特開2020-198714(P2020-198714A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-198714(P2020-198714A)
(43)【公開日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/20 20190101AFI20201113BHJP
   B60L 50/64 20190101ALI20201113BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20201113BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20201113BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20201113BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20201113BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20201113BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20201113BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20201113BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20201113BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20201113BHJP
【FI】
   B60L58/20
   B60L50/64
   H02J7/00 P
   H02J7/34 B
   H01M10/48 P
   H01M10/44 P
   B60K1/02ZHV
   B60K7/00
   B60K6/442
   B60W10/26 900
   B60W20/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-103840(P2019-103840)
(22)【出願日】2019年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】古川 晶博
(72)【発明者】
【氏名】平野 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】佐内 英樹
【テーマコード(参考)】
3D202
3D235
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB00
3D202BB23
3D202CC57
3D202DD28
3D202EE04
3D202EE17
3D202FF03
3D235AA02
3D235BB19
3D235BB35
3D235CC12
3D235CC15
3D235CC16
3D235CC42
3D235FF42
3D235GA02
3D235HH02
3D235HH08
3D235HH34
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB01
5G503DA08
5G503DA17
5G503FA06
5G503GB06
5G503GD03
5H030AA09
5H030AS06
5H030AS08
5H030BB10
5H030BB21
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125AC14
5H125AC24
5H125BC28
5H125CD04
5H125FF02
5H125FF05
(57)【要約】
【課題】軽量で且つ簡易な構成で少なくとも3つの電源電圧を供給する車両駆動装置を提供する。
【解決手段】車両駆動装置10は、主駆動モータ16及び副駆動モータ20と、バッテリ18と、バッテリ18に直列接続されたキャパシタ22と、バッテリ18とキャパシタ22の合計電圧を供給する第1電力ライン5aと、バッテリ電圧を供給する第2電力ライン5bと、セル電圧を供給する第3電力ライン5cと、を備え、第1電力ライン5a、第2電力ライン5b、及び第3電力ライン5cは、セル電圧よりもバッテリ電圧の方が大きく、バッテリ電圧よりも合計電圧の方が大きいように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車両駆動装置であって、
