【解決手段】圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、第1櫛型電極対を含む第1弾性波素子と、前記圧電基板上に設けられ、第2櫛型電極対を含む第2弾性波素子と、前記第1弾性波素子の前記第1櫛型電極対と同じ材料で形成され且つ同じ厚さの第1配線層と、前記第1配線層よりも薄い第2配線層と、を含み、前記第1弾性波素子と前記第2弾性波素子を電気的に接続する配線と、前記第2弾性波素子の前記第2櫛型電極対と前記配線の前記第2配線層とに接して前記第2配線層上に設けられ、前記第2櫛型電極対と同じ材料で形成され且つ同じ厚さの接続層と、を備える弾性波デバイス。
前記第2弾性波素子の前記第2櫛型電極対の厚さをT1、前記配線の前記第2配線層の厚さをT2とした場合に、T1/10≦T2≦T1/2を満たす、請求項1から3のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA−A間の断面図、
図1(c)は、
図1(b)の領域Bの拡大図である。
図1(a)から
図1(c)のように、弾性波デバイス100は、圧電基板10上に弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振器20及び30が設けられている。SAW共振器20は、櫛型電極対(IDT:Interdigital Transducer)21と反射器22を備える。SAW共振器30は、櫛型電極対(IDT)31と反射器32を備える。IDT21、31と反射器22、32は圧電基板10上に設けられている。
【0020】
IDT21は互いに対向する一対の櫛型電極23を有する。櫛型電極23各々は、複数の電極指24と、複数の電極指24が接続されたバスバー25と、を有する。IDT21は圧電基板10に弾性表面波を励振する。反射器22は、IDT21の弾性表面波の伝搬方向の両側に設けられている。反射器22は弾性表面波を反射する。同じ櫛型電極23内の電極指24のピッチλ1は、IDT21が励振する弾性表面波の波長に相当する。
【0021】
IDT31は互いに対向する一対の櫛型電極33を有する。櫛型電極33各々は、複数の電極指34と、複数の電極指34が接続されたバスバー35と、を有する。IDT31は圧電基板10に弾性表面波を励振する。反射器32は、IDT31の弾性表面波の伝搬方向の両側に設けられている。反射器32は弾性表面波を反射する。同じ櫛型電極33内の電極指34のピッチλ2は、IDT31が励振する弾性表面波の波長に相当する。
【0022】
SAW共振器20と30は、異なる材料で形成されている及び/又は異なる厚さで形成されている。すなわち、IDT21及び反射器22と、IDT31及び反射器32とは、異なる材料で形成されている及び/又は異なる厚さで形成されている。IDT21、31及び反射器22、32を覆うように酸化シリコン膜又は窒化シリコン膜などの絶縁膜が設けられていてもよい。絶縁膜の膜厚は、IDT21、31及び反射器22、32の厚さよりも厚くてもよいし薄くてもよい。
【0023】
SAW共振器20を構成する一対の櫛型電極23の一方は配線40に接続し、他方は配線41に接続している。SAW共振器30を構成する一対の櫛型電極33の一方は接続層50を介して配線41に接続し、他方は接続層51を介して配線42に接続している。SAW共振器20と30は、配線41及び接続層50を介して電気的に接続している。
【0024】
配線41は、SAW共振器20のバスバー25の側面に接する配線層41aと、配線層41aの側面に接し、配線層41aから延在した配線層41bと、を含む。配線層41aは、SAW共振器20のIDT21及び反射器22と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さとなっている。配線層41bは、配線層41aよりも薄くなっている。配線層41bは、配線層41aと同じ材料で形成され、同じ層構造を有していてもよい。配線層41bは、少なくとも配線層41aに含まれる材料を含んで形成されている。同じ厚さとは、完全に同じ厚さの場合に限られず、製造誤差程度に同じ厚さである略同じ厚さの場合も含む(以下においても同じ)。
【0025】
接続層50は、配線層41b上に設けられている。接続層50は、SAW共振器30のバスバー35の側面と配線層41bの上面とに接している。接続層50は、SAW共振器30のIDT31及び反射器32と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さとなっている。
【0026】
このように、配線41の配線層41aがSAW共振器20のIDT21に接し、接続層50がSAW共振器30のIDT31と配線41の配線層41bとに接することで、SAW共振器20と30は配線41及び接続層50を介して電気的に接続している。
【0027】
