前記セリア層には、Gd,Sm,Y,及びLaからなる群より選択される少なくとも1種が、0〜35重量%含有されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品焼成用セッター。
【背景技術】
【0002】
電子部品焼成用治具(焼成用セッター)としては、耐熱性、化学安定性等の観点から、
一般に、アルミナ(Al
2O
3)系、あるいはムライト(Al
2O
3−SiO
2)系セラミックス製板が用いられている。
しかしながら、これらの焼成用セッターと、被焼成物であるグリーンシート等のプレ成形体の材料とが反応し、得られたセラミックス製電子部品の組成が変化(汚染)してしまう場合がある。
【0003】
作成しようとする電子部品の汚染は、電子部品の特性低下の原因となるため、焼成用セッターとの反応を抑制する必要がある。
例えば、特開平11−240769号(特許文献1)では、被焼成物であるグリーンシートやその表面の導体ペーストとの反応がおこらず、グリーンシートの焼成を効率よく行うことができる電子部品焼成用セッターとして、アルミナ含有量75重量%以上、シリカ含有量25重量%未満で、通気率5×10
-2cm
2以上である電子部品焼成用セッターが提案されている。
【0004】
また、特開2002−104891号(特許文献2)では、焼成用セッターと被焼成物原料との反応を抑制して、安定した特性を示す高品質な電子部品を製造できる焼成用セッターとして、Al
2O
3系、Al
2O
3−SiO
2系、Al
2O
3−MgO系、SiC−SiO
2系、SiC−SiN
3系セラミックス製板の表面層を、ジルコニア、安定化ジルコニア、及び部分安定化ジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種のジルコニアを99.5重量%以上含有する表面層とすることが提案されている。
【0005】
ところで、近年、酸化物イオン伝導体を電解質に用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)は、高いエネルギー変換効率を有するとして、関心が高まっている。SOFCの空気極(空気中の酸素分子が外部回路から電子を受け取って酸素イオンとなる極)は、一般に、原料となるペロブスカイト構造の金属酸化物粉末を含有するスラリーを、所定形状にプレ成形し、得られたプレ成形体を800〜1500℃の高温で焼成することにより、あるいは予め作製した燃料極及び電解質層を含むSOFC部材上に、前記空気極原料用スラリーを塗布し、焼成することにより製造される。
【0006】
特開2015−2035号公報(特許文献3)には、SOFC用空気極製造のための焼成において、Al
2O
3製のセッターを用いて焼成した場合、Al
2O
3が空気極表面の金属酸化物と反応し、得られる空気極の組成が変化して、セル性能が低下するという問題が指摘されている。
特許文献3では、かかる問題を解決するために、セッター材料として、CeO
2または異元素を添加したCeO
2を用いる(請求項2)、あるいは、アルミナ製又はジルコニア製の板の表面に、CeO
2膜又は異元素を添加したCeO
2膜を塗布して焼結したセッターを用いる(請求項3)ことが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の電子部品焼成用セッターの一実施形態の構成を示す模式図である。
図1に示す焼成用セッター1は、Al
2O
3−SiO
2系セラミック製基板2の片面に、被焼成物の載置面3aを構成するセリア層3が積層された積層構造を有している。換言すると、Al
2O
3−SiO
2系セラミック製基板2の表面が、セリア膜3で被覆された焼成用セッターである。
【0016】
〔基板〕
基板1を構成するAl
2O
3−SiO
2系セラミックスにおけるAl
2O
3及びSiO
2の含有量比(重量比)が65:35〜93:7であり、好ましくは70:30〜90:10であり、より好ましくは75:25〜85:15である。
【0017】
Al
2O
3は耐熱性に優れている。しかしながら基板のアルミナの含有率が高くなりすぎると、密着性に優れたセリア膜の形成が困難となる傾向にある。密着性の低い被膜は、焼成用セッターの繰り返し使用が困難となり、焼成用セッターとしての耐久性、寿命が劣る原因となる。
