【解決手段】機械学習装置は、任意の射出成形機による任意の成形品の成形における少なくとも樹脂の種類、添加剤の種類、前記添加剤の配合率、及び前記樹脂の温度を含む任意の成形条件と、当該成形条件による成形前の金型の摩耗量を示す状態情報と、を含む入力データを取得する入力データ取得部と、前記入力データに含まれる前記成形条件による成形後の前記金型の状態情報、を示すラベルデータを取得するラベル取得部と、前記入力データ取得部により取得された入力データと、前記ラベル取得部により取得されたラベルデータと、を用いて、教師あり学習を実行し、学習済みモデルを生成する学習部と、を備える。
任意の射出成形機による任意の成形品の成形における少なくとも樹脂の種類、添加剤の種類、前記添加剤の配合率、及び前記樹脂の温度を含む任意の成形条件と、当該成形条件による成形前の金型の摩耗量を示す状態情報と、を含む入力データを取得する入力データ取得部と、
前記入力データに含まれる前記成形条件による成形後の前記金型の状態情報、を示すラベルデータを取得するラベル取得部と、
前記入力データ取得部により取得された入力データと、前記ラベル取得部により取得されたラベルデータと、を用いて、教師あり学習を実行し、学習済みモデルを生成する学習部と、
を備える機械学習装置。
前記予測部により予測された前記金型の状態情報に含まれる予測値と、予め設定された閾値との比較に基づいて、前記金型を交換する時期を判定する決定部を備える、請求項3に記載の予測装置。
前記決定部は、前記これから行う成形条件、及び前記現在の金型の状態情報に基づいて、複数の成形品を成形する場合、前記複数の成形品を成形した後の前記予測値が前記閾値より小さくなるように、成形品の数を調整する、請求項4に記載の予測装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図面を用いて説明する。
<一実施形態>
図1は、一実施形態に係る射出成形システムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、射出成形システムは、射出成形機10、予測装置20、及び機械学習装置30を有する。
【0012】
射出成形機10、予測装置20、及び機械学習装置30は、図示しない接続インタフェースを介して互いに直接接続されてもよい。また、射出成形機10、予測装置20、及び機械学習装置30は、LAN(Local Area Network)やインターネット等の図示しないネットワークを介して相互に接続されていてもよい。この場合、射出成形機10、予測装置20、及び機械学習装置30は、かかる接続によって相互に通信を行うための図示しない通信部を備えている。なお、後述するように、射出成形機10は、予測装置20及び機械学習装置30を含むようにしてもよい。
【0013】
射出成形機10は、当業者にとって公知の射出成形機であり、制御装置15を組み込んで有する。射出成形機10は、制御装置15の動作指令に基づいて動作する。なお、制御装置15は、射出成形機10とは独立した装置でもよい。
【0014】
制御装置15は、当業者にとって公知の数値制御装置であり、制御情報に基づいて動作指令を生成し、生成した動作指令を射出成形機10に送信する。これにより、制御装置15は、射出成形機10の動作を制御する。また、制御装置15は、図示しない射出成形機10の通信部を介して当該制御情報を予測装置20にも出力してもよい。なお、制御情報は、制御装置15に設定される加工プログラム及びパラメータの値を含む。
【0015】
予測装置20は、運用フェーズにおいて、射出成形機10による射出成形に先立って、制御装置15からの制御情報に含まれる、これから行う成形条件を取得してもよい。また、予測装置20は、射出成形機10に設置された現在の金型の状態情報を、制御装置15から取得してもよい。予測装置20は、取得したこれから行う成形条件と現在の金型の状態情報とを、後述する機械学習装置30から提供された学習済みモデルに入力することにより、成形後の金型の状態情報を予測することができる。
【0016】
なお、金型の摩耗は、樹脂に添加される添加剤によって発生する腐食性ガス、及びガラス繊維等の添加剤が配合された溶融樹脂との摩擦による影響が主な原因である。そこで、腐食性ガス、及び溶融樹脂との摩擦の影響を考慮するために、成形条件には、樹脂(材料)の種類(エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエステルやポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂)、添加剤の種類(ガラス繊維、安定剤、着色剤等)、添加剤の配合率、及び樹脂温度が含まれる。また、成形条件には、金型表面の温度、保圧と保圧時間との積、射出速度、射出圧力、射出量、及びこれまでのショット回数も含まれてもよい。
