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特開2020-199523接合方法及びその方法で接合される複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-199523(P2020-199523A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】接合方法及びその方法で接合される複合材料
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/06 20060101AFI20201120BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20201120BHJP
   B23K 20/08 20060101ALI20201120BHJP
   B32B 37/16 20060101ALI20201120BHJP
   B32B 37/26 20060101ALI20201120BHJP
   F16B 11/00 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   B23K20/06
   B23K26/36
   B23K20/08 B
   B32B37/16
   B32B37/26
   F16B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-107967(P2019-107967)
(22)【出願日】2019年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】山口 紘次朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克典
(72)【発明者】
【氏名】森脇 幹文
(72)【発明者】
【氏名】中井 正規
(72)【発明者】
【氏名】市原 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨永 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】氏平 直樹
【テーマコード(参考)】
3J023
4E167
4E168
4F100
【Fターム(参考)】
3J023EA01
3J023FA01
3J023GA01
4E167AA02
4E167AA06
4E167AA22
4E167BD03
4E167BL03
4E168AC01
4E168DA23
4E168DA24
4F100AB01A
4F100AB02C
4F100AB10A
4F100AD11B
4F100AG00B
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4F100AS00A
4F100AS00C
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100CB00B
4F100DG01B
4F100DH00B
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4F100EC02
4F100EJ52
4F100EJ61
4F100GB31
4F100JB13B
4F100JG01C
4F100JK01
4F100JK04
4F100JK07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】補強部材を挟んだ状態で部材を接合する方法、及びその方法で接合される複合材料を提供する。
【解決手段】第1の部材28と第2の部材26との間に補強部材30を配置し、第1の部材を付勢し、補強部材を挟んだ状態で第1の部材を第2の部材に衝突させることで複合材料60を形成し、複合材料は0.01mmから1mmまでの厚みを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材を接合させる方法であって、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に補強部材を配置し、
前記第1の部材を付勢し、前記補強部材を挟んだ状態で前記第1の部材を前記第2の部材に衝突させることで複合材料を形成し、
