特開2020-200973(P2020-200973A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020200973-火力調節装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-200973(P2020-200973A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】火力調節装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 1/00 20060101AFI20201120BHJP
【FI】
   F23N1/00 103C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2019-106692(P2019-106692)
(22)【出願日】2019年6月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】柘植 真吾
【テーマコード(参考)】
3K068
【Fターム(参考)】
3K068FA02
3K068FB01
3K068FC06
3K068GA02
(57)【要約】
【課題】バーナ用のノズル1へのガス供給路に介設された流量調節弁2と、当該ガス供給路に流量調節弁の上流側に位置して介設されたガバナ3とを備える火力調節装置であって、ガバナ3は、二次圧室32の弁座33とは反対側の端面を覆うダイヤフラム34と、弁座33に形成した弁孔33aの開度を可変する、ダイヤフラム34に連結されたガバナバルブ36とを有し、二次圧と背圧(ダイヤフラム背面側の背圧室35内の圧力)との差圧を所定の設定圧に調圧するように構成されるものにおいて、強火力時の燃焼不良を防止できるようにする。
【解決手段】背圧室35を流量調節弁2とノズル1との間のガス供給路の部分に連通させる。ノズル1に供給されるガス圧であるノズル圧が背圧となり、二次圧とノズル圧との差圧が設定圧になるようにガバナ3で調圧される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナ用のノズルへのガス供給路に介設された流量調節弁と、当該ガス供給路に流量調節弁の上流側に位置して介設されたガバナとを備える火力調節装置であって、ガバナは、上流側の一次圧室と、流量調節弁に連通する下流側の二次圧室と、一次圧室と二次圧室との間の弁座と、二次圧室の弁座とは反対側の端面を覆うダイヤフラムと、二次圧室に対しダイヤフラムで仕切られた背圧室と、弁座に形成した弁孔の開度を可変する、ダイヤフラムに連結されたガバナバルブとを有し、二次圧室内のガス圧である二次圧と背圧室内の圧力である背圧との差圧を所定の設定圧に調圧するように構成されるものにおいて、
背圧室は、流量調節弁とノズルとの間のガス供給路の部分に連通され、ノズルに供給されるガス圧であるノズル圧が背圧になることを特徴とする火力調節装置。
【請求項2】
前記設定圧は、前記一次圧室に供給されるガス圧である一次圧の予想される変動範囲の下限圧以下に設定されることを特徴とする請求項1記載の火力調節装置。
【請求項3】
前記設定圧を可変設定自在とし、使用する燃料ガスのウォッベ指数が高くなるほど設定圧を低く設定することを特徴とする請求項1又は2記載の火力調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナ用のノズルへのガス供給路に介設された流量調節弁と、当該ガス供給路に流量調節弁の上流側に位置して介設されたガバナとを備える火力調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の火力調節装置において、ガバナは、上流側の一次圧室と、流量調節弁に連通する下流側の二次圧室と、一次圧室と二次圧室との間の弁座と、二次圧室の弁座とは反対側の端面を覆うダイヤフラムと、二次圧室に対しダイヤフラムで仕切られた背圧室と、弁座に形成した弁孔の開度を可変する、ダイヤフラムに連結されたガバナバルブとを有し、二次圧室内のガス圧である二次圧と背圧室内の圧力である背圧との差圧を所定の設定圧に調圧するように構成されている(例えば、特許文献1、2参照)。ここで、背圧室は大気開放されていて、背圧は大気圧になる。
【0003】
このものでは、一次圧室内のガス圧である一次圧が変動しても、流量調節弁に供給される二次圧は設定圧に調圧される。そのため、ノズルに供給されるガス圧であるノズル圧、即ち、ノズルからの噴出ガス流量(バーナの火力)を流量調節弁により一次圧の変動の影響を受けずに調節することができる。
