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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-199900(P2020-199900A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】転舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20201120BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20201120BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20201120BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20201120BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20201120BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20201120BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20201120BHJP
【FI】
   B62D5/04
   B62D6/00
   F16H25/20 A
   F16H1/16 Z
   F16H25/22 Z
   B62D101:00
   B62D113:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-108551(P2019-108551)
(22)【出願日】2019年6月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】疋田 真史
(72)【発明者】
【氏名】森田 竜峰
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
3J009
3J062
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232CC32
3D232CC34
3D232CC37
3D232CC48
3D232CC49
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA23
3D232EA01
3D232EB04
3D232EB12
3D232EC22
3D232EC37
3D232GG01
3D232GG02
3D333CB02
3D333CB03
3D333CB31
3D333CC14
3D333CC15
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD21
3D333CD37
3D333CD38
3D333CD55
3D333CD58
3D333CE03
3D333CE04
3D333CE05
3D333CE12
3D333CE16
3D333CE24
3D333CE28
3D333CE32
3D333CE36
3D333CE55
3J009DA17
3J009EA06
3J009EA19
3J009EA23
3J009EA43
3J009FA08
3J062AA03
3J062AB02
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA21
3J062BA31
3J062CD06
3J062CD23
3J062CD50
(57)【要約】
【課題】電動モータを効率の良い領域で使用しつつ、十分な転舵力を得られ、かつ、フェールセーフを確保することができる構造を実現する。
【解決手段】転舵装置1は、1対の電動モータ7a、7bにより、減速機8a、8bを介して、ボールナット4a、4bを回転駆動することで、ボールねじ軸3を幅方向に変位させることにより、タイロッド31を押し引きして、操舵輪に舵角を付与する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
外周面に内径側ボールねじ溝を有し、前記ハウジングの内側に、軸方向に関する変位を可能に、かつ、回転を不能に支持されたボールねじ軸と、
内周面に外径側ボールねじ溝を有し、かつ、前記ボールねじ軸の周囲に該ボールねじ軸に対する相対回転を可能に配置された、複数個のボールナットと、
前記ボールナットを前記ハウジングに対し回転自在に支持する軸受装置と、
前記内径側ボールねじ溝と前記外径側ボールねじ溝との間に転動自在に配置された複数個のボールと、
複数個の電動モータと、
前記電動モータの出力トルクを増大させてから前記ボールナットに付与する、前記電動モータと同数の減速機と、
を備える、転舵装置。
【請求項2】
前記ボールナットを、前記電動モータと同数備える、請求項1に記載の転舵装置。
【請求項3】
前記ボールナットと前記軸受装置と前記電動モータと前記減速機とを、それぞれ1対ずつ備える、請求項2に記載の転舵装置。
【請求項4】
前記ボールナットと前記軸受装置と前記電動モータと前記減速機とが、前記ハウジングの幅方向中央位置を挟んだ両側部分に、それぞれ1個ずつ配置されており、
前記ボールナットと前記軸受装置と前記電動モータと前記減速機とのうち、前記ボールナットが、前記ハウジングの幅方向中央位置に最も近い側に配置されている、請求項3に記載の転舵装置。
