【解決手段】配線基板およびその製造方法は、基材表面に形成された銅パターンのパターン間に、少なくとも前記銅パターン上面以上の厚みで、無機フィラーを含む液状の樹脂を充填し、乾燥して硬化率10〜50%の半硬化状態とするパターン間半硬化樹脂形成工程と、その上に無機フィラーを含む硬化率10〜50%の半硬化状態の半硬化樹脂シートを重ねて減圧雰囲気中でプレスを行う真空プレス工程とを有す。
基材表面に形成された銅パターンのパターン間に、少なくとも前記銅パターン上面以上の厚みで、第一無機フィラーを含む液状の樹脂を充填し、乾燥して硬化率10〜50%の半硬化状態のパターン間半硬化樹脂を形成する、パターン間半硬化樹脂形成工程と、
前記パターン間半硬化樹脂の上に、第二無機フィラーを含む硬化率10〜50%の半硬化状態の半硬化樹脂シートを重ねて減圧雰囲気中でプレスを行う、真空プレス工程と
を有することを特徴とする、プリント配線基板の製造方法。
前記半硬化樹脂シートに含まれる前記第二無機フィラーの含有量は、前記銅パターン間半硬化樹脂に含まれる前記第一無機フィラーの含有量よりも5体積%以上多いことを特徴とする請求項1または2に記載の、プリント配線基板の製造方法。
前記第一無機フィラー及び前記第二無機フィラーは、それぞれ独立に、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機フィラーであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の、プリント配線基板の製造方法。
基材と、前記基材上に形成された銅パターンと、前記銅パターン間に充填されたパターン間硬化樹脂と、前記銅パターン上および前記パターン間硬化樹脂上に形成された硬化樹脂層とを有し、
前記硬化樹脂層が、硬化樹脂層上部と、硬化樹脂層下部と、前記硬化樹脂層上部及び硬化樹脂層下部の界面部とを含み、
前記硬化樹脂層下部が、前記パターン間硬化樹脂と同じ樹脂組成物の硬化物であり、
前記パターン間硬化樹脂が第一無機フィラーを含み、前記硬化樹脂層上部が第二無機フィラーを含み、前記硬化樹脂層下部が前記第一無機フィラーを含み、前記界面部が前記第一無機フィラーと前記第二無機フィラーとを含み、
前記界面部に含まる前記第一無機フィラーと前記第二無機フィラーとの総含有量は、前記硬化樹脂層上部に含まれる前記第二無機フィラーの含有量と前記パターン間硬化樹脂層に含まれる第一無機フィラーの含有量との間である
ことを特徴とするプリント配線基板。
前記パターン間硬化樹脂に含まれる前記第一無機フィラーの含有量が、30〜60体積%であることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか一項に記載のプリント配線基板。
前記第一無機フィラー及び前記第二無機フィラーは、それぞれ独立に、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機フィラーであることを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれか一項に記載のプリント配線基板。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のプリント配線基板及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。したがって、図面に記載された各構成要素の寸法比率などは、実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0009】
(第一実施形態)
「プリント配線基板」
図1Aは、本実施形態のプリント配線基板の一例を示した概略断面図である。本実施形態のプリント配線基板10は、電源用多層基板などに好適に使用できるものである。本実施形態のプリント配線基板10は、基材1と、基材1上に形成された銅パターン2と、銅パターン2間に充填されたパターン間硬化樹脂4と、銅パターン2上およびパターン間硬化樹脂4上に形成された硬化樹脂層3とを有する。
【0010】
パターン間硬化樹脂4は、後述の製造方法で用いるパターン間液状樹脂(液状第一樹脂4Aということがある)4Aの硬化物である(
図2と3)。前記硬化樹脂層3は、後述の製造方法で用いる半硬化樹脂シート(半硬化第二樹脂ということがある)3Aの硬化物及び前記パターン間液状樹脂4Aの硬化物からなるものである(
図2と3)。すなわち、
図1Aの部分拡大図の
図1Bに示すように、硬化樹脂層3は、硬化樹脂層上部(半硬化樹脂シート3A由来の硬化物)3−1と硬化樹脂層下部(パターン間液状樹脂4A由来の硬化物)3−2を含む。また、硬化樹脂層上部(半硬化樹脂シート3A由来の硬化物)3−1と硬化樹脂層下部(パターン間液状樹脂4A由来の硬化物)3−2との間に、界面部3cが形成されている。界面部3cは、後述の製造方法の一例(
図3)において、熱プレス処理で半硬化の銅パターン間樹脂4Bと半硬化樹脂シート3Aとの接触面に、それぞれの樹脂或いはフィラーが混合することによって混合層が形成されることが好ましい。界面部3cにおいて、このような半硬化状態の樹脂の混合物からなる硬化物が形成されることより、硬化樹脂層3及びパターン間硬化樹脂4が一体化し、無機フィラーを高充填化させながら、ボイドの発生を抑制し、絶縁耐力低下や熱的膨れを抑制することができる。
【0011】
本実施形態の一例として、
図1A及びその部分拡大図の
