【0019】
具体的に、遠赤外線焙煎条件としては、一般的な遠赤外線焙煎機において、以下の工程1〜14を順次行うものが挙げられる:
工程1) 焙煎機窯内温度を常温から130℃まで5〜8分(好ましくは、6分)かけて上昇させる工程;
工程2) 焙煎機窯内温度130℃でコーヒー果実を焙煎機窯内に投入し、焙煎機窯内温度を95℃まで1〜3分(好ましくは、2分)かけて下降させる工程;
工程3) 焙煎機窯内温度を95℃から115℃まで5〜10分(好ましくは、6分)かけて上昇させる工程;
工程4) 焙煎機窯内温度を115℃から110℃まで2〜3分(好ましくは、3分)かけて下降させる工程;
工程5) 焙煎機窯内温度を110℃から130℃まで5〜8分(好ましくは、6分)かけて上昇させる工程;
工程6) 焙煎機窯内温度を130℃から90℃まで5〜10分(好ましくは、10分)かけて下降させる工程;
工程7) 焙煎機窯内温度を90℃から130℃まで8〜10分(好ましくは、9分)かけて上昇させる工程;
工程8) 焙煎機窯内温度を130℃から90℃まで5〜10分(好ましくは、10分)かけて下降させる工程;
工程9) 焙煎機窯内温度を90℃から135℃まで10〜13分(好ましくは、11分)かけて上昇させる工程;
工程10) 焙煎機窯内温度を135℃から100℃まで5〜10分(好ましくは、10分)かけて下降させる工程;
工程11) 焙煎機窯内温度を100℃から140℃まで10〜13分(好ましくは、10分)かけて上昇させる工程;
工程12) 焙煎機窯内温度を140℃から130℃まで1〜2分(好ましくは、2分)かけて下降させる工程;
工程13) 焙煎機窯内温度を130℃から180℃まで15〜20分(好ましくは、16分)かけて上昇させる工程;
工程14) 焙煎機窯内温度180℃でコーヒー果実を焙煎機窯内から取り出し、冷却装置等で、コーヒー果実の温度を常温まで急冷させる工程。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
〔実施例1〕焙煎コーヒー果実の製造及び焙煎コーヒー果実におけるトリゴネリンの分析
1.材料及び方法
1−1.焙煎コーヒー果実の製造
以下の方法により焙煎コーヒー果実を製造した:
1) コーヒーの木は苗を植え付けてから4〜5年目から収穫できる。鹿児島県沖永良部島産のコーヒー果実を収穫し、直接水を入れた水槽に投入して浮いたコーヒー果実を取り除いた。
2) 1)のコーヒー果実を、湿度が低く気温が10℃以下の冬季に天日乾燥するか、あるいは、機械乾燥した。
3) 乾燥したコーヒー果実を焙煎した。遠赤外線焙煎にて90〜180℃を持続し、コーヒー果実の深部からの熱伝導で焙煎した。使用した焙煎機は、遠赤外線焙煎機1kg窯であった。
具体的な焙煎工程1〜14を以下の表1に示す。
【0023】
焙煎機内ガス火において、「燃焼中」の場合は、示した焙煎機窯内温度から次の工程の焙煎機窯内温度まで上昇し、「消火」の場合は、示した焙煎機窯内温度から次の工程の焙煎機窯内温度まで下降した。
【0024】
工程1では焙煎機窯内温度を上げ、工程2ではコーヒー果実を投入した。工程3では、コーヒー果実の投入により窯内温度が下がった。工程4〜13では、90〜180℃を持続する為、バーナーの火を燃焼と消火を繰り返した。工程14では、焙煎機からコーヒー果実を取り出し、冷却装置で常温まで一気にコーヒー果実の温度を下げた。
【0025】
【表1】
【0026】
1−2.焙煎コーヒー果実におけるトリゴネリンの分析
第1−1節で製造した焙煎コーヒー果実におけるトリゴネリンの定量を、高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。以下の2つの条件で分析可能であった。
【0027】
1) 条件1:シャープなピーク1本が出るが、特殊なカラム。
カラム:TOSOH ODS-100Z 5μm 4.6mmI.D.×50cm
ガードカラム:ODS 5μm 3.2mm×1.5cm
移動相:10mMリン酸、グラジエントなし
流速:0.7mL/min
カラム温度:40℃
検出:UV 265nm。
【0028】
