特開2020-200853(P2020-200853A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-200853(P2020-200853A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】無段変速機用金属ベルトの刻印方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 5/16 20060101AFI20201120BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20201120BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20201120BHJP
【FI】
   F16G5/16 A
   B23K26/00 B
   B23K26/04
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-106645(P2019-106645)
(22)【出願日】2019年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢ケ崎 徹
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA02
4E168CB18
4E168JA01
(57)【要約】
【課題】 ベルト式無段変速機の金属ベルトの金属エレメントの外周の刻印面にレーザー光で刻印する際に、隣接する金属エレメント間の隙間に入ったレーザー光が隙間を通り抜けて刻印ができなくなるのを防止する。
【解決手段】 無端状の金属リング22に沿って多数の金属エレメント23を支持した金属ベルト15にレーザー光を照射し、複数の金属エレメント23の外周の刻印面26bに跨がるように刻印を施す。金属エレメント23の刻印面26bに直交する法線方向Nからエレメント板厚方向Tに測ったレーザー光照射角θの最小値θmin を、隣接する金属エレメント23間に形成された隙間αに照射されたレーザー光が金属リング22に当たらない角度に設定したので、レーザー光で金属エレメント23の刻印面26bに刻印を施す過程で、レーザー光が隣接する金属エレメント23間に形成された隙間αを通過し難くし、刻印面26bに確実に刻印を施すことができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の金属リング(22)に沿って多数の金属エレメント(23)を支持した金属ベルト(15)にレーザー光を照射し、複数の前記金属エレメント(23)の外周の刻印面(26b)に跨がるように刻印を施す無段変速機用金属ベルトの刻印方法であって、
前記金属エレメント(23)の刻印面(26b)に直交する法線方向(N)からエレメント板厚方向(T)に測ったレーザー光照射角(θ)の最小値(θmin )を、隣接する前記金属エレメント(23)間に形成された隙間(α)に照射されたレーザー光が前記金属リング(22)に当たらない角度に設定したことを特徴とする無段変速機用金属ベルトの刻印方法。
【請求項2】
レーザー光は光源(34)から前記刻印面(26b)までの距離が最小焦点距離(Fmin )および最大焦点距離(Fmax )の範囲で刻印が可能であり、前記刻印面(26b)に直交する法線方向(N)からエレメント板厚方向(T)に測ったレーザー光照射角(θ)の最大値(θmax )を前記最大焦点距離(Fmax )に対応して設定したことを特徴とする、請求項1に記載の無段変速機用金属ベルトの刻印方法。
【請求項3】
前記隙間(α)の大きさをAとし、レーザー光の照射方向に沿う前記刻印面(26b)から前記金属リング(22)までの距離をBとしたとき、前記レーザー光照射角(θ)の最小値(θmin )をtan-1=A/Bに設定したことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の無段変速機用金属ベルトの刻印方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状の金属リングに沿って多数の金属エレメントを支持した金属ベルトにレーザー光を照射し、複数の前記金属エレメントの外周の刻印面に跨がるように刻印を施す無段変速機用金属ベルトの刻印方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速機用の金属ベルトを構成する複数の金属エレメントのイヤー部の外周面に跨がるように、製造番号、金属ベルトの回転方向を示す矢印、金属エレメントの積層順序を示す斜線等の標識をレーザー光を用いて刻印するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−308826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属ベルトの隣接する複数の金属エレメントのイヤー部の外周面に跨がるように所定の標識をレーザー光で刻印する場合、隣接する金属エレメント間の隙間に入ったレーザー光が隙間を通り抜けて焦点距離がずれるために刻印ができない場合があり、その改善が求められていた。