前記複合材料が0.01mmから1mmまでの厚みを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の部材に電磁力を与えて、前記第1の部材を付勢することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の部材に爆発力を与えて、前記第1の部材を付勢することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の部材にレーザを照射して発生する気体の圧力が前記第1の部材を付勢することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1の部材と第2の部材を接合させる方法であって、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に補強部材と接着剤を配置し、
前記補強部材を挟んだ状態で前記第1の部材を前記第2の部材に接着させることで複合材料を形成し、
前記複合材料が0.01mmから1mmまでの厚みを有することを特徴とする方法。
【請求項6】
前記接着剤は熱硬化性接着剤であって、
前記熱硬化性接着剤に熱を与えることで、前記第1の部材を前記第2の部材に接着させることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法において形成される前記複合材料であって、
他の部品に接合されることを特徴とする複合材料。
【請求項8】
前記補強部材がカーボンファイバ又はガラスファイバを含むことを特徴とする請求項7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記第1の部材と前記第2の部材が前記補強部材を封止することを特徴とする請求項7又は8のいずれかに記載の複合材料。
【請求項10】
前記複合材料が0.01mmから0.2mmまでの厚みを有することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の複合材料。
【請求項11】
前記第1の部材が前記部品に接合されるとき、
前記第1の部材と前記部品が同じ材質から構成されることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の複合材料。
【請求項12】
前記第2の部材が前記部品に接合されるとき、
前記第2の部材と前記部品が同じ材質から構成されることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法及びその方法で接合される複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンファイバとメタルファイバを含む補強部材を挟んだ状態で2つの金属部材を圧着し、複合材料を得る加工法が特許文献1に提案されている。この加工法から得られた複合材料は高い機械的強度を有している。そのため、例えば車両の構造部品は、この複合材料からプレス成形されることで高い機械的強度を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6124749号
【0004】
一方、既に成形された部品に複合材料を接合することで、部品を補強したいという要請がある。部品が平坦な面を有する場合、溶接などの方法で複合材料を該面に接合することは容易である。しかし、部品が平坦な面を有さない、すなわち曲面だけを有する場合、複合材料を曲面に合わせて変形させる必要がある。また、重量最適化のために、接合される複合材料はできる限り軽量であることが好ましい。そのため、接合される複合材料が容易に変形可能で、また軽量であるように、接合される複合材料の厚みは1mm以下であることが好ましい。
【0005】
さらに、機械的強度以外の材料特性、例えば大きな減衰能を複合材料に与えたいという要請がある。この要請に対し、補強部材と粘弾性素材を挟んだ状態で2つの部材を接合することで、大きな減衰能を有する複合材料が得られる。しかし、この粘弾性素材は力が与えられると容易に変形してしまうため、複合材料に必要な減衰能を与えることは容易でない。そのため、複合材料は、粘弾性素材に大きな力を与えない方法で形成されることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、補強部材を挟んだ状態で部材を接合する方法、及びその方法で接合される複合材料を提供することを目的とする。この複合材料は、他の部品に容易に接合され、その部品の材料特性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1に係る、第1の部材と第2の部材を接合させる方法は、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に補強部材を配置し、
前記第1の部材を付勢し、前記補強部材を挟んだ状態で前記第1の部材を前記第2の部材に衝突させることで複合材料を形成し、
