【解決手段】電動パワーステアリング装置100は、操舵トルクTに基づいてアシストベース電流値Iaを演算するアシストベース電流演算部120と、操舵角θに基づいて戻し電流値Ibを演算する戻し電流演算部130と、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibに基づき、制御電流値Idを演算する制御電流演算部180と、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibの少なくとも一方の電流値にゲインG1,G2を乗じるゲイン部121,132と、を備え、ゲイン部121,132は、操舵状態が切り込み状態のときの制御電流値Idと操舵状態が戻し状態のときの制御電流値Idとが異なるように、操舵状態が切り込み状態である場合、及び操舵状態が戻し状態である場合の少なくとも一方において、ゲインG1,G2を設定する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動パワーステアリング装置について説明する。
【0015】
図1は、電動パワーステアリング装置100の構成図である。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、運転者によって操舵されるステアリング部材としてのステアリングホイール1に連結され、運転者によるステアリングホイール1の操舵(以下、「ステアリング操舵」と称する。)に伴って回転する入力シャフト2と、車輪6を転舵するラック軸5と、ラック軸5に連係する出力シャフト3と、入力シャフト2と出力シャフト3を連結するトーションバー4と、を備える。入力シャフト2、出力シャフト3、及びトーションバー4によってステアリングシャフト7が構成される。
【0016】
出力シャフト3の下部には、ラック軸5に形成されたラックギヤ5aと噛み合うピニオンギヤ3aが形成される。ステアリングホイール1が操舵されると、ステアリングシャフト7が回転し、その回転がピニオンギヤ3a及びラックギヤ5aによってラック軸5の直線運動に変換され、ナックルアーム14を介して車輪6が転舵される。
【0017】
電動パワーステアリング装置100は、運転者によるステアリングホイール1の操舵を補助するための動力源である電動モータ10と、電動モータ10の回転を出力シャフト3に減速して伝達する減速機11と、運転者によるステアリング操舵に伴う入力シャフト2と出力シャフト3との相対回転によってトーションバー4に作用する操舵トルクTを検出するトルクセンサ12と、電動モータ10を制御するコントローラ30と、をさらに備える。
【0018】
電動モータ10には、電動モータ10の回転角度を取得するモータ回転角センサ10aが設けられる。モータ回転角センサ10aは、レゾルバによって構成される。
【0019】
減速機11は、電動モータ10の出力軸に連結されるウォームシャフト11aと、出力シャフト3に連結されウォームシャフト11aに噛み合うウォームホイール11bと、を有する。電動モータ10が出力するトルクは、ウォームシャフト11aからウォームホイール11bに伝達されて出力シャフト3に付与される。
【0020】
トルクセンサ12は、ステアリングホイール1から入力される操舵トルクTを検出するトルク検出部である。運転者によるステアリング操舵に伴って入力シャフト2に付与される操舵トルクTはトルクセンサ12によって検出され、トルクセンサ12はその操舵トルクTに対応する信号をコントローラ30に出力する。トルクセンサ12は、トーションバー4に付与される操舵トルクTを入力シャフト2と出力シャフト3の相対回転に基づいて検出する。
【0021】
トルクセンサ12は、入力シャフト2と出力シャフト3の相対回転がない場合には、操舵トルクTとして0[Nm]を出力する。また、トーションバー4が右側にねじれている場合には+(正)の符号の操舵トルクTを出力し、ステアリングホイール1が左側にねじれている場合には−(負)の符号の操舵トルクTを出力する。
【0022】
コントローラ30は、後述するように、トルクセンサ12からの検出結果に基づいて電動モータ10に対する制御電流値(目標電流値)Idを演算し、電動モータ10によって所定のトルクを発生させるように、電動モータ10の駆動を制御する。電動モータ10は、減速機11を介して、ステアリングシャフト7に回転トルクを付与する。このように、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングホイール1から入力シャフト2に入力される操舵トルクTをトルクセンサ12によって検出し、その検出結果に基づいてコントローラ30が電動モータ10を駆動することにより、運転者によるステアリングホイール1の操舵を補助する。
【0023】
入力シャフト2には、ステアリングホイール1の回転角度である操舵角θを検出する操舵角検出部としての操舵角センサ15が設けられる。入力シャフト2の回転角度とステアリングホイール1の操舵角θとは等しい。このため、操舵角センサ15にて入力シャフト2の回転角度を検出することによって、ステアリングホイール1の操舵角θが得られる。操舵角センサ15の検出結果はコントローラ30に出力される。