図1Bに示すように、銅パターン2の上面2aにおいて、銅パターン2の側面2bに近い部分に液状第一樹脂4A由来の硬化樹脂層下部3−2が形成されることがより好ましい。銅パターン2の上面2aにおいて、液状第一樹脂4A由来の硬化物が形成されることより、無機フィラーを高充填化させながら、ボイドの発生をさらに抑制し、絶縁耐力低下や熱的膨れを抑制することができる。
【0012】
前記パターン間硬化樹脂4が第一無機フィラーを含む。前記硬化樹脂層上部3−1が第二無機フィラーを含む。前記硬化樹脂層下部3−2が前記第一無機フィラーを含む。前記界面部3cが前記第一無機フィラーと前記第二無機フィラーとを含む。前記硬化樹脂層下部3−2に含まれる前記第一無機フィラーの含有量は、前記パターン間硬化樹脂4に含まれる第一無機フィラーの含有量と同じである。
前記硬化樹脂層上部3−1に含まれる前記第二無機フィラーの含有量は、前記パターン間硬化樹脂4に含まれる前記第一無機フィラーの含有量よりも高いことが好ましい。前記硬化樹脂層上部3−1に含まれる前記第二無機フィラーの含有量は、前記パターン間硬化樹脂4に含まれる前記第一無機フィラーの含有量よりも5体積%以上高いことがより好ましい。
【0013】
前記界面部3cは、前記第一無機フィラーと前記第二無機フィラーとを含む。前記界面部3cに含まる前記第一無機フィラーと前記第二無機フィラーとの総含有量は、前記硬化樹脂層上部3−1に含まれる前記第二無機フィラーの含有量と前記パターン間硬化樹脂層4に含まれる第一無機フィラーの含有量との間である。すなわち、前記硬化樹脂層上部3−1に含まれる第二無機フィラーの含有量が、前記パターン間硬化樹脂層4に含まれる第一無機フィラーの含有量よりも高い場合、前記界面部3cに含まる前記第一無機フィラーと前記第二無機フィラーとの総含有量は、前記硬化樹脂層上部3−1に含まれる前記第二無機フィラーの含有量より低く、かつ、前記パターン間硬化樹脂4に含まれる第一無機フィラーの含有量よりも高い。
【0014】
基材1としては、ガラスエポキシ基板、ポリイミドからなるフレキシブル基板など、従来公知の基材を用いることができる。
【0015】
銅パターン2の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、コイルパターンであってもよい。本実施形態のプリント配線基板10では、銅パターン2がコイルパターンである場合に、コイルで熱が発生しても、熱応力によって銅パターン2の側面2bとパターン間硬化樹脂4との界面剥離が生じにくいため、コイルに流すことのできる電流を大きくできる。銅パターン2の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、本発明の効果をより発揮する観点から、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
【0016】
硬化樹脂層上部3−1中の第二無機フィラーの含有量は、30体積%〜60体積%であることが好ましく、40体積%〜60体積%であることがより好ましい。硬化樹脂層上部3−1中の第二無機フィラー含有量が35体積%以上であると、より良好な放熱性が得られる。硬化樹脂層上部3−1中の第二無機フィラー含有量が50体積%以下であると、銅パターンおよび銅パターン間樹脂との密着性や形状追従性が良好となるため、好ましい。
【0017】
硬化樹脂層上部3−1に含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂などを用いることができ、電気絶縁性、耐水性、耐薬品性などの観点から、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
硬化樹脂層上部3−1を形成している樹脂と、パターン間硬化樹脂4中に含まれる樹脂とは、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。同じ種類とは、例えば、同じエポキシ系硬化性樹脂、同じポリイミド系硬化性樹脂等、硬化機構が類似している樹脂種類である。樹脂種類は、同じであることが好ましい。例えば、同じエポキシ系樹脂の場合、界面部3cにおいて、それぞれに含まれている樹脂及び無機フィラーの相互移動がより容易である。
【0019】
硬化樹脂層上部3−1を形成している樹脂と、パターン間硬化樹脂4中に含まれる樹脂とは、同じであることが好ましい。樹脂が同じであるとは、最終の樹脂硬化物が同じである意味である。例えば、パターン間硬化樹脂4は、パターン間液状樹脂(液状第一樹脂)4Aの硬化物である場合、そのパターン間液状樹脂(液状第一樹脂)4Aは、以下の無溶剤型エポキシ樹脂組成物である。この無溶剤型樹脂組成物は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:830、DIC株式会社製)51.2質量%、酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤(商品名:HN2200、日立化成株式会社製)47.8質量%、イミダゾール系硬化触媒(商品名:2E4MZ、四国化成工業株式会社製)1質量%を含む。硬化樹脂層3が半硬化樹脂シート(半硬化第二樹脂)3Aの硬化物である場合、半硬化樹脂シート3Aは、ガラス繊維からなる芯材と、芯材に含浸された半硬化状態(Bステージ状態)の以下に示す無溶剤型樹脂組成物とからなるプリプレグである。この無溶剤型樹脂組成物は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:830、DIC株式会社製)51.2質量%、酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤(商品名:HN2200、日立化成株式会社製)47.8質量%、イミダゾール系硬化触媒(商品名:2E4MZ、四国化成工業株式会社製)1質量%を含む。同じエポキシ系樹脂の場合、界面部3cにおいて、それぞれに含まれている樹脂及びフィラーの相互移動がより容易である。