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ベルト式無段変速機の金属ベルトの金属エレメントの外周の刻印面にレーザー光で刻印する際に、隣接する金属エレメント間の隙間に入ったレーザー光が隙間を通り抜けて刻印ができなくなるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、無端状の金属リングに沿って多数の金属エレメントを支持した金属ベルトにレーザー光を照射し、複数の前記金属エレメントの外周の刻印面に跨がるように刻印を施す無段変速機用金属ベルトの刻印方法であって、前記金属エレメントの刻印面に直交する法線方向からエレメント板厚方向に測ったレーザー光照射角の最小値を、隣接する前記金属エレメント間に形成された隙間に照射されたレーザー光が前記金属リングに当たらない角度に設定したことを特徴とする無段変速機用金属ベルトの刻印方法が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、レーザー光は光源から前記刻印面までの距離が最小焦点距離および最大焦点距離の範囲で刻印が可能であり、前記刻印面に直交する法線方向からエレメント板厚方向に測ったレーザー光照射角の最大値を前記最大焦点距離に対応して設定したことを特徴とする無段変速機用金属ベルトの刻印方法が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記隙間の大きさをAとし、レーザー光の照射方向に沿う前記刻印面から前記金属リングまでの距離をBとしたとき、前記レーザー光照射角の最小値をtan-1=A/Bに設定したことを特徴とする無段変速機用金属ベルトの刻印方法が提案される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、無端状の金属リングに沿って多数の金属エレメントを支持した金属ベルトにレーザー光を照射し、複数の金属エレメントの外周の刻印面に跨がるように刻印を施す。金属エレメントの刻印面に直交する法線方向からエレメント板厚方向に測ったレーザー光照射角の最小値を、隣接する金属エレメント間に形成された隙間に照射されたレーザー光が金属リングに当たらない角度に設定したので、レーザー光で金属エレメントの刻印面に刻印を施す過程で、レーザー光が隣接する金属エレメント間に形成された隙間を通過し難くし、刻印面に確実に刻印を施すことができる。
【0010】
また請求項2の構成によれば、レーザー光は光源から刻印面までの距離が最小焦点距離および最大焦点距離の範囲で刻印が可能であり、刻印面に直交する法線方向からエレメント板厚方向に測ったレーザー光照射角の最大値を最大焦点距離に対応して設定したので、金属エレメントの刻印面にレーザー光の焦点を合わせて精度の高い刻印を可能にしながら、エレメント板厚方向に測った刻印可能領域の長さを最大限に確保することができる。
【0011】
また請求項3の構成によれば、隙間の大きさをAとし、レーザー光の照射方向に沿う刻印面から金属リングまでの距離をBとしたとき、レーザー光照射角の最小値をtan-1=A/Bに設定したので、レーザー光がさらに隙間を通過し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ベルト式無段変速機の全体構成を示す図である。
図2】金属ベルトおよび金属エレメントの斜視図である。
図3】金属ベルトに対するレーザー光の照射方向の説明図である。
図4図3の4−4線断面図である。
図5図4の5−5線矢視図である。
