【解決手段】物流機器システム100は、スタッカクレーン5と、有線リモコン71と、無線LANリモコン75と、クレーンコントローラ51とを備えている。有線リモコン71は、スタッカクレーン5との距離が所定の距離以内である場合にスタッカクレーン5の動作を制御可能となる。無線LANリモコン75は、スタッカクレーン5と無線で接続可能であり、スタッカクレーン5の動作を制御する。クレーンコントローラ51は、スタッカクレーン5と無線LANリモコン75が接続された状態で、スタッカクレーン5と有線リモコン71が接続されると、無線LANリモコン75によるスタッカクレーン5の動作制御を実行せず、有線リモコン71による該スタッカクレーン5の動作制御を実行する。
前記制御部は、前記第1操作端末と前記第2操作端末が同じ物流機器に接続している場合、前記第2操作端末により当該物流機器の状態確認の問い合わせ操作が行われた場合、前記第2操作端末に対して当該物流機器の状態情報を送信する、請求項1に記載の物流機器システム。
前記制御部は、前記物流機器に接続中の前記第1操作端末の接続が遮断されると、所定時間経過後に前記第2操作端末による物流機器の動作制御を実行可能にする、請求項1〜3のいずれかに記載の物流機器システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の赤外線及び有線接続タイプのリモコンは、機器とリモコン間が数mの距離での接続しかできないので、操作者は、対象機器を目視できる範囲で操作することになる。したがって、操作者は、周囲の安全を確認しながら接続及び操作可能である。
しかし、LANを使用して接続するタイプのリモコンでは、インターネットが接続可能な場所であれば場所を問わずに接続できてしまう。そのため、操作者が意図しない機器と接続及び操作してしまうことがあり、その場合は機器の付近の状態を確認せずに機器を動作させるおそれがある。
【0006】
そのような場合、機器の付近にいる他の操作者が危険な状態になることが想定される。
また、従来は先に接続されたリモコンが操作権限を有するので、より機器に近い位置にいる操作者(例えば有線リモコンによる操作者)が操作できない場合があった。
本発明の目的は、物流機器システムにおいて、操作対象である機器に近い操作者からの接続を優先することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本発明の一見地に係る物流機器システムは、物流機器と、第1操作端末と、第2操作端末と、制御部とを備えている。
第1操作端末は、物流機器との距離が所定の距離以内である場合に物流機器の動作を制御可能となる。
第2操作端末は、物流機器と無線で接続可能であり、物流機器の動作を制御する。
制御部は、物流機器と第2操作端末が接続された状態で、当該物流機器と第1操作端末が接続されると、第2操作端末による該物流機器の動作制御を実行せず、第1操作端末による該物流機器の動作制御を実行する。
【0009】
第1操作端末と第2操作端末の組み合わせは、例えば、「有線:無線LAN」である。他には、例えば、「有線:赤外線」、「赤外線:無線LAN」がある。
物流機器は、例えば、クレーン、有軌道台車、AGV、シャトル台車である。
「第2操作端末による該物流機器の動作制御を実行せず」とは、例えば、第1操作端末と第2操作端末の両方が物流機器に接続を許可するが第2操作端末には操作権限を与えないことであり、別の例としては第2操作端末に接続を許可しないことである。
【0010】
このシステムでは、物流機器と第2操作端末が接続された状態で、当該物流機器と第1操作端末が接続されると、第2操作端末による該物流機器の動作制御を実行せず、第1操作端末による該物流機器の動作制御を実行する。つまり、物流機器に近い作業者の操作が優先される。その結果、例えば、当該作業者の安全性が向上する。
【0011】
制御部は、第1操作端末と第2操作端末が同じ物流機器に接続している場合、第2操作端末により当該物流機器の状態確認の問い合わせ操作が行われた場合、第2操作端末に対して当該物流機器の状態情報を送信してもよい。
このシステムでは、第1操作端末と第2操作端末が同じ物流機器に接続している場合、第2操作端末で物流機器の操作をすることはできないが、物流機器の状態を知ることができる。したがって、システム全体における利便性が向上する。