【0024】
操舵角センサ15は、図示しないが、例えば、入力シャフト2と一体に回転するセンターギアと、センターギアに噛み合う2つのアウターギアと、を備え、2つのアウターギアの回転に伴う磁束の変化に基づいて、センターギアの回転角度、すなわち入力シャフト2の回転角度を演算する。
【0025】
操舵角センサ15は、ステアリングホイール1が中立位置の場合には操舵角θとして0[°]を出力する。また、ステアリングホイール1が中立位置から右方向に操舵される場合には、ステアリングホイール1の回転に応じて+(正)の符号の操舵角θを出力する。一方、ステアリングホイール1が中立位置から左方向に操舵される場合には、ステアリングホイール1の回転に応じて−(負)の符号の操舵角θを出力する。
【0026】
コントローラ30には、自車両の走行速度(以下、車速と記す)を検出する車速検出部としての車速センサ16の検出結果が入力される。
【0027】
コントローラ30は、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶部及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ30は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。なお、動作回路としては、CPUに代えてまたはCPUとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0028】
コントローラ30のCPUは、電動モータ10の動作を制御し、コントローラ30のROMには、CPUの処理動作に必要な制御プログラムや設定値等が記憶され、コントローラ30のRAMには、トルクセンサ12、操舵角センサ15、車速センサ16等の各種センサが検出した情報が一時的に記憶される。
【0029】
図2〜
図6Bを参照して、コントローラ30による電動モータ10の制御について説明する。
図2は、電動パワーステアリング装置100のブロック図である。コントローラ30は、トルクセンサ12で検出された操舵トルクTを時間微分して、操舵トルクTの時間変化率Tv(以下、トルク変化率Tvとも記す)を演算する微分器111と、ステアリングホイール1の操舵状態を判定する操舵状態判定部112と、を備える。
【0030】
操舵状態判定部112は、トルクセンサ12で検出された操舵トルクTの符号と、微分器111で演算されたトルク変化率Tvの符号とが同一の場合、操舵状態が切り込み状態であると判定する。操舵状態判定部112は、トルクセンサ12で検出された操舵トルクTの符号と、微分器111で演算されたトルク変化率Tvの符号とが同一でない場合、操舵状態が戻し状態であると判定する。
【0031】
また、コントローラ30は、トルクセンサ12で検出された操舵トルクT及び車速センサ16で検出された車速vに基づいてアシストベース電流値Iaを演算するアシストベース電流演算部120と、操舵角センサ15で検出された操舵角θに基づいて戻し電流値Ibを演算する戻し電流演算部130と、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ib、その他の各種電流値に基づき、電動モータ10に対する制御電流値Idを演算する制御電流演算部180と、制御電流値Idに基づき、電動モータ10を制御するモータ制御部9と、を備える。モータ制御部9は、電動モータ10の検出電流値が制御電流値Idに一致するように、電動モータ10に供給する電流を制御することにより電動モータ10を制御する。その他の各種電流値としては、図示しないが、例えば、静止摩擦補償電流値、クーロン摩擦補償電流値、粘性摩擦補償電流値、慣性補償電流値等がある。
【0032】
さらに、コントローラ30は、アシストベース電流値Iaに第1ゲインとしての第1操舵ゲインG1を乗じることにより、アシストベース電流値Iaを補正する第1ゲイン部である第1操舵ゲイン部121と、戻し電流値Ibに車速ゲインGvを乗じることにより、戻し電流値Ibを補正する車速ゲイン部133と、車速ゲインGvにより補正された戻し電流値Ibに第2ゲインとしての第2操舵ゲインG2を乗じることにより、戻し電流値Ibを補正する第2ゲイン部である第2操舵ゲイン部132と、を有する。
【0033】
図3は、アシストベース電流値Iaを演算するためのアシストベース電流演算用マップ図である。アシストベース電流演算部120は、
図3に示すアシストベース電流演算用マップを参照して、トルクセンサ12から入力された操舵トルクTに対応するアシストベース電流値Iaを演算する。アシストベース電流演算用マップは、コントローラ30の記憶部にテーブル形式で記憶されている。本実施形態では、車速(v1,v2,・・・vn[km/h])に応じて複数のアシストベース電流演算用マップが、コントローラ30の記憶部に記憶されている。なお、
図3では、説明の便宜上、3つのアシストベース電流演算用マップについて示しているが、記憶部には3つ以上のマップを記憶させてもよい。
【0034】