【0020】
硬化樹脂層上部3−1に含まれる第二無機フィラーとしては、炭酸カルシウム(熱膨張係数は25×10
−6/K)、酸化マグネシウム(熱膨張係数は13×10
−6/K)、酸化亜鉛(熱膨張係数は3×10
−6/K)、窒化ホウ素(熱膨張係数は1×10
−6/K)、アルミナ(熱膨張係数は6×10
−6/K)、シリカ(熱膨張係数は15×10
−6/K)、窒化アルミニウム(熱膨張係数は4.5×10
−6/K)、硫酸バリウム(熱膨張係数は15×10
−6/K)などを用いることができる。これらの無機フィラーの中でも、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0021】
酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、窒化アルミニウムは、いずれも熱膨張係数が小さく、熱伝導率が大きい。これらの無機フィラーから選ばれる1種以上含むプリント配線基板10は、良好な放熱性を有する。
【0022】
硬化樹脂層上部3−1に含まれる第二無機フィラーの種類と、パターン間硬化樹脂4中に含まれる第一無機フィラーの種類は、同じであってもよいし、異なるものであってもよい。種類が同じである場合、例えば、同じアルミナの場合、粒子径等が異なっても、界面部3cにおいて、それぞれに含まれているフィラーの相互移動がより容易である。硬化樹脂層3に含まれる第二無機フィラーと、パターン間硬化樹脂4中に含まれる第一無機フィラーとは、同じであることがより好ましい。例えば、同じサイズと形状のアルミナの場合、界面部3cにおいて、それぞれに含まれているフィラーの相互移動がさらに容易である。
【0023】
硬化樹脂層上部3−1に含まれる第二無機フィラーの含有量が、パターン間硬化樹脂4に含まれる第一無機フィラーの含有量よりも多いことが好ましい。更には、硬化樹脂層上部3−1に含まれる第二無機フィラーの含有量は、パターン間硬化樹脂4に含まれる第一無機フィラーの含有量よりも5体積%以上多いことがより好ましく、10体積%以上多いことがより好ましい。すなわち、硬化樹脂層上部3−1の主要な由来先である半硬化樹脂シート3A(
図2)に含まれる第二無機フィラーの含有量は、パターン間硬化樹脂4の由来先であるパターン間液状樹脂4A(液状第一樹脂)に含まれる第一無機フィラーの含有量よりも5体積%以上多いことが好ましく、10体積%以上多いことがより好ましい。
【0024】
図1A及び1Bに示す本実施形態の一例では、硬化樹脂層3が硬化樹脂層上部3−1と硬化樹脂層下部3−2と界面部3cを含む。硬化樹脂層3に含まれる無機フィラー含有量とは、理論的には、硬化樹脂層上部3−1、硬化樹脂層下部3−2、界面部3cのそれぞれに含まれる無機フィラーの含有量の体積加重平均である。実際、例えば、半硬化樹脂シート3A由来の硬化樹脂層上部3−1の体積に対して、パターン間液状樹脂4A由来の硬化樹脂層下部3−2の体積比が10%以下、好ましくは5%以下の場合、硬化樹脂層3に含まれる第二無機フィラーの含有量は、半硬化樹脂シート3A由来の樹脂層状上部3−1に含まれる第二無機フィラーの含有量で近似することができる。また、界面部3c中の前記無機フィラーの含有量は、前記硬化樹脂層上部3−1の前記第二無機フィラーの含有量より低く、かつ、前記パターン間硬化樹脂4中の前記第一無機フィラーの含有量よりも高い。界面部3cの厚さは、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。
【0025】
パターン間硬化樹脂4に含まれる樹脂としては、エポキシ樹脂(熱膨張係数は60×10
−6/K)、フェノール樹脂(熱膨張係数は60×10
−6/K)、ビスマレイミド樹脂(熱膨張係数は50×10
−6/K)などを用いることができ、電気絶縁性、耐水性、耐薬品性などの観点から、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。本実施形態に係るパターン間硬化樹脂4は、後述の製造方法で用いるパターン間液状樹脂(液状第一樹脂)4Aの硬化物である。
【0026】
パターン間硬化樹脂4中の第一無機フィラーの含有量は、硬化樹脂層3中の第二無機フィラーの含有量よりも低いことが好ましい。硬化樹脂層3中の第二無機フィラーの含有量は、パターン間硬化樹脂4中の第一無機フィラーの含有量よりも5体積%以上高いことが好ましく、10体積%以上高いことがより好ましい。
【0027】
パターン間硬化樹脂4中には、無機フィラーが30〜60体積%含まれていることが好ましく、35〜55体積%含まれていることがより好ましい。パターン間硬化樹脂4中の第一無機フィラー含有量が30体積%以上であると、より良好な放熱性が得られる。また、パターン間硬化樹脂4中の第一無機フィラー含有量が60体積%以下であると、パターン間硬化樹脂4を形成する際に、無機フィラーがパターン間液状樹脂4Aとなる液状樹脂組成物の流動性を低下させて、銅パターン2間におけるパターン間硬化樹脂4の充填性に支障をきたすことを防止できる。