【0004】
但し、一次圧の変動で、一次圧が設定圧を下回ると、ガバナバルブが全開となって二次圧が一次圧と等しくなり、二次圧を設定圧に調圧できなくなる。そこで、従来は、設定圧を一次圧の予想される変動範囲の下限圧以下に設定している。そのため、強火力時に、流量調節弁を全開状態にすることで、ノズル圧が二次圧、即ち、設定圧に昇圧しても、設定圧自体が低いため、ノズルからのガス噴出速度が十分に上がらず、エゼクタ吸引される一次空気量が不足してガスリッチ状態になり、燃焼不良を生ずることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−60898号公報(図4
【特許文献2】特開2004−340432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、強火力時の燃焼不良を防止できるようにした火力調節装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナ用のノズルへのガス供給路に介設された流量調節弁と、当該ガス供給路に流量調節弁の上流側に位置して介設されたガバナとを備える火力調節装置であって、ガバナは、上流側の一次圧室と、流量調節弁に連通する下流側の二次圧室と、一次圧室と二次圧室との間の弁座と、二次圧室の弁座とは反対側の端面を覆うダイヤフラムと、二次圧室に対しダイヤフラムで仕切られた背圧室と、弁座に形成した弁孔の開度を可変する、ダイヤフラムに連結されたガバナバルブとを有し、二次圧室内のガス圧である二次圧と背圧室内の圧力である背圧との差圧を所定の設定圧に調圧するように構成されるものにおいて、背圧室は、流量調節弁とノズルとの間のガス供給路の部分に連通され、ノズルに供給されるガス圧であるノズル圧が背圧になることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ガバナにより二次圧とノズル圧との差圧、即ち、流量調節弁で生ずる圧力損失が設定圧になるように調圧される。従って、一次圧室に供給されるガス圧である一次圧が変動しても、流量調節弁を通過するガス流量が当該弁の開度に応じた一定量(設定圧の圧力損失を生ずる量)になるようにガバナの調圧機能が発揮され、一次圧の変動によるバーナの火力変動を低減できる。更に、強火力時には、流量調節弁を全開状態にすることで二次圧とノズル圧との差圧が零になるため、ガバナの調圧機能が発揮されずに、ガバナバルブが全開状態となり、一次圧がそのままノズルに供給される。従って、強火力時に、ノズル圧が不足せず、エゼクタ吸引される一次空気量を適正に確保でき、燃焼不良は生じない。
【0009】
また、本発明において、設定圧は、一次圧の予想される変動範囲の下限圧以下に設定されることが望ましい。これによれば、ガバナの調圧機能が発揮される弱、中火力時のノズル圧が、一次圧の変動に拘わらず安定し、失火などの不具合を生じない。
【0010】
更に、本発明においては、設定圧を可変設定自在とし、使用する燃料ガスのウォッベ指数が高くなるほど設定圧を低くすることが望ましい。ここで、燃料ガスのウォッベ指数が高くなるほどノズル圧を全体的に低くする必要がある。ノズル圧を全体的に変更するために、流量調節弁を交換したのではコスト的に不利である。上記の如く設定圧を可変設定自在とすれば、設定圧の変更でノズル圧を全体的に変更できるため、ガス種切換えの際、流量調節弁を交換する必要がなく、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の火力調節装置の模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、本発明の実施形態の火力調節装置は、バーナ用のノズル1へのガス供給路に介設された流量調節弁2と、当該ガス供給路に流量調節弁2の上流側に位置して介設されたガバナ3とを備えている。ノズル1は、図示省略したバーナの混合管部の上流端の流入口に臨んでいる。そして、ノズル1から流入口に向けて燃料ガスが噴射され、この噴射に伴い一次空気がエゼクタ吸引(エゼクタ効果による吸引)される。
【0013】
流量調節弁2は、ガバナ3の下流側に連通口21aを介して連通する弁室21と、弁室21からノズル1に向けて燃料ガスを流す弁孔22aを形成した弁座22と、弁室21内に設けられた、弁座22に対し進退自在なニードル状の弁体23とを有している。そして、弁体23に一体の弁軸23aに連結される図外のアクチュエータにより弁体23を進退させることで、流量調節弁2の開度(具体的には、弁孔22aの開度)を可変する。
