【課題】外部からの配合物や混入物がない、全て天然由来の薬水の製造方法を提供することであり、また、生薬(漢方薬)や薬草が本来有している効能を最大限引き出した薬水の製造方法を提供すること。
【解決手段】乾燥していない薬草を固液分離する薬水の製造方法であって、低温真空固液分離法を使用し、かつ、実質的に抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、撹拌機で撹拌しながら、外部から熱を加えつつ減圧し、45℃以下を維持するように減圧器300で容器100内を減圧して、該薬草を固液分離することによって液相を回収することを特徴とする薬水の製造方法、該製造方法で製造された薬水、該薬水を含有する循環器系、呼吸器系、消化器系若しくは眼科系疾患改善剤、婦人病若しくは不妊症改善剤、液剤、シロップ剤若しくはゼリー剤、又は、化粧料。
上記薬草が、当帰、芍薬、蓬、柑橘、黄柏、甘草、葛、月桃、及び、釣樟からなる群より選ばれた少なくとも1種の生薬の、乾燥前の生薬原料植物、又は、乾燥していない菊芋若しくは甘茶である請求項1に記載の薬水の製造方法。
上記容器の体積をV[L]とし、該容器に投入される薬草の質量をM[kg]とするときに、V[L]をM[kg]の2倍以上5倍以下に設定する請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の薬水の製造方法。
上記容器の下部が円筒状になっており、その内壁に複数の固定刃を有すると共に、上記撹拌機は、1個に複数の回転刃を有する回転刃体を有し、該回転刃体を回転させることによって、容器内の薬草を、該固定刃と該回転刃で粗破砕しつつ固液分離する請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の薬水の製造方法。
上記薬草を、固液分離中に、該薬草の細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、1mm以上15mm以下に粗破砕する請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の薬水の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0033】
本発明の薬水の製造方法は、乾燥していない薬草を固液分離する薬水の製造方法であって、低温真空固液分離法を使用し、かつ、実質的に抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、撹拌機で撹拌しながら、外部から熱を加えつつ減圧し、45℃以下を維持するように減圧器で容器内を減圧して、該薬草を固液分離することによって液相を回収することを特徴とする。
【0034】
本発明における「薬水」とは、上記方法で製造されるような液体のことを言い、水系の液体である。該液体の中には、水と任意の割合では相溶しない油性成分(例えば、精油、エキス等)が溶解されていてもよい。また、常温常圧で固体である成分が溶解されていてもよい。
【0035】
「薬草」とは、植物のある部位(例えば、根、葉、果実、種子等)の乾燥状態のもの若しくはその粉砕物、又は、その水抽出物(例えば、湯による煎じ物)が、生薬若しくは「漢方薬の一成分」として知られている又は使用されているものの原料となる「実質的に乾燥していない植物」のことを言う。
「乾燥していない」とは、積極的に乾燥させていない、又は、実質的な乾燥工程を経ていないことを言い、静置により自然に乾燥して水や低沸点成分が僅かに蒸発(揮散)した状態は、ここからは排除されない(本発明の範囲である)。
【0036】
生薬と言った「漢方薬の成分」は、保存や輸送を容易にするために、中国古来の習慣・知恵・伝統に従うために、又は、水等を含む揮発成分には有効成分が含まれている訳がないと言った誤った思想のために、収穫した後の初期の段階から乾燥させてしまっている。
本発明においては、乾燥させていない「生の状態の生薬の原料植物」を固液分離の対象とする。
【0037】
生薬の種類としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、トウキ(当帰)、シャクヤク(芍薬)、ヨモギ(蓬)、カンキツ(柑橘)、オウバク(黄柏)、カンゾウ(甘草)、クズ(葛)、ゲットウ(月桃)(白手伊豆縮砂)、チョウショウ(釣樟)(クロモジ)、ウイキョウ(茴香)、エンゴサク(延胡索)、オウゴン(黄ごん)、オウレン(黄連)、ガジュツ(莪じゅつ)、ケイヒ(桂皮)、コウブシ(香附子)、コウボク(厚朴)、サンシュユ(山茱萸)、サンヤク(山薬)、ジオウ(地黄)、シコン(紫根)、シュクシャ(縮砂)、ショウキョウ(生姜)、カンキョウ(乾姜)、センキュウ(川きゅう)、ソウジュツ(蒼朮)、ソヨウ(紫蘇葉)、ダイオウ(大黄)、タイソウ(大棗)、タクシャ(沢瀉)、チョウジ(丁子)、チンピ(陳皮)、トチュウ(杜仲)、ニンジン(人参)、ハンゲ(半夏)、ブシ(附子)、ボタンピ(牡丹皮)等が挙げられる。
本発明では、生薬の原料となる植物の実質的に乾燥していないものを固液分離の対象とする。
【0038】
また、その乾燥品を「生薬」とは言わないが、本発明における薬草としては、アマチャ(甘茶)、キクイモ(菊芋)等が挙げられる。これらの薬草の実質的に乾燥していないものを固液分離の対象とする。
【0039】
本発明においては、上記固液分離の対象部位が、上記薬草の全ての部位から選ばれた少なくとも1つの部位である。該薬草の部位としては、例えば、根、根茎、球茎、塊茎、茎、根皮、樹皮、木幹、葉、果実、果肉、果皮、種子、花、花弁、萼、蕾、花穂等が挙げられる。
これらの部位は、1つだけの部位を固液分離の対象としてもよいし、2つ以上の部位をまとめて固液分離の対象としてもよい。また、薬草全体を対象としてもよいし、植物全体からある部位を除いたものを対象としてもよい。
【0040】
本発明によって、従来、生薬の原料(抽出部位)となっていた部位(特に根茎等)以外の部位でも、優れた薬効を示すことが明らかとなった。本発明では薬草を使用するが、本発明における固液分離の対象部位は、従来の生薬の部位には限定されない。
【0041】
また、薬事法、日本薬局方等、各国毎に決まった規則・法律等で拘束又は制限を受ける(例えば、免許・許可がないと抽出できない等の)部位は、本発明において、固液分離の対象に含まれていてもよいが、むしろ含まれていないことが好ましい。
そもそも、本発明の薬水には、乾燥後の生薬からの抽出水とは比較にならない(程の)薬効があるので、特に、規則・法律等で拘束又は制限を受ける部位に限定することは、単に、該規則・法律に縛られるだけだからである。
【0042】
本発明においては、上記薬草の種類は、特に限定はないが、当帰、芍薬、蓬、柑橘、黄柏、甘草、葛、月桃、及び、釣樟からなる群より選ばれた少なくとも1種の生薬の、乾燥前の生薬原料植物、又は、乾燥していない菊芋若しくは甘茶であることが好ましい。
これらの植物から得られた本発明の薬水は、全て、固液分離の実施例と、該実施例で得られた薬水のヒトにおける評価例があって、効能が確かめられている。
【0043】
トウキ(当帰)(Angelica acutiloba、又は、Angelica acutiloba Kitagawa)は、セリ科シシウド属の多年草であり、日本薬局方では、「生薬トウキ」の基原植物は、トウキ及びホッカイトウキとされる。四物湯、当帰芍薬散、当帰建中湯、補中益気湯、紫雲膏、当帰湯等の漢方方剤に使われている。
【0044】
本来、「当帰」とは、トウキの根を湯通しした後に乾燥したものを言うが、本発明においては、どの部分でもよく、葉、花、種子、根等が好ましい。
【0045】
本発明における「乾燥していないトウキ(当帰)」とは、全く水分が蒸発(揮散)していないものには限定されないが、水分を少なくすべく積極的に乾燥させたもの、例えば、通常目にする萎びた根茎は本発明から除かれる。
本発明における当帰は、「固液分離に用いる当帰の部位に収穫直後に含有されている水」全体、全く蒸発が起っていない生の状態での水分量全体に対して、30質量%以上の水が残存している当帰のことを言い、50質量%以上の水の残存が好ましく、70質量%以上の水の残存がより好ましく、90質量%以上の水の残存が更に好ましく、99質量%以上の水の残存が特に好ましい。