【0028】
「プリント配線基板の製造方法」
次に、
図2と3に示す本実施形態のプリント配線基板10の製造方法の一例を説明する。
本実施形態のプリント配線基板10の製造方法は、少なくとも以下の第一工程と第二工程とを含む。
第一工程は、基材1の表面に形成された銅パターン2のパターン間に、銅パターン上面2a以上の厚みで、第一無機フィラーを含む液状の樹脂(「パターン間液状樹脂」、「液状第一樹脂」ともいう)4Aを充填し、乾燥して硬化率10〜50%の半硬化状態とするパターン間半硬化樹脂(半硬化第一樹脂ともいう)4B形成工程である(
図2)。
第二工程は、パターン間半硬化樹脂4Bの上に、第二無機フィラーを含む硬化率10〜50%の半硬化状態の半硬化樹脂シート(半硬化第二樹脂ともいう)3Aを重ねて減圧雰囲気中でプレスを行う真空プレス工程である(
図3)。
【0029】
半硬化樹脂シート3Aの硬化率は、前記パターン間半硬化樹脂4Bの硬化率より、5%以上高いことが好ましい。半硬化樹脂シート3Aの硬化率と前記銅パターン間半硬化樹脂4Bの硬化率との差が、5%〜20%であることが好ましく、10%〜20%であることがより好ましい。
半硬化樹脂シート3Aに含まれる第二無機フィラーの含有量は、前記パターン間液状樹脂4Aに含まれる第一無機フィラーの含有量よりも5体積%以上多いことが好ましい。
【0030】
「硬化率の定義」
得られたBステージ(半硬化)状態のシートおよび硬化体をサンプリングし、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q2000」)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25〜300℃まで昇温させ、総発熱量C
1(cal/g)を測定した。
次に、未硬化状態のエポキシ樹脂組成物を試料として、同条件にて示差走査熱量計の測定を行い、総発熱量C
0(cal/g)を測定した。硬化率は、(C
0−C
1)/C
0×100(%)より求めた。
【0031】
[第一工程]
図2が本実施形態の製造方法の第一工程を示す断面図である。
図1に示す最終のプリント配線基板10を製造するには、まず、基材1上に公知の方法により銅箔層を形成し、銅箔層を公知の方法によりコイルパターンの形状など所定の形状にパターニングし、銅パターン2を形成する。
【0032】
基材1としては、ガラスエポキシ基板、ポリイミドからなるフレキシブル基板など、従来公知の基材を用いることができる。
【0033】
銅パターン2の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、コイルパターンであってもよい。本実施形態のプリント配線基板10では、銅パターン2がコイルパターンである場合にコイルで熱が発生しても、熱応力によって銅パターン2の側面2bとパターン間硬化樹脂4との界面剥離が生じにくいため、コイルに流すことのできる電流を大きくできる。銅パターン2の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、本発明の効果をより発揮する観点から、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
【0034】
次に、銅パターン間2に、パターン間液状樹脂4Aを充填する。
パターン間液状樹脂4Aを充填する方法としては、例えば、ロールコータを用いる方法、ディスペンサーを用いる方法、スクリーン印刷法など、公知の方法を用いることができる。銅パターン間の充填量としては、例えば、一例として
図2に示すように、銅パターン2上面2a以上の厚みで充填する。
【0035】
また、銅パターン2上面2a上でも、銅パターン2側面2bに付近において、存在することが好ましい。また、本実施形態において、少なくとも銅パターン2上面2aの一部の銅箔を漏出する。銅パターン2上面2aの全面積に対して、銅箔を漏出する部分の面積比は、例えば、50〜98%であることが好ましく、70〜95%であることがより好ましい。
【0036】
銅パターン2の間に、パターン間液状樹脂4Aを充填し、乾燥して硬化率10〜50%の半硬化状態であるパターン間樹脂(半硬化第一樹脂ともいう)4Bを形成する。
樹脂組成物を、硬化率10〜50%の半硬化状態を形成するための熱処理の温度、時間などの条件は、パターン間硬化樹脂4の厚み、パターン間硬化樹脂4となる樹脂の種類などに応じて適宜決定できる。
【0037】
本実施形態において、パターン間液状樹脂4Aを銅パターン2の間に充填する前に、銅パターン2の側面2b及び上面2aを、処理液を用いて粗面化することが好ましい。このことにより、銅パターン2の側面2bとパターン間硬化樹脂4、銅パターン2の上面2aと硬化樹脂層3との密着性が良好なものとなる。
【0038】
処理液は、例えば、有機酸系エッチング液、硫酸系エッチング液、過酸化水素系エッチング液などの公知のエッチング液を用いることができる。市販されている有機酸系エッチング液としては、例えば、メック社製のCZ―8100(商品名)などを用いることができる。市販されている硫酸/過酸化水素系エッチング液(硫酸および過酸化水素を含むエッチング液)としては、例えば、マクダーミッド社製のマルチボンド100(商品名)などを用いることができる。
【0039】
[パターン間液状樹脂4A]
