特開2020-200501(P2020-200501A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ソディックの特許一覧

<>
  • 特開2020200501-積層造形装置 図000003
  • 特開2020200501-積層造形装置 図000004
  • 特開2020200501-積層造形装置 図000005
  • 特開2020200501-積層造形装置 図000006
  • 特開2020200501-積層造形装置 図000007
  • 特開2020200501-積層造形装置 図000008
  • 特開2020200501-積層造形装置 図000009
  • 特開2020200501-積層造形装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-200501(P2020-200501A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/105 20060101AFI20201120BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20201120BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20201120BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20201120BHJP
【FI】
   B22F3/105
   B22F3/16
   B33Y30/00
   B33Y50/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-107199(P2019-107199)
(22)【出願日】2019年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】特許業務法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】宮下 泰行
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018KA70
(57)【要約】      (修正有)
【課題】積層造形の過程において形成中の造形物の状態を観察し、造形状態の良否を判定することのできる積層造形装置の提供。
【解決手段】焼結層の表面状態が良好である場合と不良である場合との境界である凸部の状態の閾値が記憶された記憶部と、表面状態測定部によって測定された凸部の状態と前記記憶部に記憶された凸部の状態の閾値とを比較し、焼結層の造形状態の良不良を判定する判定部と、を備え、前記記憶部には、焼結層の表面状態が良好である場合と不良である場合との境界である凸部の高さ、並びに、凸部が発生した領域の総面積および焼結領域における凸部の占有割合のうちの少なくとも一方の閾値が記憶され、前記判定部は、前記表面状態測定部によって測定された凸部の状態から、凸部の高さ、並びに、凸部が発生した領域の総面積および焼結領域における凸部の占有割合のうちの少なくとも一方を算出して対応する前記閾値とそれぞれ比較する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の材料粉末が敷かれるテーブルと、
水平一軸方向に往復移動して前記テーブル上に材料粉末を供給するとともに平坦化して粉末層を形成するリコータヘッドと、
粉末層の所定の焼結領域にレーザを照射して材料粉末が焼結された焼結層を形成するレーザ照射部と、
焼結層の表面に生じた凸部の状態を測定する表面状態測定部と、
焼結層の表面状態が良好である場合と不良である場合との境界である凸部の状態の閾値が記憶された記憶部と、
前記表面状態測定部によって測定された凸部の状態と前記記憶部に記憶された凸部の状態の閾値とを比較し、焼結層の造形状態の良不良を判定する判定部と、
を備え、
前記記憶部には、焼結層の表面状態が良好である場合と不良である場合との境界である凸部の高さ、並びに、凸部が発生した領域の総面積および焼結領域における凸部の占有割合のうちの少なくとも一方の閾値が記憶され、
前記判定部は、前記表面状態測定部によって測定された凸部の状態から、凸部の高さ、並びに、凸部が発生した領域の総面積および焼結領域における凸部の占有割合のうちの少なくとも一方を算出して対応する前記閾値とそれぞれ比較し、焼結層の造形状態の良不良を判定することを特徴とする積層造形装置。
【請求項2】
