【解決手段】エンジン駆動装置10は、複数のシリンダを有し、複数のシリンダのうちいずれか1つのシリンダが圧縮行程となるとき、他の1つのシリンダが膨張行程となるエンジンと、エンジンのクランクシャフトに連結される始動電動機と、始動電動機を制御する始動電動機制御部56bと、を備え、始動電動機制御部56bは、エンジンの再始動前に、膨張行程にあるシリンダの排気バルブが開く位置まで、始動電動機によりクランクシャフトにトルクを加えさせる再始動前制御を実行する。
前記始動電動機制御部は、前記温度検出部および前記状態検出部から出力される信号に基づいて、前記始動電動機の温度および前記バッテリの劣化度を導出し、前記温度および前記劣化度が所定の第1範囲にあると判定すると、前記再始動前制御を実行すると判定し、前記温度および前記劣化度が前記第1範囲よりも小さい第2範囲にあると判定すると、前記再始動前制御を実行しないと判定する請求項2に記載のエンジン駆動装置。
前記始動電動機制御部は、前記再始動前制御において、前記始動電動機を駆動させて前記クランクシャフトを正回転させた後、前記始動電動機の駆動を停止させることで前記クランクシャフトを逆回転させ、逆回転して停止した前記クランクシャフトのクランク角が閾値に到達するまで前記再始動前制御を繰り返し実行する請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジン駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、エンジン駆動装置10の構成を示す概略図である。
図1中、実線矢印は、電力の流れを示し、破線矢印は、信号の流れを示す。エンジン駆動装置10は、車両に搭載される。
図1に示すように、エンジン駆動装置10は、エンジン12と、ベルト機構14と、発電電動機(始動電動機)16と、ECU18とを含んで構成される。
【0016】
エンジン12は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程(燃焼行程)および排気行程が1回のサイクルとして繰り返し行われる4ストロークエンジンである。なお、本実施形態において、エンジン12は、水平対向エンジンである。しかし、これに限定されず、エンジン12は、直列エンジンであっても、V型エンジンであってもよい。
【0017】
エンジン12は、2つ(複数)のシリンダブロック20と、2つ(複数)のクランクケース22と、2つ(複数)のシリンダヘッド24と、を備える。シリンダブロック20には、複数のシリンダ26が形成される。本実施形態では、1つのシリンダブロック20に、2つのシリンダ26が形成される。したがって、2つのシリンダブロック20には、合計4つのシリンダ26が形成される。
図1では、4つのシリンダ26のうち、2つのシリンダ26を例示的に示している。
【0018】
各シリンダ26には、ピストン28が配される。ピストン28は、シリンダ26内を摺動自在に移動することができる。ピストン28には、コネクティングロッド30が接続される。ピストン28は、コネクティングロッド30に支持される。
【0019】
クランクケース22は、シリンダブロック20と一体的に形成される。ただし、クランクケース22は、シリンダブロック20と別体的に形成されてもよい。クランクケース22内には、クランク室22aが形成される。クランク室22a内には、クランクシャフト32が回転自在に支持される。クランクシャフト32には、コネクティングロッド30が連結される。ピストン28は、コネクティングロッド30を介してクランクシャフト32に連結される。
【0020】
シリンダヘッド24は、シリンダブロック20のクランクケース22側とは反対側に連結される。シリンダヘッド24の内壁面と、シリンダ26の内壁面と、ピストン28の冠面によって囲まれた空間が燃焼室34として形成される。
【0021】
シリンダヘッド24には、吸気ポート36および排気ポート38が形成される。吸気ポート36および排気ポート38は、燃焼室34と連通する。吸気ポート36と燃焼室34の間には、吸気バルブ40の傘部が配される。吸気バルブ40は、カムシャフト42の回転に伴って移動し、吸気ポート36を燃焼室34に対して開閉する。
【0022】
排気ポート38と燃焼室34の間には、排気バルブ44の傘部が配される。排気バルブ44は、カムシャフト46の回転に伴って移動し、排気ポート38を燃焼室34に対して開閉する。
【0023】
シリンダヘッド24には、不図示のインジェクタおよび点火プラグが配される。インジェクタは、燃焼室34に燃料を噴射する。点火プラグは、所定のタイミングで放電することにより吸気と燃料との混合気を点火する。
