【解決手段】空気紡績装置4は、ファイバーガイド43と、紡績室SCを形成するノズルブロック42と、ファイバーガイド43及びノズルブロック42が取り付けられるノズルホルダ41と、を有するノズルハウス40であって、ノズルアーム部70の先端部71に取り付けられるように構成されたノズルハウス40を備える。空気紡績装置4は、ノズルハウス40に設けられた、ノズルハウス40に対して可動な操作部47と、先端部71のピン77に係合する少なくとも1つの係合部48と、を有するレバー46を備える。操作部47の動きに連動して少なくとも1つの係合部48がピン77から外れたとき、ノズルハウス40が、糸Yの走行方向に交わる取外し方向Dに取外し自在である。
ファイバーガイドと、紡績室を形成するノズルブロックと、前記ファイバーガイド及び前記ノズルブロックが取り付けられるノズルホルダと、を有するノズルハウスであって、支持部に取り付けられるように構成された前記ノズルハウスと、
前記ノズルハウス又は前記支持部のいずれか一方に設けられた、前記ノズルハウス又は前記支持部のいずれか一方に対して可動な操作部と、前記ノズルハウス又は前記支持部のいずれか他方の一部に係合する少なくとも1つの係合部と、を有するレバーと、を備え、
前記操作部の動きに連動して前記少なくとも1つの係合部が前記一部から外れたとき、前記ノズルハウスが、繊維の走行方向に交わる取外し方向に取外し自在である、空気紡績装置。
前記ノズルハウス又は前記支持部のいずれか一方には、前記少なくとも1つの係合部が前記一部に係合するように前記レバーを付勢するバネが設けられている、請求項1に記載の空気紡績装置。
前記ノズルハウス又は前記支持部のいずれか一方には、前記取外し方向に交わる方向に延びる軸線を有する軸と、前記操作部及び前記少なくとも1つの係合部を含むと共に前記軸線を中心に回動する前記レバーと、前記軸を前記ノズルハウスの取外し方向に付勢する前記バネと、が設けられ、
前記ノズルハウス又は前記支持部のいずれか他方には、前記少なくとも1つの係合部に係合する前記一部である少なくとも1つのピンが設けられる、請求項2に記載の空気紡績装置。
前記ノズルホルダと前記支持部との間に設けられ、前記ノズルホルダ及び前記支持部の少なくとも一方に挿入される少なくとも1つの筒状のエアージョイントを更に備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気紡績装置。
前記ノズルホルダと前記支持部との間に設けられ、前記ノズルホルダ及び前記支持部の少なくとも一方に挿入される少なくとも1つの棒状の位置決めピンを更に備える、請求項6に記載の空気紡績装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット(空気紡績ユニット)2と、玉揚台車10と、制御部100と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。各紡績ユニット2は、繊維束(スライバ)Sをドラフトして繊維束Fを生成し、繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成し、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。玉揚台車10は、ある紡績ユニット2において満巻のパッケージPが形成された場合に、満巻のパッケージPを当該紡績ユニット2から排出し、空のボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。制御部100は、紡績機1の動作を制御する。制御部100は、例えば、機台制御装置及び複数のユニットコントローラによって構成されている。機台制御装置は、複数のユニットコントローラの上位コントローラである。各ユニットコントローラは、所定数(1又は複数)の紡績ユニット2ごとに設けられており、各紡績ユニット2の動作を制御する。
【0022】
以下、繊維束S、繊維束F及び糸Yの走行方向における上流側を単に「上流側」といい、当該走行方向における下流側を単に「下流側」という場合がある。複数の紡績ユニット2の配列方向に垂直な水平方向における一方の側(例えば、作業通路側)を「前側」といい、当該水平方向における他方の側を「後側」という。鉛直方向における上側を「上側」といい、鉛直方向における下側を「下側」という。
【0023】
各紡績ユニット2は、上流側から下流側に向かって順に、ドラフト装置3と、空気紡績装置4と、糸監視装置5と、糸貯留装置(引出装置)6と、糸継装置7と、巻取装置20と、を備えている。すなわち、ドラフト装置3は空気紡績装置4の上流側に配置されており、巻取装置20は空気紡績装置4の下流側に配置されている。更に、各紡績ユニット2は、第1捕捉案内装置8と、第2捕捉案内装置9と、を備えている。一例として、ドラフト装置3から糸貯留装置6までの繊維束S、繊維束F及び糸Yの走行方向は、前側から後側に向かう方向であり、水平方向に対して上側に傾斜している。糸貯留装置6から巻取装置20までの糸Yの走行方向は、下側から上側に向かう方向であり、鉛直方向に対して前側に傾斜している。各紡績ユニット2では、糸Yの走行方向が糸貯留装置6において切り替えられている。
【0024】
ドラフト装置3は、繊維束Sをドラフトして繊維束Fを生成し、繊維束Fを空気紡績装置4に供給する。ドラフト装置3は、上流側から下流側に向かって順に、バックローラ対31と、サードローラ対32と、ミドルローラ対33と、フロントローラ対34と、を有している。ミドルローラ対33を構成する各ローラには、エプロンベルト35が架けられている。
【0025】
空気紡績装置4は、ドラフト装置3からの繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。
【0026】
糸監視装置5は、走行する糸Yの情報を監視し、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置5は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号を制御部100に送信する。制御部100は、糸欠陥検出信号を受信した場合、糸Yを切断するために、糸Yの供給が中断されるようにドラフト装置3及び空気紡績装置4の動作を停止させる。制御部100は、糸欠陥検出信号を受信した場合、糸Yを切断するために、例えば糸監視装置5が有するカッタを動作させてもよい。
【0027】
糸貯留装置6は、糸貯留ローラ61と、糸掛け部材62と、を有している。糸貯留ローラ61は、電動モータ(図示省略)によって回転させられる。糸掛け部材62は、糸貯留ローラ61における下流側の端部に取り付けられており、糸貯留ローラ61に対して相対的に回転可能である。糸掛け部材62には、糸貯留ローラ61に対して相対的に回転するのに抗する磁力が作用している。したがって、糸Yに所定以上の張力が生じていない状態では、糸掛け部材62が糸貯留ローラ61と一体的に回転し、糸貯留ローラ61に糸Yが巻き付けられる(貯留される)。糸Yに所定以上の張力が生じている状態では、糸掛け部材62が糸貯留ローラ61に対して相対的に回転し、糸貯留ローラ61から糸Yが解舒される。糸貯留装置6は、このように糸Yを貯留することで、糸貯留装置6の下流側において糸Yに生じる張力の変動を吸収しつつ、空気紡績装置4から糸Yを安定的に引き出す。
