【課題】本発明の課題は、基材が用紙であっても紙剥けする事がなく、優れた硬化性、及び優れた流動性を保持することを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を提供することにある。更には、該組成物を用いた印刷物を提供することにある。
【解決手段】本発明の解決手段は、光重合開始剤(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、バインダー(C)及び体質顔料(D)を含有する活性エネルギー線硬化型インキ組成物であって、前記光重合開始剤(A)がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びアルキルアミノベンゾフェノン化合物を含み、前記バインダー(C)がジアリルイソフタレート樹脂である活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
光重合開始剤(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、バインダー(C)及び体質顔料(D)を含有する活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物であって、前記光重合開始剤(A)がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びアルキルアミノベンゾフェノン化合物を含み、前記バインダー(C)がジアリルイソフタレート樹脂であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量が、インキ組成物全量の4〜12質量%である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドである請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
前記アルキルアミノベンゾフェノン化合物の含有量が、インキ組成物全量の2〜8質量%である請求項1〜3の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
前記アルキルアミノベンゾフェノン化合物が、4,4’−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンである請求項1〜4の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
前記(メタ)アクリレートモノマー(B)が、グリセリンプロピレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる何れか1つ以上である(メタ)アクリレートモノマー(B1)であり、(メタ)アクリレートモノマー(B1)の総量がインキ組成物全量の10〜60質量%含有する請求項1〜5の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
前記ジアリルイソフタレート樹脂の含有量が、インキ組成物全量の5〜20質量%である請求項1〜6の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
前記体質顔料(D)が、タルク、炭酸マグネシウム、シリカからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上である請求項1〜7の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の、活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物は、光重合開始剤(A)、(メタ)アクリレートモノマー(B)、バインダー(C)及び体質顔料(D)を含有する活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物であって、前記光重合開始剤(A)がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びアルキルアミノベンゾフェノン化合物を含み、前記バインダー(C)がジアリルイソフタレート樹脂であることで目的とする本発明の効果を奏するものである。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物で使用する光重合開始剤(A)としては、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びアルキルアミノベンゾフェノン化合物を必須とするものである。
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(数平均分子量418.5)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(数平均分子量348.0)等を挙げる事ができる。中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
前記アルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ビス−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の4,4’−ジアルキルベンゾフェノン類、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。中でも4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(数平均分子量324.47)が好ましく、これらは光増感剤としての役目も併せ持つ。
【0020】
活性エネルギー線の中でも200〜420nmの紫外線波長領域において、光開裂型開始剤であるα−(ジメチル)アミノアルキルフェノン化合物や、α−モルフォリノアルキルフェノン化合物と、水素引き抜き型重合開始剤であるジアルキルベンゾフェノン化合物やチオキサントン化合物等を併用する手法が知られているが、これらを単一もしくは組み合わせた光開始剤を使用した場合、優れた硬化性、優れた流動性を保持することは難しい。
【0021】
例えば、α−(ジメチル)アミノアルキルフェノン化合物やチオキサントン化合物は硬化性に優れる開始剤であるが、アクリレートモノマーに対する溶解性に乏しく、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びアルキルアミノベンゾフェノン化合物の組み合わせよりもインキの流動性に劣る。α−モルフォリノアルキルフェノン化合物は溶解性に優れるが、硬化性においてアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤に劣る。
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物では、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤及びアルキルアミノベンゾフェノン化合物の2種、より好ましくは2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイドと、4,4’−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの2種を併用する事で優れた硬化性、優れた流動性を保持する事ができる。
【0022】
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量としては、インキ組成物全量の4〜12質量%の範囲が好ましい。4質量%以上であれば硬化性を得ることができ、また、12質量%以上であればアクリレートモノマーに対して飽和溶解し、流動性を損ねてしまう。
