【解決手段】 回転体に動力伝達方向が互いに逆向きの第1一方向クラッチおよび第2一方向クラッチを設け、第1一方向クラッチ及び第2一方向クラッチを介して動力軸に挿脱自在に設けた回転体の動力伝達構造であって、第1一方向クラッチおよび第2一方向クラッチの少なくともいずれか1つの一方向クラッチは、所定量移動することを許すように前記回転体に設けられていることを特徴とする回転体の動力伝達構造とすることで、課題を解決した。
回転体に動力伝達方向が互いに逆向きの第1一方向クラッチおよび第2一方向クラッチを設け、第1一方向クラッチ及び第2一方向クラッチを介して動力軸に挿脱自在に設けた回転体の動力伝達構造であって、
第1一方向クラッチおよび第2一方向クラッチの少なくともいずれか1つの一方向クラッチは、所定量移動することを許すように前記回転体に設けられていることを特徴とする回転体の動力伝達構造。
第1一方向クラッチおよび第2一方向クラッチの少なくともいずれか1つの前記一方向クラッチは、所定量移動することを許すように一方向クラッチ保持部材を介して前記回転体に設けられた保持部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の回転体の動力伝達構造。
前記所定量移動する方向が、少なくとも動力軸と直交する平面内方向、動力軸方向、動力軸周方向および動力軸方向に対して斜めになる方向のいずれか1つの方向である請求項1〜3のいずれか1項に記載の動力伝達構造。
前記一方向クラッチ保持部材の外周部の適宜な箇所の前記凹部および/または前記回転体に設けられた前記保持部の適宜な箇所の嵌合凸部の側壁に緩衝材を設けた請求項2〜4のいずれか1項に記載の動力伝達構造。
【背景技術】
【0002】
プロペラファン、ターボファン、シロッコファン、グリスフィルタなどの回転体を動力軸に取り付ける時、様々な方式の動力伝達構造(回り止め)が工夫されてきた。
その一つは、特許文献1の
図4に記載されているように、動力軸にDカットを付ける方式であるが、回転体であるファンを取り付ける際に、動力軸のDカットに合わせて、動力軸の周方向に位置を揃えないと取り付けることができず、その位置合わせに手間を要していた。
【0003】
また、特許文献2の
図5や段落0016で説明されているように、回転軸に一対の突出部10aを設け、突出部10aをファンの回転軸挿入孔8bに挿入するようなものも知られている。
これも、位置合わせが容易でないし、取り付けたとしても構造上微小なガタがあるために、異音や騒音の原因となることが多い。異音や騒音を防ぐために突出部10aとファンの回転軸挿入孔8bとの嵌合をきつくすると、さらに位置合わせが容易でなくなる上に、抜けなくなるという不具合が発生する。
【0004】
他方、正逆一対の一方向クラッチを設け動力軸に装着することで、どちらの回転方向へも駆動力を伝えることのできる駆動連結方式が特許文献3に記載のように古くから知られている。この方式は、いままで、レンジフードの分野に用いられたことのない動力伝達構造である。そして、特許文献1や特許文献2のように特定の方向からのみ回転体を取り付けることができるようなものではなく、回転体と動力軸とは位置合わせすることなく取り付けることができるという利点を有する。
【0005】
しかしながら、この特許文献3の方式は、定期的な清掃のため、シロッコファンやグリスフィルタなどの回転体を動力軸から取り外す必要のあるレンジフードにおいては不向きである。
なぜなら、正逆一対の一方向クラッチは、取り付けて駆動連結させてしまうと、一方向クラッチを構成するコロ等の部材が、強固に動力軸に噛み合ってしまう。例えば、正方向の一方向クラッチが一つだけなら、逆方向に回転させることで、噛み合いが緩むが、特許文献3のように正逆一対の一方向クラッチで駆動連結を図ると、正方向、逆方向のいずれの方向にも回すことができず、動力軸と噛み合いが取れぬまま、動力軸を抜き難くしていた。
しかも、動力軸に一方向クラッチを挿通するには正確に一方向クラッチのセンターに合わせて動力軸を挿通する必要があり、位置合わせが容易でない。その上、動力軸に最初の一方向クラッチを挿通すると、最初の一方向クラッチが許容する回転方向にしか動力軸を回せないし、動力軸を前後左右に動かすこともできない。このため、2番目の一方向クラッチに動力軸を挿通することは、さらに難しいものとしていた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施例1>