【請求項5】
前記ボールナットが、幅方向中央位置を挟んで離隔した状態で、前記ハウジングを介して隣接して配置されている、請求項4に記載の転舵装置。
【請求項6】
前記減速機がウォーム減速機である、請求項1〜5のうちの何れかに記載の転舵装置。
【請求項7】
前記ハウジングが、複数のハウジング素子を組み合わせてなる、請求項1〜6のうちの何れかに記載の転舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置に組み込まれる、転舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の懸架装置(サスペンション装置)には、左右の車輪を別々のサスペンションにより独立して支持する独立懸架式のものと、左右の車輪を1本の車軸で連結し、この車軸をサスペンションで支持する車軸懸架式(リジットアクスル式)のものとがある。このうち、車軸懸架式の懸架装置は、構造が単純で、かつ、耐久性が高いため、トラックなどの大型車両で採用されている。
【0003】
トラックなどの大型車両では、エンジンなどの動力源の上に運転席(キャブ)が配置されたキャブオーバ型の構造が採用される。このようなキャブオーバ型の車両に搭載されるステアリング装置では、運転者がステアリングホイールを操作する(回転させる)と、このステアリングホイールの回転は、ステアリングシャフトにより、ステアリングギヤボックスの入力軸に伝達される。この入力軸の回転は、ステアリングギヤボックスによりピットマンアームの揺動運動(首振り運動)に変換される。ピットマンアームは、ドラッグリンクおよびナックルアームを介して、1対の操舵輪(通常は前輪)のうちの一方の操舵輪(たとえば右前輪)に接続され、かつ、一方の操舵輪は、タイロッドおよびタイロッドアームを介して他方の操舵輪(たとえば左前輪)に接続されている。したがって、ステアリングホイールの回転に伴ってピットマンアームが揺動すると、ドラッグリンクが前後方向に押し引きされて、ナックルアームが揺動し、一方の操舵輪に舵角が付与されると同時に、タイロッドが幅方向に押し引きされ、タイロッドアームが揺動し、他方の操舵輪に舵角が付与される。
【0004】
また、ステアリング装置には、運転者がステアリングホイールを操作するのに要する力を軽減するためのパワーステアリング装置が組み込まれる。パワーステアリング装置には、補助動力源として電動モータを利用する電動式のものと、油圧を利用する油圧式のものとがある。トラックなどの大型車両では、大きな補助トルクを得られる油圧式のパワーステアリング装置が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−319898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、運転者の負担を軽減するため、追従走行や隊列走行を含む自動運転技術の研究が進められている。車両が自動運転モードで走行しているときは、車両の周囲の状況や移動距離、移動方向などを各種センサにより取得し、これらのセンサからの情報に基づいて適切な舵角を求め、アクチュエータにより操舵輪に舵角を付与する。
【0007】
トラックなどの大型車両において、自動運転を実現するために、パワーステアリング装置の補助動力源である油圧アクチュエータを、操舵輪に舵角を付与するアクチュエータとして使用することが考えられる。しかしながら、実際には、ステアリング装置を構成する各部材同士の接続部に存在するガタや遊び(不感帯)、油圧アクチュエータの不感帯などの影響により、舵角の細やかな調節が難しいといった問題が生じる。また、パワーステアリング装置の補助動力源を使用して、自動運転を実現すると、車両が自動運転モードで走行中に、舵角の調節に伴いステアリングホイールが回転し、車両の搭乗者に違和感を与える可能性がある。
【0008】
そこで、自動運転モードを備える車両では、ステアリング装置として、電動モータを駆動源として操舵輪に舵角を付与する、ステアバイワイヤ方式のものを使用することが好ましい。ステアバイワイヤ方式のステアリング装置は、ステアリングホイールなどの操縦桿を有する操舵装置と、電動モータを動力源として操舵輪に舵角を付与する転舵装置とを電気的に接続してなる。
【0009】
特開2005−319898号公報(特許文献1)には、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置を構成する転舵装置として使用可能な構造が記載されている。特開2005−319898号公報に記載の転舵装置は、ボールねじ装置を利用したもので、ボールねじ軸(ラック)を、ダイレクトドライブ方式の電動モータにより回転させ、該ボールねじ軸を直動運動させることにより、操舵輪に舵角を付与する。特開2005−319898号公報に記載の転舵装置は、1個の電動モータを駆動源としているため、トラックなどの大型車両に組み込んだ場合に、電動モータが出力可能なトルク範囲のうち、比較的出力トルクが低く、かつ、効率の良い領域を使用できなかったり、転舵力が不足して、たとえば、車両の停止中に舵角を付与(据え切り)することが難しくなったりする可能性がある。大型車両に適用した場合であっても、効率の良い領域で使用しつつ、十分な転舵力を得るためには、電動モータとして出力(定格トルク)が大きく、かつ、大型なものを使用する必要がある。しかしながら、定格トルクが大きくかつ大型の電動モータを使用すると、該電動モータの設置位置が限定されて、設計の自由度が低下したり、コストを低減しにくくなったりする可能性がある。また、特開2005−319898号公報に記載の転舵装置は、電動モータを1個しか備えていないため、該電動モータへの電力供給が不能になった場合、車両の操舵が行えなくなる。
