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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-199011(P2020-199011A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】履物
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20201120BHJP
   A43B 3/10 20060101ALI20201120BHJP
   A43B 13/12 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   A43B13/14 B
   A43B3/10 F
   A43B13/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-107109(P2019-107109)
(22)【出願日】2019年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】518415820
【氏名又は名称】株式会社K−プラン
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】葛原 隆一
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA02
4F050BA29
4F050BA40
4F050BA50
4F050BA55
4F050HA81
4F050HA83
4F050LA01
(57)【要約】
【課題】装着者の足に容易にフィットさせることができると共に、装用感に優れ、また装着時の体圧も効果的に分散させることができる履物の提供を課題とする。
【解決手段】アウターソール50よりも上方の足載置領域に、装着者の足裏形状を記憶可能な足裏形状記憶層30を備えた履物であって、足裏形状記憶層30は、装着者の体温と自重とによって足裏形状に変形し、変形後の足裏形状を所定の温度下で記憶可能な温感形状記憶体で形成される温感形状記憶体層31と、温感形状記憶体層31の直下に積層される第1の弾性材層32と、第1の弾性材層32の直下に積層される第2の弾性材層33とで構成され、第1の弾性材層32の弾性率が第2の弾性材層33の弾性率よりも小さい履物である。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターソールよりも上方の足載置領域に、装着者の足裏形状を記憶可能な足裏形状記憶層を備えた履物であって、前記足裏形状記憶層は、装着者の体温と自重とによって足裏形状に変形し、変形後の足裏形状を所定の温度下で記憶可能な温感形状記憶体で形成される温感形状記憶体層と、前記温感形状記憶体層の直下に積層される第1の弾性材層と、前記第1の弾性材層の直下に積層される第2の弾性材層とで構成され、前記第1の弾性材層の弾性率が前記第2の弾性材層の弾性率よりも小さいことを特徴とする履物。
【請求項2】
温感形状記憶体層は、厚み方向に貫通する貫通孔を複数個備えることを特徴とする請求項1に記載の履物。
【請求項3】
貫通孔は、温感形状記憶体層の長手方向と直交する方向に延びる形状で構成されることを特徴とする請求項2に記載の履物。
【請求項4】
足裏形状記憶層を、履物の内部底面の形状に沿った形状に構成してあることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターソールよりも上方の足載置領域に、装着者の足裏形状を記憶可能な足裏形状記憶層を備えた履物に関する。
【背景技術】
【0002】
靴やブーツ、サンダル等の履物においては、足に合わないものを装着した(履いた)場合、歩行時に足が滑ったり、体圧が局所的に集中したりすることで、足、足首、膝等へ負担がかかり、疲労や、腰痛、肩こりを発症する原因となる。よって、装着者の足によりフィットさせることができる履物への要求が高まり、そのような履物の開発が各種行われている。
