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特開2020-200015ストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔及びその動作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-200015(P2020-200015A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】ストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔及びその動作方法
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/32 20060101AFI20201120BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20201120BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20201120BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20201120BHJP
   F01N 3/04 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   B63H21/32 ZZAB
   B01D53/50 270
   B01D53/14 200
   B01D53/78
   F01N3/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-155107(P2019-155107)
(22)【出願日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】201910497199.6
(32)【優先日】2019年6月10日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519311433
【氏名又は名称】山東佩森環保科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shandong Pure Ocean Technology Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】王 暁天
(72)【発明者】
【氏名】張 暁宇
(72)【発明者】
【氏名】陳 安京
(72)【発明者】
【氏名】張 満
(72)【発明者】
【氏名】盖 新涛
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA18
3G091BA01
3G091HA01
3G091HB01
4D002AA02
4D002AB01
4D002BA02
4D002BA05
4D002DA35
4D020AA06
4D020BA23
4D020CB25
4D020CD10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乾式燃焼に対応可能で、背圧がより小さく、船舶の電力系統を損傷しにくく、小型で設置が容易な船舶排ガス洗浄塔を提供する。
【解決手段】洗浄塔は、円柱状の塔本体1を含み、塔本体1の下端の取付ベース10上には、真空煙進入スロート部8が貫通して配置される。真空煙進入スロート部8の上端には、煙道ガス下分布傘7及び煙道ガス上分布傘6が順に架設され、煙道ガス上分布傘6の上方には予冷装置5が配置され、予冷装置5の上方には、スプレー装置4及びミスト除去器3が配置され、ミスト除去器3の上下の両端には洗浄装置2が配置される。上記洗浄塔の作動方法は、脱硫と乾式燃焼の2つのプロセスを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塔本体(1)を含むストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔であって、前記塔本体(1)は円柱状であり,前記塔本体の下端には取付ベース(10)は配置され、取付ベースの中央部には真空煙進入スロート部(8)が縦方向に延伸して配置され、
前記真空煙進入スロート部(8)の上端には、煙道ガス下分布傘(7)が架設され、煙道ガス下分布傘の上端には、煙道ガス上分布傘(6)が架設され、煙道ガス下分布傘及び煙道ガス上分布傘の両者は傘の形であり、煙道ガス下分布傘の上端は開放し、煙道ガス上分布傘の上端は閉止し、
前記煙道ガス上分布傘の上方には予冷装置(5)が配置され、予冷装置の上方には、2ステージ以上のスプレー装置(4)が配置され、スプレー装置の上方にはミスト除去器(3)が配置され、ミスト除去器の上下の両端には洗浄装置(2)が配置され、洗浄装置のノズルはすべてミスト除去器の方向に向き、
前記塔本体の外壁には、2つ以上の側方向支持体(16)が溶接され、側方向支持体には、2つの縦方向に配列された腰状の孔(17)が設けられ,側方向支持体は、腰状の孔及び腰状の孔に適合して挿設されたボルトを介して、船舶の煙突の内壁に組み付けられるように構成され、
前記塔本体及び塔本体内の部品の材料はいずれもステンレス鋼である、ことを特徴とするストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔。
【請求項2】
前記スプレー装置(4)及び洗浄装置(2)はいずれもストレートスルーパイプ(24)、内側環形支管(20)、外側環形支管(21)、及び多流体ノズル(22)を備え、内側環形支管と外側環形支管とは同心に配置され、ストレートスルーパイプは内側環形支管と外側環形支管との中心線に位置し、前記多流体ノズル(22)は2つ以上あり、多流体ノズルは、内側環形支管及び外側環形支管上に均一に配置され、
