【解決手段】スイッチング素子ユニット45は、電動圧縮機の制御装置に設けられたベースプレート42に設置されるスイッチング素子ユニット45であって、複数のスイッチング素子47を有し、複数の挿通孔47cが形成され、各挿通孔47cを挿通するボルト50によってベースプレート42に固定されるスイッチング素子部と、各々の内部をボルト50が挿通する複数の筒部49aと、複数の筒部49aを連結する連結部49bとを有する絶縁部材49と、を備える。スイッチング素子部は、導電性部材で形成される放熱部47fを有する。各筒部49aは、対応する挿通孔47cの内部であって放熱部47fとボルト50との間に配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、電動圧縮機の大容量化等に伴って、スイッチング素子に入力される直流電力がより高電圧化している。このように、スイッチング素子に入力される電力がより高電圧化すると、スイッチング素子とスイッチング素子を固定する固定部材(例えば、ボルト等)とを十分に絶縁できない可能性があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、スイッチング素子と固定部材との間の絶縁性を向上させることができるスイッチング素子ユニット及び電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のスイッチング素子ユニット及び電動圧縮機は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係るスイッチング素子ユニットは、電動圧縮機の制御部に設けられた設置部に設置されるスイッチング素子ユニットであって、1又は複数の前記スイッチング素子を有し、複数の挿通孔が形成され、各前記挿通孔を挿通する導電性の固定部材によって前記設置部に固定されるスイッチング素子部と、各々の内部を前記固定部材が挿通する複数の筒部と、複数の前記筒部を連結する連結部とを有する絶縁部と、を備え、前記スイッチング素子部は、導電性部材で形成される導電部を有し、各前記筒部は、対応する前記挿通孔の内部であって前記導電部と前記固定部材との間に配置される。
【0009】
上記構成では、導電性の固定部材と、スイッチング素子部の導電部との間に筒部が設けられている。これにより、固定部材と導電部との絶縁距離が、絶縁部を迂回した距離となる。したがって、絶縁部を設けない場合と比較して、固定部材と導電部との絶縁距離を長くし、導電部と固定部材との間の絶縁性を向上させることができる。よって、スイッチング素子の安全動作を確保することができる。
また、上記構成では、複数の筒部が連結部によって連結されている。これにより、所定の位置に、複数の筒部をまとめて配置することができる。したがって、複数の筒部を1つずつ所定の位置に配置する場合と比較して、複数の筒部を容易に配置することができる。よって、スイッチング素子ユニットの組立性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係るスイッチング素子ユニットは、複数の前記挿通孔は、所定方向に沿って並んで配置されていて、前記連結部は、前記所定方向に伸縮可能な伸縮部を有していてもよい。
【0011】
上記構成では、連結部が所定方向に伸縮可能な伸縮部を有している。これにより、伸縮部を所定方向に伸縮することで、複数の筒部の所定方向の距離を調整することができる。したがって、製造時の誤差等によって、挿通孔同士の距離と筒部同士の距離とが異なる長さとなった場合であっても、伸縮部を伸縮させることで、複数の挿通孔内に複数の筒部を配置させ、スイッチング素子ユニットを組み立てることができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係るスイッチング素子ユニットは、各前記筒部が挿通する複数の貫通孔を有し、前記スイッチング素子部と前記設置部との間に設けられる絶縁シートを備え、各前記貫通孔の直径は、前記筒部の外径と同一または前記筒部の外径よりも小さく形成されていてもよい。
【0013】
上記構成では、絶縁シートの貫通孔の直径が、筒部の外径と同一または筒部の外径よりも小さく形成されている。これにより、貫通孔を挿通する筒部によって、絶縁シートの移動が規制される。すなわち、絶縁部に対するシートの位置を一義的に決めることができる。したがって、別途位置決めするための構造を有する場合と比較して、構成を簡素化することができる。よって、製造コストを低減することができる。
