【解決手段】 筒部3の一方の端部における外周面には、第1フランジ部5が設けられる。第1フランジ部5の外周部から背面側にわたって止水部材15bが配置される。第1フランジ部5には、周方向に所定の間隔で複数の貫通孔が形成される。孔にはネジ9が挿通される。第1フランジ部5の後方では、ネジ9の外周に空回り防止部材11が配置される。空回り防止部材11は、例えばOリングなどの、リング状の弾性部材である。また、空回り防止部材11のさらに後方には、ネジ9と螺合する係止部材13が設けられる。第1フランジ部5から所定距離離間した位置であって、係止部材13よりも後方には、筒部3の外周面に第2フランジ部7が設けられる。第2フランジ部7の背面側(第1フランジ部5とは逆側)には、止水部材15aが配置される。
前記第1フランジ部の後端部近傍に、前記第1フランジ部の外径よりも大きな径のシーリング材規制部が設けられ、前記シーリング材規制部の前方であって、前記第1フランジ部の外周部がシーリング材の充填部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁部貫通部材。
前記止水構造は、前記第1フランジ部の外周部に配置された第2止水部材であり、前記第2止水部材が、前記第1貫通孔の内面に押圧されることを特徴とする請求項6記載の壁部貫通部材の固定構造。
前記ストッパの先端側であって、前記第1コアカッタの外周に、前記第1コアカッタに対して自由に回転可能な保護部材が配置されることを特徴とする請求項10又は請求項11記載の壁部貫通部材の固定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような壁部貫通構造は、前述した木板表面の透湿防水シートとの止水性を確保するため、フランジ部の外周部に防水テープなどが貼り付けられる。また、外壁部との隙間には、コーキング材などのシール部材で塞がれる。このため、外壁部を設置後に、新たに貫通孔を追加しようとすると、外壁部を一度取り外して、壁部貫通部材を配置し、防水テープを貼り付けた後、再度外壁部を設置する必要がある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、外壁部を取り外すことなく、木造構造物の壁部に設置することが可能な壁部貫通部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、筒部と、前記筒部の一方の端部近傍における外周面に設けられる第1フランジ部と、前記第1フランジ部を前方から貫通するネジと、前記第1フランジ部の後方で前記ネジの外周に配置される空回り防止部材と、前記空回り防止部材の後方で前記ネジと螺合する係止部材と、前記第1フランジ部から所定距離離間した位置であって、前記係止部材よりも後方に、前記筒部の外周面に設けられる第2フランジ部と、前記第2フランジ部の背面側に配置される第1止水部材と、を具備し、前記第1フランジ部の外周が止水部となり、前記ネジをねじ込むと、前記係止部材は、前記空回り防止部材と接触するまでは、前記ネジにそって移動し、さらに前記ネジをねじ込むと、前記係止部材が、前記空回り防止部材と接触して前記ネジとともに回転可能であり、さらに前記ネジをねじ込むと、前記係止部材は、前記係止部材の一部が前記筒部に接触し、端部が外方に突出した状態で、前記空回り防止部材とともに前記第1フランジ部側に移動可能であることを特徴とする壁部貫通部材である。
【0009】
前記第1止水部材は、前記第2フランジ部の背面であって、前記筒部の外周面から径方向に離れた位置に配置されることが望ましい。
【0010】
前記第1フランジ部の外周から背面にわたって、第2止水部材が配置され、前記第1フランジ部の外周の前記第2止水部材の外径は、前記第2フランジ部よりも外径が大きくてもよい。
【0011】
この場合、前記第1フランジ部の外周部は、前記第2フランジ部の方向に行くにつれて外径が小さくなるテーパ形状であってもよい。
【0012】
前記第1フランジ部の後端部近傍に、前記第1フランジ部の外径よりも大きな径のシーリング材規制部が設けられ、前記シーリング材規制部の前方であって、前記第1フランジ部の外周部がシーリング材の充填部であってもよい。
【0013】
第1の発明によれば、壁部貫通部材の第1フランジ部の前方からネジを回転させることで、外壁部を撤去することなく、容易に、壁部貫通部材を壁部に固定することができる。この際、第2フランジ部の背面の第1止水部材が木板(透湿防水シート)の外面に押圧されるため、木板と壁部貫通部材との止水性を確保することができる。