前記車両を駆動するための第1の車両駆動モータ及び第2の車両駆動モータと、
直列接続された複数のバッテリセルを含むバッテリと、
前記バッテリに直列接続されたキャパシタと、
前記バッテリにより供給されるバッテリ電圧と前記キャパシタにより供給されるキャパシタ電圧の合計電圧を前記第1の車両駆動モータに供給する第1電力ラインと、
前記バッテリ電圧を前記第2の車両駆動モータに供給する第2電力ラインと、
前記複数のバッテリセルの一部のバッテリセルによるセル電圧を前記車両の車載電気機器へ供給する第3電力ラインと、を備え、
前記第1電力ライン、前記第2電力ライン、及び前記第3電力ラインは、前記セル電圧よりも前記バッテリ電圧の方が大きく、前記バッテリ電圧よりも前記合計電圧の方が大きいように構成されている、車両駆動装置。
【請求項2】
前記第1の車両駆動モータは、前記車両の車輪に搭載されたインホイールモータである、請求項1に記載の車両駆動装置。
【請求項3】
前記第2の車両駆動モータは、前記車両の車体に搭載され、動力伝達機構を介して駆動力を前記車両の車輪に提供する、請求項1又は2に記載の車両駆動装置。
【請求項4】
前記第3電力ラインは、アクセサリ電源である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両駆動装置。
【請求項5】
前記第3電力ラインには、前記一部のバッテリセルと前記車載電気機器との間を電気的に接続及び切断するためのスイッチが設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動装置に関し、特に、大きさの異なる少なくとも3つの電源電圧を供給して車両を駆動するための車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018−26973号公報(特許文献1)には、車両用電源装置が記載されている。この車両用電源装置は、車両の駆動システム(モータを含む)へ高圧電源(36V)を提供し、電気負荷へ低圧電源(12V)を提供するようになっている。この車両用電源装置は、12個の蓄電素子が直列に接続されている。各蓄電素子は、3Vのリチウムイオン電池である。高圧電源は、この直列回路により提供される。また、12個のうちスイッチにより選択された4個の蓄電素子の直列回路により低圧電源が提供される。この車両用電源装置では、低圧電源を提供するために、高圧電源を降圧変換する必要がないため、降圧変換に伴う電力損失を低減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−26973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用電源装置は、単に2つの電源電圧を供給するだけであり、高圧電源よりも高圧な電源を必要とする負荷には、電力供給することができない。特許文献1によれば、より高圧な電源を供給するには、蓄電素子の数を増やすか、または、高価なDC/DCコンバータを付加的に設ける必要がある。そして、このように改変すると、車両の重量増やコスト増という問題が生じる。
【0005】
従って、本発明は、軽量で且つ簡易な構成で少なくとも3つの電源電圧を供給する車両駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両に搭載された車両駆動装置であって、車両を駆動するための第1の車両駆動モータ及び第2の車両駆動モータと、直列接続された複数のバッテリセルを含むバッテリと、バッテリに直列接続されたキャパシタと、バッテリにより供給されるバッテリ電圧とキャパシタにより供給されるキャパシタ電圧の合計電圧を第1の車両駆動モータに供給する第1電力ラインと、バッテリ電圧を第2の車両駆動モータに供給する第2電力ラインと、複数のバッテリセルの一部のバッテリセルによるセル電圧を車両の車載電気機器へ供給する第3電力ラインと、を備え、第1電力ライン、第2電力ライン、及び第3電力ラインは、セル電圧よりもバッテリ電圧の方が大きく、バッテリ電圧よりも合計電圧の方が大きいように構成されていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、電源がバッテリとキャパシタの直列接続を備えており、キャパシタに接続された第1電力ラインと、バッテリに接続された第2電力ラインと、バッテリの一部のバッテリセルにより供給される第3電力ラインとを備えている。