前記記憶部には、焼結層の表面状態が良好である場合と不良である場合との境界であって、凸部の発生個数および焼結領域の任意の領域の単位面積当たりの発生個数のうちの少なくとも一方の閾値がさらに記憶され、
前記判定部は、前記表面状態測定部によって測定された凸部の状態から、凸部の発生個数および焼結領域の任意の領域の単位面積当たりの発生個数のうちの少なくとも一方を算出して対応する前記閾値とそれぞれ比較し、焼結層の造形状態の良不良を判定することを特徴とする請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
焼結層を形成する前に、焼結層を形成するときと同じレーザ照射条件にて第1の仮の焼結層を形成し、
前記表面状態測定部は、前記第1の仮の焼結層の表面の任意の領域の単位面積当たりに生じた凸部の状態を測定し、
前記判定部は、前記第1の仮の焼結層の表面の任意の領域の単位面積当たりに生じた凸部の状態と前記第1の仮の焼結層の内部状態との関係に基づき、前記閾値を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層造形装置。
【請求項4】
焼結層を形成する前に、焼結層を形成するときと同じレーザ照射条件にて同じ形状に第2の仮の焼結層を形成し、
前記表面状態測定部は、前記第2の仮の焼結層の表面に生じた凸部の状態を測定し、
前記判定部は、前記第2の仮の焼結層に生じた凸部の状態と前記第2の仮の焼結層の内部状態との関係に基づき、前記閾値を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層造形装置。
【請求項5】
前記判定部によって焼結層の造形状態が不良であると判定された場合、
前記リコータヘッドは、次の粉末層の形成を行わないことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の積層造形装置。
【請求項6】
前記判定部によって焼結層の造形状態が不良であると判定された場合、
前記レーザ照射部は、前記所定領域のうちの凸部の発生領域にレーザを再照射することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の積層造形装置。
【請求項7】
前記判定部によって焼結層の造形状態が不良であると判定された場合、
前記レーザ照射部は、前記所定領域の全域にレーザを再照射することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の積層造形においては、金属材料からなる粉末層を形成し、この粉末層の所定箇所にレーザ光または電子ビーム等のビームを照射して照射位置の粉末層を焼結または溶融させて焼結層を形成している。そして、粉末層の形成と焼結層の形成とを繰り返すことによって、所望の三次元造形物を造形している。
【0003】
このような金属の積層造形を行う積層造形装置は、近年、その性能が向上してきている。この性能の向上に伴って、試作品の制作が主な用途であった積層造形装置の利用範囲が拡大してきている。特に、最近では、医療分野や航空宇宙分野においても、積層造形装置により重要な部品等を制作する機会が増加している。これらの分野では、部品等の品質が一定以上であることが求められており、部品等を制作する側にとっても、その品質を保証できることが重要になってきている。
【0004】
造形物の品質を保証するための手段としては、成果物に対して厳密な検査を行うことが挙げられるが、造形物を形成する工程において品質の低下を抑制することも考えられる。
【0005】
前者としては、例えば、造形物に対してX線CTスキャンを実施する方法があり、後者としては、例えば、特許文献1に記載されているように、粉末層の表面状態に応じて照射するビームを制御することで、造形物の特性変化や形状精度の低下を抑制する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018−3147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、造形物の欠陥等の多くは、その形成過程において発生していることが多い。例えば、造形物中の空隙は、造形物の形成後に生じるものではなく、形成過程において生じるものである。したがって、造形物の形成過程を観察することは重要なことである。