図3に示すアシストベース電流演算用マップは、操舵トルクTとアシストベース電流値Iaとの関係を規定したマップであり、横軸が操舵トルクTであり、縦軸がアシストベース電流値Iaである。横軸の+(正)側はトーションバー4が右側にねじれている場合の操舵トルクTを示し、−(負)側はトーションバー4が左側にねじれている場合の操舵トルクTを示す。また、縦軸の+(正)側はステアリングホイール1が右回転する方向へアシストするアシストベース電流値Iaを示し、−(負)側はステアリングホイール1が左回転する方向へアシストするアシストベース電流値Iaを示す。
【0035】
アシストベース電流演算用マップの特性は、
図3からわかるように、トーションバー4が右側にねじれている場合には、アシストベース電流値Iaはステアリングホイール1が右回転する方向へアシストする値となり、トーションバー4が左側にねじれている場合には、アシストベース電流値Iaはステアリングホイール1が左回転する方向へアシストする値となる。このように、アシストベース電流値Iaは、トーションバー4のねじれ方向にステアリングホイール1をアシストする電流値である。
【0036】
図3に示すアシストベース電流演算用マップを詳しく説明する。アシストベース電流値Iaは、トルクセンサ12によって検出される操舵トルクTが正の値の場合には、正の値となり、操舵トルクTが負の値の場合には、負の値となる。操舵トルクTが0(ゼロ)近傍では、アシストベース電流値Iaが0(ゼロ)となる不感帯に設定される。この不感帯範囲外では、操舵トルクTの絶対値が大きくなるほど、アシストベース電流値Iaの絶対値も大きくなる。
【0037】
また、車速vに応じた複数のアシストベース電流演算用マップにより、アシストベース電流値Iaは、車速vが大きいほどその絶対値が小さくなる。これにより、低速走行時には大きな操舵補助力を発生させることができ、高速走行時には操舵補助力を小さくすることができる。
【0038】
アシストベース電流演算部120は、車速センサ16で検出された車速vに対応するマップを参照し、操舵トルクTに基づきアシストベース電流値Iaを演算する。なお、アシストベース電流演算部120は、検出された車速v(例えば、v1<v<v2)に対応するマップが存在しない場合には、検出された車速v(例えば、v1<v<v2)の前後の車速(v1,v2)に対応する2つのマップ(v1用マップ及びv2用マップ)を参照し、周知の補間演算によりアシストベース電流値Iaを演算する。
【0039】
図4は、戻し電流値Ibを演算するための戻し電流演算用マップ図である。
図2に示す戻し電流演算部130は、操舵角センサ15の検出結果に基づいて、ステアリングホイール1を中立位置へ戻す方向の戻し電流値Ibを演算する。具体的には、
図4に示す戻し電流演算用マップを参照して、操舵角センサ15から入力された操舵角θに対応する戻し電流値Ibを演算する。
【0040】
図4に示す戻し電流演算用マップは、操舵角θと戻し電流値Ibとの関係を規定したマップであり、横軸が操舵角θであり、縦軸が戻し電流値Ibである。横軸の+(正)側は中立位置から右切り側の操舵角θを示し、−(負)側は中立位置から左切り側の操舵角θを示す。また、縦軸の+(正)側はステアリングホイール1が右回転する方向へアシストする戻し電流値Ibを示し、−(負)側はステアリングホイール1が左回転する方向へアシストする戻し電流値Ibを示す。
【0041】
戻し電流演算用マップの特性は、
図4からわかるように、操舵角θが右切り側である場合には、戻し電流はステアリングホイール1が左回転する方向へアシストする値となり、操舵角θが左切り側である場合には、戻し電流値Ibはステアリングホイール1が右回転する方向へアシストする値となる。このように、戻し電流値Ibは、ステアリングホイール1を中立位置へ戻す方向の電流値である。
【0042】
図4に示す戻し電流演算用マップを詳しく説明する。ステアリングホイール1の中立位置近傍では、戻し電流値Ibが0(ゼロ)となる不感帯に設定される。操舵角θの絶対値が不感帯よりも大きくなると、戻し電流値Ibの絶対値は所定の傾きで大きくなる。この傾きを調整することによって、ステアリングホイール1が中立位置へ戻る際のドライバが感じる戻り感を変化させることができる。傾きを大きく設定するほど戻り感が大きくなる。操舵角θの絶対値が所定値a°以上の範囲では戻し電流値Ibが0(ゼロ)に設定される。これは、戻し電流値Ibは、ステアリングホイール1の切り込み時にはドライバによる操舵力を増大させるように作用するものであるため、中立位置付近でのみ戻し電流値Ibが作用し、ステアリングホイール1を大きく切り込んだ際には戻し電流値Ibが作用しないようにするためである。また、ステアリングホイール1を大きく切り込んで戻す際の急な戻りを抑えるためである。
【0043】
図2に示す車速ゲイン部133は、車速センサ16の検出結果に基づいて、車速ゲインGvを演算する車速ゲイン演算部133aと、車速ゲイン演算部133aで演算された車速ゲインGvを戻し電流演算部130での演算結果である戻し電流値Ibに乗じることにより、戻し電流値Ibを補正する乗算部133bと、を有する。
【0044】
図5は、車速ゲインGvを演算するための車速ゲイン演算用マップ図である。車速ゲイン演算部133aは、
