【課題】ハンダフィレットによる応力を十分に緩和しつつ、導電性樹脂層の形成に用いられる導電性樹脂の量を削減できると共に、側面に対応する外部電極の電極部分に作用する応力を緩和することが可能な電子部品を提供する。
【解決手段】積層コンデンサC1は、素体2と、外部電極5とを備えている。外部電極7は、素体2の端面2bと第一側面2cとに形成されている。外部電極7は、端面2bと第一側面2cとに位置している第二電極層23を有している。第二電極層23の厚みT
互いに対向する一対の端面と、前記一対の端面と隣り合うと共に互いに対向する一対の第一側面と、前記一対の端面と隣り合うと共に互いに対向する一対の第二側面と、を有し、直方体形状を呈している素体と、
前記端面と前記第一側面とに形成された外部電極と、を備え、
前記外部電極は、前記端面と前記第一側面とに位置している導電性樹脂層を有し、
前記端面の中央領域における前記導電性樹脂層の厚みは、前記端面の外周領域における前記導電性樹脂層の厚みよりも大きく、前記導電性樹脂層の厚みは、前記中央領域から前記外周領域に向かって減少していき、
前記第一側面における前記導電性樹脂層の厚みは、前記端面の前記外周領域における前記導電性樹脂層の厚みよりも大きい、電子部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ハンダフィレットによる応力を十分に緩和しつつ、導電性樹脂層の形成に用いられる導電性樹脂の量を削減することが可能な電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
外部電極を備える電子部品は、たとえば、他の電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品など)にハンダ実装される。外部電極には、溶融したハンダが固化することにより、ハンダフィレットが形成される。溶融したハンダが固化する際に、ハンダフィレットには応力が発生する。ハンダフィレットによる応力は、外部電極を介して素体に作用するものの、素体に作用する応力は導電性樹脂層により緩和される。
【0006】
導電性樹脂層の厚みが小さくされることにより、導電性樹脂層の形成に用いられる導電性樹脂の量を削減することは可能である。しかしながら、導電性樹脂層の厚みが小さくされると、ハンダフィレットによる応力を緩和することは難しい。
【0007】
そこで、本発明者らは、ハンダフィレットによる応力を十分に緩和しつつ、導電性樹脂層の形成に用いられる導電性樹脂の量を削減し得る電子部品について、調査研究を行った。その結果、本発明者らは、以下の事実を見出し、本発明を想到するに至った。
【0008】
ハンダフィレットによる応力は、端面の外周領域に対応する外部電極の外周電極部分に比べて、端面の中央領域に対応する外部電極の中央電極部分に強く作用する。すなわち、外部電極の中央電極部分に作用する応力は、外部電極の外周電極部分に作用する応力よりも大きい。導電性樹脂層の厚みが、外部電極の中央電極部分に作用する応力を十分に緩和し得る厚みとされることにより、ハンダフィレットによる応力を十分に緩和することが可能となる。
【0009】
外部電極の外周電極部分に作用する応力は、外部電極の中央電極部分に作用する応力よりも小さい。したがって、作用する応力が外部電極の中央電極部分よりも小さい外部電極の外周電極部分に対応させて、端面の外周領域における導電性樹脂層の厚みを、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚みよりも小さくすることが可能である。この場合、端面の外周領域における導電性樹脂層の厚みが、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚みよりも小さくされる分、導電性樹脂の量を削減することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る電子部品は、互いに対向する一対の端面と、一対の端面と隣り合う側面と、を有している素体と、少なくとも端面に形成された外部電極と、を備え、外部電極は、少なくとも端面に位置している導電性樹脂層を有し、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚みは、端面の外周領域における導電性樹脂層の厚みよりも大きい。
【0011】
本態様に係る電子部品では、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚みが、端面の外周領域における導電性樹脂層の厚みよりも大きいので、ハンダフィレットによる応力を十分に緩和することができる。
