特開2020-199697(P2020-199697A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シンフォニアテクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2020199697-印刷方法及び印刷システム 図000003
  • 特開2020199697-印刷方法及び印刷システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-199697(P2020-199697A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】印刷方法及び印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 3/60 20060101AFI20201120BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   B41J3/60
   B41J3/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-108435(P2019-108435)
(22)【出願日】2019年6月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川内野 直
(72)【発明者】
【氏名】福谷 惇史
【テーマコード(参考)】
2C062
【Fターム(参考)】
2C062RA01
2C062RA06
(57)【要約】
【課題】両面印刷を利用して、鑑賞者が立体感を感じる印刷物を作成することのできる印刷方法を提供する。
【解決手段】光透過性のあるシート状体である印刷媒体2を用い、前記印刷媒体の表側に第1画像G1を印刷する工程と、前記印刷媒体2の裏側に、表裏方向から見た場合で前記第1画像G1に関連する画像である第2画像G2を印刷する工程と、を有する印刷方法である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性のあるシート状体である印刷媒体を用い、
前記印刷媒体の表側に第1画像を印刷する工程と、
前記印刷媒体の裏側に、表裏方向から見た場合で前記第1画像に関連する画像である第2画像を印刷する工程と、
を有する印刷方法。
【請求項2】
プリンタにより印刷媒体に対して印刷を行う印刷システムであって、
前記印刷媒体として、光透過性のあるシート状体が用いられ、
前記プリンタが制御部を備え、
前記制御部は、前記印刷媒体の表側に第1画像を印刷する工程と、
前記印刷媒体の裏側に、表裏方向から見た場合で前記第1画像に関連する画像である第2画像を印刷する工程と、
を行う印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に対して両面印刷を行う印刷方法及び印刷システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
両面印刷を行うことのできるプリンタは一般的である(例えば特許文献1に記載)。
【0003】
しかし、このプリンタにおいて用いられる印刷媒体は不透明であって、印刷媒体の表側に印刷される画像と裏側に印刷される画像との間で特に関連性はなかった。
【0004】
一方、ゲームセンター等に設置されていて、キャラクター等が表示されたカードがもらえるゲーム機、写真を印刷したシールを作成できるプリント機において、または、家庭等で写真等の画像を印刷するプリンタにおいて、鑑賞者が立体感を感じる印刷物へのニーズが存在する。
【0005】
そこで本願の発明者は、両面印刷を利用して、鑑賞者が立体感を感じる印刷物を作成することについて研究を行い、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−93255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、両面印刷を利用して、鑑賞者が立体感を感じる印刷物を作成することのできる印刷方法及び印刷システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光透過性のあるシート状体である印刷媒体を用い、前記印刷媒体の表側に第1画像を印刷する工程と、前記印刷媒体の裏側に、表裏方向から見た場合で前記第1画像に関連する画像である第2画像を印刷する工程と、を有する印刷方法である。
【0009】
また本発明は、プリンタにより印刷媒体に対して印刷を行う印刷システムであって、前記印刷媒体として、光透過性のあるシート状体が用いられ、前記プリンタが制御部を備え、前記制御部は、前記印刷媒体の表側に第1画像を印刷する工程と、前記印刷媒体の裏側に、表裏方向から見た場合で前記第1画像に関連する画像である第2画像を印刷する工程と、を行う印刷システムである。
【0010】
これらの構成によれば、第1画像と第1画像に関連する画像である第2画像とを、印刷媒体の厚み分、表裏方向にずらして印刷できる。このため、第1画像と第2画像とが組み合わされた画像に、両画像が表裏方向で物理的にずれていることにより、鑑賞者が表裏方向に見た場合において立体感を出すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、両面印刷を利用して、鑑賞者が立体感を感じる印刷物を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る熱転写プリンタの構成を示す概略図である。
