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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-199814(P2020-199814A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20201120BHJP
   B60L 7/24 20060101ALI20201120BHJP
   B60L 58/15 20190101ALI20201120BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   B60T8/17 C
   B60L7/24 D
   B60L58/15
   B60T8/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-106586(P2019-106586)
(22)【出願日】2019年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100142158
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 啓
(72)【発明者】
【氏名】中河原 亜紀子
【テーマコード(参考)】
3D246
5H125
【Fターム(参考)】
3D246AA08
3D246AA09
3D246BA02
3D246BA08
3D246DA01
3D246EA03
3D246EA05
3D246GA28
3D246GB39
3D246GC14
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA41C
3D246HC11
3D246JB02
3D246JB11
3D246JB32
3D246JB34
3D246JB43
3D246LA02Z
3D246LA15Z
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BC14
5H125CA02
5H125CB02
5H125CB06
5H125CB07
5H125EE27
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】摩擦ブレーキの冷間時における制動性能の低下を防ぐことができる車両の制動制御装置を提供すること。
【解決手段】車輪3,7の回転に制動を加える制動手段としてエンジンブレーキまたは回生ブレーキおよび摩擦ブレーキ8を備える車両1の制動制御装置13は、前記摩擦ブレーキ8の温度を推定するブレーキ温度推定手段と、運転者による車両1の減速要求があり、かつ、前記ブレーキ温度推定手段によって推定される前記摩擦ブレーキ8の温度が設定値以下であると判断するか、または前記ブレーキ温度推定手段によって前記摩擦ブレーキ8が所定時間使用されていないと判断すると前記摩擦ブレーキ8が特定状態だと判断する摩擦ブレーキ状態判断手段とを備え、摩擦ブレーキ8が特定状態だと判断された場合には、特定状態だと判断されていない場合に比べて前記摩擦ブレーキ8を強く動作させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転に制動を加える制動手段としてエンジンブレーキまたは回生ブレーキおよび摩擦ブレーキを備える車両の制動制御装置であって、
前記摩擦ブレーキの温度を推定するブレーキ温度推定手段と、
運転者による車両の減速要求があり、かつ、前記ブレーキ温度推定手段によって推定される前記摩擦ブレーキの温度が設定値以下であると判断するか、または前記ブレーキ温度推定手段によって前記摩擦ブレーキが所定時間使用されていないと判断すると前記摩擦ブレーキが特定状態だと判断する摩擦ブレーキ状態判断手段と、
を備え、
前記摩擦ブレーキ状態判断手段によって前記摩擦ブレーキが前記特定状態だと判断された場合には、同摩擦ブレーキが前記特定状態だと判断されていない場合と比べて前記摩擦ブレーキを強く動作させることを特徴とする車両の制動制御装置。
【請求項2】
前記減速要求に基づいて要求制動力を求め、求められた要求制動力を、摩擦ブレーキ力とエンジンブレーキ力または回生ブレーキ力によって分担することを特徴とする請求項1に記載の車両の制動制御装置。
【請求項3】
前記摩擦ブレーキを動作させる場合には、前記摩擦ブレーキ力の分担量を時間の経過と共に増大させることを特徴とする請求項2に記載の車両の制動制御装置。