第2電力ラインは、バッテリにより直接提供され、第3電力ラインは、バッテリの一部のバッテリセルにより直接提供される。さらに、第1電力ラインは、バッテリとキャパシタの合計電圧により提供される。このように、本発明では、DC/DCコンバータを設ける必要がなく、容易且つ簡易な構成で3つの電源電圧を供給することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、第1の車両駆動モータは、車両の車輪に搭載されたインホイールモータである。このように構成された本発明によれば、第1の車両駆動モータを、バッテリとキャパシタの合計電圧による高電圧で作動させることができる。このように、本発明では、バッテリ電圧をDC/DCコンバータで昇圧して高電圧を得る必要がない。
【0009】
本発明において、好ましくは、第2の車両駆動モータは、車両の車体に搭載され、動力伝達機構を介して駆動力を前記車両の車輪に提供する。このように構成された本発明によれば、第2の車両駆動モータを、キャパシタよりも電源としての容量を大きく設計し易いバッテリで作動させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、第3電力ラインは、アクセサリ電源である。このように構成された本発明によれば、バッテリの一部のバッテリセルにより提供されるセル電圧をアクセサリ電源として用いることができる。このように、本発明では、バッテリ電圧をDC/DCコンバータで降圧して低電圧を得る必要がない。
【0011】
本発明において、好ましくは、第3電力ラインには、一部のバッテリセルと車載電気機器との間を電気的に接続及び切断するためのスイッチが設けられている。このように構成された本発明によれば、簡易な構成で一部のバッテリセルと車載電気機器との間を電気的に接続及び切断することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両駆動装置によれば、軽量で且つ簡易な構成で少なくとも3つの電源電圧を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による車両駆動装置を搭載した車両のレイアウト図である。
図2】本発明の実施形態による車両駆動装置の各モータの出力と車速の関係を示す図である。
図3】本発明の実施形態による車両駆動装置の電気ブロック図である。
図4】本発明の実施形態による車両駆動装置のバッテリ、キャパシタ及び充電回路の電気回路の説明図である。
図5】本発明の実施形態による車両駆動装置の外部充電時の各ステージにおける電気スイッチの開閉位置及び電流の流れを示す図である。
図6】本発明の実施形態による車両駆動装置のキャパシタ充電処理時の各ステージにおける電気スイッチの開閉位置及び電流の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態による車両駆動装置の構成について説明する。図1は車両駆動装置を搭載した車両のレイアウト図であり、図2は車両駆動装置の各モータの出力と車速の関係を示す図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態による車両駆動装置10を搭載した車両1は、運転席よりも前方の、車両の前部に内燃機関であるエンジン12が搭載され、主駆動輪である左右一対の後輪2aを駆動する所謂FR(Front engine, Rear drive)車である。
【0016】
本発明の実施形態による車両駆動装置10は、一対の後輪2aを駆動する主駆動モータ16と、一対の前輪2bを駆動する副駆動モータ20と、これらモータへ電力供給する電源3(バッテリ18、電源用キャパシタ22)と、充電回路19と、制御回路24とを備えている。
【0017】
エンジン12は、車両1の主駆動輪である後輪2aに対する駆動力を発生するための内燃機関である。本実施形態においては、エンジン12として直列4気筒エンジンが採用されており、車両1の前部に配置されたエンジン12が動力伝達機構14を介して後輪2aを駆動するようになっている。
【0018】
動力伝達機構14は、エンジン12及び主駆動モータ16が発生した駆動力を主駆動輪である後輪2aに伝達するように構成されている。図1に示すように、動力伝達機構14は、エンジン12及び主駆動モータ16に接続された動力伝達軸であるプロペラシャフト14a、及び変速機であるトランスミッション14bを備えている。
【0019】