配線40は、SAW共振器20の一対のバスバー25のうちの配線41が接していないバスバー25の側面に接し、SAW共振器20のIDT21及び反射器22と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さとなっている。
【0028】
配線42は、配線41と同様に、配線層42aと配線層42aから延在した配線層42bとを含む。配線層42aは、SAW共振器20のIDT21及び反射器22と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さとなっている。配線層42bは、配線層42aよりも薄くなっている。配線層42bは、配線層42aと同じ材料で形成され、同じ層構造を有していてもよい。配線層42bは、少なくとも配線層42aに含まれる材料を含んで形成されている。
【0029】
接続層51は、配線層42b上に設けられている。接続層51は、SAW共振器30の一対のバスバー35のうちの接続層50が接していないバスバー35の側面と配線層42bの上面とに接している。接続層51は、SAW共振器30のIDT31及び反射器32と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さとなっている。
【0030】
圧電基板10は、タンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板である。圧電基板10は、シリコン基板、サファイア基板、アルミナ基板、多結晶スピネル基板、単結晶スピネル基板、ガラス基板、又は水晶基板などの支持基板上に接合されていてもよい。IDT21、31及び反射器22、32は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、及び金(Au)の少なくとも1種を含む金属膜であり、単層金属膜でもよいし、積層金属膜でもよい。
【0031】
図2(a)から
図2(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す平面図である。
図3(a)から
図3(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図2(a)及び
図3(a)のように、圧電基板10上に真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法、又はスパッタリング法を用いて金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法とエッチング法を用いて金属膜をパターン化する。これにより、SAW共振器20と配線40〜42を形成する。配線40はSAW共振器20の一方のバスバー25の側面に接して形成され、配線41は他方のバスバー25の側面に接して形成される。この段階では、配線40〜42各々は、全領域でSAW共振器20のIDT21及び反射器22と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さとなっている。SAW共振器20と同時に配線40〜42を形成することで、SAW共振器20と配線40、41の電気的接続を良好に確保できるとともに製造工程が増加することを抑制できる。
【0032】
図2(b)及び
図3(b)のように、フォトリソグラフィ法とエッチング法を用いて、配線41及び42のうちのSAW共振器30との接続箇所となる接続層50及び51を形成する部分を薄くする。これにより、配線41は、SAW共振器20のIDT21及び反射器22と同じ厚さの配線層41aと、配線層41aよりも薄く、配線層41aと幅の大きさが同じ配線層41bと、を含むようになる。配線42は、SAW共振器20のIDT21及び反射器22と同じ厚さの配線層42aと、配線層42aよりも薄く、配線層42aと幅の大きさが同じ配線層42bと、を含むようになる。
【0033】
図2(c)及び
図3(c)のように、スパッタリング法又は真空蒸着法とリフトオフ法とを用いて、SAW共振器30と接続層50及び51とを形成する。接続層50は、SAW共振器30の一方のバスバー35に接して配線層41b上に形成される。接続層51は、SAW共振器30の他方のバスバー35に接して配線層42b上に形成される。これにより、SAW共振器20と30は、配線41及び接続層50を介して電気的に接続する。なお、SAW共振器20と30を別々に形成しているのは、SAW共振器20と30は、異なる材料で形成されている及び/又は異なる厚さで形成されているため、同時に形成することができないためである。
【0034】
図4(a)は、比較例1に係る弾性波デバイスの平面図、
図4(b)は、
図4(a)のA−A間の断面図、
図4(c)は、
図4(b)の領域Bの拡大図である。
図4(a)から