【0028】
糸貯留装置6の上流側には、第1ガイド63が配置されている。第1ガイド63は、上流側から糸貯留装置6に走行する糸Yを案内する。第1ガイド63は、移動可能であり、糸継ぎが行われる際等に、空気紡績装置4からの糸Yを糸貯留装置6側に引き寄せる。糸貯留装置6の下流側には、第2ガイド64、第3ガイド65、及び第4ガイド66が配置されている。第2ガイド64及び第3ガイド65は、糸貯留装置6から下流側に走行する糸Yを案内する。第2ガイド64は、移動可能であり、第3ガイド65に糸Yを案内することができる。第4ガイド66は、移動可能であり、糸掛け部材62に糸Yを掛けたり、糸掛け部材62から糸Yを外したりする。
【0029】
糸継装置7は、糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合に、空気紡績装置4からの糸YとパッケージPからの糸Yとを継ぐ糸継ぎを行う。糸継装置7は、旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置である。ただし、糸継装置7は、機械式のノッタ等であってもよい。
【0030】
第1捕捉案内装置8及び第2捕捉案内装置9は、それぞれ、基端部分を中心として回動可能である。第1捕捉案内装置8は、糸継ぎが行われる際に、下側に回動することで、空気紡績装置4からの糸Yを吸引空気流によって捕捉し、その後、上側に回動することで、空気紡績装置4からの糸Yを糸継装置7に案内する。第2捕捉案内装置9は、糸継ぎが行われる際に、上側に回動することで、パッケージPからの糸Yを吸引空気流によって捕捉し、その後、下側に回動することで、パッケージPからの糸Yを糸継装置7に案内する。
【0031】
巻取装置20は、糸貯留装置6により引き出された糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置20は、ドラム23と、1対のボビンホルダである第1ボビンホルダ21及び第2ボビンホルダ(図示省略)と、クレードル24と、を有している。
【0032】
巻取装置20の上流側には、第5ガイド26が配置されている。第5ガイド26は、上流側からドラム23に走行する糸Yを案内する。
【0033】
ドラム23は、ボビンBと接触してボビンBを回転させる。ボビンBに糸Yが巻き取られた状態では、ドラム23は、パッケージPと接触してパッケージPを回転させる。ドラム23は、フレーム(図示省略)によって回転可能に支持されており、紡績ユニット2ごとに設けられたドラム駆動部(図示省略)によって、回転軸線L1を中心線として回転させられる。ドラム23の表面には、綾振り溝(図示省略)が形成されている。これにより、ボビンBに糸Yが巻き取られる際に糸Yが綾振りされる。なお、ドラム23の表面に綾振り溝が形成されておらず、別途設けられた綾振り装置によって、ボビンBに糸Yが巻き取られる際に糸Yが綾振りされてもよい。
【0034】
第1ボビンホルダ21は、ボビンBの一端部を保持し、第2ボビンホルダは、ボビンBの他端部を保持する。このように、1対のボビンホルダは、ボビンBの両端部を保持することで、ボビンBを保持する。クレードル24は、1対のボビンホルダが開閉可能且つ1対のボビンホルダがドラム23に対して移動可能な状態で、1対のボビンホルダを回転可能に支持している。クレードル24は、回動軸線L2を中心線として回動可能である。クレードル24は、回動軸線L2を中心線として回動することで、ボビンBへの糸Yの巻き取りに伴うパッケージPの径の増大を吸収する。
【0035】
クレードル24は、クレードルアーム24aを有している。クレードルアーム24aは、クレードル24のうち第2ボビンホルダを支持している部分に取り付けられている。クレードルアーム24aを操作することで、1対のボビンホルダの開閉、及びドラム23に対する1対のボビンホルダの移動が可能である。
【0036】
本実施形態の紡績ユニット2では、空気紡績装置4のメンテナンス性が考慮されている。紡績ユニット2は、空気紡績装置4のメンテナンスを行うため、オペレータ等のアクセスを許容する作業面Aを備える。この作業面Aは、作業者通路に面した開口を含む。紡績ユニット2では、フロントローラ対34はバックローラ対31よりも作業面Aから遠い位置に配置されている。このようなドラフト装置3が配置された紡績ユニット2では、空気紡績装置4が奥まった位置にある。このレイアウトにも関わらず、本実施形態では、空気紡績装置4のメンテナンスを容易に行うことができるようになっている。以下、
図2〜
図10を参照して、第1実施形態に係る空気紡績装置4について詳細に説明する。
【0037】
図2に示されるように、空気紡績装置4は、ノズルハウス40を備えている。ノズルハウス40は、ノズルホルダ41と、ファイバーガイド43と、紡績室SCと、紡績室SCを形成するノズルブロック42とを有している。ファイバーガイド43には、繊維導入路43aが内部に形成されている。ファイバーガイド43は、ドラフト装置3によってドラフトされた繊維束Fを紡績室SCへ導く。
【0038】
ファイバーガイド43には、繊維束Fを沿わせて案内するニードルが、紡績室SCの内部に突設するように設けられてもよい。ファイバーガイド43にニードルが設けられていない場合には、ファイバーガイド43は、ファイバーガイド43の下流端のエッジによってニードルの機能を実現する。
【0039】
ファイバーガイド43及びノズルブロック42は、ノズルハウス40の本体部であるノズルホルダ41に固定されている。ファイバーガイド43及びノズルブロック42は、例えばノズルキャップ44によってノズルホルダ41に固定されている。本実施形態では、ファイバーガイド43とノズルブロック42が別部材として説明及び図示されているが、ファイバーガイド43とノズルブロック42は一体的又は1つの部材から構成されていてもよい。ノズルホルダ41には、ノズルブロック42が配置される小径孔41aと、この小径孔41aに連通する大径孔41bとが形成されている。円柱状の大径孔41bの直径は、円柱状の小径孔41aの直径よりも大きい。これらの小径孔41a及び大径孔41bは、例えば糸Yの走行経路を中心として同軸状に形成されている。小径孔41a及び大径孔41bは、糸(繊維)Yの走行方向に沿って形成された孔部である。
【0040】