また、状態情報には、後述するように、金型の摩耗量が含まれる。
予測装置20を説明する前に、「金型の摩耗量」、及び学習済みモデルを生成するための機械学習について説明する。
【0017】
<金型の摩耗量について>
「金型の摩耗量」は、前述したように、樹脂に添加される添加剤によって発生する腐食性ガス、及びガラス繊維等の添加剤が配合された溶融樹脂との摩擦により、射出成形機10に設置された金型において摩耗した量を示す。「金型の摩耗量」は、成形品の寸法をチェックした際に、寸法精度が悪くなった部分であり、当該金型が新しく交換された射出成形スタート時の成形品(1個目等)の寸法と、それ以降に射出成形された成形品の寸法との差分により算出される。すなわち、射出成形スタート時における成形品の寸法は互いに同一であり、「金型の摩耗量」は、「0%」となる。そして、「金型の摩耗量」は、射出成形が繰り返されるに従い大きな値となり、成形品の寸法の許容限界値(摩耗量の許容限界値)では「100%」となる。
なお、「金型の摩耗量」は、「0%」から「100%」の範囲のパーセント値としたが、例えば、「金型の摩耗量」は、「0」から「1」の範囲の値等でもよい。
【0018】
<機械学習装置30>
機械学習装置30は、例えば、予め、任意の射出成形機による射出成形における任意の成形条件と、当該成形条件による成形前の金型の摩擦量を含む状態情報とを、入力データとして取得する。
また、機械学習装置30は、取得した入力データにおける成形条件による成形後の金型の摩擦量を示すデータをラベル(正解)として取得する。
機械学習装置30は、取得した入力データとラベルとの組の訓練データにより教師あり学習を行い、後述する学習済みモデルを構築する。
そうすることで、機械学習装置30は、構築した学習済みモデルを予測装置20に提供することができる。
機械学習装置30について、具体的に説明する。
【0019】
機械学習装置30は、
図1に示すように、入力データ取得部301、ラベル取得部302、学習部303、及び記憶部304を有する。
入力データ取得部301は、学習フェーズにおいて、図示しない通信部を介して、任意の成形条件と、当該成形条件による成形前の金型の摩擦量を含む状態情報と、を入力データとして制御装置15等から取得する。入力データ取得部301は、取得した入力データを記憶部304に対して出力する。
【0020】
ラベル取得部302は、入力データにおける成形条件による成形後の金型の摩擦量を示すデータをラベルデータ(正解データ)として取得し、取得したラベルデータを記憶部304に対して出力する。
【0021】
学習部303は、上述の入力データとラベルとの組を訓練データとして受け付け、受け付けた訓練データを用いて、教師あり学習を行うことにより、これから行う成形条件と、現在の金型の摩擦量の状態情報とに基づいて、成形後の金型の摩擦量を予測する学習済みモデル250を構築する。
そして、学習部303は、構築した学習済みモデル250を予測装置20に対して提供する。
なお、教師あり学習を行うための訓練データは、多数用意されることが望ましい。例えば、顧客の工場等で実際に稼働している様々な場所の射出成形機10の制御装置15のそれぞれから訓練データが取得されてもよい。
【0022】
図2は、
図1の予測装置20に提供される学習済みモデル250の一例を示す図である。ここでは、学習済みモデル250は、
図2に示すように、樹脂の種類や添加剤の種類等のこれから行う成形条件と、現在の金型の摩擦量の状態情報を入力層として、当該成形条件による成形後の金型の「摩擦量」を示すデータを出力層とする多層ニューラルネットワークを例示する。
ここで、これから行う成形条件には、樹脂(材料)の種類(エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエステル等の熱可塑性樹脂)、添加剤の種類(ガラス繊維、安定剤、着色剤等)、金型表面の温度、保圧と保圧時間との積、樹脂温度、射出速度、射出圧力、射出量、及びこれまでのショット回数が含まれる。
