(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-198385(P2020-198385A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】耐腐食性を有する磁石の製造方法、および、耐腐食性を有する磁石を備える圧力センサ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/02 20060101AFI20201113BHJP
G01L 9/14 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
H01F7/02 E
G01L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-104704(P2019-104704)
(22)【出願日】2019年6月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】古沢 正樹
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC02
2F055DD11
2F055EE27
2F055FF38
2F055GG49
2F055HH11
(57)【要約】
【課題】磁石を備える圧力センサにおいて、硫化水素成分による磁石の腐食を回避し、磁石の耐腐食性を向上させることができること。
【解決手段】磁石を備える圧力センサにおいて、希土類の永久磁石26は、母材表面に亜鉛めっき処理S1、または、リン酸塩処理後、その金属めっき皮膜(亜鉛めっき層26F)またはリン酸塩皮膜全面に、樹脂皮膜層26Cが形成されるように樹脂コーティング処理S2が施されているもの。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出圧力が供給される連通路に連通する圧力室を有するロアハウジングと、
受圧板が移動可能に配される受圧板収容室を基台部内に有するとともに前記被検出圧力に応じた該受圧板の変位を検出する受圧板変位検出部を備え、該基台部が前記ロアハウジングの圧力室の回りに接合されるアッパハウジングと、
前記圧力室の圧力に応じて変位せしめられる前記受圧板の下端部に嵌合される嵌合部を有し、該圧力室と前記受圧板収容室とを仕切る弾性変位可能なダイヤフラムと、
前記受圧板収容室内に配され、前記ダイヤフラムを前記受圧板収容室の内容積を増大させる方向に付勢する付勢部材と、を備え、
前記受圧板変位検出部は、前記受圧板に保持される希土類の永久磁石の磁束密度を検出する磁気センサを含み、前記永久磁石は、母材表面に形成され硫化水素成分に対し耐腐食性のある金属製めっき皮膜と、該金属製めっき皮膜全体を覆い、該金属製めっき皮膜の膜厚よりも大なる膜厚を有する樹脂製コーティング膜とを有することを特徴とする耐腐食性を有する磁石を備える圧力センサ。
【請求項2】
前記金属製めっき皮膜は、亜鉛めっき皮膜であることを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記樹脂製コーティング膜は、エポキシ樹脂皮膜であることを特徴とする請求項1記載の圧力センサ。
【請求項4】
希土類の永久磁石を備える圧力センサにおける可動部に支持される該永久磁石の母材表面全体に硫化水素成分に対し耐腐食性のある金属めっき処理を行う工程と、
前記金属めっき処理が施された永久磁石に形成された金属製めっき皮膜全体を覆い、該金属製めっき皮膜の膜厚よりも大なる膜厚を有する樹脂製コーティング膜を形成する樹脂コーティング処理を行う工程と、を含む耐腐食性を有する磁石の製造方法。
【請求項5】
前記金属製めっき皮膜は、亜鉛めっき皮膜であることを特徴とする請求項4記載の耐腐食性を有する磁石の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂製コーティング膜は、エポキシ樹脂皮膜であることを特徴とする請求項4記載の耐腐食性を有する磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐腐食性を有する磁石の製造方法、および、耐腐食性を有する磁石を備える圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