【0014】
また、外壁の内面に係止部材が押圧され、木板(透湿防水シート)の外面に第1止水部材(第2フランジ部)が押圧されることで、壁部貫通部材が壁部に固定される。このように、係止部材と第1止水部材との距離が広くなるように、両者を押し開くことで、壁部貫通部材が壁部に固定されるため、外壁と木板との間隔が設計に対して多少ずれたとしても、確実に係止部材と第1止水部材を、それぞれ外壁及び木板に押圧させて、止水性を確保することができる。
【0015】
また、第1止水部材が、筒部の外周面から径方向に離れた位置に配置されることで、貫通孔から離れた位置において、透湿防水シートへ第1止水部材を押圧することができる。このようにすることで、貫通孔の軸ずれが生じた場合や、貫通孔近傍において透湿防水シートに損傷がある場合でも確実に止水性を確保することができる。この際、止水性に対して効果の小さい貫通孔近傍において第1止水部材を圧縮させる必要がないため、小さな力でねじによる固定を行うことができる。
【0016】
また、第1フランジ部の外周から背面にわたって第2の止水部材が配置されることで、コーキング材などのシール部材を用いることなく、確実に、外壁部と壁部貫通部材との止水性を確保することができる。
【0017】
この際、第1フランジ部の外周部を、第2フランジ部の方向に行くにつれて外径が小さくなるテーパ形状とすることで、第2止水部材を変形させながら壁部貫通部材を貫通孔へ挿入する際に、挿入が容易となる。
【0018】
また、第1フランジ部の後端部近傍に、シーリング材規制部を設けることで、壁部貫通部材を壁部に固定した後に、シーリング材規制部の前方であって、第1フランジ部の外周部にシーリング材を充填部することができる。この際、シーリング材規制部によって、シーリング材が外壁と木板との隙間に流出することを抑制することができる。
【0019】
第2の発明は、第1の発明にかかる壁部貫通部材が、壁部の貫通孔に固定された壁部貫通部材の固定構造であって、前記壁部は、木板と、前記木板の表面に貼り付けられた透湿防水シートと、前記木板と離間して配置される外壁部と、を具備し、前記外壁部には第1貫通孔が設けられ、前記木板には、前記第1貫通孔と同一軸上に、前記第1貫通孔よりも径の小さな第2貫通孔が設けられ、前記第1フランジ部と前記第1貫通孔との間に止水構造が形成され、前記係止部材が前記第1貫通孔の外周側に張り出し、前記外壁部の内面に押圧されるとともに、前記第1止水部材が、前記木板の外面の前記透湿防水シートに押圧されて、前記壁部貫通部材が前記壁部に固定されることを特徴とする壁部貫通部材の固定構造である。
【0020】
前記止水構造は、前記第1フランジ部の外周部に配置された第2止水部材であり、前記第2止水部材が、前記第1貫通孔の内面に押圧されてもよい。
【0021】
前記止水構造は、前記第1フランジ部と前記第1貫通孔との間に充填されたシーリング材であってもよい。
【0022】
第2の発明によれば、外壁部を撤去することなく施工することが可能な壁部貫通部材の固定構造を得ることができる。
【0023】
また、第1フランジ部の外周から背面にわたって第2の止水部材が配置されることで、シリコーンシーラントなどのシール部材を用いることなく、確実に、外壁部と壁部貫通部材との止水性を確保することができる。
【0024】
また、第1フランジ部の外周からシーリング材を注入することで、シール部材を変形させながら壁部貫通部材を貫通孔に挿入する必要がないため、壁部貫通部材を壁部に容易に挿入することができる。
【0025】
第3の発明は、第1の発明にかかる壁部貫通部材を用いた、壁部の貫通孔への壁部貫通部材の固定方法であって、前記壁部は、木板と、前記木板の表面に貼り付けられた透湿防水シートと、前記木板と離間して配置される外壁部と、を具備し、前記外壁部には第1貫通孔が設けられ、前記木板には、前記第1貫通孔と同一軸上に、前記第1貫通孔よりも径の小さな第2貫通孔が設けられ、前記係止部材が前記筒部の外周面に沿って倒れた状態で、前記外壁部の外側から前記第1貫通孔に前記筒部を挿入するとともに、前記筒部の先端を、前記第2貫通孔に挿入し、前記第1フランジ部の前方から前記ネジを回転させ、前記係止部材を前記空回り防止部材の外周面に接触するまで移動させて、前記係止部材を前記筒部の外方に向け、さらに前記ネジを回転させ、前記係止部材を前記ネジの軸方向に沿って前記第1フランジ部側に移動させ、前記係止部材の一部を前記外壁部の内面に押圧させるとともに、前記第2フランジ部の前記第1止水部材を、前記木板の前記透湿防水シートに押圧させて、前記第1フランジ部と前記第1貫通孔との間に止水構造を形成して前記壁部貫通部材を前記壁部に固定することを特徴とする壁部貫通部材の固定方法である。