主駆動モータ16は、主駆動輪に対する駆動力を発生するための電動機であって、車両1の車体上に設けられ、エンジン12の後ろ側に、エンジン12に隣接して配置されている。また、主駆動モータ16に隣接してインバータ16aが配置されており、このインバータ16aにより、バッテリ18の直流電圧が交流電圧に変換されて主駆動モータ16に供給される。さらに、図1に示すように、主駆動モータ16はエンジン12と直列に接続されており、主駆動モータ16が発生した駆動力も動力伝達機構14を介して後輪2aに伝達される。また、本実施形態においては、主駆動モータ16として、比較的低電圧(本例では、48V以下)で駆動される25kWの永久磁石電動機(永久磁石同期電動機)が採用されている。
【0020】
副駆動モータ20は、副駆動輪である前輪2bに対する駆動力を発生するように、前輪2b各輪に設けられている。また、副駆動モータ20はインホイールモータであり、前輪2b各輪のホイール内に夫々収容されている。また、キャパシタ22の直流電圧は、トンネル部15内に配置されたインバータ20aにより交流電圧に変換されて、各副駆動モータ20に供給される。さらに、本実施形態においては、副駆動モータ20には減速機構である減速機が設けられておらず、副駆動モータ20の駆動力は前輪2bに直接伝えられ、車輪が直接駆動される。また、本実施形態においては、各副駆動モータ20として、比較的高電圧(本例では、120V以下)で駆動される17kWの誘導電動機が夫々採用されている。
【0021】
電源3は、バッテリ18とキャパシタ22とが直列接続されて構成されている(図3参照)。即ち、バッテリ18の負極端子が車両1の車体アースGに接続され、バッテリ18の正極端子とキャパシタ22の負極端子とが接続されている。
【0022】
バッテリ18は、主として主駆動モータ16を作動させる電気エネルギーを蓄積するための蓄電器である。本実施形態においては、バッテリ18として、48V、3.5kWhのリチウムイオンバッテリ(LIB)が使用されている。具体的には、バッテリ18は、複数のバッテリセル18a(図3参照)が直列接続されて構成されている。本実施形態では、1つのバッテリセル18aの定格電圧が約3Vであり、12個のバッテリセル18aが直列接続されている。
【0023】
キャパシタ22は、車両1の前輪2b各輪に設けられた副駆動モータ20に電力を供給するための蓄電器である。キャパシタ22は、車両1後部において、プラグイン式の充電回路19と概ね対称の位置に配置される。本実施形態においては、キャパシタ22は、耐圧72V、数ファラッド程度の静電容量を有する。なお、副駆動モータ20は、主駆動モータ16よりも高い電圧で駆動されるモータであり、主としてキャパシタ22に蓄積された電気エネルギーにより駆動される。
【0024】
充電回路19は、バッテリ18及びキャパシタ22に電気的に接続されている。充電回路19は、主駆動モータ16及び副駆動モータ20の回生電力、及び、給電口23に接続された充電スタンド等の外部電源17から供給された電力により、バッテリ18及びキャパシタ22を充電するように構成されている。
【0025】
給電口23は、車両1の後部側面に設けられたコネクタであり、充電回路19に電気的に接続されている。給電口23のコネクタは、充電スタンド等の外部電源17から延びる電気ケーブル17aのプラグに接続可能に構成されており、給電口23を介して電力が充電回路19に供給される。このように、本実施形態の車両駆動装置10は、直流電力を供給する外部電源17を、電気ケーブル17aを介して給電口23に接続することにより、バッテリ18及びキャパシタ22を充電可能に構成されている。
【0026】
制御回路24は、エンジン12、主駆動モータ16、及び副駆動モータ20を制御して、電動機走行モード及び内燃機関走行モードを実行するように構成されている。また、制御回路24は、充電回路19を制御して、バッテリ18及びキャパシタ22を充放電させるように構成されている。具体的には、制御回路24は、マイクロプロセッサ、メモリ、インタフェイス回路、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)等によって構成することができる。
【0027】
次に、図2を参照すると、車両駆動装置10における車速と各モータの出力の関係が示されている。図2において、主駆動モータ16の出力を破線で示し、1つの副駆動モータ20の出力を一点鎖線で、2つの副駆動モータ20の出力の合計を二点鎖線で、全てのモータの出力の合計を実線で示している。なお、図2は、車両1の速度を横軸とし、各モータの出力を縦軸として示しているが、車両1の速度とモータの回転数には一定の関係が存在するので、横軸をモータ回転数とした場合でも、各モータの出力は図2と同様の曲線を描く。
