のみからなっていてよい。R
2T
14Bは、例えば、Nd
2Fe
14Bであってよい。Nd
2Fe
14B中のNdの一部が、Pr、Tb及びDyのうち少なくとも一種で置換されていてよい。Nd
2Fe
14B中のFeの一部が、Coで置換されていてよい。主相粒子は、R、T及びBに加えて上記の元素(原料合金に含まれ得る元素)を含んでもよい。磁石基材は、主相粒子の間に形成された粒界を備える。磁石基材は、粒界として複数の粒界三重点を備える。粒界三重点とは、少なくとも三つの主相粒子に囲まれた粒界である。磁石基材は、粒界として複数の二粒子粒界も備える。二粒子粒界は、隣り合う二つの主相粒子の間に位置する粒界である。粒界は、少なくともNdを含んでよく、粒界中のNdの含有量は主相粒子中のNdの含有量よりも大きくてよい。つまり粒界はNd‐rich相を含んでよい。粒界は、Ndに加えて、Fe及びBのうち少なくとも一種を含んでよい。
【0037】
主相粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、1.0μm以上10.0μm以下であってよい。磁石基材における主相粒子の体積の割合の合計値は、特に限定されないが、例えば、75体積%以上100体積%未満であってよい。
【0038】
拡散工程に用いられる磁石基材は予め所定の寸法及び形状に加工されてよい。また、磁石基材の表面の清浄化を目的として、酸洗浄等の前処理が行われてよい。
【0039】
[付着工程、被覆工程、加熱工程、冷却工程及び拡散工程]
(付着工程、被覆工程、及び拡散工程)
本実施形態に係る永久磁石の製造方法では、少なくとも重希土類元素(拡散材)及びバインダを含む拡散材シートが用いられる。重希土類元素は、例えば、Tb及びDyのうち少なくとも一つの元素であってよい。上述の通り、磁石基材2は、希土類元素R、遷移金属元素T、及びホウ素を含む。少なくとも一部の希土類元素Rは、ネオジムであり、少なくとも一部の遷移金属元素Tは、鉄である。
図1中の(a)は、フィルム6とフィルム6に重なる拡散材シート4とを含む積層体8の断面を示す。
図2中の(a)は、拡散材シート4及びフィルム6其々の断面を示す。これらの断面は、拡散材シート4及びフィルム6其々の表面に垂直である。
図1中の(b)及び
図1中の(c)は、拡散材シート4、フィルム6及び磁石基材2其々の断面を示す。これらの断面は、拡散材シート4、フィルム6及び磁石基材2其々の表面に垂直である。
図2中の(b)及び
図2中の(c)は、拡散材シート4及び磁石基材2其々の断面を示す。これらの断面は、拡散材シート4及び磁石基材2其々の表面に垂直である。
【0040】
本実施形態に係る永久磁石の製造方法は、上記の工程に加えて、少なくとも付着工程、被覆工程及び拡散工程を備える。付着工程後に被覆工程が実施され、被覆工程後に拡散工程が実施される。
【0041】
付着工程では、磁石基材2及び拡散材シート4のうち少なくとも一方の表面に溶剤を付着させる。例えば、
図1中の(a)、
図1中の(b)および
図1中の(c)の場合、溶剤は拡散材シート4の第一表面4aに付着してよい。溶剤は、拡散材シート4の第一表面4aに対面する磁石基材2の表面に付着してもよい。溶剤が、拡散材シート4の第一表面4a及び磁石基材2の表面の両方に付着してもよい。
【0042】
被覆工程では、溶剤が付着した表面において拡散材シート4が磁石基材2に接するように、磁石基材2の表面の少なくとも一部が拡散材シート4で覆われる。被覆工程により、拡散材シート4が磁石基材2の表面に配置される。
【0043】
拡散工程では、拡散材シート4で覆われた磁石基材2が加熱される。拡散工程における拡散材シート4及び磁石基材2の加熱により、拡散材シート4中の重希土類元素が磁石基材2の表面から磁石基材2の内部へ拡散する。磁石基材2の内部では、重希土類元素が、粒界を介して主相粒子の表面近傍へ拡散する。主相粒子の表面近傍において、一部の軽希土類元素(Nd等)が重希土類元素で置換される。重希土類元素が主相粒子の表面近傍及び粒界に局在することにより、異方性磁界が粒界の近傍において局所的に大きくなり、磁化反転の核が粒界の近傍において発生し難くなる。その結果、永久磁石の保磁力が増加する。
【0044】
永久磁石の製造方法は、被覆工程後、溶剤を除去する乾燥工程を更に備えてよい。乾燥工程後、拡散工程が実施されてよい。乾燥工程では、溶剤の少なくとも一部が拡散材シート4及び磁石基材2から除去される。乾燥工程では、全ての溶剤が除去されてよい。乾燥工程において拡散材シート4及び磁石基材2を乾燥することにより、拡散材シート4が磁石基材2の表面に固定される。また拡散材シート4の乾燥により、拡散材シート4の保形力及び機械的強度が高まる。したがって、乾燥工程を実施することにより、拡散材シート4の位置ずれ、磁石基材2からの拡散材シート4の剥離、及び拡散材シート4の破損を抑制し易い。乾燥工程の方法は特に限定されない。例えば、拡散材シート4及び磁石基材2が熱風によって乾燥されてよい。