【請求項4】
前記摩擦ブレーキを動作させる場合には、前記摩擦ブレーキ力の分担量を前記エンジンブレーキ力または前記回生ブレーキ量の分担量よりも多くすることを特徴とする請求項2に記載の車両の制動制御装置。
【請求項5】
発電機としても機能して前記回生ブレーキ力を発生する電動機を備え、該電動機に電力を供給するバッテリの残量が設定値以上である場合の前記摩擦ブレーキ力の分担量を、同バッテリの残量が設定値未満である場合の前記摩擦ブレーキ力の分担量よりも多くすることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の回転に制動を加える制動手段を制御するための車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源としてエンジンと電動機を併用するハイブリッド車両(HEV車)や電動機のみを駆動源とする電動自動車(EV車)においては、運転者によるアクセルペダルの操作だけで車両を加速または減速させることができるものがある。
【0003】
ところで、車両の車輪には、ディスクブレーキなどの摩擦ブレーキがそれぞれ設けられており、これらの摩擦ブレーキは、車輪と共に回転するブレーキディスクと該ブレーキディスクを挟持可能なブレーキパッドを備えている。この摩擦ブレーキにおいては、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、マスタシリンダから供給される油圧によってブレーキパッドが車輪と共に回転するブレーキディスクに押圧されるため、両者間に発生する摩擦抵抗力によって車輪の回転に制動が加えられ、車両が減速または停止する。
【0004】
ここで、前述のように運転者によるアクセルペダルの操作だけで車両を加速または減速させることができるハイブリッド車両や電気自動車においては、摩擦ブレーキの使用頻度が低いために該摩擦ブレーキが冷えた状態であることが多くなる。また、エンジンを駆動源として走行する通常の車両においても、例えば下り坂を走行する場合には、シフトダウン操作を行ってエンジンブレーキを使用して車両の減速状態を維持することが行われる。このようにエンジンブレーキを使用する場合には、摩擦ブレーキの使用頻度が低いために該摩擦ブレーキが冷えた状態であることが多くなる。
【0005】
上述のように摩擦ブレーキが冷えた状態にあると、十分な摩擦抵抗力が得られず、当該摩擦ブレーキの制動性能が悪化するという問題が発生する。
【0006】
ところで、特許文献1には、冷間時にオイルの温度を早期に上昇させるために、車両の動力伝達装置に設けられた差動機構(ディファレンシャル機構)のリングギヤの回転を制動可能な摩擦ブレーキ機構を設け、この摩擦ブレーキ機構の少なくとも一部をオイルに浸漬させる構成が提案されている。この構成によれば、ブレーキ機構が作動するときに発生する摩擦熱によってオイルの温度を早期に上昇させることができる。
【0007】
また、特許文献2には、電気自動車の制動性能の向上を図るため、摩擦ブレーキのブレーキ温度と制動頻度に基づいて電動機の回生トルク量を制御することによって、ブレーキトルクの制御における電気回生トルク成分と機械的な摩擦制動トルク成分とのバランスを取る構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−048286号公報
【特許文献2】特開2010−104087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1において提案された構成は、摩擦ブレーキ機構の冷間時のブレーキ性能の低下を防ぐものではなく、摩擦ブレーキ機構が発生する摩擦熱によって冷間時にオイルの温度を早期に上昇させるものである。
【0010】
また、特許文献2において提案された構成は、電動機の回生トルク量を制御することによって、ブレーキトルクの制御における電気回生トルク成分と機械的な摩擦制動トルク成分とのバランスを取るようにしたものであって、冷間時に摩擦ブレーキを積極的に動作させて該摩擦ブレーキの制動性能の低下を防ぐものではない。