なお、これから行う成形条件には、金型の情報(スプルー、ランナー、ゲート、キャビティ等の各部分の経路の大きさ(断面積サイズ)、容積、表面積等)や、成形品の情報(形状、寸法、肉厚等)等を含めてもよい。金型の情報及び成形品の情報は、例えば、制御装置15に入力されたCAD(Computer−Aided Design)図面等により取得されてもよい。
【0023】
また、学習部303は、学習済みモデル250を構築した後に、新たな訓練データを取得した場合には、学習済みモデル250に対してさらに教師あり学習を行うことにより、一度構築した学習済みモデル250を更新するようにしてもよい。
【0024】
上述した教師あり学習は、オンライン学習で行ってもよく、バッチ学習で行ってもよく、ミニバッチ学習で行ってもよい。
オンライン学習とは、射出成形機10による射出成形が行われ、訓練データが作成される都度、即座に教師あり学習を行うという学習方法である。また、バッチ学習とは、射出成形機10による射出成形が行われ、訓練データが作成されることが繰り返される間に、繰り返しに応じた複数の訓練データを収集し、収集した全ての訓練データを用いて、教師あり学習を行うという学習方法である。さらに、ミニバッチ学習とは、オンライン学習と、バッチ学習の中間的な、ある程度訓練データが溜まるたびに教師あり学習を行うという学習方法である。
記憶部304は、RAM(Random Access Memory)等であり、入力データ取得部301により取得された入力データ、ラベル取得部302により取得されたラベルデータ、及び学習部303により構築された学習済みモデル250等を記憶する。
以上、予測装置20が備える学習済みモデル250を生成するための機械学習について説明した。
次に、運用フェーズにおける予測装置20について説明する。
【0025】
<運用フェーズにおける予測装置20>
図1に示すように、運用フェーズにおける予測装置20は、入力部201、予測部202、決定部203、通知部204、及び記憶部205を含んで構成される。
なお、予測装置20は、
図1の機能ブロックの動作を実現するために、CPU(Central Processing Unit)等の図示しない演算処理装置を備える。また、予測装置20は、各種の制御用プログラムを格納したROM(Read Only Memory)やHDD等の図示しない補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAMといった図示しない主記憶装置を備える。
【0026】
そして、予測装置20において、演算処理装置が補助記憶装置からOSやアプリケーションソフトウェアを読み込み、読み込んだOSやアプリケーションソフトウェアを主記憶装置に展開させながら、これらのOSやアプリケーションソフトウェアに基づいた演算処理を行なう。この演算結果に基づいて、予測装置20が各ハードウェアを制御する。これにより、
図1の機能ブロックによる処理は実現される。つまり、予測装置20は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
【0027】
入力部201は、射出成形機10による射出成形に先立って、例えば、制御装置15の制御情報から、これから行う成形条件と、現在の金型の摩耗量の状態情報を入力する。入力部201は、取得したこれから行う成形条件と、現在の金型の摩耗量の状態情報とを予測部202に対して出力する。
【0028】
予測部202は、これから行う成形条件と、現在の金型の摩耗量の状態情報とを、
図2の学習済みモデル250に入力し、成形後の金型の「摩耗量」の状態情報を予測する。
【0029】
決定部203は、予測部202により予測された成形後の金型の摩耗量の状態情報に基づいて、金型の交換を行うか否かを判定する。
より具体的には、決定部203は、金型の摩耗量の予測値と、予め設定された閾値との比較に基づいて、金型を交換する最適な時期を判定する。
図3は、金型の摩耗量の一例を示す図である。
図3に示すように、例えば、金型の摩耗量は、新品の時の初期値として「0%」であり、射出成形機10により繰り返し射出成形に用いられることによりその摩耗量は増加する。例えば、金型の摩耗量が「0%」から「80%」未満の範囲の場合、金型は適切に機能する。一方、摩耗量が「80%」以上の場合、金型は適切に機能しない。
以下の説明では、摩耗量「80%」を閾値αとする。なお、閾値αは、射出成形機10が設置された工場の環境等に応じて適宜設定されてもよい。