一方、SiO
2は反応性が高く、セリア膜の形成(焼成)時に、CeO
2と反応しやすい。SiO
2成分のセリア層への移行、CeO
2とSiO
2との反応が進みすぎると、形成されるセリア膜表面がざらつくなどして、ひいては被焼成物の品質に影響を及ぼすおそれがある。
【0018】
セラミックス製基板2の全気孔率は、5〜50%であることが好ましく、より好ましくは20〜40%である。ここで全気孔率とは、セラミックス製基板の閉気孔及び開気孔の総量の割合をいう。基板2の表層部の気孔は、被膜との密着性向上に寄与できることから高い方が好ましいが、気孔率が高くなりすぎると、基板の強度低下の原因となる。好適な気孔率は、セラミックス製基板のセラミックス材料に依存し、セラミックス製基板におけるアルミナの含有率が高い程、気孔率も高い方が被膜密着性の観点からは好ましい傾向にある。
【0019】
以上のような構成を有するAl
2O
3−SiO
2系セラミックス製基板の製造方法は、特に限定しない。原料となるAl
2O
3粉末及びSiO
2粉末を、製造しようとするアルミノケイ酸セラミックスの含有量比率に対応する割合で混合して、原料混合粉を調製する。得られた原料混合粉を、水又は有機溶剤中に添加混合して、原料スラリー液を調製し、これを型枠に流し込んで焼成する湿式法;前記原料混合粉を直接型枠に充填してプレスした後、焼成する乾式法のいずれの方法も採用できる。
【0020】
使用するAl
2O
3粉末の平均粒子径0.5〜10μm、好ましくは0.5〜3μmである。また、使用するSiO
2粉末の平均粒子径0.5〜10μm、好ましくは0.5〜3μmである。これらの粒子が大きくなりすぎると作製される基板の気孔率が大きくなりすぎる傾向があり、これらの粒子が小さくなりすぎると、基板の気孔率が小さくなりすぎる傾向にある。
【0021】
前記焼成は、一般に1500〜1700℃で、1〜3時間程度保持することにより行う。
以上のような基板の製造方法において、使用する原料粉末(Al
2O
3粉末及びSiO
2粉末)の平均粒子径、粒度分布、焼成温度、焼成時間を調整することにより、基板の気孔率を調節することができる。
【0022】
なお、基材の成分については、主成分として、Al
2O
3−SiO
2を95重量%以上含有していればよい。Al
2O
3及びSiO
2以外の成分としては、特に限定しないが、Mg、Y、Na、Ti、Fe、Coなどが挙げられる。
【0023】
〔セリア層〕
上記基板2の表面に積層されたセリア層3は、セリア層3の表面が被焼成物の載置面3aとなる。
【0024】
当該セリア層3の組成は、CeO
2の含有率が65重量%以上であり、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
セリア層には、35重量%未満であれば、CeO
2以外に、Gd,Sm,Y,及びLaからなる群より選択される少なくとも1種を含有してもよい。すなわち、ガドリニウムドープセリア((Gd
1-xCe
x)O
2)、サマリウムドープセリア((Sm
1-xCe
x)O
2)、イットリアドープセリア((Y
1-xCe
x)O
2)、ランタンドープセリア((La
1-xCe
x)O
2)(式中、xは0.05〜0.4)であってもよい。
【0025】
前記セリア層の厚みは30〜200μmであることが好ましく、より好ましくは50〜150μmである。
セリア層が薄すぎると、セリア層が摩耗により損傷しやすくなり、基板のSiO
2の影響を受けるおそれがある。また、繰り返し行う焼成により、セリア層の全部または一部が剥がれて、焼成用セッターとしての寿命が短くなる。一方、分厚くなりすぎると、被膜の耐久性が飽和する反面、基板に対する密着性が低下する傾向にある。
【0026】
以下に、セリア層の形成方法の一実施形態を説明する。
はじめに、セリア層の原料となる原料スラリー液を調製する。
セリア層の原料スラリー液は、原料となるCeO
2粉末を、水又は有機溶剤中で、バインダーと添加混合して、調製する。CeO
2以外に、Gd,Sm,Y,及びLaからなる群より選択される少なくとも1種を含有する場合には、CeO
2粉末に代えて、ガドリニウムドープセリア((Gd
