特開2020-199508(P2020-199508A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-199508(P2020-199508A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】加工方法及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/02 20060101AFI20201120BHJP
   B23P 23/02 20060101ALI20201120BHJP
   B21D 28/36 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   B21D28/02 Z
   B23P23/02 Z
   B21D28/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-106149(P2019-106149)
(22)【出願日】2019年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】武藤 新一
(72)【発明者】
【氏名】太田 仁
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048BA06
(57)【要約】
【課題】表面側の形状がテーパ状に広がった貫通孔の形状を所望の形状に形成可能な加工方法を提供する。
【解決手段】加工方法は、ストッパ41に裏面が接するように板材40を固定し、円柱状の刃部35を有する工具23によって、板材40を裏面の反対側の表面からストッパ41に向けて打ち抜いて、裏面から表面に向けて延伸し、表面に向かってテーパ状に形成される円錐台部52を有する貫通孔を形成し、表面から貫通孔50の周囲を少なくとも円錐台部の高さに相当する深さ切削して貫通孔60を形成することを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストッパに裏面が接するように板材を固定し、
円柱状の刃部を有する工具によって、前記板材を表面から前記ストッパに向けて打ち抜いて、前記裏面から前記表面に向けて延伸し、前記表面に向かってテーパ状に形成される円錐台部を有する貫通孔を形成し、
前記表面から前記貫通孔の周囲を少なくとも前記円錐台部の高さに相当する深さ切削して貫通孔を形成する、
ことを含む加工方法。
【請求項2】
前記工具は、前記刃部を底面とする円錐台状の逆テーパ部を更に有する、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記ストッパに溝部が設けられており、前記板材を平面視したときに、前記溝部に対応する位置に前記貫通孔が形成されるように前記板材が固定されている、請求項1又は2に記載の加工方法。
【請求項4】
前記板材の厚みは、前記円錐台部の高さに基づいて予め設定される、請求項1乃至3に記載の加工方法。
【請求項5】
板材をストッパを介して保持可能な主軸と、
円柱状の刃部を有する打抜工具、及び前記板材の表面を切削する切削工具を搭載可能な刃物台と、
前記主軸及び前記刃物台を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置により、
ストッパに裏面が接するように板材を固定し、
前記打抜工具によって、前記板材を表面から前記ストッパに向けて打ち抜いて、前記裏面から前記表面に向けて延伸し、前記表面に向かってテーパ状に形成される円錐台部を有する貫通孔を形成し、
前記切削工具によって、前記表面から前記貫通孔の周囲を少なくとも前記円錐台部の高さに相当する深さ切削して貫通孔を形成するように前記主軸及び前記刃物台が制御される、工作機械。
【請求項6】
前記工具は、前記刃部を底面とする円錐台状の逆テーパ部を更に有する、請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記ストッパに溝部が設けられており、前記板材を平面視したときに、前記溝部に対応する位置に前記貫通孔が形成されるように前記板材が固定されている、請求項5又は6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記板材の厚みは、前記円錐台部の高さに基づいて予め設定される、請求項5乃至7に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工方法及び工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