また、設置部に対する絶縁部の位置が一義的に決まっている場合には、上記構成のように複数の筒部に対するシートの位置を一義的に位置決めすることで、設置部に対する絶縁シートの位置も一義的に決めることができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係るスイッチング素子ユニットは、前記絶縁部は、前記筒部の半径方向外側へ延びる突出部を有していてもよい。
【0015】
上記構成では、筒部の半径方向(以下、単に「半径方向」という。)の外側へ延びる突出部を有している。これにより、突出部を把持することで、絶縁部を容易に把持することができる。したがって、突出部を有さない構成と比較して、絶縁部を容易に設置することができるので、スイッチング素子ユニットを容易に組立てることができる。
また、突出部の半径方向の長さがスイッチング素子部の半径方向の長さよりも長い場合には、スイッチング素子部の挿通孔の内部に筒部が配置した際に、突出部がスイッチング素子部から突出する。すなわち、突出部を視認することができる。よって、スイッチング素子部が設置部に固定された後にも、挿通孔の内部に筒部が配置されているか否か(すなわち、絶縁部が配置されているか否か)を判断することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、上記いずれかに記載のスイッチング素子ユニットと、前記スイッチング素子ユニットが固定される前記設置部と、を有し、前記連結部は、前記スイッチング素子部と、前記設置部との間に配置され、前記設置部には、前記スイッチング素子部が固定される固定面から凹み、前記連結部が収容される凹部が形成されている。
【0017】
上記構成では、設置部に連結部が収容される凹部が形成されている。これにより、スイッチング素子部と、設置部との間に連結部が配置される構造において、スイッチング素子部と設置部との距離を短くすることができる。したがって、スイッチング素子部を設置部に対して好適に固定することができる。
なお、凹部の深さ(凹部の底面から固定面までの距離)が、連結部の厚さと同じ長さ又は連結部の厚さよりも長い場合には、連結部が固定面から突出しないので、スイッチング素子部と設置部とを接触させることができる。よって、より好適にスイッチング素子部を設置部に対して固定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スイッチング素子と固定部材との間の絶縁性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機(電動圧縮機)100について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るインバータ一体型電動圧縮機100を示す側面図である。
図2は、
図1に示すインバータ一体型電動圧縮機に組み込まれるインバータ装置40を示す斜視図である。
図3は、
図2に示すインバータ装置を構成するインバータ回路の模式的な分解斜視図である。
【0021】
図1に示すように、インバータ一体型電動圧縮機100は、密閉された内部空間を形成するハウジング10と、ハウジング10の内部空間に収容される圧縮機(圧縮部)20と、ハウジング10の内部空間に収容される電動モータ(駆動部)30と、電動モータ30を制御する制御基板43を有するインバータ装置(制御部)40と、電動モータ30とインバータ装置40とを電気的に接続する接続部60と、を備える。本実施形態のインバータ一体型電動圧縮機100は、車両用空気調和機に用いられる圧縮機であって、インバータ装置40により駆動回転数が制御される電動モータ30により圧縮機20を駆動する装置である。
【0022】
ハウジング10は、圧縮機20を収容する圧縮機ハウジング11と、電動モータ30を収容するモータハウジング12とを有する。ハウジング10は、圧縮機ハウジング11とモータハウジング12とをボルト13により結合することにより、密閉された内部空間を形成する。ハウジング10は、例えば、アルミニウム合金により形成されている。ハウジング10内には、冷媒ガスが充填されている。
【0023】
モータハウジング12の後方端側(
図1の右方端側)には、低圧冷媒ガスを吸入する冷媒吸入ポート14が設けられている。圧縮機ハウジング11の前方端側(
図1の左方端側)には、圧縮された冷媒ガスを外部に吐出する冷媒吐出ポート15が設けられている。ハウジング10の外周部には、複数箇所(本実施形態では一例として、3箇所)に圧縮機据付け用の脚部19が一体に成形されている。