前記複合材料が0.01mmから1mmまでの厚みを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る実施形態の方法は、
前記第1の部材に電磁力を与えて、前記第1の部材を付勢することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る実施形態の方法は、
前記第1の部材に爆発力を与えて、前記第1の部材を付勢することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る実施形態の方法は、
前記第1の部材にレーザを照射して発生する気体の圧力が前記第1の部材を付勢することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る、第1の部材と第2の部材を接合させる方法は、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に補強部材と接着剤を配置し、
前記補強部材を挟んだ状態で前記第1の部材を前記第2の部材に接着させることで複合材料を形成し、
前記複合材料が0.01mmから1mmまでの厚みを有することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る実施形態の方法は、
前記接着剤が熱硬化性接着剤であって、
前記熱硬化性接着剤に熱を与えることで、前記第1の部材を前記第2の部材に接着させることを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項7に係る実施形態の複合材料は、請求項1〜6のいずれかに記載の方法において形成される複合材料であって、
他の部品に接合されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る実施形態の複合材料は、
前記補強部材がカーボンファイバ又はガラスファイバを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る実施形態の複合材料は、
前記第1の部材と前記第2の部材が前記補強部材を封止することを特徴とする。
【0016】
請求項10に係る実施形態の複合材料は、
前記複合材料が0.01mmから0.2mmまでの厚みを有することを特徴とする。
【0017】
請求項11に係る実施形態の複合材料は、
前記第1の部材が前記部品に接合されるとき、
前記第1の部材と前記部品が同じ材質から構成されることを特徴とする。
【0018】
請求項12に係る実施形態の複合材料は、
前記第2の部材が前記部品に接合されるとき、
前記第2の部材と前記部品が同じ材質から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本願の請求項1に記載の発明によれば、補強部材を挟んだ状態で部材を衝突させて接合する方法を提供できる。この方法で接合された複合材料は、他の部品に容易に接合され、機械的強度を向上させる。
【0020】
本願の請求項2に記載の発明によれば、補強部材を挟んだ状態で部材を電磁成形で接合する方法を提供できる。この方法で接合された複合材料は、他の部品に容易に接合され、機械的強度を向上させる。
【0021】
本願の請求項3に記載の発明によれば、補強部材を挟んだ状態で部材を爆発圧接で接合する方法を提供できる。この方法で接合された複合材料は、他の部品に容易に接合され、機械的強度を向上させる。
【0022】
本願の請求項4に記載の発明によれば、補強部材を挟んだ状態で、部材にレーザを照射し、レーザアブレーションを発生させることで部材を衝突させて接合する方法を提供できる。この方法で接合された複合材料は、他の部品に容易に接合され、機械的強度を向上させる。
【0023】
本願の請求項5に記載の発明によれば、補強部材を挟んだ状態で部材を接着させて接合する方法を提供できる。この方法で接合された複合材料は、他の部品に容易に接合され、減衰能を向上させる。
【0024】
本願の請求項6に記載の発明によれば、補強部材を挟んだ状態で部材を接着させて接合する方法を提供できる。この方法で接合された複合材料は、他の部品に容易に接合され、減衰能を向上させる。
【0025】
本願の請求項7に記載の発明によれば、他の部品に容易に接合される複合材料を提供できる。
【0026】
本願の請求項8に記載の発明によれば、高い機械的強度と大きな弾性率を有する補強部材を備える複合材料を提供できる。
【0027】
本願の請求項9に記載の発明によれば、補強部材の端部が他の部品との間で電食を容易に生じないように構成される、複合材料を提供できる。
【0028】