【0046】
シャクヤク(芍薬)(Paeonia lactiflora)は、ボタン科ボタン属の多年草であり、葛根湯、十全大補湯、芍薬甘草湯、大柴胡湯、当帰芍薬散等の漢方方剤に使われている。
本来、「芍薬」とは、芍薬の根の外皮を取り除いて、乾燥させたものを言うが、本発明においては、該植物のどの部分でもよく、花、花弁、萼、蕾、葉、根等が好ましい。
【0047】
本発明における「乾燥していない芍薬」とは、水分量・乾燥状態に関しては前記した状態と同じで、上記の「当帰」を「芍薬」と読み換えたものであり、(特に)好ましい範囲も同一である。
【0048】
ヨモギ(蓬)(Artemisia indica、A. montana、又は、Japanese mugwort)は、キク科ヨモギ属の多年草であり、その葉は、艾葉(がいよう)という生薬である。
本来、「蓬」とは、その葉の部分を言うが、本発明においては、「蓬」とは、植物のどの部分でもよく、葉等が特に好ましい。
【0049】
本発明における「乾燥していない蓬」とは、水分量・乾燥状態に関しては前記した状態と同じで、上記の「当帰」を「蓬」と読み換えたものであり、(特に)好ましい範囲も同一である。
【0050】
タチバナ(柑橘)(Citrus)は、ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)に属し、その果皮を乾燥させたものは、陳皮(Citrus reticulata peel、又は、Citrus unshiu peel)として知られている。
本発明における柑橘は、橘;マンダリンオレンジ、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ等のオレンジ;ウンシュウミカン等のミカン;柚子;スダチ;シークワーサー;ジャバラ;仏手;等が挙げられる。
【0051】
本発明における「乾燥していない柑橘」とは、水分量・乾燥状態に関しては前記した状態と同じで、上記の「当帰」を「柑橘」と読み換えたものであり、(特に)好ましい範囲も同一である。
【0052】
オオバク(黄柏)(Phellodendron amurense)は、ミカン科キハダ属の落葉高木であり、キハダと言う植物の樹皮からコルク質と外樹皮を取り除いて乾燥させたものであるが、本発明においては、該植物のどの部分でもよく、果実、樹皮、葉等が好ましい。
【0053】
本発明における「乾燥していない黄柏」とは、水分量・乾燥状態に関しては前記した状態と同じで、上記の「当帰」を「黄柏」と読み換えたものであり、(特に)好ましい範囲も同一である。
【0054】
カンゾウ(甘草)(Glycyrrhiza)は、マメ科カンゾウ属の多年草で、多くの漢方薬に使われている。
本来、「甘草」とは、その根茎を乾燥させたものを言うが、本発明においては、該植物のどの部分でもよく、葉、茎、根等が好ましい。
【0055】
本発明における「乾燥していない甘草」とは、水分量・乾燥状態に関しては前記した状態と同じで、上記の「当帰」を「甘草」と読み換えたものであり、(特に)好ましい範囲も同一である。
【0056】
本発明における「乾燥していない月桃」(Alpinia zerumbet)とは、ショウガ科ハナミョウガ属の多年草で、その種子を乾燥したものは、白手伊豆縮砂と言う生薬として知られている。
本発明においては、該植物のどの部分でもよく、花、葉、茎(蔓)、根等が好ましい。
【0057】
本発明における「乾燥していない月桃」とは、水分量・乾燥状態に関しては前記した状態と同じで、上記の「当帰」を「月桃」と読み換えたものであり、(特に)好ましい範囲も同一である。
【0058】
本発明における「乾燥していない釣樟」(Lindera umbellata)は、クスノキ科クロモジ属に属し、その根皮を乾燥したものは、釣樟として知られている。クロモジ(黒文字)とも言われ、その乾燥枝は高級楊枝の材料に用いられる。
本発明においては、該植物のどの部分でもよく、花、葉、茎(蔓)、根等が好ましい。
【0059】
本発明における「乾燥していない釣樟」、すなわちクロモジは、水分量・乾燥状態に関しては前記した状態と同じで、上記の「当帰」を「釣樟」又は「クロモジ」と読み換えたものであり、(特に)好ましい範囲も同一である。
【0060】
クズ(葛)は、マメ科の蔓性多年草で、葛根湯等の漢方薬に使われている。
本来、「葛」とは、その茎、蔓等を乾燥させたものを言うが、本発明においては、該植物のどの部分でもよく、花、葉、茎(蔓)、根等が好ましい。
【0061】
本発明における「乾燥していない葛」とは、水分量・乾燥状態に関しては前記した状態と同じで、上記の「当帰」を「葛」と読み換えたものであり、(特に)好ましい範囲も同一である。
【0062】
キクイモ(菊芋)(Helianthus tuberosus)は、キク科ヒマワリ属の多年草で、乾燥品を生薬とは言わないが、その根茎を乾燥させたものは昔から使用されている。本発明においては、該植物のどの部分でもよく、葉、茎(蔓)、根等が好ましい。
【0063】
本発明における「乾燥していない菊芋」とは、水分量・乾燥状態に関しては前記した状態と同じで、上記の「当帰」を「菊芋」と読み換えたものであり、(特に)好ましい範囲も同一である。
【0064】
アマチャ(甘茶)(Hydrangea macrophylla)は、ユキノシタ科の落葉低木落葉性の低木アジサイの変種である。
本来、その若い葉を蒸した後に乾燥させたもの、及び、該乾燥品を煎じて作った飲料のことを言うが、本発明においては、該植物のどの部分でもよく、葉、茎(蔓)等が好ましい。
【0065】
本発明における「乾燥していない甘茶」とは、水分量・乾燥状態に関しては前記した状態と同じで、上記の「当帰」を「甘茶」と読み換えたものであり、(特に)好ましい範囲も同一である。
【0066】
本発明の薬水の製造方法に使用される固液分離装置は、例えば一例を
図1に示したように、低温真空固液分離法による固液分離が可能で、かつ、実質的に抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、撹拌機で撹拌しながら、外部から熱を加えつつ減圧し、45℃以下を維持するように減圧器で容器内を減圧して、薬草を固液分離することによって液相を回収できるようになっている。
本発明における「低温真空抽出法」とは、固液分離する対象を50℃以下に保ちつつ、減圧することによって、対象から液体の蒸気を取り出し、冷却することで液体を得る固液分離方法のことを言う。
【0067】
本発明の薬水の製造方法に使用される固液分離装置は、本発明の薬水の製造方法に用いられ得る能力を有しているものであり、少なくとも、破砕撹拌機、加熱ユニット、気体取出口及び固体粉末取出口を有する容器;並びに;減圧器を具備する。
【0068】
本発明における「低温真空抽出法」は、実質的に抽出媒体も水蒸気も使用せずに、撹拌機で撹拌しながら、外部から熱を加えつつ減圧して固液分離して、そのうち液体部分を回収することが好ましい。
ここで、「抽出媒体」とは、例えば、水;アルコール類等の有機溶媒;二酸化炭素等の超臨界流体・亜臨界流体;等が挙げられる。上記水蒸気とは、水蒸気蒸留法で使用する水蒸気等のことを言う。
ここで「実質的に使用しない」とは、対象(薬草)の5質量%以下しか使用しないことを言い、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下しか使用しないことであり、特に好ましくは全く使用しないことである。
【0069】
本発明の薬水の製造方法に使用される固液分離装置は、好ましくは、
固液分離対象である「乾燥していない薬草」を破砕しつつ撹拌する破砕撹拌機110、該植物及び容器100内を加熱する加熱ユニット120、植物から発生する気体を取り出す気体取出口130、及び、固液分離後に固体の方を取り出す固体粉末取出口140を有する容器100;
該気体取出口130から取り出された気体を冷却する冷却器200;
該容器100内を減圧する減圧器300;並びに;