図4(c)のように、弾性波デバイス1000では、SAW共振器20の一対の櫛型電極23のうちの一方は配線140に接続し、他方は配線141に接続する。SAW共振器30の一対の櫛型電極33のうちの一方の櫛型電極が配線141に良好に電気的に接続するように配線141上に接続層150が設けられ、他方の櫛型電極が配線142に良好に電気的に接続するように配線142上に接続層151が設けられている。配線140〜142各々は、全領域でSAW共振器20のIDT21及び反射器22と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さになっている。その他の構成は、実施例1の
図1(a)から
図1(c)と同じであるため、説明を省略する。
【0035】
図5(a)及び
図5(b)は、比較例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図5(a)のように、圧電基板10上に真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法、又はスパッタリング法を用いて金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法とエッチング法を用いて金属膜をパターン化する。これにより、SAW共振器20と配線140〜142を形成する。配線140はSAW共振器20の一方のバスバー25の側面に接して形成され、配線141は他方のバスバー25の側面に接して形成される。配線140〜142は、全領域でSAW共振器20のIDT21及び反射器22と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さとなっている。
【0036】
図5(b)のように、スパッタリング法又は真空蒸着法とリフトオフ法とを用いて、SAW共振器30と接続層150及び151とを形成する。接続層150は配線141上に形成され、接続層151は配線142上に形成される。
【0037】
比較例1では、
図5(a)のように、SAW共振器20の形成と同時に配線140〜142を形成する。これにより、SAW共振器20と配線140、141の電気的接続を良好に確保できるとともに製造工程が増加することを抑制できる。SAW共振器20と30は異なる材料で形成される及び/又は異なる厚さで形成されるため、SAW共振器30はSAW共振器20と別工程で形成される。
図5(b)のように、SAW共振器30の形成と同時に配線141、142上に接続層150、151を形成する。これは、SAW共振器30が接続層150、151を介して配線141、142に接続するようにして、SAW共振器30と配線141、142との電気的な接続を良好にするためである。しかしながら、
図4(b)及び
図4(c)のように、配線141に重なる接続層150を形成した場合でも、SAW共振器30と配線141との間で電気抵抗が大きくなること又は電気的に断線することがある。SAW共振器30と配線142との間も同様に、配線142に重なる接続層151を形成した場合でも、SAW共振器30と配線142との間で電気抵抗が大きくなること又は電気的に断線することがある。
【0038】
実施例1では、
図3(b)のように、配線41、42にエッチングを行って、SAW共振器20と同じ厚さの配線層41a、42aと、配線層41a、42aよりも薄い配線層41b、42bと、を形成する。
図3(c)のように、接続層50、51は、エッチングで薄くした配線層41b、42b上に形成している。これにより、
図1(b)及び
図1(c)のように、SAW共振器30が接続層50を介して配線41に良好に電気的に接続するようになる。接続層50と配線層41bの接触面積を大きく確保できて電気抵抗の増大を抑制できるため、この点においても、SAW共振器30が接続層50を介して配線41に良好に電気的に接続するようになる。同様に、SAW共振器30が接続層51を介して配線42に良好に電気的に接続するようになる。
【0039】
以上のように、実施例1によれば、
図1(a)から
図1(c)のように、SAW共振器20、30を電気的に接続する配線41は、配線層41aと41bを含む。配線層41aは、SAW共振器20のIDT21と同じ材料で形成され且つ同じ厚さとなっている。配線層41bは、配線層41aよりも薄くなっている。配線層41b上に、SAW共振器30のIDT31と配線層41bとに接し、IDT31と同じ材料で形成され且つ同じ厚さの接続層50が設けられている。これにより、
図1(c)のように、SAW共振器30のIDT31と配線41の間で電気的な接続不良が発生することを抑制ができる。
【0040】
実施例1では、SAW共振器30のIDT31の厚さは、SAW共振器20のIDT21の厚さよりも薄い。この場合、比較例の
図4(c)のように、配線141の厚さを薄くしない場合では、SAW共振器30と配線141との間で電気的な接続不良が起こり易い。したがって、SAW共振器30のIDT31の厚さがSAW共振器20のIDT21の厚さよりも薄い場合に、