熱風により、拡散材シート4中のバインダが軟化し易いので、拡散材シート4が磁石基材2の表面に更に密着し易い。拡散材シート4及び磁石基材2が常温の雰囲気中で乾燥されてもよい。乾燥工程前に実施される被覆工程では、拡散材シート4を磁石基材2の表面に対して軽く押し付けながら、拡散材シート4を磁石基材2の表面に貼り付けてよい。このような貼付方法により、拡散材シート4と磁石基材2との間から気泡が追い出され易く、拡散材シート4が磁石基材2の表面に密着し易い。拡散材シート4の位置ずれ、破損及び過度の変形を抑制するためには、被覆工程後、未乾燥の拡散材シート4を加圧しないほうがよい。同様の理由から、拡散材シート4が乾燥するまで、拡散材シート4及び磁石基材2を動かさないほうがよい。被覆工程後に乾燥工程で溶剤が除去されることにより、付着工程において溶剤へ溶解していたバインダが乾燥工程中に再析出し、再析出したバインダを介して拡散材シート4と磁石基材2とが接着され、拡散材シート4が磁石基材2の表面へ強固に固定される。その結果、乾燥工程以降のハンドリングに伴う拡散材シート4の位置ずれが更に抑制され、磁石基材2の表面からの拡散材シート4の剥離も更に抑制される。乾燥工程後に実施される拡散工程においても、拡散材シート4が磁石基材2の表面に均一に強固に密着している。したがって、拡散材シート4中の重希土類元素が磁石基材2の表面へ更に均一に拡散し易い。その結果、永久磁石の組成及び磁気特性がよりばらつき難くなる。
【0045】
付着工程では、溶剤が磁石基材2の表面のみに付着してよい。溶剤が拡散材シート4の表面のみに付着してもよい。溶剤が、磁石基材2の表面及び拡散材シート4の表面の両方に付着してもよい。付着工程では、磁石基材2の表面のうち拡散材シート4に接する部分の全体に溶剤を付着させることが好ましい。その結果、被覆工程において、拡散材シート4が磁石基材2の表面に均一に密着し易い。同様の理由から、付着工程では、拡散材シート4の表面のうち磁石基材2に接する部分の全体に溶剤を付着させることが好ましい。磁石基材2の表面のうち拡散材シート4に接する面は、「接触面」と表記される。拡散材シート4の表面のうち磁石基材2に接する面も、「接触面」と表記される。磁石基材2の表面のうち接触面以外の面は、「非接触面」と表記される。磁石基材2の表面のうち接触面以外の面も、「非接触面」と表記される。
【0046】
付着工程では溶剤が接触面に直接付着するので、拡散材シート4中のバインダが接触面に沿って溶解する。換言すれば、拡散材シート4の接触面が軟化する。その結果、拡散材シート4が磁石基材2の表面における凹部及び凸部に沿って変形して、拡散材シート4と磁石基材2の表面との間の隙間が減少する。つまり、被覆工程において拡散材シート4が磁石基材2の表面に均一に密着する。その結果、被覆工程以降のハンドリングに伴う拡散材シート4の位置ずれが抑制され、磁石基材2の表面からの拡散材シート4の剥離も抑制される。被覆工程後に実施される拡散工程においても、拡散材シート4が磁石基材2の表面に均一に密着している。したがって、拡散材シート4中の重希土類元素が磁石基材2の表面へ均一に拡散し易い。その結果、永久磁石の組成及び磁気特性がばらつき難く、永久磁石の保磁力が十分に向上する。
【0047】
磁石基材2の拡散材シート4で覆われる表面は、曲面であってよい。被覆工程前に付着工程が実施されるため、拡散材シート4が曲面へ均一に密着し易く、曲面における拡散材シート4の位置ずれが抑制され易く、曲面からの拡散材シート4の剥離が抑制され易い。被覆工程前に付着工程が実施されない場合、拡散材シート4が曲面へ均一に密着し難く、曲面において拡散材シート4の位置がずれ易く、拡散材シート4が曲面から剥離し易い。
【0048】
上記特許文献1及び2に記載の方法では、溶剤が拡散材シート4の接触面の裏側へ噴霧される。つまり、溶剤が拡散材シート4の非接触面へ噴霧される。溶剤は非接触面から接触面まで均一に浸透し難いので、接触面においてバインダが均一に溶解し難い。したがって、拡散材シート4が磁石基材2の表面に均一に密着し難い。つまり、拡散材シート4と磁石基材2の表面との間の隙間が形成され易い。拡散材シート4の表面のうち磁石基材2の表面に接していない部分においては、重希土類元素が拡散材シート4から磁石基材2へ拡散し難い。したがって、上記特許文献1及び2に記載の方法では、拡散材シート4中の重希土類元素が磁石基材2の表面へ均一に拡散し難い。その結果、重希土類元素が磁石基材2の内部へ十分に拡散せず、永久磁石の組成及び磁気特性がばらつき、R‐T‐B系永久磁石の保磁力が十分に向上しない。
【0049】