決定部203は、予測部202により予測された金型の摩耗量が、閾値αより小さいか否かを判定する。決定部203は、予測された金型の摩耗量が閾値αより小さい場合、入力部201により入力された成形条件による成形前に、金型の交換を行わないことを判定する。一方、決定部203は、予測された金型の摩耗量が閾値α以上となる場合、入力された成形条件による成形前を、金型の交換時期として判定する。
【0030】
通知部204は、判定された金型の交換の指示を、射出成形機10及び/又は制御装置15に含まれる液晶ディスプレイ等の出力装置(図示しない)に出力してもよい。
そうすることで、通知部204は、決定部203により判定された金型を交換する最適な時期をユーザ(オペレータ)に推奨することができる。また、通知部204は、スピーカ(図示せず)を介して音声により通知してもよい。
【0031】
記憶部205は、ROMやHDD等であり、各種の制御用プログラムとともに、学習済みモデル250を記憶してもよい。
【0032】
<運用フェーズにおける予測装置20の予測処理>
次に、本実施形態に係る予測装置20の予測処理に係る動作について説明する。
図4は、運用フェーズにおける予測装置20の予測処理について説明するフローチャートである。
【0033】
ステップS11において、入力部201は、射出成形機10による射出成形に先立って、制御装置15の制御情報から、これから行う成形条件と、現在の金型の摩耗量の状態情報とを入力する。
【0034】
ステップS12において、予測部202は、ステップS11で入力された、これから行う成形条件と金型の摩耗量の状態情報を学習済みモデル250に入力し、成形後の金型の摩耗量の状態情報を予測する。
【0035】
ステップS13において、決定部203は、ステップS12で予測された成形後の金型の摩耗量の予測値と閾値αとの比較に基づいて、成形前に金型の交換を行うか否かを判定する。金型の交換を行うと判定した場合、処理はステップS14に進み、金型の交換を行わないと判定した場合、処理は終了する。
【0036】
ステップS14において、通知部204は、ステップS13で決定された金型の交換の指を通知する。
【0037】
以上により、一実施形態に係る予測装置20は、射出成形機10による射出成形に先立って、当該成形に係るこれから行う成形条件と、現在の金型の摩耗量を含む状態情報とを学習済みモデル250に入力し、成形後の金型の摩耗量の状態情報を予測する。そして、予測装置20は、予測された成形後の金型の摩耗量の予測値と閾値との比較に基づいて、成形中に金型の交換が必要になるか否かを事前に検知することができる。
すなわち、予測装置20は、事前にどのくらい射出成形を行うと金型がどの程度摩耗するかを予測することが可能となり、これから行う成形条件による成形前を金型の交換の最適な時期として検知することができる。また、予測装置20は、様々な形状の金型の摩耗量を予測することができる。
また、射出成形システムは、金型の交換時期(寿命)が分かるため、金型の交換により不良品の生産を減らすことができる。
また、予測装置20は、学習済みモデル250を用いることにより、作業員が金型の交換の必要性を判断する必要がなくなり、作業員の負担を軽減することができる。
【0038】
以上、一実施形態について説明したが、予測装置20、及び機械学習装置30は、上述の実施形態に限定されるものではなく、目的を達成できる範囲での変形、改良等を含む。
【0039】
<変形例1>
上述の実施形態では、機械学習装置30は、射出成形機10、制御装置15、及び予測装置20と異なる装置として例示したが、機械学習装置30の一部又は全部の機能を、射出成形機10、制御装置15、又は予測装置20が備えるようにしてもよい。
【0040】
<変形例2>
また例えば、上述の実施形態では、予測装置20は、射出成形機10や制御装置15と異なる装置として例示したが、予測装置20の一部又は全部の機能を、射出成形機10又は制御装置15が備えるようにしてもよい。
あるいは、予測装置20の入力部201、予測部202、決定部203、通知部204及び記憶部205の一部又は全部を、例えば、サーバが備えるようにしてもよい。また、クラウド上で仮想サーバ機能等を利用して、予測装置20の各機能を実現してもよい。
さらに、予測装置20は、予測装置20の各機能を適宜複数のサーバに分散される、分散処理システムとしてもよい。
【0041】
<変形例3>