炊飯器においては、例えば、特許文献1に示されるように、蓋体内に設けられる真空装置、正圧装置、および、圧力検出モジュール(圧力センサ)と、調理チェンバーを有する本体とを備え、真空装置、および、正圧装置が、圧力検出モジュール(圧力センサ)からの検出信号に基づいて動作制御されることにより、調理チェンバー内の圧力を制御することが提案されている。斯かる圧力制御においては、炊飯における吸引段階で真空装置が作動され、大気圧(101.33kPa)以下の真空度の比較的高い圧力まで真空引きされ、蒸らし段階においては、真空度の比較的低い圧力まで真空引きされ、調理チェンバー内の圧力が負圧に維持される。
【0003】
炊飯器において、例えば、特許文献2および特許文献3に示されるように、米が炊飯される場合、その香気を妨げる臭みの1つの原因となる微量の硫化水素、アンモニア成分が炊飯器内で発生することが知られている。
【0004】
上述の圧力センサにおいては、炊飯器用の微圧センサとして、流体の圧力に応じて変位するダイヤフラムの変位を、永久磁石およびホール素子からなる磁気センサにより検出することによって流体の圧力を表す出力信号を供給するものが実用に供されている。そのような永久磁石の母材表面は、ニッケルめっき処理が施される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019−10495号公報
【特許文献2】特公昭46−24062号
【特許文献3】特開平9−56343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の炊飯器において、上述の永久磁石およびホール素子からなる磁気センサを含む圧力センサが使用され、炊飯が繰り返し行われる場合、ニッケルめっき処理が施された永久磁石は、上述の硫化水素成分により腐食する虞がある。これにより、永久磁石の磁力が減衰するので圧力センサの検出精度(磁力検知能力)が低下する虞がある。従って、永久磁石の硫化水素成分に対する耐腐食性の向上が要望される。
【0007】
以上の問題点を考慮し、本発明は、耐腐食性を有する磁石の製造方法、および、耐腐食性を有する磁石を備える圧力センサであって、硫化水素成分による磁石の腐食を回避し、磁石の耐腐食性を向上させることができる、耐腐食性を有する磁石の製造方法、および、耐腐食性を有する磁石を備える圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明に係る耐腐食性を有する磁石を備える圧力センサは、被検出圧力が供給される連通路に連通する圧力室を有するロアハウジングと、受圧板が移動可能に配される受圧板収容室を基台部内に有するとともに被検出圧力に応じた受圧板の変位を検出する受圧板変位検出部を備え、基台部が前記ロアハウジングの圧力室の回りに接合されるアッパハウジングと、圧力室の圧力に応じて変位せしめられる受圧板の下端部に嵌合される嵌合部を有し、圧力室と受圧板収容室とを仕切る弾性変位可能なダイヤフラムと、受圧板収容室内に配され、ダイヤフラムを受圧板収容室の内容積を増大させる方向に付勢する付勢部材と、を備え、受圧板変位検出部は、受圧板に保持される希土類の永久磁石の磁束密度を検出する磁気センサを含み、永久磁石は、母材表面に形成され硫化水素成分に対し耐腐食性のある金属製めっき皮膜と、金属製めっき皮膜全体を覆い、金属製めっき皮膜の膜厚よりも大なる膜厚を有する樹脂製コーティング膜とを有することを特徴とする。
【0009】
金属製めっき皮膜は、亜鉛めっき皮膜であってもよく、また、樹脂製コーティング膜は、エポキシ樹脂皮膜であってもよい。
【0010】
本発明に係る耐腐食性を有する磁石の製造方法は、希土類の永久磁石を備える圧力センサにおける可動部に支持される永久磁石の母材表面全体に硫化水素成分に対し耐腐食性のある金属めっき処理を行う工程と、金属めっき処理が施された永久磁石に形成された金属製めっき皮膜全体を覆い、金属製めっき皮膜の膜厚よりも大なる膜厚を有する樹脂製コーティング膜を形成する樹脂コーティング処理を行う工程と、を含んでなる。
【0011】
金属製めっき皮膜は、亜鉛めっき皮膜であってもよく、また、樹脂製コーティング膜は、エポキシ樹脂皮膜であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る耐腐食性を有する磁石の製造方法、および、耐腐食性を有する磁石を備える圧力センサによれば、永久磁石は、母材表面に形成され硫化水素成分に対し耐腐食性のある金属製めっき皮膜と、金属製めっき皮膜全体を覆い、金属製めっき皮膜の膜厚よりも大なる膜厚を有する樹脂製コーティング膜とを有するので硫化水素成分による磁石の腐食を回避し、磁石の耐腐食性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る耐腐食性を有する磁石の製造方法の工程を示す図である。