本実施形態の第一工程に用いるパターン間液状樹脂4Aとしては、例えば、上述した樹脂および第一無機フィラーと、硬化剤と溶媒とを含む液状のものなどが挙げられる。硬化剤および溶媒の種類は、上記の樹脂の種類に応じて適宜決定できる。また、硬化剤および溶媒の含有量は、樹脂の種類、無機フィラーの含有量などに応じて適宜決定できる。ここで、
図1に示す最終のプリント配線基板10のパターン間硬化樹脂4中にボイドを発生させないために、樹脂として液状樹脂を用いた無溶剤の樹脂組成物を使用する。
【0040】
前記第一無機フィラーは、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機フィラーであることが好ましい。
【0041】
パターン間液状樹脂4Aとしては、例えば、以下のような、アルミナを含有する無溶剤型エポキシ樹脂組成物が挙げられる。
液状エポキシ樹脂組成物:
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:830、DIC株式会社製)51.2質量%
・酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤(商品名:HN2200、日立化成株式会社製)47.8質量%
・イミダゾール系硬化触媒(商品名:2E4MZ、四国化成工業株式会社製)1質量%
無機フィラー
・アルミナ 40体積%
【0042】
[第二工程]
図3が本実施形態の製造方法の第二工程を示す断面図である。
図1に示す最終のプリント配線基板10を製造するには、まず、第一工程で得られた半硬化状態の樹脂4Bを含む基板の上に、半硬化状態の半硬化樹脂シート3Aを重ねて積層体を形成する。そして、その積層体を減圧雰囲気中で加熱プレスを行い、半硬化状態の樹脂4Bと半硬化状態の半硬化樹脂シート3Aを軟化しながら、加熱硬化する。樹脂組成物を硬化させるための熱処理の温度、時間などの条件は、パターン間硬化樹脂4の厚み、パターン間硬化樹脂4となる樹脂の種類などに応じて適宜決定できる。
【0043】
上記の方法によりパターン間硬化樹脂4を形成するので、例えば、半硬化状態の半硬化樹脂シート3Aのみを用いて、銅パターン2上に積層して熱プレスする従来方法と比較して、ボイドが形成されにくくなる。また、パターン間液状樹脂4Aを用いて銅パターン2の間に充填するため、半硬化状態の半硬化樹脂シート3Aは、銅パターン間に充填する必要がなくなる。従って、半硬化樹脂シート3A中の第二無機フィラーの含有量を多くして、放熱性を向上させることができるとともに、熱応力による銅パターン2の側面2bとパターン間硬化樹脂4との界面剥離をより効果的に抑制できる。
【0044】
本実施形態において、銅パターン2の上面2aに、銅箔が露出した部分があるので、銅パターン2上面2aを、半硬化樹脂シート3Aを重ねる前に、必要に応じて銅パターン2上を、処理液を用いて粗面化してもよい。
【0045】
粗面化に用いる処理液は、例えば、有機酸系エッチング液、硫酸系エッチング液、過酸化水素系エッチング液などの公知のエッチング液を用いることができる。市販されている有機酸系エッチング液としては、例えば、メック社製のCZ―8100(商品名)などを用いることができる。市販されている硫酸/過酸化水素系エッチング液(硫酸および過酸化水素を含むエッチング液)としては、例えば、マクダーミッド社製のマルチボンド100(商品名)などを用いることができる。
【0046】
本実施形態において、半硬化状態のパターン間半硬化樹脂4Bと半硬化状態の半硬化樹脂シート3Aを積層して熱プレス処理を行うため、それらの界面において、完全に硬化する前に、お互いの樹脂が容易に混ざり合うことができる。その結果、特に表面粗面化処理がなくても、2種類の樹脂が容易に一体化になる。
【0047】
[半硬化樹脂シート3A]
本実施形態の第二工程に用いる半硬化樹脂シート3Aとしては、例えば、上述した樹脂および第二無機フィラーと、硬化剤と溶媒とを含む半硬化状態のものなどが挙げられる。硬化剤および溶媒の種類は、上記の樹脂の種類に応じて適宜決定できる。また、硬化剤および溶媒の含有量は、樹脂の種類、無機フィラーの含有量などに応じて適宜決定できる。
【0048】
前記第二無機フィラーは、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の無機フィラーであることが好ましい。
【0049】
本実施形態の半硬化樹脂シート3Aは、硬化率10〜50%の半硬化状態である。半硬化樹脂シート3Aは、ガラス繊維などの芯材と芯材に含浸された液状樹脂組成物の半硬化状態(Bステージ状態、硬化率10〜50%)の樹脂とからなるプリプレグであることが好ましい。また、半硬化状態のパターン間半硬化樹脂4Bより、硬化率が5%以上高いことが好ましい。この場合、第二工程の熱プレス処理において、パターン間半硬化樹脂4Bが先に軟化することが可能になり、銅パターン間の充填性をさらに高めることができる。また、銅パターン2の上面2aにある銅パターン間半硬化樹脂4Bを半硬化樹脂シート3Aにより平坦化できるので、最終硬化してなる硬化樹脂層3は、半硬化樹脂シート3Aとほぼ同等の平坦性を得ることができる。
【0050】