【0010】
本発明は、上述のような事情に鑑みて、電動モータを効率の良い領域で使用しつつ、十分な転舵力を得られ、かつ、フェールセーフを確保することができる、転舵装置の構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の転舵装置は、
ハウジングと、
外周面に内径側ボールねじ溝を有し、前記ハウジングの内側に、軸方向に関する変位を可能に、かつ、回転を不能に支持されたボールねじ軸と、
内周面に外径側ボールねじ溝を有し、かつ、前記ボールねじ軸の周囲に該ボールねじ軸に対する相対回転を可能に配置された、複数個のボールナットと、
前記ボールナットを前記ハウジングに対し回転自在に支持する軸受装置と、
前記内径側ボールねじ溝と前記外径側ボールねじ溝との間に転動自在に配置された複数個のボールと、
複数個の電動モータと、
前記電動モータの出力トルクを増大させてから前記ボールナットに付与する、前記電動モータと同数の減速機と、
を備える。
【0012】
本発明の転舵装置は、前記ボールナットを、前記電動モータと同数備えることができる。
【0013】
本発明の転舵装置は、前記ボールナットと前記軸受装置と前記電動モータと前記減速機とを、それぞれ1対ずつ備えることができる。この場合、前記ボールナットと前記軸受装置と前記電動モータと前記減速機とを、前記ハウジングの幅方向中央位置を挟んだ両側部分に、それぞれ1個ずつ配置し、かつ、前記ボールナットと前記軸受装置と前記電動モータと前記減速機とのうち、前記ボールナットを、前記ハウジングの幅方向中央位置に最も近い側に配置することが好ましい。さらに、前記ボールナットを、幅方向中央位置を挟んで離隔した状態で、前記ハウジングを介して隣接して配置することができる。
【0014】
本発明の転舵装置では、前記減速機をウォーム減速機とすることができる。
【0015】
本発明の転舵装置では、前記ハウジングを、複数のハウジング素子を組み合わせてなるものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の転舵装置によれば、電動モータを効率の良い領域で使用しつつ、十分な転舵力を得られ、かつ、フェールセーフを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態の1例にかかる転舵装置を、車体の下方に支持固定した様子を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の1例にかかる転舵装置を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の1例にかかる転舵装置を示す平面図である。
図4図4は、図3のA−A断面図である。
図5図5は、図3のB−B断面図である。
図6図6は、図4のC部拡大図である。
図7図7は、本発明の実施の形態の1例にかかる転舵装置の構成部材の一部を取り出して示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態の1例について、図1図7を用いて説明する。本例の転舵装置1は、ハウジング2と、ボールねじ軸3と、1対のボールナット4a、4bと、1対の軸受装置5a、5bと、複数個のボール6と、1対の電動モータ7a、7bと、1対の減速機8a、8bとを備える。
【0019】
ハウジング2は、炭素鋼などの鉄系合金により構成される。ただし、ハウジング2を、アルミニウム合金などの軽合金または合成樹脂などにより構成することもできる。本例では、ハウジング2は、幅方向両側に配置された1対の小径筒部9a、9bと、該小径筒部9a、9bのそれぞれの幅方向内側(幅方向中央側)に隣接する部分に配置された1対のアクチュエータ収容部10a、10bと、該1対のアクチュエータ収容部10a、10bの幅方向内側の端部同士を接続する連結筒部11とを備える。
【0020】
なお、幅方向とは、特に断らない限り、転舵装置1を車体に取り付けた状態での、幅方向(図3図4および図6の左右方向、図5の表裏方向)をいう。また、上下方向および前後方向とは、特に断らない限り、転舵装置1を車体に取り付けた状態での、上下方向(図3の表裏方向、図4図6の上下方向)および前後方向(図3の上下方向、図4および図6の表裏方向、図5の左右方向)をいう。
【0021】
小径筒部9a、9bのそれぞれは、ボールねじ軸3の軸方向(幅方向)両側部分を、軸方向変位を可能に、かつ、回転を不能に支持する。このために、本例の小径筒部9a、9bのそれぞれは、断面非円形の内周面を有する。具体的には、小径筒部9a、9bのそれぞれの内周面は、前後方向両側に配置された1対の平坦面部12と、該平坦面部12の上下方向両側縁同士をそれぞれ接続する部分円筒状の1対の凹曲面部13とを備える。小径筒部9a、9bのそれぞれは、凹曲面部13の幅方向内側の端部に径方向内方に突出したストッパ凸部14を有する。ストッパ凸部14は、幅方向外側の端面に、幅方向外側を向いた、ハウジング側ストッパ面15を有する。
【0022】
アクチュエータ収容部10a、10bのそれぞれは、大径筒部16と、ナット収容部17と、ウォーム収容部18とを備える。
【0023】