【0028】
本実施形態においては主駆動モータ16には永久磁石電動機が採用されているため、図2に破線で示すように、モータ回転数が低い低車速域で主駆動モータ16の出力が大きく、車速が速くなるにつれて出力可能なモータ出力が減少する。即ち、本実施形態において、主駆動モータ16は、約48Vで駆動され、1000rpm程度まで最大トルクである約200Nmのトルクを出力し、約1000rpm以上で回転数の増加と共にトルクが低下する。また、本実施形態において、主駆動モータ16は、最低速域において約20kW程度の連続出力が得られ、最大出力約25kWが得られるように構成されている。
【0029】
これに対して、副駆動モータ20には誘導電動機が採用されているため、図2に一点鎖線及び二点鎖線で示すように、低車速域では副駆動モータ20の出力は極めて小さく、車速が速くなるにつれて出力が増大し、車速約130km/h付近で最大出力が得られた後、モータ出力は減少する。本実施形態において、副駆動モータ20は、約120Vで駆動され、車速約130km/h付近で1台当たり約17kW、2台合計で約34kWの出力が得られるように構成されている。即ち、本実施形態において、副駆動モータ20は、約600乃至800rpmでトルクカーブがピークをもち、最大トルク約200Nmが得られる。
【0030】
図2の実線には、これら主駆動モータ16及び2台の副駆動モータ20の出力の合計が示されている。このグラフから明らかなように、本実施形態においては、車速約130km/h付近で最大出力約53kWが得られており、この車速における、この最大出力でWLTP試験において要求される走行条件を満足することができる。なお、図2の実線では、低車速域においても2台の副駆動モータ20の出力値が合算されているが、実際には低車速域では各副駆動モータ20が駆動されることはない。即ち、発進時及び低車速域においては主駆動モータ16のみで車両が駆動され、高車速域で大出力が必要とされたとき(高車速域で車両1を加速させるとき等)のみ2台の副駆動モータ20が出力を発生する。このように、高回転領域で大きな出力を発生することができる誘導電動機(副駆動モータ20)を、高速域のみで使用することにより、車両重量の増加を低く抑えながら必要なとき(所定速度以上での加速時等)に十分な出力を得ることができる。
【0031】
次に、図3を参照して、本発明の実施形態による車両駆動装置10の電気的な構成を説明する。図3は、車両駆動装置の電気ブロック図である。
【0032】
本実施形態では、車両駆動装置10は、3つの異なる大きさの電源電圧を供給するように構成されている。即ち、車両駆動装置10には、最大で120V電圧を供給する第1電力ライン5aと、最大で48V電圧を供給する第2電力ライン5bと、最大で12V電圧を供給する第3電力ライン5cが設けられている。
【0033】
第1電力ライン5aは、キャパシタ22の正極端子に接続されており、インバータ20aを介して、副駆動モータ20へ向けて120VDC電圧を供給する。即ち、キャパシタ22の正極端子と車両1の車体アースGとの間には、バッテリ18の端子間電圧とキャパシタ22の端子間電圧の合計電圧により、最大で120VDCの電位差が生成される。各副駆動モータ20に接続されたインバータ20aは、バッテリ18及びキャパシタ22の出力を交流に変換した上で誘導電動機である副駆動モータ20を駆動する。
【0034】
第2電力ライン5bは、バッテリ18の正極端子に接続されており、インバータ16aを介して、主駆動モータ16へ向けて48VDC電圧を供給する。即ち、バッテリ18の正極端子と車両1の車体アースGとの間には、バッテリ18の端子間電圧により、最大で48VDCの電位差が生成される。インバータ16aは、バッテリ18の出力を交流に変換した上で永久磁石電動機である主駆動モータ16を駆動する。
【0035】
第3電力ライン5cは、直列接続された複数のバッテリセル18aのうち、特定のバッテリセル18aの正極端子に接続されている。即ち、この特定のバッテリセル18aの正極端子と車両1の車体アースGとの間には、所定数(本例では、4個)のバッテリセル18aの直列接続回路により、約12VDCの電位差が生成される。第3電力ライン5cは、アクセサリ電源であり、スイッチ18cを介して車両1の電気負荷28へ向けて12VDC電圧を供給する。電気負荷は、車載電気機器(例えば、空調装置、オーディオ装置等)である。
【0036】