上記特許文献1及び2に記載の方法とは対照的に、本実施形態の付着工程では、溶剤が接触面に直接付着する。したがって、被覆工程では、拡散材シート4中のバインダが接触面に沿って均一に溶解する。その結果、拡散材シート4が磁石基材2の表面に均一に密着する。また本実施形態の付着工程では、溶剤を非接触面から接触面へ浸透させる必要がないので、上記特許文献1及び2に記載の方法に比べて溶剤の量が低減される。その結果、拡散材シート4の過度の変形が抑制され、拡散材シート4の厚みが均一に維持され易い。また本実施形態の付着工程では、溶剤の量が低減されるので、拡散材シート4に含まれる拡散材の一部が溶剤中に分散し難い。その結果、溶剤の蒸発(拡散材シート4の乾燥)に伴う拡散材の凝集が抑制される。これらの理由により、拡散工程では重希土類元素が磁石基材の表面へ均一に拡散することができる。また本実施形態の付着工程では、溶剤を非接触面から接触面へ浸透させる必要がないので、溶剤の量を狭い許容範囲内で管理する必要がない。この点において、永久磁石の磁気特性のばらつきが抑制される。
【0050】
本実施形態では、溶剤が接触面に直接付着するので、拡散材シート4中のバインダが接触面に沿って均一且つ確実に溶解し易い。したがって、拡散材シート4中のバインダの含有量が従来の拡散材シートに比べて少ない場合であっても、拡散材シート4が磁石基材2の表面に均一に密着することができる。したがって、拡散工程前の脱バインダ処理に要する時間を短縮することが可能である。この点において、永久磁石の生産性が向上する。
【0051】
付着工程において溶剤が磁石基材2の接触面に付着する場合、溶剤が磁石基材2の接触面へ均一に付着し易く、溶剤の付着状態を管理し易い。
【0052】
付着工程において溶剤が磁石基材2の接触面に付着する場合、被覆工程では、溶剤を介して磁石基材2の表面を拡散材シート4で覆うことができる。溶剤の存在により、溶剤の界面張力に因る付着力が磁石基材2と拡散材シート4の間に働くが、拡散材シート4は固定されない。したがって、磁石基材2の表面を拡散材シート4で覆った後、拡散材シート4を磁石基材2の表面上において移動させることができる。つまり、拡散材シート4を仮に磁石基材2の表面に配置した後、拡散材シート4の位置の微調整を行うことができる。拡散材シート4の位置の調整後に溶剤が蒸発することにより、拡散材シート4が磁石基材2の表面に固定される。溶剤が蒸発し易いほど、拡散材シート4は短時間で磁石基材2の表面に固定される。しがって、拡散材シート4の位置を調整する時間を確保するためには、溶剤の沸点が高いことが好ましい。例えば、溶剤の沸点は、100℃より高くてよい。
【0053】
付着工程において溶剤が拡散材シート4の接触面に付着する場合も、拡散材シート4を磁石基材2の表面に配置した後、拡散材シート4の位置を調整することができる。ただし、溶剤が拡散材シート4の接触面に付着する場合、溶剤の組成又は量に依っては、拡散材シート4の保形力が低下し、ハンドリングに伴って拡散材シート4が破損する可能性がある。拡散材シート4の破損を抑制するためには、フィルム6とフィルム6に重なる拡散材シート4とを含む積層体8が用いられてよい。拡散材シート4の破損がフィルム6によって抑制される。つまり、フィルム6が拡散材シート4を保護する。被覆工程又は乾燥工程の後、フィルム6が拡散材シート4から剥離されてよい。必要に応じて、拡散材シート4がフィルム6から別のフィルム(第二フィルム)に転写されてよい。例えば、拡散材シート4がフィルム6から別のフィルム(第二フィルム)に転写された後、付着工程、被覆工程及び乾燥工程が実施されてよい。被覆工程又は乾燥工程の後、第二フィルムが拡散材シート4から剥離されてよい。
【0054】
付着工程において溶剤が拡散材シート4の接触面に付着する場合、拡散材シート4中のバインダの膨潤に伴って、拡散材シート4の可撓性が向上する。その結果、被覆工程にいて拡散材シート4が曲率の小さい曲面を有する磁石基材2の表面に沿って変形し易く、拡散材シート4が磁石基材2の表面に密着し易い。
【0055】
付着工程において溶剤を接触面に付着させる方法は限定されない。例えば、溶剤が接触面に塗布されてよい。溶剤が接触面に噴霧されてもよい。溶剤は、バインダが溶解する液体である限り限定されない。例えば、溶剤は有機溶剤であってよい。溶剤は、例えば、エタノール、ブタノール、オクタノール、メチルエチルケトン、キシレン、ブチルカルビトール、ターピネオール、及びジヒドロターピネオールならなる一種の化合物であってよい。複数種の溶剤が用いられてよい。
【0056】
被覆工程では、溶剤が染み込んだ拡散材シート4の接触面が磁石基材2の表面を覆ってよい。被覆工程では、溶剤が磁石基材2と拡散材シートの間に配置されるように、磁石基材2の表面が、拡散材シート4で覆われてもよい。つまり、溶剤から形成された膜又は層が、磁石基材2と拡散材シートの間に存在してよい。
【0057】
被覆工程では、磁石基材2の表面の一部のみが、拡散材シート4で覆われてよい。被覆工程では、磁石基材2の表面全体が、拡散材シート4で覆われてもよい。磁石基材2が複数の面を有する場合、被覆工程では、磁石基材2の一つの面のみが拡散材シート4で覆われてもよい。磁石基材2が複数の面を有する場合、被覆工程では、磁石基材2の複数の面が拡散材シート4で覆われてもよい。例えば、磁石基材2の主面と主面の裏面の両面が拡散材シート4で覆われてよい。磁石基材2が複数の面を有する場合、被覆工程では、磁石基材2の全ての面が拡散材シート4で覆われてもよい。