【0026】
ドリルによって前記木板と前記外壁部とを貫通するドリル穴をあける工程aと、前記ドリルと略同一径の棒材を軸にした第1コアカッタによって、前記外壁部に前記第1貫通孔を形成する工程bと、前記ドリルと略同一径の棒材を軸にして、前記第1コアカッタよりも径の小さな第2コアカッタによって、前記木板に前記第2貫通孔を形成する工程cと、を具備し、前記工程bにおいて、前記第1コアカッタの先端が前記木板に接触しないように、前記第1コアカッタの先端から所定の位置に、ストッパが配置されてもよい。
【0027】
前記ストッパは、弾性体からなることが望ましい。
【0028】
前記ストッパの先端側であって、前記第1コアカッタの外周に、前記第1コアカッタに対して自由に回転可能な保護部材が配置されてもよい。
【0029】
第3の発明によれば、外壁部を撤去することなく容易に壁部貫通部材を壁部に固定することができる。
【0030】
また、外壁に第1貫通孔を形成する際及び木板に第2貫通孔を形成する際に、軸を合わせるためにドリルではなく棒材を用いることで、第1貫通孔及び第2貫通孔の加工時にドリル穴が広がり、軸ずれが生じることを抑制することができる。また、第1貫通孔を形成する際に、第1コアカッタの外周にストッパを配置することで、第1コアカッタによって木板及び透湿防水シートに傷がつくことを抑制することができる。また、ストッパが弾性体であれば、外壁の外面と接触した際に、外壁の外面に傷等がつくことを抑制することができる。
【0031】
また、ストッパの先端側であって、第1コアカッタの外周に、第1コアカッタに対して自由に回転可能な保護部材を配置することで、ストッパが直接外壁に接触することがないため、ストッパの損傷を抑制することができる。この際、保護部材は第1コアカッタに対して回転可能であるため、保護部材を外壁に押し付けた状態では、外壁と保護部材との摩擦によって、保護部材が第1コアカッタに対して空回りさせることができる。このため、外壁へ傷がつくことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、外壁部を取り外すことなく、木造構造物の壁部に設置することが可能な壁部貫通部材等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明にかかる壁部貫通部材について説明する。
図1は、壁部貫通部材1を示す斜視図、
図2は、壁部貫通部材1を示す平面図、
図3は、
図2のA−A線断面図である。
【0035】
壁部貫通部材1は、主に、筒部3、第1フランジ部5、第2フランジ部7、ネジ9、係止部材13および止水部材15a、15b等から構成される。筒部3は、例えば樹脂製であり、この場合には、筒部3、第1フランジ部5、第2フランジ部7は、一体で構成される。なお、壁部貫通部材1は、金属製であってもよく、筒部3、第1フランジ部5、第2フランジ部7は、別体で構成されて互いに接合されてもよい。
【0036】
筒部3の一方の端部近傍における外周面には、第1フランジ部5が設けられる。第1フランジ部5は、筒部3の軸方向に略垂直に、筒部3の外方に全周にわたって突出する。第1フランジ部5の外周から背面にわたって、第2の止水部材である止水部材15bが配置される。止水部材15bは、例えば、外壁部の凹凸に追従して密着することが可能な水膨張性部材や弾性体である。尚、本願においては、
図2の左側を前方、前面、
図2の右側を後方、後面、背面とする。
【0037】
第1フランジ部5には、周方向に所定の間隔で複数の貫通孔が形成される。孔にはネジ9が挿通される。すなわち、第1フランジ部5の前方から、ネジ9が貫通する。なお、
図1に示す例では、ネジ9は、周方向に3か所に配置されるが、少なくとも2か所以上であれば良く、配置数は限定されない。
【0038】
第1フランジ部5の後方では、ネジ9の外周に空回り防止部材11が配置される。空回り防止部材11は、例えばOリングなどの、リング状の弾性部材である。また、空回り防止部材11のさらに後方には、ネジ9と螺合する係止部材13が設けられる。