また、前記アルキルアミノベンゾフェノン化合物の含有量としては、インキ組成物全量の2〜8質量%の範囲が好ましい。2質量%以上であれば硬化性を得ることができ、また、8質量%以上であればアクリレートモノマーに対して飽和溶解し、流動性を損ねてしまう。
また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とアルキルアミノベンゾフェノン化合物の併用に伴う優れた硬化性、優れた流動性を兼備する観点から両者の添加量はこの範囲が好ましい。
【0023】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物で使用する(メタ)アクリレートモノマー(B)について説明する。 尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方または両方をいい、「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリル化合物及びメタクリル化合物」の一方または両方をいう。
(メタ)アクリレートモノマー(B)としては、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、重合性オリゴマー等が挙げられる。
【0024】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
重合性オリゴマーとしては、アミン変性ポリエーテルアクリレート、アミン変性エポキシアクリレート、アミン変性脂肪族アクリレート、アミン変性ポリエステルアクリレート、アミノ(メタ)アクリレートなどのアミン変性アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
中でも、2官能以上の(メタ)アクリレートにあたるグリセリン1モルに3モル以上のプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレートであるグリセリンプロピレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレートであるトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに2モル以上のプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレートであるネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレートが流動性と良好な硬化性を保ちつつ「紙剥け」を抑制できる点でより好ましい。前記トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレートとしては、代表的なものとしてトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド(PO)変性(n≒3)トリアクリレートが挙げられる。
特に、グリセリンプロピレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレートが紙剥けにおいて最も好ましい。
前記したグリセリンプロピレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる何れか1つ以上である(メタ)アクリレートモノマー(B1)の総量が、組成物全量の10〜60質量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜40質量%であり、10〜25質量%の範囲であれば更に好ましい。
【0028】
ジアリルフタレート樹脂としては、オルソ、イソ、テレの3種の異性体が存在するが、 本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物で用いるバインダー(C)としてジアリルイソフタレート樹脂である事を必須とする。
前記ジアリルイソフタレート樹脂(B)としては、例えば、主剤としてのフタル酸等の多塩基酸、硬化剤としてのアリルアルコール等、架橋剤等を含む組成物等が挙げられる。前記架橋剤としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
ジアリルイソフタレート樹脂は、優れた紙剥け性、耐乳化適性、ロングランでの印刷適性を付与するために特に有用である。
ジアリルイソフタレート樹脂としては、具体的には、ダイソーイソダップ(ダイソー社製)が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物において、ジアリルイソフタレート樹脂の含有量は本発明の課題である「紙剥け防止」の観点から、インキ組成物全量の5〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
ジアリルイソフタレート樹脂の含有量が5質量%未満では、十分なインキ粘度が得られず、印刷上、ドットゲインや汚れ等のトラブルが発生する傾向にある。一方、ジアリルイソフタレート樹脂の含有量が20質量%を超えると、インキの流動性を著しく損ない、十分な印刷適性を付与することができないことがある。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物では体質顔料(D)を使用する事を必須とする。体質顔料(D)として無機微粒子を用いる事ができる。無機微粒子としては、酸化チタン、グラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料;炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、石膏、クレイ(ChinaClay)、シリカ、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料; 等の無機顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。これら無機微粒子は、インキの流動性調整、ミスチング防止、紙等の印刷基材への浸透防止といった効果に加え、冬季等の低温条件下の印刷時や高速印刷時に発生する紙剥けのトラブルを抑制する効果を付加する事が出来る。
これらの中でも、「紙剥け」を抑制できる観点からタルク、炭酸マグネシウム、シリカが好ましく、組成物の流動性を保持できる点で特にタルク、炭酸マグネシウムが好ましい。
【0030】
前記タルク、炭酸マグネシウム、シリカは単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。前記タルクを使用する場合、その含有量はインキ組成物全量の1〜6質量%の範囲が好ましく、炭酸マグネシウムを使用する場合、その含有量はインキ組成物全量の1〜10質量%の範囲が好ましく、シリカを使用する場合、その含有量はインキ組成物全量の0.1〜5質量%である事が好ましい。
【0031】
また、前記活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の硬化性を向上できることから、必要に応じて、さらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。
【0032】
前記光増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。これら光増感剤の使用量は、硬化性向上の効果が良好なものとなる点から本発明の活性エネルギー線硬化型インキ組成物中の不揮発成分100質量%に対し、前記アルキルアミノベンゾフェノン化合物も合算してその合計使用量として1〜20質量%となる範囲であることが好ましい。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物は必要に応じ更に、酸化防止剤、重合禁止剤、シリコン系添加剤、ワックス、顔料、染料等を含有しても良い。
【0034】
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0035】