【0058】
拡散工程では、拡散材シート4及び磁石基材2が加熱炉内において加熱されてよい。拡散工程における磁石基材2の酸化を抑制するために、拡散材シート4が密着した磁石基材2が加熱炉内に設置された後、加熱炉内の雰囲気は真空又はアルゴン(Ar)等の不活性ガスになる。加熱炉内の雰囲気の制御に伴う排気及び/又は不活性ガスの導入により、加熱炉内の気圧が変化する。気圧の変化に伴って、加熱炉内には気流が生じる。仮に上記の付着工程が実施されていない場合、加熱炉内で生じた気流の影響によって、拡散材シート4が磁石基材2の表面から剥離し易い。しかし、本実施形態では付着工程が被覆工程前に実施されるので、拡散材シート4が磁石基材2の表面に均一に密着している。その結果、気流の発生に伴う拡散材シート4の剥離が抑制され、拡散材シート4中の重希土類元素が磁石基材2の表面へ均一に拡散し易い。
【0059】
拡散工程における加熱炉内の雰囲気の温度は、例えば、800℃以上950℃以下であってよい。上記の温度において拡散材シート4及び磁石基材2が加熱される時間は、1時間以上50時間以下であってよい。上記の温度において拡散材シート4及び磁石基材2を加熱する前に、上記の温度よりも低温での拡散材シート4の加熱により、拡散材シート4中のバインダを焼失させてよい。つまり拡散工程の前段階として、脱バインダ処理が行われてよい。
【0060】
永久磁石の製造方法は、被覆工程後、拡散材シート及び磁石基材を加熱炉内へ搬送する搬送工程を更に備えてよく、加熱炉内において拡散工程が実施されてよい。搬送の過程において、拡散材シート4が密着した磁石基材2が、倉庫内で一時的に保管されてよい。搬送工程において拡散材シート4が他の物体と接触することにより、力が拡散材シート4に作用する可能性がある。また、搬送時の振動及び/又は加速度により、力が拡散材シート4に作用する可能性もある。仮に付着工程が実施されない場合、搬送工程の途中で力が拡散材シート4に作用することにより、拡散材シート4の位置が所定の位置からずれたり、拡散材シート4が磁石基材2の表面から剥離したりする。しかし、付着工程が被覆工程前に実施されることにより、搬送工程における拡散材シート4の位置ずれ及び剥離が抑制される。
【0061】
乾燥工程の後、搬送工程が実施されてよい。乾燥工程が搬送工程前に実施されることにより、搬送工程における拡散材シート4の位置ずれ及び剥離が更に抑制され易い。乾燥工程では、拡散材シート4を乾燥しながら、拡散材シート4及び磁石基材2が加熱炉内へ搬送されてよい。換言すれば、搬送工程が乾燥工程を兼ねていてよい。
【0062】
(加熱工程、及び冷却工程)
永久磁石の製造方法は、付着工程、被覆工程及び拡散工程に加えて、加熱工程及び冷却工程を更に備えてよい。ただし、加熱工程及び冷却工程は必須の工程ではない。つまり加熱工程及び冷却工程が実施されない場合であっても、本発明の効果を得ることができる。永久磁石の製造方法が、加熱工程及び冷却工程を更に備える場合、加熱工程は被覆工程又は乾燥工程の後で実施され、冷却工程は加熱工程後に実施され、拡散工程は冷却工程後に実施される。加熱工程が実施される場合、乾燥工程は実施されなくてもよい。つまり、加熱工程が乾燥工程を兼ねてよい。乾燥工程及び加熱工程の両方が実施されてもよい。
【0063】
加熱工程では、磁石基材2の表面を覆う拡散材シート4を加熱することにより、バインダを軟化させる。バインダの軟化により、拡散材シート4が磁石基材2の表面における凹部及び凸部に沿って変形して、拡散材シート4が磁石基材2の表面に均一に密着する。つまり、バインダの軟化により、拡散材シート4と磁石基材2の表面との間の隙間が更に減少する。したがって、拡散工程において、拡散材シート4中の重希土類元素が磁石基材2の表面へ均一に拡散し易い。その結果、重希土類元素が磁石基材2の主相粒子の表面近傍及び粒界へ十分に拡散し易く、永久磁石の組成及び磁気特性のばらつきが抑制され易く、永久磁石の保磁力が更に増加する。
【0064】
加熱工程では、磁石基材2及び拡散材シート4の両方が加熱されてよい。磁石基材2及び拡散材シート4のうち一方のみが加熱されてよい。加熱方法は任意であってよい。加熱工程における拡散材シート4の温度が高過ぎる場合、拡散材シート4の保形力が低下し、また冷却工程の効率が低下する。したがって、拡散材シート4の温度は高過ぎないほうがよく、加熱工程における拡散材シート4の最適温度がある。つまり、バインダの組成及び軟化温度並びに拡散材シート4の保形力に応じて、加熱工程における拡散材シート4の温度が調整されてよい。加熱工程における拡散材シート4の温度は、例えば、60℃以上250℃以下であってよい。
【0065】