【0024】
モータハウジング12の外周部には、インバータ装置40を一体に組み込むためのインバータ収容部16が設けられている。インバータ収容部16は、モータハウジング12と一体に成形されているインバータボックス17と、インバータボックス17にビス等を介して一体に結合されるジャンクションボックス18とから構成されている。ジャンクションボックス18は、インバータボックス17の上面を閉鎖するカバーを兼用する。
【0025】
インバータボックス17は、平面視が略矩形状で周囲に上方に立ち上げられた立ち上げ壁を有している。インバータボックス17の上面には、ジャンクションボックス18を固定するためのフランジ部17Aが形成されている。インバータボックス17の内部側の底面は、インバータ装置40を構成するインバータモジュール41(詳細には、後述するインバータモジュール41の金属製のベースプレート42)を設置する平坦面となっている。この平坦面は、モータハウジング12の外周壁によって構成されている。
【0026】
ジャンクションボックス18は、インバータ装置40を収容するためのボックス体であり、例えば、アルミニウム合金により形成されている。ジャンクションボックス18は、平面視がインバータボックス17と同じ矩形状であり、周囲壁の下面にはインバータボックス17と一体に結合するためのフランジ部18Aが形成されている。ジャンクションボックス18の一側面には、電源ケーブル61のコネクタ62を接続する接続部18Bが形成されている。
【0027】
圧縮機20は、冷媒吸入ポート14から吸入した低圧冷媒ガスを圧縮して冷媒吐出ポート15へ吐出する装置である。圧縮機20は、例えば、電動モータ30が回転させる駆動軸に連結される旋回スクロール(図示略)と圧縮機ハウジング11に固定される固定スクロール(図示略)とを有するスクロール圧縮機である。
【0028】
電動モータ30は、インバータ装置40から供給される交流電流により交流磁場を発生させるステータ(図示略)と交流磁場から受ける磁力により回転するロータ(図示略)と、ロータと圧縮機20を連結する駆動軸(図示略)と、を備える。電動モータ30は、駆動軸を回転させることにより、圧縮機20を駆動する。
【0029】
インバータ装置40は、インバータボックス17に収容されるインバータモジュール41と、ジャンクションボックス18に収容されるノイズ除去用フィルタ回路(図示略)とを有する。インバータモジュール41は、
図2に示すように、金属製のベースプレート(設置部)42と制御基板43とを複数のスペーサ44を介して一体にモジュール化した装置である。
【0030】
制御基板43は、車両側制御装置(ECU)と通信線を介して接続され、ECUとの間で制御信号を送受信し、それに基づいて電動モータ30に印加する交流電力を制御する制御回路が実装されている矩形状の基板である。制御基板43には、直流電力を三相交流電力に変換するスイッチング回路を構成する複数のスイッチング素子47が実装されている。なお、以下では、複数のスイッチング素子47のことを、スイッチング素子部46とも称する。制御基板43は、複数のスペーサ44を介して金属製のベースプレート42と一体化されている。
【0031】
ベースプレート42は、矩形状のアルミニウム合金製板材から構成されている。ベースプレート42は、一方の板面である他面42aが、インバータボックス17の底面であるモータハウジング12の平坦な外周壁に密着するようにビス(図示省略)により固定されている。ベースプレート42の一面42b(他面42aの反対側の板面)には、
図3に示すように、スイッチング素子ユニット45が固定されている。ベースプレート42は、シャシーグランドの役割も担っている。スイッチング素子ユニット45の詳細については後述する。
【0032】
スイッチング素子ユニット45は、
図4に示すように、複数(本実施形態では、一例として、6個)のスイッチング素子47で構成されるスイッチング素子部46と、スイッチング素子部46とベースプレート42との間に設けられる絶縁シート48と、スイッチング素子部46とベースプレート42との間に設けられる複数(本実施形態では、一例として、2個)の絶縁部材(絶縁部)49と、を有する。
また、スイッチング素子ユニット45が固定されるベースプレート42には、連結部49bが収容される複数(本実施形態では、一例として2本)の溝部(凹部)42cと、ボルト50と螺合するボルト孔42dと、が形成されている。
【0033】