前記シリコン系添加剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、フッ素変性ジメチルポリシロキサン共重合体、アミノ変性ジメチルポリシロキサン共重合体等のアルキル基やフェニル基を有するポリオルガノシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらのシリコン系添加剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物では、硬化性を向上させる目的でワックスを添加することができる。前記ワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバワックス、みつろう、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アマイドワックスなどのワックス、ヤシ油脂肪酸や大豆油脂肪酸などの原子炭素数8〜18程度の範囲にある脂肪酸等を挙げることができる。
【0037】
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
【0038】
前記無機顔料としては、例えば、酸化鉄や、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等がある。
例えば、ラーベン14、ラーベン450、ラーベン860Ultra、ラーベン1035、ラーベン1040、ラーベン1060Ultra、ラーベン1080Ultra、ラーベン1180、ラーベン1255(以上、ビルラ社製)、リーガル250R、リーガル400R、リーガル330R、リーガル660R、モーグルL(以上、キャボット社製)、MA7、MA8、MA11(以上、三菱化学社製)等を挙げることができ、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0039】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0040】
イエローインキに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
【0041】
また、マゼンタインキに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、269等、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0042】
また、シアンインキに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0043】
更に染料としては、例えば、モノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系染料等が挙げられる。これらの染料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物、及び該組成物を用いた活性エネルギー線硬化型オフセットインキは、基材に印刷後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。
【0045】
前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射しても良い。
【0046】
前記紫外線の発生源としては、実用性、及び経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、複写用高圧水銀灯、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、無電極ランプ、カーボンアーク、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、紫外線発光ダイオード(UV−LED)等が挙げられる。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物で使用する印刷基材としては特に限定は無いが、とりわけ用紙、カルトンを基材とする場合、冬季等の低温条件下の印刷時や高速印刷時に発生する紙剥けのトラブルを抑制する効果を充分に発揮する事が出来る。例えばカタログ、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等の印刷に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等に対し、効力を発揮できる。
ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材に対し使用しても特に問題はない。
また、金属基材、ガラス基材、紙基材、木材基材、繊維質基材等のその他の基材に用いてもよい。
【0048】
本発明で述べる活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物の製造は、従来の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物と同様に、前記体質顔料、(メタ)アクリレートモノマー、バインダー、光重合開始剤、増感剤、その他添加剤等を配合してミキサー等で撹拌混合し、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉することで製造される。
【実施例】
【0049】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
【0050】
なお、本実施例において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミッションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
【0051】
測定装置 ; 東ソー株式会社製 HLC−8220
カラム ; 東ソー株式会社製ガードカラムH
XL−H
+東ソー株式会社製 TSKgel G5000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G4000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G3000HXL
+東ソー株式会社製 TSKgel G2000HXL
検出器 ; RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製 SC−8010
測定条件: カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 ;ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0052】
(実施例1:活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物(1)の調製)
ジアリルイソフタレート樹脂としてダイソーイソダップ(ダイソー社製)樹脂15質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東和合成株式会社製「アロニックスM−400」)23質量部、グリセリンプロピレンオキサイド付加体トリアクリレートとしてOTA480(ダイセル・オルネクス株式会社製)30質量部、タルクとしてハイフィラー#5000PJ(松村産業株式会社製)4質量部、ワックスとしてS−381−N1(SHAMROCK TECHNOLOGIE社製)1質量部、光重合開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤 Omnirad TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、IGM社製)8質量部、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(大同化成工業株式会社製「EAB−SS」)5質量部を60℃で3時間混合した後、カーボンブラックであるREGAL250(キャボット社製)を14質量部加え、ミキサー(単軸ディゾルバー)を用いて撹拌した後、配合物を3本ロールミルを用いて練肉し、活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物(1)を得た。