本願の請求項10に記載の発明によれば、他の部品に容易に接合される複合材料を提供できる。
【0029】
本願の請求項11に記載の発明によれば、複合材料の部材と他の部品との間で電食が容易に生じないように構成される、複合材料を提供できる。
【0030】
本願の請求項12に記載の発明によれば、複合材料の部材と他の部品との間で電食が容易に生じないように構成される、複合材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る、電磁成形で複合材料を得る場合の、電磁成形装置を示す概略図である。
図2】電磁成形で複合材料を得る場合の、電磁力が第1の部材に与えられていないときの、第1の部材、第2の部材、及び補強部材の状態を示す概略図である。
図3】電磁成形で複合材料を得る場合の、電磁力が第1の部材に与えられたときの、第1の部材、第2の部材、及び補強部材の状態を示す概略図である。
図4】1mm以下の厚みを有する複合材料を得るための、第1の部材(鉄)及び第2の部材(アルミニウム)が有する厚みと接合に必要なエネルギとの関係を示すグラフである。
図5図3の線Vから見た、複合材料の側面図である。
図6】電磁成形で複合材料を他の部品に接合する場合の、電磁力が複合材料に与えられたときの、複合材料及び他の部品の状態を示す概略図である。
図7】他の実施形態に係る、爆発圧接で複合材料を得る場合の、爆発力が第1の部材に与えられていないときの、第1の部材、第2の部材、及び補強部材の状態を示す概略図である。
図8】他の実施形態に係る、爆発圧接で複合材料を得る場合の、爆発力が第1の部材に与えられたときの、第1の部材、第2の部材、及び補強部材の状態を示す概略図である。
図9】他の実施形態に係る、レーザアブレーションを発生させることで複合材料を得る場合の、第1の部材がレーザアブレーションに付勢されていないときの、第1の部材、第2の部材、及び補強部材の状態を示す概略図である。
図10】他の実施形態に係る、レーザアブレーションを発生させることで複合材料を得る場合の、第1の部材がレーザアブレーションに付勢されたときの、第1の部材、第2の部材、及び補強部材の状態を示す概略図である。
図11】他の実施形態に係る、熱硬化性接着剤で複合材料を得る場合の、熱硬化性接着剤に熱が与えられたときの、第1の部材、第2の部材、及び補強部材の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る接合方法の実施形態を、その接合方法から得られる複合材料と共に説明する。
【0033】
[1.部材同士の衝突による接合]
[1.1:電磁成形]
図1は、本発明の実施形態に係る電磁成形装置100の概略構成を示す。電磁成形装置100は、導電性部材(第1の部材)を被接合部材(第2の部材)に接合する成形装置である。
【0034】
図1に示すように、電磁成形装置100は、概略、下部構造10と、該下部構造10の上に配置された上部構造12を有する。
【0035】
下部構造10は、図1の手前側から奥側に向かって伸びる直方体形状の導体14を備える。導体14は、パルス発生回路16に電気的に接続されている。パルス発生回路16は、一般的な充放電回路からなり、直流電源18、コンデンサ20、及びスイッチ22を含み、スイッチ22を開閉することによって、コンデンサ20に蓄えた電荷を導体14に瞬間的に流すことができるように構成されている。
【0036】
上部構造12は、図1の手前側から奥側に向かって伸びる直方体形状の剛性の高い固定部24を備える。また、上部構造12は、固定部24の下方に配置される、後述する被接合部材(第2の部材)26が落下しないように、被接合部材26の端部を支持する治具(例えばスペーサ)を有する(図示せず)。
【0037】
[1.1.1:成形方法]
図1,2を参照して、上述の構成を有する電磁成形装置100を用いた成形方法の一例を説明する。実際の成形にあたって、図の手前側から奥側に向かって伸びる板状の導電性部材(第1の部材)28は、導体14の上方に該導体14との間に隙間をあけて設置される。実施形態において、補強部材30は綱又は紐のような複数のストランドからなり、図の手前側から奥側に向かって配置され、導電性部材28の上面の略中央部に載せられる。被接合部材(第2の部材)26は、図の手前側から奥側に向かって伸びる板状の部材で、固定部24の下に配置される。実施形態では、被接合部材26の幅は導電性部材28の幅と同一又はほぼ同一である。したがって、被接合部材26は、その全面が補強部材30を挟んで導電性部材28のほぼ全面に対向している。説明のために、被接合部材26と補強部材30は、それらの間に十分な隙間をあけて示されているが、実際の成形にあたって、被接合部材26と補強部材30との距離は両者の接合に最も適した値に設定される。