【0012】
第2操作端末は少なくとも2つ備えていてもよい。
制御部は、一方の第2操作端末により物流機器を制御可能状態である時に、他方の第2操作端末において当該物流機器に示される特定情報が入力されると、一方の第2操作端末による該物流機器の動作制御を実行せず、他方の第2操作端末による該物流機器の動作制御を実行してもよい。
このシステムでは、物流機器に示される特定情報を入力することで物流機器に近い第2操作端末を判別でき、それにより当該第2操作端末を優先できる。したがって、物流機器に近い作業者の安全性が向上する。
なお、「当該物流機器に示される」とは、物流機器自体又は物流機器近傍の設備や装置に示されるものであればよい。また、「特定情報」とは、不変でも可変でもよく、固有でも非固有でもよい。
【0013】
制御部は、物流機器に接続中の第1操作端末の接続が遮断されると、所定時間経過後に第2操作端末による物流機器の動作制御を実行可能にしてもよい。
このシステムでは、所定時間は第2操作端末による物流機器の動作制御を実行できないので、物流機器の近くにいる作業者の安全性が高くなる。
【0014】
第1操作端末は有線により物流機器に接続しており、第2操作端末は無線により物流機器に接続していてもよい。
物流機器システムは、赤外線により物流機器に接続する第3操作端末をさらに備えていてもよい。
制御部は、同じ物流機器に第1操作端末、第2操作端末、及び第3操作端末が接続した場合、第1操作端末、第3操作端末、第2操作端末の順に操作権限を与えてもよい。
このシステムでは、物流機器と第2操作端末が接続された状態で、当該物流機器と第1操作端末又は第3操作端末が接続されると、第2操作端末による該物流機器の動作制御を実行せず、第1操作端末又は第3操作端末による該物流機器の動作制御を実行する。別の例として、物流機器と第3操作端末が接続された状態で、当該物流機器と第1操作端末が接続されると、第3操作端末による該物流機器の動作制御を実行せず、第1操作端末による該物流機器の動作制御を実行する。なお、物流機器と第3操作端末が接続された状態で、第2操作端末による接続が試みられても、第2操作端末は当該物流機器に接続されない。このように、物流機器に近い作業者の操作が優先されることで、例えば、当該作業者の安全性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る物流機器システムでは、操作対象である機器に近い操作者からの接続を優先する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態
(1)自動倉庫
図1を用いて、自動倉庫1を説明する。
図1は、第1実施形態の自動倉庫の模式的斜視図である。
自動倉庫1は、ラック3を有している。ラック3は、複数の支柱7を備える構造体であり、一対の支持部材で構成される棚9を複数備えている。
【0018】
自動倉庫1は、スタッカクレーン5(物流機器の一例)を有している。スタッカクレーン5は、クレーンコントローラ51(
図2)から送信される制御信号に従って、荷物Wの搬送及びラック3との間での荷物Wの移載を行う装置である。
スタッカクレーン5は、複数種類のリモコンによって手動操作可能である(後述)。
【0019】
(2)スタッカクレーン
スタッカクレーン5は、下部台車11及び上部台車(図示せず)と、下部台車11及び上部台車を接続する2本のマスト13と、それに沿って昇降する昇降台15とを備える。
下部台車11は、例えば床面に設置された下レール17に沿って走行する台車であり、上部台車は、例えば天井面に設置された上レール(図示せず)に沿って走行する台車である。下部台車11には、走行モータ19(
図2)が設けられている。
【0020】
昇降台15には、荷物Wの移載を行う移載装置21が設置されている。移載装置21は、スライドフォーク21aによって荷物Wの移載を行う装置である。移載装置21は、移載モータ23(
図2)を有している。
昇降台15は、ワイヤロープで懸吊され、昇降駆動装置25によって駆動される。昇降駆動装置25は、昇降モータ27(
図2)を有している。昇降台15は、昇降モータ27の回転に応じて、2本のマスト13にガイドされながら昇降する。