このような装着者の足にフィットさせることが可能な履物に関する従来技術として、例えば、下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−253494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、形状記憶装置およびそれを用いた履物の中敷きおよびその中敷きを備えた履物に関するもので、内部空間に複数の粒状体4が充填され、外力により変形自在な中空状の粒状体保持手段5と、その粒状体保持手段5の内部空間を負圧にし、かつその負圧状態を保つことにより前記粒状体4を密着させて、粒状体4の密着面に外力に対する抗力を発生させる負圧保持手段である逆流防止弁6を備える構成とすることで、装着者が履物を装着した際に発生する外力によって、複数の粒状体4が足の形状に沿って変形し、内部空間が負圧となった粒状保持手段5が負圧保持手段である逆流防止弁6によって形状保持される。よって、外力が負荷されれば即座に足裏形状を記憶でき、履物の装着時(着用時)のフィット性と安定性とを向上させることができるというメリットがある。
しかしながら、上記特許文献1においては、複数の独立した粒状体4を用いる構成であり、粒状体4として、小型軽量の球形発砲樹脂や、ガラス玉、コーヒー豆、木、米等を用いるものであることから、履物を装着した際や歩行時に、粒状体4の個々の外形が足裏に伝わるため、装用感が劣るという問題があった。また、装着者の体圧を効率的に分散できる構成を備えるものではないことから、体圧分散性能に劣るという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来の履物における欠点を解消し、装着者の足に容易にフィットさせることができると共に、装用感に優れ、また装着時の体圧も効果的に分散させることができる履物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため本発明の履物は、アウターソールよりも上方の足載置領域に、装着者の足裏形状を記憶可能な足裏形状記憶層を備えた履物であって、前記足裏形状記憶層は、装着者の体温と自重とによって足裏形状に変形し、変形後の足裏形状を所定の温度下で記憶可能な温感形状記憶体で形成される温感形状記憶体層と、前記温感形状記憶体層の直下に積層される第1の弾性材層と、前記第1の弾性材層の直下に積層される第2の弾性材層とで構成され、前記第1の弾性材層の弾性率が前記第2の弾性材層の弾性率よりも小さいことを第1の特徴としている。
また、本発明の履物は、上記第1の特徴に加えて、温感形状記憶体層は、厚み方向に貫通する貫通孔を複数個備えることを第2の特徴としている。
また、本発明の履物は、上記第2の特徴に加えて、貫通孔は、温感形状記憶体層の長手方向と直交する方向に延びる形状で構成されることを第3の特徴としている。
また、本発明の履物は、上記第1〜第第3の特徴に加えて、足裏形状記憶層を、履物の内部底面の形状に沿った形状に構成してあることを第4の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の履物によれば、装着者が履物を装着した際に、体温と自重とによって、温感形状記憶体層を容易に足裏形状に変形させることができる。この際、第1の弾性材層によって、温感形状記憶体層の変形を許容可能なスペースを確保でき、温感形状記憶体層を、装着者の足裏形状に正確に追従させて変形させることができる。また、ゆっくりと足を沈みこませ、歩行時等における衝撃を吸収することができる。同時に、第2の弾性材層によって、歩行時等における衝撃を吸収させると共に、地面への底付き感を軽減させることができる。従って、温感形状記憶体層、第1の弾性材層、第2の弾性材層の三層の効果が合わさることで、簡易な構成でありながらも、あたかもオーダーメードの足型に沿ったインソールを備え、フィット感、装用感に優れた履物を提供することができる。また、装着者の足型に沿ったインソールとなることで、歩行時等における足の前後左右へのずれを防止できると共に、装着者の体圧を効果的に分散させることができる。よって、装着者の足、足首、膝等へ負担を減少させることができ、これによって、疲労や、腰痛、肩こりの発症を効果的に抑制可能な履物とすることができる。
また、温感形状記憶体層は、所定の温度下で足裏形状を記憶可能なものであることから、一度記憶させた足裏形状を一定条件下で保持できる。よって、一定条件下においては温感形状記憶体層をその都度変形させることが不要となり、より迅速にフィット感を体感可能な履物とすることができる。
更に、足裏形状記憶層を備えた状態で完成品の履物とすることで、着脱自在な中敷きのように後発的に足裏形状記憶層を装着する場合に比べ、足挿入空間の大きさが後発的に変更されることがない。よって、製品として完成した状態にある足挿入空間の大きさが後発的に変更されることによる足への締め付け感や装用感の不快さを確実に防止でき、一段と快適な履物とすることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の履物によれば、請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、足裏形状記憶層の通気性と屈曲性とを向上させることができる。