空気紡績装置4は、さらに、ノズルホルダ41内に挿入された中空ガイド軸体51を備える。中空ガイド軸体51の内部には、繊維通過路51aが形成されている。中空ガイド軸体51は、紡績室SCで撚られた繊維束S、すなわち、糸Yを空気紡績装置4の外部(例えば糸監視装置5)へ導く。中空ガイド軸体51は、アーム部53の先端に取り付けられている。本実施形態では、例えばアーム部53は、ユニットフレーム(図示省略)に対して移動自在(例えば揺動自在)に取り付けられている。ただし、アーム部53は、ユニットフレームに対して不動な状態で取り付けられていてもよい。中空ガイド軸体51をアーム部53に取り付けるために、例えば軸体ホルダ52が設けられてもよい。中空ガイド軸体51は、ノズルホルダ41に対して接近及び離間可能である。ノズルホルダ41に形成された大径孔41b及び小径孔41aに対して、大径孔41bの下流側から、軸体ホルダ52が挿入されている。中空ガイド軸体51がノズルホルダ41に接近し、閉じられた状態(
図2において実線で示される状態)において、中空ガイド軸体51の上流端51bは、ノズルホルダ41の小径孔41aに挿入されている。すなわち、ノズルホルダ41に形成された大径孔41b及び小径孔41aに、中空ガイド軸体51の上流端51bが挿入可能である。上流端51bは、中空ガイド軸体51のうち、紡績時の糸Yの走行方向における上流側に位置する端部である。中空ガイド軸体51がノズルホルダ41から離間し、開けられた状態(
図2において仮想線で示される状態)においては、中空ガイド軸体51は大径孔41bの外部に退避する。
【0041】
ノズルブロック42には、紡績室SCに連通された複数の空気孔42aが形成されている。空気圧送装置(図示省略)が圧送した空気は、空気孔42aを介して紡績室SC内へと導かれる。各空気孔42aは、各空気孔42aから噴出された空気が紡績室SCの中心軸を中心として互いに同じ方向に流れるように形成されているため、空気紡績装置4は、紡績室SCの内部で空気の旋回流を発生させることができる。
【0042】
紡績室SCは、ファイバーガイド43と、中空ガイド軸体51と、ノズルブロック42と、で囲まれた空間である。紡績室SCは、ファイバーガイド43と中空ガイド軸体51の間に構成される空間SC1と、中空ガイド軸体51とノズルブロック42との間に構成される空間SC2と、に分けられる。空間SC1において、繊維束Fの繊維後端が旋回流によって反転される。空間SC2において、反転された繊維後端が旋回流によって旋回させられる。
【0043】
以上の構成により、繊維束Fは、繊維束Fの繊維後端が旋回されて、次々と中心部の繊維に巻き付いていく。このようにして、空気紡績装置4は、空気の旋回流を利用して繊維束Fを撚ることができ、糸Yを生成する。
【0044】
空気紡績装置4は、ノズルハウス40と、ノズルハウス40が取り付けられるノズルアーム部70の先端部(支持部)71とを備える。紡績ユニット2において、空気紡績装置4のノズルハウス40は、通常は、例えばユニットフレームに固定されたノズルアーム部70の先端部71に取り付けられている。ノズルハウス40は、例えばノズルホルダ41の平坦な下面41fが、先端部71の平坦な先端面71aに接触する状態で、先端部71に固定されている。さらに、ノズルハウス40は、ノズルアーム部70に対して取外し自在になっている。しかも、ノズルハウス40は、糸Yの走行方向に交わる取外し方向D(
図10参照)に取外し自在である。本明細書において、「着脱」は、「取付け」及び「取外し」の両方の意味を含む。
【0045】
図2には、理解を容易にするために、xyz直交座標系が併記されている。x方向は、例えば複数の紡績ユニット2が配列される方向(水平方向)である。y方向は、例えばドラフト装置3と糸貯留装置6との間における糸Yの走行方向に沿った方向であり、かつ、中空ガイド軸体51の移動方向である。(なお、本実施形態では、厳密には中空ガイド軸体51は円弧状の軌跡を描くため、その移動方向はy方向と平行ではない。)中空ガイド軸体51が、y方向に平行に移動可能であってもよい。z方向は、ノズルハウス40が取り外される取外し方向Dである。取外し方向Dは、y方向に直角である場合に限られず、y方向に対して所定の鋭角をなしてもよい。ノズルアーム部70は、例えば取外し方向Dと同じz方向に延びる。なお、本明細書において、方向に「+(プラス)」又は「−(マイナス)」を付さず、「x方向の両端」「y方向の両面」又は「z方向に移動可能」等と単にいう場合には、図示された矢印の向きに関わらず、両方向を意味する。
【0046】
図3〜
図5に示されるように、ノズルハウス40は、先端部71に対してワンタッチで着脱可能になっている。すなわち、ノズルハウス40は、先端部71から容易に取外し可能であり、先端部71に容易に取付け可能である。ノズルハウス40の着脱には、工具は不要である(すなわち工具レスが実現されている)。例えば、オペレータは、空気紡績装置4のメンテナンスを行う際には、片手でノズルハウス40を取り外すこともできる。なお、
図3以降の図においては、
図2に示されるノズルブロック42、ファイバーガイド43、ノズルキャップ44及び中空ガイド軸体51の図示は省略されている。
【0047】
空気紡績装置4は、ノズルハウス40に設けられた、ノズルハウス40の着脱を操作するためのレバー46を備える。レバー46は、ノズルホルダ41の6面のうちの4面を覆うように、ノズルホルダ41に近接して配置されている。レバー46は、矩形状のノズルホルダ41をy方向の片面から覆うような形状を有する。レバー46は、ノズルホルダ41に対してz方向に間隙をもって配置された操作部47と、ノズルホルダ41の大径孔41bが開口する面を覆う連結板部49と、ノズルホルダ41のx方向における両側面を覆う一対の側板部46aとを含む。連結板部49には、U字状の切欠き46bが形成されている。この切欠き46bは、U字状の開放部H(
図5参照)を形成する。切欠き46bは上記の大径孔41bよりも大きい領域(外側の領域)に形成されており、それによって開放部Hの内側に大径孔41bの開口が位置する。連結板部49は、ノズルアーム部70に向けて開放されている。
【0048】
ノズルハウス40は、溝部41cと、一対のバネ収容部41dと、一対のバネ82と、軸81と、を更に有する。溝部41cは、ノズルホルダ41の下面41fと対向する上面41hにおいてx方向に貫通して形成されている。一対のバネ収容部41dは、溝部41cの両端付近に形成されている。一対のバネ82は、バネ収容部41dに嵌め込まれた圧縮コイルバネである。軸81は、ノズルホルダ41に設けられている。具体的には、軸81は、溝部41cに収容されると共にバネ82上に載せられている。軸81は、取外し方向Dに直交するx方向(交わる方向)に延びる軸線を有する。軸81の両端部には、一対のスリーブ83が装着されている。スリーブ83は、軸81の外筒をなし、軸81がスリーブ83の中心に位置するように軸81を保持する。一対のスリーブ83と軸81が、溝部41cに嵌め込まれている。軸81の直径よりも大きな直径を有するスリーブ83は、バネ82の上端に当接する。一対のバネ82は、スリーブ83を介して、軸81を取外し方向Dに付勢する。
図4〜