【0039】
空回り防止部材11は、ネジ9に対して、係止部材13が空回りすることを防止する部材である。通常状態では、係止部材13は、正面視において、第1フランジ部5の投影面から突出することなく、筒部3と接触するように畳まれる。また、空回り防止部材11は、第1フランジ部5の背面から所定の距離離れた位置に配置され、係止部材13は、その後方に配置される。なお、係止部材13の動作については、詳細を後述する。
【0040】
第1フランジ部5から所定距離離間した位置であって、係止部材13よりも後方には、筒部3の外周面に第2フランジ部7が設けられる。第2フランジ部7は、筒部3の軸方向に略垂直に、筒部3の外方に全周にわたって突出する。なお、第1フランジ部5の外周に設けられた止水部材15bの外径は、第2フランジ部7の外径よりも大きい。
【0041】
第2フランジ部7の背面側(第1フランジ部5とは逆側)には、第1の止水部材である止水部材15aが配置される。止水部材15aは、第2フランジ部7の背面であって、筒部3の外周面から径方向に離れた位置に配置される。すなわち、略環状に配置される止水部材15aの内径は、筒部3の外径よりも十分に大きく、筒部3の外面と止水部材15aとの間には隙間が形成される。止水部材15aは、弾性体や水膨張性部材が好ましく、例えば、ウレタン発泡体である。
【0042】
また、係止部材13の近傍において、筒部3の外面には、第1フランジ部5(止水部材15b)から第2フランジ部7との間に、筒部3の軸方向に沿ってリブ17が設けられる。リブ17は、ネジ9の近傍に配置され、他の部位(例えばネジ9における筒部3の外面)に対して、外径が大きな部位である。なお、リブ17の高さ(半径)は、第2フランジ部7の高さ(半径)と略同等である。すなわち、リブ17は、第2フランジ部7よりも外方には突出しない。なお、ネジ9に沿って、筒部3の外方に配置できれば、リブ17の形状は特に限定されず、また、リブ17に代えて他の部材を配置してもよい。
【0043】
次に、壁部の貫通孔への壁部貫通部材1の固定方法について説明する。最初に、壁部19への貫通孔の形成方法について説明する。
図4(a)に示すように、壁部19は、屋外側に配置される外壁部19aと、室内側に配置される木板19bと、木板19bの表面に貼り付けられる透湿防水シート19cとからなる。外壁部19aと木板19bとは互いに離間して配置される。なお、木板19bは、例えば合板である。
【0044】
まず、
図4(b)に示すように、所定の径のドリル25によって、外壁部19aと木板19bとを貫通するように、同一軸上のドリル穴27a、27bを形成する。
【0045】
次に、
図5(a)に示すように、ドリル25と略同一径の棒材29を軸にした第1コアカッタ31を準備する。この際、棒材29は第1コアカッタ31の先方に突出する。例えば、棒材29の先端から第1コアカッタの先端までの長さは、少なくとも外壁部19aの厚み以上とする。なお、棒材29の外周面には、ドリル25のような刃は形成されない。
【0046】
また、第1コアカッタ31の外周部には、第1コアカッタ31の先端から所定の位置に、ストッパ33が配置されて固定される。ストッパ33は、例えばゴムや発泡体等の弾性部材であることが望ましい。この状態で、
図5(b)に示すように、棒材29をドリル穴27aに挿入して、第1コアカッタ31によって外壁部19aに第1の貫通孔である貫通孔21aを形成する。この際、棒材29がドリル穴27a、27bに挿入されるため、ドリル穴27a、27bと同軸上に貫通孔21aを形成することができる。また、棒材29には刃が形成されないため、ドリル穴27a、27bが切削されて広がることがない。
【0047】
また、ストッパ33が外壁部19aに接するまで第1コアカッタ31を挿入することで、外壁部19aに確実に貫通孔21aを形成することができるとともに、第1コアカッタ31の先端が木板19b(透湿防水シート19c)に接触することがない。すなわち、第1コアカッタ31の先端からストッパ33までの距離は、外壁部19aの厚み以上であり、外壁部19aの外面から木板19bまでの距離よりも短いものとする。ここで、ストッパ33が弾性部材であれば、外壁部19aと接触しても、ストッパ33が軟質であるため、外壁部19aに傷がつくことを抑制することができる。
【0048】