【0011】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、摩擦ブレーキの冷間時における制動性能の低下を防ぐことができる車両の制動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、車輪(3,7)の回転に制動を加える制動手段としてエンジンブレーキまたは回生ブレーキおよび摩擦ブレーキ(8)を備える車両(1)の制動制御装置(13)であって、前記摩擦ブレーキ(8)の温度を推定するブレーキ温度推定手段と、運転者による車両(1)の減速要求があり、かつ、前記ブレーキ温度推定手段によって推定される前記摩擦ブレーキ(8)の温度が設定値以下であると判断するか、または前記ブレーキ温度推定手段によって前記摩擦ブレーキ(8)が所定時間使用されていないと判断すると前記摩擦ブレーキ(8)が特定状態だと判断する摩擦ブレーキ状態判断手段と、を備え、前記摩擦ブレーキ状態判断手段によって前記摩擦ブレーキ(8)が前記特定状態だと判断された場合には、同摩擦ブレーキ(8)が前記特定状態だと判断されていない場合と比べて前記摩擦ブレーキ(8)を強く動作させることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、運転者からの減速要求があり、かつ、摩擦ブレーキが冷えた状態にあると判断した場合(摩擦ブレーキが特定状態にあると判断した場合)には、該摩擦ブレーキを強く動作させるようにしたため、摩擦ブレーキが自身に発生する摩擦熱によって早期に温められる。このため、摩擦ブレーキの冷間時における制動性能の低下が防がれる。
【0014】
また、前記車両の制動制御装置において、前記減速要求に基づいて要求制動力を求め、求められた要求制動力を、摩擦ブレーキ力とエンジンブレーキ力または回生ブレーキ力によって分担するようにしてもよい。
【0015】
上記構成によれば、運転者がブレーキ操作によって要求するブレーキ力(要求制動力)を摩擦ブレーキ力とエンジンブレーキ力または摩擦ブレーキ力と回生ブレーキ力によって負担することができる。
【0016】
そして、上記車両の制動制御装置において、前記摩擦ブレーキ(8)を動作させる場合には、前記摩擦ブレーキ力の分担量を時間の経過と共に増大させるようにしてもよい。
【0017】
上記構成によれば、摩擦ブレーキが冷えた状態にあると判断した場合には、該摩擦ブレーキの負担を時間の経過と共に増大させるようにしたため、摩擦ブレーキを早期に温めることができる。このため、摩擦ブレーキの冷間時における制動性能の低下を一層効果的に防ぐことができる。
【0018】
また、前記車両の制動制御装置において、前記摩擦ブレーキ(8)を動作させる場合には、前記摩擦ブレーキ力の分担量を前記エンジンブレーキ力または前記回生ブレーキ量の分担量よりも多くするようにしてもよい。
【0019】
上記構成によれば、摩擦ブレーキが冷えた状態にあると判断した場合には、該摩擦ブレーキの分担量をエンジンブレーキ力または回生ブレーキ力の分担量よりも多くすることによって、摩擦ブレーキをより早期に温めることができ、該摩擦ブレーキの冷間時における制動性能の低下を一層効果的に防ぐことができる。
【0020】
また、前記車両の制動制御装置において、発電機としても機能して前記回生ブレーキ力を発生する電動機(2)を備え、該電動機(2)に電力を供給するバッテリ(4)の残量(SOC)が設定値以上である場合の前記摩擦ブレーキ力の分担量を、同バッテリ(4)の残量(SOC)が設定値未満である場合の前記摩擦ブレーキ力の分担量よりも多くするようにしてもよい。
【0021】
上記構成によれば、バッテリの残量(SOC)が十分である場合には、摩擦ブレーキを積極的に動作させて該摩擦ブレーキを早期に温めて冷間時における当該摩擦ブレーキの制動性能の低下を効果的に防ぐことができる。これに対して、バッテリの残量(SOC)が少なくて余裕がない場合には、回生ブレーキを積極的に使用して発電機の発電量を増やしてバッテリの残量(SOC)の不足を早期に解消することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、摩擦ブレーキの冷間時における制動性能の低下を防ぐことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態1に係る制動制御装置を備えた車両の全体構成を模式的に示す平面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る制動制御装置による制動制御手順を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施の形態1に係る制動制御装置による制動制御のタイミングチャートである。
