【解決手段】第一吸引装置73と、カッタ装置75と、上部押えレバー79Aと、第二吸引装置87と、を備える糸処理装置70において実施される糸処理方法であって、カッタ装置75を切り替えて、第一吸引装置73によって給糸ボビン11Aの糸Yの吸引を開始させるステップと、第一吸引装置73が吸引を開始した後、所定時間が経過した場合に、上部押えレバー79Aの作動を開始させて、上部押えレバー79Aと給糸ボビン11Aとを接触させるステップと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1に示されるように、糸巻取システム1は、自動ワインダ3と、ボビン移送装置5と、ボビン供給装置51と、糸端処理装置53と、ボビン抜取装置55と、を備えている。
【0017】
自動ワインダ3は、糸端Y1が巻管12の巻管内部12cに配置された準備済給糸ボビン11B(
図4(d)参照)から糸Yを引き出し、パッケージPとして巻き取る装置である。自動ワインダ3は、
図1及び
図2に示されるように、エンドフレーム20と、複数(例えば24個)のワインダユニット(糸巻取機)30と、玉揚台車45と、を備えている。エンドフレーム20は、ディスプレイ等の表示部21と、入力キー等の操作部(入力部)22と、自動ワインダ3の動作を制御する機台制御部23と、を有している。表示部21は、各ワインダユニット30の運転状況等を表示する。操作部22は、オペレータによって各ワインダユニット30の運転条件、及び糸処理装置70の糸処理条件の設定等が行われる。
【0018】
機台制御部(制御部)23は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって構成されている。機台制御部23は、自動ワインダ3及び糸処理装置70における各種制御処理を実行する。このような各種制御処理は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されることにより行われる。本実施形態では、機台制御部23によって実行される糸処理装置70の糸処理制御に一つの特徴がある。
【0019】
図7に示されるように、機台制御部23は、ボビン検出センサ89、糸検出センサ(検出部)73F、可動シャッタ駆動部75D、シリンダ駆動部77D、レバー駆動部79D、レバー駆動部81B、ノズル駆動部85B、及び吸引シャッタ駆動部87Dを制御する。また、機台制御部23は、糸処理制御における準備済給糸ボビン11Bの逆回転量を、操作部22を介して受け付け可能である。機台制御部23は、操作部22から入力された逆回転量に基づいて、上部押えレバー79Aの離反処理を実行可能である。
【0020】
ワインダユニット30は、
図1及び
図2に示されるように、一方向に配列されると共に、
図4(d)に示されるような準備済給糸ボビン11Bから糸Yを解舒してパッケージPを形成する。
図3に示されるように、ワインダユニット30は、巻取装置31と、テンション付与装置32と、糸監視装置33と、上糸捕捉装置34と、下糸捕捉装置35と、糸継装置36と、ユニット制御部40(
図2参照)と、を有している。
【0021】
巻取装置31は、クレードル31aと、巻取ドラム31bと、を有している。クレードル31aは、パッケージPを支持する。巻取ドラム31bは、糸YをトラバースさせつつパッケージPを回転させる。これにより、所定の位置にセットされた準備済給糸ボビン11Bから糸Yが巻き取られてパッケージPが形成される。テンション付与装置32は、準備済給糸ボビン11BからパッケージPに走行する糸Yに所定のテンションを付与する。
【0022】
糸監視装置33は、糸欠陥(糸Yの太さ異常、糸Yへの異物の混入等)を検出するために、走行する糸Yを監視する。糸欠陥が検出された場合には、別途設けられたカッタによって糸Yが切断される。上糸捕捉装置34は、糸Yが切断された場合に、パッケージP側の糸Yの糸端を捕捉して糸継装置36に案内する。下糸捕捉装置35は、糸Yが切断された場合に、準備済給糸ボビン11B側の糸Yの糸端を捕捉して糸継装置36に案内する。糸継装置36は、上糸捕捉装置34及び下糸捕捉装置35によって案内された糸端同士を繋ぐ。