【
図2】本発明に係る耐腐食性を有する磁石を備える圧力センサの一例の構造を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る耐腐食性を有する磁石の一例を、部分断面とともに示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、本発明に係る耐腐食性を有する磁石を備える圧力センサの一例の構成を概略的に示す。
【0015】
図2に示される圧力センサは、例えば、図示が省略される炊飯器における蓋体内に配置されている。
図2において、圧力センサは、蓋体内に配されるアッパハウジング12と、炊飯器本体内の鍋(不図示)の開口に向けて突出し鍋内に連通する連通管10INを有するロアハウジング10と、アッパハウジング12の受圧板収容室12A内に移動可能に配される受圧板24と、受圧板24に結合され連通管10INを通じて導入される被検出圧力としての鍋内の圧力に応じて受圧板24を昇降動させるダイヤフラム18と、受圧板24およびダイヤフラム18を受圧板収容室12Aの容積が増大する方向、即ち、ダイヤフラム18が連通管10INに近接する方向に付勢する付勢部材としてのコイルスプリング22と、受圧板24の磁石取付孔に圧入される永久磁石26と、永久磁石26に向き合ってアッパハウジング12に配されるホール素子を含むコネクタ付信号処理回路基板28と、を主な要素として含んで構成されている。
【0016】
アッパハウジング12は、例えば、耐熱性の樹脂材料(ABS)で成形されている。アッパハウジング12は、ロアハウジング10の接合面に溶着される基台部と、基台部に連なり上方に向けて延びコネクタ付信号処理回路基板28を支持する筒状部とから構成されている。
【0017】
筒状部の下部は、ダイヤフラム18で仕切られる受圧板収容室12Aを内側に形成している。筒状部の上部の内周部には、コイルスプリング22の付勢力を調整する調整ねじ部材14の雄ねじ部14MSが捩じ込まれる雌ねじ部12FMSが形成されている。筒状部における右端には、コネクタ付信号処理回路基板28が配置されている。受圧板変位検出部としてのコネクタ付信号処理回路基板28は、受圧板24が支持する永久磁石26の磁束密度を検出する磁気センサ(ホール素子)を含むものとされる。受圧板収容室12Aは、図示が省略される空気抜き孔を通じて炊飯器における蓋体内に連通している。
【0018】
基台部におけるロアハウジング10の接合面に、例えば、超音波溶着される部分には、ロアハウジング10の溝10Gaおよび10Gbにそれぞれ、嵌合される円弧状の突起部12Pが形成されている。また、突起部12Pに隣接して後述するダイヤフラム18のフランジ部18Bが挿入される溝12Gが受圧板収容室12Aの周囲に形成されている。
【0019】
ダイヤフラム18は、例えば、所定の厚さ(例えば、0.3mm以上0.5mm以下の厚さ)を有するシリコーンゴムで成形され、基台部に形成される溝12Gに挿入され外縁を形成するフランジ部18Bと、後述する受圧板24の最下端の中空の円錐台部24CYの端面に当接される円板部18Faと、円板部18Faと一体に形成され円錐台部24CYの側面に嵌め合わされるテーパ面部18Fbと、受圧板24の円錐台部24CYに隣接した張出部24Bに当接される環状部18Fcと、環状部18Fcと上述のフランジ部18Bとを連結し弾性変位可能な可動部18Mと、からなる。凹部の一部を形成するダイヤフラム18のテーパ面部18Fbは、嵌合される受圧板24の中空の円錐台部24CYのテーパ角度αに対応したテーパ角度、例えば、5°を有している。即ち、ダイヤフラム18の嵌合部がダイヤフラム18のテーパ面部18Fbと、円板部18Faとにより形成される。
【0020】
受圧板24は、例えば、耐熱性の樹脂材料(ABS)で成形され、永久磁石26が圧入される磁石取付孔を上述のコネクタ付信号処理回路基板28を臨む位置に有している。永久磁石26は、希土類の磁石、例えば、ネオジウム、サマリウムコバルト、および、アルニコのうちのいずれかの磁石により薄板状に形成されている。
図3に誇張し拡大されて示されるように、永久磁石26は、例えば、厚さ2mmで5mm角に形成されている。永久磁石26は、後述するように、母材表面に金属めっき処理、例えば、亜鉛めっき処理、または、リン酸塩処理後、その金属めっき皮膜またはリン酸塩皮膜上に樹脂コーティングされている。樹脂皮膜としては、例えば、エポキシ樹脂で形成される樹脂コーティング膜とされる。エポキシ樹脂で形成される樹脂コーティング膜は、微量の硫化水素成分に対する耐腐食性に優れている。これにより、