打ち抜き加工、及びブローチ加工等の穴あけ加工を行う種々の技術が知られている。例えば、特許文献1には、打ち抜き加工の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭62-61370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
板材に貫通穴を形成するときに、加工条件によっては表面側の形状が逆テーパ状となり、加工精度が低下することがある。
【0005】
本発明は、表面側の形状がテーパ状に広がった貫通孔の形状をストレート形状に加工精度良く形成することが可能な加工方法と工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加工方法は、ストッパに裏面が接するように板材を固定し、円柱状の刃部を有する工具によって、板材を表面からストッパに向けて打ち抜いて、裏面から表面に向けて延伸し、表面に向かってテーパ状に形成される円錐台部を有する貫通孔を形成し、表面から貫通孔の周囲を少なくとも円錐台部の高さに相当する深さ切削して貫通孔を形成する、ことを含む。
【0007】
さらに、本発明に係る加工方法では、工具は、刃部を底面とする円錐台状の逆テーパ部を更に有することが好ましい。
【0008】
さらに、本発明に係る加工方法では、板材を固定することは、板材を平面視したときに、ストッパの裏面に対向する面に形成された溝部に対応する位置に貫通孔が形成されるように板材を固定することを含むことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る工作機械は、板材をストッパを介して保持可能な主軸と、円柱状の刃部を有する打抜工具、及び板材の表面を切削する切削工具を搭載可能な刃物台と、主軸及び刃物台を制御する制御装置と、を有し、制御装置により、ストッパに裏面が接するように板材を固定し、打抜工具によって、板材を表面からストッパに向けて打ち抜いて、裏面から表面に向けて延伸し、表面に向かってテーパ状に形成される円錐台部を有する貫通孔を形成し、切削工具によって、表面から貫通孔の周囲を少なくとも円錐台部の高さに相当する深さ切削して貫通孔を形成する、ように主軸及び刃物台が制御される。
【0010】
さらに、本発明に係る工作機械では、工具は、刃部を底面とする円錐台状の逆テーパ部を更に有することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る工作機械では、板材を固定することは、板材を平面視したときに、板材の裏面に対向するストッパに形成された溝部に対応する位置に貫通孔が形成されるように固定することを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る加工方法では、表面側の形状がテーパ状に広がった貫通孔の形状をストレート形状に加工精度良く形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る工作機械の平面図である。
図2】(a)は図2に示すブローチの斜視図であり、(b)は(a)に示す打抜部の側面図である。
図3図2に示すブローチによる穴あけ加工の概要を示す図である。
図4図2に示すブローチによる穴あけ加工の詳細を示す平面図であり、(a)は第1工程を示し、(b)は第2工程を示し、(c)は第3工程を示し、(d)は第4工程を示し、(e)は第5工程を示す。
図5図2に示すブローチによる穴あけ加工の詳細を示す部分拡大断面図であり、(a)は第1工程を示し、(b)は第2工程を示し、(c)は第3工程を示し、(d)は第4工程(その1)を示し、(e)は第4工程(その2)を示し、(f)は第4工程(その3)を示し、(g)は第4工程(その4)を示し、(h)は第4工程(その5)を示し、(i)は第5工程を示す。
図6】(a)は第4工程が実行された別の実施形態の板材の断面図であり、(b)は第5工程が実行された別の実施形態の板材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、実施形態に係る工作機械の平面図である。
【0015】
工作機械1は、ベッド13上に、主軸10と刃物台11が対向位置に搭載されている。主軸10と刃物台11の軸線方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する方向をX軸方向とする。刃物台11はベッド13上に設置されたZ軸移動機構14上に設置されたX軸移動機構15の上に設置されている。主軸10は板材40をワーク40として把持するチャック42を有している。チャック42に把持されることで保持されたワーク40を、刃物台11に搭載された工具で切削することができる。主軸10は回転可能であり、チャックしたワーク40を回転させて加工することも、回転を停止した状態で加工することも可能である。