【0023】
図2に示されるユニット制御部40は、CPU、ROM、RAM等で構成されている。ユニット制御部40は、ワインダユニット30における各種制御処理を実行する。このような各種制御処理は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されることにより行われる。
【0024】
玉揚台車45は、ワインダユニット30の配列方向(一方向)に沿って移動可能であり、ワインダユニット30において満管になったパッケージPを取り外すパッケージ取外動作、糸Yを巻き付けるための巻管を装着しつつ、準備済給糸ボビン11Bの糸Yを巻管とクレードル31aの間に挟み込む(給糸ボビンの糸を巻管に配置する)糸掛動作と、を実行する。
【0025】
ボビン移送装置5は、上流工程の精紡機等から供給される巻管12に糸Yが巻き付けられた状態の給糸ボビン11A(
図4(c)参照)、上述した準備済給糸ボビン11B(
図4(d)参照)及びワインダユニット30によって準備済給糸ボビン11Bから一部又は全部の糸Yが引き出された使用済ボビン13(
図4(b)参照)について、それぞれ、搬送トレイ9に装着させた状態で移送する。なお、
図4(b)は、準備済給糸ボビン11Bから全部の糸Yが引き出された状態の使用済ボビン13を示している。
【0026】
図4(a)に示されるように、搬送トレイ9は、円板状のベース部91と、ベース部91から上側に突出する突出部92と、突出部92から更に上方に突出するピン93と、を有している。給糸ボビン11A、準備済給糸ボビン11B及び使用済ボビン13は、それぞれ、巻管12の巻管下部12aにピン93が差し込まれることで、巻管12の一方の端部が上側に向いた状態で搬送トレイ9に装着される。言い換えれば、搬送トレイ9は、給糸ボビン11A、準備済給糸ボビン11B及び使用済ボビン13の軸方向が鉛直方向となる直立状態で載置可能に構成されている。
【0027】
図1に示されるように、ボビン移送装置5は、準備済給糸ボビン11Bの搬送路である第一搬送部61と、第一搬送部61から分岐する複数の第二搬送部62と、複数の第二搬送部62の下流側に設けられる使用済ボビン13の搬送路である第三搬送部63と、第一搬送部61と第三搬送部63とを接続して周回経路を形成する第四搬送部64と、第四搬送部64において後述する糸端処理装置53の下流側から分岐し、ボビン抜取装置55の上流側に合流する第五搬送部65と、を備えている。
【0028】
第一搬送部61、第二搬送部62、及び第三搬送部63は、搬送路に沿って搬送トレイ9を移送するためのコンベヤ、コンベヤ駆動装置、及び経路規定プレート等から構成されている。第四搬送部64及び第五搬送部65は、これらの搬送路に沿って搬送トレイ9を移送するための丸ベルト、ベルト駆動装置、プーリ、及び経路規定プレート等から構成されている。
【0029】
ボビン供給装置51は、第四搬送部64の搬送路に面して配置されている。ボビン供給装置51は、精紡機等、前工程において形成された給糸ボビン11Aをボビン移送装置5の搬送路上に供給する。すなわち、ボビン供給装置51は、第四搬送部64を搬送される搬送トレイ9に対し給糸ボビン11Aを装着する。
【0030】
糸端処理装置53は、第四搬送部64の搬送路に面して配置されている。糸端処理装置53は、給糸ボビン11Aにおいて糸端Y1を形成するロータリカッタ53Aと、上記糸端Y1を給糸ボビン11Aの糸層表面から引き剥がす糸端引き剥がし装置53Bと、糸端Y1の一部を解舒し、糸端Y1が巻管内部12cに配置された準備済給糸ボビン11Bを形成する糸処理装置70と、を有している。ロータリカッタ53Aと、糸端引き剥がし装置53Bと、糸処理装置70とは、第四搬送部64の搬送路に沿って上流側からこの順番で配置されている。