1-xCe
x)O
2)、サマリウムドープセリア((Sm
1-xCe
x)O
2)、イットリアドープセリア((Y
1-xCe
x)O
2)、ランタンドープセリア((La
1-xCe
x)O
2)の粉末を用いればよい。
【0027】
原料として用いるCeO
2粉末の粒子形状は、不定形、球形、くさび形などのいずれでもよい。CeO
2粉末のサイズとしては、平均粒子径1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは4〜8μm、さらに好ましくは5〜7μmである。10μmを超える焼結性が低く、被膜の密着性が低下する傾向にある。1μm未満では、過焼結が起こりやすいため、形成されるセリア層が緻密になりすぎて、クラック発生の原因となりやすい。
【0028】
原料粉の分散媒体としては、水の他、例えば、炭素数が2〜4のエタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルキルアルコール;1−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、等の中から適宜選択した有機溶剤も使用できる。これらの溶剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を適宜混合して使用してもよい。
【0029】
バインダーとしては、エチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルアルコール系樹脂、エチルセルロース等のセルロース類及びワックス類等を用いることができる。
【0030】
原料スラリー溶液には、さらに必要に応じて、可塑剤、潤滑剤、消泡剤などの公知の添加剤を添加してもよい。
【0031】
調製した原料スラリー液を、基板2表面に塗布し、1300〜1400℃で焼成する。
原料スラリー液の塗布は、カーテンフロー、ローラーコーターなどを用いる方法、スプレー法、ディッピングなどにより行うことができる。生産性、生産コストの観点から、スプレー法が好ましく用いられる。
【0032】
焼成温度は、原料として使用するCeO
2粉末のサイズ、使用する基板の種類、気孔率により適宜選択されるが、一般に1300〜1400℃、好ましくは1330〜1380℃程度で焼成することが好ましい。
焼成温度が低すぎると、セリア層の密着性が不十分となる傾向があり、焼成温度が高くなりすぎると、基板と反応しやすくなり、結果として、セリア層の組成に影響を及ぼすことになる。
【0033】
以上のようにして、基板2表面に積層一体化したセリア層3を形成することができる。形成されたセリア層3は、基板2の界面において反応ないしSiO
2の移行により積層一体化できる。したがって、焼成用セッターを、1300℃で30分の加熱を30回以上繰り返しても、セリア層が剥がれたりすることはない。また、問題となるような表面変性は認められず、安定性の高い載置面を提供できる。
そして、被焼成物の載置面を構成しているセリア層(CeO
2含有率65重量%以上)は電子部品原料との反応性が低いので、本発明の焼成用セッターを用いることにより、組成が安定したセラミックス製電子部品を作成することができる。このことは、セリア層自体の組成も安定していることを意味する。
【0034】
なお、
図1に示す焼成用セッターは、基板の片面のみにセリア層が形成されていたが、本発明の電子部品焼成用セッターは、これに限定しない。被焼成物の載置面となる少なくとも一面がセリア膜で被膜されていればよく、基板の両面に同様のセリア層が形成されている焼成用セッター、基板全体がセリア膜で被覆されている焼成用セッターも本発明に包含される。
【0035】
以上のような構成を有する本発明の電子部品用焼成セッターは、被焼成物に対して安定的であることから、電子部品の焼成用セッターとして優れている。特に、セリア膜は、固体酸化物形燃料電池の空気極の原料であるLaSrMnO
3のLaと反応しにくい傾向にあることから、空気極の焼成用セッターとして好適である。
【0036】
〔固体酸化物形燃料電池の空気極の製造方法〕