前記ストレートスルーパイプ(24)の入水口端は、塔本体の内壁に溶接され、塔本体の他端は、閉塞されてから外筒管(19)内に挿設され、外筒管は、塔本体の内壁に固定され、ストレートスルーパイプと隙間適合し、ストレートスルーパイプの閉塞端と塔本体の内壁との間には、形状変化量よりも大きい幅を有する間隙が設けられ、
前記塔本体の内壁には、スプレー装置及び洗浄装置をそれぞれ支持するための4ステージ以上の山形鋼支持体(13)が溶接され、山形鋼支持体の内側の上端にはU字形の係止部(14)が配置され、外側環形支管(21)はU字形の係止部及びネジを介して山形鋼支持体に固定され、U字形の係止部は、外側環形支管を高さ方向にのみ固定し、U字形の係止部の内径は外側環形支管の外形よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔。
【請求項3】
前記ストレートスルーパイプ(24)の入水口端は、塔本体の外部に設けられた入水管と連通し、前記入水管には、乾式燃焼状態における塔本体の縦方向の変形をサポートするために、2つ以上の伸縮継手(15)が設けられる、ことを特徴とする請求項2に記載のストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔。
【請求項4】
前記予冷装置(5)は、ブラケットパイプ及びスクロールノズル(23)を備え、スクロールノズルは3つ以上あり、前記スクロールノズルは、ブラケットパイプに沿って上下に分布し、隣接するスクロールノズルは同じ水平面に対して120°の角度を有し、前記ブラケットパイプの一端は塔本体を介して、外部に設けられた入水管と連通し、他端は下方に曲げられ、スクロールノズルが固定される、ことを特徴とする請求項3に記載のストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔。
【請求項5】
前記真空煙進入スロート部(8)は2層構造であり、2層構造間には真空中間層が配置され、真空煙進入スロート部の下部外壁には、真空ガス抽出口(18)が開設され、真空ガス抽出口には真空弁が配置される、ことを特徴とする請求項4に記載のストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔。
【請求項6】
前記煙道ガス上分布傘の底面の円形直径は煙道ガス下分布傘の底面の円形直径よりも小さく、煙道ガス上分布傘及び煙道ガス下分布傘の斜面の傾度はいずれも25°であり、煙道ガス上分布傘及び煙道ガス下分布傘の上端面にはいずれも7つ以上のガイド板(12)が設けられ、ガイド板はV型山形鋼であり、ガイド板のV型開口は外側を向いている、ことを特徴とする請求項5に記載のストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔。
【請求項7】
前記煙道ガス上分布傘の底面の円形直径は、煙道ガス下分布傘の直径の1/2〜2/3である、ことを特徴とする請求項6に記載のストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔。
【請求項8】
前記取付ベース(10)の上端には、排水板(9)が傾斜して配置され、排水板の中央には、真空煙進入スロート部を収容できる開口が開設され、排水板と真空煙進入スロート部とは開口で密閉接続され、排水板の低い位置の一側には、排水口が配置され、排水口には排水管(11)が固定配置され、排水管は、ベースを貫通して塔本体の外側に延びる、ことを特徴とする請求項7に記載のストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔。
【請求項9】
請求項8に記載のストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔の動作方法であって、(A)脱硫プロセス及び(B)乾式燃焼プロセスを含み、
(A)脱硫プロセスは、
船舶の排ガスを、真空煙進入スロート部(8)を通して塔本体内に進入させ、真空煙進入スロート部から出る煙道ガスの一部を、煙道ガス下分布傘(7)の側端から直接流出して上方に上昇させ、他の部分を、煙道ガス下分布傘を通してから煙道ガス上分布傘(6)の側端から流出して上方に上昇させ、
予冷装置(5)により、予備冷却水を下方にスプレーして高温の煙道ガスを冷却し、冷却後の煙道ガスを上昇させ、各層のスプレー装置を順に通過させ、同時に、スプレー装置により、脱硫液を連続的に下方にスプレーして、煙道ガスと脱硫反応させ、
脱硫反応後の煙道ガスを上昇させ、ミスト除去器(3)により水蒸気を除去し、塔本体の上端の排気口を通して排出させ、
洗浄塔を長時間作動した後、上部と下部の2つの洗浄装置により、ミスト除去器を定期的に洗浄し、
煙道ガス上分布傘及び煙道ガス下分布傘の阻止作用下で、スプレー液及び洗浄水を、ガイド板間の間隔に沿って流出させることにより、上昇する煙道ガスと直接衝突して水ミストを形成することを回避するとともに、水が真空煙進入スロート部内に流入するのを回避し、
塔本体の底部に落下したスプレー液及び洗浄水を排水板(9)により集め、排水管(11)を通して塔外に排出する、工程を含み、
(B)乾式燃焼プロセスは、
真空煙進入スロート部(8)を通して、低硫黄煙道ガスを塔本体に進入させ、内部構造を通過して大気中に直接排出させ、
高温の煙道ガスにより、塔本体を熱膨脹と冷収縮で縦方向と横方向の両方に変形させ、縦方向の変形のサポート構造により、延びる塔本体及び側方向支持体(16)上の固定ボルトを腰状の孔(17)に沿って縦方向に変形させ、同時に、外部に設けられた入水管は塔本体の変形により伸縮継手(15)により引っ張られ、塔本体の変形による入水管の破裂を回避し、