また、温感形状記憶体層の硬度を弱めることができ、温感形状記憶体層が足裏形状に変形するまでの時間の短縮化を実現できる。
【0009】
また、請求項3に記載の履物によれば、請求項2に記載の構成による作用効果に加えて、足裏形状記憶層の屈曲性を効率的に向上させることができる。
【0010】
また、請求項4に記載の履物によれば、請求項1〜3の何れか1つに記載の構成による作用効果に加えて、装着者の足裏を面で受け止めることができ、装着者の体圧を一段と効果的に分散可能な履物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る履物を示す図で、(a)は全体斜視図、(b)は側面図である。
図2図1(b)のA−A線方向における断面図の要部を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る足裏形状記憶層を示す図で、(a)は分解斜視図、(b)は(a)の拡大平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る履物を履いた際の状態を模式的に示す図で、(a)は履物の内部底面に装着者の足裏が接した状態を示す側面図、(b)は履物の内部底面に装着者の自重が負荷された状態を示す側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る履物を履いた際の状態を示す図で、(a)は足裏形状記憶層が装着者の足裏形状を記憶した状態を模式的に示す側面図、(b)は足裏形状記憶層が装着者の足裏形状を記憶した状態を模式的に示す平面図である。
図6】本発明の実施形態に係る履物を示す全体分解斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る履物及び履物を構成する足裏形状記憶層の変形例を示す図で、(a)は履物の全体斜視図、(b)は履物の側面図、(c)は足裏形状記憶層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る履物について説明する。
【0013】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る履物1は、婦人用のいわゆるパンプスである。勿論、本発明を適用可能な履物はパンプスに限るものではなく、紳士靴、運動靴、サンダル、草履など、その他の各種履物に適用することが可能である。
この履物1は、図1図6に示すように、アッパー10と、中敷き層20と、足型形状記憶層30と、中底層40と、アウターソール50とで構成される。
【0014】
前記アッパー10は、図1に示すように、履物1における足挿入空間1aを形成すると共に、挿入した足を保護するためのものである。また、履物1の外観上のデザインの主要な構成要素となるものである。
このアッパー10は、パンプスのアッパーとして汎用されている各種素材を用いることが可能である。
【0015】
前記中敷き層20は、履物1の内部に配置されて、装着者の足裏と直接的に接するもので、主として、履物1に足を挿入した際のクッション材となるものである。よって、本実施形態においては、この中敷き層20の上面20aの大きさが、足載置領域の大きさを構成している。
この中敷き層20は、パンプスの中敷きとして汎用されている各種素材を用いることが可能である。例えば、EVA(Etylene−Vinyl Acetate Copolimer)等の合成樹脂素材を用いることができる。
本実施形態においては、中敷き層20を履物1の内部に固定させて配置する構成としてある。勿論、このような構成に限るものではなく、中敷き層20を履物1に対して着脱自在に配置する構成としてもよい。
なお、中敷き層20の形状、大きさ、厚み等も履物1の種類に合わせて適宜変更可能である。
【0016】
前記足裏形状記憶層30は、アウターソールよりも上方の足載置領域に配置されて、装着者の足裏形状を記憶すると共に、装着者の体圧を効果的に分散させるためのものである。本実施形態においては、図6に示すように、この足裏形状記憶層30は、中敷き層20と中底層40との間に配置されている。勿論、このような構成に限るものではなく、アウターソールよりも上方の足載置領域に配置される構成であれば、足裏形状記憶層30の配置位置は履物の種類によって適宜変更可能である。