スタッカクレーン5は、軌道(下レール17及び上レール)に沿って走行し、昇降台15を昇降させ、かつ、移載装置21のスライドフォーク21aを出退させる。スタッカクレーン5は、このような動作により、荷物Wの搬送と、ラック3及びステーション等の間での荷物Wの受け渡し(移載)とを行うことができる。
【0021】
(3)自動倉庫の制御構成
図2を用いて、自動倉庫1の制御構成を説明する。
図2は、物流機器システムの制御構成を示すブロック図である。
自動倉庫1は、クレーンコントローラ51(制御部の一例)を有している。クレーンコントローラ51は、スタッカクレーン5に設けられている。クレーンコントローラ51は、地上コントローラ53からの指令信号に基づいて走行モータ19、移載モータ23、昇降モータ27を制御する。
【0022】
クレーンコントローラ51は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。クレーンコントローラ51は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
クレーンコントローラ51は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
クレーンコントローラ51の各要素の機能は、一部又は全てが、クレーンコントローラ51を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、クレーンコントローラ51の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
【0023】
クレーンコントローラ51は、操作権限設定部55を有している。操作権限設定部55は、手動運転モードにおいていずれのリモコン(後述、操作端末の一例)に操作権限を設定する。具体的には、手動運転モードにおいて、操作権限は1つのリモコンに限定されている。なぜなら、複数のリモコンがある場合には、それらから同時に操作が行われないようにスタッカクレーン5の排他制御が必要となるからである。なお、操作権限設定部55は、必要に応じて複数のリモコン間で操作権限を移行する(後述)。
クレーンコントローラ51は、制御実行部57を有している。制御実行部57は、走行モータ19、移載モータ23、昇降モータ27を制御する。
【0024】
クレーンコントローラ51は、状態情報送信部59を有している。状態情報送信部59は、いずれかのリモコンから状態要求を受信すると、スタッカクレーン5の状態を通知する。
クレーンコントローラ51は、表示制御部60を有している。表示制御部60は、表示装置29(後述)に各種情報を表示する。
【0025】
図3に示すように、クレーンコントローラ51には、走行モータ19と、昇降モータ27と、移載モータ23が接続されている。クレーンコントローラ51は、これらモータに制御信号を送信する。
クレーンコントローラ51には、さらに、表示装置29と、警報器31が接続されている。表示装置29は、各種ディスプレイである。警報器31は、例えば、ランプ、スピーカである。
なお、クレーンコントローラ51には、図示しないが、荷物Wの大きさ、形状及び位置検出するセンサ、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0026】
クレーンコントローラ51には、有線接続部61と、赤外線接続部63と、無線LAN接続部65が、双方向通信を許容した形態で、信号線を介して電気的に接続されている。これら接続部は、手動操作(例えば、運転モードの切換え、スタッカクレーン5の各種操作)を行う際の制御信号を受信するためのものである。
有線接続部61には、有線リモコン71がケーブル72で情報を送受信可能に接続される。なお、有線リモコン71は、ケーブル72の届く範囲でしか操作できない。ここで、ケーブル72の長さは、有線リモコン71からスタッカクレーン5の動作が目視できる距離以内になるように設定されており、ケーブル72が外れると自動的に有線リモコン71の操作ができなくなる。
なお、有線リモコン71は、各種操作ボタン、表示部、信号送受信部等を有している。
【0027】