このように、主駆動モータ16は、バッテリ18の基準出力電圧である約48Vで駆動される。また、副駆動モータ20は、バッテリ18の出力電圧とキャパシタ22の端子間電圧を合算した合計電圧で駆動されるので、48Vよりも高い最大120Vの電圧で駆動される。キャパシタ22には副駆動モータ20に供給する電気エネルギーが蓄積され、副駆動モータ20は、常にキャパシタ22を介して供給された電力によって駆動される。
【0037】
図3に示すように、充電回路19は、キャパシタ22の正極端子と、バッテリ18の正極端子とキャパシタ22の負極端子との接続点N0と、車体アースGとに接続されている。制御回路24は、所定時(モータ回生時、外部電源17による外部充電時)に、充電回路19を用いてバッテリ18及びキャパシタ22の充電処理を実行する。
【0038】
なお、制御回路24は、図示しない複数の電圧センサ及び複数の電流センサを用いて、第1電力ライン5a,第2電力ライン5b,第3電力ライン5cの電圧及び電流を監視している。さらに、制御回路24は、これらの電圧値及び電流値を用いて、バッテリ18の端子間電圧(以下「バッテリ電圧」という),キャパシタ22の端子間電圧(以下「キャパシタ電圧」という),及びこれらの充電状態(SOC;State of Charge)を計算している。
【0039】
車両1の減速時等には、主駆動モータ16及び各副駆動モータ20は発電機として機能し、車両1の運動エネルギーを回生して電力を生成する。主駆動モータ16によって回生された電力はバッテリ18に蓄積され、各副駆動モータ20によって回生された電力は主としてキャパシタ22に蓄積される。
【0040】
また、外部電源17を用いて充電する場合、外部電源17が給電口23に接続されると、充電回路19とキャパシタ22に外部電源17の充電電圧が印加され、バッテリ18及びキャパシタ22への充電が可能になる。
【0041】
なお、キャパシタ22は静電容量が比較的小さいため、モータ回生及び外部充電により、キャパシタ22への充電が行われると、キャパシタ電圧は比較的急速に上昇する。充電によりキャパシタ電圧が所定電圧に達すると、制御回路24は、充電回路19を制御して、キャパシタ22に蓄積された静電エネルギー(電荷)を用いてバッテリ18を充電する。これにより、キャパシタ電圧は低下するので、再びキャパシタ22への充電が可能となる。このような処理を繰り返すことにより、バッテリ電圧を徐々に昇圧することが可能である。即ち、各副駆動モータ20により回生された電力、及び、外部電源17からの電力は、一時的にキャパシタ22に蓄積された後、バッテリ18へ充電される。
【0042】
また、一般に、充電スタンド等の外部電源17は、車両の給電口に接続されたとき、車両の電圧(即ち、給電口の対アース電圧)を取得し、この電圧が所定の下限電圧(例えば、50V)未満の場合は、安全性確保のため充電処理を実行しないように構成されている。
【0043】
本実施形態においては、バッテリ18の定格電圧(48V)は下限電圧(50V)よりも低い電圧に設定されているが、外部電源17は、バッテリ電圧Vbattとキャパシタ電圧Vcapの合計電圧(即ち、第1電力ライン5aの電圧)を、車両1の電圧として取得する。このため、本実施形態では、合計電圧が下限電圧以上であれば、バッテリ電圧Vbattの大きさにかかわらず、外部電源17は充電処理を開始し、制御回路24は、充電回路19を制御して、バッテリ18及びキャパシタ22を充電することができる。
【0044】
一方、外部電源17が給電口23に接続されたときに合計電圧(=Vbatt+Vcap)が下限電圧未満であれば、外部電源17は充電処理を開始しない。この場合、制御回路24は、充電回路19を制御して、バッテリ18に蓄積されている電気エネルギーの一部を用いて、キャパシタ電圧を昇圧する。このとき、バッテリ18は蓄積電荷量が大きいので、バッテリ電圧はほとんど下がらない。これにより、合計電圧を下限電圧以上に昇圧することが可能である。
【0045】
また、外部充電時以外においても(即ち、車両1の走行中)、キャパシタ22の放電によりキャパシタ電圧が所定電圧よりも低くなった場合、制御回路24は、キャパシタ22から副駆動モータ20への給電前に、バッテリ18の電力を用いてキャパシタ22を充電することができる。
【0046】
なお、本明細書において、バッテリ18の定格電圧とは、一般的な条件下での作動電圧の最大値(満充電電圧)を意味し、キャパシタ22の定格電圧とは、キャパシタ22に与えられる最大の電圧(満充電電圧)を意味する。また、バッテリが一般的な条件下で放電した場合の平均的な作動電圧をバッテリの公称電圧という。さらに、バッテリ18の定格電圧(48V)はキャパシタ22の定格電圧(72V)よりも低く設定されているが、バッテリ18に蓄積可能な電荷(電気量:クーロン)は、キャパシタ22に蓄積可能な電荷よりも遥かに多くなるように構成されている。