大径筒部16は、小径筒部9a、9bの幅方向内側に隣接して配置され、かつ、内径寸法および外径寸法が、小径筒部9a、9bの内径寸法および外径寸法よりも大きくなっている。
【0024】
ナット収容部17は、大径筒部16の幅方向内側に隣接して配置されている。本例では、ナット収容部17は、幅方向内側に向かうほど外径寸法が小さくなる円すい台状の外周面を有し、かつ、内径寸法が、大径筒部16の内径寸法よりも小さくなっている。
【0025】
ウォーム収容部18は、大径筒部16の中心軸に対しねじれの位置に存在する中心軸を有し、かつ、軸方向中間部が大径筒部16内に開口している。本例では、ウォーム収容部18は、大径筒部16の上側に配置されている。すなわち、ウォーム収容部18の軸方向中間部の下側部分が、大径筒部16の上側部分に開口している。
【0026】
連結筒部11は、幅方向中央位置から幅方向両側に向かうほど外径寸法が大きくなり、かつ、母線形状が円弧形の外周面と、円筒面状の内周面とを有する。
【0027】
本例では、ハウジング2は、上下方向に分割された1対のハウジング素子19a、19bを、複数本のボルト20により結合固定してなる。
【0028】
ボールねじ軸3は、軸方向中間部外周面に、断面形状が円弧形の内径側ボールねじ溝21を有する。なお、図4および図7では、内径側ボールねじ溝21、後述するボールナット4a、4bの外径側ボールねじ溝35およびボール6を省略している。ボールねじ軸3は、ハウジング2の内側に、自身の中心軸を幅方向に向けた状態で、軸方向(幅方向)に関する変位(摺動)を可能に、かつ、回転を不能に支持されている。すなわち、本例では、車体の幅方向とボールねじ軸3の軸方向とが一致する。本例のボールねじ軸3は、大径部22と、該大径部22の幅方向両側に配置された1対の小径部23a、23bとを備える。内径側ボールねじ溝21は、大径部22の軸方向中間部にらせん状に形成されている。
【0029】
1対の小径部23a、23bのそれぞれは、断面非円形の外周面を有する。具体的には、小径部23a、23bのそれぞれの外周面は、前後方向両側に配置された1対の平坦面部と、該平坦面部の上下方向両側縁同士をそれぞれ接続する部分円筒状の1対の凸曲面部とを備える。1対の小径部23a、23bのそれぞれは、幅方向外側の端面に開口するねじ孔24を有する。
【0030】
本例では、ボールねじ軸3は、1対のガイドスリーブ25a、25bを介して、ハウジング2の内側に、軸方向に関する変位を可能に、かつ、回転を不能に支持されている。
【0031】
ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれは、合成樹脂、または、銅系合金などの自己潤滑性を有する非鉄系金属もしくは含油メタルなど、ハウジング2に対する摩擦係数が小さな材料製である。
【0032】
ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれは、ボールねじ軸3の小径部23a、23bに、がたつきなく、かつ、回転不能に外嵌可能な内周面を有する。具体的には、本例のガイドスリーブ25a、25bのそれぞれの内周面は、前後方向両側に配置された1対の平坦面部と、該平坦面部の上下方向両側縁同士をそれぞれ接続する部分円筒状の1対の凹曲面部とを備える。
【0033】
また、ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれは、ハウジング2の小径筒部9a、9bの内側に、がたつきなく、かつ、軸方向に関する変位(摺動)を可能に配置(内嵌)可能な外周面を有する。具体的には、本例のガイドスリーブ25a、25bのそれぞれの外周面は、前後方向両側に配置された1対の平坦面部26と、該平坦面部26の上下方向両側縁同士をそれぞれ接続する部分円筒状の1対の凸曲面部27とを備える。さらに、ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれは、凸曲面部27の幅方向内側部分に、幅方向内側の端部に開口し、かつ、径方向内方に凹んだストッパ凹部28を有する。ストッパ凹部28は、幅方向外側の端面に、幅方向内側を向いた軸側ストッパ面29を有する。
【0034】
ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれは、内周面を、ボールねじ軸3の小径部23a、23bの外周面に非円形係合(嵌合)させることにより、小径部23a、23bの周囲にがたつきなく、かつ、該小径部23a、23bに対する相対回転を不能に外嵌されている。また、ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれは、平坦面部26を、小径筒部9a、9bの平坦面部12に摺接ないし近接対向させ、かつ、凸曲面部27を、小径筒部9a、9bの凹曲面部13に摺接ないし近接対向させることにより、ハウジング2の小径筒部9a、9bの内側に、がたつきなく、かつ、軸方向に関する変位(摺動)を可能に配置(内嵌)されている。これにより、ボールねじ軸3は、ハウジング2の内側に、軸方向(幅方向)に関する変位(摺動)を可能に、かつ、回転を不能に支持されている。要するに、ガイドスリーブ25a、25bは、ボールねじ軸3がハウジング2に対して相対回転するのを防止する回転止め機能を有する。
【0035】