スイッチング素子部46は、上述のように、複数のスイッチング素子47を有している。6つのスイッチング素子47は連結されている。スイッチング素子47は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。各スイッチング素子47は、電流が流れる素子本体(図示省略)と、素子本体を覆う樹脂製の基部47aを有している。各スイッチング素子47は、素子本体と接続する3本のリード端子47bを有している。各スイッチング素子47は、各リード端子47bが制御基板43に半田付けされることで、制御基板43に実装されている。
【0034】
また、各スイッチング素子47には、
図6に示すように、基部47aを挿通する挿通孔47cが形成されている。挿通孔47cは、スイッチング素子47の一面47dから他面47e(絶縁シート48等を介してベースプレート42に設置される面)に向かって貫通している。各スイッチング素子47に形成された挿通孔47cには、ボルト50が挿通している。各スイッチング素子47は、挿通孔47cを挿通するボルト50によってベースプレート42に固定されている。すなわち、スイッチング素子部46は、各スイッチング素子47を固定するボルト(固定部材)50によって、ベースプレート42に固定されている。ボルト50は、金属で形成されている。また、ボルト50は、制御基板43側から挿通孔47cへ挿入されている。
【0035】
また、各スイッチング素子47には、スイッチング素子47の他面47eの一部を構成するように、金属製の放熱部(導電部)47fが設けられている。すなわち、放熱部47fは、スイッチング素子47の他面47eにおいて、基部47aから露出するように設けられている。スイッチング素子47の他面47eにおいて、基部47aと放熱部47fとは面一となるように設けられている。すなわち、放熱部47fは、絶縁シート48を介してベースプレート42に密着している。放熱部47fは、スイッチング素子47で発生する熱を、ベースプレート42を介してハウジング10へ放熱している。詳細には、放熱部47fは、モータハウジング12の平坦な外周壁及びベースプレート42を介して、ハウジング10内に充填している冷媒ガスによって冷却される。また、放熱部47fは、金属で形成されているため、高い電圧の電気が流通している。放熱部47fは、挿通孔47cと所定距離離間して設けられている。すなわち、放熱部47fと挿通孔47cとは、基部47aによって隔てられている。なお、放電部は、スイッチング素子47の他面47eの略全域に設けられていてもよい。
【0036】
絶縁シート48は、熱伝導性が高く、かつ、絶縁を確保することができるシート状の部材である。絶縁シート48は、例えば、樹脂材やゴム材のように、弾性変形可能な材料で形成されている。絶縁シート48には、
図4に示すように、複数(本実施形態では、一例として6つ)の貫通孔48aが形成されている。各貫通孔48aは、ベースプレート42に形成された各ボルト孔42d(詳細は、後述する)に対応するように、所定の間隔で形成されている。すなわち、隣接する貫通孔48a同士の離間距離は、隣接するボルト孔42d同士の離間距離と略同一に設定されている。各貫通孔48aは、直径が後述する絶縁部材49の筒部49aの外径と略同一または、筒部49aの外径よりもわずかに小さくなるように形成されている。
【0037】
絶縁部材49は、
図7に示すように、複数(本実施形態では一例として3個)の筒部49aと、複数の筒部49aを連結する板状の連結部49bと、筒部49aにおける半径方向外側へ連結部49bから突出する突出部49cと、を一体的に有している。絶縁部材49は、樹脂等の絶縁性の材料で形成されている。
【0038】
筒部49aは、円筒状であって、連結部49bの板面から突出するように設けられている。すなわち、筒部49aは、中心軸線が連結部49bの板面と直交するように設けられていて、下端が連結部49bに接続されている。筒部49aの内径は、ボルト50の軸部分の外径よりも大きく設定されている。筒部49aの外径は、絶縁部材49に形成された貫通孔48aの直径と略同一の長さまたは貫通孔48aの直径よりもわずかに大きく設定されている。筒部49aの中心軸線に沿う方向の長さは、挿通孔47cの長さよりも短く設定されている。
【0039】
筒部49aは、内部をボルト50が挿通している。筒部49aの内周面とボルト50とは、