なお、ストッパ33が外壁部19aと接触すると、ストッパ33が損傷する恐れがある。ストッパ33が損傷した場合には、ストッパ33を交換することで、他の位置の穴加工を行うことができるが、これを避けるために、
図6(a)に示すように、保護部材32を用いてもよい。
【0049】
図6(a)に示す例では、ストッパ33の先端側(棒材29の配置される側)であって、第1コアカッタ31の外周に、保護部材32が配置される。保護部材32は、第1コアカッタ31が挿入される孔を有する部材であり、例えば樹脂製や金属製などの表面が平滑な板状部材であることが望ましい。このような部材として、発泡樹脂製の板材を使用することができる。
【0050】
なお、保護部材32の外形は、略円形に限られず、略多角形であってもよい。また、保護部材32の外径(例えば矩形の場合には1辺の長さ)は、ストッパ33の外径以上であることが望ましい。このようにすることで、ストッパ33が、保護部材32の外周側にはみ出すことがなく、確実にストッパ33と外壁部との接触を抑制することができる。但し、保護部材32の外周側にストッパ33の一部がはみ出してもよい。また、
図6(a)の部分拡大断面図に示すように、保護部材32の孔の内径は、第1コアカッタ31の外径よりも大きく、保護部材32と第1コアカッタ31との間には隙間が形成される。このため、保護部材32は、第1コアカッタ31に対して自由に回転可能である。
【0051】
図6(b)に示すように、棒材29をドリル穴27aに挿入して、保護部材32が外壁部19aに接するまで第1コアカッタ31を挿入することで、外壁部19aに確実に貫通孔21aを形成することができる。この際、第1コアカッタ31の先端が木板19b(透湿防水シート19c)に接触することがない。この際、保護部材32は、外壁部19aとの摩擦によって、保護部材32は外壁部19aに対して回転しない。すなわち、保護部材32は、第1コアカッタ31の回転に対して空回りして、保護部材32とストッパ33との間ですべりが生じる。このため、外壁部19aに傷がつくことを抑制することができるとともに、ストッパ33の損傷を抑制することができる。
【0052】
なお、この場合には、ストッパ33は弾性部材である必要はなく、硬質部材であってもよいが、ストッパ33が弾性部材であれば、外壁部19aへ押し付けた際に、衝撃を和らげることができる。このように、保護部材32と外壁部19aとの摩擦係数よりも、ストッパ33と保護部材32との摩擦係数が小さくなるように、ストッパ33の材質を選択することが望ましい。以上のようにして、外壁部19aに確実に貫通孔21aを形成することができるとともに、第1コアカッタ31の先端が木板19b(透湿防水シート19c)に接触することを抑制することができる。
【0053】
外壁部19aに貫通孔21aを形成したら、次に、
図7(a)に示すように、ドリル25と略同一径の棒材29を軸にした第2コアカッタ35を準備する。第2コアカッタ35は、第1コアカッタ31よりも径が小さい。この際、棒材29は第2コアカッタ35の先方に突出する。例えば、棒材29の先端から第2コアカッタの先端までの長さは、少なくとも木板19bの厚み以上とする。
【0054】
この状態で、
図7(b)に示すように、棒材29をドリル穴27bに挿入して、第2コアカッタ35によって木板19b(透湿防水シート19c)に第2の貫通孔である貫通孔21bを形成する。この際、棒材29がドリル穴27bに挿入されるため、ドリル穴27bと同軸上に貫通孔21bを形成することができる。また、棒材29には刃が形成されないため、ドリル穴27bが切削されて広がることがない。
【0055】
以上により、外壁部19aに貫通孔21aが形成され、木板19b(透湿防水シート19c)に、貫通孔21aと同一軸上であって、貫通孔21aよりも径の小さな貫通孔21bを形成することができる。
【0056】
次に、壁部19へ壁部貫通部材1を固定する方法について説明する。
図8は、壁部19へ壁部貫通部材1を挿入した状態を示す図である。第2フランジ部7の外径は、外壁部19aに設けられた貫通孔21aの内径よりも小さい。したがって、外壁部19a側から、壁部貫通部材1を挿入する際、第2フランジ部7は、貫通孔21aを通過可能である。
【0057】