図5に示す車速ゲインマップを参照して、車速センサ16から入力された車速vに対応する車速ゲインGvを演算する。セルフアライニングトルクは車速vに応じて変化するため、車速vに応じて変化する車速ゲインGvにて戻し電流値Ibを補正する。
【0045】
図5に示す車速ゲインマップは、車速vと車速ゲインGvとの関係を規定したマップであり、横軸が車速vであり、縦軸が車速ゲインGvである。図中、車速vの大きさを表すvb,vc,vdの大小関係は、0<vb<vc<vdである。車速ゲインGvは全車速域で1.0以下に設定される。つまり、車速ゲインGvは戻し電流値Ibを減らす値となる。セルフアライニングトルクは高速走行時には大きく低速走行時には小さい。このため、
図5に示すように、車速ゲインGvは、車速vがvb〜vc[km/h]の低速域では1.0に設定され、車速vがvc[km/h]以上の中高速域では車速vが大きいほど小さい値に設定され、vd[km/h]以上で0(ゼロ)に設定される。また、車速vがvb[km/h]以下の微低速域では、車速vが小さいほど、車速ゲインGvは小さい値に設定される。このように所定の傾きで車速ゲインGvが小さくなるように設定したのは、停車状態となり車速ゲインGvが0(ゼロ)となる際に生じる操舵の違和感を軽減するためである。
【0046】
乗算部133bでの演算結果、すなわち車速ゲイン演算部133aで演算された車速ゲインGvによって補正された戻し電流値Ibは、低速域では大きな値に設定され、中高速域では車速vが大きくなるほど小さい値に設定される。
【0047】
図6Aは、第1操舵ゲインG1及び第2操舵ゲインG2を設定するための操舵ゲイン演算用テーブルを示す表である。コントローラ30の記憶部には、
図6Aに示すように、操舵状態に応じたゲインGa1,Ga2,Gb1,Gb2が記憶されている。ゲインGa1,Ga2,Gb1,Gb2には、正の値が設定される。
図2に示すように、第1操舵ゲイン部121は、第1操舵ゲイン設定部121aと乗算部121bとを備える。
【0048】
第1操舵ゲイン設定部121aは、
図6Aに示すように、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、第1操舵ゲインG1としてゲインGa1を設定し、操舵状態判定部112により操舵状態が戻し状態であると判定された場合、第1操舵ゲインG1としてゲインGb1を設定する。
図2に示すように、乗算部121bは、アシストベース電流演算部120での演算結果であるアシストベース電流値Iaに、第1操舵ゲイン設定部121aで設定された第1操舵ゲインG1を乗算することによりアシストベース電流値Iaを補正する補正部として機能する。
【0049】
第2操舵ゲイン部132は、第2操舵ゲイン設定部132aと乗算部132bとを備える。第2操舵ゲイン設定部132aは、
図6Aに示すように、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、第2操舵ゲインG2としてゲインGa2を設定し、操舵状態判定部112により操舵状態が戻し状態であると判定された場合、第2操舵ゲインG2としてゲインGb2を設定する。乗算部132bは、乗算部133bでの演算結果である戻し電流値Ibに、第2操舵ゲイン設定部132aで設定された第2操舵ゲインG2を乗算することにより戻し電流値Ibを補正する補正部として機能する。
【0050】
制御電流演算部180は、乗算部121bでの演算結果であるアシストベース電流値Iaに、乗算部132bでの演算結果である戻し電流値Ib、及びその他、各種電流値を加算することにより、制御電流値Idを演算する。
【0051】
このように、本実施形態では、操舵状態判定部112での判定結果に基づいて設定される第1操舵ゲインG1をアシストベース電流値Iaに乗算し、操舵状態判定部112での判定結果に基づいて設定される第2操舵ゲインG2を戻し電流値Ibに乗算するようにした。ここで、第1操舵ゲインG1及び第2操舵ゲインG2を乗算することにより、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibの補正を行わない場合を本実施形態の比較例として説明する。
【0052】
本実施形態の比較例では、第1操舵ゲイン部121及び第2操舵ゲイン部132を備えていない。このため、比較例では、アシストベース電流演算部120での演算結果が第1操舵ゲインG1によって補正されることなく、アシストベース電流値Iaとして制御電流演算部180に出力される。また、比較例では、乗算部133bでの演算結果が第2操舵ゲインG2によって補正されることなく、戻し電流値Ibとして制御電流演算部180に出力される。
【0053】
図7A及び
図7Bを参照して、本実施形態の比較例において、ステアリングホイール1を中立位置から一方(右方)に切り込み操舵を行い、所定の操舵角θa[°]で保舵した後、他方(左方)に戻し操舵を行った場合の操舵力の変化について説明する。
図7Aは、本実施形態の比較例に係る電動パワーステアリング装置の操舵角θのタイムチャートであり、