【0024】
吸気と燃料との混合気は、点火プラグの点火により燃焼する。これにより、ピストン28は、シリンダ26内で往復運動を行う。ピストン28の往復運動は、コネクティングロッド30を通じてクランクシャフト32の回転運動に変換される。
【0025】
クランクシャフト32には、ベルト機構14が連結される。ベルト機構14は、大径プーリ48と、小径プーリ50と、ベルト52とを含んで構成される。大径プーリ48は、クランクシャフト32に連結される。小径プーリ50は、発電電動機16の回転軸に連結される。大径プーリ48と小径プーリ50には、ベルト52が掛け渡される。
【0026】
発電電動機16は、発電機(スターター)および電動機として機能する所謂ISG(Integrated Starter Generator)である。クランクシャフト32が回転するとベルト52を介して小径プーリ50および発電電動機16の回転軸が回転駆動される。このとき、発電電動機16は、クランクシャフト32によって駆動される発電機として機能する。
【0027】
また、発電電動機16の回転軸が回転すると、ベルト52を介して大径プーリ48およびクランクシャフト32が回転駆動される。このとき、発電電動機16は、クランクシャフト32を回転させる電動機として機能する。本実施形態では、発電電動機16は、ベルト機構14を介してクランクシャフト32に連結されている。ただし、発電電動機16は、クランクシャフト32に直接連結されてもよい。
【0028】
発電電動機16は、バッテリ54と電気的に接続される。発電電動機16が発電機として機能するとき、バッテリ54には、発電電動機16により生成された電力が供給される。また、発電電動機16が電動機として機能するとき、バッテリ54は、発電電動機16に電力を供給する。
【0029】
図2は、ECU18の構成を示す概略ブロック図である。ECU18は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含むマイクロコンピュータでなり、エンジン駆動装置10を統括制御する。本実施形態では、ECU18は、エンジン制御部56aと、始動電動機制御部56bとして機能する。
【0030】
図2に示すように、エンジン駆動装置10は、クランク角検出部58と、温度検出部60と、状態検出部62とを含んで構成される。クランク角検出部58は、クランクシャフト32(
図1参照)近傍に配され、クランクシャフト32のクランク角(回転角)を検出するセンサである。クランク角検出部58は、検出信号をエンジン制御部56aおよび始動電動機制御部56bに出力する。
【0031】
温度検出部60は、発電電動機16(
図1参照)に配され、発電電動機16の温度を検出するセンサである。温度検出部60は、検出信号をエンジン制御部56aおよび始動電動機制御部56bに出力する。状態検出部62は、バッテリ54(
図1参照)に配され、バッテリ54の劣化状態を検出するセンサである。状態検出部62は、検出信号をエンジン制御部56aおよび始動電動機制御部56bに出力する。ここで、バッテリ54が劣化するほど、バッテリ54の抵抗値は増加する。したがって、状態検出部62は、バッテリ54の劣化状態(劣化度)として、バッテリ54の抵抗値を検出している。
【0032】
エンジン制御部56aは、エンジン12を制御する。本実施形態では、エンジン制御部56aは、エンジン12をアイドリングストップさせたり、再始動させたりすることができる。
【0033】
始動電動機制御部56bは、発電電動機16およびバッテリ54(
図1参照)を制御する。例えば、始動電動機制御部56bは、アイドリングストップ後のエンジン12の再始動時に、バッテリ54から発電電動機16に電力を供給させ、発電電動機16を電動機として駆動させる。これにより、始動電動機制御部56bは、エンジン12を再始動させることができる。また、始動電動機制御部56bは、車両がEVモードからHVモードに移行するとき、バッテリ54から発電電動機16に電力を供給させ、発電電動機16を電動機として駆動させる。これにより、始動電動機制御部56bは、エンジン12を再始動させることができる。
【0034】
ところで、エンジン12の再始動に必要なエネルギー(トルク)は、エンジン12の状態に応じて変化する。例えば、エンジン12の圧縮行程および膨張行程に必要なエネルギーは、エンジン12の吸気行程および排気行程に必要なエネルギーよりも大きい。
【0035】
