(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-200601(P2020-200601A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】吊り治具および鉄塔の解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20201120BHJP
【FI】
E04G23/08 J
E04G23/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-106589(P2019-106589)
(22)【出願日】2019年6月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀雄
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA11
2E176DD61
2E176DD64
(57)【要約】
【課題】鉄塔を横倒しして解体する際、鉄塔を確実かつ安全に吊り上げることができる吊り治具を提供すること。
【解決手段】吊り治具30は、鉄塔3を吊り上げるためのものである。この吊り冶具30は、鉄塔3の支柱10を挟んで配置された一対の挟持体31と、この挟持体31同士を連結するボルト32およびナット33と、を備える。一対の挟持体31の一方には、吊りピース34が設けられる。本発明によれば、鉄塔3の支柱10に一対の挟持体31を配置し、ボルト32およびナット33によりこの挟持体31同士を連結する。次に、吊りピース43にワイヤ22を連結して、このワイヤ22を揚重機L1で吊り上げる。これにより、鉄塔3を確実かつ安全に吊り上げることができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔を吊り上げるための吊り冶具であって、
前記鉄塔の支柱を挟んで配置された一対の挟持体と、
当該挟持体同士を連結する締結具と、を備え、
前記一対の挟持体の少なくとも一方には、吊りピースが設けられることを特徴とする吊り冶具。
【請求項2】
前記一対の挟持体は、それぞれ、半円筒形状の本体と、
当該本体から外側に延びる平板部と、
前記本体の外周面に沿って設けられる半円環状の補剛部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の吊り冶具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吊り冶具を用いて、複数の支柱を有する鉄塔を解体する方法であって、
前記鉄塔の支柱の上部に前記吊り冶具を取り付ける工程と、
揚重機により、前記吊り冶具の吊りピースに取り付けたワイヤを介して前記鉄塔を吊り下げ支持し、この状態で、前記鉄塔の下端側を切断する工程と、
当該切断した鉄塔を地表面に横倒しして載置する工程と、
当該横倒しした鉄塔を分割する工程と、を含むことを特徴とする鉄塔の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り治具、およびこの吊り治具を用いた鉄塔の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄塔を横倒しして解体する方法が提案されている。(特許文献1、2参照)。
特許文献1には、転倒側の鉄塔支柱の下部と転倒側とは反対側の鉄塔支柱の下部とをケーブルで連結し、転倒側の各鉄塔支柱の下部について高さ方向に並ぶ3箇所を発破切断して、鉄塔を転倒させる方法が示されている。
特許文献2には、煙突本体の倒し方向側の最下部位置に、除去部分を形成する工程と、煙突支持用鉄塔の構成要素の倒し方向側とは反対側の所定領域の煙突用土台部との固定状態の解除を行なう工程と、煙突本体および煙突支持用鉄塔に対し倒し方向に力を加え、煙突本体および煙突支持用鉄塔を同時に倒す工程と、を含む鉄塔支持形煙突構造物の倒し方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−184344号公報
【特許文献2】特開2007−327301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、鉄塔を横倒しして解体する際、鉄塔を確実かつ安全に吊り上げることができる吊り治具、およびこの吊り治具を用いた鉄塔の解体方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鉄塔解体時に鉄塔を吊り上げるために用いる吊り冶具として、鉄塔の高所であっても、確実かつ容易に取付けが可能な、鉄塔の支柱を挟持する一対の挟持体と、挟持体同士を締結するボルトおよびナットと、を備えた吊り冶具を開発した。また、本発明者は、この吊り冶具を使用して、鉄塔を吊り上げた状態で、鉄塔の下端側を切断し、切断した鉄塔を地上に横倒しした後に解体する解体手順を発明するに至った。
第1の発明の吊り治具(例えば、後述の吊り治具30)は、鉄塔(例えば、後述の鉄塔3)を吊り上げるための吊り冶具であって、前記鉄塔の支柱(例えば、後述の支柱10)を挟んで配置された一対の挟持体(例えば、後述の挟持体31、31A)と、当該挟持体同士を連結する締結具(例えば、後述のボルト32およびナット33)と、を備え、前記一対の挟持体の少なくとも一方には、吊りピース(例えば、後述の吊りピース34)が設けられることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、鉄塔の支柱に一対の挟持体を配置し、締結具により挟持体同士を連結する。次に、吊りピースにワイヤを連結して、このワイヤを揚重機で吊り上げる。これにより、鉄塔を確実かつ安全に吊り上げることができる。