【0008】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、積層造形の過程において形成中の造形物の状態を観察し、造形状態の良否を判定することのできる積層造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、金属の材料粉末が敷かれるテーブルと、水平一軸方向に往復移動して前記テーブル上に材料粉末を供給するとともに平坦化して粉末層を形成するリコータヘッドと、粉末層の所定の焼結領域にレーザを照射して材料粉末が焼結された焼結層を形成するレーザ照射部と、焼結層の表面に生じた凸部の状態を測定する表面状態測定部と、焼結層の表面状態が良好である場合と不良である場合との境界である凸部の状態の閾値が記憶された記憶部と、前記表面状態測定部によって測定された凸部の状態と前記記憶部に記憶された凸部の状態の閾値とを比較し、焼結層の造形状態の良不良を判定する判定部と、を備え、前記記憶部には、焼結層の表面状態が良好である場合と不良である場合との境界である凸部の高さ、並びに、凸部が発生した領域の総面積および焼結領域における凸部の占有割合のうちの少なくとも一方の閾値が記憶され、前記判定部は、前記表面状態測定部によって測定された凸部の状態から、凸部の高さ、並びに、凸部が発生した領域の総面積および焼結領域における凸部の占有割合のうちの少なくとも一方を算出して対応する前記閾値とそれぞれ比較し、焼結層の造形状態の良不良を判定することを特徴とする積層造形装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る積層造形装置は、焼結層の表面に生じた凸部の状態を測定し、その造形状態の良不良を判定するように構成される。このような構成により、積層造形の過程において形成中の造形物の造形状態の良否を判定することができる。
【0011】
好ましくは、以下の発明が提供されてもよい。
前記記憶部には、焼結層の表面状態が良好である場合と不良である場合との境界であって、凸部の発生個数および焼結領域の任意の領域の単位面積当たりの発生個数のうちの少なくとも一方の閾値がさらに記憶され、前記判定部は、前記表面状態測定部によって測定された凸部の状態から、凸部の発生個数および焼結領域の任意の領域の単位面積当たりの発生個数のうちの少なくとも一方を算出して対応する前記閾値とそれぞれ比較し、焼結層の造形状態の良不良を判定することを特徴とする前記積層造形装置。
焼結層を形成する前に、焼結層を形成するときと同じレーザ照射条件にて第1の仮の焼結層を形成し、前記表面状態測定部は、前記第1の仮の焼結層の表面の任意の領域の単位面積当たりに生じた凸部の状態を測定し、前記判定部は、前記第1の仮の焼結層の表面の任意の領域の単位面積当たりに生じた凸部の状態と前記第1の仮の焼結層の内部状態との関係に基づき、前記閾値を算出することを特徴とする前記積層造形装置。
焼結層を形成する前に、焼結層を形成するときと同じレーザ照射条件にて同じ形状に第2の仮の焼結層を形成し、前記表面状態測定部は、前記第2の仮の焼結層の表面に生じた凸部の状態を測定し、前記判定部は、前記第2の仮の焼結層に生じた凸部の状態と前記第2の仮の焼結層の内部状態との関係に基づき、前記閾値を算出することを特徴とする前記積層造形装置。
前記判定部によって焼結層の造形状態が不良であると判定された場合、前記リコータヘッドは、次の粉末層の形成を行わないことを特徴とする前記積層造形装置。
前記判定部によって焼結層の造形状態が不良であると判定された場合、前記レーザ照射部は、前記所定領域のうちの凸部の発生領域にレーザを再照射することを特徴とする前記積層造形装置。
前記判定部によって焼結層の造形状態が不良であると判定された場合、前記レーザ照射部は、前記所定領域の全域にレーザを再照射することを特徴とする前記積層造形装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る積層造形装置1の構成を示した図である。
図2】レーザ照射部5の構成の概略を示した図である。
図3】リコータヘッド42を上方から見た斜視図である。
図4】リコータヘッド42を下方から見た斜視図である。
図5】表面状態測定部6の測定結果をコンター図で表したものである。
図6】制御装置の構成を示すブロック図である。
図7】閾値の決定方法の流れを示すアクティビティ図である。
図8】積層造形装置1による積層造形処理の流れを示すアクティビティ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0014】
1.構成例
図1は、本発明の実施形態に係る積層造形装置1の構成を示した図である。図1に示すように、積層造形装置1は、テーブル2、テーブル駆動部3、粉末層形成部4、レーザ照射部5、表面状態測定部6、チャンバ11、ウインドウ12及び粉末保持壁13を有している。
【0015】