図4】(a),(b)はバッテリ残量(SOC)が少ない場合と多い場合における摩擦ブレーキ力と回生ブレーキ力との分担比率の時間変化を示す図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る制動制御装置による制動制御手順を示すフローチャートである。
図6】摩擦ブレーキ力とエンジンブレーキ力との分担比率の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る制動制御装置を備えた車両の全体構成を模式的に示す平面図であり、図示の車両1は、電気自動車であって、電動機(モータ)2を駆動源として左右の後輪3を回転駆動して走行するものである。ここで、電動機2は、発電機(ジェネレータ)としても機能するものであって、これにはバッテリ4が電気的に接続されており、このバッテリ4から供給される電力によって作動する。
【0026】
上記電動機2から出力される回転駆動力は、ディファレンシャル装置(差動装置)5によって分配されて左右の車軸6にそれぞれ伝達され、左右の車軸6の回転は、これらの車軸6の外端部にそれぞれ取り付けられた左右の後輪3へと伝達される。これによって左右の後輪3が回転駆動され、車両1が所定の速度で走行する。
【0027】
ところで、車両1の左右の前輪7と後輪3には、これらの回転に機械的な制動を加えるための摩擦ブレーキ8がそれぞれ設けられている。各摩擦ブレーキ8は、ディスクブレーキであって、前輪7または後輪3と共に回転する円板状のブレーキディスク8aと、各ブレーキディスク8aを油圧によって挟み込んで該ブレーキディスク8aとの間に摩擦抵抗力を発生させるブレーキパッド(ブレーキキャリパ)8bによって構成されている。
【0028】
また、車両1には、運転者によって操作されるアクセルペダル9とブレーキペダル10が設けられている。ここで、アクセルペダル9の近傍には、該アクセルペダル9の踏込量(アクセル開度)を検出するためのアクセル開度検出センサ11が設けられ、ブレーキペダル10には、該ブレーキペダル10の踏み込みの有無(ON/OFF)を検出するためのブレーキスイッチ12が設けられている。これらのアクセル開度検出センサ11とブレーキスイッチ12は、本発明に係る制動制御装置を構成するECU(Electronic Control Unit)13に電気的に接続されている。なお、ECU13は、マイクロコンピュータで構成された電子制御装置であって、マイクロプロセッサやROM、RAMの他、ブレーキスイッチ12がOFFしてからの時間を計測するタイマー、摩擦ブレーキ8の温度を推定するブレーキ温度推定手段などを集積したLSIデバイスとして構成されている。
【0029】
ここで、上記ブレーキペダル10には、ブレーキブースタ14を介してマスタシリンダ15が接続されており、このマスタシリンダ15から延びる油圧配管16は、H/U(Hydraulic Unit)17に接続されている。そして、H/U17から延びる4本の油圧配管18は、各摩擦ブレーキ8のブレーキパッド8bにそれぞれ接続されている。ここで、H/U17には油圧ポンプ19が接続されており、この油圧ポンプ19は、油圧配管20によってH/U17に接続されている。なお、この油圧ポンプ19は、ECU13からの指令によって駆動が制御される。また、マスタシリンダ15には、該マスタシリンダ15内の油圧を検出するための油圧センサ21が設けられており、この油圧センサ21は、前記ECU13に電気的に接続されている。
【0030】
運転者がブレーキペダル10を踏み込めば、このブレーキペダル10の踏込量に応じた大きさの油圧がマスタシリンダ15に発生し、この油圧は、油圧配管16とH/U17および油圧配管18を経て各摩擦ブレーキ8へと供給され、各摩擦ブレーキ8のブレーキパッド8bがブレーキディスク8aに押圧される。この結果、各摩擦ブレーキ8に摩擦抵抗力(摩擦ブレーキ力)が発生し、この摩擦抵抗力によって左右の前輪7と後輪3の回転に制動が加えられる。
【0031】
また、運転者がブレーキペダル10を踏み込まなくても、後述のように必要な場合には、ECU13は、油圧ポンプ19を駆動して摩擦ブレーキ8を駆動し、左右の前輪7と後輪3の回転に制動を加えることができる。
【0032】
ところで、車両1の減速時には前記電動機2は、前述のように発電機として機能して運動エネルギの一部を電気エネルギ(回生エネルギ)として回収するが、このとき、電動機(発電機)2は、回生ブレーキとして機能する。