図6に示されるように、レバー46の一対の側板部46aには軸孔46cがそれぞれ形成されており、軸81の両端であってスリーブ83からx方向に僅かに突出する両端が、軸孔46cに通されている。
【0049】
図3〜
図5に示されるように、ノズルホルダ41の上面41h上には平板上のプレート84が固定されている。プレート84と、ノズルホルダ41との間の空間には、一対のバネ82と1本の軸81とが配置されている。軸81は、プレート84によって、溝部41cの外部への移動を規制されている。軸81及びスリーブ83は、バネ82からの付勢力を受けながら、溝部41c内をz方向に沿って上下動することができる。レバー46も軸81と一緒に移動する。すなわち、レバー46もz方向に沿ってスライド移動可能である。一体化された軸81、スリーブ83及びレバー46は、溝部41c(溝部41cのU字状の側壁面)によって移動方向を規制され、溝部41c(溝部41cの底壁面)とプレート84によって移動範囲を規制される。
【0050】
レバー46は、軸81の軸線を中心に回動する。レバー46の回動範囲は、プレート84への操作部47の当接と、後述するピン77への係合部48の係合とによって規制される。なお、ノズルハウス40がノズルアーム部70に取り付けられていない状態では、レバー46の回動範囲は、プレート84への操作部47の当接と、ノズルホルダ41への連結板部49の当接とによって規制される。
【0051】
図4及び
図5に示されるように、ノズルアーム部70の先端部71の先端面71a上には、x方向に離間するように配置された1本のエアージョイント72及び1本の位置決めピン73が設けられている。円筒状のエアージョイント72と棒状の位置決めピン73とは、平行に立設されている。エアージョイント72の軸線と、位置決めピン73の軸線とは、いずれも取外し方向Dに平行である。これらに対応して、ノズルホルダ41には、下面41fに開口する2つの穴部である第1穴部41m及び第2穴部41nが形成されている。第1穴部41mの軸線と、第2穴部41nの軸線とは、いずれも取外し方向Dに平行である。第1穴部41mにエアージョイント72が嵌入(挿入)され、第2穴部41nに位置決めピン73が嵌入(挿入)される。第1穴部41m及び第2穴部41nは、ノズルハウス40のガタつきを軽減するため、エアージョイント72及び位置決めピン73にフィットする可能な限りの小さな直径を有する。エアージョイント72内の流路には、空気圧送装置からの流路が接続されている。エアージョイント72内の流路は、ノズルブロック42の空気孔42aに接続されている。エアージョイント72は、空気紡績のための空気の供給路と、ノズルホルダ41(ノズルハウス40)の位置決めとを兼ねた部材である。
【0052】
このように、ノズルホルダ41と先端部71との間に設けられたエアージョイント72の少なくとも一部が、ノズルホルダ41に挿入されている。ノズルホルダ41と先端部71との間に設けられた位置決めピン73の少なくとも一部が、ノズルホルダ41に挿入されている。
【0053】
なお、本実施形態では、位置決めピン73はノズルホルダ41の位置決めのためのみの部材であるが、位置決めピン73に代えて、エアージョイント72と同様の空気の供給路を備えた部材がノズルホルダ41に設けられてもよい。すなわち、平行な2本のエアージョイントによって、ノズルホルダ41の位置決め及び固定(姿勢の安定)が図られてもよい。その場合の追加のエアージョイントは、請求の範囲に記載された「少なくとも1つの棒状の位置決めピン」に相当する。
【0054】
ノズルアーム部70の先端部71は、ノズルハウス40のガタつきを防止するための保持構造を有する。ノズルアーム部70の先端部71は、ノズルハウス40を係合させるための部分(一部)を更に有する。本実施形態では、保持構造が、ノズルハウス40のレバー46が係合する部分を備える。先端部71のx方向の両端部には、一対の溝部71bが形成されている。溝部71bは先端面71aに達している。これらの溝部71bに、一対の連結プレート76が嵌め込まれている。連結プレート76の下端部が溝部71bには嵌め込まれて、ボルト等の締結具(図示省略)によって固定されている。連結プレート76はz方向に立設されている。先端部71の先端面71a上には、一対の支持ブロック74が固定されている。ノズルホルダ41のx方向の両端部の下部には、支持ブロック74の大きさ及び形状に対応した一対の凹部41eが形成されている。
【0055】
一対の支持ブロック74の外側に、一対の連結プレート76が配置されている。支持ブロック74と連結プレート76との間には、僅かな間隙が形成されている(
図4参照)。連結プレート76の上部に形成された孔部76aには、一対のピン77が挿通されている。一対のピン77の先端部が支持ブロック74の孔部74aにそれぞれ挿通され、連結プレート76が支持ブロック74に固定されている。支持ブロック74と連結プレート76の間の間隙には、レバー46の側板部46aが配置される。各側板部46aには、凹状の係合部48が形成されている。各側板部46aには、係合部48のやや下側(すなわち操作部47とは反対側であって下面41f側)に、z方向に対して傾斜する傾斜縁46dが形成されている(
図3参照)。
【0056】
図5に示されるように、一対のピン77は、軸81の軸線に平行な直線上に配置されており、一対の係合部48は、軸81の軸線に平行な直線に対して同じ位置関係となるように、対称に形成されている。側板部46aに形成された係合部48は、支持ブロック74と連結プレート76の間において、ピン77(支持部の一部)に係合可能になっている。なお、
図3、
図8〜
図10においては、理解を容易にするために連結プレート76の図示が省略されている。
【0057】
各支持ブロック74において、支持ブロック74のy方向の両面には一対の支持プレート75が固定されている。各支持プレート75は支持ブロック74よりも+z方向に突出し、かつ、y方向において互いに近づくように突出している。支持ブロック74が先端部71上に設置された状態で、一対の凹部41eに一対の支持ブロック74が嵌まる。一対の支持ブロック74のx方向の間隔は、ノズルホルダ41の下部(凹部41eが形成された部分)の幅よりも僅かに大きくなっている。ノズルホルダ41の一対の凸部41gが、一対の支持ブロック74上に位置する。各凸部41gは、y方向の両面から、一対の支持プレート75によって支持される。支持ブロック74及び支持プレート75は、ノズルホルダ41を案内する。支持ブロック74及び支持プレート75は、ノズルハウス40を案内する案内部と、ノズルハウス40を保持してガタつきを防止する保持部とを兼ねている。
【0058】
以上説明したように、レバー46は、操作部47及び係合部48を含む。ノズルハウス40は、ノズルホルダ41に対して可動な操作部47と、先端部71の一部に係合する一対の係合部48とを有する。支持部である先端部71は、一対の係合部48に係合する一対のピン77を有する。
【0059】