また、第1フランジ部5の外径も、貫通孔21aの内径よりも小さいが、前述したように、第1フランジ部5の外周部には止水部材15bが配置され、止水部材15bの外径は、貫通孔21aの内径よりも大きい。このため、止水部材15bを圧縮変形させながら壁部貫通部材1を壁部19へ押し込むことで、外壁部19aに第1フランジ部5が挿入される。なお、第2フランジ部7の外径は、貫通孔21bの内径よりも大きい。このため、第2フランジ部7が貫通孔21bに挿入されることはない。
【0058】
ここで、第1フランジ部5の外周部の形状を、第2フランジ部7の方向に行くにつれて外径が小さくなるテーパ形状としてもよい。すなわち、止水部材15bを外壁部19aに押し込むにつれて、止水部材15bの外径が徐々に大きくなるようにしてもよい。このようにすることで、第1フランジ部5を貫通孔21aに挿入するのが容易となる。また、止水部材15bは、第1フランジ部5の外周から背面にわたって配置される。例えば、止水部材15bは、第1フランジ部5の外周部から背面にわたって接着や両面テープ等で固定される。このように、第1フランジ部5の背面側に止水部材15bが折り込まれることで、貫通孔21aと止水部材15bとの摩擦等によって、止水部材15bがずれることを抑制することができる。
【0059】
ここで、前述したように、係止部材13が筒部3の外周面に沿って倒れた状態で、外壁部19aの外側から貫通孔21aに筒部3が挿入される。この際、筒部3の先端は貫通孔21bに挿入される。なお、止水部材15aが木板19bの貫通孔21bの周囲の外面(外壁部19a側の面)に接触するまで壁部貫通部材1を挿入すると(又は概ね第1フランジ部5の全体を外壁部19aに挿入すると)、係止部材13は、外壁部19aと木板19bの間に位置する。
【0060】
次に、第1フランジ部5の前方からネジ9を回転させる。
図9(a)は、
図8のB−B線断面における、係止部材13近傍の部分拡大図である。前述したように、壁部貫通部材1を壁部19へ挿入する際には、係止部材13が筒部3の外周面に沿って倒れた状態となる。例えば、係止部材13は、前述したリブ17を包含する外接円から外方にはみ出すことがなく、筒部3を貫通孔21aに挿入する際には、係止部材13と外壁部19aとが干渉することはない。
【0061】
外壁部19aの前面側(第1フランジ部5側)からネジ9を回転させると、係止部材13は、ネジ9の回転に伴い、空回り防止部材11と接触するまでは、ネジ9に沿って外壁部19a側に移動する。この際、係止部材13とネジ9との螺合部における摩擦は、係止部材13の自重よりも小さいため、係止部材13は、回転せず、筒部3に沿って移動する。したがって、
図9(a)に示すように、係止部材13は、畳まれた状態を維持する。
【0062】
さらにネジ9を回転させてねじ込み、係止部材13が空回り防止部材11に接触すると、
図9(b)に示すように、係止部材13は空回り防止部材11によって抵抗を受ける。すなわち、外壁部19a方向への移動が空回り防止部材11によって抵抗を受け、ネジ9に対する係止部材13の回転が規制される。したがって、
図9(b)に示すように、係止部材13は、ネジ9とともに外方に向けて回転する(図中矢印C方向)。
【0063】
この際、係止部材13は、係止部材13の一部が筒部3の外周面(筒部3の外周面に形成されたリブ17)に接触するまで、回転することができる。すなわち、リブ17が、回転規制部として機能する。係止部材13が完全に回転すると、係止部材13の先端が、外側に広がり、正面視において、第1フランジ部5よりも外方に向けて突出する。すなわち、
図10(a)に示すように、係止部材13が貫通孔21aの外周側に張り出す。
【0064】
さらにネジ9を回転させると、係止部材13は筒部3のリブ17と接触して、それ以上回転することができないため、
図10(b)に示すように、係止部材13は空回り防止部材11とともに、端部が外方に突出した状態でネジ9の軸方向に沿って外壁部19a側(第1フランジ部5側)に移動し、やがて係止部材13の一部が外壁部19aの内面と接触する。さらにネジ9をねじ込むと、係止部材13が外壁部19aの内面に押し付けられるとともに(図中矢印D方向)、これを反力として、止水部材15aが木板19b(透湿防水シート19c)の外面(外壁部19a側の面)に押圧される(図中矢印E方向)。
【0065】
図11は、壁部貫通部材1が壁部19に固定された固定構造20を示す図である。このように、第1フランジ部5の外周部に設けられた止水部材15bが、外壁部19aの内面に押圧され、外壁部19aの内面に密着して止水される。また、この際、第2フランジ部7の背面に設けられた止水部材15aが、木板19b(透湿防水シート19c)の外面に押圧される。すなわち、止水部材15aが変形し、木板19b(透湿防水シート19c)の外面に密着する。