【0031】
ボビン抜取装置55は、ボビン移送装置5によって搬送されてくる使用済ボビン13を回収する。すなわち、ボビン抜取装置55は、搬送トレイ9に装着された状態で第四搬送部64を搬送されてくる使用済ボビン13を、搬送トレイ9から抜き取る。また、ボビン抜取装置55の上流側には、巻管12に糸Yが巻かれているか否か、すなわち搬送トレイ9の装着された巻管12が使用済ボビン13であるか否かを判別する判別装置55Aが配置されている。ここで、ボビン抜取装置に55には、ワインダユニット30から排出されてくる使用済ボビン13と、糸端処理装置53における糸端処理の失敗後、第五搬送部65を経由して搬送されてくる給糸ボビン11Aと、が搬送されてくる。ボビン抜取装置55は、判別装置55Aによる判別結果が使用済ボビン13である場合にのみ、搬送トレイ9から使用済ボビン13を抜き取る。
【0032】
図1に示されるように、糸処理装置70は、第四搬送部64の所定位置P1に面して配置されている。
図5及び
図6に示されるように、糸処理装置70は、筐体71と、第一吸引装置(第一吸引部)73と、カッタ装置(切替部、切断部)75と、昇降装置77と、保持装置79と、ボビン支持装置81と、吹付装置85、第二吸引装置(第二吸引部)87と、ボビン検出センサ89と、を備えている。
【0033】
第一吸引装置73は、給糸ボビン11Aの糸端Y1を上方に吸引する装置である。第一吸引装置73は、第四搬送部64の所定位置P1に停止する給糸ボビン11Aの上方に配置されている筒体73Aと、筒体73Aの上部に接続されている伸縮自在な蛇腹ホース73Bと、後段にて詳述するカッタ装置75を介して蛇腹ホース73Bの上方に接続されているサクションパイプ73Cと、を有している。サクションパイプ73Cは、糸端Y1を吸引するためのサクション気流(吸引力)を発生させる気流発生源73Dに接続されている。気流発生源73Dは、エンドフレーム20内に設けられたワインダユニット30にサクション気流を発生させるブロワである。第一吸引装置73とワインダユニット30とでは、共通のブロワを利用している。もちろん、第一吸引装置73専用のブロワを別途設けてもよい。筒体73Aにおける糸Yの空気導通の開閉(吸引の有無)は、後段にて詳述する可動シャッタ75Cの位置により切り替えられる。
【0034】
サクションパイプ73Cの屈曲部のインコーナ側には、吸引した糸端Y1を所定の位置に案内するガイド73Eが配置されている。ガイド73Eは、糸端Y1の糸道を安定させる。サクションパイプ73Cの内部には、糸Yの存在の有無を検出する糸検出センサ73Fが配置されている。糸検出センサ73Fから出力される信号は、機台制御部23に出力される。
【0035】
カッタ装置75は、蛇腹ホース73Bとサクションパイプ73Cとの間に配置されており、第一吸引装置73によって吸引された糸Yを途中で切断すると共に、筒体73Aにおける空気導通の開閉を切り替える装置である。カッタ装置75は、上板75Aと、下板75Bと、可動シャッタ75Cと、を有している。上板75A及び下板75Bは、蛇腹ホース73Bとサクションパイプ73Cとの間に配置されている。上板75A及び下板75Bには、蛇腹ホース73Bとサクションパイプ73Cとを連通する連通孔が形成されている。可動シャッタ75Cは、連通孔を通過する糸Yを切断すると共に、糸Yを切断した状態において気流を遮断することができる。可動シャッタ75Cは、アクチュエータ等の可動シャッタ駆動部75Dにより作動する。可動シャッタ駆動部75Dは、機台制御部23により制御される。機台制御部23は、可動シャッタ75Cが糸Yを切断するように、可動シャッタ駆動部75Dを制御する。
【0036】