赤外線接続部63には、赤外線リモコン73が情報を送受信可能に接続される。赤外線リモコン73は、赤外線を使用してスタッカクレーン5から数m離れた位置で操作可能である。なお、赤外線リモコン73は、それをスタッカクレーン5に向けた状態でないと操作できない。ここで、操作範囲はスタッカクレーン5を目視できる距離内に設定されており、この範囲から遠ざかると自動的に赤外線リモコン73の操作ができなくなる。
なお、赤外線リモコン73の特徴としては、赤外線は光なので鏡面加工に近い素材(白い壁等)で反射することがある。また、赤外線リモコン73の場合、リモコンの操作射線上に複数の装置が並んでいると、誤って操作してしまう可能性がある。以上の特徴により、赤外線接続は、正否問わず操作できる装置は目視範囲内であり、そのため無線接続よりは安全性は高いが、有線接続より安全性は劣る。
なお、赤外線リモコン73は、各種操作ボタン、表示部、無線アンテナ、信号送受信部等を有している。
【0028】
無線LAN接続部65には、無線LAN(Local Area Network)リモコン75が情報を送受信可能に接続される。無線LANリモコン75は、無線LANを使用することで、スタッカクレーン5を遠隔操作できるリモコンである。無線LANリモコン75は、例えば、スマートフォン、タブレット端末等の汎用の携帯機器であり、スタッカクレーン5を操作するためのアプリケーションプログラム(以下、「機器操作アプリ」という。)を実行できる。
なお、無線LANリモコン75の特徴としては、遠隔の視認不可の装置が操作できてしまう。したがって、無線接続は、有線接続や赤外線接続より安全性が低い。
無線LANリモコン75は、タッチパネルディスプレイを有している。タッチパネルディスプレイは、リモコン操作者が指で触れて操作するタッチパネル(操作部)と、様々な情報を表示するディスプレイ(表示部)と、を一体化した構成である。また、無線LANリモコン75には図略の無線アンテナ及び信号送受信部が内蔵されている。
以上に述べたスタッカクレーン5、有線リモコン71、赤外線リモコン73及び無線LANリモコン75によって、物流機器システム100が構成されている。
【0029】
(4)運転モード
スタッカクレーン5は、自動運転モードと手動運転モードの2種類の運転モードを切り替えて動作可能である。スタッカクレーン5の運転モードの切換は、後述するリモコンや地上コントローラ53のスイッチによって行われる。
【0030】
(4−1)自動運転モード
自動運転モードでは、クレーンコントローラ51は、記憶された自動運転に関するデータ等に基づいて、下部台車11、昇降台15等の動作を制御する。
具体的には、地上コントローラ53は、自動運転モードにおいて、図示しない在庫管理コンピュータから入出庫指令を受信すると、例えば、スタッカクレーン5に入庫先の棚9又は出庫元の棚9の位置を指令する。そして、クレーンコントローラ51は、地上コントローラ53の指令に基づいて、入庫作業又は出庫作業を行うように、スタッカクレーン5の走行モータ19、昇降モータ27及び移載モータ23を制御する。
【0031】
(4−2)手動運転モード
手動運転モードでは、クレーンコントローラ51は、有線接続部61、赤外線接続部63、無線LAN接続部65を介して受信したリモコン操作者からの動作指示に従って、下部台車11、昇降台15等の動作を制御する。
【0032】
この物流機器システム100では、1台のスタッカクレーン5に対するリモコン接続の操作権限は1つに制限されている。そして、リモコン接続の優先順位は、有線接続、赤外線接続、無線LAN接続の順番である。
優先順位が高いリモコンは、優先順位が低いリモコンが先に操作権限を有していても、操作権限を奪うことができる。つまり、その後は、先に接続されていたリモコンの操作は無効となる。
ただし、優先順位の低いリモコンは、優先順位が高いリモコンに操作権限を奪われても、スタッカクレーン5と接続状態を維持することはできる。これにより、優先順位が低いリモコンによって、スタッカクレーン5の操作はできないが、例えばスタッカクレーン5の状態確認をすることはできる。
優先順位が低いリモコンは、優先順位が高いリモコンが先に操作権限を有していれば、操作権限を奪うことができない。このように設定している理由は、機器に近い操作者は、機器の周りの様子が分かるので、機器を安全に操作できるからである。
【0033】
(4−3)手動運転モードにおける操作権限設定制御動作
図3及び