テーブル2は、所望の三次元造形物が形成される造形領域Rを有するものであり、金属の材料粉末が敷かれ、この材料粉末により粉末層Pが形成される。また、三次元造形物を形成する際には、テーブル2上にベースプレート21が載置されてもよい。このとき、ベースプレート21上に粉末層Pが形成される。
【0016】
テーブル駆動部3は、テーブル2を鉛直方向(矢印U方向)に移動させる。このテーブル駆動部3により、テーブル2は、鉛直方向に移動可能となる。
【0017】
粉末層形成部4は、造形領域Rに所定厚みの粉末層Pを形成する。具体的には、粉末層形成部4は、ベース台41と、ベース台41に配置され、水平一軸方向(矢印A方向)に往復移動してテーブル2上に材料粉末を供給するとともに平坦化して粉末層Pを形成するリコータヘッド42とを含む。なお、リコータヘッド42の詳細については後述する。
【0018】
レーザ照射部5は、粉末層Pの所定の焼結領域にレーザLを照射して材料粉末が焼結された焼結層Sを形成する。なお、レーザ照射部5の詳細については後述する。
【0019】
表面状態測定部6は、焼結層Sの表面に生じた凸部の状態を測定する。凸部は、焼結層Sの上面等の所定の基準面に対して、突出した状態で焼結された部分である。なお、表面状態測定部6の詳細については後述する。
【0020】
チャンバ11は、造形領域Rを覆うように構成される。チャンバ11内には、不活性ガスが充満されていることが望ましい。
【0021】
ウインドウ12は、レーザLを透過させる素材、例えば、ガラス等であり、レーザ照射部5をヒューム等から保護するものである。
【0022】
粉末保持壁13は、テーブル2の周りに設けられ、粉末保持壁13によって囲まれる空間に、未焼結の材料粉末が保持される。
【0023】
2.レーザ照射部
次に、レーザ照射部5について説明する。図2は、レーザ照射部5の構成の概略を示した図である。
【0024】
レーザ照射部5は、光源51、コリメータ52、フォーカス制御ユニット53、ガルバノミラー54x及びガルバノミラー54yを有している。
【0025】
光源51は、レーザLを出力する。レーザLは、粉末層Pを焼結することが可能であり、例えば、CO2レーザ、ファイバーレーザ、またはYAGレーザである。コリメータ52は、光源51から出力されたレーザLを平行光に変換する。フォーカス制御ユニット53は、コリメータ52で平行光に変換されたレーザLを集光し、所定のスポット径に調整する。ガルバノミラー54xとガルバノミラー54yは、それぞれ、レーザLを反射し、その照射位置を制御する。
【0026】
ガルバノミラー54xとガルバノミラー54yにより照射位置が制御されたレーザLは、ウインドウ12を通してテーブル2上の粉末層Pに照射され、焼結層Sを形成する。
【0027】
3.リコータヘッド
次に、粉末層形成部4のリコータヘッド42について説明する。図3は、リコータヘッド42を上方から見た斜視図である。また、図4は、リコータヘッド42を下方から見た斜視図である。
【0028】
図3および図4に示すように、リコータヘッド42は、材料収容部421と材料供給部422と材料吐出部423とを有する。材料収容部421は、材料粉末を収容する。材料供給部422は、材料収容部421の上面に配設され、図示しない材料供給部から材料収容部421に供給される材料粉末の受口となる。材料吐出部423は、材料収容部421の底面に配設され、材料収容部421内の材料粉末を吐出する。また、材料吐出部423はスリット形状であり、その長手方向は、リコータヘッド42の移動方向(矢印A方向)に直交する水平一軸方向(矢印B方向)である。
【0029】
ブレード424は、リコータヘッド42の側面に配設され、リコータヘッド42から吐出された材料粉末を造形領域R上に撒布する。本実施形態ではリコータヘッド42の両側面に1つずつブレード424が設けられるが、少なくとも1つのブレード424がリコータヘッド42に取り付けられればよい。また、ブレード424としては、平板状のもの、可撓性のあるもの、ブラシ状のもの、ローラ状のもの等、所定厚みの粉末層Pを形成可能なものであれば、種々の形態が採用可能である。
【0030】
このような構成により、粉末層形成部4は、リコータヘッド42がテーブル2の造形領域R上を往復移動しながら材料吐出部423から材料粉末を吐出し、ブレード424がリコータヘッド42の往復移動に伴って造形領域R上に吐出された材料粉末を均すことで、粉末層Pを形成する。
【0031】
4.表面状態測定部
次に、表面状態測定部6について説明する。表面状態測定部6は、焼結層Sの表面に生じた凸部の状態を測定する。凸部の状態は、焼結層Sの表面のそれぞれの位置毎に基準面からの高さを計測することで測定する。この測定には、例えば、二次元レーザ変位計を利用する。