横方向の変形のサポート構造において、スプレー装置(4)、洗浄装置(2)上の内側環形支管及び外側環形支管はいずれも環形で、引張変形機能を有し、ストレートスルーパイプ(24)の一端が固定され、他端が外筒管(19)に可動的に接続され、ストレートスルーパイプ(24)の径方向の変形をサポートし、U字形の係止部(14)は、外側環形支管を高さ方向にのみ制限し、幅方向に外側環形支管の径方向の変形をサポートする、工程を含むことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄塔及びその動作方法に関し、特にストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な近代工業の発展、人口の急増、海洋での頻繁な活動により、海洋汚染はますます深刻になっており、海洋環境には深刻な変化が生じ、拡大し続ける傾向がある。そのため、海洋環境における汚染を減らすために、船舶の煙道ガスからの燃料硫黄の放出を制御するための国際海事機関の基準はますます厳しくなっている。
【0003】
輸送用船舶の強制廃棄の年限は通常25年以上である。新たに発効された燃料硫黄排出基準に適合するために、排気ガス排出基準を達成するための排ガス処理機能を備えた新しい船舶を特別に開発した船舶会社はほとんどない。
既存の船舶を改装し、煙突に洗浄塔を設置することによって、古い船舶に排気ガス処理機能を持たせることが多い。
【0004】
船舶の煙突は、海上の過酷な環境に耐えるために各排出管路を囲む保護構造となっている。そのサイズは、船舶の主機、補機、ボイラーなどの機器の排出管路及び分布状況に基づいて、船舶の建築の初期段階で決定される。煙突内の各排出管路の分布状況は図1に示される。図1において、DN400は、対応するパイプの直径が400mmであることを示し、主機25に対応する管路のサイズが最も大きく、1500mmである。図1から分かるように、煙突内に残っている利用可能な空間が非常に限られているので、配置される洗浄塔の体積が大きいと、設置が困難であるという技術的問題がある。
【0005】
図2に示されるように、既存の船舶排ガス洗浄塔の形状は、洗浄塔の下端から上に煙進入管33(一般にU字形の洗浄塔と呼ばれる)が延在している。U字形の洗浄塔が取り付けられるとき,煙進入管33の上端は移行管34と連結される必要があり、移行管34の他端は下方に屈曲し伸びて、各排出管路を集合してなる総管路35と連結される。
【0006】
既存の洗浄塔のU字形の構造は主に、塔底で蓄積されるスプレー水が各排出管路に連結された発電機内に逆流することを防止するためのものである。しかしながら、船舶の煙突内の利用可能な設置空間が限られかつU字形の構造の占用面積が大きすぎるため、設置が容易ではないという欠点もある。煙突の残りの空間がU字形の洗浄塔の体積より小さい場合、まず船舶の煙突全体を取り除いて、U字形の洗浄塔を取り付けた後に煙突を再建する必要があることが多く、工事量は非常に大きい。従って、スプレー水が発電機内に逆流するのを回避することができる条件下で洗浄塔の体積を効果的に減らすことができれば、船舶排ガス処理の改修プロジェクトに大きな実用的価値がもたらされるであろう。
【0007】
一方、国際海事機関IMOの規制によると、船舶は港から3海里以内に化学薬品を含む洗浄水を放流することが許可されていないので、船舶が入港しているときには、通常、高硫黄燃油を低硫黄燃油に切り替える必要があり、燃焼後の低硫黄テールガスは、脱硫及び洗浄することなく直接排出される。これは業界で一般に乾式燃焼として知られる。乾式燃焼煙道ガスは280℃以上の高温であるため、洗浄塔本体の変形が生じ易く、既存のU字形の洗浄塔は構造や材料の制約から乾式燃焼には対応していない。乾式燃焼後の高温煙道ガスは、一般に、移行管34の上方に排気管36を追加することによって排出される。この排気管36は、管路継手を介して、各排出管路を集合してなる総管路35と直接連結される。それにより、脱硫塔の改修の設置体積がさらに大きくなり、設置の困難性が増大する。
【0008】
また、U字形の洗浄塔は、背圧が高すぎ、煙道ガスの排出が非常に困難であるという欠点を有するため、船舶の動力システムを容易に損傷する可能性がある。上記の3つの理由より、簡単な設置、乾式燃焼のサポート、及び低い背圧という要件を満たすために、船舶の排ガス洗浄塔の全体構造を改善することが急務である。
【発明の概要】
【0009】
上記課題に鑑みて、本発明の第1の目的は、小型で設置が容易で、かつ船舶の元の煙突に直接設置することが容易な船舶排ガス洗浄塔を提供することである。本発明の第2の目的は、移行管及び排気管を追加することなく乾式燃焼条件下の高温変形にも対応できる乾式燃焼対応型船舶排ガス洗浄塔を提供することである。本発明の第3の目的は、従来のU字形の洗浄塔が大きな背圧により船舶の動力システムに損傷を与えるという問題を解決することができるストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔は、円柱状の塔本体1を含み、塔本体の下端には取付ベース10が配置され、取付ベースの中央部には真空煙進入スロート部8が縦方向に貫通して(延伸して)配置される。円柱状の塔本体1は、煙が真空煙進入スロート部8の底端から進入できる構成であり、従来技術のU字形の洗浄塔の煙進入構造と比較して、移行管34及び総管路35の構造の体積が減少するので、船舶の煙突内に設置空間を見つけやすく、設置がより便利になるだけでなく、元の煙突を取り除いて再建する工事が回避される。
【0011】
真空煙進入スロート部8の上端には、煙道ガス下分布傘7が架設され、煙道ガス下分布傘の上端には、煙道ガス上分布傘6が架設される。煙道ガス下分布傘及び煙道ガス上分布傘の両者は傘の形であり、煙道ガス下分布傘の上端は開放し、煙道ガス上分布傘の上端は閉止する。従来技術では、2つの分布傘を設置する構造は存在しない。本発明は、2つの分布傘の構造により、スプレーされた洗浄液を受け、洗浄液を分布傘の縁部から流出させ、洗浄液がエンジン内に流れるのを防止する。
【0012】