加熱工程では、拡散材シート4及び磁石基材2のうち少なくとも一方を加圧することにより、拡散材シート4及び磁石基材2を互いに密着させてよい。つまり、拡散材シート4の加熱と並行して、拡散材シート4及び磁石基材2のうち少なくとも一方が加圧されてよい。加圧により、拡散材シート4が磁石基材2の表面に更に密着する。拡散材シート4のみが加圧されてよい。磁石基材2のみが加圧されてよい。拡散材シート4及び磁石基材2を加圧手段で挟むことにより、拡散材シート4及び磁石基材2の両方が加圧されてよい。加熱工程において拡散材シート4に加わる圧力は、例えば、0.05MPa以上10MPa以下であってよい。
【0066】
冷却工程では、加熱工程を経た拡散材シート4を冷却することにより、バインダを硬化させる。バインダの硬化により、拡散材シート4が磁石基材2の表面に密着した状態で固まる。つまり冷却工程により、拡散材シート4が磁石基材2の表面に接着され、拡散材シート4及び磁石基材2が一体化される。つまり、拡散材シート4が磁石基材2の表面に更に強固に固定される。その結果、冷却工程以降において磁石基材2の表面における拡散材シート4の位置ずれが抑制される。また冷却工程以降において磁石基材2の表面からの拡散材シート4の剥離が抑制される。したがって、拡散工程において、拡散材シート4中の重希土類元素が磁石基材2の表面へ均一に拡散し易い。その結果、重希土類元素が磁石基材2の主相粒子の表面近傍及び粒界へ十分に拡散し易く、永久磁石の組成及び磁気特性のばらつきが抑制され易く、永久磁石の保磁力が更に増加する。冷却工程では、拡散材シート4が室温下で冷却されてよい。
【0067】
冷却工程では、拡散材シート4及び磁石基材2のうち少なくとも一方を加圧することにより、拡散材シート4及び磁石基材2を互いに密着させてよい。つまり、拡散材シート4の冷却と並行して、拡散材シート4及び磁石基材2のうち少なくとも一方が加圧されてよい。加圧により、拡散材シート4が磁石基材2の表面に更に密着する。拡散材シート4のみが加圧されてよい。磁石基材2のみが加圧されてよい。拡散材シート4及び磁石基材2を加圧手段で挟むことにより、拡散材シート4及び磁石基材2の両方が加圧されてよい。冷却工程において拡散材シート4に加わる圧力は、例えば、0.05MPa以上10MPa以下であってよい。
【0068】
加熱工程及び冷却工程のうちのいずれか一方の工程のみにおいて、上記の加圧が実施されてよい。加熱工程及び冷却工程の両方の工程において、上記の加圧が実施されてもよい。
【0069】
上述の通り、拡散材シート4と磁石基材2との間の隙間が加熱工程によって更に低減され、加熱工程後の冷却工程により、拡散材シート4が磁石基材2の表面に固定され易い。つまり、加熱工程と冷却工程の相互作用により、拡散材シート4を磁石基材2の表面に隙間なく固定することができる。
【0070】
冷却工程の後、上記の搬送工程が実施されてよい。冷却工程が搬送工程前に実施されることにより、搬送工程における拡散材シート4の位置ずれ及び剥離が抑制され易い。冷却工程では、拡散材シート4を冷却しながら、拡散材シート4及び磁石基材2が加熱炉内へ搬送されてよい。換言すれば、搬送工程が冷却工程を兼ねていてよい。
【0071】
(拡散材シート4の作製方法)
拡散材シート4は、以下の方法によって作製されてよい。上述の通り、拡散材は、少なくとも重希土類元素を含む化学物質である。拡散材は、粒子又は粉末であってよい。拡散材の粒径は、上述された粗粉砕工程及び微粉砕工程と同様の手段によって調整されてよい。拡散材のメジアン径D50は、例えば0.5μm以上15μm以下であってよい。
【0072】
バインダ及び溶剤を所定の比率で攪拌及び混合し、バインダを溶解することにより、ラッカーが調製される。バインダは、熱可塑性樹脂であってよい。バインダは、例えば、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であってよい。複数種のバインダが用いられてよい。溶剤は、バインダが溶解する液体である限り限定されない。溶剤は有機溶剤であってよい。溶剤は、例えば、エタノール、ブタノール、オクタノール、メチルエチルケトン、キシレン、ブチルカルビトール、ターピネオール、及びジヒドロターピネオールならなる一種の化合物であってよい。複数種の溶剤が用いられてよい。拡散材をラッカーへ添加した後、これらが混合される。必要に応じて、可塑剤がラッカーへ更に添加されてよい。続いて拡散材及びラッカーの混合物の分散処理が行われる。分散処理の手段は、自転公転ミキサー、三本ロール、高圧ホモジナイザー、又は超音波ホモジナイザーであってよい。複数の手段を用いて、分散処理が行われてよい。
【0073】
拡散材は、例えば、重希土類元素の単体、重希土類元素を含む合金、又は重希土類元素を含む化合物であってよい。重希土類元素を含む化合物は、例えば、水素化物、フッ化物及び酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。重希土類元素の単体は、Tbの単体、及びDyの単体のうち一方又は両方であってよい。重希土類元素を含む合金は、Tb及びFeからなる合金、Dy及びFeからなる合金、及び、TbとDyとFeとからなる合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。重希土類元素の水素化物は、例えば、TbH