【0038】
上述の状態で、導体14に接続されるパルス発生回路16は、約10kA〜約200kA、パルス幅約100μsec以下のシングルパルスからなる、一点鎖線で示されるパルス電流40を導体14に印加する。
【0039】
これにより、図1に示すように、一点鎖線で示される瞬間的な磁場42が導体14の周りに発生する。同時に、電磁誘導により、パルス電流40と逆方向(図1における奥側から手前側に向かう方向)に、二点鎖線で示される誘導電流44が、導電性部材28の内部に流れる。その結果、二点鎖線で示される上方に向かう電磁力46が、磁場42と誘導電流44に直交する方向に発生し、導電性部材28が、上方の被接合部材26に向けて飛翔するように瞬間的に付勢されて、この被接合部材26に大きな力で衝突し、導電性部材28と被接合部材26が補強部材30を挟んだ状態で接合する(図3参照)。導電性部材28が被接合部材26に衝突するときの衝撃は固定部24に吸収される。
【0040】
上述した実施形態において、例えば、導電性部材28は、約0.5mmの厚みを有する鉄のプレートで構成される。補強部材30は、多数のカーボンファイバ(単繊維)を束ねた長繊維束の多数のフィラメントからなる約0.3mmの径を有するトウを複数並列配置して構成される。被接合部材26は、約0.5mmの厚みを有するアルミニウムのプレートで構成される。
【0041】
図4のグラフに示すように、鉄のプレートからなる約0.5mmの厚みを有する導電性部材28とアルミニウムのプレートからなる約0.5mmの厚みを有する被接合部材26を接合する場合、パルス発生回路16はエネルギ領域50内で、約12〜14kJの電気的なエネルギを導体14に印加することが必要である。印加されるエネルギがエネルギ領域50よりも下方の領域、すなわち約12kJ未満である場合、導電性部材28と被接合部材26は十分に接合されない。一方、印加されるエネルギがエネルギ領域50よりも上方の領域、すなわち約14kJを超える場合、導電性部材28又は被接合部材26のいずれかが破損する可能性がある。
【0042】
パルス発生回路16が約12〜14kJのエネルギを導体14に印加することで、鉄のプレートからなる約0.5mmの厚みを有する導電性部材28とアルミニウムのプレートからなる約0.5mmの厚みを有する被接合部材26が補強部材30を挟んだ状態で接合し、約1mmの厚みを有する複合材料60が得られる。この場合、鉄のプレートからなる導電性部材28とアルミニウムのプレートからなる被接合部材26の接合界面には特徴的な波状模様62が表れる(図3参照)。
【0043】
上述した実施形態において、鉄のプレートからなる導電性部材28とアルミニウムのプレートからなる被接合部材26は約0.5mmの厚みをそれぞれ有しているが、約0.1mmの厚みをそれぞれ有してもよい。また、補強部材30のトウは約0.06mmの径を有してもよい。この場合、パルス発生回路16が約8kJのエネルギを導体14に印加することで、約0.2mmの厚みを有する複合材料60が得られる。したがって、鉄のプレートからなる導電性部材28とアルミニウムのプレートからなる被接合部材26が接合する場合、パルス発生回路16が導体14に印加するエネルギを適宜調整することで、0.01mm〜1mmの間、好ましくは0.1mm〜1mmの間で所望の厚みを有する複合材料60が得られる。
【0044】
上述した実施形態において、導電性部材28は鉄から構成されているが、鉄以外の金属材料、例えば被接合部材26と同じアルミニウムであってもよい。一方、被接合部材26はアルミニウム以外の金属材料、例えば導電性部材28と同じ鉄、または樹脂であってもよい。いずれの場合であっても、図4と同様に、導電性部材28及び被接合部材26が有する厚みと接合に必要なエネルギとの関係を基に、パルス発生回路16が導体14に印加するエネルギを定める必要がある。また、補強部材30は、カーボンファイバ以外の繊維材料、例えばガラス繊維であってもよい。さらに、上述の方法で得られた複合材料60を後述する他の部品に接合する場合、電食が容易に生じないように、導電性部材28または被接合部材26の材質は該部品と同一であることが好ましい。
【0045】
上述した実施形態において、図1図2及び図3における奥側から手前側に向かう方向の補強部材30の長さは導電性部材28及び被接合部材26の長さよりも短いことが好ましい。この場合、導電性部材28と被接合部材26が補強部材30を封止するように構成された複合材料60が得られる(図5参照)。補強部材30が外部に露出しないように構成されているため、補強部材30の端部は他の部品との間で電食を容易に生じることがない。
【0046】
[1.1.2:他の部品への接合]