【0012】
端面の外周領域における導電性樹脂層の厚みは、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚みよりも小さいので、たとえば、導電性樹脂層全体にわたって、端面の外周領域における導電性樹脂層の厚みが維持されている構成に比して、本態様に係る電子部品では、導電性樹脂の量を削減することができる。
【0013】
外部電極は、側面にも形成されており、導電性樹脂層は、側面にも位置し、側面における導電性樹脂層の厚みは、端面の外周領域における導電性樹脂層の厚みよりも大きくてもよい。
【0014】
上記側面が電子機器と対向している状態で電子部品が電子機器にハンダ実装されている場合、側面に対応する外部電極の電極部分にも電子機器から応力が作用することがある。たとえば、電子部品が回路基板にハンダ実装されている場合、回路基板の撓みに伴い、側面に対応する外部電極の電極部分にも撓み応力が作用する。
【0015】
側面における導電性樹脂層の厚みが、端面の外周領域における導電性樹脂層の厚みよりも大きい場合、たとえば、側面における導電性樹脂層の厚みが端面の外周領域における導電性樹脂層の厚み以下である構成に比して、側面に対応する外部電極の電極部分に作用する応力を緩和することができる。
【0016】
外部電極は、側面にも形成されており、導電性樹脂層は、側面にも位置し、側面における導電性樹脂層の厚みは、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚みよりも小さくてもよい。この場合、たとえば、導電性樹脂層全体にわたって、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚みが維持されている構成に比して、導電性樹脂の量を削減することができる。
【0017】
外部電極は、側面にも形成されており、導電性樹脂層は、側面にも位置し、側面における導電性樹脂層の厚みは、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚みよりも大きくてもよい。この場合、たとえば、側面における導電性樹脂層の厚みが端面の中央領域における導電性樹脂層の厚み以下である構成に比して、側面に対応する外部電極の電極部分に作用する応力を緩和することができる。
【0018】
外部電極は、素体に形成された焼結金属層を更に有し、導電性樹脂層は、焼結金属層に形成されていてもよい。この場合、素体と外部電極との固着強度を向上することができる。
【0019】
焼結金属層は、端面と側面とに形成されており、側面における焼結金属層の厚みは、端面の中央領域における焼結金属層の厚みよりも小さく、かつ、端面の外周領域における焼結金属層の厚みよりも大きくてもよい。この場合、端面の中央領域における焼結金属層の厚みは、側面における焼結金属層の厚み、及び、端面の外周領域における焼結金属層の厚みよりも大きい。したがって、ハンダフィレットによる応力が強く作用する領域において、素体と焼結金属層との固着強度を向上することができる。側面における焼結金属層の厚みが、端面の外周領域における焼結金属層の厚みよりも大きいので、電子機器からの応力が作用する領域において、素体と焼結金属層との固着強度を向上することができる。これらの結果、素体と外部電極との固着強度をより一層向上することができる。
【0020】
焼結金属層は、端面と側面とに形成されており、端面の中央領域における焼結金属層の表面粗さは、端面の外周領域における焼結金属層の表面粗さよりも大きくてもよい。この場合、ハンダフィレットによる応力が強く作用する領域において、焼結金属層と導電性樹脂層との固着強度を向上することができる。
【0021】
焼結金属層は、端面と側面とに形成されており、側面における焼結金属層の表面粗さは、端面の外周領域における焼結金属層の表面粗さよりも大きくてもよい。この場合、電子機器からの応力が作用する領域において、焼結金属層と導電性樹脂層との固着強度を向上することができる。
【0022】
焼結金属層は、少なくとも端面に形成されており、端面の中央領域における焼結金属層の厚みは、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚みよりも大きくてもよい。素体内に内部導体が配置されている場合、当該内部導体は端面の中央領域に露出していることが多い。したがって、素体内に内部導体が配置されている構成において、端面の中央領域における焼結金属層の厚みが、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚みよりも大きい場合、たとえば、端面の中央領域における焼結金属層の厚みが、端面の中央領域における導電性樹脂層の厚み以下である構成に比して、内部導体と焼結金属層との接続性を確保することができる。