図2】本発明に係る印刷方法を示す概略的な平面図であって、(a)は各色インクの層及びオーバーコート層と画像との関係を模式的に分解して示した図であり、(b)は(a)に示す印刷がなされた印刷物を表側から見た場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の印刷方法及び印刷システムにつき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。本実施形態において用いられる熱転写プリンタ(以下単に「プリンタ」と記載)の構成を図1に概略的に示す。
【0014】
熱転写プリンタの構成は公知であるため、以下に簡単に説明する。本実施形態のプリンタ1は昇華型プリンタであって(一例であってこれに限定されない)、図1に示すように、筐体11内において、主に、シート供給部12、シート搬送部13、インクリボン搬送部14、サーマルヘッド15、プラテンローラ16、シートカッタ17、電源・制御部18を備える。
【0015】
図1には示していないが、本実施形態では両面印刷を行うため、印刷媒体としてのシート(カード)2の表側にも裏側にも印刷を行うことのできる構成を備えている。例えば、表側の印刷後で裏側の印刷前にシート2を表裏反転させる機構を備えることができる。また、インクリボン搬送部14、サーマルヘッド15、プラテンローラ16を少なくとも二組設け、一つの組で表側の印刷を行い、他の組で裏側の印刷を行うよう構成することもでき、両面印刷を行うための種々の構成または方法を採用できる。
【0016】
シート供給部12は、個々にカットされた枚葉状のシート(カード)2を厚み方向に積層して保持する部分である。なお、図示はしていないが、枚葉状のシートではなくロール状に巻かれた状態の長尺のシート2を用いることもできる。シート2は、樹脂等からなるシート状の基材における一方側及び他方側の両面に、基材とは別の樹脂層が積層されて構成されている。樹脂層のうち厚み方向で外側の一部が、染料であるインクが浸み込んで定着される受像層である。サーマルヘッド15により加熱されたインクリボン3から、インクがシート2に転写される。このインクは受像層に外側から内側に向けて浸み込むことで、シート2に定着される。なお、シート2を基材のみで形成し、層の境目が無い構成とすることもできる。この場合、例えば、インクリボン3の側に受像層に相当する領域を設けておくことにより、印刷が可能である。本実施形態のシート2は、全体として(基材及び樹脂層の組み合わせで)光透過性のあるシート状体であって、例えば表裏方向に見た場合に透明と視認される程度の光透過性とされている。なお、前記「光透過性」とは、本実施形態では、表裏の一方側における受像層に印刷された画像が、表裏の他方側から見た場合に、画像として視認可能な程度に光(可視光)が透過する程度の性質を指す。
【0017】
シート搬送部13は、シート供給部12から供給されたシート2を、印刷実施位置を経て筐体11外に排出させるために順次搬送する部分であって、図示のように複数のローラから構成されている(図上では1組のローラにのみ付番している)。インクリボン搬送部14は、印刷実施位置においてシート2に対向するようにインクリボン3を供給、搬送、回収する部分である。
【0018】
インクリボン3は、従来と同じように、イエロー、マゼンタ、シアンの、転写物質としてのインクが転写されている各色インク領域と、転写物質としてのオーバーコート剤が塗布されているオーバーコート領域とが長手方向に規則的に並べられたものである。なお、前記各領域の組み合わせはこれに限定されるものではなく、他の色(例えば金色や銀色)のインク領域等を更に設けることもできる。図1に示すようにインクリボン3はロール状に巻かれた状態とされている。
【0019】
サーマルヘッド15は、ヒータを内蔵しており、ヒータの加熱によりインクリボン3のインクを昇華させてシート2の表面に付着させる部分である。
【0020】
プラテンローラ16は、印刷実施位置においてシート2をサーマルヘッド15に対して一定の距離に保つためのローラである。シートカッタ17は、シート2を搬送方向に直交する方向に切断するための刃物である。なお、シートカッタ17は長尺のシート2を搬送方向で切断する際に主に用いられ、枚葉状のシート2をシート供給部12に保持されたサイズのまま取り出す場合には用いなくてもよい。電源・制御部18は、プリンタ1における各部に駆動のための電力を供給すると共に、各部の動作を司る部分である。
【0021】
電源・制御部18は、シート供給部12、シート搬送部13、インクリボン搬送部14、サーマルヘッド15、プラテンローラ16を制御することにより、シート2の表側に第1画像G1を印刷する工程と、シート2の裏側に第2画像G2を印刷する工程と、を行う。第2画像G2は、表裏方向から見た場合で第1画像G1に関連する画像である。第2画像G2は、基本的には、表裏方向において第1画像G1に重複しない(つまり、第1画像G1によって隠されない)領域に印刷される。第2画像G2が第1画像G1に完全に隠れてしまうと、鑑賞者から第2画像G2が視認できないからである。ただし、第2画像G2の一部分が第1画像G1に重複すること(例えば線画同士の交差による重複)は許容される。また、第1画像G1を常時、またはシート2の裏側から光を当てた際に透けて見える画像とすることができる。この場合、第1画像G1と第2画像G2とを表裏方向において重複して印刷することができる。第1画像G1と第2画像G2とが重なり合って見えることで、個々の画像を別に見た場合とは異なる、新たな視覚効果を生じさせることができる。特に、シート2の裏側から光を当てた際にのみこの視覚効果を生じさせることにより、鑑賞者に独自の美観を与えることができる。