上述の方法で成形された複合材料60は、他の部品に接合されることで該部品の機械的強度(耐力(破壊強度)と剛性(変形強度、ヤング率)の両方を含む。)を向上させる効果を有する。
【0047】
例えば、図6は、複合材料60を他の部品70に接合する状況を示す。この部品70は、応力が集中しやすい曲面72を有する。一方、複合材料60は1mm以下の厚みを有しているため、曲面72の形状に合わせて容易に変形し得る。したがって、複合材料60が曲面72の形状に合わせて予め変形することで、曲面72と複合材料60との間に隙間を生じることなく、複合材料60は部品70に容易に接合される。図6において、複合材料60を部品70に接合する方法は上述の電磁成形であるが、後述する爆発圧接又はレーザアブレーションを発生させることによる接合であってもよい。いずれの方法であったとしても、複合材料60と部品70の接合界面には特徴的な波状模様74が表れる。
【0048】
[1.2:爆発圧接]
図7は、他の実施形態に係る爆発圧接装置200の概略構成を示す。爆発圧接装置200は、飛翔部材(第1の部材)を被接合部材(第2の部材)に接合する成形装置である。
【0049】
図7に示すように、爆発圧接装置200は、概略、下部構造210と、該下部構造210の上に配置された上部構造212を有する。
【0050】
下部構造210は、図7の手前側から奥側に向かって伸びる直方体形状の剛性の高い固定部214を備える。この固定部214は、該固定部214の上面に配置される後述する被接合部材(第2の部材)216の端部を固定する治具(例えばバイス)を有する(図示せず)。
【0051】
上部構造212は、図7の手前側から奥側に向かって伸びる直方体形状の爆薬218を備える。この爆薬218は、該爆薬218の上面の左側に配置される電気雷管220を有する。この電気雷管220は起爆制御部222に接続され、起爆制御部222から伝わる電気信号を受信することで爆薬218を爆発させる構造を有する。また、上部構造212は、爆薬218の下面に配置される後述する飛翔部材(第1の部材)224の端部を支持する治具(例えばスペーサ)を有する(図示せず)。この飛翔部材224は、爆薬218が爆発した後、被接合部材216に向かって飛翔するように支持されている。
【0052】
上述の構成を有する爆発圧接装置200を用いて、図7の手前側から奥側に向かって伸びる板状の被接合部材(第2の部材)216は、固定部214の上面の略中央部に設置される。実施形態において、補強部材226は綱又は紐のような複数のストランドからなり、図7の手前側から奥側に向かって配置され、被接合部材216の上面の略中央部に載せられる。飛翔部材(第1の部材)224は、図7の手前側から奥側に向かって伸びる板状の部材で、爆薬218の下方に配置される。実施形態では、被接合部材216の幅は飛翔部材224の幅と同一又はほぼ同一である。したがって、被接合部材216は、その全面が補強部材226を挟んで飛翔部材224のほぼ全面に対向している。説明のために、図7において飛翔部材224と補強部材226は、それらの間に十分な隙間をあけて示されているが、実際の成形にあたって、飛翔部材224と補強部材226との距離は両者の接合に最も適した値に設定される。
【0053】
上述のように被接合部材216,飛翔部材224,及び補強部材226を配置した状態で起爆制御部222が電気信号を送信することで、電気雷管220は発火する。その結果、爆薬218は爆発し、発生した爆発力228が飛翔部材224を被接合部材216に向かって付勢する(図8参照)。飛翔部材224は被接合部材216に大きな力で衝突し、飛翔部材224と被接合部材216が補強部材226を挟んだ状態で接合し、複合材料260が得られる。飛翔部材224が被接合部材216に衝突するときの衝撃は固定部214に吸収される。
【0054】
上述の実施形態において、例えば、飛翔部材224は鉄のプレートで構成される。補強部材226は、多数のカーボンファイバ(単繊維)を束ねた長繊維束の多数のフィラメントからなるトウを複数並列配置して構成される。被接合部材216はアルミニウムのプレートで構成される。
【0055】
したがって、上述の電磁成形と同様に、被接合部材216と飛翔部材224と補強部材226が有する厚み又は径、及び爆薬218が爆発するときに生じるエネルギを適宜調整することで、0.01mm〜1mmの間、好ましくは0.1mm〜1mmの間で所望の厚みを有する複合材料260が得られる。
【0056】
また、上述の電磁成形から得られる複合材料と同様に、複合材料260は他の部品の形状に合わせて予め変形することで、隙間を生じることなく、他の部品に容易に接合され、他の部品の機械的強度を向上させる効果を有する。
【0057】