図1(c)のように、配線41は配線層41aと配線層41aよりも薄い配線層41bとを含み、接続層50が配線層41b上に設けられることが好ましい。SAW共振器30のIDT31の厚さがSAW共振器20のIDT21の厚さの1/2以下の場合にSAW共振器20と30を配線41と接続層50を介して電気的に接続することが好ましく、1/3以下の場合にSAW共振器20と30を配線41と接続層50を介して電気的に接続することがより好ましい。
【0041】
図2(a)から
図3(c)で説明したように、SAW共振器20と30が異なる材料で形成される及び/又は異なる厚さで形成される場合、SAW共振器20と30を同時に形成することができない。したがって、このような場合に、SAW共振器20と30を配線41と接続層50を介して電気的に接続させることが好ましい。なお、SAW共振器20と30が同じ材料且つ同じ厚さで形成される場合でも、SAW共振器20と30を配線41と接続層50を介して電気的に接続させてもよい。
【0042】
配線41の電気抵抗の増大を抑制するため、配線層41bの長さL2は、配線層41aの長さL1以下の場合が好ましく、配線層41aの長さL1の2/3以下がより好ましく、1/2以下が更に好ましい。配線層41bの長さL2は、例えば10μm以下であり、7μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。また、接続層50と配線層41bの接触面積を大きくして電気抵抗の増大を抑制するために、接続層50は、配線層41bの上面の面積の1/2以上に接触している場合が好ましく、2/3以上に接触している場合が好ましく、全面に接触している場合が更に好ましい。
【0043】
図1(c)のように、SAW共振器30のIDT31の厚さをT1、配線41の配線層41bの厚さをT2とした場合に、T1/10≦T2≦T1/2を満たす場合が好ましい。T1/10≦T2とすることで、配線層41bの電気抵抗の増大を抑制することができる。T2≦T1/2とすることで、SAW共振器30のバスバー35と接続層50との間で断線などの電気的な接続不良が生じることを抑制できる。配線層41bの電気抵抗の増大を抑制及びバスバー35と接続層50との間の電気的な接続不良の発生を抑制するために、T1/9≦T2≦T1/3を満たす場合がより好ましく、T1/8≦T2≦T1/4を満たす場合が更に好ましい。
【実施例2】
【0044】
図6(a)は、実施例2に係る弾性波デバイスの平面図、
図6(b)は、
図6(a)のA−A間の断面図である。
図6(a)及び
図6(b)は、実施例1の
図1(b)の領域Bに相当する箇所の平面図及び断面図である。
図6(a)及び
図6(b)のように、弾性波デバイス200では、配線41の配線層41a上から接続層50上にまで延在した金属層60が設けられている。金属層60は、配線41及び接続層50よりも電気抵抗率の小さい材料で形成され、例えば銅又は金で形成されている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0045】
実施例2によれば、配線41の配線層41a上から接続層50上にまで延在し、配線41よりも電気抵抗率の小さい金属で形成された金属層60が設けられている。これにより、SAW共振器30と配線41の電気的な接続の信頼性を向上させることができ、また、SAW共振器30と配線41との間の電気抵抗の増大を抑制できる。金属層60が設けられている場合、
図6(b)のように、SAW共振器30のIDT31の厚さをT1、配線41の配線層41bの厚さをT2、配線41の配線層41aの厚さをT3、金属層60の厚さをT4とした場合に、|T3−(T1+T2)|≦T4を満たす場合が好ましい。これにより、配線層41aと接続層50の段差での金属層60の断線を抑制することができる。
【0046】
図7(a)は、実施例2の変形例1に係る弾性波デバイスの平面図、
図7(b)は、
図7(a)のA−A間の断面図である。
図7(a)及び
図7(b)は、実施例1の
図1(b)の領域Bに相当する箇所の平面図及び断面図である。
図7(a)及び
図7(b)のように、弾性波デバイス210では、配線41の配線層41a上から接続層50上を経由してSAW共振器30のバスバー35上まで延在した金属層61が設けられている。金属層61は、配線41及び接続層50よりも電気抵抗率の小さい材料で形成され、例えば銅又は金で形成されている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0047】