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の空気極の製造方法は、上記本発明の焼成用セッターを用いて、空気極原料を焼成する工程を含む方法である。
すなわち、焼成用セッター表面に載置された、空気極用原料を焼成する工程を含む固体酸化物形燃料電池の空気極の製造方法において、
前記焼成用セッターとして、Al
2O
3及びSiO
2の含有量比(重量比)が65:35〜93:7のアルミノケイ酸系セラミックスからなる基板の少なくとも片面に、CeO
2を65重量%以上含有するセリア層が積層一体化された電子部品焼成用セッターを使用し、
前記セリア層上で、前記空気極原料の焼成が行われる。
【0037】
対象とする空気極は、燃料電池の空気極として一般に用いられている空気極、LaSrMnO
3のペロブスカイト酸化物である。
この他、LaNi
1-xFe
xO
3(X=0.3〜0.9)、または、La
1-xSr
xFe
1-yNi
yO
3(X=0.1〜0.3,Y=0.1〜0.6,X+Y<0.7)、またはLa
1-xSr
xFe
1-yCo
yO
3(X=0.1〜0.3,Y=0.1〜0.6,X+Y<0.7)、またはLa
1-xSr
xFe
1-yCo
yO
3(X=0.1〜0.5)も空気極材料として使用することができる。
【0038】
なお、焼成時に被焼成物との反応しにくい材料として、ジルコニア製基板又はジルコニア被覆基板が一般に知られている。本発明の焼成用セッターは、ジルコニア製基板又はジルコニア被膜と比べても、反応性が低い傾向にあり、特に空気極原料との反応性についても低い傾向にある。よって、本発明の焼成用セッターを用いることにより、汚染が少ない高品質の空気極を製造することができる。
【実施例】
【0039】
〔焼成用セッターの作製及び評価〕
(1)基板
焼成用セッターの基板として、表1に示す組成及び全気孔率を有するセラミックス製基板を用いた。
【表1】
【0040】
(2)焼成用セッターNo.1−10の作製
被膜原料として、表2に示す平均粒子径を有するCeO
2粉末を、水性媒体としてバインドセラムWA310(三井化学株式会社製)と混合し、CeO
2濃度60重量%のセリア膜原料液を調製した。この原料液を、表2に示す基板にスプレー塗布し、1350℃で120分間保持し、焼成して、表2に示す被膜厚みを有する焼成用セッターを作製した。
【0041】
作成した焼成用セッターについて、被膜外観及び被膜密着性を、下記評価方法にて、評価した。結果を併せて表2に示す。
【0042】
(2)焼成用セッターNo.11の作製
被膜原料として、8重量%のY
2O
3を含有するZrO
2粉末(平均粒子径6μm)を、水性媒体であるバインドセラムWA310(三井化学株式会社製)と混合して、ZrO
2濃度80重量%のジルコニア膜原料液を調製した。
No.1と同様にして、表2に示す基板(C−1)の表面に、調製したジルコニア膜原料液をスプレー塗布し、1500℃で120分間、保持して、膜厚150μmのジルコニア層を形成した。
作成した焼成用セッターについて、被膜外観及び被膜密着性を、下記評価方法にて、評価した。結果を併せて表2に示す。
【0043】
(3)焼成用セッターの評価方法
(3−1)被膜外観
基板表面に形成したセリア層又はジルコニア層の外観(クラックの有無、変色、被膜表面のざらつき)を目視で観察した。
目視で判別できるようなクラック、変色、ざらつきが認められない場合には「良好」とした。
【0044】
(3−2)被膜密着性
図2に示す剥離試験用治具を用いて、被膜密着性を評価した。
すなわち、作成した焼成用セッターの被膜側にアタッチメントを介して上側引張治具に取付け、矢印方向に引っ張った。被膜が剥がれるまで引張った後、被膜剥離面を観察し、下記基準にて評価した。
密着性不良(NG):被膜と基板の界面で剥離、
密着性良好(OK):基板が破断し、破断面は、基板の破断面又は被膜に基板の一部が付着した状態であった。
【0045】
【表2】
【0046】
アルミナ:シリカ=70:30〜90:10のアルミノケイ酸系セラミック製基板を用いた焼成用セッターNo.1〜6は、いずれも平滑なセリア層が形成され、且つ、セリア層の基板への密着性が優れていた。したがって、これらの焼成セッターでは、安定的な載置面を提供することができる。No.1のセリア層について、X線回折により分析した結果を