また例えば、上述の実施形態では、これから行う成形条件は、樹脂(材料)の種類(エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエステル等の熱可塑性樹脂)、添加剤の種類(ガラス繊維、安定剤、着色剤等)、金型表面の温度、保圧と保圧時間との積、樹脂温度、射出速度、射出圧力、射出量、及びこれまでのショット回数を含むとしたが、これに限定されない。
例えば、これから行う成形条件には、金型の情報(スプルー、ランナー、ゲート、キャビティ等の各部分の経路の大きさ(断面積サイズ)、容積、表面積等)や、成形品の情報(形状、寸法、肉厚等)等を含めてもよい。なお、金型の情報及び成形品の情報は、例えば、制御装置15に入力されたCAD図面等により取得してもよい。
【0042】
<変形例4>
また例えば、上述の実施形態では、予測装置20の決定部203は、予測された成形後の金型の摩耗量の予測値と、閾値αとの比較に基づいて、成形前を金型の交換の時期を判定したが、これに限定されない。
例えば、決定部203は、これから行う成形条件、及び現在の金型の摩擦量の状態情報に基づいて、複数の成形品を成形する場合、複数の成形品を成形した後の金型の摩耗量の予測値が閾値αより小さくなるように、成形品の数(これから行うショット回数)を調整してもよい。
【0043】
より具体的には、決定部203は、例えば、これから行う成形条件で複数個の成形品を成形することで、成形後の金型の摩耗量の予測値が閾値α以上となる場合、(作業員の指示により)「これから行うショット回数(成形品の数)」を所定の数ずつ減らしてもよい。決定部203は、その都度予測部202に成形後の金型の摩耗量を予測させることで、摩耗量の予測値が閾値αより小さくなる成形品の数kを探索することができる(kは1以上の整数)。
例えば、決定部203は、これから行う成形条件で10個の成形品を成形しようとした際に、成形後の金型の摩耗量の予測値が閾値α以上となった場合、成形品の数を10個から1つ(所定の数)ずつ減らして、摩耗量の予測値が閾値αより小さくなる、8個等の成形品の数を探索してもよい。
そして、決定部203は、例えば、k個の成形品の成形後を、金型の交換を行う時期として判定する。これにより、
図1の射出成形システムは、決定された時期であるきりのよい段階で、射出成形機10を停止させて金型の交換を行うことができる。
これにより、射出成形システムは、成形開始前に、どの程度成形すると金型の交換が必要になるかのタイミングを事前に予測することができる。そして、射出成形システムは、成形中に金型の交換の必要性が発生することを回避することができ、金型が摩耗した状態での成形品の成形を回避することが可能となる。
【0044】
<変形例5>
また例えば、上述の実施形態では、予測装置20は、機械学習装置30から提供された学習済みモデル250を用いて、1つの射出成形機10から取得したこれから行う成形条件による成形後の金型の摩耗量を予測したが、これに限定されない。例えば、
図5に示すように、サーバ50は、機械学習装置30により生成された学習済みモデル250を記憶し、ネットワーク60に接続されたm個の予測装置20A(1)−20A(m)と学習済みモデル250を共有してもよい(mは2以上の整数)。これにより、新たな射出成形機、及び予測装置が配置されても学習済みモデル250を適用することができる。
なお、予測装置20A(1)−20A(m)の各々は、射出成形機10A(1)−10A(m)の各々と接続される。
また、射出成形機10A(1)−10A(m)の各々は、
図1の射出成形機10に対応する。予測装置20A(1)−20A(m)の各々は、
図1の予測装置20に対応する。
あるいは、
図6に示すように、サーバ50は、例えば、予測装置20として動作し、ネットワーク60に接続された射出成形機10A(1)−10A(m)の各々に対して、これから行う成形条件による成形後の金型の摩耗量を予測してもよい。これにより、新たな射出成形機が配置されても学習済みモデル250を適用することができる。
【0045】
なお、一の実施形態における、予測装置20、及び機械学習装置30に含まれる各機能は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0046】