【0017】
本実施形態においては、この足裏形状記憶層30は、図2図6に示すように、温感形状記憶体層31と、第1の弾性材層32と、第2の弾性材層33とで構成される。
【0018】
前記温感形状記憶体層31は、装着者の体温と自重とによって足裏形状に変形し、変形後の足裏形状を所定の温度下(温度の状況下)で記憶可能な温感形状記憶体で形成される層である。本実施形態においては、均一な厚みのシート状の温感形状記憶体を用いる構成としてある。
ここで、「所定の温度」とは、常温未満の温度を意味するものであり、「常温」とは、15度〜25度程度の温度を意味するものである。より具体的には、本発明においては、温感形状記憶体として、常温から28度付近では緩やかに変形し、常温未満の温度では変形せずに変形後の形状を保持する性質を持つ温感形状記憶体を用いる構成としてある。従って、本実施形態においては、2日〜3日程度履物1を履くことで、装着者の足裏形状を記憶したインソールを備える履物1を実現することができる。
このような性質を備える温感形状記憶体としては、例えば、公知の樹脂素材からなる温感形状記憶素材を用いることができる。また、樹脂素材からなる温感形状記憶素材としては、例えば、ポリオレフィンを発砲させた素材や、ポリウレタン系形状記憶ポリマー等を用いることができるが、これに限るものではない。また、ポリオレフィンを発砲させた素材としては、例えば、三井化学株式会社、三井化学東セロ株式会社が開発したポリオレフィンを発砲させた素材を主成分とする温感形状記憶素材(仮称「SMS−01」として公知。)を用いることができる。
つまり、本発明においては、常温から28度付近では緩やかに変形し、常温未満の温度では変形せずに変形後の形状を保持する性質を備える素材であれば、如何なるものを用いてもよい。また、樹脂素材からなる温感形状記憶素材を用いる場合は、好適には、ガラス転移点が28度程度のものを用いることが望ましい。
【0019】
また、本実施形態においては、温感形状記憶体層31として、履物1の内部底面の形状(中底層40の上面41aの形状)の全面に沿った形状の温感形状記憶体を用いている。
【0020】
また、図3図6に示すように、温感形状記憶体層31には、厚み方向に貫通する貫通孔Sを複数個設けてある。また、図3図6に示すように、貫通孔Sの形状を、温感形状記憶体層31の長手方向と直交する方向に延びる線状形状としてある。
また、温感形状記憶体層31の長手方向と短手方向との両方向に、複数個の貫通孔Sを並列配置させてある。より具体的には図3に示すように、複数個の貫通孔Sを、温感形状記憶体層31の長手方向と短手方向との両方向に並列配置させてあると共に、長手方向において隣接する貫通孔31を、互いに左右にずれた位置に設ける構成としてある。
また、本実施形態においては、複数個の貫通孔Sの形状、大きさを全ての貫通孔Sで同じ形状、同じ大きさとしてある。また、貫通孔Sの長さは5mm程度、温感形状記憶体層31の短手方向に並列配置される貫通孔Sの間隔は5mm程度としてある。
なお、貫通孔Sの形状、大きさ、配置位置、密集度などは本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。例えば、体圧が多く負荷される領域に対しては、その他の領域よりも貫通孔Sを密集させて設けるような構成としてもよい。但し、好適には、温感形状記憶体層31の全面に貫通孔Sを均等に設けることが望ましい。このように均等に設ける構成とすることで、温感形状記憶体層31を万遍なく柔らかくでき、足あたりの良い履物とすることができるからである。
また、貫通孔Sは必ずしも設ける必要はなく、温感形状記憶体層31に貫通孔Sを設けない構成としてもよい。
【0021】
温感形状記憶体層31の厚みは、適宜変更可能であるが、好適には、0.5mm〜2mm程度、より好適には1mm程度とすることが望ましい。0.5mm未満であると柔らかすぎ、2mmを超えると硬すぎて足あたりが硬くなるからである。
また、温感形状記憶体層31の厚みは、本実施形態のように、均一な厚みとする構成であってもよいし、領域によって異なる厚みとする構成であってもよい。
【0022】
前記第1の弾性材層32は、温感形状記憶体層31の直下に配置される弾性材層で、温感形状記憶体層31の変形を許容可能なスペースを確保すると共に、歩行時等における衝撃を吸収するためのものである。
本実施形態においては、第1の弾性材層32として、均一な厚みのシート状のウレタンフォームを用いる構成としてある。勿論、第1の弾性材層32を構成する素材は、ウレタンフォームに限るものではなく、弾性能を有する他の素材であってもよい。