このように、本実施形態の空気紡績装置4では、軸81の軸線の方向において離間して配置された一対の係合部48が、軸81の軸線の方向において離間して配置された一対のピン77に係合するように構成されている。そして、操作部47及び係合部48の間に軸81が配置されている。軸81の軸線を中心に回動するレバー46の係合部48は、ノズルホルダ41に沿った閉位置では、ピン77に係合する。軸81を介してレバー46を取外し方向Dに付勢するバネ82は、係合部48をピン77に当接させる。すなわち、バネ82は、係合部48がピン77に係合するようにレバー46を付勢する。レバー46が取外し方向Dに付勢されているとき、一対の係合部48は一対のピン77に当接する。ノズルハウス40が先端部71に固定された状態では、係合部48がピン77に引っ掛かった状態で、レバー46がバネ82によって上向き(+z方向)に押されている。これにより、ノズルホルダ41とノズルアーム部70とが引き付けられており、ノズルハウス40がノズルアーム部70に固定されている。
【0060】
続いて、
図7〜
図10を参照して、ノズルアーム部70に対するノズルハウス40の取付け及び取外しについて説明する。まず、取付け手順について説明する。ノズルハウス40の取付け前は、ノズルアーム部70に対して、中空ガイド軸体51は退避させられている。この状態で、
図7に示されるように、ノズルハウス40が先端部71に近づけられる。具体的には、ノズルハウス40を−z方向に移動させる。すなわち、ノズルハウス40の取付け方向は、取外し方向Dとは反対向きである。ノズルハウス40のノズルホルダ41は、一対の支持ブロック74の間に挿入され、エアージョイント72及び位置決めピン73が、第1穴部41m及び第2穴部41nにそれぞれ挿入される。次に、
図8に示されるように、ノズルホルダ41が支持ブロック74、支持プレート75、エアージョイント72及び位置決めピン73に案内されつつ、ピン77が側板部46aの傾斜縁46dに当接する。ピン77が傾斜縁46dに当接すると、レバー46が、軸81周りに回動し、開位置に位置する。
【0061】
そして、
図3に示されるように、ノズルホルダ41の下面41fが先端部71の先端面71aに近づいて当接するとき、ピン77が側板部46aの端部46eを乗り越え、係合部48内に収まる。これと同時に、レバー46が軸81周りに回動し、閉位置に位置する。この取付け動作において、オペレータが、操作部47の軸81より連結板部49に近い領域である第2端部47b(
図7及び
図8参照)を押すようにすると、レバー46の姿勢をコントロールし易い。ノズルホルダ41の下面41fが先端部71の先端面71aに近づいて当接するとき、オペレータがレバー46の操作部47から手を離すと、レバー46が自重で閉位置に移動して、ピン77に対してロックされる。なお、このとき、オペレータは、第2端部47bを押さえ続けることで、係合部48をピン77に係合させてもよい。
【0062】
図3は、係合部48がピン77に係合する係合状態であり、かつ、ノズルハウス40がノズルアーム部70に固定された固定状態を示している。この状態で、ノズルハウス40は、支持ブロック74、支持プレート75、エアージョイント72、位置決めピン73、及び係合部48とピン77との係合によって、先端部71上において一定の姿勢で保持されている。その後、ノズルハウス40に対して、中空ガイド軸体51が近づけられ、ノズルホルダ41内に中空ガイド軸体51が挿入される。中空ガイド軸体51は、閉じられた状態(
図2において実線で示される状態)となる。バネ82の付勢力によってノズルホルダ41とノズルアーム部70とが引き付けられており、ノズルハウス40がノズルアーム部70に固定されている。
【0063】
続いて、取外し手順について説明する。まず、アーム部53を移動させることによって中空ガイド軸体51を開けられた状態(
図2において仮想線で示される状態)とし、ノズルホルダ41の外部に退避させる。この状態で、
図9に示されるように、オペレータが操作部47を押し下げる。すなわち、操作部47が、バネ82の付勢力に抗して−z方向に動かされる。それと同時に、オペレータは、レバー46を軸81周りに回動させる。この操作により、レバー46の端部46eがピン77から離れてピン77の下を通過し、係合状態が解除される。この取外し動作において、オペレータが、操作部47の領域のうち、軸81より連結板部49から遠い領域である第1端部47a(
図9参照)を押すようにすると、レバー46を回動させ易い。
【0064】
そして、
図10に示されるように、第1端部47aが押されてレバー46が回動したままの状態で、ノズルハウス40全体が取外し方向Dに引き抜かれる。連結板部49は下方が開放されているため、この引き抜きの際に連結板部49が他の部材(例えば退避している中空ガイド軸体51等)と干渉することは回避されている。ノズルハウス40が取り外されると、オペレータは、例えばノズルホルダ41の内部(大径孔41bや小径孔41a等)を極めて容易に確認することができる。
【0065】
以上説明したように、空気紡績装置4では、操作部47がバネ82の付勢力に抗して動かされたときに、操作部47の操作(動き)に連動して、一対の係合部48が一対のピン77から外れる。係合部48がピン77から外れたとき、ノズルハウス40が取外し方向Dに取外し自在である。
【0066】
本実施形態の空気紡績装置4及び紡績ユニット2によれば、ノズルアーム部70の先端部71に取り付けられたノズルハウス40に対し、ノズルハウス40の操作部47が動かされて、係合部48がピン77から外される。このように係合部48を動かすという操作のみで、ノズルハウス40を自在に取り外すことができる。よって、工具を要することなく、ノズルハウス40を先端部71から簡単に取り外すことができる。これにより、メンテナンスのための着脱及び/又は、仕掛け替え時の交換を限られた空間内で簡単に行うことができる。また、ノズルハウス40は糸Yの走行方向に交わる取外し方向Dに取り外されるので、糸Yの走行方向に隣接する他の機器類との干渉を避けやすい。
【0067】
従来は、ノズルハウスを取り外すには、工具が必要なことが多かった。したがって、例えばノズルハウスにおける繊維の詰まりの確認又は除去などの、ノズルハウス周りのオペレーションを行い難かった。本開示の空気紡績装置4及び紡績ユニット2では、ノズルハウス40における繊維の詰まりの確認又は除去などの、ノズルハウス40周りのオペレーションを行い易くなっている。
【0068】
ノズルハウス40は、操作部47及び係合部48を含むレバー46と、係合部48がピン77に係合するようにレバー46を付勢するバネ82と、を有する。バネ82の付勢力によって係合部48がピン77に係合するので、簡単な構成でノズルハウス40の着脱機構を実現できる。
【0069】