【0023】
外部電極は、端面と側面とに形成された焼結金属層を更に有し、導電性樹脂層は、焼結金属層上に形成され、かつ、端面と側面とに位置しており、側面における導電性樹脂層の厚みは、側面における焼結金属層の厚みよりも大きくてもよい。この場合、側面における導電性樹脂層の厚みが、側面における焼結金属層の厚み以下である構成に比して、側面に対応する外部電極の電極部分に作用する応力を緩和することができる。
【0024】
外部電極は、導電性樹脂層に形成されためっき層を更に有していてもよい。この場合、電子部品を電子機器に確実にハンダ実装することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ハンダフィレットによる応力を十分に緩和しつつ、導電性樹脂層の形成に用いられる導電性樹脂の量を削減することが可能な電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0028】
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る積層コンデンサC1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る積層コンデンサを示す斜視図である。
図2及び
図3は、本実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。本実施形態では、電子部品として積層コンデンサC1を例に説明する。
【0029】
積層コンデンサC1は、
図1に示されるように、直方体形状を呈している素体2と、素体2の外表面に配置される外部電極5及び外部電極7と、を備えている。外部電極5と外部電極7とは、離間している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。外部電極5,7は、端子電極でもある。
【0030】
素体2は、その外表面として、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の第一側面2c,2dと、互いに対向している一対の第二側面2e,2fと、を有している。本実施形態では、一対の端面2a,2bが対向している方向(第一方向D1)が素体2の長手方向であり、一対の第一側面2c,2dが対向している方向(第二方向D2)が素体2の高さ方向であり、一対の第二側面2e,2fが対向している方向(第三方向D3)が素体2の幅方向である。
【0031】
素体2の第一方向D1の長さは、素体2の第二方向D2の長さ及び素体2の第三方向D3の長さよりも大きい。素体2の第二方向D2の長さと素体2の第三方向D3の長さとは、同等である。すなわち、本実施形態では、一対の端面2a,2bは正方形状を呈し、一対の第一側面2c,2dと一対の第二側面2e,2fとは、長方形状を呈している。素体2の第一方向D1の長さは、素体2の第二方向D2の長さ及び素体2の第三方向D3の長さと同等であってもよい。素体2の第二方向D2の長さと素体2の第三方向D3の長さとは、異なっていてもよい。
【0032】
同等とは、等しいことに加えて、予め設定した範囲での微差又は製造誤差などを含んだ値を同等としてもよい。たとえば、複数の値が、当該複数の値の平均値の±5%の範囲内に含まれているのであれば、当該複数の値は同等であると規定する。
【0033】
一対の第一側面2c,2dは、一対の端面2a,2bの間を連結するように第一方向D1に延びている。一対の第一側面2c,2dは、第三方向D3にも延びている。一対の第二側面2e,2fは、一対の端面2a,2bの間を連結するように第一方向D1に延びている。一対の第二側面2e,2fは、第二方向D2にも延びている。
【0034】
素体2は、一対の第一側面2c,2dが対向している方向(第二方向D2)に複数の誘電体層が積層されて構成されている。素体2では、複数の誘電体層の積層方向(以下、単に「積層方向」と称する。)が第二方向D2と一致する。各誘電体層は、例えば誘電体材料(BaTiO
3系、Ba(Ti,Zr)O
3系、又は(Ba,Ca)TiO
3系などの誘電体セラミック)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体2では、各誘電体層は、各誘電体層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。第三方向D3が上記積層方向であってもよい。
【0035】
積層コンデンサC1は、