【0032】
基準面は、任意に設定可能な面であるが、例えば、レーザ照射部5によりレーザLを照射する直前の粉末層Pの表面を基準面とする。
【0033】
また、表面状態測定部6は、造形領域Rの全面を測定可能であれば、チャンバ11内の所定の位置に固定することも可能であるが、測定可能な領域が造形領域Rの全面よりも小さければ、水平一軸方向、水平二軸方向又は三軸方向に移動可能に構成される。
【0034】
表面状態測定部6を三軸方向に移動させる場合は、x軸方向と、x軸方向に直行するy軸方向と、x軸方向及びy軸方向と直交するz軸に移動させることになるが、x軸方向は、例えば、リコータヘッド42の移動方向(矢印A方向)であり、y軸方向は、リコータヘッド42の移動方向に直交する方向(矢印B方向)であり、z軸方向は、x軸とy軸のいずれとも直交する方向(矢印C方向)である。
【0035】
表面状態測定部6が測定した値は、高さを示す数値であるが、この数値を可視化した場合、例えば、コンター図で表すと、図5に示すようなものとなる。図5は、表面状態測定部6の測定結果をコンター図で表したものである。
【0036】
5.制御装置
次に、積層造形装置1を制御する制御装置について説明する。図6は、制御装置の構成を示すブロック図である。
【0037】
図6に示すように、制御装置7は、CAM装置71、数値制御装置72、表示装置73、粉末層形成制御部74、テーブル制御部75、測定制御部76、記憶部761、判定部762、照射制御部77、ミラー制御部771x及びミラー制御部771yを有している。この制御装置7は、積層造形装置1のテーブル駆動部3と粉末層形成部4とレーザ照射部5と表面状態測定部6とを制御するものである。
【0038】
CAM(Computer Aided Manufacturing)装置71は、所望の三次元造形物を形成するためのメインプログラムと、造形プログラムとを含むプロジェクトファイルを作成する。メインプログラムは、シーケンス番号をふられた複数のプログラム行で構成され、各プログラム行には、所定の層における焼結の指令等を含む。また、造形プログラムは、照射プログラムファイルであり、レーザLの照射位置等の指令を含む。
【0039】
数値制御装置72は、CAM装置71が作成したプロジェクトファイルにしたがって、所望の三次元造形物を形成すべく、粉末層形成部4、テーブル2の高さ、レーザ照射部5及び表面状態測定部6を数値制御するもので、記憶装置721と演算装置722とメモリ723とを有している。
【0040】
記憶装置721は、通信線や可搬記憶媒体を介してCAM装置71から取得したプロジェクトファイルを記憶する。
【0041】
演算装置722は、記憶装置721に記憶したプロジェクトファイルにしたがって、粉末層形成部4、テーブル2の高さ、レーザ照射部5及び表面状態測定部6を数値制御するための演算処理を実行する。
【0042】
メモリ723は、演算装置722による演算処理の過程で一時的に記憶する必要のある数値やデータを一時的に記憶する。
【0043】
表示装置73は、数値制御装置72に接続され、数値制御装置72が通知するデータやエラーメッセージ等を表示する。
【0044】
粉末層形成制御部74は、数値制御装置72からの指令に基づいて粉末層形成部4を制御する。粉末層形成制御部74からの指令は、粉末層形成部4の駆動部43に入力され、当該指令に応じた電力を駆動部43が出力することで粉末層形成部4のモータ44が回転し、リコータヘッド42がベース台41上を往復移動する。また、粉末層形成制御部74には、駆動部43の出力に応じた信号やモータ44に取り付けられたエンコーダ等からの信号が入力され、これら入力された信号に基づいて粉末層形成制御部74は、フィードバック制御を行う。
【0045】
テーブル制御部75は、数値制御装置72からの指令に基づいてテーブル駆動部3を制御する。テーブル制御部75からの指令は、テーブル駆動部3の駆動部31に入力され、当該指令に応じた電力を駆動部31が出力することでテーブル駆動部3のモータ32が回転し、テーブル2が上方向または下方向に移動し、その高さが変化する。また、テーブル制御部75には、駆動部31の出力に応じた信号やモータ32に取り付けられたエンコーダ等からの信号が入力され、これら入力された信号に基づいてテーブル制御部75は、フィードバック制御を行う。
【0046】
例えば、テーブル駆動部3は、テーブル2の下に設けられるスライドベースと、送りねじと、送りねじを支持するガイドベースと、を備える。テーブル駆動部3の送りねじは、ねじ軸と、ねじ軸に螺合しスライドベースの側面に固定されるナットと、ねじ軸を回転させるモータ32を含む。