図3に示されるように、亜鉛めっき処理の場合、永久磁石26の母材表面全体に、約5μm以上約30μm以下の範囲の膜厚の亜鉛めっき層26Fが形成されるとともに、亜鉛めっき層26Fの全表面に、厚さ約36μm±4μmのエポキシ樹脂製の樹脂皮膜層26Cが形成されている。エポキシ樹脂で樹脂皮膜層26Cが形成される主な理由としては、硫化水素に対する耐腐食性向上の他に、(1)永久磁石26との接着性能が高い、(2)高温多湿に対する耐性が高い(炊飯器に使用される上で避けられない問題を解決するために必要な耐性)、(3)コーティング皮膜の薄膜塗装が可能である(数あるコーティング用樹脂のうちで、エポキシ樹脂は均一な薄膜の形成が可能である)点に着目したからである。
【0021】
樹脂皮膜層26Cの厚さが32μm以上40μm以下の範囲の値に設定されるのは、第1の理由として、永久磁石26が磁石取付孔に圧入されるので亜鉛めっき層26Fおよび樹脂皮膜層26Cが圧入により容易に剥離しないようにするためである。また、第2の理由として、膜厚が、40μmを超える比較的厚い場合、塗膜が均一にならず、特に、稜線部(磁石の角部)に溜まってしまう場合があるからである。さらにまた、第3の理由として、膜厚が、32μm未満である比較的薄い場合、所定の強度(剥離強度・引っかき強度)の被膜が得られないからである。
【0022】
従って、後述するように、米が炊飯される場合、炊飯器本体内の鍋内に微量の硫化水素成分が発生したとき、万一、その微量の硫化水素成分が圧力室10Aを介して受圧板収容室12A内に浸入したときであっても、亜鉛めっき層26Fおよび樹脂皮膜層26Cを有する永久磁石26は、亜鉛めっき層26Fがニッケルめっき膜に比して硫化水素に対し耐腐食性に優れ、しかも、亜鉛めっき層26Fを保護するエポキシ樹脂皮膜とされる樹脂皮膜層26Cで亜鉛めっき層26Fが被覆されているので微量の硫化水素成分による磁石の腐食を回避できる。なお、耐熱性の樹脂材料(ABS)で成形された受圧板24は、上述の微量の硫化水素成分に対する耐腐食性に優れている。
【0023】
受圧板24における上述の磁石取付孔よりも上端部には、コイルスプリング22の一端に係合されるばね受け部が形成されている。コイルスプリング22の他端は、調整ねじ部材14の環状溝に受け止められている。受圧板24における上述の磁石取付孔よりも下方の位置には、ダイヤフラム18の環状部18Fcが当接される張出部24Bが形成されるとともに、中空の円錐台部24CYが最下端に形成されている。これにより、受圧板24は、コイルスプリング22の一端に支持されるとともに、ダイヤフラム18のテーパ面部18Fbに支持されながら、アッパハウジング12の受圧板収容室12Aを形成する内周面に摺動可能に案内される。
【0024】
中空の円錐台部24CYのテーパ角度αは、例えば、3°以上5°以下の範囲の角度に設定されている。これにより、テーパ状の円錐台部24CYの直径は、ロアハウジング10の連通管10INに近接するにつれて増大する。
【0025】
従って、ダイヤフラム18のテーパ面部18Fbが、上述の鍋内の負圧に基づいて受圧板24のテーパ状の円錐台部24CYに対し離隔し引き離す方向に力が作用する場合、ダイヤフラム18のテーパ面部18Fbを押し広げる力に抗してダイヤフラム18自体の反作用力が作用するのでダイヤフラム18と受圧板24とが分離される事態が確実に回避される。即ち、嵌合部分離回避手段は、中空の円錐台部24CYと、ダイヤフラム18のテーパ面部18Fbと、円板部18Faとにより形成されることとなる。
【0026】
ロアハウジング10は、例えば、耐熱性の樹脂材料(ABS)で成形されている。ロアハウジング10は、
図2に示されるように、上述のアッパハウジング12の基台部が溶着される接合面が形成される板状部10Bと、板状部10Bの両端に向かい合って一体に形成される取付部10Fと、板状部10Bの接合面に対向する外面10Rに結合される連通管10INとを含んで構成されている。連通管10INは、炊飯器本体内の鍋(不図示)の開口に向けて突出し鍋内に連通するものとされる。各取付部10Fは、炊飯器の蓋体LBに圧力センサを取り付けるための締結部材が挿入される取付孔10aを有している。
【0027】