該冷却器200で冷却されて液化した薬水を回収獲得する回収獲得容器400;
を具備している。
以下、上記の「 」内を単に「植物A」と略記することがある
【0070】
固液分離対象となる植物Aは、植物投入口103から容器100に投入される。投入される植物Aは、予め裁断しておいてもよいが、該植物Aの細胞を(特に細胞膜を)、実質的に破壊しないようにする。なお、全く破壊しないようにする必要はなく、破壊された細胞はあってもよい。
【0071】
限定はされないが、固液分離の対象となる植物Aは、本発明の前記した効果を発揮させる目的で、すなわち、得られる薬水が細胞内物質を含有するように、更には該植物Aに含有される「分離されて液体側に来る実質的に全ての成分」を含有するように、投入前に該植物Aに対して、乾燥は勿論、加熱、すり潰し、細断及び/又は醗酵も、しないことが好ましい。
本発明の薬水には、植物Aの細胞水が含有される。好ましくはそのままの形態・成分比で含有される。言い換えれば、本発明の薬水の製造方法は、薬草に含有されていた細胞水を含有するように固液分離することが好ましい。上記又は下記する固液分離装置を用いると、それが可能である。
【0072】
本発明の薬水の製造方法では、「上記植物Aの全体若しくは一部」以外の物質を、上記容器内に実質的に投入しないで固液分離することが好ましい。
本発明によれば、外部から「固液分離対象である植物A以外のもの」を実質的には投入する必要がなく、投入しないことによって、得られる薬水は、固液分離対象である植物Aに含有される成分のみからなり、更には、該植物A(の細胞)に含有される成分の実質的に全てを含有させることができる。
本発明によって得られる薬水は、上記のような成分組成であることが好ましい。
【0073】
本発明の範囲内であれば、図に示されたものには限定されないが、
図2、
図3に本発明における固液分離装置の容器100の概略図を示す。
容器100は、植物Aを収容し、破砕撹拌機110で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に、加熱ユニット120によって外部から熱を加えつつ減圧して固液分離する容器である。
【0074】
本発明における固液分離装置の容器100の破砕撹拌機110は、少なくとも、投入された植物Aを破砕しつつ撹拌できるようになっている。
容器100は、破砕撹拌機110を収容した下部半円筒部101と、その上に形成された上部角形部102とからなる。少なくとも下部半円筒部101の周囲には、容器100の内部に熱を加える蒸気室121がある。
下部半円筒部101の最下部の中央には、固液分離後の固体を取り出す固体粉末取出口140が設けられている。
【0075】
図1〜3に示すように、上記上部角形部102の上部には、植物投入口103が設けられていると共に、その植物投入口103を塞ぐ植物投入口蓋104が設けられている。
上記上部角形部102の上部には、吸引される蒸気の気体取出口130が設けられ、言い換えれば、植物Aから発生する気体を取り出す気体取出口130が設けられ、この気体取出口130には、冷却器200につながる気体配管131が接続されている。
【0076】
本発明の薬水の製造方法においては、投入された植物Aを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に固液分離を行う。このようにしながら固液分離することで、有効成分である細胞内物質の熱分解、酸化等による変性を防ぐことができる。
上記破砕・撹拌は、「複数の回転刃113a、113bを有する回転刃体112a、112b」及び「固液分離装置の内面(好ましくは上記下部半円筒部101の下内面)に設けられた複数の凸型固定刃111」を備えた固液分離装置内で行うことが、上記効果を得るために特に好ましい。
【0077】
例えば、
図4は、前記破砕撹拌機110の構成の一例を示す斜視図であり、破砕撹拌機110は、容器100の外部に設けられたモータにより回転されるものであり、容器100の端壁105a、105bに回転可能に支持される左右の端板106a、106bと、その先端間に両端が固定された、ほぼ「く」の字115の形をなす回転刃体112a、112bとによって構成することにより、中心軸を有しない構造(中心軸なしで回転可能の構造)に構成されている。
【0078】
回転刃体112a、112bをほぼ「く」の字形にすることによって、植物Aを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し易くすると共に、固液分離完了後は、固体を容器100の内壁から良好に掻き取り、(容器100の下側のほぼ中央に位置する)固体粉末取出口140に向けて掻き寄せることによって、固体粉末取出口140から取り出すことができる。
本発明の薬水の製造方法は、上記破砕撹拌機110が2個以上の回転刃体112a、112bを有し、該回転刃体112a、112bを同方向に回転させることで、上記植物Aを破砕しつつ撹拌し、固液分離完了後には、固体を上記容器100の内壁から掻き取り、上記固体粉末取出口140に向けて掻き寄せることが好ましい。ただし、回転刃体112は1個でも好ましい。
【0079】
破砕撹拌機110の回転速度、すなわち、容器100の左右の端壁105a、105bに回転可能に支持されている左右の端板106a、106bの回転速度は、1回転/分以上8回転/分以下が好ましく、2回転/分以上6回転/分以下がより好ましく、4回転/分以上5回転/分以下が特に好ましい。
回転速度が小さ過ぎるときは、破砕、撹拌及び/又は固液分離の効率が悪くなる場合、容器100内で破砕されつつある植物Aに温度ムラが生じる場合等があり、一方、回転速度が大き過ぎるときは、破砕撹拌機110に過剰の負荷がかかる場合、細胞膜に障害を与える場合等がある。
【0080】
本発明の薬水の製造方法は、上記容器100の下部が円筒状になっており、その内壁に複数の凸型固定刃111を有すると共に、上記破砕撹拌機110は、1個に複数の回転刃113a、113bを有する回転刃体112a、112bを有し、該回転刃体112a、112bを回転させることによって、容器100内の薬草Aを、該凸型固定刃111と該回転刃113a、113bとで破砕しつつ固液分離する。
【0081】
図4における111は、下部半円筒部101の内面に固着された複数の凸型固定刃であり、回転刃体112a、112bにおける凸型固定刃111に対応する箇所には、回転刃体112a、112bにおける凸型固定刃111の部分を通過するための回転刃溝114a、114bが形成され、その溝の両側に、凸型固定刃111との間で植物Aを破砕するための回転刃113a、113bが設けられている。
なお、
図4では、凸型固定刃111と回転刃113a、113bとは、噛み合いが時間をずらして順次行われるように、周方向に位置をずらして配設し、これにより破砕撹拌機110の駆動モータの動力の瞬間的増大が起こらないようにしている。
【0082】
1個の回転刃体に設けられる回転刃の対数は、容器100、破砕撹拌機110、回転刃体112a、112bの大きさや、固液分離の対象となる植物Aの種類にも依存するが、1個の回転刃体に回転刃が、5対以上20対以下で設けられていることが好ましく、8対以上14対以下が特に好ましい。
1個の回転刃体に設けられた回転刃が少な過ぎると、破砕、撹拌及び/又は固液分離の効率が悪くなる場合、蒸発が抑制されて温度が上昇する場合等があり、一方、多過ぎると、過度の破砕と撹拌が行われるために、回転に負荷がかかる場合、細胞水の固液分離速度が上がり過ぎて水の蒸発熱で植物Aの温度が下がる場合等がある。
【0083】
なお、回転刃体に設けられた回転刃の上記対数は、1個の回転刃溝に1対の回転刃があるとする。例えば、
図4では、1個の回転刃体に回転刃溝が10個設けられているので、1個の回転刃体に回転刃は10対設けられていることになる。
【0084】
本発明においては、破砕撹拌機110によって、固液分離中に、投入された植物Aの細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、固液分離中の植物Aのサイズは、好ましくは1mm以上15mm以下、より好ましくは1.3mm以上10mm以下、特に好ましく1.6mm以上5mm以下である。このようなサイズになるように粗粉砕しつつ固液分離することが好ましい。