【0033】
したがって、本実施の形態に係る車両1は、左右の前輪7と後輪3の回転に制動を加える制動手段として、電動機2による回生ブレーキと機械的な摩擦ブレーキ8を備えており、冷間時の摩擦ブレーキ8の制動性能の低下を防ぐために以下のような制動制御を行うようにしている。
【0034】
ここで、ECU13は、摩擦ブレーキ8の温度を推定するブレーキ温度推定手段と、運転者による車両1の減速要求があり、かつ、ブレーキ温度推定手段によって推定される摩擦ブレーキ8の温度が設定値以下であると判断するか、またはブレーキ温度推定手段によって摩擦ブレーキ8が所定時間使用されていないと判断すると摩擦ブレーキ8が特定状態だと判断する摩擦ブレーキ状態判断手段とを備えている。そして、ECU13は、摩擦ブレーキ状態判断手段によって摩擦ブレーキ8が特定状態だと判断した場合には、同摩擦ブレーキ8が特定状態だと判断されていない場合と比べて摩擦ブレーキ8を強く動作させる。
【0035】
上記制御を図2図4に基づいて具体的に説明する。
【0036】
すなわち、図2は本発明に係る制動制御装置による制動制御手順を示すフローチャート、図3は同制動制御装置による制動制御のタイミングチャート、図4(a),(b)はバッテリ残量(SOC)が少ない場合と多い場合における摩擦ブレーキ力と回生ブレーキ力との分担比率の時間変化を示す図である。
【0037】
車両1の走行中に制動制御が開始されると(ステップS1)、ブレーキスイッチ12(図1参照)がOFF状態にあるか否かが判定される(図2のステップS2)。運転者がブレーキペダル10を操作していない(ブレーキペダル10から足を離している)ためにブレーキスイッチ12がOFF状態にある場合(ステップS2:YES)には、ECU13に備えられているタイマーが作動し、ブレーキスイッチ12がOFFになった時点(図3に示す時間t1)からの時間が計測される(ステップS3)。なお、実際には、予め設定されている時間Δtが減算される。また、運転者がブレーキペダル10を操作しているためにブレーキスイッチ12がON状態にあるとき(ステップS2:NO)には、ステップS2の処理が繰り返される。
【0038】
そして、同時にECU13は、ブレーキ温度推定手段によって摩擦ブレーキ8の温度を推定し(ステップS4)、車両1に運転者から減速要求があったか否かを判定する(ステップS5)。ここで、車両1に運転者から減速要求があったか否かの判定は、図1に示すアクセル開度検出センサ11によって検出されるアクセル開度(運転者が踏んでいたアクセルペダル9が戻されたか否か)によって判定される。すなわち、図3に示すアクセルペダル9の踏み込み量が減少に転じた時点の時間t2において運転者から車両1に対して減速要求があったものと判定される。
【0039】
運転者からの減速要求があった場合(ステップS5:YES)には、ブレーキ温度推定手段によって推定された摩擦ブレーキ8の温度が設定値以下であるか、またはブレーキ温度推定手段によって摩擦ブレーキ8が所定時間使用されていないかの何れかであるか否か、つまり、摩擦ブレーキ状態判断手段によって摩擦ブレーキ8が特定状態にあるか否かが判定される(ステップS6)。
【0040】
ここで、車両1の走行に必要な駆動力(要求駆動力)、電動機2の出力(モータトルク)、回生ブレーキ力および摩擦ブレーキ力について説明する。
【0041】
車両の走行に必要な駆動力(要求駆動力)と電動機2の出力(モータトルク)は、時間の経過とともに図3に示すように変化するが、これらの要求駆動力と電動機2の出力は、運転者から減速要求があった時点(アクセル開度が減少し始めた時点)t2からは減少に転じる。そして、これらの要求駆動力と電動機2の出力は、アクセル開度が0になった時点t3においてマイナスに転じる。
【0042】
要求駆動力のマイナス部分は、要求ブレーキ力であり、モータトルクのマイナス部分は、電動機2が発電機として機能するために発生する回生ブレーキ力である。したがって、車両1に対する要求ブレーキ力は、回生ブレーキ力と時間t4から発生する摩擦ブレーキ力を加えたものとなる。すなわち、要求ブレーキ力は、回生ブレーキ力と摩擦ブレーキ力によって分担されるが、両者の分担の比率は、後述のようにバッテリ4の残量(SOC)の多少によって変えられる(図4参照)。なお、図4(a),(b)に示す面積S1,S2と面積S3,S4は、摩擦ブレーキ力と回生ブレーキ力を時間積分した値(力積)を示し、例えば任意の時間tにおける摩擦ブレーキ力と回生ブレーキ力の分担比率は、a:bとc:dでそれぞれ表される。