予測装置20、及び機械学習装置30に含まれる各構成部は、電子回路等を含むハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。また、これらのプログラムは、リムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。また、ハードウェアで構成する場合、上記の装置に含まれる各構成部の機能の一部または全部を、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等の集積回路(IC)で構成することができる。
【0047】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(Non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(Tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAMを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は、無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0048】
なお、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0049】
以上を換言すると、本開示の機械学習装置、予測装置、及び制御装置は、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
(1)本開示の機械学習装置30は、任意の射出成形機による任意の成形品の成形における少なくとも樹脂の種類、添加剤の種類、添加剤の配合率、及び樹脂の温度を含む任意の成形条件と、当該成形条件による成形前の金型の摩擦量を示す状態情報と、を含む入力データを取得する入力データ取得部301と、入力データに含まれる成形条件による成形後の金型の状態情報、を示すラベルデータを取得するラベル取得部302と、入力データ取得部301により取得された入力データと、ラベル取得部302により取得されたラベルデータと、を用いて、教師あり学習を実行し、学習済みモデル250を生成する学習部303と、を備える。
この機械学習装置30によれば、金型の摩耗に最も寄与する溶融した樹脂との摩擦や、樹脂に添加される添加剤によって発生する腐食性ガス等の影響を考慮した成形後の金型の摩耗量を予測する学習済みモデル250を生成することができる。
(2)成形条件は、前記金型に関する情報及び/又は前記成形品に関する情報を含んでもよい。
そうすることで、特定の金型や成形品に対応できる学習済みモデル250を生成することができる。
(3)本開示の予測装置20は、(1)又は(2)の機械学習装置30により生成された学習済みモデル250と、射出成形機10による成形に先立って、これから行う成形条件と、現在の金型の状態情報とを入力する入力部201と、入力部201により入力されたこれから行う成形条件と現在の金型の状態情報とを学習済みモデル250に入力し、これから行う成形条件による成形後の金型の状態情報を予測する予測部202と、を備える。
この予測装置20によれば、成形後の金型の摩耗量を予測することができる。
(4)予測部202により予測された金型の状態情報に含まれる予測値と、予め設定された閾値αとの比較に基づいて、金型を交換する時期を判定する決定部203を備えてもよい。
そうすることで、予測装置20は、成形中に金型の交換の必要性が発生することを回避することができ、金型が摩耗した状態での成形品の成形を回避することが可能となる。
(5)決定部203は、これから行う成形条件、及び現在の金型の状態情報に基づいて、複数の成形品を成形する場合、複数の成形品を成形した後の予測値が閾値αより小さくなるように、成形品の数を調整してもよい。
そうすることで、射出成形開始前に、どの程度成形すると金型の交換が必要になるかの時期を事前に予測することができ、成形のきりのよい段階で、射出成形機10を停止させて金型の交換のスケジュールを組むことが可能となる。
(6)学習済みモデル250を、予測装置20からネットワーク60を介してアクセス可能に接続されるサーバに備えてもよい。
そうすることで、新たな射出成形機10、制御装置15、及び予測装置20が配置されても学習済みモデル250を適用することができる。
(7)機械学習装置30を備えてもよい。
そうすることで、上述の(1)から(6)のいずれかと同様の効果を奏することができる。
(8)本開示の制御装置15は、予測装置20を備えてもよい。
この制御装置15によれば、上述の(1)から(7)のいずれかと同様の効果を奏することができる。