本例では、ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれは、前後方向に分割された1対のスリーブ素子46を組み合わせてなる。本例では、ガイドスリーブ25a、25bを、ハウジング2の小径筒部9a、9bの内側に配置することで、ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれを構成する1対のスリーブ素子46が互いに分離することを防止している。また、後述するように、ボールねじ軸3のねじ孔24に球面継手30の支持軸部32を螺合した状態で、該球面継手30の幅方向内側面により、ガイドスリーブ25a、25bの幅方向外側の端面を押え付けている。すなわち、ボールねじ軸3の大径部22の外周面と小径部23a、23bの外周面とを接続する段差部と、球面継手30との間で、ガイドスリーブ25a、25bを軸方向(幅方向)に挟持して、該ガイドスリーブ25a、25bが軸方向に変位する(小径部23a、23bから脱落する)のを防止している。
【0036】
なお、ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれを構成する1対のスリーブ素子46と、ボールねじ軸3の小径部23a、23bとの間には、1乃至複数枚のシム板を挟持することもできる。
【0037】
ボールねじ軸3を、1対のガイドスリーブ25a、25bを介して、ハウジング2の内側に支持した状態では、ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれの軸側ストッパ面29と、小径筒部9a、9bのそれぞれのハウジング側ストッパ面15とが幅方向(軸方向)に対向している。なお、ハウジング2に対するボールねじ軸3の幅方向(軸方向)位置にかかわらず、幅方向片側(図3および図4の左側)のガイドスリーブ25aの軸側ストッパ面29と、幅方向片側の小径筒部9aのハウジング側ストッパ面15との間部分、および、幅方向他側(図3および図4の右側)のガイドスリーブ25bの軸側ストッパ面29と、幅方向他側の小径筒部9bのハウジング側ストッパ面15との間部分のうち、少なくとも一方の間部分には、幅方向隙間が存在する。
【0038】
ボールねじ軸3の幅方向両側の端部には、それぞれ球面継手30を介して、1対のタイロッド31が接続されている。すなわち、球面継手30のそれぞれの支持軸部32の外周面に備えられた雄ねじ部を、ボールねじ軸3のねじ孔24に螺合し、かつ、球面継手30のそれぞれの内周面に備えられた部分凹球面状の係合凹部33に、タイロッド31の基端部(幅方向内側の端部)に備えられた部分凸球面状の球面係合部34を球面係合させている。
【0039】
1対のボールナット4a、4bのそれぞれは、図6に示すように、内周面に、断面形状が円弧形でらせん状に形成された外径側ボールねじ溝35を有し、かつ、ボールねじ軸3の周囲に該ボールねじ軸3に対する相対回転を可能に、軸方向に関する変位を不能に支持されている。本例では、1対のボールナット4a、4bのそれぞれの外径側ボールねじ溝35は、互いに同じ仕様(リードおよびリード角)を有する。また、本例では、ボールナット4a、4bのそれぞれは、スリーブ36および軸受装置5a、5bを用いて、ハウジング2のナット収容部17の内側に回転自在に支持されている。具体的には、ボールナット4a、4bのそれぞれの幅方向外側の端部に、スリーブ36の幅方向内側の端部が、トルクの伝達を可能に結合固定され、かつ、該スリーブ36の幅方向中間部外周面と、ハウジング2の大径筒部19の幅方向内側部分の内周面との間に軸受装置5a、5bが配置されている。軸受装置5a、5bのそれぞれは、ラジアル荷重およびスラスト荷重を支承可能な構造を有する。具体的には、たとえば、軸受装置5a、5bのそれぞれは、スリーブ36に外嵌された、背面組み合わせ型(DB型)の接触角を有する複列アンギュラ玉軸受や複列円すいころ軸受などにより構成することができる。また、スリーブ36は、ボールナット4a、4bと一体に構成することもできる。
【0040】
1対のボールナット4a、4bのそれぞれは、後述するボール6を循環させるための図示しない循環機構をさらに有する。循環機構は、チューブ式、デフレクタ式、エンドキャップ式またはこま式の何れの構造のものを採用しても良いが、ボールねじ軸3を十分に大きな力で幅方向に変位させるべく、ボール6の玉径を十分に確保する面からは、チューブ式のものを採用することが好ましい。
【0041】
1対の電動モータ7a、7bのそれぞれは、減速機8a、8bを介して、ボールナット4a、4bを回転駆動する。本例では、1対の電動モータ7a、7bは、互いに同じ定格出力を有し、かつ、減速機8a、8bは、互いに同じ減速比を有する。特に本例では、減速機8a、8bのそれぞれを、ウォーム減速機としている。すなわち、減速機8a、8bのそれぞれは、スリーブ36の幅方向外側の端部にトルクの伝達を可能に外嵌されたウォームホイール37と、該ウォームホイール37と噛合し、かつ、ハウジング2のウォーム収容部18の内側に回転自在に支持されたウォーム38とからなる。電動モータ7a、7bのそれぞれは、出力軸を、ウォーム38の基端部に接続している。なお、本例では、ウォーム減速機である減速機8a、8bとして、セルフロック機能を有さず、逆効率の高いものを使用している。
【0042】
なお、減速機8a、8bは、電動モータ7a、7bの出力トルクを増大させてボールナット4a、4bに付与することができれば、ウォーム減速機に限らない。具体的には、たとえば、減速機8a、8bとして、平行軸歯車式や摩擦ローラ式、ベルト式などの減速機を使用することもできる。なお、1対の電動モータ7a、7bとして、互いに異なる定格出力を有するものを使用したり、減速機8a、8bとして、互いに異なる種類(構造)のものや異なる減速比を有するものを使用したりすることもできる。ただし、電動モータ7a、7bの制御を容易にする面からは、1対の電動モータ7a、7bとして、互いに同じ定格出力を有するものを使用し、かつ、減速機8a、8bとして、互いに同じ種類であって、同じ減速比を有するものを使用することが好ましい。