上記サイズは、粗粉砕された植物Aの最大差し渡し長さの質量平均値(体積平均値)である。
【0085】
上記サイズが小さ過ぎると、植物Aの細胞膜を破壊する(破壊する細胞膜の割合が大きくなってしまう)場合があり、一方、上記サイズが大き過ぎると、固液分離に時間がかかり過ぎる等、効率よく固液分離できない場合がある。
限定はされないが、容器100の中には、
図3に示すように、下部半円筒部101の片側上部に、この上に載る植物Aが円滑に落ちるように傾斜面107が設けられている。
【0086】
容器100には、更に、前記容器100内の真空度を計測する真空計108と温度計109a、109bが設けられている。これらは、固液分離工程における容器内の圧力(減圧度)と温度を測定し、固液分離時の植物Aの温度を間接的に測定するために設けられたものであり、また、固液分離の開始と終了を判定するために設けられている。
【0087】
本発明における容器100には、植物A及び容器100内を加熱する加熱ユニット120が設置されている。加熱ユニット120では、蒸気供給装置122によって加熱された水蒸気が、容器100(好ましくは容器100の下部半円筒部101)の周囲に設置された蒸気室121に送り込まれる。
本発明においては、加熱ユニット120による加熱水蒸気の蒸気室への流量によって加熱をコントロールし、植物Aからの細胞水の蒸発熱を冷却に利用すべく減圧装置の気体排出量によって冷却をコントロールする。
【0088】
固液分離中の植物Aの温度は、上記加熱ユニット120によって、該植物Aが有する酵素、微量成分、水、エクソソーム等を変質又は失活させないように、45℃以下に維持する。特に、固液分離中は、細胞水の蒸発熱で植物Aを冷却し、該加熱ユニット120によって加熱し、温度範囲を10℃以上45℃以下に維持することが好ましい。
固液分離中の該植物Aの温度は、20℃以上40℃以下がより好ましく、25℃以上38℃以下が更に好ましく、30℃以上37℃以下が特に好ましく、33℃以上36℃以下が最も好ましい。
【0089】
該温度が低過ぎると、商業的規模や工業的規模を考えた場合、蒸発固液分離に時間がかかり過ぎる場合;低い温度における水の蒸気圧の低さに適応した低圧力まで、「商業的規模や工業的規模の植物Aの量に十分に対応した気体排出能力の大きさを有しつつ、真空度(減圧度)を上げられる減圧器」が、そもそも存在しない又は極めて大型(コスト大)になる場合;等がある。
【0090】
一方、該温度が高過ぎると、該植物Aが有する細胞内物質を変質・分解・失活させてしまう場合、該植物Aの細胞膜に障害を与えてしまい該細胞膜を正常に通過した細胞水が得られない場合等がある。
上記温度範囲であると、植物(乾燥していない薬草)Aが有する、成分組成・純度、極微量成分、低沸点成分、不安定物質、エクソソーム、水等を、変質も分解もさせずに得ることができる。
固液分離中の植物Aの温度(範囲)は、本発明の効果を得るために極めて重要であり、たとえ投入する植物Aが個体として死んでいたとしても、通常の植物が正常にその生命を維持できる、又は、細胞が死なない上記温度範囲(特に温度上限)が望ましい。
なお、液体が容器100の気体取出し口から殆ど出てしまった後は、すなわち主たる固液分離が終わった後は、残渣を乾燥させる等のために、該植物Aの温度は上記上限温度よりも高くしてもよい。
【0091】
容器100に設けられた温度計109a、109bは、破砕撹拌機110を含む容器100の熱伝導等を利用して、固液分離中の植物Aの温度は十分正確に測定できるようになっており、細胞水の蒸発熱で植物Aが急速に冷却されそうになっても、逆に、上記加熱ユニット120によって植物Aが急速に加熱されそうになっても、固液分離中の植物Aの温度は十分正確に測定できるようになっている。
【0092】
減圧器300については後述するが、減圧器300の気体排出能力を、「内容積が1m
3の容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m
3/時間以上」とすることによって、加熱ユニット120によって植物Aが急速に加熱されそうになっても、細胞水の蒸発熱で該植物Aの温度を十分な速度で下げることができるようになっている。
本発明においては、細胞水の蒸発熱によって、該植物Aの温度を前記温度の上限以下に維持するように、該容器100内を減圧しつつ固液分離する。
【0093】
該減圧器300としては、蒸発熱による冷却によって、前記した植物Aの温度範囲を好適に維持するため、上記の気体排出能力を有する水エジェクタ301(特に好ましくは水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301)が用いられる。
【0094】
1回の固液分離で使用する植物Aの質量は、使用する容器の体積に依存するので特に限定はないが、200g以上1500kg以下が好ましく、500g以上1000kg以下がより好ましく、1kg以上500kg以下が特に好ましい。
該質量が小さ過ぎると、バッチを繰り返して固液分離することになるので、コストアップになり商業的に使用できなくなる。また、本発明における前記した又は後記する特殊な固液分離条件(容器内圧力、気体排出能力等)や、装置(回転刃体112を有する粉砕撹拌機110、減圧器300等)を適用する意味が薄れる場合がある。すなわち、本発明における「固液分離中の圧力」、減圧器種類、気体排出能力、蒸発熱を冷却に利用すること、等の(好ましい)要件・特徴が生かされない場合がある。本発明は、植物Aの量が上記下限以上の時に特にその効果を奏する。上記下限は、本発明の固液分離条件が有効に働く(初めて意味を持つ)ようになる点から重要である。
【0095】
一方、1回の固液分離で使用する植物Aの質量が大き過ぎると、本発明の前記効果を発揮できるような、減圧器300が存在しない場合;特に、植物Aの昇温を水の蒸発熱で抑制できるだけの気体排出能力と減圧度を有する減圧器300が存在しない又は極めて高価となる場合;等がある。
【0096】
容器100の実質体積は特に限定はないが、実質体積の範囲は、本発明における細胞水の蒸発による固液分離の条件が有効に効くか否かの点から重要である。植物Aの最大投入容量(L)として、すなわち投入できる植物Aの嵩(L)として、2L以上5000L以下が好ましく、4L以上2000L以下が好ましく、10L以上1000L以下が特に好ましい。なお、植物Aの最大投入容量(L)は、前記した容器100の下部半円筒部101の体積にほぼ等しいことが好ましい。
【0097】
容器100の実質体積又は下部半円筒部101の体積が小さ過ぎると、1回の処理量が少なくなり過ぎてコストアップになり、商業的に使用できなくなる場合等がある。
一方、大き過ぎると、本発明の前記効果を発揮できるような減圧器300がそもそも存在しない場合;具体的には、特に、植物Aの昇温を水の蒸発熱で抑制できるだけの気体排出能力と減圧度を有する減圧器300が存在しないか又は極めて高価となる場合;容器100の筐体に減圧負荷がかかり過ぎる場合;等がある。
【0098】
本発明の薬水の製造方法においては、上記容器の体積をV[L]とし、該容器に投入される植物Aの質量をM[kg]とするときに、V[L]をM[kg]の2倍以上5倍以下に設定することが好ましく、2.2倍以上3.5倍以下がより好ましく、2.5倍以上3.0倍以下が特に好ましい。
V[L]/M[kg]の値が小さ過ぎると、破砕、撹拌等を良好に実行できない場合がある。
一方、V[L]/M[kg]の値が大き過ぎると、大きな容器100が無駄になる場合;容器100が大き過ぎて、減圧器300の気体排出能力が十分に発揮できず、その結果、蒸発熱による植物Aの冷却ができず、該植物Aの温度が前記温度範囲の上限を超えてしまう場合;等がある。
【0099】
本発明における容器100には、植物Aから発生する気体を取り出す気体取出口130が設置されている。気体取出口130の近傍も、十分な熱伝導等で前記温度範囲に維持して、気体取出口130の近傍で水滴が生じないようにする(結露させないようにする)ことが好ましい。