【0047】
次に、図4図6を参照して、本発明の実施形態による車両駆動装置10の充電処理を説明する。図4は、バッテリ、キャパシタ及び充電回路の電気回路の説明図である。図5は外部充電時の各ステージにおける電気スイッチの開閉位置及び電流の流れを示す図である。図6はキャパシタ充電処理時の各ステージにおける電気スイッチの開閉位置及び電流の流れを示す図である。
【0048】
図4に示すように、バッテリ18の正極端子にはスイッチSWbattが接続され、キャパシタ22の正極端子にはスイッチSWcapが接続されており、バッテリ18及びキャパシタ22の接続、非接続が切り替え可能である。
【0049】
充電回路19は、直列接続されたバッテリ18及びキャパシタ22に対して並列に接続されている。充電回路19には直列に接続された4つのスイッチが内蔵されており、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4が、この順序で接続されている。スイッチSW1の一端はキャパシタ22の正極端子に接続され、スイッチSW4の一端はバッテリ18の負極端子(車体アースG)に接続されている。また、スイッチSW2とSW3の接続点N2は、バッテリ18とキャパシタ22の接続点N0に接続されている。
【0050】
スイッチSW1〜SW4、SWbatt、SWcapは、制御回路24によって開閉が制御される。さらに、スイッチSW1とSW2の接続点N1と、スイッチSW3とSW4の接続点N3との間には、充電用キャパシタ19bが接続されている。なお、本実施形態においては、各スイッチとして半導体スイッチが採用されているが、機械接点によるリレーをスイッチとして使用することもできる。
【0051】
外部充電処理を行うため外部電源17が車両1に接続されると、外部電源17によりキャパシタ22及びバッテリ18が充電される(図5のステージ(1))。これにより、キャパシタ電圧Vcapが上昇する。次に、キャパシタ電圧Vcapが所定値だけ上昇すると、制御回路24は、スイッチSW1,SW3を閉状態にし、スイッチSW2,SW4を開状態にする(図5のステージ(2))。これにより、キャパシタ22に蓄えられた電荷が放出され、電流Icが充電回路19の充電用キャパシタ19bに流れ込んで、充電用キャパシタ19bの端子間電圧Vcが上昇する。
【0052】
端子間電圧Vcが所定値まで上昇すると、制御回路24は、スイッチSW1,SW3を開状態にし、スイッチSW2,SW4を閉状態にする(図5のステージ(3))。これにより、外部電源17からの電流がキャパシタ22及びバッテリ18に流入すると共に、充電用キャパシタ19bに蓄えられた電荷もスイッチSW2を通ってバッテリ18へ流入する。これにより、バッテリ電圧Vbattは上昇する。
【0053】
本実施形態では、図5のステージ(2)及び(3)の状態が交互に繰り返されるように、制御回路24は、スイッチSW1〜SW4を交互にON/OFFする。これにより、キャパシタ22に一時的に蓄えられた電荷によりバッテリ18を徐々に昇圧することができる。また、キャパシタ22も昇圧されるので、全体として入力電圧(Vin=Vbatt+Vcap)が昇圧される。このようにして、本実施形態では、外部電源17により、バッテリ18及びキャパシタ22を充電することが可能である。
【0054】
また、入力電圧(Vin)が外部電源17の下限電圧よりも低い場合、制御回路24は、バッテリ18の電力を用いて、キャパシタ電圧Vcapを昇圧する。このとき、キャパシタ電圧Vcapの電圧増加量に比べて、バッテリ18の電圧低下量は小さいため、入力電圧(Vin)は全体として上昇する。制御回路24は、スイッチSW1,SW3を開状態にし、スイッチSW2,SW4を閉状態にする(図6のステージ(11))。これにより、バッテリ18からスイッチSW2を通って充電用キャパシタ19bに電流が流れ込む(Ic>0)。次に、充電用キャパシタ電圧Vcが所定値まで上昇すると、制御回路24は、スイッチSW1,SW3を閉状態にし、スイッチSW2,SW4を開状態にする(図6のステージ(12))。これにより、充電用キャパシタ19bに蓄えられた電荷が放出され、キャパシタ22へ流れ込む(Icap>0)。これにより、キャパシタ22が昇圧される。
【0055】