図7Bは、本実施形態の比較例に係る電動パワーステアリング装置の操舵力のタイムチャートである。
【0054】
ステアリングホイール1に対して切り込み操舵がなされると(時点t0)、操舵角θの増加に応じて操舵力が増加する。ステアリングホイール1が所定の操舵角θaまで回動されると、切り込み操舵が終了する(時点t1)。切り込み操舵が終了すると、所定の操舵角θaでステアリングホイール1が保舵される(時点t1から時点t2)。
【0055】
ステアリングホイール1に対して戻し操舵がなされると(時点t2)、操舵角θの減少に応じて操舵力が減少する。ステアリングホイール1が所定の操舵角θb(θb<θa)まで回動されると、戻し操舵が終了する(時点t3)。戻し操舵が終了すると、所定の操舵角θbでステアリングホイール1が保舵される。
【0056】
ここで、図示するように、切り込み操舵から保舵に移行した後(時点t1〜t2)の操舵力(保舵力)は、目標値F1aとほぼ同じ結果となった。これに対して、戻し操舵から保舵に移行した後(時点t3〜)の操舵力(保舵力)は、目標値F2aに比べて大きい値F2bとなった。
【0057】
このように、本実施形態の比較例では、切り込み操舵の際の操舵力(保舵力)は目標とする値に近いが、戻し操舵の際の操舵力(保舵力)が目標とする値に比べて高くなっている。つまり、切り込み操舵感は良好といえるが、戻し操舵感については改善の余地があるといえる。
【0058】
これに対して、本実施形態では、
図2に示す第1操舵ゲイン部121が、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、及び操舵状態が戻し状態であると判定された場合において、互いに異なる第1操舵ゲインG1(Ga1≠Gb1)を設定するように構成されている。また、
図2に示す第2操舵ゲイン部132が、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、及び操舵状態が戻し状態であると判定された場合において、互いに異なる第2操舵ゲインG2(Ga2≠Gb2)を設定するように構成されている。このように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置100は、操舵状態が切り込み状態のときの制御電流値Idと操舵状態が戻し状態のときの制御電流値Idとが異なるように、ゲイン(第1操舵ゲインG1及び第2操舵ゲインG2)を設定するゲイン部(第1操舵ゲイン部121及び第2操舵ゲイン部132)を備えている。
【0059】
上記比較例のように、切り込み操舵の際の操舵力(保舵力)が目標値にほぼ一致し、戻し操舵の際の操舵力(保舵力)が目標値に対して高くなる場合、戻し操舵の際のアシストベース電流値Iaを切り込み操舵のときに比べて大きくする、あるいは、戻し操舵の際の戻し電流値Ibを切り込み操舵のときに比べて小さくすればよい。
【0060】
例えば、
図6Bに示すように、切り込み状態のときの第1操舵ゲインG1としてゲインGa1=1.0を設定し、切り込み状態のときの第2操舵ゲインG2としてゲインGa2=1.0を設定する。一方、戻し状態のときの第1操舵ゲインG1としてゲインGb1=1.2を設定し、戻し状態のときの第2操舵ゲインG2としてゲインGb2=0.8を設定する。
【0061】
このように、第1操舵ゲインG1及び第2操舵ゲインG2を設定することにより、戻し操舵の際の操舵力を上記比較例に比べて小さくすることができ、目標値に近づけることができる。なお、切り込み操舵の際には、第1操舵ゲインG1及び第2操舵ゲインG2は、1.0に設定されるので、比較例と同様、目標値に近い操舵力となる。
【0062】
以下、第1操舵ゲインG1及び第2操舵ゲインG2の設定例について説明する。切り込み状態のときの操舵力を変えずに、戻し状態のときの操舵力を低くしたい場合、ゲインGa1=1.0、ゲインGa2=1.0、ゲインGb1>1.0、ゲインGb2<1.0とする。切り込み状態のときの操舵力を変えずに、戻し状態のときの操舵力を高くしたい場合、ゲインGa1=1.0、ゲインGa2=1.0、ゲインGb1<1.0、ゲインGb2>1.0とする。
【0063】
戻し状態のときの操舵力を変えずに、切り込み状態のときの操舵力を低くしたい場合、ゲインGa1>1.0、ゲインGa2<1.0、ゲインGb1=1.0、ゲインGb2=1.0とする。戻し状態のときの操舵力を変えずに、切り込み状態のときの操舵力を高くしたい場合、ゲインGa1<1.0、ゲインGa2>1.0、ゲインGb1=1.0、ゲインGb2=1.0とする。
【0064】
なお、本実施形態では、切り込み状態のときのゲインと、戻し状態のときのゲインのそれぞれを設定することができるので、次のように、切り込み状態及び戻し状態のときの操舵力を調整することもできる。例えば、切り込み状態のときの操舵力を高くしたい場合であって、かつ、戻し状態のときの操舵力を低くしたい場合、ゲインGa1<1.0、ゲインGa2>1.0、ゲインGb1>1.0、ゲインGb2<1.0とする。このように、第1操舵ゲインG1及び第2操舵ゲインG2に設定されるゲインGa1,Ga2,Gb1,Gb2を定めておくことで、切り込み状態における操舵力及び戻し状態における操舵力を調整することができる。