実施例2の変形例1によれば、配線41の配線層41a上から接続層50上を経由してSAW共振器30のIDT31上まで延在し、配線41よりも電気抵抗率の小さい金属で形成された金属層61が設けられている。これにより、SAW共振器30と配線41の電気的な接続の信頼性を向上させることができ、また、SAW共振器30と配線41との間の電気抵抗の増大を抑制できる。金属層61が設けられている場合、実施例2と同様に、|T3−(T1+T2)|≦T4を満たす場合が好ましい。これにより、配線層41aと接続層50の段差での金属層61の断線を抑制することができる。これに加えて、T2≦T4を満たす場合が好ましい。これにより、接続層50とIDT31のバスバー35の段差での金属層61の断線を抑制することができる。T1はSAW共振器30のIDT31の厚さ、T2は配線41の配線層41bの厚さ、T3は配線41の配線層41aの厚さ、T4は金属層61の厚さである。接続層50とバスバー35の段差での金属層61の断線を抑制する点から、T2は、T4の2/3以下である場合がより好ましく、T4の半分以下である場合が更に好ましい。
【実施例3】
【0048】
図8は、実施例3に係るラダー型フィルタの回路図である。
図8のように、ラダー型フィルタ300は、入力端子Tinと出力端子Toutの間を接続する経路70に、1又は複数の直列共振器S1〜S3が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutの間に、1又は複数の並列共振器P1、P2が並列に接続されている。並列共振器P1は、一端が直列共振器S1とS2の間の経路70に接続され、他端がグランドに接続されて接地されている。並列共振器P2は、一端が直列共振器S2とS3の間の経路70に接続され、他端がグランドに接続されて接地されている。
【0049】
直列共振器S1〜S3及び並列共振器P1、P2のうちの2つの共振器を実施例1から実施例2の変形例1で示したSAW共振器20、30とし、その間の接続を配線41と接続層50を用いた電気的接続とすることができる。
【0050】
なお、実施例3ではラダー型フィルタの場合を例に示したが、例えばラティス型フィルタなど、その他のフィルタの場合でもよい。
【実施例4】
【0051】
図9(a)は、実施例4に係るラダー型フィルタの平面図、
図9(b)は、
図9(a)のA−A間の断面図、
図9(c)は、
図9(b)の領域Bの拡大図である。
図9(a)では、金属層61を透視して配線40〜42と接続層50、51などを図示している。
図9(a)から
図9(c)のように、圧電基板10上に直列共振器S1〜S3と並列共振器P1、P2が設けられている。直列共振器S1のIDT31及び反射器32は、Ti(チタン)を主成分とする金属層とその上に設けられたAl(アルミニウム)を主成分とする金属層との積層で形成されている。例えば、直列共振器S1のIDT31及び反射器32は、厚さが190nmのTiを主成分とする金属層と、厚さが260nmのAlを主成分とする金属層と、の積層で形成されている。Tiを主成分とする金属層は密着層として設けられていて、IDT31が励振する弾性表面波の特性はAlを主成分とする金属層で決定される。直列共振器S2、S3と並列共振器P1、P2のIDT21及び反射器22は、Mo(モリブデン)を主成分とする金属層で形成されている。例えば、直列共振器S2、S3と並列共振器P1、P2は、厚さが490nmのMoを主成分とする金属層で形成されている。
【0052】
直列共振器S2とS3、直列共振器S2と並列共振器P1、及び直列共振器S2と並列共振器P2は、配線40を介して互いに電気的に接続されている。直列共振器S3は出力用のバンプ81に配線40を介して電気的に接続されている。並列共振器P1、P2はグランド用のバンプ82に配線40を介して電気的に接続されている。配線40は、実施例1で説明した場合と同様に、直列共振器S2、S3及び並列共振器P1、P2のIDT21及び反射器22と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さとなっている。例えば、配線40は、厚さ490nmのMoを主成分とする金属層で形成されている。
【0053】
直列共振器S1とS2は、配線41及び接続層50を介して電気的に接続されている。配線41は、実施例1で説明した場合と同様に、直列共振器S2などのIDT21及び反射器22と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さの配線層41aと、少なくとも配線層41aに含まれる材料を含んで形成され、配線層41aよりも薄い配線層41bと、を含む。配線層41aは、例えば厚さ490nmのMoを主成分とする金属層で形成されている。配線層41bは、例えば厚さ150nmのMoを主成分とする金属層で形成されている。接続層50は、実施例1で説明した場合と同様に、直列共振器S1のバスバー35の側面と配線層41bの上面に接して配線層41b上に設けられ、直列共振器S1のIDT31及び反射器32と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さとなっている。例えば、接続層50は、厚さが190nmのTiを主成分とする金属層と厚さが260nmのAlを主成分とする金属層との積層で形成され、トータルの厚さが450nmとなっている。