【0100】
本発明の薬水の製造方法における固液分離装置には、例えば
図1に示したように、容器100の工程的に後段に、気体取出口130から取り出された気体を冷却する冷却器200が具備されている。
該冷却器200の冷却媒体としては、「0℃以上であり、上記容器100の気体取出口130から取り出された気体の温度より5℃以上低い(特に好ましくは7℃以上低い)温度」の水を用いることが、冷却して液化する効率の点から好ましい。
冷却媒体である水の温度が高過ぎると、固液分離気体の一部が液化されず収率が落ちる場合がある。このような冷却器200としては、公知のものが用いられ得る。
【0101】
本発明の薬水の製造方法における固液分離装置には、例えば
図1に示したように、冷却器200の後ろに、容器100内を減圧する減圧器300が具備されている。
該減圧器300としては、水の蒸発熱による吸熱で、該植物Aの温度が45℃を超えないように、又は、所定の好ましい温度を超えないように、内容積が1m
3の容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m
3/時間以上の気体排出能力を有する減圧器300を用いることが好ましい。
【0102】
容器100の内容積が大きければ、より大きい気体排出能力を有する減圧器300を用いる必要がある。容器100の内容積に比較して、小さい気体排出能力しか有さない減圧器300を用いると(容器100の内容積に応じて気体排出能力を大きくしていかないと)、水の蒸発熱で植物Aを冷却することができ難くなり、該植物Aが昇温してしまう場合がある。
【0103】
内容積が1m
3の容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m
3/時間以上の気体排出能力が好ましく、常圧体積22m
3/時間以上300m
3/時間以下がより好ましく、常圧体積25m
3/時間以上200m
3/時間以下が更に好ましく、常圧体積27m
3/時間以上150m
3/時間以下が特に好ましい。
減圧器300の気体排出能力が小さ過ぎると、固液分離効率が落ちる場合、水の蒸発熱による植物Aの過昇温防止効果が得られ難くなって、該植物Aの温度が上がり過ぎる場合等がある。
減圧器300の気体排出能力が大き過ぎると、そもそも下記する減圧度を達成しつつ、このような大きな気体排出能力を有する減圧器300が存在しない又は極めて高価若しくは極めて大型となる場合がある。
【0104】
図1に一例を示したように、水タンク303に水(好ましくは、予め水チリングユニットで冷却した水)を貯め、水循環ポンプ302で加圧した水を送液し、水エジェクタ301において該加圧水を噴出させることにより減圧することが好ましい。流動液体は静止液体より圧力が低い性質(ベルヌーイの定理)を用いて減圧して気体を排出する。
【0105】
本発明においては、上記固液分離を、101.3kPa(1気圧)に対し、80kPa以上低い圧力を維持しつつ行うことが好ましい。減圧器300による減圧度は、固液分離中は、該容器内の圧力を、101.3kPa(1気圧)に対し、80kPa以上低くすることが好ましい。
減圧器300による減圧度は、固液分離中は、該容器内の圧力を1kPa[1気圧(101.3kPa)に対して、−100.3kPa]以上10kPa[1気圧(101.3kPa)に対して、−91.3kPa]以下に維持することがより好ましい。
更に好ましくは1.3kPa(1気圧に対して、−100kPa)以上9kPa(1気圧に対して、−92.3kPa)以下であり、特に好ましくは2kPa(1気圧に対して、−99.3kPa)以上8.6kPa(1気圧に対して、−92.7kPa)以下であり、特に好ましくは3.3kPa(1気圧に対して、−98kPa)以上8.3kPa(1気圧に対して、−93kPa)以下である。
【0106】
減圧度が低過ぎると(圧力が高過ぎると)、水の蒸発熱による植物Aの冷却が期待できずに、植物Aの温度が高くなり過ぎる場合、固液分離に時間がかかり過ぎる場合等があり、その結果、細胞に含まれる酵素等の細胞内物質が失活する場合がある。また、細胞膜を通過して細胞水を水蒸気として固液分離できない場合がある。
一方、減圧度が高過ぎると(圧力が低過ぎると)、下記する「該圧力における水の沸点」と「植物Aの前記温度範囲」との関係で、そこまで低圧力にする必要がない場合があり、また、そもそも前記した気体排出能力を有した上に、そこまで減圧度を上げられる減圧器300が存在しない又は極めて大型で極めて高価になる場合等がある。
【0107】
温度(℃) 水の蒸気圧(kPa)
10 1.2
20 2.3
30 4.2
40 7.4
50 12.3
【0108】
減圧器300による容器内圧力(減圧度)は、固液分離中は、固液分離対象である植物Aの温度における水の蒸気圧の0.1倍以上1倍以下が好ましく、0.2倍以上0.99倍以下がより好ましく、0.4倍以上0.95倍以下が更に好ましく、0.6倍以上0.9倍以下が特に好ましい。
容器内圧力が上記下限以上であると、過度の蒸発熱による植物Aや細胞水の冷却がない。一方、容器内圧力が上記上限以下であると、商業的規模で十分な気体排出能力を有することを条件で、そのような圧力を実現できる減圧器が商業的規模で存在可能であり、また、細胞水が穏やかに沸騰して細胞膜を破損しない。
【0109】
上記減圧器300は、水を噴射することによって減圧を達成する水エジェクタ301であることが前記理由から好ましく、水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301であることが、高い減圧度と共に高い気体排出能力を有するために特に好ましい。すなわち、減圧度と気体排出能力の両立ができ、前記本発明の効果を奏し易い点から好ましい。水循環ポンプ302を有して横噴射型であると、特に気体排出能力を上げ易い。
【0110】
減圧器には、一般的に、ロータリーポンプ、オイル拡散ポンプ、水銀拡散ポンプ、差動ポンプ等がある。例えば、ロータリーポンプでは約1Pa(10
−2mmHg)、オイル拡散ポンプでは約0.1mPa(10
−6mmHg)という何れも高真空度は達成できるものの気体排出能力が極めて低い。一方、一般的なエジェクタでは、通常は10kPaより高い圧力にしかならない場合が多い。
【0111】
上記気体排出能力と減圧度(真空度)の両立は、「水エジェクタ301」で好適に達成でき、特に、水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタを用いることによって、好適に両立が可能である。
前記した高い気体排出能力の数値は、かかる水エジェクタで達成できるとは言っても汎用的な数値ではない。前記した高い気体排出能力の数値は、(例えば好ましい態様を下記する)水エジェクタを有する減圧器の構造(特に、吸引孔、水位、消音器等);噴射する水の温度;噴射速度;噴射ノズル径;単位時間当たりの噴射量;噴射距離等を調整して得る。
【0112】
本発明においては、上記減圧器が、水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタであることが、固液分離中の容器内の圧力や気体排気能力等の点から好ましい。
本発明における特に好ましい「横噴射型の水エジェクタ」の態様を
図5と
図6に示す。
図5と
図6に示した「横噴射型の水エジェクタ」は、水を受ける筒形の水入口片1と、該水入口片1の下流側に設けられ、該水入口片1から流入する水と吸引ガスとを混合する主管スロート6と、該主管スロート6の下流側端部に接続して設けられ、内径が末広がり形状をなすパイプからなる出力片7を有している。
更に要すれば、円筒形状をなし、該出力片7の下流側端部に設けられ、水と吸引ガスとの混合物を流す消音器12と、該消音器12に取付けられ、水が流出する際に該消音器12内に空気を取り入れて、該消音器12内の気圧の急変を防止する吸気管11とを備えている。
【0113】