【0065】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0066】
アシストベース電流値Iaに第1操舵ゲインG1を乗じる第1操舵ゲイン部121と、戻し電流値Ibに第2操舵ゲインG2を乗じる第2操舵ゲイン部132と、を備え、操舵ゲイン部121,132は、操舵状態が切り込み状態のときの制御電流値Idと操舵状態が戻し状態のときの制御電流値Idとが異なるように、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、及び操舵状態が戻し状態であると判定された場合の双方において、操舵ゲインG1,G2を設定する。
【0067】
アシストベース電流値Iaに第1操舵ゲインG1を乗じることにより、切り込み状態と戻し状態とで同じ操舵トルクTであってもアシストベース電流値Iaを異なる値とすることができる。また、戻し電流値Ibに第2操舵ゲインG2を乗じることにより、切り込み状態と戻し状態とで同じ操舵角θであっても戻し電流値Ibを異なる値とすることができる。このため、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、適切な制御電流値Idを演算することができる。その結果、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、操舵感を向上することができる。
【0068】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0069】
<変形例1>
上記実施形態では、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibのそれぞれに操舵ゲインG1,G2を乗じる操舵ゲイン部121,132を備える例について説明したが、本発明はこれに限定されない。電動パワーステアリング装置100は、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibの少なくとも一方の電流値に操舵ゲインを乗じる操舵ゲイン部を備える構成としてもよい。例えば、
図8に示すように、電動パワーステアリング装置100は、第1操舵ゲイン部121を備えず、第2操舵ゲイン部132を備える構成としてもよい。この場合、第2操舵ゲイン部132は、操舵状態が切り込み状態のときの制御電流値Idと操舵状態が戻し状態のときの制御電流値Idとが異なるように、第2操舵ゲインG2を設定する。また、図示しないが、電動パワーステアリング装置100は、第2操舵ゲイン部132を備えず、第1操舵ゲイン部121を備える構成としてもよい。この場合、第1操舵ゲイン部121は、操舵状態が切り込み状態のときの制御電流値Idと操舵状態が戻し状態のときの制御電流値Idとが異なるように、第1操舵ゲインG1を設定する。
【0070】
このように、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibの少なくとも一方に電流値に操舵ゲインを乗じる操舵ゲイン部を備えることにより、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、アシストベース電流値Iaに操舵ゲインG1を乗じる場合には、切り込み状態と戻し状態とで同じ操舵トルクTであってもアシストベース電流値Iaを異なる値とすることができる。また、戻し電流値Ibに操舵ゲインG2を乗じる場合には、切り込み状態と戻し状態とで同じ操舵角θであっても戻し電流値Ibを異なる値とすることができる。このため、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、適切な制御電流値Idを演算することができる。その結果、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、操舵感を向上することができる。なお、上記実施形態のように、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibの双方の電流値に操舵ゲインG1,G2を乗じる操舵ゲイン部121,132を備える場合、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibのそれぞれの電流値を、切り込み状態のときと戻し状態のときとで異なる値とすることができる。これにより、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおける操舵力をより精細に調整できる。このため、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、より適切な制御電流値Idを演算することができる。その結果、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、さらに操舵感を向上することができる。
【0071】
<変形例2>