また、第1の弾性材層の厚みは適宜変更可能であるが、好適には、2mm〜6mm程度とすることが望ましい。2mm未満であると温感形状記憶体層31の変形を受け入れるためのスペースを十分に確保できないからであり、6mmを超えると足挿入空間1aを十分に確保できなくなるからである。
更に、第1の弾性材層32の厚みは、本実施形態のように、均一な厚みとする構成であってもよいし、領域によって異なる厚みとする構成であってもよい。
【0023】
前記第2の弾性材層33は、第1の弾性材層32の直下に配置される弾性材層で、温感形状記憶体層31の変形に伴う第1の弾性材層32の変形を許容可能なスペースを確保すると共に、歩行時等などにおける衝撃を吸収するためのものである。
本実施形態においては、第2の弾性材層33として、均一な厚みのシート状のウレタンフォームを用いる構成としてある。勿論、第2の弾性材層32を構成する素材は、ウレタンフォームに限るものではなく、弾性能を有する他の素材であってもよい。例えば、シート状のラテックススポンジ、シート状のシリコーン、シート状のコルク、シート状のフェルト等を用いることができる。しかしながら、第2の弾性材層33の弾性率が、第1の弾性材層32の弾性率よりも大きいことが必要である。
また、第2の弾性材層33の厚みは適宜変更可能であるが、好適には、2mm〜4mm程度とすることが望ましい。2mm未満であると第1の弾性材層32の変形を受け入れるためのスペースを十分に確保できないからであり、6mmを超えると足挿入空間1aを十分に確保できなくなるからである。また、好適には、第2の弾性材層33の厚みは、第1の弾性材層32の厚みよりも薄いものであることが望ましい。
更に、第2の弾性材層33の厚みは、本実施形態のように、均一な厚みとする構成であってもよいし、領域によって異なる厚みとする構成であってもよい。
なお、これら温感形状記憶体層31、第1の弾性材層32、第2の弾性材層33は、図示しないシート状の接着剤を介して相互に接着されている。
【0024】
前記中底層40は、アウターソール50の直上に配置されて、アッパー10とアウターソール50とをつなげると共に、履物1の内面底部で足を支える土台となるものである。
この中底層40は、パンプスの中底として汎用されている各種素材を用いることが可能である。
なお、中底層40の形状、大きさ、厚みなども履物1の種類に合わせて適宜変更可能である。
【0025】
前記アウターソール50は、履物1における地面との接地部分を構成するものである。
このアウターソール50は、パンプスのアウターソールとして汎用されている各種素材を用いることが可能である。
なお、アウターソール50の形状、大きさ、厚みなども履物1の種類に合わせて適宜変更可能である。
【0026】
以上説明したアッパー10、中敷き層20、足裏形状記憶層30、中底層40、アウターソール50は、それぞれ所定の大きさに裁断等がなされた後、公知の履物の製造方法と同様の工程にて一体化されて履物1が製造される。
【0027】
次に、図1図4図5を参照して、このような構成からなる本発明の履物1を装着者が履いた場合における足裏形状記憶層30が変形する状態を説明する。
まず図1図4を参照して、装着者が足Fを足挿入空間1aに挿入させて、中敷き層20上に載置させる。そして、その状態で起立し、歩行することで、装着者の体温が温感形状記憶体層31に伝わり、温感形状記憶体層31が温められる。
同時に、中敷き層20(図4図5では図示省略。)、温感形状記憶体層31、第1の弾性材層32、第2の弾性材層33に装着者の体重が負荷される。これによって、図4(b)に示すように、それぞれの層において装着者の足裏と接する領域が凹状に変形する。より具体的には、まず温感形状記憶体層31が装着者の足型に沿った形状にて、凹状に変形する。これに伴い、第1の弾性材層32が温感形状記憶体層31の形状変化に沿って凹状に変形する。更に、第2の弾性材層33が第1の弾性材層32の形状変化に沿って凹状に変形する。これら一連の変形によって、最終的には、図4(b)、図5に示すように、足裏形状記憶層30の所定領域(温感形状記憶体層31、第1の弾性材層32、第2の弾性材層33の所定領域)が、装着者の足型に沿った足裏形状Uへと変形する。
そして、装着者が履物1を脱ぎ、履物1が常温未満の温度下におかれることによって、変形後の足裏形状記憶層30の足裏形状Uが保持される。
【0028】
このような本発明の実施形態に係る履物1は以下の効果を奏する。
【0029】