昇降装置77は、筒体73Aの下端を移動可能にする装置である。昇降装置77は、アーム77Aと、ガイド77Bと、シリンダ77Cと、を有している。アーム77Aは、一端が筒体73Aに接続され、他端がシリンダ77Cのロッドに固定されている。アーム77Aには、スライドベアリング等を介してガイド77Bを内挿する貫通孔が形成されている。ガイド77Bは、上下方向に延在する円柱であり、アーム77Aに形成された貫通孔に内挿されている。シリンダ77Cは、アーム77Aをガイド77Bに沿って上下方向に移動させる機構であり、伸縮可能なロッドの先端にアーム77Aが接続されている。シリンダ77Cは、電磁バルブ等のシリンダ駆動部77Dにより作動する。シリンダ駆動部77Dは、機台制御部23により制御される。機台制御部23は、例えば、糸検出センサ73Fから出力される信号に基づいてシリンダ77Cが作動するように、シリンダ駆動部77Dを駆動させる。
【0037】
保持装置79は、第一吸引装置73に吸引される糸Yを保持する装置である。保持装置79は、上部押えレバー79Aを有している。上部押えレバー79Aは、給糸ボビン11Aの糸層から解舒され、サクションパイプ73Cに吸引される糸Yを給糸ボビン11Aの巻管上部12bの側方で保持する。上部押えレバー79Aは、巻管上部12bに接触して糸Yを保持する保持部79Aaを有する。保持部79Aaは、上部押えレバー79Aと一体に形成されており、上部押えレバー79Aの一部が屈曲して形成されている。
【0038】
上部押えレバー79Aは、筐体71に固定されている支持部71Aに回動可能に支持されており、保持部79Aaを、給糸ボビン11Aにおける巻管上部12bの側方に接触させたり、離反させたりする。上部押えレバー79Aは、アクチュエータ等のレバー駆動部79Dにより作動する。レバー駆動部79Dは、機台制御部23により制御される。例えば、機台制御部23は、糸検出センサ73Fから出力される信号に基づいて上部押えレバー79Aを近接動作するように、また、準備済給糸ボビン11Bを逆回転させたタイミングで上部押えレバー79Aを離反動作するように、レバー駆動部79Dを駆動させる。
【0039】
ボビン支持装置81は、給糸ボビン11Aが糸処理される際(特に筒体73Aによって給糸ボビン11Aの糸Yが解舒される際)に、搬送トレイ9から給糸ボビン11Aの抜け出しを防止すべく、給糸ボビン11Aの下部の糸Yが巻かれていない部分を押える装置である。ボビン支持装置81は、下部押えレバー81Aを有している。下部押えレバー81Aは、回動可能に支持されており、給糸ボビン11Aの下部に接触することにより給糸ボビン11Aを保持する。下部押えレバー81Aは、アクチュエータ等のレバー駆動部81Bにより作動する。レバー駆動部81Bは、機台制御部23により制御される。機台制御部23は、例えば、ボビン検出センサ89が給糸ボビン11Aを検知したタイミングで給糸ボビン11Aを保持するように、また、上部押えレバー79Aが離反動作を完了したタイミングで給糸ボビン11Aの保持を解除するように、レバー駆動部81Bを制御する。
【0040】
吹付装置85は、所定位置P1に停止する給糸ボビン11Aを挟む両側位置に、吹付ノズル85Aが配置されている。各吹付ノズル85Aには、給糸ボビン11Aに向って斜め上方及び斜め下方に圧縮空気を噴射する。吹付ノズル85Aから吹き付けられるブラストエアにより、例えば、給糸ボビン11Aの糸層から垂れ下がった糸Yを上方に吹き上げる。吹付ノズル85Aにおける圧縮空気の吹き出しの有無は、ノズル駆動部85Bによって切り替えられる。ノズル駆動部85Bは、機台制御部23により制御される。機台制御部23は、例えば、ボビン検出センサ89が給糸ボビン11Aを検知したタイミングで吹付ノズル85Aから圧縮空気を吹き出すように、ノズル駆動部85Bを制御する。
【0041】
第二吸引装置87は、可動シャッタ75Cによって糸Yが切断された際に、その切断された糸Yの糸端Y1を給糸ボビン11Aの巻管内部12cに引き込む装置である。第二吸引装置87は、吸引管87Aと、吸引シャッタ87Bと、を有している。吸引管87Aは、糸Yを吸引するための気流を発生させる、例えば、ブロワ等の気流発生源87Cに接続されている。吸引管87Aの上端開口部は、所定位置P1に停止する給糸ボビン11Aが載置される搬送トレイ9の下面中心に向けられている。吸引シャッタ87Bは、アクチュエータ等の吸引シャッタ駆動部87Dにより作動する。吸引シャッタ駆動部87Dは、機台制御部23により制御される。機台制御部23は、例えば、カッタ装置75が作動して糸Yが切断されたタイミングで糸Yの吸引が可能となるように、吸引シャッタ駆動部87Dを制御する。