また、上記した水エジェクタ301においては、水入口片1と主管スロート6と出力片7とを収容する外被管8を備え、該外被管8に、細胞水と酵素の気体を供給する吸引管3を取付け、該外被管8を消音器12に接続し、主管スロート6は、水入口片1の終端部に連接して設けられ複数個のガス吸引孔4を有する円筒形パイプからなる。
また、前記水タンク303からの水を吸込んで水入口片1より吐出する水循環ポンプ302、前記水入口片1、前記主管スロート6、前記出力片7、及び、前記消音器12を含む循環路を、前記水タンク302内の水位17より低く設定してあることが好ましい。
【0114】
図5は、水エジェクタ301とそれに連結される消音器12の概略を、
図6には、水エジェクタ301を横方向に設置して水タンク303に接続する形態を示す。
図5の水エジェクタ301において、水入口片1は、水の流れ抵抗を減少させるため面取りが施されている。
該水入口片1よりも直径の太い主管スロート6が入口片1に接続されている。該主管スロート6の形状は単純なパイプ形状である。
該主管スロート6の入口部には、パイプ管壁を貫通する複数個の吸引孔4が開けられており、該吸引孔4は、吸引管3を通じ真空引き(減圧)する際に、吸込みガス(細胞水と酵素の気体)を主管スロート6内に吸引するためのものである。
【0115】
主管スロート6の終端付近には、直径が主管スロート6より太いパイプ状の出方片7が連結されている。該出口片7は、出口方向に向かって末広がり状に広がる内部形状を有している。
また、水入口片1、主管スロート6、及び、出口片7を被覆する外被管8が、外側に円筒状に接続されている。これら1〜8で示す部材により、水エジェクタ301が構成される。
12は消音器であり、
図5のように、該消音器12の内径は、水エジェクタ301の出力片7の出口の内径より太いパイプ形状を有する。
【0116】
図5に示す水エジェクタ入口片1には、
図6に示す水循環ポンプ302からの吐出配管15を、入口側フランジ2を介して接続されている。
真空引き機能は、吸引管3だけを通じて行うように、中空円形状の仕切板5が設けられている。該仕切板5の内側部は、主管スロート6の外側部に固着され、該仕切板5の外周部は、外被管8に固着され十分な気密性が保たれるようになっている。
【0117】
本発明における減圧器300の好ましい態様は、
図6に示すように、水エジェクタの極めて高い気体排出能力を図るために、消音器12を漬ける水を溜めた水タンク303を備え、水エジェクタ301で使用された水は、一旦、水タンク303に蓄えられる構造になっている。水タンク303の水は、冷却水で20℃以下に冷却されることが好ましい(
図1)。
水エジェクタ301は、その終端の出力側フランジ9を使い、該水タンク303の外側より固着されている。
消音器12は、フランジ10で水タンク303の内側より、出力側フランジ9と同位置に固着されている。これにより水タンク303内では、水エジェクタ301と消音器12は、水タンク303の内部で連結されている。
【0118】
消音器12は、水平部12aとその先端で直角に下方に曲げた垂直部12bとを有し、終端12cからは、吸引ガスが混合された水が水タンク303内の水中に流出する構成となっている。
また、水流を作る水循環ポンプ302に接続されている戻り配管14を通じて、水が循環して再利用される構造となっている。
戻り配管14、水循環ポンプ302、吐出配管15、水エジェクタ301、及び、消音器12からなる循環路は、水タンク303内の水位17より低く設定されている。
【0119】
消音器12における水エジェクタ301の連接部近くに、空気を取入れる吸気管11が設けられ、吸気管11の吸気口は、水タンク水位17より上部に位置させることにより、吸気口が水面下に浸らない構造とする。水タンク303には、水位17の設定のためのオーバーフロー通風口18が設置されている。
本発明における好ましい水エジェクタ301は、
図5に示したように、主管スロート6に吸引孔4が設けられている。それによって、管同士の隙間からガスを吸込む従来の水エジェクタと比べて、前記したような高い(大きい)気体排出能力を有するようになる。
また、本発明の好ましい水エジェクタ301とそれに連結される消音器12は、
図6のように、水の循環路が水タンク303の水位17より低く、横向き水平に使用設置することが可能となり、該「水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタ」は、従来のエジェクタや水エジェクタの減圧器と比べて、前記したような高い(大きい)気体排出能力を有するようになる。
【0120】
本発明の薬水の製造方法は、45℃以下という比較的低温での水の蒸気圧を勘案しても、該蒸気圧に対し必要以上に容器100内の圧力(減圧度)を低くすることに拘らず、その分を気体排出能力の向上に振り向けて、対象となる植物Aを細胞水等の蒸発熱で冷却することで達成できた。また、そのように条件設定することで、商業的工業的規模の植物Aの量(処理量)でも、十分な圧力(減圧度)と十分な気体排出能力を有する減圧器300が存在し得る。
【0121】
薬水の製造方法は、減圧器300として、該植物Aが有する細胞内物質を失活させないために、細胞水等の水の蒸発熱で該植物Aの温度が45℃を超えないように(好ましくは前記した上限温度を超えないように)、内容積が1m
3の容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m
3/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタ301を用い、該水エジェクタ301によって、該容器内の圧力を10kPa以下に維持して該植物Aを固液分離することが好ましい。
【0122】
主たる固液分離(固液分離初期から、容器に投入した固液分離対象の植物Aの90質量%が固液分離されるまで)に要する時間は、投入量にもより特に限定はされないが、1時間以上24時間以下が好ましく、3時間以上20時間以下がより好ましく、4時間以上16時間以下が特に好ましい。
【0123】
時間が短過ぎる場合は、蒸発熱による冷却ができないで昇温する場合、そもそも本格生産規模で、50℃以下(好ましくは前記温度以下)と言う比較的低温で、短時間で細胞水を蒸発させるだけの減圧器がない又は極めて大型になる場合等がある。
一方、時間が長過ぎる場合は、時間が無駄でコストアップになる場合;本発明における前記又は後記した特殊な固液分離条件(容器内圧力、気体排出能力等)や、装置(回転刃体112を有する粉砕撹拌機110、減圧器300等)を適用する意味が薄れる場合;等がある。すなわち、本発明における、固液分離中の圧力、減圧器種類、気体排出能力、「蒸発熱を冷却に利用すること」等の(好ましい)要件・特徴が生かされない場合がある。
【0124】
本発明の薬水の製造方法における固液分離装置には、例えば
図1、
図2に示したように、上記冷却器200で冷却されて液化した液体(液相)を回収し、そこから薬水を獲得する回収獲得容器400が具備されている。
上記冷却器200からの液体を回収獲得容器400に貯めると、下層に水相(水層)401が、上層に油相(油層)402が位置する場合があるので、液体取出しバルブ405を開いて、水相(水層)取出し口404から、下層の水相(水層)401である薬水のみを最終容器(図示せず)に抜き出すことができる。
本発明の薬水の製造方法では、上記回収獲得容器400に回収された液体Bから、比重の差を利用して、下層の水相401と上層の油相402を別々に獲得することも好ましく、その水相401だけを薬水として用いることもできる。
【0125】
本発明の薬水の製造方法は、下記に限定はされないが、具体的には例えば下記のように行われる。
まず、固液分離作業開始に当り、冷却水供給装置に冷却水を充填し、冷却器200に冷却水を循環させる。次いで、植物Aを植物投入口103から容器100内に投入して植物投入口蓋104を閉じる。
そして、破砕撹拌機110は、
図2〜
図4の矢印Rの回転方向に回転させ、容器100内の植物Aを撹拌しながら、回転刃113a、113bと凸型固定刃111との間で植物Aを破砕する。