半硬化樹脂シート3Aに含まれる第二無機フィラーの含有量が、前記パターン間半硬化樹脂4Bに含まれる第一無機フィラーの含有量よりも多いことが好ましい。半硬化樹脂シート3Aに含まれる第二無機フィラーの含有量は、前記銅パターン間樹脂に含まれる第一無機フィラーの含有量よりも5体積%以上多いことが好ましく、10体積%以上多いことがより好ましい。その場合、第二工程の熱プレス処理において、パターン間半硬化樹脂4Bが先に軟化することが可能になり、銅パターン間の充填性をさらに高めることができる。また、銅パターン2の上面2aにある銅パターン間半硬化樹脂4Bを半硬化樹脂シート3Aにより平坦化できるので、最終硬化してなる硬化樹脂層3は、半硬化樹脂シート3Aとほぼ同等の平坦性を得ることができる。
【0051】
半硬化樹脂シート(半硬化第二樹脂)3Aとしては、例えば、ガラス繊維からなる芯材と、芯材に含浸された以下に示す液状樹脂組成物の半硬化物とからなるプリプレグが挙げられる。
エポキシ樹脂組成物:
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:830、DIC株式会社製)51.2質量%
・酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤(商品名:HN2200、日立化成株式会社製)47.8質量%
・イミダゾール系硬化触媒(商品名:2E4MZ、四国化成工業株式会社製)1質量%
無機フィラー
・アルミナ 40体積%
【0052】
半硬化樹脂シート3Aとパターン間半硬化樹脂4Bとは、同じ種類の樹脂成分であることが好ましく、同じ樹脂成分であることがより好ましい。同じ種類の樹脂成分である場合、半硬化樹脂シート3A中の樹脂組成物が、パターン間半硬化樹脂4Bと混合し易くなる。
【0053】
半硬化樹脂シート3Aとパターン間半硬化樹脂4Bとが同じ種類の樹脂とは、半硬化樹脂シート3Aを製造するために用いる液状熱硬化性樹脂と、パターン間半硬化樹脂4Bを製造するために用いるパターン間液状樹脂4Aとは、例えば、同じ液状エポキシ樹脂を用いる。
【0054】
半硬化樹脂シート3Aとパターン間半硬化樹脂4Bとは、同じ種類の無機フィラーを含むことがより好ましい。同じ種類の無機フィラーを用いる場合、半硬化樹脂シート3A中の樹脂組成物が、パターン間半硬化樹脂4B中の樹脂組成物と混合し易くなる。
【0055】
以上の工程により第一実施形態のプリント配線基板10が得られる。
【0056】
(第二実施形態)
「プリント配線基板」
図4は、本実施形態のプリント配線基板の一例を示した概略断面図である。本実施形態のプリント配線基板30は、電源用多層基板などに好適に使用できるものである。本実施形態のプリント配線基板30は、基材31と、基材31上に形成された銅パターン32と、銅パターン32間に充填されたパターン間硬化樹脂層34と、銅パターン32上およびパターン間硬化樹脂層34上に形成された硬化樹脂層33とを有する。
【0057】
パターン間硬化樹脂層34は、後述の製造方法で用いるパターン間液状樹脂34A(第一樹脂34Aということがある)の硬化物である(
図5と6)。前記硬化樹脂層33は、後述の製造方法で用いる半硬化樹脂シート33A(第二樹脂33Aということがある)及び前記パターン間液状樹脂34Aからなる硬化物である(
図5と6)。
本実施形態において、
図4に示すように、銅パターン32の上面32aにおいて、実質的に全面で第一樹脂34A由来の硬化物が形成されている点について、第一実施形態と異なる。その他については、第一実施形態と同じである。
【0058】
図4Aの部分拡大図の
図4Bに示すように、硬化樹脂層33は、硬化樹脂層上部(半硬化樹脂シート33A由来の硬化物)33−1と硬化樹脂層下部(パターン間液状樹脂34A由来の硬化物)33−2を含む。また、硬化樹脂層上部(半硬化樹脂シート33A由来の硬化物)33−1と硬化樹脂層下部(パターン間液状樹脂34A由来の硬化物)33−2との間に、界面部33cが形成されている。界面部33cは、後述の製造方法の一例(
図6)において、熱プレス処理で半硬化のパターン間半硬化樹脂34Bと半硬化樹脂シート33Aとの接触面に、それぞれの樹脂或いはフィラーが混合することによって混合層33cが形成されることは好ましい。2種類の樹脂界面において、このような半硬化状態の樹脂の混合物からなる硬化物が形成されることより、硬化樹脂層33及び銅パターン間硬化樹脂層34が一体化し、無機フィラーを高充填化させながら、ボイドの発生を抑制し、絶縁耐力低下や熱的膨れを抑制することができる。
【0059】
「プリント配線基板の製造方法」
次に、
図5と6に示す本実施形態のプリント配線基板30の製造方法の一例を説明する。
本実施形態のプリント配線基板30の製造方法は、第一実施形態と同様に、第一工程及び第二工程を含む。
第一工程において、銅パターン32の間に、パターン間液状樹脂34Aを充填する際に、
図5に示すように、銅パターン32上面32a上、全面において、パターン間液状樹脂34Aが形成されている。銅パターン32上面32a上に、銅パターン32が実質的に露出していないことが好ましい。すなわち、銅パターン32上面32aの全面積に対して、銅箔を漏出する部分の面積比は、例えば、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
【0060】
銅パターン32上面32a上の硬化樹脂層下部33−2の平均厚さは、例えば、1〜30μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。パターン間液状樹脂34Aを、銅パターン32上面32a上、薄くて全面に塗ることで、半硬化後でパターン間半硬化樹脂34Bになる。