上記実施形態では、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、及び操舵状態が戻し状態であると判定された場合のそれぞれにおいて操舵ゲインを設定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1操舵ゲイン部は、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、及び操舵状態が戻し状態であると判定された場合の少なくとも一方において、第1操舵ゲインG1を設定するようにしてもよい。また、第2操舵ゲイン部は、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、及び操舵状態が戻し状態であると判定された場合の少なくとも一方において、第2操舵ゲインG2を設定するようにしてもよい。例えば、操舵状態判定部112により操舵状態が戻し状態であると判定された場合にのみ操舵ゲインを設定するようにしてもよい。
【0072】
例えば、
図9に示す変形例に係る電動パワーステアリング装置100では、第1操舵ゲイン部221が、切替部221cとゲイン処理部221dとを有する。切替部221cには、操舵状態判定部112での判定結果が入力される。切替部221cは、操舵状態判定部112により操舵状態が戻し状態であると判定された場合、アシストベース電流演算部120での演算結果であるアシストベース電流値Iaをゲイン処理部221dに出力する。ゲイン処理部221dは、コントローラ30の記憶部に記憶された第1操舵ゲインG1(G1≠1.0)を入力値であるアシストベース電流値Iaに乗じて、制御電流演算部180に出力する。一方、切替部221cは、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、アシストベース電流演算部120での演算結果であるアシストベース電流値Iaをそのまま制御電流演算部180に出力する。
【0073】
また、
図9に示す変形例に係る電動パワーステアリング装置100では、第2操舵ゲイン部232が、切替部232cとゲイン処理部232dとを有する。切替部232cには、操舵状態判定部112での判定結果が入力される。切替部232cは、操舵状態判定部112により操舵状態が戻し状態であると判定された場合、乗算部133bでの演算結果である戻し電流値Ibをゲイン処理部232dに出力する。ゲイン処理部232dは、コントローラ30の記憶部に記憶された第2操舵ゲインG2(G2≠1.0)を入力値である戻し電流値Ibに乗じて、制御電流演算部180に出力する。一方、切替部232cは、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、乗算部133bでの演算結果である戻し電流値Ibをそのまま制御電流演算部180に出力する。
【0074】
このような変形例によれば、アシストベース電流演算マップ、戻し電流演算マップ等を切り込み時の操舵感を優先して設定することにより、切り込み時の操舵感の向上を図り、第1操舵ゲインG1及び第2操舵ゲインG2の値を調整することにより、戻し時の操舵感の向上を図ることができる。
【0075】
なお、本変形例では、操舵状態判定部112により操舵状態が戻し状態であると判定された場合にのみ操舵ゲインによる補正を行う例について説明したが、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合にのみ操舵ゲインを設定してもよい。この場合、アシストベース電流演算マップ、戻し電流演算マップ等を戻し時の操舵感を優先して設定する。
【0076】
このように、操舵状態が切り込み状態及び戻し状態の一方において操舵ゲインを乗じ、操舵状態が切り込み状態のときの制御電流値Idと操舵状態が戻し状態のときの制御電流値Idとを異ならせることにより、上記実施形態と同様、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、操舵感を向上することができる。なお、上記実施形態では、切り込み状態のときと戻し状態のときとで異なる操舵ゲインを設定することができるので、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、より適切な制御電流値Idを演算することができる。その結果、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、さらに操舵感を向上することができる。
【0077】
<変形例3>
上記実施形態では、ピニオンギヤ3aが形成された出力シャフト3に電動モータ10の駆動力を付与する、いわゆる1ピニオンタイプの電動パワーステアリング装置100を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、出力シャフト3とは別に、ラック軸5に対して電動モータ10の回転を伝えるアシストピニオンを有するシャフトを設けた、いわゆる2ピニオンタイプの電動パワーステアリング装置にも適用できる。また、本発明は、トルクセンサ12及びアシスト機構がラック軸5から離れ車室内に配置される、いわゆるコラムタイプの電動パワーステアリング装置にも適用できる。