エンジン12は、複数のシリンダ26のうちいずれか1つのシリンダ26が圧縮行程となるとき、他の1つのシリンダ26が膨張行程となるように構成される。シリンダ26が圧縮行程となるとき、吸気バルブ40は、吸気ポート36を閉じる位置(閉状態)にあり、排気バルブ44は、排気ポート38を閉じる位置(閉状態)にある。また、ピストン28は、シリンダ26内を吸気バルブ40および排気バルブ44に近接する方向に移動する。
【0036】
このとき、燃焼室34は、吸気バルブ40および排気バルブ44が閉状態のままピストン28に圧縮され、燃焼室34内が正圧となる。そのため、エンジン12の圧縮行程に必要なエネルギーは、エンジン12の吸気バルブ40が開放されている吸気行程、および、排気バルブ44が開放されている排気行程に比べ、必要なエネルギーが大きくなる。
【0037】
同様に、シリンダ26が膨張行程となるとき、吸気バルブ40は、吸気ポート36を閉じる位置(閉状態)にあり、排気バルブ44は、排気ポート38を閉じる位置(閉状態)にある。また、ピストン28は、シリンダ26内を吸気バルブ40および排気バルブ44から離隔する方向に移動する。
【0038】
このとき、燃焼室34は、吸気バルブ40および排気バルブ44が閉状態のままピストン28に拡大(拡張)され、燃焼室34内が負圧となる。そのため、エンジン12の膨張行程に必要なエネルギーは、エンジン12の吸気バルブ40が開放されている吸気行程および排気バルブ44が開放されている排気行程に比べ、必要なエネルギーが大きくなる。
【0039】
また、発電電動機16の出力は、発電電動機16の温度状態、バッテリ54の劣化状態に応じて変化する。例えば、発電電動機16の出力は、発電電動機16の温度が上昇するほど、また、バッテリ54の経年劣化が進行するほど低下する。
【0040】
したがって、発電電動機16の出力が低下している場合に、アイドリングストップ時(エンジン駆動停止時)のエンジン12が圧縮行程あるいは膨張行程の状態にあると、発電電動機16は、エンジン再始動を行うことができない場合がある。その場合、バッテリ54の交換が不要である状態であっても、発電電動機16の出力を確保するため、バッテリ54を新しいバッテリ54と交換する必要があった。
【0041】
そこで、本実施形態では、始動電動機制御部56bは、エンジン12の駆動停止時(アイドリングストップ時)に、エンジン12の再始動に必要なエネルギーを低減させる処理(以下、再始動前制御という)を実行する。以下、再始動前制御について詳細に説明する。
【0042】
始動電動機制御部56bは、エンジン12の再始動前(すなわち、駆動停止中)に、クランク角検出部58、温度検出部60、状態検出部62から出力される信号を取得する。
【0043】
始動電動機制御部56bは、取得した信号を基に、再始動前制御の実行の可否を判定する。まず、始動電動機制御部56bは、温度検出部60および状態検出部62から出力される信号に基づいて、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度を導出する。始動電動機制御部56bは、導出した発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度に基づいて、エンジン12のクランク角に対応する所定の閾値を導出する。
【0044】
本実施形態では、ECU18には、メモリ(不図示)に閾値マップが記憶されている。始動電動機制御部56bは、メモリに記憶された閾値マップを参照して、閾値を導出する。ここで、閾値は、所定のクランク角範囲毎に設定される。また、所定のクランク角範囲毎に設定される閾値は、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度に応じて変化する値である。閾値は、発電電動機16の温度が高いほど大きい値に設定される。また、閾値は、バッテリ54の劣化度(抵抗値)が高いほど大きい値に設定される。
【0045】
始動電動機制御部56bは、クランク角検出部58から出力される信号に基づいて、エンジン12のクランク角を導出し、導出したクランク角と、閾値とを比較する。始動電動機制御部56bは、導出したクランク角が所定のクランク角範囲にあり、そのクランク角範囲に設定された閾値よりも小さい場合に、再始動前制御を実行すると判定する。始動電動機制御部56bは、導出したクランク角が所定のクランク角範囲にあり、そのクランク角範囲に設定された閾値よりも大きい場合に、再始動前制御を実行しないと判定する。
【0046】
図3は、メモリに記憶される閾値マップの一例を示す図である。
図3中、縦軸は、発電電動機16の温度を示し、横軸は、バッテリ54の劣化度を示す。