【0007】
第2の発明の吊り治具は、前記一対の挟持体は、それぞれ、半円筒形状の本体(例えば、後述の本体40)と、当該本体から外側に延びる平板部(例えば、後述の平板部41)と、前記本体の外周面に沿って設けられる半円環状の補剛部(例えば、後述の補剛部42)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、挟持体を構成する本体の外周面に補剛部を設けたので、挟持体の剛性が向上する。よって、吊り冶具を使用して、鉄塔を確実に吊り上げることができる。
【0009】
第3の発明の鉄塔の解体方法は、上述の吊り冶具を用いて、複数の支柱を有する鉄塔を解体する方法であって、前記鉄塔の支柱の上部に前記吊り冶具を取り付ける工程(例えば、後述のステップS41)と、揚重機により、前記吊り冶具の吊りピースに取り付けたワイヤ(例えば、後述のワイヤ22)を介して前記鉄塔を吊り下げ支持し、この状態で、前記鉄塔の下端側を切断する工程(例えば、後述のステップS42)と、当該切断した鉄塔を地表面に横倒しして載置する工程(例えば、後述のステップS43)と、当該横倒しした鉄塔を分割する工程(例えば、後述のステップS44)と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、吊り冶具を使用して鉄塔を吊り下げ支持した状態で、鉄塔の下端側を切断して、この切断した鉄塔を地表面に横倒して載置し、その後、この横倒しした鉄塔を分割して解体するので、鉄塔を短時間で解体できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉄塔を横倒しして解体する際、鉄塔を確実かつ安全に吊り上げることができる吊り治具、およびこの吊り治具を用いた鉄塔の解体方法を提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る鉄塔の解体方法により解体される高架水槽施設の側面図である。
【
図2】
図1の高架水槽施設の解体手順のフローチャートである。
【
図3】
図1の高架水槽施設の解体手順の説明図(その1:点検歩廊の撤去)である。
【
図4】
図1の高架水槽施設の解体手順の説明図(その2:高架水槽の撤去)である。
【
図5】
図1の高架水槽施設の鉄塔の解体手順のフローチャートである。
【
図6】鉄塔の解体手順の説明図(その1:吊り治具の取り付け)である。
【
図7】鉄塔の解体手順の説明図(その2:吊り治具の斜視図)である。
【
図8】鉄塔の解体手順の説明図(その3:鉄塔の切り離し)である。
【
図9】鉄塔の解体手順の説明図(その4:鉄塔の横倒し)である。
【
図10】鉄塔の解体手順の説明図(その5:横倒しした鉄塔の解体)である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る鉄塔の解体方法に用いられる吊り治具の挟持体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、鉄塔の解体時に鉄塔を吊り上げるために用いる吊り冶具と、この吊り冶具を使用した鉄塔の解体方法である。吊り冶具の主な特徴は、鉄塔の支柱を挟持する一対の挟持体と、この挟持体同士を締結するボルトおよびナットと、を含んで構成される点である。また、鉄塔の解体方法の主な特徴は、鉄塔の外周に外部足場を組み立てることなく、鉄塔の支柱に本発明の吊り冶具を取り付け、鉄塔を吊り上げた状態で、鉄塔の下端側を切断し、切断した鉄塔を地上に横倒しした後、解体する点である。
吊り冶具としては、支柱を挟持する一対の挟持体が分離しており、この挟持体同士をボルトおよびナットで締結する第1実施形態と、一対の挟持体の一端側同士を丁番で開閉可能に連結しておき、一対の挟持体の他端側同士をボルトおよびナットで締結する第2実施形態とがある。
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る鉄塔の解体方法により解体される高架水槽施設1の側面図である。
高架水槽施設1は、地表面Gに設けられたポンプ室2と、このポンプ室2の上に架設された鉄塔3と、この鉄塔3の頂部に配置された高架水槽4と、を備える。
鉄塔3は、トラス状であり、4本の円筒状の支柱10と、略水平に延びて支柱10同士を連結する複数の連結材としての水平材11と、斜め方向に延びて支柱10と水平材11の中央部とを連結する複数の斜材12と、を備える。
鉄塔3の頂部には、連結材としての歩廊13が設けられ、この歩廊13の周縁部には、手摺り14が設けられている。また、この歩廊13の上には、高架水槽4およびこの高架水槽4を点検するための点検歩廊15が設置されている。
【0015】
以下、高架水槽施設1を解体する手順について、
図2のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、
図3に示すように、作業員の安全を確保するため、水平ネット20を取り付ける。具体的には、水平ネット20は、歩廊13の直下に位置する最上段の水平材11の高さ位置に設けられ、歩廊13の外側まで張り出している。
ステップS2では、
図3に示すように、揚重機L1により、手摺り14および点検歩廊15を吊り上げて撤去する。ここで、手摺り14は、ステップS4において鉄塔3をワイヤ22で吊り上げて横倒しにする際に、このワイヤ22に干渉する範囲のみ撤去する。また、点検歩廊15は、ワイヤ22の取り付けやワイヤ22による吊り上げに干渉する範囲のみ撤去する。
【0016】
ステップS3では、
図4に示すように、揚重機L1により、高架水槽4を吊り上げて撤去する。
ステップS4では、鉄塔3を横倒しにして解体する。