【0047】
測定制御部76は、数値制御装置72からの指令に基づいて表面状態測定部6を制御する。測定制御部76からの指令は、表面状態測定部6の駆動部61xと、駆動部61yと、駆動部61zとに入力され、当該指令に応じた電力を駆動部61xと、駆動部61yと、駆動部61zとが出力することで表面状態測定部6のモータ62xと、モータ62yと、モータ62zとがそれぞれ回転し、表面状態測定部6が造形領域R上の所定の高さを三軸方向に移動する。また、測定制御部76には、駆動部61xと、駆動部61yと、駆動部61zとの出力に応じた信号やモータ62xと、モータ62yと、モータ62zとのそれぞれに取り付けられたエンコーダ等からの信号が入力され、これら入力された信号に基づいて測定制御部76は、フィードバック制御を行う。
【0048】
例えば、表面状態測定部6として二次元レーザ変位計を利用する場合、測定可能な領域、つまり、測定幅が7mmであり、測定すべき焼結層Sの大きさが70mm×70mmであったとすれば、測定制御部76は、表面状態測定部6をx軸方向に70mm移動させた後にy軸方向に7mm移動させるといった処理を10回繰り返す。これにより、表面状態測定部6は、焼結層Sの全表面の状態を測定することができる。
【0049】
なお、表面状態測定部6が測定幅が造形領域Rの短手方向の長さ以上である場合には、表面状態測定部6は、水平一軸方向にのみ移動可能であればよい。
【0050】
記憶部761は、焼結層Sの表面状態が良好である場合と不良である場合との境界である凸部の状態の閾値が記憶される。具体的には、記憶部761には、焼結層Sの表面状態が良好である場合と不良である場合との境界である凸部の高さ、並びに、凸部が発生した領域の総面積および焼結領域における凸部の占有割合のうちの少なくとも一方の閾値が記憶される。凸部の高さは、焼結層Sの高さ(厚み)に対する割合で表す。もちろん、凸部の高さを絶対値で表すようにしてもよい。
【0051】
凸部の高さと総面積(占有割合)の閾値は、それぞれを別個のものとしてもよく、両者を関連付けるようにしてもよい。例えば、凸部の高さと総面積(占有割合)の閾値を別個のものとする場合、高さをj、総面積をKとすれば、高さj%以上の凸部が一つでも存在すれば不良であり、また、凸部の高さにかかわらず、その総面積がK以上であれば不良であるとする閾値となる。また、凸部の高さと総面積(占有割合)の閾値を関連付ける場合は、例えば、高さm%以上の凸部の総面積がM以上の場合は不良であるとする閾値となるが、高さn%以上の凸部の総面積がN以上である場合も不良であるといったように、複数の閾値を設定するようにすることもできる。
【0052】
また、所望する三次元造形物によって、焼結層Sの面積が大きく異なる場合がある。このため、凸部の総面積と凸部の占有割合のいずれを閾値とするかは、適宜選択することで、より適切な閾値を設定することが可能となる。
【0053】
また、記憶部761には、焼結層Sの表面状態が良好である場合と不良である場合との境界であって、凸部の発生個数および焼結領域の任意の領域の単位面積当たりの発生個数のうちの少なくとも一方の閾値をさらに記憶するようにしてもよい。
【0054】
凸部の発生個数(単位面積当たりの発生個数)を閾値にする場合は、例えば、高さj%以上の凸部がp個以上存在すれば不良であり、また、凸部の高さにかかわらず、その総面積がK以上の凸部がq個以上存在すれば不良であるとする閾値となる。また、高さm%以上で総面積がM以上の凸部がo個以上存在すれば不良であるとする閾値としてもよい。
【0055】
判定部762は、表面状態測定部6による測定結果が入力され、表面状態測定部6によって測定された凸部の状態と記憶部761に記憶された凸部の状態の閾値とを比較し、焼結層の造形状態の良不良を判定する。具体的には、判定部762は、表面状態測定部6によって測定された凸部の状態から、凸部の高さ、並びに、凸部が発生した領域の総面積および焼結領域における凸部の占有割合のうちの少なくとも一方を算出して対応する閾値とそれぞれ比較し、焼結層の造形状態の良不良を判定する。
【0056】
表面状態測定部6による測定結果は、その分解能に応じた面積毎の高さの値であり、判定部762は、入力された測定結果の値に基づいて、焼結層Sの凸部の高さや面積(占有割合)を算出する。これらの算出には、様々なアルゴリズムを用いることができるが、例えば、表面状態測定部6による測定結果を画像として表し(図5参照)、画像処理のアルゴリズムを用いて、焼結層Sの凸部の高さ等を算出することができる。
【0057】