【0054】
直列共振器S1は入力用のバンプ80に配線42及び接続層51を介して電気的に接続されている。配線42は、実施例1で説明した場合と同様に、直列共振器S2などのIDT21及び反射器22と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さの配線層42aと、少なくとも配線層42aに含まれる材料を含んで形成され、配線層42aよりも薄い配線層42bと、を含む。配線層42aは、例えば厚さ490nmのMoを主成分とする金属層で形成されている。配線層42bは、例えば厚さ150nmのMoを主成分とする金属層で形成されている。接続層51は、実施例1で説明した場合と同様に、直列共振器S1のバスバー35の側面と配線層42bの上面に接して配線層42b上に設けられ、直列共振器S1のIDT31及び反射器32と同じ材料で形成され、同じ層構造を有し、同じ厚さとなっている。例えば、接続層51は、厚さが190nmのTiを主成分とする金属層と厚さが260nmのAlを主成分とする金属層との積層で形成され、トータルの厚さが450nmとなっている。
【0055】
配線40〜42上に金属層61が設けられている。配線41上に設けられた金属層61は、配線層41a上から接続層50上を経由して直列共振器S1のバスバー35上まで延在している。配線42上に設けられた金属層61は、配線層42a上から接続層51上を経由して直列共振器S1のバスバー35上まで延在している。金属層61は、例えば厚さが350nmのCu又はAuで形成されている。バンプ80〜82は、金属層61上に設けられ、例えば金バンプ、半田バンプ、又は銅バンプである。
【0056】
表1は、直列共振器S1〜S3と並列共振器P1、P2のピッチ、対数、開口長、電極材、膜厚、及び弾性表面波の音速の一例をまとめた表である。また、直列共振器S1〜S3及び並列共振器P1、P2が励振する弾性表面波の波長λは4.0μm〜5.6μm程度である。
【表1】
【0057】
ここで、比較例2に係るラダー型フィルタについて説明する。比較例2のラダー型フィルタは、実施例4のラダー型フィルタ400と同様に、圧電基板上に直列共振器S11〜S13と並列共振器P11、P12が形成されている。比較例2のラダー型フィルタでは、直列共振器S11〜S13と並列共振器P11、P12の全てにおいてIDT及び反射器がMoを主成分とし且つ同じ厚さの金属層で形成されている点が実施例4のラダー型フィルタ400と異なる。
【0058】
比較例2において、直列共振器S11〜S13と並列共振器P11、P12の全てにおけるIDT及び反射器がMoを主成分とする金属層で形成されているのは以下の理由によるものである。
【0059】
IDTが励振する弾性表面波の音速が圧電基板内を伝搬するバルク波(例えば最も遅い横波バルク波)の音速よりも速い場合、弾性表面波はバルク波を放射しながら圧電基板の表面を伝搬する。よって、損失が生じる。特に、弾性表面波の一種であるSH(Shear Horizontal)波の音速はバルク波の音速よりも速くなり易い。このため、SH波を主モードとする弾性表面波共振器では損失が大きくなり易い。例えば、20°以上且つ48°以下のカット角を有するYカットX伝搬タンタル酸リチウム基板ではSH波が主モードになる。
【0060】
損失を小さくするためには、IDTが励振する弾性表面波の音速が圧電基板内を伝搬するバルク波の音速よりも遅くすることが考えられる。弾性表面波の音速を遅くするため、IDT及び反射器に音響インピーダンスの大きな金属を用いることが考えられる。音響インピーダンスZは、密度をρ、ヤング率をE、ポアソン比をPrとすると、以下の式で表される。
【数1】
【0061】
Moは、密度が10.2g/cm
3、ヤング率が329GPa、ポアソン比が0.31である。このため、Moの音響インピーダンスは35.9GPa・s/mである。例えば、IDT及び反射器がAlを主成分とする金属層で形成される場合では、Alは密度が2.70g/cm
3、ヤング率が68GPa、ポアソン比が0.34であるため、Alの音響インピーダンスは8.3GPa・s/mである。
【0062】
したがって、比較例2では、弾性表面波の音速を遅くして損失が小さくなるように、直列共振器S11〜S13と並列共振器P11、P12の全てのIDT及び反射器を音響インピーダンスの大きなMoを主成分とする金属層で形成している。しかしながら、弾性表面波の音速が圧電基板内を伝搬するバルク波の音速よりも遅い弾性表面波共振器では横モードスプリアスが発生し易い。
【0063】
図10は、ラダー型フィルタの通過特性、直列共振器及び並列共振器の周波数特性、及びラダー型フィルタの消費電力を示す図である。ラダー型フィルタの通過特性を太実線、直列共振器S11〜S13の周波数特性を点線、並列共振器P11、P12の周波数特性を破線、ラダー型フィルタの消費電力を細実線で示している。