紡績ユニット2は、空気紡績装置4と、空気紡績装置4の上流側に配置されたドラフト装置3と、空気紡績装置4の下流側に配置された巻取装置20と、を備える。ノズルハウス40は、ドラフト装置3のフロントローラ対34からの糸Yの走行方向に交わる取外し方向Dに取外し自在である。よって、ノズルハウス40を先端部71から簡単に取り外すことができる。例えば、メンテナンス等で紡績ユニット2が停止している時間を短くすることができる。その結果として、紡績ユニット2の生産性を向上できる。
【0070】
紡績ユニット2は、空気紡績装置4のメンテナンスを行うためのアクセスを許容する作業面A(
図1参照)を備える。ドラフト装置3のフロントローラ対34はバックローラ対31よりも作業面Aから遠い位置に配置されている。このレイアウトでは、ノズルホルダ41の下流側(出口)は、オペレータにとって視認し難い位置にある。しかし、本開示の構造によれば、ノズルハウス40を容易に取り外すことができるので、オペレータはノズルホルダ41の下流側(出口)を容易に確認することができる。このレイアウトに関わらず、上述したノズルハウス40における繊維の詰まりの確認又は除去などのノズルハウス40周りのオペレーションも行い易い。
【0071】
オペレータは、操作部47を押して、軸81を中心にレバー46を回動させるだけで、簡単にノズルハウス40を取り外すことができる。
【0072】
一対のピン77に一対の操作部47が係合するので、ノズルアーム部70の先端部71に取り付けられたノズルハウス40の姿勢が安定する。
【0073】
上記実施形態のレバー46と軸81等の位置関係によれば、オペレータが操作部47を軸81に向けて押すだけで、軸81及びレバー46が移動され、係合部48による係合状態が解除される。したがって、簡単にノズルハウス40を取り外すことができる。
【0074】
エアージョイント72が、先端部71に対するノズルハウス40の位置決めを助ける。すなわち、空気の供給流路と位置決め部材を兼ねたエアージョイント72により、ノズルハウス40を先端部71に対して正確に位置決めすることができる。
【0075】
位置決めピン73が、先端部71に対するノズルハウス40の位置決めを助ける。上記のエアージョイント72と位置決めピン73とによって、ノズルホルダ41の位置精度が確保される。その結果、空気紡績装置4における紡績精度が確保される。
【0076】
中空ガイド軸体51を開かせて小径孔41a及び大径孔41bから離脱させた後、ノズルハウス40を先端部71から取り外すことができる。オペレータは、中空ガイド軸体51を目視で確認することができる。また、ノズルハウス40を取り外す際における、ノズルハウス40と中空ガイド軸体51との干渉が防止されている。
【0077】
空気紡績装置4は、中空ガイド軸体51をワンタッチで着脱可能な状態で支持するアーム部53を備える。これにより、中空ガイド軸体51の着脱もノズルハウス40の着脱も工具レスで行われるので、空気紡績装置4のメンテンナンス性が向上している。
【0078】
続いて、
図11〜
図15を参照して、第2実施形態に係る空気紡績装置4Aについて説明する。空気紡績装置4Aでは、ノズルハウス40A及び先端部71Aの形状が、第1実施形態とは異なっている。
図11及び
図12に示されるように、ノズルホルダ41Aは、平坦な下面41fと、その下面41fから更に−z方向に突出した嵌合部41jとを有する。先端部71Aは、+x方向の端部において凹部71jを有する。嵌合部41jは、この凹部71jに嵌合する。嵌合部41jが凹部71jに嵌合した状態で、ノズルホルダ41Aの側端面41kは、先端部71Aの段面71cに隙間なく当接する。
【0079】
空気紡績装置4Aは、先端部71Aに取り付けられたノズルホルダ41Aを仮止めするためのロック機構90と、仮止めされたノズルホルダ41Aを先端部71Aに係合させるためのレバー110と、を備える。なお、ノズルホルダ41Aにノズルブロック42及びファイバーガイド43が取り付けられる点、及び、ノズルホルダ41Aに小径孔41a及び大径孔41bが形成されて、それらの孔部に中空ガイド軸体51が挿入される点、ノズルホルダ41Aにエアージョイント72及び位置決めピン73が立設される点等は、第1実施形態と同様であるので、これらの説明を省略する。
【0080】
図12〜
図15に示されるように、ロック機構90は、y方向に沿って配置されるスタッドボルト91と、スタッドボルト91がねじ込まれるナット94と、スタッドボルト91及びナット94の間に配置されて、スタッドボルト91が挿通されるバネ96とを有する。バネ96は、例えば圧縮コイルバネである。
図13及び
図17に示されるように、先端部71Aには、先端面71aに開口すると共にx方向に幅を有し、z方向に所定の深さを有するスリット79が形成されている。先端部71Aには、さらに、側面(ノズルホルダ41Aの小径孔41aが開口する側面と同じ側の面)からスリット79に貫通する、y方向に延びる貫通孔78が形成されている。
【0081】
図12及び
図15に示されるように、ノズルホルダ41Aの側面(大径孔41bが開口する側面)には凹部41pが形成されており、この凹部41pに、ロックプレート92が嵌め込まれている。
図16に示されるように、ロックプレート92は、ノズルホルダ41Aから下方に(−z方向に)突出しており、その突出部に、y方向に貫通するロック孔92aが形成されている。ノズルホルダ41Aが先端部71Aに固定された状態では、ロックプレート92はスリット79に挿入されており、ロック孔92aは貫通孔78と重なる位置に配置される。
【0082】
ナット94に対してスタッドボルト91が適当な位置までねじ込まれており、バネ96の先端に嵌められた例えば鉄球であるボール93は、スタッドボルト91の先端に当接し、スリット79内に突出している。スリット79のy方向の厚みは、ボール93の直径よりも小さい。
図15及び
図17に示されるように、ロックプレート92の先端にはテーパ面92bが形成されており、ロックプレート92がスリット79に挿入された状態では、テーパ面92bが貫通孔78の出口開口(すなわちボール93が突出する開口)に面する。テーパ面92bは、ロックプレート92がスリット79内を下降する際に、ボール93に当接し、バネ96の付勢力に抗してボール93を貫通孔78内に押し戻すように構成されている。
【0083】
続いて、レバー110に関係する構成について説明する。
図12及び
図15に示されるように、レバー110は、x方向に配置される円筒状の操作部111と、x方向に配置される係合バー113と、操作部111と係合バー113との間に配置されて、係合バー113が挿通されるバネ112とを有する。係合バー113は、一定の直径を有する軸部113cと、軸部113cの第1端に設けられた先端部113bと、軸部113cの第2端に設けられた係合部113aとを含む。先端部113bの直径は、例えば、軸部113cの直径に略等しい。係合部113aの直径は、例えば、軸部113cの直径よりも大きい。バネ112は、例えば圧縮コイルバネである。操作部111と嵌合部41jとの間にはレバー用プレート116が固定されている。操作部111には、x方向に延びる受入れ孔111cが形成されている。レバー用プレート116には、長方形状の角孔116aが形成されている。角孔116aの長辺は操作部111の直径よりも大きく、角孔116aの短辺は操作部111の直径よりも小さい。この角孔116aには、操作部111の先端が挿入されている。嵌合部41jには、x方向に延びる貫通孔41sが形成されており、角孔116aに挿入された操作部111の受入れ孔111cと、この貫通孔41sとが重なっている。これらの受入れ孔111c及び貫通孔41sに、係合バー113及びバネ112が挿入され、係合バー113の先端部113bが操作部111内で固定されている。操作部111及び係合バー113は、一体になって、貫通孔41s内をx方向に沿って往復移動可能であり、かつx方向に延びる中心軸線周りで回転可能である。