また、判定部762は、表面状態測定部6によって測定された凸部の状態から、凸部の発生個数および焼結領域の任意の領域の単位面積当たりの発生個数のうちの少なくとも一方を算出して対応する閾値とそれぞれ比較し、焼結層Sの造形状態の良不良を判定するようにしてもよい。
【0058】
照射制御部77は、数値制御装置72から造形プログラムを受信し、この造形プログラムに基づいて照射データの生成を行い、生成した照射データに基づいてミラー制御部771xとミラー制御部771yに指令を送出する。
【0059】
ミラー制御部771xは、照射制御部77からの指令に基づいてレーザ照射部5を制御する。ミラー制御部771xからの指令は、レーザ照射部5の駆動部55xに入力され、当該指令に応じた電力を駆動部55xが出力することでレーザ照射部5のアクチュエータ56xが動作し、ガルバノミラー54xが回転する。
【0060】
ミラー制御部771yは、照射制御部77からの指令に基づいてレーザ照射部5を制御する。ミラー制御部771yからの指令は、レーザ照射部5の駆動部55yに入力され、当該指令に応じた電力を駆動部55yが出力することでレーザ照射部5のアクチュエータ56yが動作し、ガルバノミラー54yが回転する。
【0061】
また、照射制御部77は、フォーカス制御ユニット53に指令を送出する。フォーカス制御ユニット53は、図示しない駆動部、アクチュエータおよび拡散レンズを有し、照射制御部77から送出される指令に応じてレーザLの焦点距離を調整する。具体的には、照射制御部77からの指令は、図示しない駆動部に入力され、当該指令に応じた電力を図示しない駆動部が出力することで図示しないアクチュエータが動作し、図示しない拡散レンズが移動する。この拡散レンズの移動により、この拡散レンズと図示しない集光レンズの距離が変化し、レーザLの焦点距離が変化する。
【0062】
また、照射制御部77には、フォーカス制御ユニット53の駆動部の出力に応じた信号やアクチュエータに取り付けられたエンコーダ等からの信号が入力され、これら入力された信号に基づいて照射制御部77は、フォーカス制御ユニット53をフィードバック制御する。
【0063】
また、照射制御部77は、光源51に指令を送出し、レーザLの強度やオン/オフの切り替えを制御する。
【0064】
6.閾値の決定
次に、記憶部761に記憶する閾値の決定方法について説明する。図7は、閾値の決定方法の流れを示すアクティビティ図である。
【0065】
閾値を決定する際には、まず、オペレータがレーザ照射部5の照射条件を設定する(A101)。ここで設定する照射条件は、その後に、同じ照射条件で所望の三次元造形物を積層造形することを想定したものである。
【0066】
続いて、オペレータが積層造形装置1を動作させると、最初に、テーブル2が所定の高さだけ下降する(A102)。テーブル2が下降する高さは、その後に形成する粉末層Pの1層分の高さである。
【0067】
次に、積層造形装置1では、粉末層形成部4が動作し、テーブル2上の造形領域Rに、粉末層Pを形成する(A103)。
【0068】
そして、形成された粉末層Pの所定の領域に対して、レーザ照射部5がレーザLを照射し、仮の焼結層を形成する(A104)。仮の焼結層は、三次元造形物を積層造形する際に形成する焼結層Sと同様のものであるが、ここでは、閾値を決定するために形成するものであるため、仮の焼結層と称するものとしている。なお、仮の焼結層は、任意の形状、例えば、直方体等の形状とすることができる。
【0069】
次に、表面状態測定部6が、仮の焼結層の表面状態を測定する(A105)。この測定は、焼結層Sの表面状態を測定するのと同様に行われる。
【0070】
積層造形装置1では、A102からA105までの処理が所定回数だけ繰り返される。この回数は、1回であってもよい。
【0071】
A102からA105までの処理が所定回数だけ繰り返されると、オペレータが仮の焼結層の内部状態を確認する(A106)。内部状態の確認は、例えば、単位体積あたりの空隙の数を計数する等の方法で行われる。この内部状態の確認に際しては、必要に応じて仮の焼結層の切削を伴う。
【0072】
一方、積層造形装置1では、表面状態測定部6による測定結果に基づいて、判定部762が閾値を算出する(A107)。
【0073】
その後、仮の焼結層の内部状態が良好であれば、判定部762が算出した閾値を記憶部761に記憶し、閾値決定の処理を終了する。
【0074】
一方、仮の焼結層の内部状態が不良であれば、オペレータは、レーザ照射部5による照射条件を見直して、照射条件を再設定し、同様の処理を行う。
【0075】