図2及び
図3に示されるように、複数の内部電極11と、複数の内部電極13と、を備えている。内部電極11,13は、積層電子部品の内部導体として通常用いられる導電性材料(たとえば、Ni又はCuなど)からなる。内部電極11,13は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。内部電極11,13は、素体2内に配置されている内部導体として機能する。
【0036】
内部電極11と内部電極13とは、第二方向D2において異なる位置(層)に配置されている。すなわち、内部電極11と内部電極13とは、素体2内において、第二方向D2に間隔を有して対向するように交互に配置されている。内部電極11と内部電極13とは、互いに極性が異なる。
【0037】
各内部電極11は、
図3にも示されるように、主電極部11aと、接続部11bと、を含んでいる。接続部11bは、主電極部11aの一辺(一方の短辺)から延び、端面2aに露出している。内部電極11は、端面2aに露出し、端面2b、一対の第一側面2c,2d、及び一対の第二側面2e,2fには露出していない。主電極部11aと、接続部11bとは、一体的に形成されている。
【0038】
主電極部11aは、第一方向D1を長辺方向とし、第三方向D3を短辺方向とする長方形状を呈している。すなわち、各内部電極11の主電極部11aは、第一方向D1の長さが第三方向D3の長さよりも大きい。接続部11bは、主電極部11aの端面2a側の端部から端面2aまで延びている。接続部11bの第一方向D1の長さは、主電極部11aの第一方向D1の長さよりも小さい。接続部11bの第三方向D3の長さは、主電極部11aの第三方向D3の長さと同等である。接続部11bは、端面2aに露出した端部で、外部電極5に接続されている。接続部11bの第三方向D3の長さは、主電極部11aの第三方向D3の長さよりも小さくてもよい。
【0039】
各内部電極13は、
図3にも示されるように、主電極部13aと、接続部13bと、を含んでいる。主電極部13aは、第二方向D2で素体2の一部(誘電体層)を介して主電極部11aと対向している。接続部13bは、主電極部13aの一辺(一方の短辺)から延び、端面2bに露出している。内部電極13は、端面2bに露出し、端面2a、一対の第一側面2c,2d、及び一対の第二側面2e,2fには露出していない。主電極部13aと、接続部13bとは、一体的に形成されている。
【0040】
主電極部13aは、第一方向D1を長辺方向とし、第三方向D3を短辺方向とする長方形状を呈している。すなわち、各内部電極13の主電極部13aは、第一方向D1の長さが第三方向D3の長さよりも大きい。接続部13bは、主電極部13aの端面2b側の端部から端面2bまで延びている。接続部13bの第一方向D1の長さは、主電極部13aの第一方向D1の長さよりも小さい。接続部13bの第三方向D3の長さは、主電極部13aの第三方向D3の長さと同等である。接続部13bは、端面2bに露出した端部で、外部電極7に接続されている。接続部13bの第三方向D3の長さは、主電極部13aの第三方向D3の長さよりも小さくてもよい。
【0041】
外部電極5は、第一方向D1に見て、素体2における端面2a側の端部に位置している。外部電極5は、端面2aに位置している電極部分5a、一対の第一側面2c,2dに位置している電極部分5b、及び一対の第二側面2e,2fに位置している電極部分5cを有している。すなわち、外部電極5は、五つの面2a,2c,2d,2e,2fに形成されている。
【0042】
互いに隣り合う電極部分5a,5b,5c同士は、素体2の稜線部において接続されており、電気的に接続されている。電極部分5aと電極部分5bとは、端面2aと各第一側面2c,2dとの間の稜線部において、接続されている。電極部分5aと電極部分5cとは、端面2aと各第二側面2e,2fとの間の稜線部において、接続されている。
【0043】
電極部分5aは、各接続部11bの端面2aに露出した部分をすべて覆うように配置されており、接続部11bは、外部電極5に直接的に接続される。すなわち、接続部11bは、主電極部11aと電極部分5cとを接続している。これにより、各内部電極11は、外部電極5に電気的に接続される。
【0044】
外部電極7は、第一方向D1に見て、素体2における端面2b側の端部に位置している。外部電極7は、端面2bに位置している電極部分7a、一対の第一側面2c,2dに位置している電極部分7b、及び一対の第二側面2e,2fに位置している電極部分7cを有している。すなわち、外部電極7は、五つの面2b,2c,2d,2e,2fに形成されている。
【0045】