2、TbH
3、Tb及びFeからなる合金の水素化物、DyH
2、DyH
3、Dy及びFeからなる合金の水素化物、及び、TbとDyとFeとからなる合金の水素化物ならなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。拡散材は、Nd、Pr及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含んでよい。例えば、拡散材は、Ndの単体、Prの単体、Nd及びPrを含む合金、NdH
2、NdH
3、PrH
2、PrH
3、Nd及びPrを含む合金の水素化物、Cuの単体、Cuを含む合金、CuH、Cu
2O及びCuOからなる群より選ばれる少なくとも一種を更に含んでよい。
【0074】
以上の方法により、拡散材、バインダ及び溶剤を含むペーストが調製される。ペースト中の拡散材の含有量は、磁石基材2の厚み、永久磁石の設計上の組成、及びペーストの塗工性を考慮して、適宜調整されてよい。ペースト中のバインダの含有量は、ペーストの塗工性及び拡散材シート4の可撓性及び接着性を考慮して、適宜調整されてよい。ペーストの濾過により、粗大粒及び凝集物がペーストから除去されてよい。ペースト中の拡散材の含有量は、例えば、40質量%以上85質量%以下であってよい。ペースト中のバインダの含有量は、例えば、1質量%以上15質量%以下であってよい。ペースト中の溶剤の含有量は、例えば、10質量%以上59質量%以下であってよい。
【0075】
ペーストをフィルム6の表面に塗布することにより、塗膜がフィルム6の表面に形成される。塗膜の厚みは一定であることが好ましい。フィルム6は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はグラファイトからなっていてよい。ペーストが塗布されるフィルム6の表面は、予め剥離剤(release agent)で覆われていてよい。ペーストの塗布方法は、塗膜の厚みを任意の値に制御し、且つ塗膜の厚みを一定に制御する方法であってよい。ペーストの塗布方法は、例えば、アプリケーター、ドクターブレード、バーコーター、インクジェットコーター、ロールコーター又はダイコーターであってよい。
【0076】
上記の塗膜を乾燥して溶剤を塗膜から除去することにより、
図1中の(a)に示される拡散材シート4が得られる。つまり、フィルム6とフィルム6に重なる拡散材シート4とを含む積層体8が得られる。拡散材シート4の第一表面4aは、積層体8においてフィルム6に接しない表面である。拡散材シート4の第二表面4bは、積層体8においてフィルム6に接する表面である。塗膜の乾燥方法は、例えば、赤外線加熱、熱風乾燥又は減圧乾燥であってよい。乾燥条件は、塗膜に含まれる溶剤の蒸気圧に応じて設定されてよい。溶剤が拡散材シート4中に残存してもよい。拡散材シート4の厚みは、例えば、5μm以上200μm以下であってよい。磁石基材2の厚みは拡散材シート4の厚みよりもはるかに大きい。磁石基材2の厚みは、例えば、0.5mm以上25mm以下であってよい。
【0077】
磁石基材2の全面を、上記のペーストで覆うことは可能である。例えば、磁石基材2の全体を上記のペースト中に浸漬することにより、磁石基材2の全面を塗膜で覆うことができる。しかし、浸漬により形成された塗膜が重力の影響等を受けることにより、塗膜の厚みは均一になり難い。また、磁石基材2をペースト中に浸漬する場合、磁石基材2の表面の一部分のみを塗膜で覆うことは困難である。これらの問題を解決するためには、拡散材シート4が有用である。例えば、拡散材シート4の形状が磁石基材2の表面の任意の部分の形状に一致するように拡散材シート4を加工した後、磁石基材2の表面の任意の部分を拡散材シート4で覆うことにより、磁石基材2の必要な部分のみを、厚みが均一な拡散材シート4で覆うことができる。
【0078】
(積層体8の用法)
上述の通り、付着工程及び被覆工程において積層体8が用いられてよい。
図1中の(b)に示されるように、被覆工程では、拡散材シート4が磁石基材2の表面に接するように、磁石基材2の表面の少なくとも一部が積層体8で覆われてよい。磁石基材2の表面の全体が積層体8で覆われてよい。磁石基材2の表面が積層体8で覆われた状態において、乾燥工程が実施されてよい。磁石基材2の表面が積層体8で覆われた状態において、加熱工程及び冷却工程が実施されてもよい。付着工程及び被覆工程において積層体8が用いられる場合、加熱工程及び冷却工程のうち少なくともいずれかにおいてフィルム6を介して拡散材シート4が加圧されてよい。磁石基材2が複数の面を有する場合、磁石基材2の一つの面のみが積層体8で覆われてもよい。磁石基材2が複数の面を有する場合、磁石基材2の複数の面が積層体8で覆われてもよい。例えば、磁石基材2の主面と主面の裏面の両面が積層体8で覆われてよい。磁石基材2が複数の面を有する場合、磁石基材2の全ての面が積層体8で覆われてもよい。