【0084】
図11及び
図16に示されるように、一体化された操作部111及び係合バー113が、所定の回転角度に位置して操作部111の端面111bがレバー用プレート116に当接しているとき、係合バー113の基端に設けられた係合部113aは、嵌合部41jの側端面41kから突出せず、貫通孔41s内に収まっている(
図11及び
図16参照)。この状態で、貫通孔41s内に配置されたバネ112は、係合バー113の係合部113aと貫通孔41s内の段面41tとによってx方向の両側から押圧され、自然長よりも幾らか縮んでいる。以下、この状態をレバー110の待機状態という。
【0085】
一方、操作部111には、レバー用プレート116に面する端面において、周方向の2箇所(例えば直径上の2箇所。すなわち180°異なる位置)に、窪み面111aが形成されている。操作部111を所定の回転位置に回転させると、端面111bの最大幅は操作部111の直径に相当するので、端面111bが角孔116a内に入り込むことができる。この状態で、操作部111の窪み面111aがレバー用プレート116に当接しており、係合バー113の係合部113aが嵌合部41jの側端面41kから僅かに突出する(
図15参照)。突出した係合部113aは、先端部71Aの段面71cに形成された係合穴71d(
図18参照)に係合する。係合バー113の頭部と貫通孔41s内の段面41tとに当接するバネ112は、係合部113aが係合穴71dに係合するように、係合バー113(レバー110)を付勢する。以下、この状態をレバー110の係合状態という。
【0086】
空気紡績装置4Aでは、レバー110は、操作部111及び係合部113aを含む。ノズルハウス40Aは、ノズルホルダ41Aに対して可動な操作部111と、支持部である先端部71Aの一部に係合する1つの係合部113aとを有する。先端部71Aは、1つの係合部113aに係合する1つの係合穴71dを有する。すなわち、ノズルハウス40Aは、操作部111及び係合部113aを含むレバー110と、係合部113aが先端部71Aの係合穴71dに係合するようにレバー110を付勢するバネ112とを有する。係合穴71dは、例えば円錐面を含む。係合部113aの周面は、例えば、円錐面の一部の形状を有しており、係合穴71dの円錐面に当接するように構成されている。レバー110の係合状態において、係合部113aの周面が係合穴71dの円錐面に当接する。これにより、ノズルホルダ41Aのガタつきが軽減される。
【0087】
以上のように構成された空気紡績装置4Aでは、ロック機構90によって、ノズルホルダ41Aのx方向及びz方向の動きが規制され、またレバー110によって、ノズルホルダ41Aのy方向の動きが規制される。
【0088】
続いて、
図16〜
図18を参照して、ノズルアーム部70Aに対するノズルハウス40Aの取付け及び取外しについて説明する。まず、取付け手順について説明する。なお、中空ガイド軸体51の動きについては、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。まず、レバー110は待機状態になっている。
図16に示されるように、ノズルハウス40Aが先端部71Aに近づけられる。具体的には、ノズルハウス40Aを−z方向に移動させる。すなわち、ノズルハウス40Aの取付け方向は、取外し方向Dとは反対向きである。ノズルホルダ41Aに固定されたロックプレート92が、スリット79に挿入されてスリット79内で案内され、ノズルホルダ41Aがエアージョイント72及び位置決めピン73に案内される。そして、
図17に示されるように、ノズルホルダ41Aの下面41fが先端部71Aの先端面71aに近づいて当接するとき、ロックプレート92のテーパ面92bがボール93に当接し、ボール93が貫通孔78内にいったん引っ込んだ後、ロック孔92aに嵌まり込む。ロックプレート92を引き上げる力が加わった際、ボール93がロック孔92aの下縁に引っ掛かることにより、ノズルホルダ41Aが仮止め(ロック)される(
図11及び
図17参照)。
【0089】
その後、操作部111が反時計回りに90°回転させられ、レバー110は、
図11に示される待機状態から、
図15に示される係合状態に切り替えられる。その結果、
図11及び
図15に示されるように、レバー110の係合部113aが先端部71Aの係合穴71dに係合する。
【0090】
続いて、取外し手順について説明する。まず、操作部111が時計回りに90°回転させられ、レバー110は、係合状態が解除されて待機状態に切り替えられる。そして、
図18に示されるように、ノズルハウス40A全体が取外し方向Dに引き抜かれる。この引き抜きの際、ロック機構90のボール93はロックプレート92に押圧されて引っ込み、ロック孔92aから離脱する。それによって、ロックプレート92はロック機構90に係合されたロック状態から自由な状態となり、ノズルホルダ41Aが抵抗なく引き抜かれる。ノズルハウス40Aが取り外されると、オペレータは、例えばノズルホルダ41Aの内部(大径孔41bや小径孔41a等)を極めて容易に確認することができる。第2実施形態においても、z方向が、ノズルハウス40Aが取り外される取外し方向Dである。取外し方向Dは、y方向に直角である場合に限られず、y方向に対して所定の鋭角をなしてもよい。ノズルアーム部70Aは、例えば取外し方向Dと同じz方向に延びる。
【0091】
第2実施形態の空気紡績装置4Aによれば、ノズルアーム部70Aの先端部71Aに取り付けられたノズルハウス40Aに対し、ノズルハウス40Aの操作部111が動かされて、係合部113aが係合穴71dから外れる。このように操作部111を動かすという操作のみで、ノズルハウス40Aを自在に取り外すことができる。よって、工具を要することなく、ノズルハウス40Aを先端部71から簡単に取り外すことができる。これにより、メンテナンスのための着脱及び/又は、仕掛け替え時の交換を限られた空間内で簡単に行うことができる。また、ノズルハウス40Aは糸Yの走行方向に交わる取外し方向Dに取り外されるので、糸Yの走行方向に隣接する他の機器類との干渉を避けやすい。
【0092】