【0053】
(実施例2〜32:活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物(2)〜(32)の調製)
各種バインダー、(メタ)アクリレートモノマー、体質顔料、ワックス、カーボンブラック及び光重合開始剤を、表1〜4に示した組成及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物(2)〜(32)を得た。
【0054】
(比較例1〜31:活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物(H1)〜(H31)の調製)
各種バインダー、(メタ)アクリレートモノマー、体質顔料、ワックス、カーボンブラック及び光重合開始剤を、表5〜8に示した組成及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物(H1)〜(H31)を得た。
【0055】
上記の実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を用いて、下記の評価を行った。
【0056】
得られた活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を用いて、印刷機にて紙剥けの評価を行った。
【0057】
[評価項目1:紙剥け]
紫外線照射装置としてアイグラフィックス社製水冷メタルハライドランプ(出力160W/cm、3灯使用)を搭載した小森コーポレーション社製リスロンG40を用いて、インキ壷と壷ローラーの間のクリアランスを2−3μmに調整した後、絵柄ベタ部のベタ濃度を墨濃度1.7(X−Rite社製SpectroEye濃度計で計測)で均一に濃度合わせした上で、毎時15000枚の印刷速度にてオフセット印刷を実施した。印刷用紙には王子製紙社製OKトップコートプラス(57.5kg、A判)を使用した。版面に供給される湿し水は、水道水98質量%とエッチ液(FST−700、DIC社製)2質量%を混合した水溶液を用いた。その際、印刷物の紙剥けの発生する程度を次の5段階にて目視評価した。
(評価基準)
5:印刷物に紙剥けが全く見られない。
4:印刷物に紙剥けが僅かに見られる。
3:印刷物に紙剥けが多少見られるが、品質に影響がない程度である。
2:印刷物に紙剥けが見られる。
1:印刷物の紙剥けが顕著である。
【0058】
[評価項目2:インキ流動性]
インキ流動性はスプレッドメーター法(平行板粘度計)によりJIS K5101、5701に則った方法で測定を実施し、水平に置いた2枚の平行板の間に挟まれたインキが、荷重板の自重(115グラム)によって、同心円状に広がる特性を経時的に観察し、60秒後のインキの広がり直径をダイアメーター値(DM[mm])として測定した。本評価項目においてDMが25mm未満となる組成では、印刷機上で壺上がり、インキローラ間の転移不良といった印刷適性面での不良が発現し易くなる。
DMが35mm以上であれば良好とする。
(評価基準)
5:40mm以上
4:35〜40mm未満
3:30〜35mm未満
2:25〜30mm未満
1:25mm未満
【0059】
[評価項目3:硬化性]
硬化性は、評価項目1の手順にて作製した印刷物ベタ部表面を、紫外線照射直後に爪スクラッチ法にて傷付きの程度を確認し次の5段階にて目視評価した。爪で擦ってインキ硬化皮膜に傷が発生する組成では、印刷物の断裁や製函、輸送といった各工程において、印刷物が損傷し易くなる。
評価3以上であれば使用可能な水準とみなす。
(評価基準)
5:爪スクラッチで傷がまったく発生せず、硬化性は最良である。
4:爪スクラッチで微小な傷が僅かに見られる。
3:爪スクラッチで傷が見られるが、使用できるレベルである。
2:爪スクラッチで傷が発生し、硬化性が十分であるとは言えない。
1:爪スクラッチで簡単に傷が発生し、硬化性が最も悪い。
【0060】
以下に、活性エネルギー線硬化型オフセット墨インキの各評価結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
表1〜8の数値は質量%である。各表に示す諸原料及び略を以下に示す。
・ダイソーイソダップ:ジアリルイソフタレート樹脂、平均重量分子量5万:(株)大阪ソーダ社製
・ダイソーダップA:ジアリルオルソフタレート樹脂、平均重量分子量5.5万:(株)大阪ソーダ社製
・CN736:塩素化ポリエステルアクリレート(Sartomer社製)
・アロニックスM−400:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、東亜合成(株)社製
・Miramer M410:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、MIWON社製
・ネオマー TA−505:トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加体トリアクリレート、三洋化成工業社製
・Miramer M216:ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド付加体ジアクリレート、MIWON社製
・アロニックスM−350:トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加体トリアクリレート、東亜合成(株)社製
・OTA480:グリセリンプロピレンオキサイド付加体トリアクリレート、ダイセル・オルネクス(株)社製
・アロニックスM−309:トリメチロールプロパントリアクリレート、東亜合成(株)社製
・REGAL 250R:カーボンブラック(キャーボット社製)
・ハイフィラー#5000PJ:含水ケイ酸マグネシウムによるタルク、松村産業(株)社製
・炭酸マグネシウムTT:塩基性炭酸マグネシウム、ナイカイ塩業(株)社製
・AEROSIL200:シリカ、日本アエロジール(株)社製
・白艶華TDD:炭酸カルシウム、白石工業(株)社製
・S−381−N1:オレフィン系微粉末ワックス、SHAMROCK TECNOLOGIE社製
・Omnirad TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、数平均分子量418.5、IGM社製
・EAB−SS:4,4’−ビス−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、大同化成(株)社製
・Omnirad 369:α−アミノアルキルフェノン系開始剤、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、IGM社製
・Omnirad 379:2−ジメチルアミノ−2−(4メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、IGM社製
・Omnirad 907:α−アミノアルキルフェノン系開始剤、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、IGM社製
・KAYACURE DETX−S:2,4−ジエチルシロキサントン、日本化薬(株)社製
・Omnirad 184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、IGM社製
【0069】
実施例に記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物では、紙剥けを抑制しつつ、優れた硬化性、優れた流動性を兼備する結果となった。
結果となった。