【0042】
ボビン検出センサ89は、第四搬送部64の所定位置P1に停止する給糸ボビン11A(搬送トレイ9)の有無を検出する。ボビン検出センサ89から出力される信号は、機台制御部23に出力される。
【0043】
次に、
図8及び
図9(a)〜
図9(d)を参照しながら、糸処理装置70の動作(糸処理方法)を説明する。給糸ボビン11Aが糸処理装置70に対する所定位置P1にまで搬送されてくると、図示しないストッパによって搬送トレイ9が保持される。
図8に示されるように、機台制御部23は、ボビン検出センサ89によって給糸ボビン11Aが検出されたか否かを判断する(ステップS01)。機台制御部23は、ボビン検出センサ89によって給糸ボビン11Aが検出されなかったと判断した場合(ステップS01:NO)には、処理を終了する。
【0044】
機台制御部23は、ボビン検出センサ89によって給糸ボビン11Aが検出されたと判断した場合(ステップS01:YES)には、下部押えレバー81Aを作動させる(ステップS02)。具体的には、機台制御部23は、下部押えレバー81Aが給糸ボビン11Aの下部に接触するようにレバー駆動部81Bを制御する。これにより、給糸ボビン11Aの下部が、下部押えレバー81Aによって保持される。
【0045】
次に、機台制御部23は、吹付装置85を作動させる(ステップS03)。具体的には、機台制御部23は、吹付ノズル85Aにおいて圧縮空気を吹き出すようにノズル駆動部85Bを制御する。これにより、
図9(a)に示されるように、吹付ノズル85Aは、圧縮空気の吹き出しを開始し、糸Yを給糸ボビン11Aの上方へ向かって吹き流す。
【0046】
また、機台制御部23は、給糸ボビン11Aが糸処理装置70に対する所定位置P1にまで搬送されてくると、可動シャッタ75Cを作動させる(ステップS04)。具体的には、機台制御部23は、可動シャッタ75Cが通路開放位置へと移動するように可動シャッタ駆動部75Dを制御する。これにより、
図9(a)に示されるように、サクションパイプ73Cと筒体73Aとは、カッタ装置75と蛇腹ホース73Bとを介して連通され、筒体73Aにサクション気流が作用する状態となる。これにより、給糸ボビン11Aの周面に、上向きのサクション気流が作用するようになり、吹付ノズル85Aによって上向きに吹き流されていた糸端Y1は、サクションパイプ73Cに向かって吸引される。
【0047】
続いて、機台制御部23は、可動シャッタ75Cが作動を開始したときから、所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS05)。可動シャッタ75Cが作動を開始したときとは、例えば、機台制御部23から可動シャッタ駆動部75Dに対して、可動シャッタ75Cが通路開放位置へと移動するように指示する信号を出力したときである。所定時間は、例えば、10msec〜200msecに設定される。所定時間は、可動シャッタ75Cが開いて、糸Yに対してサクション気流が作用してから、吸引された糸端Y1が糸検出センサ73Fによって検出される位置まで到達し得る時間である。所定時間は、糸Yの種類(番手)等に基づいて適宜設定される。所定時間は、糸端Y1が糸検出センサ73Fによって検出されつつ、可動シャッタ75Cによって切断される糸端Y1の長さが最短となる時間に設定されることが好ましい。所定時間は、作業者によって設定されてもよいし、機台制御部23が自動で設定(変更、調整)して設定してもよい。
【0048】
作業者によって所定時間が設定される場合には、作業者が所定時間を適宜変更して試験を行い、適切な所定時間を設定する。作業者は、設定した所定時間を、操作部22(