【0079】
図1中の(a)、
図1中の(b)及び
図1中の(c)の場合、被覆工程では磁石基材2の一面が積層体8で覆われる。しかし、磁石基材2の二面が積層体8で覆われてもよい。例えば、磁石基材2の対向する二面が積層体8で覆われてよい。磁石基材2の異なる二面が積層体8で覆われた後、上述の乾燥工程が実施されてよく、乾燥工程の後、上述の加熱工程及び冷却工程が実施されてよい。磁石基材2の異なる二面が積層体8で覆われた後、加熱工程及び冷却工程が実施されてもよい。磁石基材2の複数の面が積層体8で覆われる場合、磁石基材2の一面ごとに被覆工程及び一連の上記工程が実施されてよい。例えば、磁石基材2の一面が積層体8で覆われた状態において乾燥工程が実施された後、さらに磁石基材2の別の面が積層体8で覆われてよい。磁石基材2の別の面が積層体8で覆われた後、乾燥工程が再び実施されてよく、乾燥工程の後、加熱工程及び冷却工程が再び実施されてよい。磁石基材2の一面が積層体8で覆われた状態において加熱工程及び冷却工程が実施された後、さらに磁石基材2の別の面が積層体8で覆われてよい。磁石基材2の別の面が積層体8で覆われた後、加熱工程及び冷却工程が再び実施されてよい。被覆工程において磁石基材2の二つ以上の面が同時に積層体8で覆われた後、一連の上記工程が実施されてよい。
【0080】
図1中の(c)に示されるように、被覆工程、乾燥工程又は冷却工程の後、フィルム6が拡散材シート4から剥離及び除去されてよい。被覆工程、乾燥工程又は冷却工程の後、拡散材シート4は、磁石基材2の表面に密着している。したがって、被覆工程、乾燥工程又は冷却工程の後にフィルム6を拡散材シート4から剥離したとしても、拡散材シート4の一部が、剥離されたフィルム6の表面に残存し難い。つまり、フィルム6の剥離に伴う拡散材シート4の破損が抑制される。また被覆工程、乾燥工程又は冷却工程の後にフィルム6を拡散材シート4から剥離することにより、フィルム6と共に拡散材シート4が磁石基材2の表面から剥離することを抑制することができる。
【0081】
フィルム6の除去後、拡散工程が実施されてよい。拡散工程前にフィルム6が除去されることにより、拡散工程においてフィルム6の炭化物が磁石基材2の表面に形成されない。その結果、フィルム6に由来する炭素が拡散工程において磁石基材2内へ侵入せず、過剰な炭素の含有に起因する永久磁石の磁気特性の劣化が抑制される。ただし、磁石基材2の表面の少なくとも一部が積層体8で覆われた状態において、拡散工程が実施されてもよい。つまり、フィルム6を除去することなく、拡散工程が実施されてもよい。例えば、フィルム6がグラファイトからなる場合、グラファイトは拡散工程での加熱により焼失し易いので、フィルム6を除去することなく拡散工程が実施されてよい。
【0082】
被覆工程において積層体8が用いられる場合、被覆工程前に、積層体8の寸法及び形状が、磁石基材2の表面の寸法及び形状に一致するように調整されてよい。被覆工程後に、積層体8の寸法及び形状が、磁石基材2の表面の寸法及び形状に一致するように調整されてもよい。複数の磁石基材2の表面が一つの積層体8で覆われた後、積層体8が分割されてもよい。積層体8の寸法及び形状は、積層体8の切断加工によって調整されてよい。
【0083】
図2中の(a)に示されるように、付着工程前又は被覆工程前に、フィルム6が拡散材シート4から剥離及び除去されてよい。
図2中の(b)に示されるように、被覆工程では、拡散材シート4の第二表面4bが磁石基材2の表面に接するように、磁石基材2の表面の少なくとも一部が拡散材シート4で覆われてよい。この場合、付着工程では溶剤が拡散材シート4の第二表面4bに付着してよい。ペーストから塗膜が形成される過程では、拡散材が自重によってフィルム6の表面へ沈降する傾向がある。その結果、拡散材シート4中の拡散材は、フィルム6に接していた第二表面4b側に偏在し易い。また、フィルム6に接していた第二表面4bは、第一表面4aよりも平坦である。したがって、拡散材シート4の第二表面4bが磁石基材2の表面に直接重なることにより、拡散材シート4中の拡散材が磁石基材2の表面に沿って均一に配置され易く、拡散材シート4が磁石基材2の表面に均一に密着し易い。その結果、拡散工程において拡散材が磁石基材2の表面へ均一に拡散し易い。
図2中の(c)に示されるように、被覆工程では、拡散材シート4の第一表面4aが磁石基材2の表面に接するように、磁石基材2の表面の少なくとも一部が拡散材シート4で覆われてもよい。この場合、付着工程では溶剤が拡散材シート4の第一表面4aに付着してよい。
【0084】
図2中の(a)、
図2中の(b)及び