互いに隣り合う電極部分7a,7b,7c同士は、素体2の稜線部において接続されており、電気的に接続されている。電極部分7aと電極部分7bとは、端面2bと各第一側面2c,2dとの間の稜線部において、接続されている。電極部分7aと電極部分7cとは、端面2bと各第二側面2e,2fとの間の稜線部において、接続されている。
【0046】
電極部分7aは、各接続部13bの端面2bに露出した部分をすべて覆うように配置されており、接続部13bは、外部電極7に直接的に接続される。すなわち、接続部13bは、主電極部13aと電極部分7cとを接続している。これにより、各内部電極13は、外部電極7に電気的に接続される。
【0047】
外部電極5,7は、
図4〜
図7に示されるように、第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27をそれぞれ有している。すなわち、電極部分5a,5b,5cと電極部分7a,7b,7cとが、第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27をそれぞれ含んでいる。第四電極層27は、外部電極5,7の最外層を構成している。
【0048】
第一電極層21は、導電性ペーストを素体2の表面に付与して焼き付けることにより形成されている。第一電極層21は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結して形成された焼結金属層である。すなわち、第一電極層21は、素体2に形成された焼結金属層である。本実施形態では、第一電極層21は、Cuからなる焼結金属層である。第一電極層21は、Niからなる焼結金属層であってもよい。このように、第一電極層21は、Cu又はNiを含んでいる。導電性ペーストには、Cu又はNiからなる粉末に、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を混合したものが用いられている。
【0049】
第二電極層23は、第一電極層21上に付与された導電性樹脂を硬化させることにより形成されている。第二電極層23は、第一電極層21上に形成された導電性樹脂層である。導電性樹脂には、熱硬化性樹脂に金属粉末及び有機溶媒などを混合したものが用いられる。金属粉末としては、たとえば、Ag粉末又はCu粉末などが用いられる。熱硬化性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂などが用いられる。
【0050】
第三電極層25は、第二電極層23上にめっき法により形成されている。本実施形態では、第三電極層25は、第二電極層23上にNiめっきにより形成されたNiめっき層である。第三電極層25は、Snめっき層、Cuめっき層、又はAuめっき層であってもよい。このように、第三電極層25は、Ni、Sn、Cu、又はAuを含んでいる。
【0051】
第四電極層27は、第三電極層25上にめっき法により形成されている。本実施形態では、第四電極層27は、第三電極層25上にSnめっきにより形成されたSnめっき層である。第四電極層27は、Cuめっき層又はAuめっき層であってもよい。このように、第四電極層27は、Sn、Cu、又はAuを含んでいる。第三及び第四電極層25,27は、第二電極層23に形成されためっき層である。
【0052】
次に、
図4〜
図7を参照して、外部電極5,7の第一電極層21及び第二電極層23の厚みについて説明する。
【0053】
端面2a,2bの中央領域A1における第二電極層23の厚みT
RE1は、端面2a,2bの外周領域A2における第二電極層23の厚みT
RE2よりも大きい。第一側面2c,2dにおける第二電極層23の厚みT
RS1と第二側面2e,2fにおける第二電極層23の厚みT
RS2とは、第二電極層23の厚みT
RE2よりも大きい。第二電極層23の厚みT
RS1,T
RS2は、第二電極層23の厚みT
RE1よりも小さい。本実施形態では、第二電極層23の厚みT
RS1と第二電極層23の厚みT
RS2とは、同等である。
【0054】
第一側面2c,2dにおける第一電極層21の厚みT
SS1と第二側面2e,2fにおける第一電極層21の厚みT
SS2とは、端面2a,2bの中央領域A1における第一電極層21の厚みT
SE1よりも小さく、かつ、端面2a,2bの外周領域A2における第一電極層21の厚みT
SE2よりも大きい。第二電極層23の厚みT
RS1,T
RS2は、第一電極層21の厚みT
SS1,T
SS2よりも大きい。第二電極層23の厚みT
RE1は、第一電極層21の厚みT
SE1よりも大きい。本実施形態では、第一電極層21の厚みT
SS1と第一電極層21の厚みT
SS2とは、同等である。