ステップS5では、ポンプ室2を解体する。
【0017】
以下、このステップS4について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS41では、
図6に示すように、鉄塔3の各支柱10について、歩廊13の下側の位置に吊り冶具30を取り付ける。
吊り治具30は、
図7に示すように、互いに分離されて鉄塔3の支柱10を挟んで配置された一対の挟持体31と、挟持体31同士を締結する締結具としてのボルト32およびナット33と、を備える。
【0018】
一対の挟持体31は、それぞれ、半円筒形状の本体40と、本体40の水平方向両端から外側に延びる板状の一対の平板部41と、本体40の上下端の外周面に沿って設けられる半円環状の補剛部42と、を備える。平板部41には、図示しない貫通孔が複数形成され、挟持体31の平板部41同士を合わせた状態で、平板部41の貫通孔にボルト32を挿通してナット33を締め付けることで、挟持体31同士が連結される。
また、一対の挟持体31の一方には、吊りピース43が設けられている。この吊りピース43には、貫通孔44が設けられ、この貫通孔44には、シャックル21を介してワイヤ22が連結される。
【0019】
ステップS42では、
図8に示すように、揚重機L1により、吊り冶具30に連結したワイヤ22を吊り上げて鉄塔3を吊り下げ支持し、この状態で、鉄塔3の下端側を切断して、鉄塔3をポンプ室2から切り離す。
ステップS43では、
図9に示すように、別の揚重機L2により鉄塔3の下端側を吊り上げて、2台の揚重機L1、L2により、鉄塔3を相吊りして地表面Gに横倒しして載置する。このとき、チェーンエコライザ23を用いて、ワイヤ22を良好なバランスに維持する。
ステップS44では、
図10に示すように、図示しない解体重機により、横倒しにした鉄塔3を長さ方向に適宜分割して撤去する。
【0020】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)鉄塔3の支柱10に一対の挟持体31を配置し、ボルト32およびナット33によりこの挟持体31同士を連結する。次に、吊りピース43にワイヤ22を連結して、このワイヤ22を揚重機L1で吊り上げる。これにより、鉄塔3を確実かつ安全に吊り上げることができる。
【0021】
(2)挟持体31を構成する本体40の外周面に補剛部42を設けたので、挟持体31の剛性が向上する。よって、吊り冶具30を使用して、鉄塔3を確実に吊り上げることができる。
(3)吊り冶具30を使用して鉄塔3を吊り下げ支持した状態で、鉄塔3の下端側を切断して、この切断した鉄塔3を地表面Gに横倒して載置し、その後、この横倒しした鉄塔3を分割して解体するので、鉄塔3を短時間で解体できる。
【0022】
(4)鉄塔3の外周に大掛かりな外部足場を組み立てることなく、鉄塔3の支柱10の上部に吊り冶具30を設置し、揚重機を使用して鉄塔3を吊り下げた状態で、鉄塔3を容易に切り離すことが出来る。よって、外部足場の組立て・解体作業や、足場上での支柱の切断作業などが不要となり、短期間で鉄塔3の解体が可能である。
(5)吊り冶具30を、支柱10同士の間に架設された歩廊13の直下の位置に設置した。よって、揚重機L1により吊り冶具30に取り付けたワイヤ22を引っ張り上げた際には、吊り冶具30が歩廊13に係止するため、確実に支柱10を吊り下げることができる。
【0023】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、
図11に示すように、吊り治具30の一対の挟持体31Aの一端側同士を丁番34で連結した点が、第1実施形態と異なる。具体的には、挟持体31Aの本体40の一端側は、平板部が設けられておらず、丁番34により開閉可能に連結されており、挟持体31Aの他端側のみに平板部41が設けられて、ボルト32およびナット33で連結される。
本実施形態によれば、上述の(1)〜(5)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(6)吊り冶具30を構成する一対の挟持体31A同士を丁番34で連結したので、鉄塔3の支柱10に吊り冶具30を取り付ける際に、支柱10に挟持体31Aで比較的容易に挟み込むことができ、挟持体31Aの落下を防止できる。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態では、吊り冶具30の挟持体31、31Aを、直接、鉄塔3の支柱10に取り付けたが、これに限らず、挟持体31、31Aと支柱10との間に、硬質ゴムを挟み込んでもよい。
また、上述の各実施形態では、支柱10を円筒状としたが、これに限らず、支柱10を山形鋼や溝形鋼などの一般形鋼や角形鋼管で形成してもよい。この場合、支柱の断面形状に応じて、吊り冶具の挟持体の形状を適宜変更する。
また、上述の各実施形態では、ステップS42において、鉄塔3を吊り下げ支持した状態で、鉄塔3の下端部を一度で切断したが、これに限らない。すなわち、鉄塔が高い場合には、一旦、鉄塔の外周の建物躯体上や仮設構台上に揚重機を設置し、この揚重機を用いて鉄塔を吊り下げ支持した状態で、鉄塔を上側から下側に向かって複数回に分けて切断してもよい。
【符号の説明】
【0025】
G…地表面 L1、L2…揚重機
1…高架水槽施設 2…ポンプ室 3…鉄塔 4…高架水槽
10…支柱 11…水平材(連結材) 12…斜材
13…歩廊(連結材) 14…手摺り 15…点検歩廊
20…水平ネット 21…シャックル 22…ワイヤ 23…チェーンエコライザ
30…吊り冶具 31、31A…挟持体 32…ボルト(締結具)
33…ナット(締結具)
40…本体 41…平板部 42…補剛部 43…吊りピース 44…貫通孔