図10のように、ラダー型フィルタの通過特性は、高周波側が直列共振器S11〜S13によって形成され、低周波側が並列共振器P11、P12によって形成される。直列共振器S11〜S13は、ラダー型フィルタの高周波側の減衰帯域を広げることを目的として、それぞれの共振周波数が少しずれていることがある。この場合、直列共振器S11〜S13のうちの最も共振周波数の小さい直列共振器S11は、共振周波数から反共振周波数の間がラダー型フィルタの通過帯域内に存在して通過特性の高周波側を形成する。なお、並列共振器P11、P12の共振周波数は略同じである場合を例に示しているが、直列共振器S11〜S13と同様に、低周波側の減衰域を広げることを目的として、それぞれの共振周波数が少しずれていてもよい。また、直列共振器S11〜S13において、並列共振器P1、P2と同様に、それぞれの共振周波数が略同じであってもよい。
【0064】
ラダー型フィルタの消費電力は、通過帯域内の中央付近で最小となり、減衰極付近で最大となる。横モードスプリアスは共振周波数と反共振周波数の間で発生することから、共振周波数と反共振周波数の間が通過帯域内に存在する直列共振器S11に横モードスプリアスが発生すると、ラダー型フィルタに大きな電力の高周波信号が印加された場合に直列共振器S11の発熱量が大きくなる。直列共振器S11が発熱することでラダー型フィルタの温度が上昇し、通過特性及び消費電力が低周波側にシフトする。これにより、直列共振器S11は更に発熱量が大きくなり、直列共振器S11のIDTに損傷(例えば溶断)が生じてしまうことがある。
【0065】
なお、通過帯域の低周波側は、ラダー型フィルタの温度上昇に伴い、消費電力は減少する方向となる。このため、ラダー型フィルタの通過特性の低周波側を形成する並列共振器P11、P12では発熱量が大きくなり難いため、IDTの損傷は起こり難い。
【0066】
実施例4では、直列共振器S2、S3と並列共振器P1、P2は、低損失化のために、音響インピーダンスの大きなMoを主成分とする金属層で形成し、励振される弾性表面波の音速が圧電基板10内を伝搬するバルク波よりも遅くなるようにする。直列共振器S1〜S3のうちの共振周波数が最も小さい直列共振器S1は、横モードスプリアス抑制のために、軽い金属(密度の小さな金属)であるAlを主成分とする金属層で形成し、励振される弾性表面波の音速が圧電基板10内を伝搬するバルク波よりも速くなるようにする。これにより、損失を抑えつつ、直列共振器S1のIDT31の損傷を抑制できる。
【0067】
このように、直列共振器S1と直列共振器S2が異なる材料で形成されている場合、直列共振器S1、S2とその間を電気的に接続する配線とを同時に形成することができない。このため、上述の比較例1で説明したように、直列共振器S1と、直列共振器S1とS2の間を接続する配線と、の間で電気抵抗が大きくなること又は電気的に断線することがある。
【0068】
実施例4では、
図9(a)から
図9(c)のように、直列共振器S1とS2を電気的に接続する配線41は、直列共振器S2のIDT21と同じ材料で形成され且つ同じ厚さ配線層41aと、配線層41aよりも薄い配線層41bと、を含む。配線層41b上に、直列共振器S1のIDT31と配線層41bとに接し、IDT31と同じ材料で形成され且つ同じ厚さの接続層50が設けられている。これにより、直列共振器S1のIDT31と配線41の間で電気的な接続不良が発生することを抑制できる。
【0069】
実施例4では、直列共振器S2に配線41及び接続層50を介して接続する直列共振器S1は、直列共振器S1〜S3の中で最も共振周波数が低く且つ最も励振する弾性波の音速が速い場合を例に示したが、この場合に限られない。直列共振器及び並列共振器のうちの2つの共振器間が配線41及び接続層50を介して接続される場合でもよい。
【0070】
数1において、ポアソン比は金属材料では大きくならないため、音響インピーダンスの大きな金属は、密度×ヤング率の大きな金属となる。密度は原子番号が大きな金属が大きく、ヤング率は硬い金属が大きい。このような金属は、融点が高い高融点金属である。このように、IDT及び反射器を高融点金属で形成すると弾性表面波の音速が遅くなり損失が小さくなる。表2は、高融点金属の密度及び融点を示す表である。
【表2】
【0071】
表2のように、Ir、Mo、Pt、Re、Rh、Ru、Ta、及びWの融点はAlの融点(660℃)よりも高い。密度はAlの密度(2.70g/cm
3)の4倍以上である。したがって、直列共振器S2、S3と並列共振器P1、P2のIDT21及び反射器22は、Ir、Mo、Pt、Re、Rh、Ru、Ta、及びWの少なくとも1つを主成分とする金属層を含む場合が好ましい。これにより、直列共振器S2、S3と並列共振器P1、P2のIDT21が励振する弾性表面波の音速が圧電基板10内を伝播するバルク波の音速よりも遅くなり、損失が小さくなる。
【0072】