本発明に係るレンジフード1について説明する。
図1は、実施例1に係るレンジフード1の平面図、正面図、底面図、右側面図、右上から見た斜視図、右下から見た斜視図、
図2は、実施例1におけるレンジフード1の整流板7を取り外した時の右下から見た斜視図、
図3は、実施例1に係るレンジフードの断面図(
図1(A)のI−I断面)を示す。
【0012】
レンジフード1は、下方または周囲で行われる調理によって発生する湯気や油煙等を捕集するための、上方に凹状の内面パネル5を内面に有する薄型のフード2を有する。フード2は、上部後方に位置する連通口6付近で、排気ダクト(図示せず)に接続された送風機ボックス3と連結される。送風機ボックス3は、内部にシロッコファンであり空気の流れを発生させるファン4を有する。従って、ファン4が稼働すると連通口6は負圧となり、内面パネル5の下方の空気は連通口6を通して吸入され、排気ダクトを通して外部に排出される。
【0013】
連通口6には、空気の流れを通過させる孔を有する円盤状のグリスフィルタ8と、グリスフィルタ8の円盤の中心に動力軸20を着脱ユニット10により連結し、グリスフィルタ8を回転させるモータ81が設けられる。
【0014】
内面パネル5の下方の空気は、調理によって発生する油煙等を含んでおり、ファン4が稼働すると、連通口6に存在する、即ちファン4が発生させた空気の流れの流路上であってファン4より上流側に位置するグリスフィルタ8の孔に吸引され、その孔を通過することになる。グリスフィルタ8は、グリスフィルタのモータ81により回転可能に設けられており、レンジフード1が稼働(通常運転)すると、ファン4が空気の流れを発生させると共にグリスフィルタのモータ81がグリスフィルタ8を回転させる。グリスフィルタ8が回転すると、空気は孔を通って通過するが、油分はグリスフィルタ8の表面に衝突する。レンジフード1は、グリスフィルタ8を回転させることにより、空気に含まれる油分を捕集する。
【0015】
グリスフィルタ8と動力軸20を連結する着脱ユニット10は、整流板7の直上に位置するので、作業者が、グリスフィルタ8を洗浄等するために動力軸20から取り外す場合は、まず整流板7を取り外し、
図2に示すようにグリスフィルタ8を露出させてから着脱ユニット10を操作する。
レンジフード1の構造は、一例を示すものであって、これに限るものではない。
【0016】
(一方向クラッチ取付構造)
図4は、実施例1に係る動力伝達構造を示す分解図である。ファンボス40には、第1一方向クラッチ取付部41および第2一方向クラッチ保持部42が設けられている。ファンボス40は、回転体(ファン4)に設けられた保持部に相当する部材であり、第1一方向クラッチ50および第2一方向クラッチ60がファンボス40に保持される。
第1一方向クラッチ50および第2一方向クラッチ60には、それぞれ動力軸20と接触し駆動連結するためのコロ52およびコロ62が一方向クラッチの構成部品として設けられている。
ファンボス40に設けられた第1一方向クラッチ取付部41の内周面には、ファンのモータ9駆動時の動力軸20の回転方向である正方向に動力伝達可能な第1一方向クラッチ50を固定するための第1一方向クラッチ取付キー411が複数設けられている。この第1一方向クラッチ取付キー411は、第1一方向クラッチ50の外周部に設けられた第1一方向クラッチキー溝51にはめ込まれ、第1一方向クラッチ50がファンボス40と一体化する。
このため、ファンのモータ9の動力軸20が回転を開始すると、直ちに正方向に動力伝達する第1一方向クラッチ50と駆動連結され、ファン4が回転し始める。
【0017】
次いで、逆方向に動力伝達可能な第2一方向クラッチ60の取付について説明する。
ファン4のファンボス40に設けられた第2一方向クラッチ保持部42の内周面には、保持部材取付キー421が設けられている。第2一方向クラッチ保持部材65の外周に複数の凹部である保持部材キー溝652が設けられている。ファンボス40の保持部材取付キー421と第2一方向クラッチ保持部材65の保持部材キー溝652は、クリアランスをもって嵌ることでファンボス40と第2一方向クラッチ保持部材65が緩く取り付けられる。この点については、詳細な説明を後述する。