【0022】
図2(a)に示すように、イエロー(「Y」で示す)、マゼンタ(「M」で示す)、シアン(「C」で示す)の各色が重なり合うようにして(図示内容は本実施形態の理解を容易にするためのものであって、実際には、各色のインクが受像層内に一緒に浸み込む)、シート2の表側と裏側とに印刷される。前記各工程を経ることにより、例えば図2(b)に示すように、第1画像G1として顔のイラストが表側に印刷され、第2画像G2として太陽のイラストが裏側に印刷された印刷物Pが得られる。なお、第2画像G2はシート2の表側から見た場合に正しい画像が視認できるようにするため、シート2において左右対称でない画像である場合、裏側への印刷は逆像で行われる。また、通常は、シート2における表裏の最外層にオーバーコート層OP1が形成される。なお、シート2における裏側の最外層については、図2(a)に示すように、光の透過を遮断する層(例えば濃色のオーバーコート層OP2)を形成することもできる。この裏側の最外層については、前記と逆に、例えばシート2の裏側から光を当てた場合に、その光が表裏方向に透過できるような、半透明の層とすることもできる。
【0023】
ここで、前記「関連する画像」とは、第1画像G1と第2画像G2とが組み合わされることで一まとまりの画像になるような関係である。例えば、一つの画像を二つに分解することで第1画像G1、第2画像G2にした場合、一つの画像を第1画像G1として、その影を第2画像G2とした場合、また、第1画像G1がキャラクター等の人物像や近景を表す画像であり、第2画像G2が背景や景色等の遠景を表す画像である場合、第1画像G1、第2画像G2の一方の内容が他方の内容を連想させる場合、第2画像G2が第1画像G1を修飾するように作用する場合が挙げられるが、これらの例に限定されず、両画像G1,G2に対していかなる見方をしても関係性が見いだせない場合を除き、第1画像G1と第2画像G2との間で種々の関係性を持たせることができる。
【0024】
第1画像G1及び第2画像G2は、例えば図2(a)(b)に示した顔のイラストや太陽のイラストのように単一の(一まとまりの)画像から構成されていてもよいし、地模様のように、単一の画像が複数集合して構成されていてもよい。
【0025】
このようにシート2の表側と裏側とに印刷を行うことにより、第1画像G1と第2画像G2の表裏方向における物理的距離を、シート2の厚み分(詳しくは、表側の受像層と裏側の受像層との距離分)だけ持たせることができる。つまり、第1画像G1が第2画像G2よりも物理的に表側(鑑賞者に近い側)に位置する。このため、印刷後のシート2を鑑賞者が表側から見た場合、第1画像G1(図2(b)の例では顔のイラスト)が第2画像G2(図2(b)の例では太陽のイラスト)よりも手前に、浮き上がって見えることになる。このため、鑑賞者が表裏方向(特に表側から裏側に向かう方向)に見た場合において、鑑賞者に立体感を感じさせることができる。
【0026】
従来、印刷物におけるキャラクター等の画像の周囲部分のオーバーコート層をマット処理する方法や、印刷物に対してローラ等を押し当てることで、印刷物の表面に物理的に凹凸を形成する方法があったが、これらの方法に比べ、本実施形態では鑑賞者に強い立体感を感じさせることができる。
【0027】
しかも本実施形態による立体的な印刷物Pは、両面印刷できるプリンタにより第1画像G1及び第2画像G2の両方の印刷を行うことで作成できるので、印刷を行うための装置に特別な機構を備えさせる必要がなく、一般的な両面印刷の技術を用いて作成できる。よって、コスト面でも有利である。また、印刷画像が印刷のたびに異なるオンデマンド印刷にも適しているので、例えばゲームセンター等に設置されるゲーム機や写真シールのプリント機のユーザーに満足感を与えることができる。
【0028】
以上、本実施形態によれば、一般的な両面印刷の技術により、鑑賞者が立体感を感じる印刷物Pを容易に、かつ低コストで作成できる。
【0029】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0030】
例えば、前記実施形態のプリンタは熱転写プリンタ(昇華型プリンタ)であったが、光透過性のあるシート状体である印刷媒体に対して印刷可能なものであれば、プリンタの方式(印刷原理)は問わない。
【0031】
また、第1画像G1を印刷する工程と第2画像G2を印刷する工程とは、時間的に前後関係があってもよい(第1画像G1の印刷工程が先で第2画像G2の印刷工程が後であってもよいし、逆であってもよい)し、同時であってもよい。
【0032】
また、第1画像G1、第2画像G2の一方に対して他方の印刷位置を合わせるため、透明等の光透過性のあるシート2の一部に、不透明な部分等の光透過性に差のある部分を設けておき、その部分を印刷の位置合わせのための指標(見当マーク)として利用することもできる。なお、この指標は印刷完了後に、シート2のうち指標が含まれる部分を切断する等して、シート2から排除することもできる。
【符号の説明】
【0033】
1 熱転写プリンタ
11 筐体
12 シート供給部
13 シート搬送部
14 リボン搬送部
15 サーマルヘッド
16 プラテンローラ
17 シートカッタ
18 制御部、電源・制御部
2 印刷媒体、シート(カード)
3 インクリボン
G1 第1画像
G2 第2画像
P 印刷物
図1
図2