上述したように、Alは音響インピーダンスが小さく且つ軽い金属である。したがって、直列共振器S1のIDT31及び反射器32は、横モードスプリアスが抑制されるように、Alを主成分とする金属層を含む場合が好ましい。
【0073】
図11(a)は、実施例4の変形例1に係るラダー型フィルタの平面図、
図11(b)は、
図11(a)のA−A間の断面図、
図11(c)は、
図11(b)の領域Bの拡大図である。実施例4では、直列共振器S1はTiを主成分とする金属層とAlを主成分とする金属層の積層で形成され、直列共振器S2、S3と並列共振器P1、P2はMoを主成分とする金属層で形成されている場合を例に示した。実施例4の変形例1では、直列共振器S1〜S3と並列共振器P1、P2の全てがMoを主成分とする金属層で形成されている場合について説明する。
【0074】
図11(a)から
図11(c)のように、ラダー型フィルタ410では、直列共振器S1は、例えばMoを主成分とする厚さが170nmの金属層で形成されている。直列共振器S2、S3と並列共振器P1、P2は、例えばMoを主成分とする厚さが490nmの金属層で形成されている。配線41、42を構成する配線層41a、42aは、実施例4と同じく、例えばMoを主成分とする厚さが490nmの金属層で形成されている。配線層41b、42bは、例えばMoを主成分とする厚さが50nm程度の金属層で形成されている。金属層61は、例えば厚さが1000nmのCu又はAuで形成されている。
【0075】
実施例4の変形例1では、直列共振器S1はMoを主成分とする金属層で形成されているが、厚さが薄いため、直列共振器S1で励振される弾性表面波の音速が圧電基板10内を伝搬するバルク波よりも速くなる。よって、実施例4と同様に、損失を抑えつつ、直列共振器S1のIDT31の損傷を抑制できる。
【0076】
図11(a)から
図11(c)のように、直列共振器S1とS2を電気的に接続する配線41は、直列共振器S2のIDT21と同じ材料で形成され且つ同じ厚さの配線層41aと、配線層41aよりも薄い配線層41bと、を含む。配線層41b上に、直列共振器S1のIDT31と配線層41bとに接し、IDT31と同じ材料で形成され且つ同じ厚さの接続層50が設けられている。これにより、直列共振器S1のIDT31と配線41の間で電気的な接続不良が発生することを抑制できる。
【0077】
実施例4の変形例1では、直列共振器S1はMoを主成分とする金属層で形成される場合を例に示したが、Mo以外の音響インピーダンスの大きな材料を主成分とする金属層で形成されてもよい。例えば、直列共振器S1は、Ir、Mo、Pt、Re、Rh、Ru、Ta、及びWの少なくとも1つを主成分とする金属層を含む場合でもよい。一例として、直列共振器S1は、Rhを主成分とする厚さが150nm程度の金属層で形成されてもよい。
【0078】
なお、IDT及び反射器がある金属を主成分とする金属層を含むとは、弾性表面波の音速が圧電基板10内を伝播するバルク波の音速よりも遅く又は速くなる程度にある金属を含むことである。例えば、IDT及び反射器がある金属の原子濃度が50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である金属層を含むことである。
【0079】
実施例3、4では、配線41と接続層50を介して電気的に接続されるSAW共振器がラダー型フィルタの直列共振器又は並列共振器である場合を例に示したが、この場合に限られない。例えば、異なるフィルタのSAW共振器が配線41と接続層50を介して電気的に接続される場合でもよい。また、SAW共振器以外の弾性波素子が配線41と接続層50を介して電気的に接続される場合でもよい。例えば、ダブルモード型SAWフィルタ同士が配線41と接続層50を介して電気的に接続する場合でもよいし、ダブルモード型SAWフィルタとSAW共振器が配線41と接続層50を介して電気的に接続する場合でもよい。
【実施例5】
【0080】
図12は、実施例5に係るデュプレクサの回路図である。
図12のように、デュプレクサ500は、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ90が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ91が接続されている。送信フィルタ90は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ91は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ90及び受信フィルタ91の少なくとも一方を実施例3又は実施例4のラダー型フィルタとすることができる。
【0081】
実施例5では、マルチプレクサとしてデュプレクサの場合を例に示したが、トリプレクサ又はクワッドプレクサであってもよい。
【0082】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。