【0016】
主軸10、刃物台11のそれぞれは、複数の駆動装置12のそれぞれから供給される動力に応じて駆動され、数値制御(Numerical Control、NC)装置16によって制御される。例えば、NC装置16は、主軸10にチャック42でワーク40を把持させ、刃物台11に保持された回転工具や打抜き工具等の複数の工具の内の一つをX軸移動機構15で移動することで選択させ、前記切削加工するように制御する。
【0017】
刃物台11には、下穴ドリル20、ミリング21、プッシャ22及びブローチ23等の切削工具等が着脱可能に搭載される。
【0018】
図2(a)はブローチ23の斜視図であり、図2(b)は図2(a)に示す打抜部の側面図である。
【0019】
ブローチ23は、円筒状の基材30と、基材30の底面に配置される結合部31と、基材の上面に配置される打抜部32とを有する。結合部31が刃物台11に固定されることでブローチ23は刃物台11に装着される。
【0020】
打抜部32は、円柱状の刃部35と、刃部35を底面とする円錐台状の逆テーパ部36とを有し、基部37を介して基材30の端面に設けられる。刃部35の高さHは例えばマイクロミリオーダであり、刃部35の径Rは形成する貫通孔の径に応じた長さである。逆テーパ部36は刃部35から離隔するに従って断面の径が小さくなるように形成された円錐台状の形状を有する。
【0021】
打抜部32は、刃物台11がZ軸方向に移動することに応じて図2(b)において矢印Aに示す方向に移動して板材を打ち抜いて貫通孔を形成する。また、打抜部32は、板材を打ち抜いた後に図2(b)において矢印Bに示す方向に移動して、形成された貫通孔から引き抜かれる。
【0022】
打抜部32は、逆テーパ部36を有することで、打ち抜き動作のときに生じる打抜抵抗、及び引き抜くときに生じる引抜抵抗の何れもが円筒状形状を有する通常のパンチよりも小さくなる。打抜部32は、引抜抵抗が通常のパンチよりも小さくなるので、通常のパンチを使用して貫通孔を形成するときに、パンチの引き抜くときに板材を押さえるために使用される治具を使用することなく穴あけ加工を実行できる。
【0023】
図3は、ブローチ23による穴あけ加工の概要を示す図である。穴あけ加工は、NC装置16が主軸10及び刃物台11を制御することにより実行される。
【0024】
刃物台11に搭載されたブローチ23は、穴あけ加工時に選択されて板材40と対向するように配置される。主軸10の先端のチャック42内にストッパ41が固定して配置される。板材40は、刃物台11の移動によって選択されるプッシャ22に押圧されることによってストッパ41の表面に裏面が接し、主軸10にチャック42で把持されて固定される。ストッパ41の表面には溝部45が形成される。板材40を平面視したときに、溝部45に対応した位置に貫通孔が形成されるように、板材40はストッパ41に固定される。溝部45は、形成される貫通孔の数に応じて設けられる。板材40は、チャックとして例えば主軸10側から供給されるエア圧により動作するダイヤフラムチャックを使用することができる。ダイヤフラムチャックは、エア圧が印加されることによってチャック解除され、エア圧を停止することによって、チャックする。
【0025】
図4はブローチ23による穴あけ加工の詳細を示す平面図であり、図5はブローチ23による穴あけ加工の詳細を示す部分拡大断面図である。
【0026】
まず、第1工程である図4(a)及び5(a)に示すように、所定の位置に配置されたストッパ41に対して、第2工程である図4(b)及び5(b)に示すように、板材40は、ストッパ41の表面に裏面が接するようにプッシャ22で押圧されてチャック42でチャックすることで固定される。
【0027】
第3工程である図4(c)及び5(c)に示すように、下穴ドリル20(細径のドリル)が選択されて板材40の所定の位置に下穴46が形成される。実施形態に係る加工方法では、この工程を省略してもよい。
【0028】
次いで、第4工程である図4(d)及び5(d)〜5(h)に示すように、ブローチ23が選択され、板材40の下穴46を形成した位置に表面からストッパ41に向けて打ち抜き加工が行われる。
【0029】