図6に示すように、第二工程の熱プレス処理を経て、得られる硬化後のプリント配線板30の硬化樹脂層33は、半硬化樹脂シート33Aの平坦度をほぼ維持することができる。また、銅パターン32の露出する部分が実質的にないため、半硬化樹脂シート33Aのフィラー含有量と銅パターン32との密着性との関係がなく、より高い充填率の半硬化樹脂シート33Aを用いることができる。
【0061】
パターン間液状樹脂34Aを充填する方法としては、例えば、ロールコータを用いる方法、ディスペンサーを用いる方法、スクリーン印刷法など、公知の方法を用いることができる。また、充填後、必要に応じて、液状樹脂のままで、公知の方法で表面を平坦化することができる。また、同時に、露出している銅パターンの部分に、その液状樹脂を塗布することもできる。すなわち、方法に限定されないが、パターン間液状樹脂34Aを半硬化状態のパターン間半硬化樹脂34Bになる前に、銅パターン32上面32a上に、薄く、全面にその液状樹脂を塗布することが好ましい。
【0062】
その他については、第一実施形態と同様である。以上の工程により本実施形態のプリント配線基板30が得られる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の内容をより詳細に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1〜27、比較例1〜6)
ガラスエポキシからなる基材1上に形成された銅箔層を、エッチングすることによりパターニングして、厚み100μm、隣接する銅パターン間の距離が1mmのコイルパターンである銅パターン2を形成した。
次に、銅パターン間に、以下に示す方法により、厚みが100μm以上又は100μm未満、幅が1mmであるパターン間半硬化樹脂4Bを形成した。厚みが100μm以上(銅パターン上面以上の厚み)である場合、表1と表2において「A」で示し(実施例1〜6、比較例1〜4,6、7)、厚みが100μm未満(銅パターン上面未満の厚み)である場合、表2において「B」で示した(比較例5)。
【0065】
半硬化パターン間半硬化樹脂4Bは、以下に示す液状樹脂組成物4Aをスクリーン印刷することにより銅パターン間に充填し(
図2(a))、110℃の温度で60分間熱処理して表1と表2に示す硬化率で硬化させて形成した(
図2(b))。
【0066】
「銅パターン樹脂層に使用した樹脂組成物」
表1と表2に示す無機フィラーを秤量し、所定量の液状の無溶剤型エポキシ樹脂に添加して、三本ロールにて混錬することにより、パターン間硬化樹脂4の形成に使用するパターン間液状樹脂4Aの組成物を得た。上記無溶剤型エポキシ樹脂の組成は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:830、DIC株式会社製)51.2質量%、酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤(商品名:HN2200、日立化成株式会社製)47.8質量%、イミダゾール系硬化触媒(商品名:2E4MZ、四国化成工業株式会社製)1質量%である。
【0067】
次に、銅パターン2の上表面2aおよびパターン間半硬化樹脂4B上に、ガラス繊維からなる芯材と、芯材に含浸された表1と表2に示す硬化率で半硬化状態(Bステージ状態)の以下に示す樹脂組成物とからなるプリプレグ(半硬化樹脂シート3A)を積層し、185℃、4.5MPaの圧力で60分間、真空熱プレスする方法により、硬化樹脂層3を形成した(
図3(b))。
以上の工程により実施例1〜27、比較例1〜6のプリント配線基板を得た。
【0068】
「半硬化樹脂シートに使用した樹脂組成物」
表1と表2に示す無機フィラーを所定量含む無溶剤型エポキシ樹脂を用いた。上記無溶剤型エポキシ樹脂の組成は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:830、DIC株式会社製)51.2質量%、酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤(商品名:HN2200、日立化成株式会社製)47.8質量%、イミダゾール系硬化触媒(商品名:2E4MZ、四国化成工業株式会社製)1質量%である。
【0069】
実施例1〜27、比較例1〜6のプリント配線基板について、それぞれ以下に示す方法により、以下に示す各項目について調べた。その結果を表1と表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
(無機フィラーの含有量(体積%))
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影したプリント配線基板の断面の画像において、銅パターン間樹脂の長さ20mmの範囲に含まれる無機フィラーの粒径から、100個以上の無機フィラーの体積を算出した。その平均値を、銅パターン間樹脂中に含まれる無機フィラーの含有量(体積%)とした。
同様に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影したプリント配線基板の断面の画像において、樹脂層の長さ20mmの範囲に含まれる無機フィラーの粒径から、100個以上の無機フィラーの体積を算出した。その平均値を、樹脂層中に含まれる無機フィラーの含有量(体積%)とした。
【0073】
「硬化率の評価」