【0055】
端面2a,2bの中央領域A1及び外周領域A2は、たとえば、以下のように規定される。
図8に示されるように、端面2a,2bが16分割されて、16区域に分け、16区域のうちの内側に位置する4区域が中央領域A1として規定され、16区域のうちの外側に位置する12区域が外周領域A2として規定される。
【0056】
ここで、厚みとは、平均厚みである。厚みT
RE1は、第二電極層23のうち、中央領域A1上に位置している部分の平均厚みである。厚みT
RE1は、たとえば10〜80μmである。厚みT
RE2は、第二電極層23のうち、外周領域A2上に位置している部分の平均厚みである。厚みT
RE2は、たとえば1〜10μmである。厚みT
RS1,T
RS2は、第二電極層23のうち、対応する側面2c,2d,2e,2fに位置している部分の平均厚みである。T
RS1,T
RS2は、たとえば10〜60μmである。
【0057】
厚みT
SE1は、第一電極層21のうち、中央領域A1上に位置している部分の平均厚みである。厚みT
SE1は、たとえば10〜100μmである。厚みT
SE2は、第一電極層21のうち、外周領域A2上に位置している部分の平均厚みである。厚みT
SE2は、たとえば1〜10μmである。厚みT
SS1,T
SS2は、第一電極層21のうち、対応する側面2c,2d,2e,2fに位置している部分の平均厚みである。T
SS1,T
SS2は、たとえば5〜30μmである。
【0058】
平均厚みは、たとえば、以下のようにして求めることができる。
【0059】
第一及び第二電極層21,23の中央領域A1上に位置している部分と外周領域A2上に位置している部分とを含む断面図を取得する。断面図は、たとえば、互いに対向している一対の側面(たとえば、一対の第二側面2e,2f)に平行であり、かつ、当該一対の側面から等距離に位置している平面で切断したときの第一及び第二電極層21,23の断面図である。取得した断面図上での、第一電極層21の中央領域A1上に位置している部分の面積、第二電極層23の中央領域A1上に位置している部分の面積、第一電極層21の外周領域A2上に位置している部分の面積、及び、第二電極層23の外周領域A2上に位置している部分の面積を算出する。
【0060】
第一電極層21の中央領域A1上に位置している部分の面積を、取得した断面図上での中央領域A1の長さで除し、得られた商を第一電極層21の中央領域A1上に位置している部分の平均厚みとする。第二電極層23の中央領域A1上に位置している部分の面積を、取得した断面図上での中央領域A1の長さで除し、得られた商を第二電極層23の中央領域A1上に位置している部分の平均厚みとする。第一電極層21の外周領域A2上に位置している部分の面積を、取得した断面図上での外周領域A2の長さで除し、得られた商を第一電極層21の外周領域A2上に位置している部分の平均厚みとする。第二電極層23の外周領域A2上に位置している部分の面積を、取得した断面図上での外周領域A2の長さで除し、得られた商を第二電極層23の外周領域A2上に位置している部分の平均厚みとする。
【0061】
第一及び第二電極層21,23のうち、対応する一対の側面2c,2dに位置している部分を含む断面図を取得する。断面図は、たとえば、互いに対向している一対の側面(たとえば、一対の第二側面2e,2f)に平行であり、かつ、当該一対の側面から等距離に位置している平面で切断したときの第一及び第二電極層21,23の断面図である。取得した断面図上での、第一電極層21の側面2c,2dに位置している部分の面積、及び、第二電極層23の側面2c,2dに位置している部分の面積を算出する。
【0062】
第一電極層21の側面2c,2dに位置している部分の面積を、取得した断面図上での側面2c,2dに位置している部分の長さで除し、得られた商を第一電極層21の側面2c,2dに位置している部分の平均厚みとする。第二電極層23の側面2c,2dに位置している部分の面積を、取得した断面図上での側面2c,2dに位置している部分の長さで除し、得られた商を第二電極層23の側面2c,2dに位置している部分の平均厚みとする。
【0063】
第一及び第二電極層21,23のうち、対応する一対の側面2e,2fに位置している部分を含む断面図を取得する。断面図は、たとえば、互いに対向している一対の側面(たとえば、一対の第一側面2c,2d)に平行であり、かつ、当該一対の側面から等距離に位置している平面で切断したときの第一及び第二電極層21,23の断面図である。取得した断面図上での、第一電極層21の側面2e,2fに位置している部分の面積、及び、第二電極層23の側面2e,2fに位置している部分の面積を算出する。