図6に示すように、離間している。なお、筒部49aの内周面とボルト50とは、接触していてもよい。また、筒部49aは、絶縁部材49に形成された貫通孔48aを挿通している。詳細には、筒部49aは、貫通孔48aに圧入されている。よって、筒部49aの外周面は、絶縁シート48の貫通孔48aを区画する部分と接触している。なお、筒部49aの外周面と絶縁シート48とは離間していてもよい。また、筒部49aは、ベースプレート42側から、スイッチング素子47の挿通孔47cに挿入されている。筒部49aは、全体が挿通孔47c内に配置されている。すなわち、筒部49aは、放熱部47fとボルト50との間に配置されている。
【0040】
複数の筒部49aは、所定方向に並んで配置されている。また、複数の筒部49aは、所定の間隔でベースプレート42に形成された各ボルト孔42d(詳細は、後述する)に対応するように、所定の間隔で並んで配置されている。隣接する筒部49a同士の距離は、隣接する貫通孔48aの離間距離と略同一に設定されている。すなわち、隣接する筒部49a同士の離間距離は、隣接するボルト孔42d同士の離間距離と略同一に設定されている。
【0041】
連結部49bは、板状の部材であって、所定方向に延在している。連結部49bには、各筒部49aと連通する複数の開口が形成されている。すなわち、各筒部49aは、開口を囲うように立設している。連結部49bは、絶縁シート48とベースプレート42との間に配置され、後述するベースプレート42に形成された溝に収容されている。連結部49bのベースプレート42側の面は、ベースプレート42と接触している。また、連結部49bの絶縁シート48側の面は、絶縁シート48と接触している。
【0042】
また、連結部49bは、隣接する筒部49a同士の間に、伸縮部49baが設けられている。伸縮部49baは、複数の開口及び切欠きが形成されている。すなわち、伸縮部49baは、他の領域よりも連結部49bの材料である樹脂材が少なくなっており、他の領域よりも所定方向(筒部49aが並ぶ方向)に伸縮し易くなっている。
【0043】
突出部49cは、連結部49bの外周端部から所定方向へ延びている。換言すれば、突出部49cは、筒部49aの半径方向外側へ延びている。突出部49cは、所定方向の端部が絶縁シート48から突出するように配置されている。すなわち、突出部49cの制御基板43側の面は、絶縁シート48によって覆われていない。
【0044】
溝部42cは、ベースプレート42の一面42bから凹むように形成されている。溝部42cは、所定方向に延びている。溝部42cの形状(上面視した際の形状)は、絶縁部材49の形状と略同一に形成されている。すなわち、溝部42cの所定方向の長さは、絶縁部材49の所定方向の長さと略同一に設定されている。また、溝部42cの幅方向(所定方向と直交する方向)の長さは、絶縁部材49の幅方向の長さと略同一に設定されている。また、溝部42cの深さ(溝部42cの底面からベースプレート42の一面42bまでの長さ)は、連結部49bの板厚と略同一に設定されている。すなわち、絶縁部材49が溝部42cに収容されると、ベースプレート42の一面42bと連結部49bの板面とが、面一状態となる。
【0045】
ボルト孔42dは、各溝部42cに3つずつ形成されている。すなわち、ベースプレート42に6つ形成されている。1つの溝部42cに形成される3つのボルト孔42dは、所定方向に所定の間隔で並んで配置されている。ボルト孔42dは、溝部42cの底面に形成されている。ボルト孔42dは、ベースプレート42を貫通しておらず、底を有している。ボルト孔42dの内周面には、雌ネジが形成されており、ボルト50と螺合可能とされている。
【0046】
次に、スイッチング素子ユニット45をベースプレート42に固定する方法について説明する。
まず、ベースプレート42に溝部42c及びボルト孔42dを形成する。次に、各溝部42cに絶縁部材49を1つずつ設置する。詳細には、絶縁部材49の連結部49bを溝部42cに収容する。次に、各絶縁部材49の筒部49aが貫通孔48aを挿通するように、ベースプレート42上に絶縁シート48を設ける。絶縁シート48は、筒部49aが貫通孔48aに圧入されるように、設けられてもよい。また、絶縁シート48は、ベースプレート42の一面42bと密着するように設けられる。次に、絶縁シート48上に6つのスイッチング素子47が連結されたスイッチング素子部46を配置する。このとき、各スイッチング素子47の挿通孔47c内に筒部49aが挿入されるように、各スイッチング素子47を配置する。