【0043】
本例の転舵装置1は、たとえば、車軸懸架式の懸架装置を備えるトラックなどの大型車両の車体の下方に支持される。具体的には、転舵装置1は、図1に示すように、ハウジング2の取付板部39に備えられた通孔を挿通したボルト40を、車体フレーム41に1対のリーフスプリング42を介して支持された車軸43に形成されたねじ孔に螺合し、さらに締め付けることで、車体フレーム41に対し支持固定されている。1対のタイロッド31のそれぞれの先端部は、ナックル44のアーム45の先端部に揺動可能に接続されている。さらに、ナックル44のそれぞれには、図示しないハブユニット軸受を介して操舵輪が回転自在に支持されている。
【0044】
転舵装置1は、ステアリングホイールなどの操縦桿を有する操舵装置と、制御器(ECU)を介して電気的に組み合わされて、ステアバイワイヤ方式のステアリング装置を構成する。制御器は、車両が通常運転モードで走行しているときには、センサにより取得したステアリングホイールの操作量、さらに必要に応じて車両の走行速度などに基づいて、操舵輪に付与する舵角を算出する。これに対し、車両が自動運転モードで走行しているときには、制御器は、各種センサにより取得した、車両の周囲の状況や移動距離、移動方向などに基づいて、操舵輪に付与する舵角を算出する。
【0045】
通常運転モードと自動運転モードとのいずれのモードで走行している場合でも、制御器は、算出した舵角に応じて、転舵装置1の電動モータ7a、7bに同時に通電し、ウォーム38を回転駆動させる。ウォーム38を回転させることで、該ウォーム38と噛合するウォームホイール37を回転させ、スリーブ36を介してウォームホイール37に結合されたボールナット4a、4bを、同じ方向に同じ速度で回転させる。ボールナット4a、4bの回転に伴い、ボール6が、内径側ボールねじ溝21と外径側ボールねじ溝35との間を移動し、かつ、ボールねじ軸3が幅方向(軸方向)に変位する。ボールねじ軸3の幅方向の変位に伴い、タイロッド31が押し引きされると、ナックル44が揺動変位されて、操舵輪に所望の舵角が付与される。
【0046】
本例の転舵装置1では、ボールねじ軸3を幅方向片側に変位させることで、操舵輪を、所定方向に転舵限界まで転舵(いわゆる端当て)させると、ボールねじ軸3のうち、幅方向他側の小径部23bに外嵌されたガイドスリーブ25bの軸側ストッパ面29が、ハウジング2のうち、幅方向他側の小径筒部9bのハウジング側ストッパ面15に当接して、ボールねじ軸3がそれ以上幅方向片側に変位することが阻止される。換言すれば、幅方向他側のガイドスリーブ25bの軸側ストッパ面29と、幅方向他側の小径筒部9bのハウジング側ストッパ面15とを当接させることにより、所定方向の転舵限界を規定している。
【0047】
一方、ボールねじ軸3を幅方向他側に変位させることで、操舵輪を、前記所定方向と逆方向に転舵限界まで転舵させると、ボールねじ軸3のうち、幅方向片側の小径部23aに外嵌されたガイドスリーブ25aの軸側ストッパ面29が、ハウジング2のうち、幅方向片側の小径筒部9aのハウジング側ストッパ面15に当接して、ボールねじ軸3がそれ以上幅方向他側に変位することが阻止される。換言すれば、幅方向片側のガイドスリーブ25aの軸側ストッパ面29と、幅方向片側の小径筒部9aのハウジング側ストッパ面15とを当接させることにより、所定方向と逆方向の転舵限界を規定している。
【0048】
要するに、ガイドスリーブ25a、25bは、ボールねじ軸3が幅方向に過度に変位するのを防止するストッパ機能を有する。このようなストッパ機能により、ボール6が、ボールねじ軸3の内径側ボールねじ溝21の端部に押し付けられたり、該内径側ボールねじ溝21の端部から乗り上げたりするのを防止し、かつ、ガイドスリーブ25a、25bの幅方向内側の端部が、ボールナット4a、4bの幅方向外側の端部に衝突するのを防止している。
【0049】
なお、操舵装置は、操縦桿の操舵量に応じた反力を該操縦桿に付与する反力付与モータをさらに有する。したがって、車両が通常運転モードで走行しているときに、運転者が操縦桿を操作すると、操縦桿の操作量などに応じた操作反力が該操縦桿に付与される。一方、車両が自動運転モードで走行しているときは、転舵装置1により、操舵輪に舵角を付与している状態でも、操縦桿は回転しない。
【0050】
上述のように、本例の転舵装置1は、1対の電動モータ7a、7bにより、減速機8a、8bを介して、ボールナット4a、4bを同時に回転駆動することで、ボールねじ軸3を幅方向に変位させることにより、操舵輪に舵角を付与するように構成されている。したがって、本例の転舵装置1によれば、電動モータ7a、7bとして、徒に出力(定格トルク)が大きなものを使用する必要がなく、該電動モータ7a、7bのそれぞれを、出力可能なトルク範囲のうち比較的出力トルクが低く、かつ、効率の良い領域で使用しても、十分な転舵力を得ることができる。
【0051】