本実施形態では、図6のステージ(11)及び(12)の状態が交互に繰り返されるように、制御回路24は、スイッチSW1〜SW4を交互にON/OFFする。これにより、バッテリ18の電荷を用いて、キャパシタ22を徐々に昇圧することができる。制御回路24は、入力電圧(Vin)が所定の外部充電開始閾値(>下限電圧)に達すると、スイッチSW1〜SW4を開状態にして(図6のステージ(13))、図5に示される外部充電処理を引き続き行う。
【0056】
以下に本発明の実施形態による車両駆動装置10の作用について説明する。
本実施形態によれば、車両1に搭載された車両駆動装置10であって、車両1を駆動するための副駆動モータ20(第1の車両駆動モータ)及び主駆動モータ16(第2の車両駆動モータ)と、直列接続された複数のバッテリセル18aを含むバッテリ18と、バッテリ18に直列接続されたキャパシタ22と、バッテリ18により供給されるバッテリ電圧Vbattとキャパシタ22により供給されるキャパシタ電圧Vcapの合計電圧(Vin)を副駆動モータ20に供給する第1電力ライン5aと、バッテリ電圧Vbattを主駆動モータ16に供給する第2電力ライン5bと、複数のバッテリセル18aの一部のバッテリセル18aによるセル電圧を車両1の車載電気機器28へ供給する第3電力ライン5cと、を備え、第1電力ライン5a、第2電力ライン5b、及び第3電力ライン5cは、セル電圧よりもバッテリ電圧Vbattの方が大きく、バッテリ電圧Vbattよりも合計電圧(Vin)の方が大きいように構成されている。
【0057】
このように構成された本実施形態では、電源3がバッテリ18とキャパシタ22の直列接続を備えており、キャパシタ22に接続された第1電力ライン5aと、バッテリ18に接続された第2電力ライン5bと、バッテリ18の一部のバッテリセル18aにより供給される第3電力ライン5cとを備えている。第2電力ライン5bは、バッテリ18により直接提供され、第3電力ライン5cは、バッテリ18の一部のバッテリセル18aにより直接提供される。さらに、第1電力ライン5aは、バッテリ18とキャパシタ22の合計電圧により提供される。このように、本実施形態では、DC/DCコンバータを設ける必要がなく、容易且つ簡易な構成で3つの電源電圧を供給することができる。
【0058】
また、本実施形態において好ましくは、副駆動モータ20は、車両1の車輪(前輪2b)に搭載されたインホイールモータである。このように構成された本実施形態では、副駆動モータ20を、バッテリ18とキャパシタ22の合計電圧による高電圧で作動させることができる。このように、本実施形態では、バッテリ電圧VbattをDC/DCコンバータで昇圧して高電圧を得る必要がない。
【0059】
また、本実施形態において好ましくは、主駆動モータ16は、車両1の車体に搭載され、動力伝達機構14を介して駆動力を車両1の車輪(後輪2a)に提供する。このように構成された本実施形態では、主駆動モータ16を、キャパシタ22よりも電源としての容量を大きく設計し易いバッテリ18で作動させることができる。なお、本実施形態において、副駆動モータ20が後輪2aを駆動し、主駆動モータ16が前輪2bを駆動するように構成してもよい。
【0060】
また、本実施形態において好ましくは、第3電力ライン5cは、アクセサリ電源である。このように構成された本実施形態では、バッテリ18の一部のバッテリセル18aにより提供されるセル電圧をアクセサリ電源として用いることができる。このように、本実施形態では、バッテリ電圧VbattをDC/DCコンバータで降圧して低電圧を得る必要がない。
【0061】
また、本実施形態において好ましくは、第3電力ライン5cには、一部のバッテリセル18aと車載電気機器28との間を電気的に接続及び切断するためのスイッチ18cが設けられている。このように、本実施形態では、簡易な構成で一部のバッテリセルと車載電気機器との間を電気的に接続及び切断することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 車両
3 電源
5a 第1電力ライン
5b 第2電力ライン
5c 第3電力ライン
10 車両駆動装置
16 主駆動モータ(第2の車両駆動モータ)
17 外部電源
18 バッテリ
18a バッテリセル
19 充電回路
19b 充電用キャパシタ
20 副駆動モータ(第1の車両駆動モータ)
22 キャパシタ
24 制御回路
28 電気負荷
G 車体アース
N0,N1,N2,N3 接続点
SWbatt,SWcap スイッチ
SW1〜SW4 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6