次に、挿通孔47c内にボルト50を挿入する。最後に、ボルト50とボルト孔42dとを螺合させる。ボルト50とボルト孔42dとが螺合すると、挿通孔47c、筒部49a、貫通孔48a及びボルト孔42dの中心軸線が同軸状となるように、各部材が配置されることとなる。このようにして、スイッチング素子ユニット45をベースプレート42に固定する。
【0047】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、ボルト50と、放熱部47fとの間に筒部49aが設けられている。本実施形態の構成では、
図6の矢印Aで示すように、放熱部47fからの電流は、原則として、放熱部47fの底面付近から出発する。放熱部47fから出発した電流は、基部47aの他面47e及び絶縁部材の筒部49aの外周面に沿って流れ、ボルト50へ至る。したがって、固定部材と導電部との絶縁距離が、
図6の矢印Aで示すように、筒部49aを迂回した距離となる。したがって、絶縁部材49を設けない場合と比較して、ボルト50と放熱部47fとの絶縁距離を長くし、放熱部47fとボルト50との間の絶縁性を向上させることができる。よって、スイッチング素子47の安全動作を確保することができる。なお、放熱部47fから出発した電流は、絶縁部材49の筒部49aの代わりに、
図6の破線で示すように、基部47aに形成された挿通孔47cの内周面に沿って流れる場合もある。このような場合であっても、固定部材と導電部との絶縁距離は、筒部49aを迂回した距離となるので、絶縁距離を長くすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、複数の筒部49aが連結部49bによって連結されている。これにより、所定の位置に、複数の筒部49aをまとめて配置することができる。したがって、複数の筒部49aを1つずつ所定の位置に配置する場合と比較して、複数の筒部49aを容易に配置することができる。よって、スイッチング素子ユニット45の組立性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、絶縁部材49の連結部49bが所定方向に伸縮可能な伸縮部49baを有している。これにより、伸縮部49baを所定方向に伸縮することで、複数の筒部49aの所定方向の距離を調整することができる。したがって、製造時の誤差等によって、挿通孔47c同士の距離と筒部49a同士の距離とが異なる長さとなった場合であっても、伸縮部49baを伸縮させることで、各挿通孔47c内に複数の筒部49aを挿入させ、スイッチング素子ユニット45を組み立てることができる。
【0050】
また、本実施形態では、ベースプレート42に形成された溝部42cの形状(上面視した際の形状)は、連結部49b及び突出部49cの形状と略同一に形成されている。すなわち、溝部42cに連結部49b及び突出部49cを収容すると、溝部42cによって絶縁部材49の移動が規制される。すなわち、ベースプレート42に対する絶縁部材49の位置を、位置決めすることができる。したがって、別途絶縁部材49の位置を決めるための構造を有する場合と比較して、構成を簡素化することができる。よって、製造コストを低減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、絶縁シート48の貫通孔48aの直径が、筒部49aの外径と同一または筒部49aの外径よりも小さく形成されている。換言すれば、筒部49aが貫通孔48aに圧入されている。これにより、貫通孔48aを挿通する筒部49aによって、絶縁シート48の移動が規制される。すなわち、絶縁部材49に対する絶縁シート48の位置を、位置決めすることができる。したがって、別途絶縁シート48の位置を決めるための構造を有する場合と比較して、構成を簡素化することができる。よって、製造コストを低減することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上述のように、ベースプレート42に対する絶縁部材49の位置が一義的に決まっているので、絶縁部材49に対する絶縁シート48の位置を位置決めすることで、ベースプレート42に対する絶縁シート48の位置も、位置決めすることができる。
【0053】
また、本実施形態では、絶縁部材49が突出部49cを有している。これにより、突出部49cを把持することで、絶縁部材49を容易に把持することができる。したがって、突出部49cを有さない構成と比較して、絶縁部材49を容易に設置することができるので、スイッチング素子ユニット45を容易に組立てることができる。
【0054】