【0064】
第一電極層21の側面2e,2fに位置している部分の面積を、取得した断面図上での側面2e,2fに位置している部分の長さで除し、得られた商を第一電極層21の側面2e,2fに位置している部分の平均厚みとする。第二電極層23の側面2e,2fに位置している部分の面積を、取得した断面図上での側面2e,2fに位置している部分の長さで除し、得られた商を第二電極層23の側面2e,2fに位置している部分の平均厚みとする。
【0065】
複数の断面図を取得し、断面図毎に上記各商を取得してもよい。この場合、取得した複数の商の平均値を平均厚みとしてもよい。
【0066】
続いて、外部電極5,7の第一電極層21の表面粗さについて説明する。
【0067】
端面2a,2bの中央領域A1における第一電極層21の表面粗さは、端面2a,2bの外周領域A2における第一電極層21の表面粗さよりも大きい。第一側面2c,2dにおける第一電極層21の表面粗さ及び第二側面2e,2fにおける第一電極層21の表面粗さは、端面2a,2bの外周領域A2における第一電極層21の表面粗さよりも大きい。
【0068】
ここで、第一電極層21の表面粗さとは、第一電極層21の算術平均粗さ(Ra)である。算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601:2013(ISO 4287:1997)に定義されている。
【0069】
積層コンデンサC1は、他の電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品など)に、ハンダ実装される。積層コンデンサC1では、一対の第一側面2c,2d及び一対の第二側面2e,2fのうちの一つの側面が、他の電子機器に対向する実装面とされる。
【0070】
ハンダフィレットによる応力は、端面2a,2bの外周領域A2に対応する電極部分5a,7aの外周電極部分に比べて、端面2a,2bの中央領域A1に対応する電極部分5a,7aの中央電極部分に強く作用する。すなわち、電極部分5a,7aの中央電極部分に作用する応力は、電極部分5a,7aの外周電極部分に作用する応力よりも大きい。したがって、第二電極層23の厚みが、電極部分5a,7aの中央電極部分に作用する応力を十分に緩和し得る厚みとされることにより、ハンダフィレットによる応力を十分に緩和することが可能となる。
【0071】
積層コンデンサC1では、上述したように、第二電極層23の厚みT
RE1が、第二電極層23の厚みT
RE2よりも大きいので、ハンダフィレットによる応力を十分に緩和することができる。
【0072】
電極部分5a,7aの外周電極部分に作用する応力は、電極部分5a,7aの中央電極部分に作用する応力よりも小さい。したがって、作用する応力が電極部分5a,7aの中央電極部分よりも小さい電極部分5a,7aの外周電極部分に対応させて、第二電極層23の厚みT
RE2を、第二電極層23の厚みT
RE1よりも小さくすることが可能である。この場合、第二電極層23の厚みT
RE2が、第二電極層23の厚みT
RE1よりも小さくされる分、導電性樹脂の量を削減することができる。
【0073】
積層コンデンサC1では、上述したように、第二電極層23の厚みT
RE2が、第二電極層23の厚みT
RE1よりも小さい。これにより、たとえば、第二電極層23全体にわたって、厚みT
RE1が維持されている積層コンデンサに比して、積層コンデンサC1では、導電性樹脂の量を削減することができる。
【0074】
上記一つの側面が電子機器と対向している状態で積層コンデンサC1が電子機器にハンダ実装されている場合、電極部分5b,5c,7b,7cにも電子機器から応力が作用することがある。たとえば、積層コンデンサC1が回路基板にハンダ実装されている場合、回路基板の撓みに伴い、電極部分5b,5c,7b,7cにも撓み応力が作用する。
【0075】
積層コンデンサC1では、第二電極層23の厚みT
RS1,T
RS2が、第二電極層23の厚みT
RE2よりも大きい。これにより、たとえば、厚みT
RS1,T
RS2が厚みT
RE2以下である積層コンデンサに比して、積層コンデンサC1では、電極部分5b,5c,7b,7cに作用する応力を緩和することができる。
【0076】
積層コンデンサC1では、第二電極層23の厚みT
RS1,T
RS2が、第二電極層23の厚みT
RE1よりも小さい。これにより、たとえば、第二電極層23の全体にわたって、厚みT
RE1が維持されている積層コンデンサに比して、積層コンデンサC1では、導電性樹脂の量を削減することができる。
【0077】