また、本例の転舵装置1では、電動モータ7a、7bを1対備えるため、該1対の電動モータ7a、7bのうちのいずれか一方の電動モータ7a(または7b)への通電が不能になった場合でも、他方の電動モータ7b(または7a)のみを駆動することで、ボールねじ軸3を幅方向に変位させ、操舵輪に舵角を付与することができる。なお、この場合には、他方の電動モータ7b(または7a)のみを駆動することで、ボールねじ軸3を幅方向に変位すると、一方のボールナット4a(または4b)の外径側ボールねじ溝35とボールねじ軸3の内径側ボールねじ溝21との間でボール6が移動する。これにより、一方のボールナット4a(または4b)が回転すると、ウォームホイール37が回転し、さらに該ウォームホイール37と噛合するウォーム38が回転し、一方の電動モータ7a(または7b)の出力軸が回転する。このようにして、ボールねじ軸3の幅方向変位が許容される。すなわち、本例の転舵装置1によれば、フェールセーフを確保することができる。
【0052】
なお、1個の電動モータ7b(または7a)のみで転舵を行う場合、1対の電動モータ7a、7bにより転舵を行う場合よりも、電動モータ7b(または7a)を、出力可能な範囲のうち、比較的出力トルクが高い領域であって、効率が低い領域で使用する必要がある。また、1個の電動モータ7b(または7a)のみで転舵を行う場合、得られる転舵力も小さく、たとえば、車両の停止中に舵角を付与(据え切り)するような動作は難しくなる可能性がある。ただし、この場合でも、車両をわずかでも動かして、操舵輪を回転させれば、電動モータ7b(または7a)にかかる負荷を小さくすることができ、操舵輪に舵角を付与することができる。
【0053】
本例の転舵装置1では、1対の電動モータ7a、7bのそれぞれが、別々のボールナット4a、4bを回転駆動することで、ボールねじ軸3を幅方向に変位させるように構成されている。したがって、電動モータ7a、7bとして、出力が比較的小さい小型のものを使用できることに加え、ボールナット4a、4bのそれぞれの径方向寸法を、1個のボールナットを回転駆動することでボールねじ軸3を幅方向に変位させる構造と比較して小さく抑えることができる。要するに、ボールナット4a、4bと、軸受装置5a、5bと、減速機8a、8bと、電動モータ7a、7bとをそれぞれ1個ずつ組み合わせてなる電動アクチュエータ47a、47bの小型化を図ることができ、該電動アクチュエータ47a、47bの幅方向に関する設置位置の自由度を高くすることができる。
【0054】
本例の転舵装置1では、1対の電動アクチュエータ47a、47bは、幅方向中央付近、具体的には、ハウジング2の幅方向中央位置を挟んだ両側部分に配置されている。特に本例では、電動アクチュエータ47a、47bのそれぞれを構成する各部材のうち、ボールナット4a、4bが、幅方向に関して最も中央側に配置されている。換言すれば、ボールナット4a、4bが、幅方向中央付近で互いに近接して配置されている。このため、ボールナット4a、4bを回転駆動することにより、該ボールナット4a、4bのそれぞれにボール6を介して螺合されたボールねじ軸3を幅方向に変位させる際に、該ボールねじ軸3に無理な力(ねじれ方向の力)が加わるのを、1対のボールナット4a、4bが幅方向に関して互いに大きく離隔して配置された構造(たとえば、ダブルピニオン式パワーステアリング装置において、ステアリングホイールからの操舵力が入力される部分と、電動モータによるアシスト力が付与される部分とのように、ラック軸の幅方向両側の端部付近に力が付与される構造)と比較して抑えることができる。
【0055】
また、ボールナット4a、4bを、幅方向中央付近で互いに近接して配置することで、ボールねじ軸3の大径部22の外周面に備えられた内径側ボールねじ溝21の幅方向に関する長さ寸法(幅方向に関する形成範囲)を短くすることもできる。このため、内径側ボールねじ溝21の加工コストを低く抑えることができ、かつ、ボールねじ軸3の幅方向両側部分に、小径部23a、23bを備えさせることができ、該小径部23a、23bのそれぞれの周囲に、ガイドスリーブ25a、25bを配置することができる。ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれは、回転止め機能およびストッパ機能に加え、後述するように、ボールねじ軸3のラジアル方向に加わる転舵反力をハウジング2に伝達し、該ハウジング2を介して車体により支承させる機能を有する。
【0056】
なお、本例では、ボールナット4a、4bを、幅方向中央付近で(幅方向中央位置を挟んで)離隔した状態で、ハウジング2を介して隣接して配置されている。これにより、ハウジング2のうち、ボールナット4a、4bを含む電動アクチュエータ47a、47bを収容するアクチュエータ収容部10a、10bが、車体の下方で、車軸43の周辺に存在する部材(たとえばオイルパン48など)と干渉するのを防止している。ただし、ボールねじ軸3に無理な力が加わるのを防止する面からは、1対のボールナット4a、4bをできる限り近くに、最も好ましくは、ハウジング2を介することなく、隣接して配置することが好ましい。要するに、1対のボールナット4a、4bは、車軸43の周辺に存在する部材に干渉しない範囲において、できる限り近接して配置される。
【0057】
本例では、電動アクチュエータ47a、47bのそれぞれを構成する各部材を、幅方向中央側から外側に向けて、ボールナット4a、4b、軸受装置5a、5b、減速機8a、8bおよび電動モータ7a、7bの順で配置している。ただし、ボールナット4a、4bを、幅方向に関して最も中央側に配置すれば、他の部材の配置については特に限定されない。たとえば、軸受装置5a、5bを、減速機8a、8bのウォームホイール37よりも幅方向外側に配置することもできる。また、減速機8a、8bのウォームホイール37を、ボールナット4a、4bの周囲に該ボールナット4a、4bと一体的に回転するように配置することもできる。