煙道ガス上分布傘の上方には予冷装置5が配置され、予冷装置5の上方には、2ステージ以上のスプレー装置4が配置され、スプレー装置の上方にはミスト除去器3が配置される。ミスト除去器3の上下の両端には洗浄装置2が配置され、洗浄装置2のノズルはすべてミスト除去器3に向かう。これにより、ミスト除去器3を洗浄し、堆積した塵埃がミスト除去効果に影響を及ぼすのを防止する。従来技術では、ミスト除去器に洗浄装置が配置されておらず、長時間の使用により、ミスト除去器の詰まりによりミスト除去効果に影響を及ぼす可能性がある。しかし、手動の手段でしか洗浄を行うことができず、操作が非常に不便であった。
【0013】
塔本体1の外壁には、2つ以上の側方向支持体16が溶接される。側方向支持体16には、2つの縦方向に配列された腰状の孔17が設けられ,側方向支持体は、腰状の孔及び腰状の孔に適合して挿設されたボルトを介して、船舶の煙突の内壁に組み付けることができる。側方向支持体16上の腰状の孔17の設計は、本発明の創造的な構造であり、乾式燃焼状態で塔本体1の縦方向の変形に対応するために使用され、乾式燃焼中に煙突の内壁との緊密な接続による損傷を回避する。
【0014】
塔本体1及び塔本体内の各部件の材料はいずれもステンレススチールである。塔内部の部品を乾式燃焼下の高温に耐えることができるようにするために、ミスト除去器3及びノズルの材料は、従来のPEからステンレス鋼に変更される。ステンレス鋼材料は、通常600℃の耐高温性を有し、乾式燃焼中に排出される煙道ガスの最高温通は通常300℃を超えないので、乾式燃焼状態での使用のニーズを満たすことができる。塔内部の構造に関しては、変形サポートの問題を解決する方法を考慮することが最も重要となる。
【0015】
スプレー装置4、洗浄装置2はいずれもストレートスルーパイプ24、内側環形支管20、外側環形支管21、及び多流体ノズル22を備え、内側環形支管20と外側環形支管21とは同心に配置され、ストレートスルーパイプ24は内側環形支管20と外側環形支管21との中心線に位置し、多流体ノズル22は2つ以上あり、多流体ノズルは、内側環形支管20及び外側環形支管21上に均一に配置され、
ストレートスルーパイプ24の入水口端は、塔本体1の内壁に溶接され、他端は、閉塞されてから外筒管19内に挿設され、外筒管19は、塔本体1の内壁に固定され、ストレートスルーパイプ24と隙間適合し、ストレートスルーパイプ24の閉塞端と塔本体1の内壁との間には、形状変化量よりも大きい幅を有する間隙が設けられる。従来技術では外筒管構造を有しておらず、ストレートスルーパイプの両端は塔本体に接続される。一方、本発明では、外筒管19は、ストレートスルーパイプ24に対する支持作用を果たすとともに、ストレートスルーパイプ24を塔本体1の内壁に可動的に接続するため、乾式燃焼中にストレートスルーパイプ24は塔本体1の径方向の変形により損傷を受けない。
【0016】
塔本体1の内壁には、4ステージ以上の山形鋼支持体13が溶接され、スプレー装置及び洗浄装置をそれぞれ支持するために使用される。従来技術の溶接固定方法とは異なり、山形鋼支持体13の内側の上端にはU字形の係止部14が配置され、外側環形支管21はU字形の係止部14及びネジを介して山形鋼支持体13に固定され、U字形の係止部14は、外側環形支管21を高さ方向にのみ固定し、その内径は外側環形支管21の外形よりも大きい。それにより、外側環形支管21はU字形の係止部14の内径範囲内で径方向に変形が可能となる。
【0017】
ストレートスルーパイプ24の入水口端は、塔本体1の外部に設けられた入水管と連通する。この入水管には、乾式燃焼状態における支持塔本体の縦方向の変形をサポートするために、2つ以上の伸縮継手(15)が設けられ、剛性接続による入水管と塔本体の損傷を回避する。一方、従来技術では乾式燃焼機能を有さず、伸縮継手の構造的特徴を有さない。
【0018】
予冷装置5は、ブラケットパイプ及びスクロールノズル23により構成される。本発明では、スクロールノズルは3つあり、3つのスクロールノズルは、ブラケットパイプに沿って上下に分布し、隣接するスクロールノズルの同じ水平面に対して120°の角度を有し、それにより、スプレーの均一性を確保することができる。ブラケットパイプの一端は塔本体を通して、外部に設けられた入水管と連通し、他端は下方に曲げられ、スクロールノズルが固定される。予冷装置5は、船舶の排ガスを予備冷却するために使用され、排ガス温度が高すぎることによる脱硫効果への影響を回避する。なお、スクロールノズルの数は、3つ以上とすることもできる。
【0019】
従来技術とは異なり、本発明の真空煙進入スロート部8は2層構造であり、かつ2層構造間には真空中間層が配置される。真空煙進入スロート部8の下部外壁には、真空ガス抽出口18が開設され、真空ガス抽出口18には真空弁が配置される。真空煙進入スロート部8の2層構造により、スロート部の内部と外部との過度の温度差による酸結露を防止し、スロート部の加速腐食によりスプレー液が発電機内に逆流する危険性を低減することができる。従来技術の煙進入通路は単層板であり、板の一方の面は高温の煙道ガスであり、他方の面は低温の洗浄水であり、熱橋効果により板の高温の面に凝縮水を形成することが容易である。高温の煙道ガスは多量のSOを含み、SOはさらに酸化されてSOを生成し、SOと水蒸気とが結合して硫酸蒸気となると、凝縮水は腐食性の高い酸結露となって煙通路に腐食損傷を引き起こす。さらに、従来技術の煙進入通路は、腐食の問題を解決するために耐腐食性の高い高価な材料を使用する必要がある。一方、本発明では、真空煙進入スロート部8は酸結露の発生を防止する機能を有するため、より安価なステンレス鋼のみを使用することができ、製造コストも低減される。
【0020】
煙道ガス上分布傘6の底面の円形直径は煙道ガス下分布傘よりも小さく、煙道ガス上分布傘6及び煙道ガス下分布傘7の斜面の傾度はいずれも25°であり、煙道ガス上分布傘6及び煙道ガス下分布傘7の上端面にはいずれも2つ以上のガイド板12が設けられる。ガイド板はV型山形鋼であり、ガイド板のV型開口は外側を向いている。ガイド板の配置及び形状の設計の両方は本発明の創造的な点である。下方にスプレーされるスプレー液及び上方に移動する煙道ガスに対して、ガイド板は仕切りとして作用する。それにより、煙道ガスはガイド板内のV字形の空間に沿って上方に移動し、スプレー液はガイド板間の間隙を通って下方に流出する。水蒸気の直接衝突により酸ミストが生成されて腐食を増加させることが回避される。