【0043】
ここで、図2に示すフローチャートに基づく説明に戻ると、ステップS6での判定の結果、摩擦ブレーキ8の温度が設定値以下であるか、または摩擦ブレーキ8が所定時間使用されていない場合、つまり、摩擦ブレーキ8が特定状態にあるとき(ステップS6:YES)には、バッテリ4の残量(SOC)が設定値未満であるか否かが判定される(ステップS7)。この判定の結果、バッテリ4の残量(SOC)が少ないためにその値が設定値未満である場合(ステップS7:YES)には、摩擦ブレーキ8によって発生する摩擦ブレーキ力の分担比率は、図4(a)に示すように設定され(ステップS8)、バッテリ4の残量(SOC)が多いためにその値が設定値以上である場合(ステップS7:NO)には、摩擦ブレーキ力の分担比率は、図4(b)に示すように設定される(ステップS9)。具体的には、摩擦ブレーキ力の分担比率は、図4(a),(b)に示すように、バッテリ4の残量(SOC)が多い場合も少ない場合も共に時間の経過と共に増大するが、バッテリの残量(SOC)が多くて余裕がある場合には、摩擦ブレーキ力の分担量を、バッテリの残量(SOC)が少なくて余裕がないときの摩擦ブレーキ力の分担比率よりも大きく設定している。なお、摩擦ブレーキ8の温度が設定値を超えているか、または摩擦ブレーキ8が所定時間以上使用されているために該摩擦ブレーキ8が十分温められている場合、つまり、摩擦ブレーキ8が特定状態ではないと判断された場合(ステップS6:NO)には、ステップS2〜ステップS7の処理が繰り返される。
【0044】
以上のように、バッテリの残量(SOC)に応じて摩擦ブレーキ力の分担比率が設定されると、ECU13からのブレーキ加圧指令が出力される(ステップS10)。すると、図1に示す油圧ポンプ19が駆動され、該油圧ポンプ19によって加圧された油圧が油圧配管20からH/U17及び各油圧配管18を経て各摩擦ブレーキ8にそれぞれ供給される。すなわち、図3に示す時間t4から各摩擦ブレーキ8に油圧が供給され、各摩擦ブレーキ8のブレーキパッド8bがブレーキディスク8aを挟持するため、両者間に発生する摩擦抵抗力(摩擦ブレーキ力)によって各前輪7と各後輪3の回転に制動が加えられるとともに、摩擦熱によって当該摩擦ブレーキ8が温められる。
【0045】
以上のように、本実施の形態では、摩擦ブレーキ8が冷えた状態にあると判断した場合には、油圧ポンプ19を駆動して摩擦ブレーキ8を動作させるようにようにしたため、該摩擦ブレーキ8が自身に発生する摩擦熱によって早期に温められる。このため、摩擦ブレーキ8の冷間時における制動性能の低下が防がれる。
【0046】
また、本実施の形態では、摩擦ブレーキ8が冷えた状態にあると判断した場合には、運転者のブレーキ操作に基づいて要求ブレーキ力を求め、求められた要求ブレーキ力を、摩擦ブレーキ力と回生ブレーキ力によって分担するようにし、両者の分担比率をバッテリ4の残量(SOC)によって変化させるようにした。具体的には、バッテリ4の残量(SOC)が十分である場合には、摩擦ブレーキ力の分担比率を高めて摩擦ブレーキ8を積極的に動作させるようにしたため、該摩擦ブレーキ8を早期に温めて冷間時における当該摩擦ブレーキ8の制動性能の低下を効果的に防ぐことができる。これに対して、バッテリ8の残量(SOC)が少なくて余裕がない場合には、摩擦ブレーキ力の分担比率を下げて回生ブレーキを積極的に使用するようにしたため、電動機(発電機)2の発電量が増えてバッテリ4の残量(SOC)の不足を早期に解消することができる。
【0047】
その後、運転者による車両1の加速要求があるか否かがアクセルペダル9を踏み込んだか否かによって判断され(ステップS11)、運転者による加速要求があった場合(ステップS11:YES)には、油圧ポンプ19による加圧が解除されて摩擦ブレーキ8の動作が終了する(ステップS12)とともに、ECU13に内蔵されたタイマーがリセットされる(ステップS13)。そして、その後は以上の一連の処理(ステップS2〜ステップS13の処理が繰り返される(ステップS14)。なお、運転者による車両1の加速要求がない場合(ステップS11:NO)には、摩擦ブレーキ8の動作が継続して摩擦ブレーキ力が発生し続ける。
【0048】