【0058】
また、本例では、ボールねじ軸3の幅方向両側の端部に、球面継手30を介して、タイロッド31が接続され、かつ、タイロッド31の先端部に、ナックル44のアーム45の先端部が揺動可能に接続されている。したがって、本例の転舵装置1を駆動して、操舵輪に舵角を付与する(転舵を行う)と、アーム45の角度によっては、転舵に伴う反力が、ボールねじ軸3に対してラジアル方向(前後方向)に加わることがある。
【0059】
ここで、本例では、ボールねじ軸3を、1対のガイドスリーブ25a、25bを介して、ハウジング2の内側に、幅方向に関する変位を可能に、かつ、回転を不能に支持している。具体的には、ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれを、小径部23a、23bの周囲にがたつきなく、かつ、該小径部23a、23bに対する相対回転を不能に外嵌し、かつ、ハウジング2の小径筒部9a、9bの内側に、がたつきなく、かつ、軸方向に関する変位(摺動)を可能に配置(内嵌)している。したがって、転舵に伴う反力が、ボールねじ軸3にラジアル方向に加わると、ガイドスリーブ25a、25bの平坦面部26が小径筒部9a、9bの平坦面部12に押し付けられる。要するに、転舵に伴いボールねじ軸3にラジアル方向に加わる反力は、ガイドスリーブ25a、25bおよびハウジング2を介して、車体に伝達され、該車体により支承される。このため、本例の転舵装置1によれば、転舵に伴う反力が、ボールねじ軸3に対してラジアル方向に加わった場合でも、ボール6の転動面が、ボールねじ軸3の内径側ボールねじ溝21およびボールナット4a、4bの外径側ボールねじ溝35に強く押し付けられるのを防止することができる。この結果、ボールねじ軸3とボールナット4a、4bとボール6とからなるボールねじ機構の寿命が低下したり、異音や振動が発生したりするのを防止することができる。
【0060】
本例では、1対のガイドスリーブ25a、25bのそれぞれは、1対のスリーブ素子46を組み合わせることにより構成されている。このため、スリーブ素子46と、ボールねじ軸3の小径部23a、23bとの間に、1乃至複数枚のシム板を挟持することで、ガイドスリーブ25a、25bの外周面と、ハウジング2の小径筒部9a、9bの内周面との間の隙間を調整することができる。すなわち、ハウジング2の小径筒部9a、9bや、ボールねじ軸3の小径部23a、23b、ガイドスリーブ25a、25bの形状精度を過度に高くすることなく、小径筒部9a、9bの内周面に対するガイドスリーブ25a、25bの外周面のがたつきを十分に抑えることができるため、コストの低減を図れる。
【0061】
ただし、ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれを、全体を一体に、すなわち筒状に構成しても良い。あるいは、ガイドスリーブ25a、25bのそれぞれを、3個以上のスリーブ素子を組み合わせることにより構成することもできる。
【0062】
本例では、転舵装置1を、車軸懸架式のうち、リーフスプリング式の懸架装置を備える車両のステアバイワイヤ式ステアリング装置に適用した例について説明した。ただし、本発明の転舵装置は、リーフスプリング式に限らず、コイルスプリング式の懸架装置を備える車両のステアバイワイヤ式ステアリング装置に適用することもできる。あるいは、本発明の転舵装置は、独立懸架式の懸架装置を備える車両のステアバイワイヤ式ステアリング装置に適用することもできる。また、本発明の転舵装置は、トラックなどの大型車両のステアリング装置に限らず、乗用車用のステアリング装置に組み込むこともできる。
【0063】
本例の転舵装置1は、ボールナット4a、4bおよび軸受装置5a、5bと、電動モータ7a、7bおよび減速機8a、8bとをそれぞれ1対ずつ備える。ただし、本発明の転舵装置は、ボールナットおよび軸受装置と、電動モータおよび減速機とをそれぞれ3個以上ずつ備えることもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 転舵装置
2 ハウジング
3 ボールねじ軸
4a、4b ボールナット
5a、5b 軸受装置
6 ボール
7a、7b 電動モータ
8a、8b 減速機
9a、9b 小径筒部
10a、10b アクチュエータ収容部
11 連結筒部
12 平坦面部
13 凹曲面部
14 ストッパ凸部
15 ハウジング側ストッパ面
16 大径筒部
17 ナット収容部
18 ウォーム収容部
19a、19b ハウジング素子
20 ボルト
21 内径側ボールねじ溝
22 大径部
23a、23b 小径部
24 ねじ孔
25a、25b ガイドスリーブ
26 平坦面部
27 凸曲面部
28 ストッパ凹部
29 軸側ストッパ面
30 球面継手
31 タイロッド
32 支持軸部
33 係合凹部
34 球面係合部
35 外径側ボールねじ溝
36 スリーブ
37 ウォームホイール
38 ウォーム
39 取付板部
40 ボルト
41 車体フレーム
42 リーフスプリング
43 車軸
44 ナックル
45 アーム
46 スリーブ素子
47a、47b 電動アクチュエータ
48 オイルパン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7