【0078】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、および効果をまとめて説明する。
【0079】
電動パワーステアリング装置100は、運転者によって操舵されるステアリング部材(ステアリングホイール1)に連結され、運転者によるステアリング部材(ステアリングホイール1)の操舵に伴って回転するステアリングシャフト7と、ステアリングシャフト7に回転トルクを付与する電動モータ10と、ステアリング部材(ステアリングホイール1)から入力される操舵トルクTを検出するトルク検出部(トルクセンサ12)と、ステアリング部材(ステアリングホイール1)の操舵角θを検出する操舵角検出部(操舵角センサ15)と、操舵トルクTに基づいてアシストベース電流値Iaを演算するアシストベース電流演算部120と、操舵角θに基づいて戻し電流値Ibを演算する戻し電流演算部130と、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibに基づき、制御電流値Idを演算する制御電流演算部180と、制御電流値Idに基づき、電動モータ10を制御するモータ制御部9と、ステアリング部材(ステアリングホイール1)の操舵状態を判定する操舵状態判定部112と、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibの少なくとも一方の電流値にゲイン(操舵ゲインG1,G2)を乗じるゲイン部(操舵ゲイン部121,221,132,232)と、を備え、ゲイン部(操舵ゲイン部121,221,132,232)は、操舵状態が切り込み状態のときの制御電流値Idと操舵状態が戻し状態のときの制御電流値Idとが異なるように、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、及び操舵状態が戻し状態であると判定された場合の少なくとも一方において、ゲイン(操舵ゲインG1,G2)を設定する。
【0080】
この構成では、アシストベース電流値Iaにゲイン(操舵ゲインG1)を乗じる場合には、切り込み状態と戻し状態とで同じ操舵トルクTであってもアシストベース電流値Iaを異なる値とすることができる。また、戻し電流値Ibにゲイン(操舵ゲインG2)を乗じる場合には、切り込み状態と戻し状態とで同じ操舵角θであっても戻し電流値Ibを異なる値とすることができる。このため、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、適切な制御電流値Idを演算することができる。その結果、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、操舵感を向上することができる。
【0081】
電動パワーステアリング装置100は、ゲイン部が、アシストベース電流値Iaに第1ゲイン(第1操舵ゲインG1)を乗じる第1ゲイン部(第1操舵ゲイン部121,221)と、戻し電流値に第2ゲイン(第2操舵ゲインG2)を乗じる第2ゲイン部(第2操舵ゲイン部132,232)と、を有し、第1ゲイン部(第1操舵ゲイン部121,221)が、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、及び操舵状態が戻し状態であると判定された場合の少なくとも一方において、第1ゲイン(第1操舵ゲインG1)を設定し、第2ゲイン部(第2操舵ゲイン部132,232)が、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、及び操舵状態が戻し状態であると判定された場合の少なくとも一方において、第2ゲイン(第2操舵ゲインG2)を設定する。
【0082】
この構成では、アシストベース電流値Ia及び戻し電流値Ibのそれぞれの電流値を、切り込み状態のときと戻し状態のときとで異なる値とすることができるので、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、より適切な制御電流値Idを演算することができる。その結果、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、さらに操舵感を向上することができる。
【0083】
電動パワーステアリング装置100は、ゲイン部(操舵ゲイン部121,132)が、操舵状態判定部112により操舵状態が切り込み状態であると判定された場合、及び操舵状態が戻し状態であると判定された場合において、互いに異なるゲイン(Ga1,Ga2,Gb1,Gb2)を設定する。
【0084】
この構成では、切り込み状態のときと戻し状態のときとで異なるゲイン(Ga1,Ga2,Gb1,Gb2)を設定することができるので、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、より適切な制御電流値Idを演算することができる。その結果、切り込み操舵及び戻し操舵のそれぞれにおいて、さらに操舵感を向上することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。