[1.3:レーザアブレーションを発生させることによる接合]
図9は、他の実施形態に係るレーザ照射装置300の概略構成を示す。レーザ照射装置300は、レーザアブレーションを発生させることで、飛翔部材(第1の部材)を被接合部材(第2の部材)に接合する成形装置である。
【0058】
図9に示すように、レーザ照射装置300は、概略、下部構造310と、該下部構造310の上に配置された上部構造312を有する。
【0059】
下部構造310は、図9の手前側から奥側に向かって伸びる直方体形状の剛性の高い固定部314を備える。この固定部314は、該固定部314の上面に配置される後述する被接合部材(第2の部材)316の端部を固定する治具(例えばバイス)を有する(図示せず)。
【0060】
上部構造312はレーザ照射機318を有する。レーザ照射機318は、レーザ発振器320と、ミラー322と、レンズ324を有する。レーザ発振器320から出力されるレーザは、YAGレーザ、COレーザ、その他のレーザのいずれであってもよい。レーザ照射機318は、レーザ発振器320から発振されるレーザをミラー322を介してレンズ324から照射するように構成されている。また、上部構造312は、レーザ照射機318の下方に配置される後述する飛翔部材(第1の部材)326の端部を支持する治具(例えばスペーサ)を有する(図示せず)。この飛翔部材326は、レーザがレーザ照射機318から飛翔部材326の上面に照射されて、レーザアブレーションが飛翔部材326の上面で発生した後、被接合部材316に向かって飛翔するように支持されている。
【0061】
上述の構成を有するレーザ照射装置300を用いて、図9の手前側から奥側に向かって伸びる板状の被接合部材(第2の部材)316は、固定部314の上面の略中央部に設置される。実施形態において、補強部材328は綱又は紐のような複数のストランドからなり、図9の手前側から奥側に向かって配置され、被接合部材316の上面の略中央部に載せられる。飛翔部材(第1の部材)326は、図9の手前側から奥側に向かって伸びる板状の部材で、レーザ照射機318の下方に配置される。実施形態では、被接合部材316の幅は飛翔部材326の幅と同一又はほぼ同一である。したがって、被接合部材316は、その全面が補強部材328を挟んで飛翔部材326のほぼ全面に対向している。説明のために、図9において飛翔部材326と補強部材328は、それらの間に十分な隙間をあけて示されているが、実際の成形にあたって、飛翔部材326と補強部材328との距離は両者の接合に最も適した値に設定される。
【0062】
上述のように被接合部材316,飛翔部材326,及び補強部材328を配置した状態で、レーザ照射機318が飛翔部材326にレーザを照射することで、一点鎖線で示される、飛翔部材326の上面が蒸発し気体となって放出される現象(レーザアブレーション)が、レーザを照射された位置330周辺で発生する(図10参照)。その結果、飛翔部材326は被接合部材316に向かって飛翔するように付勢される。飛翔部材326は被接合部材316に大きな力で衝突し、飛翔部材326と被接合部材316が補強部材328を挟んだ状態で接合し、複合材料360が得られる。飛翔部材326が被接合部材316に衝突するときの衝撃は固定部314に吸収される。
【0063】
上述の実施形態において、例えば、飛翔部材326は鉄のプレートで構成される。補強部材328は、多数のカーボンファイバ(単繊維)を束ねた長繊維束の多数のフィラメントからなるトウを複数並列配置して構成される。被接合部材316はアルミニウムのプレートで構成される。
【0064】
したがって、上述の電磁成形と同様に、被接合部材316と飛翔部材326と補強部材328が有する厚み又は径、及びレーザ照射機318から照射されるレーザが有するエネルギを適宜調整することで、0.01mm〜1mmの間、好ましくは0.1mm〜1mmの間で所望の厚みを有する複合材料360が得られる。
【0065】
また、上述の電磁成形又は爆発圧接から得られる複合材料と同様に、複合材料360は他の部品の形状に合わせて予め変形することで、隙間を生じることなく、他の部品に容易に接合され、他の部品の機械的強度を向上させる効果を有する。
【0066】
[2.接着剤による接合]
図11は、本発明の実施形態に係る接着剤加熱装置400の概略構成を示す。接着剤加熱装置400は、熱硬化性接着剤を用いて、接合部材(第1の部材)を被接合部材(第2の部材)に接合する成形装置である。
【0067】
図11に示すように、接着剤加熱装置400は、概略、下部構造410と、該下部構造410の上に配置された上部構造412を有する。
【0068】