さらに、第2一方向クラッチ保持部材65には、第2一方向クラッチ保持孔654が設けられている。その内周面には、第2一方向クラッチ60の外周面に設けられた第2一方向クラッチキー溝61と嵌合する第2一方向クラッチ取付キー651が設けられており、第2一方向クラッチ保持部材65と第2一方向クラッチ60はしっかりと嵌合する。
【0018】
第1一方向クラッチ50および第2一方向クラッチ60が保持部であるファンボス40に嵌装された後、クラッチ抜け止めワッシャ70がファンボス40に設けられたクラッチ抜け止めワッシャ取付部43に装着される。
さらに、そのクラッチ抜け止めワッシャ70の上からこれを押さえるように、止め輪80が設けられ、止め輪80がファンボス40の止め輪取付部44にはめ込まれることで、両一方向クラッチ(50、60)の取付が完了する。
【0019】
(第1一方向クラッチと第2一方向クラッチの動力伝達)
レンジフード1において、ファンのモータ9の動力軸20は、排気専用の仕様となっており、ファン4を正方向にしか回転しない。ファンのモータ9のスイッチを入れると、動力軸20は回転を始め直ちに、第1一方向クラッチ50と駆動連結する。その後、ファンのモータ9を停止させたり高回転速度から、低回転速度に切り替えたりすると、第1一方向クラッチ50と動力軸20との駆動連結は切れる。
正方向に駆動連結する第1一方向クラッチ50だけ設けると、ファン4を停止操作したときや低回転速度にしたときに、第1一方向クラッチ50は、しっかり漕いでいた自転車のペダルをゆっくり回転させたり、ペダルを止めたときのように、駆動連結が切れ、なかなか減速しない。
本発明では、その時、逆方向に駆動連結する第2一方向クラッチ60と動力軸20が駆動連結するため、第1一方向クラッチ50のみで駆動連結する場合よりも速く、作業者の操作したとおりにファン4の回転速度が落ちる。
【0020】
(第2一方向クラッチと保持部材の取り付け関係)
第2一方向クラッチ60と第2一方向クラッチ保持部材65との取り付け関係を示す拡大図である
図5を参照されたい。第2一方向クラッチ60の高さはaであり、第2一方向クラッチ保持部材65の高さもaである。そして、保持部材取付キー421の頂部4211と底部の高さもaである。
高さが同じため、第2一方向クラッチ60は、第2一方向クラッチ保持孔654から飛び出すことなく、ぴったりと第2一方向クラッチ保持部材65に嵌る。
他方、第2一方向クラッチ保持部材65の外周部に設けられた凹部である保持部材キー溝652の幅dは、ファンボス40に設けられた保持部材取付キー421の幅cより大きく作られており、所定量(d−c)だけクリアランスが設けられている。このため、動力軸20の周方向に第2一方向クラッチ60がクリアランス分だけ意図的に動く状態となっている。
【0021】
(動力軸へのファンの取り付け)
第2一方向クラッチ保持部42の幅はbであり、第2一方向クラッチ保持部材65および第2一方向クラッチ60の幅はaとの関係はa<bとなるように設計されている。つまり、クラッチ抜け止めワッシャ70と第2一方向クラッチ保持部材65に取り付けられた第2一方向クラッチ60との間には、(b−a)の間隙90が存在する。(
図6参照)
そのため、第2一方向クラッチ保持部材65と一体になった第2一方向クラッチ60は、動力軸20の軸方向に間隙90の距離分、所定量(b−a)だけ動くように、意図的にクリアランスが設けられている。
図6は、実施例1に係る動力軸に装着したファンの部分断面図であり、ファン4は一部しか図示されていない。モータ側から止め輪80、クラッチ抜け止めワッシャ70、間隙90、第2一方向クラッチ保持部材65に保持された第2一方向クラッチ60、第1一方向クラッチ50の順で設けられていることが分かる。
間隙90により、第2一方向クラッチ60が動力軸20の軸方向にも動き得るようになっていることが分かるであろう。
【0022】
加えて、第2一方向クラッチ保持部材65の最大径eと第2一方向クラッチ保持部42の最大径fとの間には、e<fとなるように設計されている。これにより、所定量(f−e)だけ、第2一方向クラッチ保持部材65は、第2一方向クラッチ保持部42内で自由に動くことを許される。この動きは、動力軸と直交する平面内方向の動きとなる。
【0023】
上述したように、実施例1では、第2一方向クラッチ保持部材65と一体になった第2一方向クラッチ60は、動力軸と直交する平面内方向、動力軸方向、動力軸周方向および動力軸方向に対して斜めになる方向のすべての方向へ所定量、移動可能なように構成されている。