【0021】
さらに、煙道ガス上分布傘6の底面の円形直径が煙道ガス下分布傘7の直径の1/2〜2/3であるとき、本発明の脱硫効果は最も良い。
【0022】
取付ベース10の上端には、排水板9が傾斜して配置され、排水板9の中央には、真空煙進入スロート部を収容できる開口が開設され、排水板9と真空煙進入スロート部とは開口で密閉接続され、より低い位置の排水板9の一側には、排水口が配置され、排水口には排水管11が固定配置される。排水管11は、ベースを貫通してから塔本体1の外側に延びる。排水板9の傾斜した設計は、スプレー水を一箇所に集中させて放出することを容易にし、スプレー水が蓄積して発電機内に逆流することを回避する。
【0023】
本発明のストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔の動作方法の具体的なプロセスは次のとおりである。
A、脱硫プロセスでは、
船舶の排ガスを、真空煙進入スロート部8を通して塔本体内に進入させ、真空煙進入スロート部8から出る煙道ガスの一部を、煙道ガス下分布傘7の側端から直接流出して上方に上昇させ、他の部分を、煙道ガス下分布傘を通してから煙道ガス上分布傘6の側端から流出して上方に上昇させ、
予冷装置5により、予備冷却水を下方にスプレーして高温の煙道ガスを冷却し、冷却後の煙道ガスを上昇させ、各層のスプレー装置を順に通過させ、同時に、スプレー装置により、脱硫液を連続的に下方にスプレーして、煙道ガスと脱硫反応させ、
脱硫反応後の煙道ガスを上昇させ、ミスト除去器3により水蒸気を除去し、塔本体の上端の排気口を通して排出させ、
洗浄塔を長時間作動した後、上部と下部の2つの洗浄装置によりミスト除去器3を定期的に洗浄し、
煙道ガス上分布傘、煙道ガス下分布傘の阻止作用下で、スプレー液及び洗浄水を、ガイド板間の間隔に沿って流出させることにより、上昇する煙道ガスと直接衝突して水ミストを形成することを回避するとともに、水が真空煙進入スロート部内に流入するのを回避し、
塔本体の底部に落下したスプレー液及び洗浄水を排水板9により集め、次に排水管11を通して塔外に排出する。
【0024】
B、乾式燃焼プロセスでは、
真空煙進入スロート部8を通して、低硫黄煙道ガスを塔本体に進入させ、内部構造を通過して大気中に直接排出させ、
高温の煙道ガスにより、塔本体を熱膨脹と冷収縮で縦方向と横方向の両方に変形させ、縦方向の変形のサポート構造により、延びる塔本体及び側方向支持体16上の固定ボルトを腰状の孔17に沿って縦方向に変形させ、同時に、外部に設けられた入水管は塔本体の変形により伸縮継手15により引っ張られ、塔本体の変形による入水管の破裂を回避し、
横方向の変形のサポート構造において、スプレー装置4、洗浄装置2上の内側環形支管及び外側環形支管はいずれも環形で、引張変形機能を有し、同時に、ストレートスルーパイプ24の一端が固定され、他端が外筒管19に可動的に接続され、ストレートスルーパイプ24の径方向の変形をサポートし、U字形の係止部14は、外側環形支管を高さ方向にのみ制限し、幅方向に外側環形支管の径方向の変形をサポートする。
本発明の技術効果は以下のとおりである。
【0025】
上述のように、本発明の船舶排ガス洗浄塔は、従来のU字形の塔よりも体積が小さい。特に、U字形の煙進入管の約20mの取り付け容積を節約できる。さらに、塔本体の取り付け時に考慮する必要がある検査修理、メンテナンス、絶縁、補強、スタッフの通路などの要因から、全体的に約100mの取り付け空間を削減することができるの。このため、元の煙突内に設置することがより容易になり、工事量はさらに少なくなる。
【0026】
また、本発明の船舶排ガス洗浄塔は、乾式燃焼をサポートする機能も有する。従来のU字形の塔は、背圧が大きいため、移行管の上方に排気管を追加することによってのみ乾式燃焼のガス排出を実現することができる。そのため、塔内で乾式燃焼現象がない限り、従来のU字形の洗浄塔内の部品、例えばミスト除去器、ノズルなどは、より安価で低コストのPE材料で製造される。従来技術者が脱硫塔に乾式燃焼機能を持たせるためにステンレス鋼材を使用することを考えたとしても、ステンレス鋼が高温で変形するという問題は解決できない。そしてその形状の制限により背圧が大きいため、脱硫塔に乾式燃焼機能を付与する必要はない。移行管の上方に排気管を追加するのみで、乾式燃焼のガス排出を実現することができるが、これにより構造が複雑となり、取り付け空間が実質的には増加する。
【0027】
さらに、本発明はストレートスルー型の塔本体であるため、排気時の背圧がより小さく、船舶の動力システムが破損しにくい。テストによれば、3.2mの直径及び11mの高さを有する洗浄塔の場合、従来のU字形の塔の煙道ガス出口での背圧は約700Paであるが、本発明のストレートスルー型塔は240Paまでに抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】船舶煙突内の元の管路分布状態の模式図である。
図2】従来のU字形の洗浄塔の構造模式図である。
図3】本発明におけるストレートスルー型洗浄塔の内面図である。
図4図3の縦断面の構造模式図である。
図5】2つの分布傘の接続構造模式図である。
図6図5の上面図である。
図7】側方向支持体の構造模式図である。
図8】スプレー装置及び洗浄装置の構造模式図である。
図9】スプレー装置の塔本体内の横断面の構造模式図である。
図10】山形鋼支持体及びU字形の係止部の構造模式図である。
図11】多流体ノズルの構造模式図である。
図12】予冷装置の部分構造模式図である。
図13】本発明におけるストレートスルー型洗浄塔の使用状態を示す図である。
【0029】