得られたBステージ(半硬化)状態のシートおよび硬化体をサンプリングし、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製、「Q2000」)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で25〜300℃まで昇温させ、総発熱量C1(cal/g)を測定した。
次に、未硬化状態のエポキシ樹脂組成物を試料として、同条件にて示差走査熱量計の測定を行い、総発熱量C0(cal/g)を測定した。硬化率は、(C0−C1)/C0×100(%)より求めた。
【0074】
(パターン間樹脂ボイドありなし)
プリント配線基板を樹脂に埋め込んで切断し、切断面を研磨した。切断面に露出した銅パターン間樹脂の表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)画像を取得した。取得した画像上の銅パターン間樹脂について、長さ20mmの範囲内にボイドが形成されているか否かを目視により調べた。
「なし」:サイズ1μm以上のボイドが0個である。
「低頻度」:サイズ1μm以上のボイドが1〜5個である。
「あり」:サイズ1μm以上のボイドが5個以上である。
ボイドのサイズは、SEMで観測したボイド1個当たりの平均直径である。
【0075】
(ピール強度の測定)
プリント配線基板の銅箔に、幅10mm、長さ100mmの矩形部分を囲む切込みをいれた。この矩形部分の一端を剥がして、つかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC−50C−SL」)で掴んだ。前記矩形部分の長さ35mmの範囲を垂直方向に引き剥がし、この引き剥がし時の荷重(kgf/cm)を、ピール強度として測定した。前記の引き剥がしは、室温中にて、50mm/分の速度で行った。
【0076】
(熱伝導率の測定)
プリント配線基板の熱伝導率λ(単位はW/(m・K))を、幅10mm×10mm×厚み0.5mmの大きさに切り出した測定用試料を用い、キセノンフラッシュアナライザ(LFA447NanoFlash、NETZSCH社製)によるレーザーフラッシュ法による熱拡散率α(単位はm
2/秒)、比重測定キット(エー・アンド・デイ社製)を用いて測定した密度ρ(単位はkg/m
3)、DSC測定装置(ThermoPlusEvo DSC8230、リガク社製)を用いて測定した比熱容量c(単位はJ/(kg・K))の各測定値から、λ=α×ρ×cとして求めた。
【0077】
(厚みばらつきの評価方法)
プリント配線基板の四隅、中心、四辺の中点、合計9箇所について、マイクロメータにて厚みを測定し、(最大値)−(最小値)=ばらつき とした。
【0078】
(温度サイクル試験)
プリント配線基板に対し、低温−40℃、高温155℃の条件で温度サイクル試験を行い、500サイクル後、1000サイクル後、3000サイクル後の回路基板について、それぞれ銅パターンの側面2bと銅パターン間樹脂層とが剥離しているか否かを調べた。剥離の有無は、回路基板を樹脂に埋め込んで切断し、切断面を研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM)画像を取得し、目視により確認し、以下に示すように評価した。
【0079】
「3000」:3000サイクル後の回路基板に剥離が見られなかった。
「2000」:3000サイクル後の回路基板は剥離していたが、2000サイクル後の回路基板には剥離が見られなかった。
「1000」:2000サイクル後の回路基板は剥離していたが、1000サイクル後の回路基板には剥離が見られなかった。
「500」:1000サイクル後の回路基板は剥離していたが、500サイクル後の回路基板には剥離が見られなかった。
【0080】
表1と表2に示す温度サイクル試験の結果のとおり、実施例1〜27では、樹脂層中および銅パターン間樹脂中に無機フィラーを含まない比較例1と比較して、銅パターンの側面と銅パターン間樹脂との密着性が優れていることが確認できた。
【0081】
(実施例28〜30)
表3に示す無機フィラーを用いた以外は、実施例1〜27と同様に、実施例28〜30のプリント配線基板を得た。表3に示す。実施例1〜27と同様な方法で評価し、結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
表1〜表3に示すボイド試験の結果のとおり、下記の製造方法で得られた実施例1〜30では、パターン間樹脂ボイドがない、あるいは低頻度であることが確認できた。この製造方法は、基材表面に形成された銅パターンのパターン間に、少なくとも前記銅パターン上面以上の厚み(表1〜表3の「A」)で、無機フィラーを含む液状の樹脂を充填し、乾燥して硬化率10〜50%の半硬化状態とするパターン間半硬化樹脂形成工程と、その上に無機フィラーを含む硬化率10〜50%の半硬化状態の半硬化樹脂シートを重ねて減圧雰囲気中でプレスを行う真空プレス工程とを含む。
【0084】
また、パターン間半硬化樹脂形成工程において、基材表面に形成された銅パターンのパターン間にパターン間半硬化樹脂形成工程において、充填した樹脂の半硬化率が5%、60%である比較例2〜4は、銅パターン間樹脂にボイドは形成されていた。
基材表面に形成された銅パターンのパターン間に、前記銅パターン上面未満の厚み(表2の「B」)で、無機フィラーを含む液状の樹脂を充填する比較例6は、銅パターン間樹脂にボイドは形成されていた。