動力軸方向をz軸方向とすると、動力軸方向に所定量(b−a)だけ動くことは、z軸方向へ動くことを意味する。
動力軸と直交する平面内方向へ所定量(f−e)動くことは、x軸方向およびy軸方向へ動くことを意味する。
【0024】
それによって、動力軸方向に対して斜めになる方向に所定量動くことになる。つまり、動力軸方向に対して斜めになる方向に所定量動くことは、x軸回り、y軸回りにも動くことを意味する。
動力軸周方向に所定量(d−c)だけ動くことは、z軸回りに動くことを意味する。
【0025】
以上総合すると、第2一方向クラッチ60は、x軸方向、y軸方向、z軸方向に所定量動けるため、第2一方向クラッチ60が移動できる空間は第2一方向クラッチ60より一回り大きい円筒状の空間になる。その中であれば、第2一方向クラッチ60は、自由に移動できまた、向きを変えることができるため、第2一方向クラッチ60の上面および底面を斜めに傾斜させる、すなわち、動力軸方向に対して斜めになる方向へも動かすことができる。
第2一方向クラッチ60が動力軸方向に対して斜めになる方向に動くことで、より動力軸20に入れやすくなる。
【0026】
また、上述の実施態様では、所定量動くために空間を設ける態様であった。
空間を設けることなく、直接第2一方向クラッチ60を動力軸に対して斜めになる方向に動かすようにも構成できる。
例えば、球面滑り軸受けをファンボス40内に設け、内輪外周面の球面と外輪内周面に互いに嵌る回り止めを設けて内輪が回転するのを止め、外輪内周面に対して内輪外周面の球面が動力軸方向に対して斜めになる方向に動かすことができるように構成し、該内輪の内側に第2一方向クラッチ60をはめ込んでもよい。
【0027】
ファン4を動力軸20に装着する際には、ファン4を持ち、装着時に最もファンのモータ9側に位置する第2一方向クラッチ60を動力軸20に挿通する。第2一方向クラッチ60は、自由に向きを変えて所定量移動することができるため、動力軸20に入れやすくなっている。
次いで、第1一方向クラッチ50に動力軸20が挿通されることとなるが、前述したように、第2一方向クラッチ60は、向きを自由に変えて所定量移動することができ、第1一方向クラッチ50のセンターへ向けて取り付けることが非常に簡単にできる。
【0028】
実施例1においては、前述したように動力軸20に最初に挿入される第2一方向クラッチ60を所定量移動することを許すようにしたが、第1一方向クラッチ50を所定量移動するようにすることを妨げるものではない。この場合、第2一方向クラッチ60のセンターに合わせて動力軸20を挿入した後、第1一方向クラッチ50へ挿入しようとしても、第1一方向クラッチ50の構成部品であるコロ52の端部が動力軸20当たることがあるため、入れにくくなっている。第1一方向クラッチ50が所定量移動するように構成されているため、動力軸20を挿入すると第1一方向クラッチ50に自然と動力軸20を受け入れるようになる。
【0029】
前述したクリアランスは、第2一方向クラッチ60が動力軸20と駆動連結する際に影響を与えない。第2一方向クラッチ60が動力軸20に駆動連結すると、ファンボス40に設けられた保持部材取付キー421と第2一方向クラッチ保持部材65の外周部に設けられた凹部(保持部材キー溝652)の側壁がクリアランスの分だけ回動し当接し駆動力により押し付けられるため、その後は動くことはなくなるからである。
【0030】
(動力軸と両一方向クラッチの噛み込み)
(第2一方向クラッチ保持部材に設けられた緩衝材)
図5には、第2一方向クラッチ保持部材65の保持部材キー溝652の側壁のところどころに、緩衝材653が設けられていることが図示されている。
前述したように、正方向の第1一方向クラッチ50が噛み合った動力軸20から動力軸20を抜くには、逆方向に動力軸20を回転させ噛み合いを緩めて抜く。同様に、逆方向の第2一方向クラッチ60を動力軸20から抜くには、正方向に動力軸を回転させる必要がある。
ところが、ファン4のファンボス40に設けられた第1一方向クラッチ50および第2一方向クラッチ60の双方が動力軸20を強固に噛み合って、動力軸20を正逆どちらの方向にも回転できなくなることがある。このような状態になると、動力軸20をファン4から抜くことが困難となる。