また、本実施形態では、突出部49cの所定方向の端部が、絶縁シート48から突出するように配置されている。このため、スイッチング素子部46とベースプレート42との間に絶縁部材49を配置しても、突出部49cが絶縁シート48に覆われない。よって、突出部49cを視認することができる。したがって、例えば、スイッチング素子ユニット45をベースプレート42に固定した後にも、スイッチング素子部46とベースプレート42との間に絶縁部材49が配置されているか否かを判断することができる。よって、絶縁部材49を配置し忘れる事態を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、ベースプレート42に連結部49bが収容される溝部42cが形成されている。これにより、スイッチング素子部46と、ベースプレート42との間に連結部49bが配置される構造において、スイッチング素子部46とベースプレート42との距離を短くすることができる。したがって、スイッチング素子部46をベースプレート42に対して好適に固定することができる。
【0056】
また、本実施形態では、溝部42cの深さが、連結部49bの厚さと同じ長さに設定されている。これにより、連結部49bがベースプレート42の一面42bから突出しないので、スイッチング素子47とベースプレート42とを密着させることができる。よって、より好適にスイッチング素子部46を設置部に対して固定することができる。また、スイッチング素子47をベースプレート42に密着させることで、放熱部47fとベースプレート42とが密着する。これにより、放熱部47fによる放熱効果を向上させることができる。
【0057】
また、伸縮部49baは、開口及び切欠きを有している分、伸縮部49baを設けない構造と比較して、絶縁部材49を軽量化することができる。また、材料費を低減し、コストを低減することができる。
【0058】
[変形例]
次に、絶縁部材の変形例について、
図8を用いて説明する。
絶縁部材は、
図8に示すよう絶縁部材70のように、連結部72によって6つの筒部71をすべて連結するように形成してもよい。なお、筒部71の構成は、上記実施形態における筒部49aの構成と同様である。このように、構成することで、6つの筒部71を一度に配置することができるので、よりスイッチング素子ユニット45の組立性を向上させることができる。
【0059】
また、
図8に示す絶縁部材70では、各筒部71の周りに筒部71の外周面から半径方向に延びる円環状のフランジ部74が設けられている。連結部72は、各フランジ部74同士を連結している。連結部72の幅方向の長さは、フランジ部74の外径の長さよりも短く形成されている。すなわち、連結部72は、フランジ部74及び筒部71よりも変形し易く形成されている。このように構成することで、挿通孔47c同士の距離と筒部71同士の距離とが異なる長さとなった場合であっても、連結部72を伸縮させることで、各挿通孔47c内に複数の筒部71を挿入させ、スイッチング素子ユニット45を組み立てることができる。
【0060】
また、連結部72の一部である突出部73は、絶縁シート48から突出するように形成される。このように構成することで、スイッチング素子ユニット45をベースプレート42に固定した後にも、スイッチング素子部46とベースプレート42との間に絶縁部材70が配置されているか否かを判断することができる。よって、絶縁部材70を配置し忘れる事態を抑制することができる。
【0061】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、ベースプレート42にスイッチング素子ユニット45を設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ベースプレート42を設けずに、スイッチング素子ユニット45を、インバータボックス17の底面であるモータハウジング12の平坦な外周壁に固定してもよい。また、例えば、ベースプレート42上に、スイッチング素子47を固定するための金属製の台を設けて、当該台にスイッチング素子ユニット45を固定してもよい。
【0062】
また、スイッチング素子ユニット45をベースプレート42に固定する部材は、ボルトに限定されない。導電性の固定部材である必要はなく、例えば、ビスでもよい。
【0063】
また、絶縁部材49に設けられる伸縮部は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、伸縮部は、板面に凹凸が形成されるように、折り目をつけることで形成してもよい。すなわち、伸縮部は、ジャバラ形状としてもよい。