図4を用いて、クレーンコントローラ51の操作権限設定制御動作を説明する。
図3及び
図4は、クレーンコントローラの操作権限設定制御動作を示すフローチャートである。
以下に説明する制御フローチャートは例示であって、各ステップは必要に応じて省略及び入れ替え可能である。また、複数のステップが同時に実行されたり、一部又は全てが重なって実行されたりしてもよい。
さらに、制御フローチャートの各ブロックは、単一の制御動作とは限らず、複数のブロックで表現される複数の制御動作に置き換えることができる。
なお、各装置の動作は、制御部から各装置への指令の結果であり、これらはソフトウェア・アプリケーションの各ステップによって表現される。
【0034】
(4−3−1)第1の例
図3を用いて、クレーンコントローラ51の操作権限設定制御動作の第1の例を説明する。
図3のステップS1では、接続要求を受信したか否かが判断される。具体的には、クレーンコントローラ51が上記判断を行う。接続要求が受信されれば、プロセスはステップS2に移行する。
ステップS2では、手動運転モードか否かが判断される。手動運転モードであればプロセスはステップS3に移行し、自動運転モードであればプロセスはステップS9に移行する。ステップS9では、接続不可の応答がされる。具体的には、操作権限設定部55は、いずれかの接続部を介して、当該リモコンに対して「無効」である旨を知らせる接続不可通知を、接続要求への応答として接続要求リモコンに送信する。この結果、現在別のリモコンが操作権限を有していることが、接続要求リモコンの画面に表示される。このとき、操作権限を有するリモコンの種類も表示されてよい。以下、接続不可の応答は同様である。
なお、上記の手動運転モードは、地上コントローラ53のスイッチにより手動運転モードに切り替えられている。ただし、リモコン(操作権限を有するもの)により接続して手動運転モードに切り替えられてもよい。
【0035】
ステップS3では、上位又は同位のリモコンが接続済みであるか否かが判断される。具体的には、クレーンコントローラ51が上記判断をする。上位又は同位のリモコンが接続済みでなければプロセスはステップS4に移行し、上位又は同位のリモコンが接続済みであればプロセスはステップS9に移行する。後者は、例えば、赤外線リモコン73が接続を行おうとして、有線リモコン71又は別の赤外線リモコン73がすでに接続されている場合である。ステップS9では、接続不可の応答がなされる。
ステップS4では、下位のリモコンが存在するか否かが判断される。具体的には、クレーンコントローラ51が上記判断をする。「下位のリモコンが存在する」とは、例えば、赤外線リモコン73が接続を行おうとしたときに無線LANリモコン75が存在する場合である。下位のリモコンが存在しなければプロセスはステップS5及びS6をスキップしてステップS7に移行し、下位のリモコンが存在すればプロセスはステップS5に移行する。
【0036】
ステップS5では、下位のリモコンが接続済みであるか否かが判断される。具体的には、クレーンコントローラ51が上記判断を実行する。下位のリモコンが接続済みでなければプロセスはステップS7に移行し、下位のリモコンが接続済みであればプロセスはステップS6に移行する。後者は、例えば、
図5の上段に示すように、有線リモコン71が接続を行おうとして、無線LANリモコン75又は赤外線リモコン73がすでに接続されている場合である。
ステップS6では、下位のリモコンの操作権限が剥奪される。具体的には、操作権限設定部55が、下位のリモコンの操作権限を無効にする。さらに、クレーンコントローラ51は、下位のリモコンに操作権限剥奪通知を送信する。その結果、それ以降は、当該下位のリモコンからの操作は無効になる。
【0037】
ステップS7では、接続トライ中のリモコンに操作権限が設定される。また、操作権限設定部55は、いずれかの接続部を介して、当該リモコンに対して「有効」である旨を指示する接続通知を送信する。これにより、当該リモコンには、クレーンコントローラ51に接続している旨が表示される。この結果、リモコン操作者は、現在のリモコンの操作によりスタッカクレーン5を手動操作できることを知ることができる。
その後、リモコン操作者は、当該リモコンを操作する。クレーンコントローラ51は、信号を受信して、スタッカクレーン5を制御する。
【0038】