ノズルハウス40Aは、操作部111及び係合部113aを含むレバー110と、係合部113aが係合穴71dに係合するようにレバー110を付勢するバネ112と、を有する。バネ112の付勢力によって係合部113aが係合穴71dに係合するので、簡単な構成でノズルハウス40Aの着脱機構を実現できる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、
図19に示されるように、オペレータが手で操作(回転)可能な一対のネジ120が、操作部として設けられた空気紡績装置4Bであってもよい。ネジ120は、例えば蝶ネジ等であってよい。ネジ120の先端が、ノズルアーム部70Bの先端部71Bに形成された係合穴121に螺合又は結合されることにより、ノズルホルダ41Bの下面41fと先端部71Bの先端面71aとが当接した状態で、ノズルハウス40Bのノズルホルダ41Bが先端部71Bに固定される。例えば、ネジ120を90°程度回転させることでノズルホルダ41Bを先端部71Bに対して固定又は解放できるように空気紡績装置4Bが構成されていれば、利便性がより一層高められる。
図19に示される空気紡績装置4Bによっても、上述の空気紡績装置4,4Aと同様の作用及び効果が奏される。ここで、請求の範囲に記載された「操作部の動き」とは、手動でネジ120が回されて、ネジ120の先端が係合穴121から離脱することも含んでいる。
【0094】
上記の各実施形態とは異なり、操作部及び係合部がノズルアーム部70側に設置されてもよい。すなわち、空気紡績装置が、ノズルハウスが取り付けられる本体部を有する支持部を備え、その支持部は、本体部に対して可動な操作部と、ノズルハウスの一部に係合する少なくとも1つの係合部とを有してもよい。操作部の動きに連動して少なくとも1つの係合部が一部から外れたとき、ノズルハウスが、糸Yの走行方向に交わる取外し方向に自在に取り外せてもよい。
【0095】
この空気紡績装置によれば、ノズルハウスが取り付けられた支持部に対し、支持部の操作部が動かされて、係合部がノズルハウスの一部から外れる。このように操作部を動かすという操作のみで、ノズルハウスを取外し自在にできる。よって、工具を要することなく、ノズルハウスを支持部から簡単に取り外すことができる。これにより、メンテナンスのための着脱及び/又は、仕掛け替え時の交換を限られた空間内で簡単に行うことができる。また、ノズルハウスは繊維の走行方向に交わる取外し方向に取り外されるので、繊維の走行方向に隣接する他の機器類との干渉を避けやすい。
【0096】
操作部及び係合部がノズルアーム部70側に設置された態様において、上記実施形態で開示された各種の構造又は機構が採用されてもよい。
【0097】
ノズルホルダと支持部との間において、エアージョイント及び位置決めピンが、上記実施形態とは異なる構造で設置されてもよい。例えば、ノズルホルダ41と先端部71との間に設けられたエアージョイントが、ノズルホルダ41に固定されていて、ノズルアーム部70の先端部71等の支持部に挿入されてもよい。ノズルホルダ41と先端部71との間に設けられた位置決めピン(又は追加のエアージョイント)が、ノズルホルダ41に固定されていて、ノズルアーム部70の先端部71等の支持部に挿入されてもよい。
【0098】
支持部に係合する係合部が、ノズルハウス40に、1つのみ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。係合部の態様は、上記した一対の係合部48と係合部113aに限られない。
【0099】
上記実施形態では、レバー46の連結板部49及び切欠き46bは、ノズルホルダ41の下流側に位置している(
図2参照)が、レバー46の連結板部49及び切欠き46bは、ノズルホルダ41の上流側に位置してもよい。
【0100】
上記実施形態では、ドラフト装置3が複数のローラ対を備えていた。しかし、繊維束Fの走行方向において空気紡績装置4,4A,4Bに最も近い位置に配置されるローラ対(フロントローラ対)は、他の装置の一部として構成されていてもよい。例えば、紡績ユニット2は、ドラフト装置3でドラフトされた繊維束Fを空気紡績装置4,4A,4Bに供給する供給装置を備え、フロントローラ対は、当該供給装置の一部に含まれていてもよい。フロントローラ対は、繊維束Sをドラフトするドラフト装置3又は繊維束Fを空気紡績装置4,4A,4Bに供給する供給装置に含まれていてもよいし、他の装置に含まれずに単独で設けられていてもよい。
【0101】
ドラフト装置3の代わりに、コーミングローラを設け、空気紡績装置4,4A,4Bは、コーミングローラから供給される繊維束Fに撚りを与えて糸Yを生成してもよい。
【0102】
空気紡績装置4,4A,4Bは、互いに反対方向に繊維束Fに撚りを与える1対のエアージェットノズルを備えていてもよい。
【0103】
巻取装置20は、ドラム23が駆動回転させられて、ドラム23に接触したボビンBが従動回転させられるタイプに限定されず、ボビンBが駆動回転させられて、ボビンBに接触したドラム23が従動回転させられるタイプであってもよい。つまり、ドラム23は、ボビンBと接触して回転するドラムであればよい。
【0104】
紡績ユニット2では、糸Yの走行方向が糸貯留装置6において切り替えられていたが、糸Yの走行方向が糸貯留装置6において切り替えられていなくてもよい。紡績ユニット2では、機台高さ方向において、下側で供給された糸Yが上側で巻き取られるように各装置が配置されていた。しかし、紡績ユニット2では、機台高さ方向において、上側で供給された糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されてもよい。空気紡績装置4,4A,4Bから糸Yを引き出すために、空気紡績装置4,4A,4Bと糸貯留装置6との間に、デリベリローラ及びニップローラが配置されてもよい。デリベリローラ及びニップローラが設けられる場合、糸貯留装置6の代わりに、吸引空気流を用いたスラックチューブ及び/又は機械的なコンペンセータ等が設けられてもよい。糸監視装置5は、糸貯留装置6と巻取装置20との間に配置されてもよい。
【0105】
糸継装置7、第1捕捉案内装置8及び第2捕捉案内装置9は、複数の紡績ユニット2の配列方向に沿って移動可能な糸継台車に設けてられてもよい。各紡績ユニット2又は玉揚台車10に、糸継ぎが行われる際等に、パッケージPからの糸Yを引き出す糸引出し装置が設けられてもよい。
【0106】
紡績ユニット2では、糸継装置7によって2つの糸端を接続する構成に代えて、パッケージPからの糸Yを空気紡績装置4,4A,4Bに挿入し、ドラフト装置3のドラフト動作及び空気紡績装置4,4A,4Bの紡績動作を開始することで、空気紡績装置4,4A,4Bからの糸YとパッケージPからの糸Yとを接続(ピーシング)してもよい。
【0107】
以上に記載した各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。以上に記載した実施形態の少なくとも一部の構成は、当該実施形態の少なくとも一部の他の構成と任意に組み合わせることができる。