下部構造410は、図11の手前側から奥側に向かって伸びる直方体形状の剛性の高い固定部414を備える。この固定部414は、該固定部414の上面に配置される後述する被接合部材(第2の部材)416の端部を固定する治具(例えばバイス)を有する(図示せず)。
【0069】
上部構造412は、図11の手前側から奥側に向かって伸びる直方体形状の伝熱部418を備える。伝熱部418は電源420に電気的に接続され、後述する熱硬化性接着剤が硬化できる高温を発するように構成されている。また、上部構造412は、伝熱部418の下方に配置される後述する接合部材(第1の部材)422に上方から力を与えるように構成されている。
【0070】
[2.1:接着方法]
上述の構成を有する接着剤加熱装置400を用いて、図11の手前側から奥側に向かって伸びる板状の被接合部材(第2の部材)416は、固定部414の上面の略中央部に設置される。実施形態において、補強部材424は綱又は紐のような複数のストランドからなり、図11の手前側から奥側に向かって配置され、被接合部材416の上面の略中央部に載せられる。また、熱硬化性接着剤426が補強部材424を覆うように、被接合部材416の上面全体に塗布されている。接合部材(第1の部材)422は、図11の手前側から奥側に向かって伸びる板状の部材で、熱硬化性接着剤426に上方から接する状態で、伝熱部418の下面に配置される。実施形態では、被接合部材416の幅は接合部材422の幅と同一又はほぼ同一である。したがって、被接合部材416は、その全面が補強部材424と熱硬化性接着剤426を挟んで接合部材422のほぼ全面に対向している。
【0071】
上述のように被接合部材416,接合部材422,及び補強部材424を配置した状態で、伝熱部418が接合部材422に熱を与えることで、熱が熱硬化性接着剤426に伝わる。その結果、熱硬化性接着剤426は硬化し、接合部材422と被接合部材416が補強部材424と熱硬化性接着剤426を挟んだ状態で接合し、複合材料460が得られる。
【0072】
上述した実施形態において、例えば、接合部材422は、約0.3mmの厚みを有する鉄のプレートで構成される。補強部材424は、多数のカーボンファイバ(単繊維)を束ねた長繊維束の多数のフィラメントからなる約0.2mmの径を有するトウを複数並列配置して構成される。被接合部材416は、約0.3mmの厚みを有するアルミニウムのプレートで構成される。この場合、得られる複合材料460は約0.8mmの厚みを有する。被接合部材416と接合部材422と補強部材424が有する厚み又は径を適宜調整することで、0.01mm〜1mmの間、好ましくは0.1mm〜1mmの間で所望の厚みを有する複合材料460が得られる。
【0073】
また、接合部材422は、鉄以外の金属材料、例えば被接合部材416と同じアルミニウム、または樹脂であってもよい。一方、被接合部材416はアルミニウム以外の金属材料、例えば接合部材422と同じ鉄、または樹脂であってもよい。また、補強部材424は、カーボンファイバ以外の繊維材料、例えばガラス繊維であってもよい。さらに、上述の方法で得られた複合材料460を後述する他の部品に接合する場合、電食が容易に生じないように、接合部材422または被接合部材416の材質は該部品と同一であることが好ましい。
【0074】
接合部材422と被接合部材416が補強部材424を挟んだ状態で接合するように、熱硬化性接着剤426が用いられているが、他の接着剤、例えば感圧型接着剤(粘着剤)が用いられてもよい。この場合、接着剤を加熱する必要はなく、上部構造412は、伝熱部418の代わりに加圧部を備えてもよい。
【0075】
[2.2:他の部品への接着]
上述の方法で成形された複合材料460は、補強部材424と熱硬化性接着剤426が有する弾性率によって、他の部品に接合されることで該部品の減衰能を向上させる効果を有する。
【0076】
上述の電磁成形、爆発圧接、又はレーザアブレーションを発生させることによる接合から得られる複合材料と同様に、複合材料460は他の部品の形状に合わせて予め変形することで、隙間を生じることなく、他の部品に容易に接合され、他の部品の減衰能を向上させる効果を有する。この場合、複合材料460と他の部品を接合する方法は熱硬化性接着剤を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0077】
28,224,326,422:第1の部材(導電性部材、飛翔部材、接合部材)
26,216,316,416:第2の部材(被接合部材)
30,226,328,424:補強部材
60,260,360,460:複合材料
426:接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11