外部電極5,7が、素体2に形成された第一電極層21を有し、第二電極層23が、第一電極層21に形成されている。これにより、素体2と外部電極5,7との固着強度を向上することができる。
【0078】
第一電極層21の厚みT
SS1,T
SS2は、第一電極層21の厚みT
SE1よりも小さく、かつ、第一電極層21の厚みT
SE2よりも大きい。この場合、厚みT
SE1は、厚みT
SS1,T
SS2及び厚みT
SE2よりも大きいので、ハンダフィレットによる応力が強く作用する領域において、素体2と第一電極層21との固着強度を向上することができる。第一電極層21の厚みT
SS1,T
SS2が、第一電極層21の厚みT
SE2よりも大きいので、電子機器からの応力が作用する領域において、素体2と第一電極層21との固着強度を向上することができる。これらの結果、素体2と外部電極5,7との固着強度をより一層向上することができる。
【0079】
端面2a,2bの中央領域A1における第一電極層21の表面粗さは、端面2a,2bの外周領域A2における第一電極層21の表面粗さよりも大きい。これにより、ハンダフィレットによる応力が強く作用する領域において、第一電極層21と第二電極層23との固着強度を向上することができる。
【0080】
第一側面2c,2dにおける第一電極層21の表面粗さ及び第二側面2e,2fにおける第一電極層21の表面粗さは、端面2a,2bの外周領域A2における第一電極層21の表面粗さよりも大きい。これにより、電子機器からの応力が作用する領域において、第一電極層21と第二電極層23との固着強度を向上することができる。
【0081】
第二電極層23の厚みT
RS1,T
RS2は、第一電極層21の厚みT
SS1,T
SS2よりも大きい。これにより、厚みT
RS1,T
RS2が、厚みT
SS1,T
SS2以下である積層コンデンサに比して、積層コンデンサC1では、電極部分5b,5c,7b,7cに作用する応力を緩和することができる。
【0082】
外部電極5,7は、第二電極層23に形成された第三及び第四電極層25,27を有している。これにより、積層コンデンサC1を電子機器に確実にハンダ実装することができる。
【0083】
次に、
図9〜
図12を参照して、本実施形態の変形例に係る積層コンデンサC1の構成を説明する。
図9〜
図12は、本変形例に係る外部電極の断面構成を説明するための図である。本変形例は、外部電極5,7の第一電極層21及び第二電極層23の厚みに関して、上述した実施形態と相違する。
【0084】
本変形例でも、積層コンデンサC1は、素体2、外部電極5、及び外部電極7を備えている。外部電極5は、電極部分5a、電極部分5b、及び電極部分5cを有している。外部電極7は、電極部分7a、電極部分7b、及び電極部分7cを有している。外部電極5,7は、第一電極層21、第二電極層23、第三電極層25、及び第四電極層27をそれぞれ有している。
【0085】
本変形例では、第二電極層23の厚みT
RS1,T
RS2は、第二電極層23の厚みT
RE1よりも大きい。これにより、たとえば、厚みT
RS1,T
RS2が第二電極層23の厚みT
RE1以下である積層コンデンサに比して、本変形例の積層コンデンサC1では、電極部分5b,5c,7b,7cに作用する応力を緩和することができる。
【0086】
本変形例では、第一電極層21の厚みT
SE1は、第二電極層23の厚みT
RE1よりも大きい。これにより、たとえば、厚みT
SE1が厚みT
RE1以下である積層コンデンサに比して、本変形例の積層コンデンサC1では、内部電極11,13と第一電極層21との接続性を確保することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0088】
外部電極5,7は、めっき層として、第三及び第四電極層25,27を有している、すなわち、めっき層が複数層のめっき層により構成されているが、これに限られない。めっき層は、一層のめっき層で構成されていてもよい。
【0089】
外部電極5は、五つの面2a,2c,2d,2e,2fに形成され、外部電極7は、五つの面2b,2c,2d,2e,2fに形成されているが、これに限られない。外部電極5は、端面2aと実装面として機能する一つの側面の二面に形成されていてもよく、端面2aのみに形成されていてもよい。外部電極7は、端面2bと実装面として機能する一つの側面の二面に形成されていてもよく、端面2bのみに形成されていてもよい。
【0090】
本実施形態では、電子部品として積層コンデンサC1を例に説明したが、本発明はこれに限られることなく、積層インダクタ、積層バリスタ、積層圧電アクチュエータ、積層サーミスタ、もしくは積層複合部品などの積層電子部品、又は、積層電子部品以外の電子部品にも適用できる。