アウターソール50よりも上方の足載置領域に、足裏形状記憶層30を備え、足裏形状記憶層30を、温感形状記憶体層31と、第1の弾性材層32、第1の弾性材層32よりも弾性率が大きい第2の弾性材層33で構成することで、装着者が履物1を装着した際に、体温と自重とによって、温感形状記憶体層31を容易に足裏形状に変形させることができる。この際、第1の弾性材層32によって、温感形状記憶体層31の変形を許容可能なスペースを確保でき、温感形状記憶体層31を、装着者の足裏形状に正確に追従させて変形させることができる。また、ゆっくりと足を沈みこませ、歩行時等における衝撃を吸収することができる。同時に、第2の弾性材層32によって、歩行時などにおける衝撃を吸収させると共に、地面への底付き感を軽減させることができる。従って、温感形状記憶体層31、第1の弾性材層32、第2の弾性材層33の三層の効果が合わさることで、簡易な構成でありながらも、あたかもオーダーメードの足裏形状に沿ったインソールを備え、フィット感、装用感に優れた履物1とすることができる。
【0030】
また、装着者の足裏形状に沿ったインソールを備えることで、歩行時等において、足が前後左右へずれることを防止できる。加えて、足裏形状記憶層30が装着者の足裏形状に沿って変形することで、装着者の体重がインソールに局所的に負荷されるのではなく、足裏形状に沿って万遍なく負荷されることで、装着者の体圧を効率的に分散させることができる。よって、装着者の足、足首、膝等へ負担を減少させることができ、これによって、疲労や、腰痛、肩こりの発症を効果的に抑制可能な履物1とすることができる。
【0031】
また、温感形状記憶体層31は、常温未満の温度下で足裏形状を記憶可能なものであることから、一度記憶させた足裏形状Uを常温未満の温度下で保持できる。よって、一定条件下においては温感形状記憶体層31をその都度変形させることが不要となり、より迅速にフィット感を体感可能な履物1とすることができる。
【0032】
更に、足裏形状記憶層30を備えた状態で完成品の履物1とすることで、足裏形状記憶層30を、着脱自在な中敷きのように後発的に装着する場合に比べ、足挿入空間1aの大きさが後発的に変更されることがない。よって、製品として完成した状態にある足挿入空間1aの大きさが後発的に変更されることに伴う足への締め付け感や装用感の不快さを確実に防止でき、一段と快適な履物1とすることができる。
【0033】
また、温感形状記憶体層31に、厚み方向に貫通する貫通孔Sを複数個備える構成とすることで、足裏形状記憶層30の通気性と屈曲性とを向上させることができる。また、温感形状記憶体層31の硬度を弱めることができ、温感形状記憶体層31が足裏形状に変形するまでの時間の短縮化を実現できる。
更に、温感形状記憶体層31に設ける貫通孔Sを、温感形状記憶体層31の長手方向と直交する方向に延びる線状形状で構成すると共に、温感形状記憶体層31の長手方向と短手方向との両方向に、複数個の貫通孔Sを並列配置させてある構成とすることで、歩行時においては温感形状記憶体層31の長手方向と直交する方向が屈曲線となることから、複数個の貫通孔Sを屈曲線として機能させることができ、足裏形状記憶層30の屈曲性を効率的に向上させることができる
加えて、長手方向において隣接する貫通孔31を、互いに左右にずれた位置に設ける構成とすることで、温感形状記憶体層31が破断することを効果的に防止することができる。
【0034】
また、足裏形状記憶層30を、履物1の内部底面の形状(中底層40の上面40aの形状)に沿った形状に構成することで、装着者の足裏の全面にわたって足裏形状記憶層30を配置させることができる。よって、装着者の足裏を足裏形状記憶層30で構成される面で受け止めることができる。従って、装着者の足裏形状に一段と正確に追従した状態で足裏形状記憶層30を変形させることができ、これによって、装着者の体圧を一段と効果的に分散可能な履物1とすることができる。
【0035】
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係る履物2を説明する。なお、第2の実施形態に係る履物2において、既述した履物1と同一機能を果たすものには同一番号を付し、詳細な説明は省略するものとする。
【0036】
本発明の第2の実施形態に係る履物2は、婦人用のいわゆるヒール靴である。図7(c)に示すように、履物2においては、中足骨よりも足先側の前方領域Pには足裏形状記憶層30を配置し、中足骨よりも踵側の後方領域Qには足裏形状記憶層30を設けない構成としてある。また、足裏形状記憶層30を履物2の内部底面の形状(図示しない中底層の上面の形状)の一部に沿った形状に構成してある。