このように、閾値の決定は、焼結層Sを形成する前に、焼結層Sを形成するときと同じレーザ照射条件にて仮の焼結層を形成し、表面状態測定部6が仮の焼結層の表面の任意の領域の単位面積当たりに生じた凸部の状態を測定し、判定部762が仮の焼結層の表面の任意の領域の単位面積当たりに生じた凸部の状態と仮の焼結層の内部状態との関係に基づいて閾値を算出することで行われる。
【0076】
また、閾値の決定の決定に際して、仮の焼結層を、三次元造形物を積層造形する際の焼結層Sと同様の形状に形成することもできる(A104)。この場合には、閾値の決定は、焼結層Sを形成する前に、焼結層Sを形成するときと同じレーザ照射条件にて同じ形状に仮の焼結層を形成し、表面状態測定部6が仮の焼結層の表面に生じた凸部の状態を測定し、判定部762が仮の焼結層に生じた凸部の状態と仮の焼結層の内部状態との関係に基づいて閾値を算出することで行われる。
【0077】
7.積層造形処理
次に、積層造形装置1による三次元造形物の積層造形処理の流れについて説明する。図8は、積層造形装置1による積層造形処理の流れを示すアクティビティ図である。
【0078】
積層造形処理に際しては、まず、オペレータがレーザ照射部5の照射条件を設定する(A201)。ここで設定する照射条件は、閾値を決定した際の条件と同様の照射条件である。
【0079】
続いて、オペレータが積層造形装置1を動作させると、最初に、テーブル2が所定の高さだけ下降する(A202)。テーブル2が下降する高さは、その後に形成する粉末層Pの1層分の高さである。
【0080】
次に、積層造形装置1では、粉末層形成部4が動作し、テーブル2上の造形領域Rに、粉末層Pを形成する(A203)。
【0081】
そして、形成された粉末層Pの所定の領域に対して、レーザ照射部5がレーザLを照射し、焼結層Sを形成する(A204)。焼結層Sの形状は、所望する三次元造形物に応じた形状である。
【0082】
次に、表面状態測定部6が、焼結層Sの表面状態を測定する(A205)。そして、表面状態の測定結果に基づいて、判定部762が、焼結層Sの表面状態が良好であるか否かを判定する(A206)。
【0083】
判定部762による判定の結果、焼結層Sの表面状態が良好であれば、A202からA206までの処理を所望する三次元造形物の造形が完了するまで繰り返し、その間に、判定部762により焼結層Sの表面状態が不良であると判定されなければ、積層造形処理を完了する。
【0084】
一方、判定部762により焼結層Sの表面状態が判定部762により不良であると判定された場合には、積層造形装置1は、一切の積層造形処理を停止させる。結果として、リコータヘッド42は、次の粉末層Pの形成を行わないことになる。
【0085】
また、判定部762によって焼結層Sの造形状態が不良であると判定された場合、レーザ照射部5が所定領域のうちの凸部の発生領域にレーザを再照射するようにすることもできる。
【0086】
また、判定部762によって焼結層Sの造形状態が不良であると判定された場合、レーザ照射部5が所定領域の全域にレーザを再照射するようにすることもできる。
【0087】
このようにして、焼結層Sを形成する毎に、その表面状態を確認することで、焼結層Sに不良が生じた場合に、その後の無駄となる積層造形を中止し、又は、不良状態の回復を行うことが可能となり、効率よく三次元造形物を造形できることとなる。
【符号の説明】
【0088】
1 :積層造形装置
2 :テーブル
3 :テーブル駆動部
4 :粉末層形成部
5 :レーザ照射部
6 :表面状態測定部
7 :制御装置
11 :チャンバ
12 :ウインドウ
13 :粉末保持壁
21 :ベースプレート
31 :駆動部
32 :モータ
41 :ベース台
42 :リコータヘッド
43 :駆動部
44 :モータ
51 :光源
52 :コリメータ
53 :フォーカス制御ユニット
54x :ガルバノミラー
54y :ガルバノミラー
55x :駆動部
55y :駆動部
56x :アクチュエータ
56y :アクチュエータ
61x :駆動部
61y :駆動部
62x :モータ
62y :モータ
71 :CAM装置
72 :数値制御装置
73 :表示装置
74 :粉末層形成制御部
75 :テーブル制御部
76 :測定制御部
77 :照射制御部
421 :材料収容部
422 :材料供給部
423 :材料吐出部
424 :ブレード
721 :記憶装置
722 :演算装置
723 :メモリ
761 :記憶部
762 :判定部
771x :ミラー制御部
771y :ミラー制御部
A :矢印
B :矢印
C :矢印
L :レーザ
P :粉末層
R :造形領域
S :焼結層
U :矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8