(4−3−2)第2の例
図4を用いて、クレーンコントローラ51の操作権限設定制御動作の第2の例を説明する。なお、
図4の制御動作は、無線LANリモコン75が接続を行おうとして
図3のステップS3において同位のリモコン、つまり、別の無線LANリモコン75がすでに接続されていると判断された場合である。言い換えると、複数の無線LANリモコン75が1台のスタッカクレーン5に接続しようとした場合の操作権限の移動の場合である。
図4のステップS11では、接続トライ中であることの警告を行う。具体的には、クレーンコントローラ51が警報器31の表示ランプを点灯させることで、周囲にいる人に外部の無線LANリモコン75から接続権限を取得トライ中であることを知らせる。
【0039】
ステップS12では、無線LANリモコン75の接続キー(特定情報の一例)がスタッカクレーン5の表示装置29に表示させられる。具体的には、表示制御部60が、接続キーを表示装置29に表示する。接続キーは、数字、文字、記号等からなり、例えば、接続ごとに異なるように変化させられる。変形例として、接続キーは、固定でもよい。
接続キーは、スタッカクレーン5に対応するユニークなものであってもよい。ただし、接続キーは、操作者がスタッカクレーン5を見える位置でないと認識できないという条件を満たしさえすればよいので、スタッカクレーン5にユニークなものでなくてもよい。
また、さらに別の変形例として、スタッカクレーン5に表示器がない場合は、スタッカクレーン5又はその近傍の設備に、接続キーを表示してもよい。
【0040】
ステップS13では、所定時間が経過したか否かが判断される。具体的には、クレーンコントローラ51が上記判断を行う。所定時間が経過していなければプロセスはステップS14に移行し、所定時間が経過していればプロセスはステップS18に移行する。ステップS18では、接続不可が応答される。
ステップS14では、接続キーが入力されたか否かが判断される。具体的には、クレーンコントローラ51が上記判断を行う。接続キーが入力されれば、プロセスはステップS15に移行し、接続キーが入力されなければプロセスはステップS13に戻る。通常は、リモコン操作者は、接続しようとしたスタッカクレーン5を目視して、接続キーを無線LANリモコン75に入力する。なお、変形例では、スタッカクレーン5にLANでの接続設定が入っている2次元バーコードを貼り、これをカメラで読み込むことでスタッカクレーン5と接続を行う。
【0041】
ステップS15では、既に接続されている無線LANリモコン75の操作権限が剥奪される。具体的には、操作権限設定部55が、先に接続されていた無線LANリモコン75の操作権限を無効にする。その結果、その後は、先に接続されていた無線LANリモコン75の操作は無効になる。なお、操作権限を失った無線LANリモコン75の操作画面には、操作権限が別の無線LANリモコン75に移ったことが表示される。
ステップS16では、接続トライ中の無線LANリモコン75に操作権限が設定され、さらに、無線LANリモコン75に接続通知が送信される。これにより、当該無線LANリモコン75には、クレーンコントローラ51に接続している旨が表示される。
【0042】
このように無線LAN接続の場合は、接続キーを入力した無線LANリモコン75が操作権限を奪い取ることができる。なぜなら、接続キーを入力したということは、当該リモコン操作者はスタッカクレーン5の側にいることを意味するので、スタッカクレーン5の周囲の状態を十分に把握でき、したがって、安全性がより確保されているからである。
【0043】
ステップS17では、無線LANリモコン75が操作権限を有している間は、警報器31の表示ランプの色を変えたり、スピーカでブザーやメロディーを鳴らしたりすることで、遠隔操作中であることをスタッカクレーン5の周囲の人に知らせる。
【0044】
なお、操作権限を有するリモコンの接続が遮断されてから所定時間(例えば、3〜5分)が経過すれば、他のリモコンが接続(操作権限を取得)できるようになる。なお、この場合、前記所定時間中に他のリモコンが接続を試みた場合、当該他のリモコンには残り時間が表示される。例えば、有線接続していても、有線リモコン71がスタッカクレーン5から抜かれてから所定時間が経過すれば、無線LAN接続が可能になる。つまり、所定時間は無線LAN接続によるスタッカクレーン5の動作制御を実行できないので、スタッカクレーン5の近くにいる作業者の安全性が高くなる。なお、リモコンの優先順位は機器に対して近い順に上位となるように定められているので、より安全に遮断を行うために、上位のリモコンになるほど前記所定時間が長く設定されている。