図6】刻印時の金属ベルトの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図6に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は自動車に搭載されたベルト式無段変速機の概略構造を示すもので、ベルト式無段変速機はエンジンに接続されるドライブシャフト11と、駆動輪に接続されるドリブンシャフト12とを備えており、ドライブシャフト11に設けたドライブプーリ13とドリブンシャフト12に設けたドリブンプーリ14とに無端状の金属ベルト15が巻き掛けられる。ドライブプーリ13は、ドライブシャフト11に固設された固定側プーリ半体16と、この固定側プーリ半体16に対して接離可能な可動側プーリ半体17とを備えており、可動側プーリ半体17は油室18に作用する油圧で固定側プーリ半体16に向けて付勢される。ドリブンプーリ14は、ドリブンシャフト12に固設された固定側プーリ半体19と、この固定側プーリ半体19に対して接離可能な可動側プーリ半体20とを備えており、可動側プーリ半体20は油室21に作用する油圧で固定側プーリ半体19に向けて付勢される。
【0015】
図2に示すように、金属ベルト15は左右一対の金属リング22に多数の金属エレメント23を支持したもので構成される。本明細書において、金属ベルト15が走行する方向を前後方向の前方と定義し、金属ベルト15がドライブプーリ13およびドリブンプーリ14に巻き付いた状態で、ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14の外周側を径方向の外側と定義し、前後方向および径方向に直交する方向を左右方向と定義する。
【0016】
金属エレメント23は、左右方向に延びるボディ部24と、ボディ部24の左右方向中央から径方向外側に延びるネック部25と、ネック部25の径方向外端に接続される略三角形のイヤー部26とを備えており、ボディ部24、ネック部25およびイヤー部26間に左右方向外側に開放して金属リング22が嵌合する一対のリングスロット27が形成される。リングスロット27に臨むボディ部24の径方向外端には金属リング22の内周面が着座するサドル面28が形成され、ボディ部24の前面の径方向外端には左右方向に延びるロッキングエッジ29が形成され、ボディ部24の前面にはロッキングエッジ29から径方向内向きかつ後向きに傾斜する傾斜面30が形成される。ロッキングエッジ29はサドル面28の前縁と重なっており、従ってロッキングエッジ29はボディ部24の前面の径方向外端に位置している。
【0017】
金属エレメント23のボディ部24の左右両端には、ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14のV面に当接するプーリ当接面31が形成される。また金属エレメント23のイヤー部26の前面には、イヤー部26の後面に形成した円錐台状のホール33に嵌合可能な円錐台状のノーズ32が形成される。
【0018】
また金属エレメント23のイヤー部26の後面の左右方向中央部には、ホール33を取り囲むように凹部26aが形成されるとともに、ネック部25の径方向内側に連なるボディ部24の後面の径方向外端の左右方向中央部にも、前記凹部26aよりも小さい凹部24aが形成される。
【0019】
これらの凹部26a,24aにより、前側の金属エレメント23に対して後側の金属エレメント23が径方向外側に位置ずれしたとき、後側の金属エレメント23のボディ部24の傾斜面30を左右方向の全長で前側の金属エレメント23のボディ部24に当接させ、ネック部25がボディ部24に接続する部分に加わる曲げ荷重を低減してネック部25の曲げを抑制することができる。
【0020】
図3図5に示すように、金属ベルト15の積層された複数の金属エレメント23のイヤー部26の外周面である刻印面26bに、光源34から照射されるレーザー光で製造番号が刻印される。固定された金属ベルト15に対して所定位置に配置された光源34から照射されるレーザー光は所定の角度範囲で首振りし、金属エレメント23の刻印面26bに所定形状の文字を刻印する。レーザー光が首振りすると光源34から刻印面26bまでの距離が変化するが、レーザー光は最小焦点距離Fmin および最大焦点距離Fmax の範囲内で焦点距離の調整が可能であるため、焦点距離が最小焦点距離Fmin および最大焦点距離Fmax の範囲内でレーザー光を首振りすることで、刻印面26bに文字を精密に刻印することができる。
【0021】
製造番号が刻印される刻印領域35は、図2で定義した前後方向と同方向である金属エレメント23の板厚方向T(図3および図4参照)に沿って所定長さを有しており、隣接する複数の金属エレメント23の刻印面26bに跨がるように延びている。そして刻印される文字の大きさは金属エレメント23の板厚よりも大きく、よって前記文字は隣接する複数の金属エレメント23の刻印面26bに跨がっている。
【0022】