図1参照)によって機台制御部23に入力する。機台制御部23は、操作部22において入力された所定時間を取得する。機台制御部23が自動で所定時間を設定する場合には、例えば、最初に所定時間を長く(例えば、200msec)設定し、所定時間を段階的に短くする。機台制御部23は、糸検出センサ73Fの検出結果に基づいて、所定時間を設定する。具体的には、機台制御部23は、設定した所定時間において、糸検出センサ73Fによって検出されるか否か(失敗率)に基づいて、所定時間を設定する。
【0049】
機台制御部23は、所定時間が経過したと判断した場合(ステップS05:YES)には、上部押えレバー79Aを作動させる(ステップS06)。具体的には、機台制御部23は、上部押えレバー79Aが給糸ボビン11Aの巻管上部12bに接触するように(近接動作するように)レバー駆動部79Cを制御する。これにより、
図9(b)に示されるように、給糸ボビン11Aの巻管上部12bに上部押えレバー79Aが接触し、上部押えレバー79Aによって糸Yが巻管上部12bに対して押さ付けられる。そのため、給糸ボビン11Aから糸Yが引き出されなくなくなる。機台制御部23は、所定時間が経過したと判断しなかった場合(ステップS05:NO)には、ステップS05の処理を繰り返す。
【0050】
機台制御部23は、上部押えレバー79Aを作動させた後、糸検出センサ73Fの検出結果に基づいて、糸端Y1が検出されたか否かを判断する(ステップS07)。機台制御部23は、糸検出センサ73Fによって糸端Y1が検出されたと判断した場合(ステップS07:YES)には、吸引シャッタ87Bを作動させる(ステップS08)。具体的には、機台制御部23は、吸引シャッタ87Bが開くように吸引シャッタ駆動部87Dを制御する。これにより、巻管内部12cに下向きのサクション気流が作用する。機台制御部23は、糸検出センサ73Fによって糸端Y1が検出されたと判断しなかった場合(ステップS07:NO)には、上部押えレバー79Aを外し、ステップS04から再度処理を繰り返す。このとき、昇降装置77により、筒体73Aを上下移動させて、糸端Y1の引き出し成功率を向上させている。
【0051】
機台制御部23は、吸引シャッタ87Bの作動と同時に、可動シャッタ75Cを作動させる(ステップS09)。具体的には、機台制御部23は、可動シャッタ75Cが通路閉塞位置へと移動するように可動シャッタ駆動部75Dを制御する。これにより、
図9(c)に示されるように、可動シャッタ75Cによって糸Yが切断される。これと同時に、サクションパイプ73Cの下端が、可動シャッタ75Cによって塞がれ、筒体73Aにおけるサクション気流が遮断される。
図9(d)に示されるように、切断された糸Yの糸端Y1は、吸引管87Aのサクション気流によって、給糸ボビン11Aの巻管内部12cへ吸引される。
【0052】
続いて、機台制御部23は、吸引シャッタ87Bを作動させる(ステップS10)。具体的には、機台制御部23は、吸引シャッタ87Bが閉じるように吸引シャッタ駆動部87Dを制御する。これにより、吸引管87Aにおけるサクション気流が遮断される。次に、機台制御部23は、上部押えレバー79Aを作動させる(ステップS11)。具体的には、機台制御部23は、上部押えレバー79Aが給糸ボビン11Aの巻管上部12bから離反するように(離反動作するように)レバー駆動部79Cを制御する。これにより、上部押えレバー79Aは、給糸ボビン11Aから離反して待機位置に戻る。
【0053】
また、機台制御部23は、下部押えレバー81Aを作動させる(ステップS12)。具体的には、機台制御部23は、下部押えレバー81Aが給糸ボビン11Aから離反するようにレバー駆動部81Bを制御する。これにより、下部押えレバー81Aによる給糸ボビン11Aの保持が解除される。また、搬送トレイ9を停止保持させていたストッパが待機位置へ移動する。これにより、所定位置P1に停止していた搬送トレイ9が移動を開始する。すなわち、ワインダユニット30へ準備済給糸ボビン11Bが供給される。