【0045】
図5を用いて、無線LANリモコン75がクレーンコントローラ51に接続中に有線リモコン71がクレーンコントローラ51に接続された場合を説明する。
図5は、リモコンによる接続動作の一例を示すシーケンス図である。
ステップS101では、有線リモコン71がクレーンコントローラ51に接続要求を送信する。
【0046】
ステップS102では、クレーンコントローラ51の操作権限設定部55が、無線LANリモコン75の操作権限を無効にする。
ステップS103では、クレーンコントローラ51が、無線LANリモコン75に操作権限剥奪通知を送信する。以上のステップS102及びステップS103は、
図3のステップS6に対応する。
【0047】
ステップS104では、クレーンコントローラ51の操作権限設定部55が、有線リモコン71の操作権限を有効にする。
ステップS105では、クレーンコントローラ51が、有線リモコン71に接続通知を送信する。以上のステップS104及びステップS105は、
図3のステップS7に対応する。
【0048】
ステップS106では、無線LANリモコン75が、クレーンコントローラ51に状態要求を送信する。
ステップS107では、クレーンコントローラ51が、無線LANリモコン75にスタッカクレーン5の状態を通知する。スタッカクレーン5の状態とは、例えば、位置、他のリモコンによる動作、走行距離等の履歴である。
なお、無線同士の操作権限の移行ではなく、単に無線接続を行う場合(例えば、他のリモコンによる接続がない場合)は、接続キーの入力は必須でもよいし、不要でもよい。
【0049】
2.実施形態の特徴
前記実施形態は下記のようにも説明できる。
物流機器システム100(物流機器システムの一例)は、スタッカクレーン5と、有線リモコン71と、無線LANリモコン75と、クレーンコントローラ51とを備えている。
有線リモコン71(第1操作端末の一例)は、スタッカクレーン5との距離が所定の距離以内である場合にスタッカクレーン5の動作を制御可能となる。
無線LANリモコン75(第2操作端末の一例)は、スタッカクレーン5と無線で接続可能であり、スタッカクレーン5の動作を制御する。
クレーンコントローラ51(制御部の一例)は、スタッカクレーン5と無線LANリモコン75が接続された状態で、当該スタッカクレーン5と有線リモコン71が接続されると、無線LANリモコン75による該スタッカクレーン5の動作制御を実行せず、有線リモコン71による該スタッカクレーン5の動作制御を実行する。
【0050】
この物流機器システム100では、スタッカクレーン5に近いリモコン操作者の操作が優先されることで、当該作業者の安全性が向上する。
【0051】
3.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
異なる種類のリモコンにより可能な操作は同じでもよいし、異なっていてもよい。後者の場合は、ある種類のリモコンによって可能な操作が、他の種類のリモコンによっては操作不能に設定される。例えば、リモコンの優先順位に従って上位程多くの動作ができてもよい。また、下位ほど危険の少ない動作しかできなくてもよい。
第1実施形態では上位のリモコンが接続して操作権限を奪っても下位のリモコンは接続状態を維持していたが、上位のリモコンが接続して操作権限を奪うと下位のリモコンの接続を遮断してもよい。
【0052】
第1実施形態では各種リモコンはクレーンコントローラに接続されるとして説明したが、これらリモコンは地上コントローラに接続される構成であってもよい。
物流機器の種類は、スタッカクレーンに限定されない。例えば、上位コンピュータからの指示に従って荷物の搬送を行う無人搬送車、または、上位コンピュータからの指示に従って自動で荷物を仕分ける仕分け装置にも本発明は適用可能である。
【0053】
さらに、物流機器には、コンピュータ制御の下で金属材料の切削等を行う工作機械や、コンピュータ制御の下で糸を織って布を作製する自動織機も含まれる。