1、塔本体;2、洗浄装置;3、ミスト除去器;4、スプレー装置;5、予冷装置;6、煙道ガス上分布傘;7、煙道ガス下分布傘;8、真空煙進入スロート部;9、排水板;10、取付ベース;11、排水管;12、ガイド板;13、山形鋼支持体;14、U字形の係止部;15、伸縮継手;16、側方向支持体;17、腰状の孔;18、真空ガス抽出口;19、外筒管;20、内側環形支管;21、外側環形支管;22、多流体ノズル;23、渦巻形ノズル;24、ストレートスルーパイプ;25、主機;26、ディーゼル発電機;27、焼却炉;28、ボイラー;29、デッキA;30、デッキB;31、デッキC;32、デッキD;33、煙進入管;34、移行管;35、総管路;36、排気管;37、電磁弁。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図3図13を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。
〈実施例1〉
【0031】
図3図4に示すように、ストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔は、円柱状の塔本体1を含み、塔本体の下端には取付ベース10が配置され、取付ベースの中央部には真空煙進入スロート部8が貫通して縦(軸)方向に配置される。
【0032】
真空煙進入スロート部8の上端には、煙道ガス下分布傘7が架設され、煙道ガス下分布傘7の上端には、煙道ガス上分布傘6が架設される。煙道ガス下分布傘7及び煙道ガス上分布傘6の両者は傘の形であり、煙道ガス下分布傘7の上端は開放し、煙道ガス上分布傘6の上端は閉じられている。2つの分布傘の構造は、図5図6に示される。
【0033】
煙道ガス上分布傘6の上方には予冷装置5が配置され、予冷装置の上方には、4ステージのスプレー装置4が配置され、スプレー装置の上方にはミスト除去器3が配置される。ミスト除去器3の上下の両端には洗浄装置2が配置され、洗浄装置のノズルはすべてミスト除去器に向かっている。
【0034】
塔本体の外壁には、8つの側方向支持体16が溶接される。図7に示すように、側方向支持体16には、2つの縦方向に配列された腰状の孔17が設けられ,側方向支持体16は、腰状の孔17及び腰状の孔17に適合して挿設されたボルトを介して、船舶の煙突の内壁に組み付けることができる。
【0035】
塔本体1及び塔本体内の各部品の材料はいずれもステンレス鋼である。
【0036】
図8に示すように、スプレー装置4、洗浄装置2はいずれもストレートスルーパイプ24、内側環形支管20、外側環形支管21、及び多流体ノズル22から構成される。内側環形支管20と外側環形支管21とは同心に配置され、ストレートスルーパイプ24は内側環形支管20と外側環形支管21との中心線に位置する。同じステージのスプレー装置又は洗浄装置上の多流体ノズル22は16個あり、16個の多流体ノズルは、内側環形支管20及び外側環形支管21に均一に配置される。多流体ノズル22の構造図は図11に示される。
【0037】
図9に示すように、ストレートスルーパイプ24の入水口端は、塔本体1の内壁に溶接され、他端は、閉塞されてから外筒管19内に挿設され、外筒管19は、塔本体1の内壁に固定され、ストレートスルーパイプ24と隙間適合し、ストレートスルーパイプ24の閉塞端と塔本体1の内壁との間には、形状変化量よりも大きい幅を有する間隙が設けられる。
【0038】
塔本体1の内壁には、6ステージの山形鋼支持体13が溶接され、スプレー装置及び洗浄装置をそれぞれ支持するために使用される。図10に示すように、山形鋼支持体13の内側の上端にはU字形の係止部14が配置され、外側環形支管21はU字形の係止部14及びネジを介して山形鋼支持体13に固定される。U字形の係止部14は、外側環形支管を高さ方向に固定するのみであり、その内径は外側環形支管の外形よりも大きい。
【0039】
図13に示すように、ストレートスルーパイプ24の入水口端は、塔本体の外部に設けられた入水管と連通し、この入水管には、乾式燃焼状態における塔本体の縦方向の変形をサポートするために、6つの伸縮継手15が設けられる。
【0040】
図12に示すように、予冷装置5は、ブラケットパイプ及びスクロールノズル23により構成される。スクロールノズル23は3つあり、3つのスクロールノズル23は、ブラケットパイプに沿って上下に分布し、隣接するスクロールノズル23の同じ水平面に対して120°の角度を有する。ブラケットパイプ23の一端は塔本体を通して、外部に設けられた入水管と連通し、他端は下方に曲げられ、スクロールノズル23が固定される。
【0041】
真空煙進入スロート部8は2層構造であり、2層構造間には真空中間層が配置され、真空煙進入スロート部の下部外壁には、真空ガス抽出口18が開設され、真空ガス抽出口には真空弁が配置される。
【0042】
煙道ガス上分布傘6及び煙道ガス下分布傘7の斜面の傾度(傾斜角)はいずれも25°であり、煙道ガス上分布傘6の底面の円形の直径は煙道ガス下分布傘よりも小さく、煙道ガス上分布傘6及び煙道ガス下分布傘7の上端面にはいずれも7つ以上のガイド板12が設けられる。ガイド板はV型山形鋼であり、ガイド板のV型開口は外側を向いている。
【0043】
取付ベース10の上端には、排水板9が傾斜して配置される。排水板の中央には、真空煙進入スロート部を収容できる開口が開設され、排水板9と真空煙進入スロート部とは開口で密閉接続され、排水板9のより低い位置の一側には、排水口が配置され、排水口には排水管11が固定配置され、排水管11は、ベースを貫通してから塔本体1の外側に延びる。
【0044】
〈実施例1〉 (1)塔本体の変形量の計算
本実施例では、洗浄塔の直径は3.2mで、高さは11mで,真空煙進入スロート部の直径は1.7mである。また、煙道ガス下分布傘及び煙道ガス上分布傘の底面の円形直径はそれぞれ2.15m、1.075mである。即ち、煙道ガス上分布傘の底面の円形直径は煙道ガス下分布傘の1/2である。
【0045】