図3に示すように、閾値マップには、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が比較的小さい領域R1の範囲(閾値非設定領域)において閾値が設定されていない。
【0047】
始動電動機制御部56bは、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が閾値マップの領域R1の範囲(第2範囲)にあると判定すると、エンジン12のクランク角によらず再始動前制御を実行しないと判定する。これは、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が比較的小さい場合、再始動前制御を実行しなくても、エンジン12を容易に再始動させることができるからである。
【0048】
また、
図3に示すように、閾値マップには、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が比較的大きい領域R2の範囲(閾値非設定領域)において閾値が設定されていない。
【0049】
始動電動機制御部56bは、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が閾値マップの領域R2の範囲(第3範囲)にあると判定すると、エンジン12のクランク角によらず再始動前制御を実行しないと判定する。
【0050】
発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が比較的大きい場合、発電電動機16の出力は、エンジン12の駆動(再始動)に必要なエネルギー未満となる。その場合、発電電動機16は、エンジン12のクランク角によらず、エンジン12を駆動(再始動)させることができない。したがって、エンジン制御部56aは、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が閾値マップの領域R2の範囲にあると判定すると、エンジン12を一時的に停止させる処理(すなわち、アイドリングストップ)を行わない。アイドリングストップが行われないため、始動電動機制御部56bは、エンジン12を再始動させる処理が不要になり、これに伴い再始動前制御の実行も不要になる。よって、始動電動機制御部56bは、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が閾値マップの領域R2の範囲にあると判定すると、再始動前制御を実行しないと判定する。
【0051】
また、
図3に示すように、閾値マップには、領域R1と領域R2の間の領域R3の範囲(閾値設定領域)において閾値が設定されている。ここで、領域R1の範囲(第2範囲)は、領域R3の範囲(所定の第1範囲)よりも発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が小さい範囲である。領域R2の範囲(第3範囲)は、領域R3の範囲(所定の第1範囲)よりも発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が大きい範囲である。始動電動機制御部56bは、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度が閾値マップの領域R3の範囲にあると判定すると、発電電動機16の温度およびバッテリ54の劣化度に基づいて閾値を導出する。そして、始動電動機制御部56bは、導出した閾値とクランク角とを比較することで再始動前制御の実行の可否を判定する。具体的に、始動電動機制御部56bは、導出したクランク角が閾値よりも小さい場合に、再始動前制御を実行すると判定し、導出したクランク角が閾値よりも大きい場合に、再始動前制御を実行しないと判定する。
【0052】
始動電動機制御部56bは、再始動前制御を実行すると判定した場合、発電電動機16を駆動させ、クランク角が大きくなる方向にクランクシャフト32を回転(以下、正回転という)させる。本実施形態では、始動電動機制御部56bが再始動前制御を実行する際に、圧縮行程にあるシリンダ26内のピストン28(クランク角)が下死点に位置し、膨張行程にあるシリンダ26内のピストン28(クランク角)が上死点に位置するものとして説明する。
【0053】
図4は、エンジン駆動停止中におけるエンジン12のクランク角と燃焼室34内の圧力との関係を示す図である。
図4中、縦軸は、燃焼室34内の圧力を示し、横軸は、エンジン12のクランク角を示す。また、
図4中、実線は、エンジン12のクランク角と圧縮行程におけるシリンダ26の燃焼室34内の圧力との関係を示し、一点鎖線は、エンジン12のクランク角と膨張行程におけるシリンダ26の燃焼室34内の圧力との関係を示す。