第4工程における打抜き加工の工程を詳細に説明する。まず、図5(d)に示すように、打抜部32が、板材40の下穴46が形成された領域に打抜部32が対向するように、ブローチ23が板材40に対向して配置される。
【0030】
図5(e)に示すように、打抜部32が板材40の表面に接して板材40を押下することで、板材40が溝部45に向けて湾曲する。
【0031】
次いで、図5(f)に示すように、打抜部32が板材40を切削しながら溝部45に向けて進行する。打抜部32が溝部45に向けて進行する間、溝部45に向けて湾曲していた板材40は、打抜部32の進行方向と反対の方向、すなわち溝部45から離隔する方向に徐々に戻る。
【0032】
次いで、図5(g)に示すように、打抜部32が板材40を貫通することで、円筒部51及び円錐台部52を有する貫通孔50が形成される。円錐台部52は湾曲した板材40が打抜部32の進行方向と反対の方向に戻るまでの過程に形成され、円筒部51は板材40の湾曲が戻りつつ形成される。板材を平面視したときに、板材の裏面に対向するストッパの表面に形成された溝部に対応する位置に貫通孔が形成されるように板材を固定するので、打抜部32が板材40を貫通することで発生する切粉48は、切削油47と共に溝部45に流入する。
【0033】
次いで、図5(h)に示すように、刃物台11が主軸10から離間する方向のZ軸方向に移動することで、打抜部32が板材40を貫通した後に板材40の上部に引き抜かれる。板材40には、裏面から表面に向けて延伸する円筒部51、及び円筒部51の表面側の端部から表面に向かってテーパ状に形成される円錐台部52を有する貫通孔50が形成される。
【0034】
図4(e)及び5(i)に示すように、ミリング21が選択され、板材40の貫通孔50が形成された位置で貫通孔50の周囲が加工される。貫通孔50の周囲は、板材40の表面から円錐台部52の高さに相当する深さが切削されて、貫通孔60が形成される。貫通孔60は、テーパ状の円錐台部52が除去されて、円筒部51に対応する径を有する円筒状の孔となる。
【0035】
実施形態に係る加工方法は、貫通孔を形成した後に、貫通孔の表面側に形成されるテーパ状の円錐台部の高さに相当する深さの貫通孔の周囲を切削することで、貫通孔の表面側に形成された円錐台部を除去できる。実施形態に係る加工方法は、予め貫通孔の表面側に形成される円錐台部の厚みを加えて板材の厚みが定められ、貫通孔の表面側に形成された円錐台部を除去することで、所望の板厚で定められた径の貫通孔を形成することができる。
【0036】
また、実施形態に係る加工方法は、円柱状の刃部、刃部を底面とする円錐台状の逆テーパ部を有する工具によって板材を打ち抜くので、打ち抜き動作のときに生じる打抜抵抗、及び引き抜くときに生じる引抜抵抗を小さくできる。
【0037】
説明された加工方法では、板材に1つの貫通孔が形成されたが、実施形態に係る加工方法では、2つ以上の貫通孔が形成されてもよい。また、説明された加工方法では、同一の径を有する貫通孔が形成されるが、実施形態に係る加工方法では、径が異なる複数の貫通孔が形成されてもよい。
【0038】
説明された加工方法では、刃物台11にZ軸移動機構14が設置され、刃物台11が主軸10側に移動して貫通孔50が形成されたが、実施形態に係る加工方法では、主軸10にZ軸移動機構14が設置されてもよい。この場合、Z軸位置が固定された刃物台11に主軸10にチャックされた板材40が刃物台11に向かってZ軸方向に移動することで打抜き加工が行われる。
【0039】
また、説明された加工方法では、円錐台部の高さに相当する深さに貫通孔の周囲を切削するときに、1つの貫通孔の周囲が切削されたが、実施形態に係る加工方法では、隣接する複数の貫通孔を同時に切削してもよい。
【0040】
図6(a)は第4工程が実行された別の実施形態の板材80の断面図であり、図6(b)は第5工程が実行された別の実施形態の板材80の断面図である。
【0041】
第4工程において、溝部91を有するストッパ90に固定された板材80に第1貫通孔81及び第2貫通孔82が形成される。第1貫通孔81が形成される部分の板材80の板厚は、第2貫通孔82が形成される部分の板材80の板厚よりも厚い。
【0042】
第5工程において、第4工程で形成された第1貫通孔81及び第2貫通孔82の周囲は、第5工程を個々の貫通孔に対応して板材80の表面から円錐台部の高さに相当する深さ切削されることによって、第1貫通孔83及び第2貫通孔84が形成される。
【符号の説明】
【0043】
1 工作機械
10 正面主軸
11 刃物台
20 下穴ドリル
21 ミリング
23 ブローチ
32 打抜部
35 刃部
36 逆テーパ部
37 基部
図1
図2
図3
図4
図5
図6