本発明における「足裏形状記憶層を、履物の内部底面の形状に沿った形状に構成してある」とは、このように足裏形状記憶層30を、履物2の内部底面の形状の一部に沿わせた形状に構成することも含むものであり、第2の実施形態のように足裏形状記憶層30を足載置領域の一部の領域だけに設ける構成も本発明の範囲に含むものである。
【0037】
このような構成とすることで、図7(b)に示すように、ヒール靴においては、装着者の体重の大半が前方領域Pに負荷されるものであることから、前方領域Pにおいて、装着者の足裏形状に沿ったあたかもオーダーメードのインソールを備えた履物2とすることができ、フィット感、装用感に優れた履物2とすることができる。また、歩行時等において、足が前後左右へずれることを防止できる。加えて、装着者の体圧を効率的に分散させることができる。よって、装着者の足、足首、膝等へ負担を減少させることができ、これによって、疲労や、腰痛、肩こりの発症を効果的に抑制可能な履物2とすることができる。
なお、第2の実施形態においては、ヒール靴の前方領域Pだけに足裏形状記憶層30を設ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、ヒール靴においても、既述した第1の実施形態のように、足載置領域の全領域に足裏形状記憶層30を設ける構成としてもよい。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
シート型圧力分布測定器(XSENSOR社(XSENSOR Technology
Corporation)製)を用いて、下記の条件にて実施例1、2、比較例1〜4
について圧力分布の測定を行った。その結果を表1に示す。なお、表1における各単位は
、荷重はN、面積はcm、圧力はmmHg、分散はSである。
【0039】
[実施例1]
厚みが3mmのラテックススポンジシートと、厚みが4mmの低反発ウレタンシート(前記ラテックススポンジシートよりも弾性率が小さいもの。)と、厚みが1mmのシート状の温感形状記憶体とを、記載順に下方から積層させてなる三層シートを上記実施形態1のようなパンプスの木型における足載置領域の全面に接着剤を介して貼り付けたもの。
[比較例1]
厚みが1mmのシート状の温感形状記憶体(素材は実施例1と同一のもの。)を、上記実施例1と同一のパンプスの木型における足載置領域の全面に接着剤を介して貼り付けたもの。
[比較例2]
厚みが3mmのラテックススポンジシート(素材は実施例1と同一のもの。)を、上記実施形態1と同一のパンプスの木型における足載置領域の全面に接着剤を介して貼り付けたもの。
【0040】
[実施例2]
厚みが3mmのラテックススポンジシートと、厚みが4mmの低反発ウレタンシート(前記ラテックススポンジシートよりも弾性率が小さいもの。)と、厚みが1mmのシート状の温感形状記憶体とを、記載順に下方から積層させてなる三層シートを上記実施形態2のようなヒール靴の木型における中足骨よりも足先側の前方領域に接着剤を介して貼り付けたもの。
[比較例3]
厚みが1mmのシート状の温感形状記憶体(素材は実施例2と同一のもの。)を、上記実施例2と同一のヒール靴の木型における中足骨よりも足先側の前方領域に接着剤を介して貼り付けたもの。
[比較例4]
厚みが3mmのラテックススポンジシート(素材は実施例2と同一のもの。)を、上記実施例2と同一のヒール靴の木型における中足骨よりも足先側の前方領域に接着剤を介して貼り付けたもの。
【0041】
【表1】
【0042】
表1の結果より、本発明の構造(実施例1、実施例2の構造)とすることで、履物の装着者の体圧を効果的に分散できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の履物は、装着者の足に容易にフィットさせることができると共に、装用感に優れ、また装着者の体圧も効果的に分散させることができることから、履物の産業分野において有用であり、産業上の利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0044】
1 履物
1a 足挿入空間
2 履物
2a 足挿入空間
10 アッパー
20 中敷き層
20a 上面
30 足裏形状記憶層
31 温感形状記憶体層
32 第1の弾性材層
33 第2の弾性材層
40 中底層
40a 上面
50 アウターソール
F 足
P 前方領域
Q 後方領域
S 貫通孔
U 足裏形状
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7