図3(A)に示す。
図3において、横軸は回折角度(°2θ)、縦軸は強度を示している。CeO
2以外のピークが認められず、セリア膜と基板との反応はなかったことが確認できた。
【0047】
一方、アルミナの含有率が高い基板E、Fを用いた場合には、焼成後のセリア層が基板から剥がれ、セリア層を安定的に形成することができなかった(No.9,10)。さらに、基板E,Fを用いて、焼成温度を1600℃まであげてセリア膜の形成を試みたが、密着性の高いセリア被膜を得ることができなかった。
【0048】
アルミナ:シリカ=90:10の基板Dの場合、気孔率が高いD−1では、セリア層を形成することができ、また形成されたセリア層について、基板との密着性を確保することができた(No.6)。しかしながら、気孔率が20%(D−2)の場合には、セリア層を形成することができたが、密着性が不十分であった(No.8)。
【0049】
アルミナ:シリカ=60:40の基板Aの場合、密着性に優れたセリア層を形成することができたが、セリア層表面にざらつきが認められた。平滑表面が要求される電子部品の焼成時の載置面としては不十分である(No.7)。
当該セリア層について、X線回折分析を行ったところ、
図3(B)のような結果を得た。すなわち、セリアのピーク強度が低下し、セリア以外のピークが複数現れた。基板との反応物がセリア層に生成していることがわかる。したがって、反応生成物又はSiO
2が被焼成物の物性に影響を及ぼすおそれがある。
【0050】
No.11は、基板C−1に、ジルコニア層を形成した場合である。載置面として良好な平滑面を有し、且つ基板との密着性も優れていた。
【0051】
〔空気極の製造及び評価〕
(1)空気極の製造
上記で製造した焼成用セッターNo.1及びNo.11を用いて、空気極を製造した。
空気極の製造は以下にしたがって行った。市販の燃料電池向けペロブスカイト系酸化物LSCF−6428F(第一稀元素化学工業)に、ポリビニルアルコール(最終濃度1重量%)を混合して、空気極用原料を調製した。
【0052】
この空気極原料を押出機で押し出し、直径5mmの円柱成形体を得た。この円柱成形体を、焼成用セッターの載置面に載置し、焼成温度1000℃、1100℃、1150℃、1200℃、1250℃の各場合について、60分間、焼成し、空気極を作成した。
作成された空気極の組成は、La
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
x(式中xは、2.0〜3.0)であった。
【0053】
焼成後の焼成用セッターの載置面の様子をカメラで撮像した写真を
図4〜
図7(
図4−
図7は、各順に、1100℃、1150℃、1200℃、1250℃で焼成した場合)に示す。
各写真の右側が焼成用セッターNo.1であり、左側が焼成用セッターNo.11である。
各写真において、黒いスジは、空気極が載置されていた部分である。焼成温度1100℃では目立たないが、1150℃以上では、焼成用セッターNo.11の方が、載置部分の色変の度合いが大きかった。変色部分は、青色〜黒青色であった。空気極の組成に鑑みると、Co、Feの一部が焼成用セッター側に移行したと考えられる。
【0054】
(2)製造した空気極の導電率
製造した空気極の導電率を、直流四端子法にて測定した。測定結果を
図8に示す。
図8中、横軸は焼成温度(℃)、縦軸は作成された空気極の導電率(s/cm)を示す。
1200℃以外の温度で作成された空気極の導電率は、焼成用セッターNo.1を用いた方が高かった。セリア層が積層された焼成用セッターでは、空気極の組成に与える影響が少なく、所望の特性を有する空気極を製造できる。
【0055】
〔焼成用セッターの耐久性〕
No.1の焼成用セッターについて、以下のヒートサイクル試験を行った。かかるヒートサイクル条件は、一般的な電子部品の製造に対応する試験である。
(a)100℃から1300℃まで、240分かけて昇温
(b)1300℃を30分間保持する
(c)1300℃から100℃まで急速冷却
(d)(a)−(c)を1サイクルとして、30サイクル繰り返した。
30サイクル後に焼成用セッターについて、上述の剥離試験を行ったところ、被膜密着性が維持されていることが確認できた。