図2中の(c)の場合、被覆工程では磁石基材2の一面が拡散材シート4で覆われる。しかし、磁石基材2の二面が拡散材シート4で覆われてもよい。例えば、磁石基材2の対向する二面が拡散材シート4で覆われてよい。磁石基材2の異なる二面が拡散材シート4で覆われた後、後述の乾燥工程が実施されてよく、乾燥工程の後、上述の加熱工程及び冷却工程が実施されてよい。磁石基材2の異なる二面が拡散材シート4で覆われた後、加熱工程及び冷却工程が実施されてもよい。磁石基材2の複数の面が拡散材シート4で覆われる場合、磁石基材2の一面ごとに被覆工程及び一連の上記工程が実施されてよい。例えば、磁石基材2の一面が拡散材シート4で覆われた状態において乾燥工程が実施された後、さらに磁石基材2の別の面が拡散材シート4で覆われてよい。磁石基材2の別の面が拡散材シート4で覆われた後、乾燥工程が再び実施されてよく、乾燥工程の後、加熱工程及び冷却工程が再び実施されてよい。磁石基材2の一面が拡散材シート4で覆われた状態において加熱工程及び冷却工程が実施された後、さらに磁石基材2の別の面が拡散材シート4で覆われてよい。磁石基材2の別の面が拡散材シート4で覆われた後、加熱工程及び冷却工程が再び実施されてよい。被覆工程において磁石基材2の二つ以上の面が同時に拡散材シート4で覆われた後、一連の上記工程が実施されてよい。
【0085】
付着工程前又は被覆工程前にフィルム6が拡散材シート4から剥離及び除去される場合、積層体8の寸法及び形状が、磁石基材2の表面の寸法及び形状に一致するように調整された後、フィルム6が拡散材シート4から剥離及び除去されてよい。拡散材シート4の寸法及び形状が、磁石基材2の表面の寸法及び形状に一致するように調整された後、拡散材シート4がフィルム6から剥離されてよい。フィルム6が拡散材シート4から剥離及び除去された後、拡散材シート4の寸法及び形状が、磁石基材2の表面の寸法及び形状に一致するように調整されてもよい。被覆工程後に、拡散材シート4の寸法及び形状が、磁石基材2の表面の寸法及び形状に一致するように調整されてもよい。複数の磁石基材2の表面が一つの拡散材シート4で覆われた後、拡散材シート4が分割されてもよい。拡散材シート4の寸法及び形状は、拡散材シート4の切断加工によって調整されてよい。
【0086】
積層体8又は拡散材シート4のハンドリングには、吸引又は磁力によって積層体8又は拡散材シート4を吸脱着する手段が用いられてよい。
【0087】
[熱処理工程]
拡散工程を経た磁石基材2は、永久磁石の完成品として用いられてよい。拡散工程の後、熱処理工程が行われてもよい。熱処理工程では、磁石基材2が450℃以上600℃以下で加熱されてよい。熱処理工程では、1時間以上10時間以下の間、磁石基材2が上記の温度で加熱されてよい。熱処理工程により、永久磁石の磁気特性(特に保磁力)が向上し易い。
【0088】
拡散工程又は熱処理工程の後、切削及び研磨等の加工方法により磁石基材2の寸法及び形状が調整されてよい。
【0089】
以上の方法により、永久磁石が完成される。
【0090】
磁石基材及び永久磁石其々の組成は、例えば、エネルギー分散型X線分光(EDS)法、蛍光X線(XRF)分析法、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法、不活性ガス融解‐非分散型赤外線吸収法、酸素気流中燃焼‐赤外吸収法及び不活性ガス融解‐熱伝導度法等の分析方法によって特定されてよい。
【0091】
永久磁石の寸法及び形状は、永久磁石の用途に応じて様々であり、特に限定されない。永久磁石の形状は、例えば、直方体、立方体、矩形(板)、多角柱、アークセグメント、扇、環状扇形(annular sector)、球、円板、円柱、リング、又はカプセルであってよい。永久磁石の断面の形状は、例えば、多角形、円弧(円弦)、弓状、アーチ、又は円であってよい。磁石基材2の寸法及び形状も、永久磁石と同様に多様であってよい。
【0092】
永久磁石は、ハイブリッド自動車、電気自動車、ハードディスクドライブ、磁気共鳴画像装置(MRI)、スマートフォン、デジタルカメラ、薄型TV、スキャナー、エアコン、ヒートポンプ、冷蔵庫、掃除機、洗濯乾燥機、エレベーター及び風力発電機等の様々な分野で利用されてよい。永久磁石は、モータ、発電機又はアクチュエーターを構成する材料として用いられてよい。
【0093】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、拡散工程に用いられる磁石基材は、焼結体ではなく、熱間加工磁石であってよい。熱間加工磁石は、以下のような製法によって作製されてよい。
【0094】
熱間加工磁石の原料は、焼結体の作製に用いられる原料合金と同様の合金であってよい。この合金を溶融し、更に急冷することにより、合金からなる薄帯が得られる。薄帯の粉砕により、フレーク状の合金粉末が得られる。合金粉末の冷間プレス(室温での成形)により、成形体が得られる。成形体の予熱後、成形体の熱間プレスにより、等方性磁石が得られる。等方性磁石の熱間塑性加工により、異方性磁石が得られる。異方性磁石の時効処理により、熱間加工磁石からなる磁石基材が得られる。熱間加工磁石からなる磁石基材は、上記の焼結体と同様に、互いに結着された多数の主相粒子を含む。