【0066】
この際、止水部材15aは、貫通孔21bの外周部であって。貫通孔21bの縁部から離れた位置で、木板19b(透湿防水シート19c)に密着する。このため、貫通孔21bの軸ずれが生じた場合や、貫通孔21b形成時に、縁部近傍の透湿防水シート19cが損傷した場合でも、それらの影響を受けずに、確実に止水部材15aを木板19b(透湿防水シート19c)の外面に密着させることができる。また、止水部材15aを第2フランジ部7の背面全体に形成する場合と比較して、止水部材15aの変形抵抗を小さくすることができるため、ネジ9を締め込む際の抵抗を小さくすることができる。
【0067】
以上の操作を、全てのネジ9に対して行うことで、壁部貫通部材1(止水部材15a等)が壁部19に固定され、
図11に示すように、壁部貫通部材1の壁部19への固定構造20を得ることができる。この後、壁部貫通部材1に配管等を挿通することで、施工が完了する。
【0068】
以上説明したように、本実施の形態によれば、壁部19に壁部貫通部材1を取り付ける際に、壁部19の前方側からネジ9を締めることによって、壁部19に壁部貫通部材1が固定される。このため、壁部19の前面と後面とで作業を行う必要がなく、取り付けが容易である。特に、外壁部19aを撤去することなく、内部の木板19b(透湿防水シート19c)と壁部貫通部材1との間の止水性を確保することができるため、木造構造体に対して、容易に壁部貫通部材1を固定することができる。
【0069】
また、係止部材13と止水部材15a(第2フランジ部7)との距離を押し広げることで壁部19へ壁部貫通部材1を固定するため、外壁部19aと木板19bとの距離が多少変動しても、確実に壁部貫通部材1を壁部19へ固定することができるとともに、止水部材15aを木板19bへ確実に密着させることができる。
【0070】
また、空回り防止部材11が設けられることで、係止部材13を確実に外方に向けて回転させることができる。なお、壁部貫通部材1を取り外す際には、ネジ9を逆に回転させると、係止部材13は畳まれた状態に回転して、後方に移動する。壁部貫通部材1を壁部19から取り出した後、空回り防止部材11の位置を元の位置に戻すことで、再度使用することができる。
【0071】
次に、第2の実施形態について説明する。
図12(a)は、壁部貫通部材1aを壁部19へ固定する工程を示す図である。なお、以下の説明において、壁部貫通部材1及び固定構造20と同一の機能を奏する構成については、
図1〜
図11と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、第1フランジ部5の外周及び背面には、止水部材15bが設けられない。また、第1フランジ部5の後端部近傍に、第1フランジ部5の外径よりも大きな径のシーリング材規制部23が設けられる。なお、シーリング材規制部23の外径は、貫通孔21aの内径よりもわずかに小さい。
【0073】
前述したのと同様の手順で壁部貫通部材1aを壁部19へ取り付けると、第1フランジ部5と貫通孔21aの内面との間には隙間が形成される。
図12(b)に示すように、この隙間に、シーリング材24を充填することで、外壁部19aと壁部貫通部材1aとの間の止水性を確保することができる。すなわち、シーリング材規制部23の前方であって、第1フランジ部5の外周部がシーリング材24の充填部となる。第1フランジ部5と貫通孔21aとの間のシーリング材24が固化することで、壁部貫通部材1aの固定構造20aを得ることができる。
【0074】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、外壁部19aと第1フランジ部5との止水は、外壁部19aの外面側から行うことができるため、止水部材15bに代えて、従来のようなシーリング材24を用いてもよい。このように、第1フランジ部5の外周が外壁部19aとの止水部となれば、第1フランジ部5と貫通孔21aとの間に形成される止水構造は、止水部材15bのような構成であってもよいし、シーリング材24であってもよい。
【0075】
以上添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。