かかる破砕撹拌機110によって破砕することで、細胞膜を殆ど破壊せず、また破砕しながら固液分離することで、細胞水等の細胞内物質の「変性」や「散逸による減量」を防ぐことができる。
【0126】
上記撹拌・破砕と同時に、蒸気供給装置から蒸気室121内に加熱用蒸気を供給することにより、外部から熱を加える。容器100に加えられた熱は、植物Aに伝達され、植物Aが破砕撹拌機110によって撹拌されることにより、固液分離が促進されると共に温度等が均一になる。この固液分離は、植物Aが、回転刃113a、113bと凸型固定刃111とによって破砕されて小さくなることによって更に促進され均一になる。
その際、蒸気室121内に送り込む加熱用蒸気の温度や量を調整したり、減圧器300である水エジェクタ301に供給する水の量・圧力・噴射速度等を調整して気体排出能力や容器内の圧力を適切に設定したりして、植物Aの温度を45℃以下(更には、上記した(より)好ましい範囲)に維持する。
【0127】
水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301等の減圧器300で吸引することにより、容器100内の気体、すなわち、固液分離液の蒸気及び空気を、気体配管131を通じて吸引し、容器100内の植物Aに含まれている「揮発成分である細胞内物質」と細胞水の蒸発を開始させる。その際、減圧器300で吸引する量や吸引力を調節して、固液分離時の圧力(減圧度)を、前記した好ましい範囲にする。
容器100内の植物Aに含まれる「揮発成分である細胞内物質の蒸気」及び「細胞水の主成分である水の蒸気」(水蒸気)は、気体配管131を通して吸引され、冷却器200に導入され液化されて、回収液となって回収獲得容器400内に溜まる。
【0128】
回収獲得容器400内に、回収液が所定量まで貯まったら、減圧器300での吸引を停止し回収液を回収する。回収液は、要すれば静置して分液をして、水相(水層)401を水相(水層)取出し口404から獲得して薬水とする。
薬水を獲得後、容器100内に残った固体Cを、固体粉末取出し口140から回収する。
【0129】
前記した通り、固液分離方法や抽出方法としては、前記した通り、水蒸気蒸留法、直接抽出法、溶媒抽出法、圧搾法、超臨界抽出法、フリーズドライ法等、種々の方法が知られている。
このうち、水蒸気蒸留法や直接抽出法では、植物Aと媒体を(通常は60℃以上に)加熱するため、酵素を含め細胞内物質(有効成分)が変性・熱分解する、散逸する等で、細胞内物質(有効成分)をそのまま含むものが十分に得られない。なお、植物Aが45℃より高くなると、酵素等の細胞内物質が失活する。
また、水蒸気蒸留法では、抽出に用いた水蒸気が液化した水が細胞水に混合することで、全て天然由来の抽出液ではなくなるし、抽出残渣物にも外部からの水(由来物)が混入することになる。
【0130】
また、溶媒抽出法では、水溶性成分が抽出され難い、抽出溶媒が抽出液中に残留することにより抽出残渣物を薬水として使用することが困難になり、また、その溶媒を除去する際に有効成分である細胞内物質も除去されてしまう。また、溶媒抽出法では、溶媒を使用することが必須であるため、植物由来の細胞水を得ることが難しい。
更に、抽出液の収量も一般には少ない。抽出溶媒として水を用いる場合でも、抽出のために加えた水が残留するので、全て天然由来であるとは言えない。
【0131】
圧搾法でも、抽出溶媒として用いた油性成分が抽出液中に残留し、抽出残渣物を有効活用することが困難であり、また、その油性成分を完全に除去することが不可能である。また、抽出溶媒を使用するため、植物由来の水溶性の細胞内物質を得ることが難しい。
抽出溶媒を使用しない圧搾法は、採取するときに沸点が100℃より高い油(例えば、ごま油、つばき油等)を通常は用いるが、水性液を採取する場合や揮発性物質を採取する場合は、収率が著しく落ちるため使用できない。
超臨界抽出法では、高圧を要するので高価な設備を必要とする、媒体由来の極微量の不純物が混入する等の問題点がある。
また、フリーズドライ法では、水が氷になるのでその際に細胞膜が破壊される。
【0132】
また、植物Aを破砕・撹拌をしながらではなく、一旦破砕・撹拌をした後に固液分離する方法では、細胞内物質(有効成分)が効率的に固液分離できない場合もある。
また、植物Aを「破砕しつつではなく加熱・減圧」して固液分離する通常の方法では、植物Aの組織や細胞の中に含まれている種々の成分を効率的に獲得し利用できない場合もある。
【0133】
本発明は、上記の薬水の製造方法を使用して製造されるものであることを特徴とする薬水でもある。
なお、本発明の薬水は、水が特定の情報を有して存在している可能性があり、また、極めて多くの成分が含有されているところ、それらの成分を同定すること、それらの成分から本発明の効果を奏する有効成分を特定すること、それらの成分含有比を求めること等は、不可能であるか又はおよそ実際的でない(「不可能・非実際的事情」がある)。
従って、本発明における薬水については、製造方法で特定する以外に方法がない。
【0134】
本発明の薬水は、「本発明における固液分離の対象である薬草を乾燥してなる生薬」が有する効能を有する。すなわち、従来知られている各生薬の奏していた薬効と同一の薬効も示す。固液分離の対象部位が、従来の生薬の部位とは異なっていても、意外にも、従来知られている各生薬の薬効を示すことが確かめられている。
また、対象部位の如何に依らず(同一部位でも他の部位でも)、従来知られている各生薬の薬効以外の薬効を示す場合がある。
実施例に示したように、乾燥していないトウキ(当帰)、シャクヤク(芍薬)、ヨモギ(蓬)、カンキツ(柑橘)、カンゾウ(甘草)又はクズ(葛)の場合には、摂取したヒトの体温を上昇させる効果が見られた。
【0135】
従って、本発明は、上記の薬水を含有することを特徴とする、循環器系、呼吸器系、消化器系若しくは眼科系疾患改善剤、又は、婦人病若しくは不妊症改善剤でもある。
全て天然物であり刺激性もないので、循環器系、呼吸器系、消化器系若しくは眼科系疾患改善剤として有用である。
また、評価した全ての薬水で、ヒトにおいて体温の上昇が見られたことから、婦人病若しくは不妊症改善剤として極めて好適である。
【0136】
本発明の薬水は、種々の製剤形態(剤型)、食品形態、化粧料形態等で使用できるが、液体の形態のままで利用されることが好ましい。薬水の利用先でも該薬水に含まれる水をそのままの形態で含有していることが好ましいからである。
【0137】
従って、本発明は、上記薬水を含有することを特徴とする、液剤、シロップ剤、又は、ゼリー剤でもある。本発明の薬水は、細胞水であることや、水自体の有する情報等にも特徴があるため、最終的な使用形態(剤型、食品形態)においても、該水をそのまま含有することが特に好ましい。
【0138】
また、本発明は、上記薬水を含有することを特徴とする化粧料でもある。該化粧料においても、薬水に含まれている水をそのまま含有しているような化粧料が好ましい。
柑橘は、従来の抽出法では光毒性を示す物質が抽出されていたが、本発明における固液分離法を用いると、得られる薬水中には光毒性を示す物質が含有されておらず、そのため、柑橘由来の本発明の薬水は、光毒性があると使用できない化粧料に対して特に有効である。
【0139】
<作用・原理>
従来の生薬を含めた薬草の使用方法は、特定部位の乾燥品を湯で煎じて使用(服用)する。乾燥の際には加熱や光照射を必要とする。
従来行われていた天日乾燥は、紫外線の影響があり、例えば、色素退色が起こる。また、従来行われていた凍結乾燥は、乾燥物を凍結し、真空ポンプで減圧し、凍結した乾燥物中の水の沸点(昇華温度)を下げて、乾燥物中の水分を昇華させて乾燥させるが、昇華の際には熱が必要なので、棚を加熱して昇華熱を補い、その後、長期保存をする。
【0140】
(1)生物的・生化学的活性の保持、(2)非耐熱性物質の保持、(3)酵素変質の抑制、(4)香味成分の保持、(5)固液分離中のコンタミ防止、等が重要であるが、従来法では、何れも、水性成分や香りが残り難く(揮散し易く)、油性成分は抽出できない。
しかしながら、本発明における低温真空固液分離法では、細胞水(液体)が低温で分離できるため、植物細胞にストレスを与えず、細胞水の活性が保持されつつ抽出できる。