ところで、摩擦ブレーキ8を動作させる場合には、摩擦ブレーキ力の分担量を回生ブレーキ量の分担量よりも多くするようにしてもよい。このようにすることによって、摩擦ブレーキ8が冷えた状態にあるときには、該摩擦ブレーキ8が摩擦熱によってより早期に温められるため、摩擦ブレーキ8の冷間時における制動性能の低下が一層効果的に防がれる。
【0049】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図5および図6に基づいて以下に説明する。
【0050】
図5は本発明の実施の形態2に係る制動制御装置による制動制御手順を示すフローチャート、図6は摩擦ブレーキ力とエンジンブレーキ力との分担比率の時間変化を示す図であり、以下においては、図1に示した符号を用いて説明する。
【0051】
本実施の形態に係る制動制御装置は、エンジンを駆動源として走行する車両に設けられるものであって、運転者による減速要求があった場合であって、摩擦ブレーキ8が冷えた状態にあると判断した場合には、この摩擦ブレーキ8を動作させるようにしたものである。
【0052】
この制動制御装置による処理手順は、前記実施の形態1に係る制動制御装置の処理手順の一部(図2のステップS1〜S6の処理)と同じであるため、図5に示すフローチャートにおいては、同じ処理についてはステップS21〜S26を付してその説明は省略する。
【0053】
本実施の形態に係る制動制御装置において、ステップS26での判定結果がYESである場合、すなわち、ブレーキ温度推定手段によって推定された摩擦ブレーキ8の温度が設定値以下であるか、またはブレーキ温度推定手段によって摩擦ブレーキ8が所定時間使用されていないかの何れかである、つまり、摩擦ブレーキ8が冷えた状態(特定状態)にあると判定された場合には、前記実施の形態1における処理(図2のステップ10〜ステップS14の処理)と同様の処理が実行される。
【0054】
すなわち、摩擦ブレーキ8が特定状態にあって、冷えた状態にあると判断した場合(ステップS26:YES)には、ECU13からブレーキ加圧指令が出力され(ステップS27)、実施の形態1と同様に各摩擦ブレーキ8がそれぞれ駆動されて各前輪7と後輪3の回転に制動が加えられる。このため、各摩擦ブレーキ8は、自身に発生する摩擦熱によって温められる。このため、摩擦ブレーキ8の冷間時における制動性能の低下が防がれる。
【0055】
ところで、車両が例えば下り坂を走行している場合に、運転者がシフトダウンしたためにエンジンブレーキ力が作用している場合には、このエンジンブレーキ力と摩擦ブレーキ力の比率が図6に示すように設定される。
【0056】
その後、運転者による車両1の加速要求があるか否かがアクセルペダル9を踏み込んだか否かによって判断され(ステップS28)、運転者による加速要求があった場合(ステップS28:YES)には、油圧ポンプ19による加圧が解除されて摩擦ブレーキ8の動作が終了する(ステップS29)とともに、ECU13に内蔵されたタイマーがリセットされる(ステップS30)。そして、その後は以上の一連の処理(ステップS22〜ステップS30の処理が繰り返される(ステップS31)。なお、運転者による車両1の加速要求がない場合(ステップS28:NO)には、摩擦ブレーキ8の動作が継続して摩擦ブレーキ力が発生し続ける。
【0057】
以上のように、本実施の形態においても、摩擦ブレーキ8が特定状態にあって、冷えた状態にあると判断した場合には、運転者から車両1に対して減速要求があった場合には、摩擦ブレーキ8を動作させるようにしたため、該摩擦ブレーキ8が自ら発生する摩擦熱によって早期に温められ、冷間時における摩擦ブレーキ8の制動性能の低下が防がれるという効果が得られる。
【0058】
ところで、本実施の形態においても、摩擦ブレーキ8を動作させる場合には、摩擦ブレーキ力の分担量をエンジンブレーキ量の分担量よりも多くするようにしてもよい。このようにすることによって、摩擦ブレーキ8が冷えた状態にあるときには、該摩擦ブレーキ8が摩擦熱によってより早期に温められるため、摩擦ブレーキ8の冷間時における制動性能の低下が一層効果的に防がれる。
【0059】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
2 電動機
3 後輪
4 バッテリ
7 前輪
8 摩擦ブレーキ
9 アクセルペダル
10 ブレーキペダル
11 アクセル開度検出センサ
12 ブレーキスイッチ
13 ECU(制動制御装置)
17 H/U
19 油圧ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6