接合面における各取付部10Fの一端が結合される部分には、隣接して円弧状の溝10Gaおよび10Gbが形成されている。溝10Gaおよび10Gb相互間となる中央部分には、連通管10IN内の連通路16に連通する圧力室10Aが形成されている。圧力室10Aは、ダイヤフラム18と、一端が接合面に対し開口するテーパ面部10ITと、により囲まれている。テーパ面部10ITは、例えば、約30°以上45°以下のテーパ角度を有している。テーパ面部10ITにおける最小径を有する端部には、ダイヤフラム18の円板部18Faに向き合う所定の深さDpを有する段差部10Sが形成されている。段差部10Sの内径は、ダイヤフラム18の円板部18Faの直径よりも若干大に設定されている。これにより、テーパ面部10ITを有する小部屋がロアハウジング10の内側に形成されることとなる。ロアハウジング10における小部屋の内容積が比較的小となるのでロアハウジング10の板状部10Bの下端面からアッパハウジング12の最上端面までの高さが従来のものに比して低くなる。その結果として、圧力センサの薄型化(低背化)が図られる。
【0028】
連通管10INの内側には、連通路16を二つに均等に仕切るリブ16Dが一体に形成されている。ストッパ部としてのリブ16Dの一端面は、上述の段差部10Sの面と共通の平面上にあり、所謂、段差部10Sの面と面一となっている。リブ16Dの他端面は、連通管10INの下端面と一致するまで延びている。このようにリブ16Dが設けられることによって、連通管10INの下端の開口から棒状の調理器具などを挿入することが困難となるのでダイヤフラム18および受圧板24における不所望な損傷が回避される。
【0029】
斯かる構成において、炊飯器本体内の鍋内の圧力が上昇し、連通管10INの連通路16を介して圧力室10Aの圧力が大気圧以上の正圧となった場合、受圧板24およびダイヤフラム18が上昇せしめられることにより、永久磁石26のコネクタ付信号処理回路基板28のホール素子に対する相対位置が変化するのでコネクタ付信号処理回路基板28からの正圧をあらわす出力信号が送出されることとなる。一方、炊飯器本体内の鍋内の圧力が下降し、連通管10INの連通路16を介して圧力室10Aの圧力が大気圧以下の負圧となった場合、受圧板24およびダイヤフラム18が下降せしめられることにより、永久磁石26のコネクタ付信号処理回路基板28のホール素子に対する相対位置が変化するのでコネクタ付信号処理回路基板28からの負圧をあらわす出力信号が送出されることとなる。
【0030】
本発明に係る耐腐食性を有する磁石の製造方法の一例にあっては、
図1に示されるように、例えば、上述のネオジウムで作られた磁石の母材(めっき素材)(厚さ2mmで5mm角の素材)が用意され、その母材の全表面に対しめっき処理S1が行われる。めっき処理S1は、例えば、先ず、母材(めっき素材)の表面を脱脂した後、付着した脱脂液を水洗し、酸洗される。これにより、母材の鉄素地が露出される。次に、付着した酸洗液を水洗した後、鉄と亜鉛との合金反応を促進するためにフラックス皮膜処理が施された後、乾燥される。上述のように処理された母材は、所定のめっき条件に従い亜鉛浴に漬けられる。これにより、亜鉛めっき層が、約5μm以上約30μm以下の範囲の膜厚で母材の全表面に形成される。亜鉛めっき層は、例えば、亜鉛を主成分とするめっき層であればよく、Znめっき、Zn−Al系合金めっき、Zn−Mg合金めっき等であってもよい。
【0031】
最後に、鉄と亜鉛との合金層の成長を抑えるために亜鉛めっき層が形成された母材が温水で冷却される。これにより、めっき処理S1が完了する。続いて、樹脂コーティング処理S2が、亜鉛めっき層が形成された母材に対し行われる。樹脂コーティング処理S2は、例えば、加熱処理されたワーク(亜鉛めっき層が形成された母材)の熱で粉体(エポキシ樹脂)を融解させ、塗膜を得る流動浸漬法等が用いられて行われる。その流動浸漬法は、樹脂皮膜層26Cの膜厚が32μm以上40μm以下の範囲となるまで行われる。続いて、エポキシ樹脂の樹脂コーティング膜が形成された母材について、着磁処理S3が行われる。そして、着磁された磁石の磁気特性等の検査S4が行われる。これにより、検査後、良品と認められる永久磁石26が得られる。
【0032】
なお、上述の例においては、本発明に係る圧力センサの一例が炊飯器に適用されたが、斯かる例に限られることなく、本発明に係る圧力センサの一例が他の調理器具に適用されてもよいことは勿論である。また、上述のロアハウジング10は、板状部10Bの両端に向かい合って一体に形成される取付部10Fを有しているが、斯かる例に限られることなく、例えば、各取付部は、その中心軸線が所定の角度をもって交わるように板状部10Bに配置されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 ロアハウジング
10A 圧力室
10IN 連通管
12 アッパハウジング
16 連通路
18 ダイヤフラム
24 受圧板
26 永久磁石
26F 亜鉛めっき層
26C 樹脂皮膜層