2) 条件2:構造異性体があるため二山のピークが出る。
カラム:COSMOSIL 5C18-AR-300 5μm 4.6mmI.D.×25cm
ガードカラム:ODS 5μm 3.2mm×1.5cm
移動相:H
2O (HCl, pH3.5)/MeOH=5:95
流速:1.0mL/min
検出:UV 267nm (フォトダイオードアレイにて吸光度確認)。
【0029】
2.結果及び考察
2−1.焙煎コーヒー果実におけるトリゴネリンの分析結果
第1−2節における焙煎コーヒー果実におけるトリゴネリンの分析の結果を
図1に示す。
【0030】
図1に示すトリゴネリンの分析に使用したサンプルは、以下の通りである:
「コーヒー果実(沖永良部産)」:第1−1節で使用した鹿児島県沖永良部島産のコーヒー果実;
「乾燥果実(沖永良部産)」:第1−1節における工程2)乾燥後のコーヒー果実;
「外皮(沖永良部産)」:第1−1節で使用した鹿児島県沖永良部島産のコーヒー果実から剥皮した外皮;
「豆(沖永良部産)」:第1−1節で使用した鹿児島県沖永良部島産のコーヒー果実から外皮や果肉等を除去した生豆(種子);
「豆(通常焙煎)」:焙煎庫内を195℃に上昇させて豆(沖永良部産)を投入し、180℃で持続焙煎した豆;
「豆(丸ごと焙煎)」:第1−1節で製造した焙煎コーヒー果実;
「抽出液フレンチプレス(丸ごと焙煎)」:第1−1節で製造した焙煎コーヒー果実をフレンチプレス法で抽出したコーヒー。具体的には、焙煎コーヒー果実を挽いた粉10gを器具(フレンチプレスコーヒー)に入れ、お湯(90〜95℃)120〜150mlを注ぎ入れた。コーヒーの粉全体にお湯が行き渡るよう混ぜ、4〜5分経ったら蓋を押し下げコーヒーの液体を注ぎ出した。フレンチプレス法の特徴として、コーヒー豆のオイル分も含めコーヒーの香り旨み成分を逃がすことなく抽出できる。コーヒー粉の微粒子も液体に混ざることが多い;
「抽出液ドリップ(丸ごと焙煎)」:第1−1節で製造した焙煎コーヒー果実をネルドリップ法で抽出したコーヒー。具体的には、布(ネル)の中に、焙煎コーヒー果実を挽いたコーヒー粉10gを入れ、お湯(90〜95℃)120〜150mlをゆっくり回し注ぎ入れた。ドリップ法としてペーパードリップ、ネルドリップ、金属フィルターといった3種類が日本で多く使われており、そのうち、ネルドリップは、布(ネル)のフィルターを使用したもので、ペーパーフィルターよりコーヒーオイルを抽出しやすく、金属フィルターより特徴として雑味や微粒子を抑えることができ、コーヒーオイル成分の旨み香りも抽出できる;
「モカ(輸入豆の抽出液)」:上記フレンチプレス法で抽出したモカコーヒー;
「コロンビア(輸入豆の抽出液)」:上記フレンチプレス法で抽出したコロンビアコーヒー;
「コロンビア深煎り(輸入豆の抽出液)」:上記フレンチプレス法で抽出したコロンビア深煎りコーヒー;
「スペシャルブレンド(輸入豆の抽出液)」:上記フレンチプレス法で抽出したスペシャルブレンドコーヒー。
【0031】
図1に示すように、コーヒー果実中にはトリゴネリン4μg/mg含まれており、通常焙煎では約1/3まで減少した(1.33μg/mg)。しかしながら、丸ごと焙煎豆では7%の消失のみであり、ほぼ丸ごと焙煎豆に残っていた(3.75μg/mg)。
【0032】
具体的に、
図1に示す(1)〜(8)のサンプルについての結果は、以下の通りであった:
(1) 乾燥により水分蒸発するため、重量当たりに換算するとトリゴネリン量は増加した;
(2) (1)を外皮と豆にわけると廃棄される外皮の方にもかなりトリゴネリンがあることがわかった;
(3) いわゆる一般的なコーヒー豆;
(4) (3)を一般的な焙煎方法で焙煎するとトリゴネリンが半分になった;
(5) (1)を丸ごと焙煎すると、トリゴネリン量を高濃度で残すことができた;
(6) (5)をフレンチプレス法で抽出した液(コーヒー)中にトリゴネリンを確認できた;
(7) (5)をドリップ法で抽出した液(コーヒー)中にトリゴネリンを確認できた;
(8) 輸入豆を抽出した液(コーヒー)。拡大図のように少ないながらも抽出されているが、量が少ないが故に同一グラフ上に表すと棒グラフが見えなくなった。