このような噛み込みは、瞬時に強いトルクが一方向クラッチにかかることが原因である。噛み込みを防ぐために、内部に第2一方向クラッチ60が取り付けられた第2一方向クラッチ保持部材65において、保持部材キー溝652の側壁に緩衝材653を設けた。第2一方向クラッチ60に、瞬時に強いトルクがかかっても、緩衝材653にファンボス40に設けられた保持部材取付キー421が当たり、その衝撃を吸収し噛み込みを防ぐことができる。
さらに、第2一方向クラッチ保持部材65と一体になった第2一方向クラッチ60は、前述したように、動力軸20の周方向に所定量(d−c)動くクリアランスが設けられている。第2一方向クラッチ60が駆動連結した際に、第2一方向クラッチ保持部材65はクリアランスの分だけ回動し、保持部材キー溝652の側壁にファンボス40に設けられた保持部材取付キー421が当たる際、衝撃音が発生することがある。緩衝材653には、この衝撃音の発生を防ぐ作用もある。
【0031】
実施例1では、ファンのモータ9の動力伝達する正方向に駆動連結する第1一方向クラッチ50に比べて、大きなトルクがかかりにくい逆方向に駆動連結する第2一方向クラッチ60側に、緩衝材653を取り付けた。
しかし、正方向に駆動連結する第1一方向クラッチ50に緩衝材を設けることを妨げるものではない。第1一方向クラッチ50の方が、大きなトルクがかかるため噛み込みが起きやすく、第1方向クラッチ50側に緩衝材を設けることにも利点がある。
いずれにせよ、少なくとも一つの一方向クラッチが強く動力軸20に噛み合うことが無くなれば、ファン4を動力軸20から抜きやすくなる。
【0032】
<実施例1の変形例1>
実施例1においては、ファンボス40の内周面に保持部材取付キー421が設けられ、第2一方向クラッチ保持部材65の保持部材キー溝652にはめ込むことでファンボス40と第2一方向クラッチ保持部材65が緩く取り付けられるようにした態様であった。
この態様だと、金属製のファンボス40の保持部材取付キー421と緩衝材が取り付けられた第2一方向クラッチ保持部材65の保持部材キー溝652が衝突することとなっていた。そこで、衝撃吸収性能を高めるため、金属製のファンボス40に直接第2一方向クラッチ保持部材65をはめ込むのではなく、内周面に保持部材取付キー421が設けられた、樹脂製の環状部材をファンボス40にはめ込んでもよい。
このようにすると、外から順に金属製のファンボス40、樹脂製の環状部材、緩衝材を配した第2一方向クラッチ保持部材65、第2一方向クラッチ60の順に部材が並ぶことになる。また、逆方向には大きなトルクがかかることがないため、第2一方向クラッチ保持部材65を樹脂製とすることもできる。
【0033】
<実施例1の変形例2>
実施例1においては、第2一方向クラッチ保持部材65を介して第2一方向クラッチ60をファンボス40の第2一方向クラッチ保持部42に嵌め込んでいた。変形例2として、第2一方向クラッチ保持部材65を省き、直接第2一方向クラッチ60を所定量移動することを許すように第2一方向クラッチ保持部42に設けるようにしてもよい。
【0034】
<実施例2>
図7は、実施例2に係る動力伝達構造を示す分解図である。ファンボス40に対する第1一方向クラッチ50の取付は、実施例1と同じであるが、第2一方向クラッチ60の取り付けが、実施例1と異なる。ファンボス40の内周面には、柔軟な突起が多数設けられた柔軟な材料で形成された第2一方向クラッチ保持部材66がはめ込まれている。前記柔軟な材料で形成された第2一方向クラッチ保持部材66の内周面には、第2一方向クラッチ取付キー651が設けられており、第2一方向クラッチ60の外周面に設けられた第2一方向クラッチキー溝61がはめ込まれることで第2一方向クラッチ60が固着される。
柔軟な材料で形成された第2一方向クラッチ保持部材66で、第2一方向クラッチ60が保持されているため、第2一方向クラッチ60は、所定量移動することを許されるようになる。
<実施例2の変形例>
柔軟な材料で形成された第2一方向クラッチ保持部材66は、逆方向の第2一方向クラッチ60を駆動連結でき、かつ、所定量移動することを許すような柔軟な材料または構造であればどのようなものであってもかまわない。
例えば、スポンジのように独立気泡を有する材料で形成されていてもよい。
【0035】
以上の実施例および変形例に示したように、動力伝達方向が互いに逆向きの第1一方向クラッチ50および第2一方向クラッチ60を設けた動力伝達構造であって、着脱が容易な新規な動力伝達構造が提供される。