【0054】
ここで、ステップS07の処理において、糸検出センサ73Fによって糸端Y1が一定時間以上検出されなかった場合には、以下の処理を行う。具体的には、機台制御部23は、上部押えレバー79Aが離反動作するようにレバー駆動部79Cを制御する。これにより、上部押えレバー79Aは、給糸ボビン11Aから離反して待機位置に戻る。次に、機台制御部23は、シリンダ77Cを作動させる。これにより、筒体73Aが、下方に移動されるアーム77Aを介して下降する。筒体73Aの下降に伴って、給糸ボビン11Aの周面に、上向きのサクション気流が作用するようになる。
【0055】
続いて、機台制御部23は、糸検出センサ73Fによって、糸Yがサクションパイプ73Cの内部へ吸い込まれたことが検知されると、吸引シャッタ87Bを作動させる。また、機台制御部23は、シリンダ77Cを作動させて、筒体73Aを待機位置へ移動させる。機台制御部23は、筒体73Aが待機位置へ戻ると、上部押えレバー79Aを作動させる。これにより、給糸ボビン11Aの巻管上部12bに上部押えレバー79Aが接触し、上部押えレバー79Aによって糸Yが巻管上部12bに対して保持される。
【0056】
次に、機台制御部23は、可動シャッタ75Cを作動させる。具体的には、機台制御部23は、可動シャッタ75Cが通路閉塞位置へと移動するように可動シャッタ駆動部75Dを制御する。これにより、可動シャッタ75Cによって糸Yが切断される。これと同時に、サクションパイプ73Cの下端が、可動シャッタ75Cによって塞がれ、筒体73Aにおけるサクション気流が遮断される。切断された糸Yの糸端Y1は、吸引管87Aのサクション気流によって、給糸ボビン11Aの巻管内部12cへ吸引される。
【0057】
続いて、機台制御部23は、吸引シャッタ87Bを作動させる。具体的には、機台制御部23は、吸引シャッタ87Bが閉じるように吸引シャッタ駆動部87Dを制御する。これにより、吸引管87Aにおけるサクション気流が遮断される。次に、機台制御部23は、上部押えレバー79Aを作動させる。具体的には、機台制御部23は、上部押えレバー79Aが給糸ボビン11Aの巻管上部12bから離反するように(離反動作するように)レバー駆動部79Cを制御する。これにより、上部押えレバー79Aは、給糸ボビン11Aから離反して待機位置に戻る。
【0058】
また、機台制御部23は、下部押えレバー81Aを作動させる。具体的には、機台制御部23は、下部押えレバー81Aが給糸ボビン11Aから離反するようにレバー駆動部81Bを制御する。これにより、下部押えレバー81Aによる給糸ボビン11Aの保持が解除される。また、搬送トレイ9を停止保持させていたストッパが待機位置へ移動する。これにより、所定位置P1に停止していた搬送トレイ9が移動を開始する。すなわち、ワインダユニット30へ準備済給糸ボビン11Bが供給される。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る糸処理装置70による糸処理方法では、第一吸引装置73において可動シャッタ75Cが開いて吸引を開始した後、所定時間が経過した場合に、上部押えレバー79Aの作動を開始させて、上部押えレバー79Aと給糸ボビン11Aとを接触させる。このように、糸処理方法では、給糸ボビン11Aからの糸Yの引き出しが開始されてから、所定時間経過後に上部押えレバー79Aを作動させて上部押えレバー79Aと給糸ボビン11Aとを接触させることで、所定長さが確保される適切なタイミングで、給糸ボビン11Aからの糸Yの引き出しを停止させることができる。これにより、糸処理方法では、糸Yが検出されてから上部押えレバー79Aの作動を開始させる場合に比べて、第一吸引装置73によって吸引される糸Yの長さを短くすることができる。そのため、糸処理方法では、可動シャッタ75Cによって切断されて破棄される糸Yの長さを短くすることができる。したがって、糸処理方法では、屑糸の発生量を減少させることができる。