【0054】
図4中、実線で示すように、圧縮行程におけるクランク角が大きくなる(下死点から上死点に近づく)につれ、燃焼室34内の圧力が大きくなる(すなわち、正圧が大きくなる)。また、
図4中、一点鎖線で示すように、膨張行程におけるクランク角が大きくなる(上死点から下死点に近づく)につれ、燃焼室34内の圧力が小さくなる(すなわち、負圧が大きくなる)。
【0055】
ここで、膨張行程におけるクランク角が下死点に到達する前に、排気バルブ44(
図1参照)は、閉状態から開状態となる。そのため、膨張行程にあるシリンダ26の燃焼室34内には、空気が流入する。その結果、
図4中、一点鎖線で示すように、膨張行程におけるシリンダ26の燃焼室34内の圧力は、クランク角が下死点に到達する前に大きくなる(負圧が小さくなる)。
【0056】
このとき、始動電動機制御部56bは、発電電動機16の駆動を停止させる。つまり、始動電動機制御部56bは、膨張行程にあるシリンダ26の排気バルブ44が開く位置まで、発電電動機16を駆動させ、排気バルブ44が開く位置に到達すると、発電電動機16を駆動停止させる。発電電動機16が駆動停止されると、圧縮行程にあるシリンダ26の燃焼室34内の圧力(正圧)により、クランク角が小さくなる方向にクランクシャフト32が回転(以下、逆回転という)する。
【0057】
図5は、クランクシャフト32の逆回転中におけるエンジン12のクランク角と燃焼室34内の圧力との関係を示す図である。
図5中、縦軸は、燃焼室34内の圧力を示し、横軸は、エンジン12のクランク角を示す。また、
図5中、実線は、エンジン12のクランク角と圧縮行程におけるシリンダ26の燃焼室34内の圧力との関係を示し、一点鎖線は、エンジン12のクランク角と膨張行程におけるシリンダ26の燃焼室34内の圧力との関係を示す。
【0058】
クランクシャフト32が逆回転すると、膨張行程にあるシリンダ26の排気バルブ44(
図1参照)は、開状態から閉状態となる。排気バルブ44が閉状態となったのち、クランクシャフト32が逆回転すると、膨張行程にあるシリンダ26の燃焼室34内の空気が圧縮される。したがって、
図5中、一点鎖線で示すように、膨張行程におけるクランク角が小さくなる(下死点から上死点に近づく)につれ、燃焼室34内の圧力が大きくなる(すなわち、正圧が大きくなる)。
【0059】
クランクシャフト32は、圧縮行程の燃焼室34内の圧力(正圧)と、膨張行程の燃焼室34内の圧力(正圧)とが大凡等しくなる位置P1で、逆回転が停止する。始動電動機制御部56bは、クランクシャフト32の逆回転が停止したクランク角と閾値とを再度比較し、クランク角が閾値に達していなければ、再び膨張行程にあるシリンダ26の排気バルブ44が開く位置まで発電電動機16を駆動(すなわち、クランクシャフト32を正回転)させる。
【0060】
始動電動機制御部56bは、クランク角が閾値に達するまで、発電電動機16を駆動させてクランクシャフト32を正回転させる動作と、発電電動機16を駆動停止させてクランクシャフト32を逆回転させる動作とを繰り返し実行する。
【0061】
始動電動機制御部56bは、クランク角が閾値に達すると、再始動前制御を終了する。再始動前制御が終了すると、エンジン制御部56aは、エンジン12の再始動(本始動)を実行する。
【0062】
以上のように、本実施形態のエンジン駆動装置10は、始動電動機制御部56bを備える。始動電動機制御部56bは、再始動前制御を実行することで、クランク角を閾値まで移動させることができる。つまり、始動電動機制御部56bは、再始動前制御を実行することで、クランク角を圧縮行程の上死点および膨張行程の下死点に近づけさせることができる。
【0063】
これにより、始動電動機制御部56bは、エンジン12を再始動(本始動)させる際に必要なエネルギーを低減させることができる。その結果、始動電動機制御部56bは、発電電動機16の出力が低下している場合でも容易にエンジン12の再始動(本始動)を行うことができる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
上記実施形態では、始動電動機制御部56bが再始動前制御の実行可否を判定する場合について説明した。しかし、これに限定されず、始動電動機制御部56bは、再始動前制御の実行可否を判定しなくてもよい。
【0066】
上記実施形態では、始動電動機制御部56bが再始動前制御(すなわち、クランクシャフト32の正回転動作および逆回転動作)を繰り返し実行する場合について説明した。しかし、これに限定されず、始動電動機制御部56bは、再始動前制御を繰り返し実行しなくてもよい。