本実施例では、使用されたスプレー液は海水である。塔本体の最高温度が300℃、最低温度が20℃である場合、ステンレス鋼の高温変形量の計算式に従って、塔本体の縦方向と径方向の変形は、次のとおり算出された。塔本体の縦方向の変形は38.97mmであり、径方向の変形は11.34mmであった。即ち、実際の製造組立においては、側方向支持体の腰状の孔の高さは38.97mm以上である必要があり、スプレー装置、洗浄装置におけるストレートスルーパイプの閉塞端と塔本体の内壁との間の空隙の幅は11.34mmを超える必要がある。
【0046】
ステンレス鋼の高温変形量の計算式は以下のとおりである。
△L=10^(−5)×[1118(t2−t1)+0.526(t2−t1)^2]×L
式では、 △L−−膨張量(mm)、
t2−−パイプの最高温度(℃)、
t1−−パイプの最低温度(℃)、
L−−パイプの計算長さ(m)である。
【0047】
(2)脱硫効果及び背圧検出
本実施例の洗浄塔を用いて、脱硫前後の煙道ガスの炭素、硫黄含有量及び背圧を測定し、硫黄−炭素比及び燃油硫黄含有量を計算した結果を表1に示す。
【0048】
【0049】
次に、同じ塔本体直径、高さ及び煙進入条件で、U字形の洗浄塔を用いて、脱硫前後の煙道ガスの炭素、硫黄含有量及び背圧を測定し、硫黄−炭素比及び燃油硫黄含有量を計算して、結果を表2に示す。
【0050】
【0051】
表1および2を比較することによって、以下のことがわかった。従来のU字形の洗浄塔では、煙道ガス中の燃油硫黄含有量の排出に関する国際海事機関IMOの排出基準である0.5% m/mまでしか満たすことができない。一方、本実施例では、煙道ガス中の燃油硫黄含有量の排出に関する国際海事機関IMOの最高の放出基準である0.1% m/mを満たすことができ、良好な脱硫効果を有する。また、従来のU字形の洗浄塔の煙道ガス出口での背圧は769〜827Paである。一方、本実施例の煙道ガス出口での背圧は240〜322Paである。従来の技術と比較して、本発明では、顕著な差異が認められ、大きな利点がある。すなわち、本発明では、大きな煙道ガス排出の背圧によるエンジンの損傷という従来技術の課題が解決され、船舶のエンジンの保護という観点で有利である。
【0052】
燃油硫黄含有量とO/CO比の対応関係は、表3に示されるように、国際海事機関IMOによって発行されたMARPOL条約の付則VIにおいて基準が設定されている。
【0053】
【0054】
また、国際海事機関IMOによって発行されたMARPOL条約の付則VIには、表4に示すように、排出規制領域内外の燃油硫黄含有量の基準が定められている。IMOによって発行されたMARPOL条約の付則VIは世界的に公表されている。表4からわかるように、IMOの現在最も厳しい硫黄含有量の規定は0.1% m/mである。
【0055】
【0056】
注:MARPOL条約の付則VIの第14条に規定されている排出規制領域は、現在、バルト海の海域、北海の海域、北米の海域、及び米国加勒比海の海域を含む(2014年1月1日に実施)。
〈実施例2〉
【0057】
本実施例では、煙道ガス下分布傘及び煙道ガス上分布傘の底面の円形直径はそれぞれ2.15m、1.43mである。即ち煙道ガス上分布傘の底面の円形直径は煙道ガス下分布傘の2/3である。他の技術的解決策及び製品のパラメータは、実施例1と同じである。
【0058】
本実施例の洗浄塔を用いて、脱硫前後の煙道ガスの炭素、硫黄含有量及び背圧を測定し、硫黄−炭素比及び燃油硫黄含有量を計算した結果を表5に示す。
【0059】
【0060】
次に、同じ塔本体直径、高さ及び煙進入条件で、U字形の洗浄塔を用いて、脱硫前後の煙道ガスの炭素、硫黄含有量及び背圧を測定し、硫黄−炭素比及び燃油硫黄含有量を計算した結果を表6に示す。
【0061】
【0062】
表5および表6を比較することにより、従来のU字形の洗浄塔は、煙道ガス中の燃油硫黄含有量の排出に関する国際海事機関IMOの排出基準0.5% m/mしか満たすことができないことがわかった。一方、本実施例では、煙道ガス中の燃油硫黄含有量の排出に関する国際海事機関IMOの最高の放出基準0.1% m/mを満たし、良好な脱硫効果という利点を有することが確認された。また、従来のU字形の洗浄塔の煙道ガス出口での背圧は697〜761Paであった。一方、本実施例の煙道ガス出口での背圧は315〜336Paであった。
従来の技術と比較して、本発明では、顕著な差異が認められ、大きな利点がある。すなわち、本発明では、大きな煙道ガス排出の背圧によるエンジンの損傷という従来技術の課題が解決され、船舶のエンジンの保護という観点で有利である。

〈実施例3〉
【0063】
本実施例では、煙道ガス下分布傘及び煙道ガス上分布傘の底面の円形直径はそれぞれ2.15m、1.613mである。即ち、煙道ガス上分布傘の底面の円形直径は煙道ガス下分布傘の3/4である。他の技術的解決策及び製品パラメータは、実施例1と同じである。
【0064】
本実施例の洗浄塔を用いて煙道ガスの脱硫前後の炭素、硫黄含有量及び背圧を測定し、硫黄−炭素比及び燃油硫黄含有量を計算した結果を表7に示す。
【0065】
【0066】
次に、同じ塔本体直径、高さ及び煙進入条件で、U字形の洗浄塔を用いて、煙道ガスの脱硫前後の炭素、硫黄含有量及び背圧を測定し、硫黄−炭素比及び燃油硫黄含有量を計算した結果を表8に示す。
【0067】
【0068】
表7および表8を比較することにより、以下のことがわかった。従来のU字形の洗浄塔は、煙道ガス中の燃油硫黄含有量の排出に関する国際海事機関IMOの排出基準0.5% m/mしか満たすことができない。一方、本実施例では、煙道ガス中の燃油硫黄含有量の排出に関する国際海事機関IMOの最高の放出基準0.1% m/mを満たし、良好な脱硫効果を有する。
また、従来のU字形の洗浄塔の煙道ガス出口での背圧は713〜806Paである。一方、本実施例の煙道ガス出口での背圧は332〜339Paである。