【0060】
本実施形態に係る糸処理装置70は、第一吸引装置73において吸引された糸Yの糸端Y1を検出する糸検出センサ73Fを備えている。糸処理方法では、上部押えレバー79Aの作動を開始させた後、糸検出センサ73Fによる検出結果に基づいて、可動シャッタ75Cの動作を切り替える。この方法では、糸検出センサ73Fによって糸Yが検出された場合に可動シャッタ75Cによって糸を切断させることができるため、給糸ボビン11Aの巻管内部12cに挿入され得る所定の長さの糸Yを確実に確保できる。
【0061】
本実施形態に係る糸処理装置70の糸処理方法では、糸検出センサ73Fによる検出結果に基づいて、所定時間を機台制御部23が設定し、機台制御部23によって設定された所定時間に基づいて、上部押えレバー79Aを作動させてもよい。この方法では、糸検出センサ73Fの検出結果に基づいて所定時間が設定されるため、給糸ボビン11Aの巻管内部12cに挿入され得る所定の長さの糸端Y1を確実に確保できる。
【0062】
本実施形態に係る糸処理装置70の糸処理方法では、操作部22において入力された所定時間を取得し、取得された所定時間に基づいて、上部押えレバー79Aを作動させてもよい。この方法では、作業者等によって、所定時間を適宜設定することができる。
【0063】
本実施形態に係る糸処理装置70では、糸検出センサ73Fは、サクションパイプ73Cにおいて、可動シャッタ75Cよりもサクション気流の下流側に配置されている。準備済給糸ボビン11Bでは、ワインダユニット30において糸端Y1を確実に捕捉するために、糸端Y1の長さが所定長さ以上確保されている必要がある。このように、準備済給糸ボビン11Bにおいて糸端Y1の長さを確保するためには、サクションパイプ73Cにおいて、給糸ボビン11Aから所定長さ以上の糸Yが引き出される必要がある。そのため、糸検出センサ73Fは、所定長さ以上引き出された糸Yの糸端Y1を検出し得る位置に配置されている必要がある。このような構成では、屑糸がどうしても発生してしまう。したがって、本実施形態に係る糸処理方法は、このような構成の糸処理装置70において特に有効である。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0065】
上記実施形態では、
図5に示されるように、上部押えレバー79Aが保持部79Aaを有している形態を一例に説明した。しかし、上部押えレバーの構造はこれに限定されない。例えば、
図10に示されるような構造を有していてもよい。
図10に示されるように、上部押えレバー100は、本体部102と、カバー部104と、を有している。本体部102は、保持部102aを有している。カバー部104は、凹部104aを有している。
【0066】
図11(a)に示されるように、上部押えレバー79Aは、保持部79Aaが巻管12の巻管上部12bに接触した場合、巻管12の開口部が開放されている。
図11(b)に示されるように、上部押えレバー100は、本体部102の保持部102aが巻管12の巻管上部12bに接触した場合、巻管12の開口部の一部がカバー部104の凹部104aによって覆われる。これにより、巻管12の開口部の面積が小さくなるため、開口部に作用するサクション気流を高めることができる。そのため、巻管内部12cに糸端Y1を確実に吸引させることができる。
【0067】
上記実施形態では、糸処理装置70における糸処理制御が機台制御部23によって実行される例を挙げて説明した。しかし、糸処理装置70が独自の制御部を備える構成としてもよいし、有線又は無線により接続された装置によって上記糸処理制御が実行されてもよい。
【0068】
上記実施形態に加えて、ワインダユニット30から排出された巻管12に糸Yが残っている場合に、その糸Yを除去して糸Yが無い巻管12にする糸除去装置が備えていてもよい。