図4から明らかなように、金属エレメント23のイヤー部26の後面には凹部26aが形成されているため、この凹部26aにより隣接する金属エレメント23のイヤー部26との間に間隔Aの隙間αが形成される。隙間αの入口は金属エレメント23のイヤー部26の刻印面26bに開口し、隙間αの出口は金属エレメント23のリングスロット27に嵌合する金属リング22の径方向外面に臨んでいる。レーザー光の照射方向に沿う隙間αの長さ、つまりレーザー光の照射方向に沿う刻印面26bから金属リング22の径方向外面までの距離はBである。
【0023】
金属エレメント23の板厚方向Tに直交する金属エレメント23の刻印面26bに垂直な方向を法線方向Nとし、法線方向Nから板厚方向Tに測った角度をレーザー光照射角θとする。レーザー光の光源34は、法線方向N上であって、刻印面26bからの距離が最小焦点距離Fmin となる位置に固定される。光源34からのレーザー光照射角θが小さいとき、すなわちレーザー光が刻印面26bに対して略直角に入射するとき、レーザー光が隙間αを通過して焦点距離がずれるために刻印ができない場合がある。しかしながら、レーザー光照射角θをtan-1=A/Bよりも大きく設定すれば、レーザー光は隙間αを通り抜け難くなる。このときのレーザー光照射角θであるθ=tan-1=A/Bをレーザー光照射角の最小値θmin と定義する。
【0024】
なお、レーザー光照射角θが前記最小値θmin よりも大きいとき、金属エレメント23のイヤー部26の凹部26aや、この凹部26aに対向するイヤー部26の前面にレーザー光が当たって僅かに傷付く場合があるが、それらの部分は他部材に接触する部分ではなく、かつ強度上の問題が生じる部分ではないために支障はない。
【0025】
またレーザー光照射角θを前記最小値θmin から次第に増加させると、やがて光源34から金属エレメント23の刻印面26bまでの距離が最大焦点距離Fmax に達してしまい、それ以上レーザー光照射角θを増加させると刻印面26bにレーザー光の焦点が合わなくなるため、このときのレーザー光照射角θを最大値θmax に設定する。このように、レーザー光照射角θを、前記最小値θmin よりも大きく、かつ前記最大値θmax よりも小さく設定することにより、隣接する金属エレメント23間の隙間αをレーザー光が通過し難くし、かつ刻印面26bにレーザー光で高精度の刻印を施すことを可能にしながら、刻印領域35の板厚方向Tの長さを確保することができる。
【0026】
なお、上述した実施の形態では、レーザー光照射角θがゼロのときにレーザー光の光源34から刻印面26bまでの距離を最小焦点距離Fmin に設定しているが、レーザー光照射角θが前記最小値θmin のときにレーザー光の光源34から刻印面26bまでの距離を最小焦点距離Fmin に設定しても良い。このようにすれば、刻印領域35の板厚方向Tの長さを更に拡大することができる。
【0027】
図6に示す形状に金属ベルト15を固定すると、レーザー光による金属ベルト15の刻印を好適に行うことができる。図6(A)は金属ベルト15を陸上競技のトラック形に固定するものであり、その一つの直線部分を刻印領域35とするものである。図6(B)は陸上競技のトラック形を更に細長くしたもので、その一つの直線部分の一部を刻印領域35とするものである。図6(C)は金属ベルト15を円形に固定するものである。この場合、刻印領域35は直線状ではなく円弧状となるが、円弧の曲率半径は充分に大きいので支障はない。
【0028】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0029】
例えば、実施の形態の金属エレメント23は隙間αを形成する凹部26aを備えているが、凹部26aのない金属エレメント23間にも若干の隙間が形成されるため、本発明は凹部26aのない金属エレメント23に対しても適用可能である。
【0030】
また実施の形態では金属エレメント23のイヤー部26の刻印面26bに刻印を施しているが、金属エレメント23の外周面のうちの任意の面を刻印面とすることができる。
【0031】
また実施の形態では刻印面26bに製造番号を刻印しているが、刻印面26bに任意の文字、図形、記号等を刻印することができる。
【符号の説明】
【0032】
15 金属ベルト
22 金属リング
23 金属エレメント
26b 刻印面
34 光源
N 刻印面に直交する法線方向
T エレメント板厚方向
θ レーザー光照射角
θmin レーザー光照射角の最小値
θmax レーザー光照射角の最大値
min 最小焦点距離
max 最大焦点距離
α 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6