従来の技術と比較して、本発明では、顕著な差異が認められ、大きな利点がある。すなわち、本発明では、大きな煙道ガス排出の背圧によるエンジンの損傷という従来技術の課題が解決され、船舶のエンジンの保護という観点で有利である。
〈実施例4〉
【0069】
本実施例では、煙道ガス下分布傘及び煙道ガス上分布傘の底面の円形直径はそれぞれ2.15m、1.72mである。即ち、煙道ガス上分布傘の底面の円形直径は煙道ガス下分布傘の4/5である。他の技術的解決策及び製品パラメータは、実施例1と同じである。
【0070】
本実施例の洗浄塔を用いて、脱硫前後の煙道ガスの炭素、硫黄含有量及び背圧を測定し、硫黄−炭素比及び燃油硫黄含有量を計算した結果を表9に示す。
【0071】
【0072】
次に、同じ塔本体直径、高さ及び煙進入条件で、U字形の洗浄塔を用いて、脱硫前後の煙道ガスの炭素、硫黄含有量及び背圧を測定し、硫黄−炭素比及び燃油硫黄含有量を計算した結果を表10に示す。
【0073】
【0074】
表9および表10を比較することによって、以下のことがわかった。従来のU字形の洗浄塔は、煙道ガス中の燃油硫黄含有量の排出に関する国際海事機関IMOの排出基準0.5% m/mしか満たすことができない。一方、本実施例では、煙道ガス中の燃油硫黄含有量の排出に関する国際海事機関IMOの最高の放出基準0.1% m/mを満たすことができ、良好な脱硫効果を有する。また、従来のU字形の洗浄塔の煙道ガス出口での背圧は734〜819Paである。一方、本実施例の煙道ガス出口での背圧は330〜348Paである。
従来の技術と比較して、本発明では、顕著な差異が認められ、大きな利点がある。すなわち、本発明では、大きな煙道ガス排出の背圧によるエンジンの損傷という従来技術の課題が解決され、船舶のエンジンの保護という観点で有利である。
〈実施例5〉
【0075】
本実施例のストレートスルー型船舶排ガス洗浄塔の動作方法は、以下の具体的なプロセスを含む。
(A)脱硫プロセス
(A)脱硫プロセスでは、船舶の排ガスを真空煙進入スロート部8を通して塔本体内に進入させ、真空煙進入スロート部から出る煙道ガスの一部を、煙道ガス下分布傘7の側端から直接流出して上方に上昇させ、他の部分を、煙道ガス下分布傘を通してから煙道ガス上分布傘6の側端から流出して上方に上昇させ、
予冷装置5により、予備冷却水を下方にスプレーして高温の煙道ガスを冷却し、冷却後の煙道ガスを上昇させ、各層のスプレー装置を順に通過させ、同時に、スプレー装置により、脱硫液を連続的に下方にスプレーして、煙道ガスと脱硫反応させ、
脱硫反応後の煙道ガスを上昇させ、ミスト除去器3により水蒸気を除去し、塔本体の上端の排気口を通して排出させ、
洗浄塔を長時間作動した後、上部と下部の2つの洗浄装置により、りミスト除去器を定期的に洗浄し、
煙道ガス上分布傘、煙道ガス下分布傘の阻止作用下で、スプレー液及び洗浄水を、ガイド板間の間隔に沿って流出させることにより、上昇する煙道ガスと直接衝突させて水ミストを形成することを回避するとともに、水が真空煙進入スロート部内に流入するのを回避し、
塔本体の底部に落下したスプレー液及び洗浄水を排水板9により集め、次に排水管11を通して塔外に排出する。
【0076】
(B)乾式燃焼プロセス
(B)乾式燃焼プロセスでは、
真空煙進入スロート部8を通して、低硫黄煙道ガスを塔本体に進入させ、内部構造を通過して大気中に直接排出させ、
高温の煙道ガスにより、塔本体を熱膨脹と冷収縮で縦方向と横方向の両方に変形させ、縦方向の変形のサポート構造により、延びる塔本体及び側方向支持体上の固定ボルトを腰状の孔17に沿って縦方向に変形させ、同時に、外部に設けられた入水管は塔本体の変形により伸縮継手15により引っ張られ、塔本体の変形による入水管の破裂を回避し、
横方向の変形のサポート構造において、スプレー装置4、洗浄装置2上の内側環形支管及び外側環形支管はいずれも環形で、引張変形機能を有し、同時に、ストレートスルーパイプ24の一端が固定され、他端が外筒管19に可動的に接続され、ストレートスルーパイプ24の径方向の変形をサポートし、U字形の係止部14は、外側環形支管を高さ方向のみに制限(規制)し、幅方向に外側環形支管の径方向の変形をサポートする。
【0077】
有益な技術的効果は以下のとおりである。
実施例1〜4のテストデータによれば、本発明では良好な脱硫効果及び低背圧という利点を有する。洗浄塔の脱硫効果は、上煙道ガス分布傘と下煙道ガス分布傘の底面の円形直径の比の影響を受ける。具体的には、煙道ガス上分布傘の底面の円形直径が煙道ガス下分布傘の1/2であるとき、燃油硫黄含有量は0.007〜0.01% m/mであり、煙道ガス上分布傘の底面の円形直径が煙道ガス下分布傘の2/3であるとき、燃油硫黄含有量は0.005〜0.006% m/mであり、煙道ガス上分布傘の底面の円形直径が煙道ガス下分布傘の3/4であるとき、燃油硫黄含有量は0.006〜0.007% m/mであり、煙道ガス上分布傘の底面の円形直径が煙道ガス下分布傘の4/5であるとき、燃油硫黄含有量は約0.007% m/mであった。即ち、煙道ガス上分布傘の底面の円形直径が煙道ガス下分布傘の2/3であるとき、燃油硫黄含有量は最も低く、洗浄塔の脱硫効果は最も良い。煙道ガス上分布傘と煙道ガス下分布傘の底面の円形直径の比が2/3よりも大きいか又は小さい場合、燃油硫黄含有量は増加する、即ち洗浄塔の脱硫効果は低下する。従って、煙道ガス上分布傘の底面の円形直径が煙道ガス下分布傘の直径の1/2〜2/3であるとき、本発明の脱硫効果は最も良いと結論付けることができる。この原因は、分布傘に配置された、煙道ガスが上方に移動する経路と洗浄水が下方に流動する経路とを仕切るガイド板構造に関連する可能性があるが、それは更なる実験的実証を必要とする。
【0078】
上記実施形態は本発明を限定するものではなく、本発明は上記例に限定されるものではなく、本発明の技術的解決策の範囲内で当業者が行う変更、修正、追加または代用も本発明の保護範囲に含まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13