植物Aの生体内の細胞水は、人の細胞浸透液に似通っているため、細胞水や本発明の薬水は、ヒトにおいても浸透性や親水性が極めて高いと考えられる。
【実施例】
【0141】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0142】
製造例1
固液分離対象である生薬原料植物として、
その根の乾燥物を当帰と言う植物の乾燥前の植物の葉及び根並びにその両方;
その根の乾燥物を芍薬と言う植物の乾燥前の植物の花及び根;
その葉の乾燥物を蓬と言う植物の乾燥前の植物の葉;
その果皮の乾燥物を陳皮と言う植物(ウンシュウミカン、マンダリンオレンジ等の柑橘)の乾燥前の植物の果皮;
柑橘である橘(タチバナ)の果皮;
その樹皮の乾燥物を黄柏と言う植物(キハダ)の実及び樹皮;
その根の乾燥物を甘草と言う植物の乾燥前の植物の葉及び根並びにその両方;
その蔓(茎)の乾燥物を葛と言う植物の乾燥前の植物の花及び茎並びに植物全体;
その種子の乾燥物を月桃と言う植物の乾燥前の植物の根及び茎並びに植物全体;
その根皮や枝葉の乾燥物を釣樟と言う植物(クロモジ)の乾燥前の植物の根及び茎並びに植物全体;
乾燥前の菊芋の芋の部分;
乾燥前の甘茶の葉;
の全部で24種の乾燥していない生薬原料植物及び乾燥していない薬草を用いた。
【0143】
上記24種の「植物の部位」を、まず、最長の差し渡し長さ約1cm〜5cmに切って得られた嵩が約10L(約4kg)を、
図1〜3に示した容器100(投入容量10L、容器の体積(内容積)0.02m
3)に投入し、
図2と
図4に示したような回転刃体112a、112bを有する破砕撹拌機110によって、回転刃体を4回転/分で回転させ、破砕しながら固液分離した。
その際、該破砕撹拌機110(1.5kW)によって、少なくとも主たる固液分離中は、生薬原料植物の細胞が有する細胞膜を実質的に破壊しないように、該生薬原料植物を撹拌しつつ約2mm〜約6mmに破砕した。
【0144】
蒸気量28〜140kg/hrの加熱ユニット120で加熱すると共に、水エジェクタ301で真空引きし、水の蒸発熱で生薬原料植物の温度を35℃±2℃に保った。水エジェクタ301の水温と、冷却器200の冷却水の水温は、共に10℃±2℃に保った。
使用した水エジェクタ301は、横噴射型の水エジェクタ(3.7kW)であり、引かれる方がオープンの場合、常圧体積20m
3/時間以上の気体排出能力を有する水エジェクタであった。
【0145】
容器100内の圧力は、固液分離中は、3.3kPa(1気圧に対して、−98.0kPa)以上6.3kPa(1気圧に対して、−95.0kPa)以下に常に保った。主たる固液分離時間は5時間であった。
【0146】
固液分離した後の液体Bを回収獲得容器400に回収した後、液体取出しバルブ405を開いて、水相(水層)取出し口404から獲得し、これを薬水とした。
原料の生薬原料植物と得られた薬水は、容器内でも冷却・回収時でも獲得時でも、常に35℃±2℃を保った。
【0147】
得られた「生薬原料植物からの薬水」は、水を加えて約50〜80℃で加熱抽出した液や水蒸気蒸留法で得た液とは、異なった香りがした。成分組成が異なっているものと推認された。また、常に35℃±2℃を保ったので、細胞水、エクソソーム、酵素等の細胞内物質が失活・分解・変質しないで残っていた。
【0148】
製造例2
製造例1で得られた24種類の薬水10質量部と純水90質量部とを混合し、24時間静置後、食品用の増粘安定剤(ゲル化剤)を適量加えて、ゼリー剤(ゼリー状食品)をそれぞれ製造し、それら各3gをパウチフィルムの袋に内包させて、スティック型ゼリー24種を得た。
【0149】
製造例3
製造例1で得られた24種類をそのまま液剤として、それぞれ10gずつを瓶に入れて滴下用の液(液剤)を製造した。
【0150】
製造例4
製造例1で得た24種類の薬水のうち、当帰の葉からのものを2.0gと、芍薬の花からのものを2.0gと、蓬の葉からのものを1.5gとを混合し、3種混合の薬水を製造した。
上記の3種混合の薬水を、製造例2と同様にして、ゼリー剤(ゼリー状食品)とし、その3gをパウチフィルムの袋に内包させて、スティック型3種混合ゼリーを得た。
【0151】
比較製造例1
製造例1で使用した「乾燥していない生薬原料植物」に代えて、中国から輸入した、既に乾燥してある、当帰、芍薬、蓬、陳皮、黄柏、甘草、葛、月桃、釣樟(乾燥したクロモジ)、それぞれ10gに、50℃〜65℃の水150gを加えて、同温で3〜5分間、煎じ(抽出し)、それぞれ、9種類の煎じ液を得た。
また、日本で入手した乾燥した菊芋と甘茶それぞれ10gに、50℃〜65℃の水150gを加えて、同温で3〜5分間、煎じ(抽出し)、それぞれ、2種類の煎じ液を得た。
【0152】
比較製造例2
製造例1で使用した「乾燥していない生薬原料植物」と乾燥していない薬草を用い、ただし、製造例1の固液分離法(固液分離条件)に代えて、10質量倍の80℃の水で熱水抽出をして、それぞれ、24種類の比較薬水を得た。
【0153】
評価例1
製造例2で得られた24種類のスティック型ゼリー3g、及び、製造例4で得られたスティック型3種混合ゼリー3gを、それぞれ、男性10人と女性10人の計20人に、1袋3gのゼリーを2袋ずつ食べてもらった。
【0154】
その結果、末梢血管の血流が上昇したと思われ、全員の体温が、食事(摂取)の15分後には、0.2℃〜1.0℃の範囲で上昇した。
中に低体温症の人がいたが、その人の体温は、35.5℃から36.5℃に上昇した。
また、中に不妊症の女性がいたが、体温が上昇したことにより、不妊症に効果があることが示唆された。
【0155】
また、対応する「乾燥品である生薬」が本来有している効能を、そのまま有していた。
特に、製造例1で得られた薬水は、対応する「乾燥品である生薬」が本来有している効能が、血液循環を高め、貧血、筋肉のこり、冷え性、婦人病等に効果があるものが多いが、それらの効能と同様の効能が、本発明の薬水では、より強く奏されることが分かった。
【0156】
また、柑橘に関しては、乾燥品である生薬では、光により毒性を有するようになるが(光毒性があるが)、製造例1で製造した「柑橘である橘(タチバナ)の果皮」を用いて製造例1のように固液分離した薬水では、光毒性を有していなかった。
柑橘の香り成分が非加熱で得られるため、光毒性のある成分は、本発明の薬水には含有されていないと考えられた。
【0157】
更に、「生薬原料植物等の薬草の本来有効であると言われている植物部位」以外の植物部位であっても、本発明における固液分離法によって得られた薬水はその効果を示した。
中でも、当帰の原料植物の葉、芍薬の原料植物の花、葛の原料植物の花、黄柏の原料植物(キハダ)の果実は、古来、生薬として知られていた部位以外の部位であるが、そこから得られた薬水が、それぞれの生薬と同様の効果、及び、何れも上記した体温上昇効果を示した。乾燥品である生薬からの熱水抽出物(煎じ薬)が有する薬効と同様の薬効を示した。
【0158】
評価例2
製造例3で製造した滴下用の液(液剤)を、スポイトで3滴、100gの水に滴下し、それを評価例1と同様に評価した。
その結果、評価例1と同様に、体温の上昇が見られ、また、対応する「乾燥品である生薬」が本来有している効能を、それぞれそのまま有していた。
【0159】
評価例3
比較製造例1で得た9種類の煎じ液、及び、比較製造例2で得た24種類の比較薬水を、製造例2と同様にゼリー剤(ゼリー状食品)とし、評価例1と同様に評価したところ、何れも、摂取後15分では、体温の上昇が殆ど見られなかった。
【0160】
比較製造例1で得た生薬本来の煎じ液をゼリー剤(ゼリー状食品)としたものでは、生薬本来の効能は示すが、その効能は、製造例1で得られた本発明の薬水に比べて低いものであった。
なお、「『生薬として知られている植物の部位』以外の部位の乾燥物」からの煎じ液は、上記効能を示さないと考えられる。
【0161】
また、比較製造例2で得た比較薬水は、80℃で熱水抽出しているため、水を含む細胞内の成分が変質してしまっているためか、本発明の薬水の有する独特の効能は全く有していなかった。