【0014】
ガバナ3は、ガス供給路の上流側部分から流入口31aを介して燃料ガスが流入する一次圧室31と、側面に上記連通口21aが開設された二次圧室32と、一次圧室31と二次圧室32との間の弁座33と、二次圧室32の弁座33とは反対側の端面を覆うダイヤフラム34と、二次圧室32に対しダイヤフラム34で仕切られた背圧室35と、弁座33に形成した弁孔33aの開度を可変する、ダイヤフラム34に連結されたガバナバルブ36と、ダイヤフラム34を弁座33に接近する方向に付勢する背圧室35内のバネ37とを有している。ここで、弁孔33aの開口面積をS1、ダイヤフラム34の有効受圧面積をS2、一次圧室31に供給されるガス圧である一次圧をP1、二次圧室32内のガス圧である二次圧をP2、背圧室35内の圧力である背圧をPB、バネ37の付勢力をFとして、ダイヤフラム34を弁座33から離隔する方向に押圧する力は、P1・S1+P2・S2になり、ダイヤフラム34を弁座33に接近する方向に押圧する力は、P2・S1+PB・S2+Fになる。これら両力が等しくなるようにガバナバルブ36が変位するため、次式、
P1・S1+P2・S2=P2・S1+PB・S2+F…(1)
が成立し、(1)式から次式、
P2−PB=(P2−P1)・S1/S2+F/S2…(2)
が得られる。S1はS2に比しかなり小さいため、(2)式の右辺第1項は零と看做すことができ、次式、
P2−PB=F/S2…(3)
が成立する。これは、P2−PB、即ち、二次圧と背圧との差圧が所定の設定圧(=F/S2)に調圧されることを意味する。
【0015】
そして、本実施形態では、背圧室35が、流量調節弁2とノズル1との間のガス供給路の部分に連通口35aを介して連通している。そのため、ノズル1に供給されるガス圧であるノズル圧が背圧になる。従って、ガバナ3により二次圧とノズル圧との差圧が設定圧になるように調圧されることになる。
【0016】
本実施形態によれば、流量調節弁2の開度が変化しても、二次圧とノズル圧との差圧は変化しないが、そのためには、流量調節弁2を通過するガス流量(この流量はノズル1からの噴出ガス流量に等しい)を、流量調節弁2で生ずる圧力損失(二次圧とノズル圧との差圧)が一定になるように、流量調節弁2の開度変化に応じて変化させる必要がある。従って、ノズル1からの噴出ガス流量、即ち、バーナの火力を流量調節弁2により可変調節できる。そして、一次圧が変動しても、流量調節弁2を通過するガス流量が当該弁2の開度に応じた一定量(設定圧の圧力損失を生ずる量)になるようにガバナ3の調圧機能が発揮され、一次圧の変動によるバーナの火力変動を低減できる。更に、強火力時には、流量調節弁2を全開状態にすることで二次圧とノズル圧との差圧が零になるため、ガバナ3の調圧機能が発揮されずに、ガバナバルブ36が全開状態となり、一次圧がそのままノズル1に供給される。従って、強火力時に、ノズル圧が不足せず、エゼクタ吸引される一次空気量を適正に確保でき、燃焼不良は生じない。
【0017】
ところで、上記設定圧は、一次圧の予想される変動範囲の下限圧以下に設定される。これによれば、ガバナ3の調圧機能が発揮される弱、中火力時のノズル圧が、一次圧の変動に拘わらず安定し、失火などの不具合を生じない。
【0018】
また、本実施形態では、背圧室35内に、バネ37用のバネ受け38を設けて、このバネ受け38を調節ネジ39で位置調節可能としている。そして、調節ネジ39によるバネ受け38の位置調節で、上記設定圧を可変設定自在としている。
【0019】
ここで、燃料ガスのウォッベ指数が高くなるほどノズル圧を全体的に低くする必要がある。この場合、流量調節弁2を交換して、ノズル圧を全体的に変更することも考えられるが、これではコスト的に不利になる。これに対し、本実施形態の如く設定圧を可変設定自在とすれば、設定圧の変更でノズル圧を全体的に変更できる。そして、使用する燃料ガスのウォッベ指数が高くなるほど設定圧を低く設定すれば、ガス種切換えの際、流量調節弁2を交換する必要がなく、コスト的に有利である。
【0020】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、流量調節弁2として進退自在なニードル状の弁体23を有するものを用いているが、回転自在な弁体等を有する他の型式の流量調節弁を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1…ノズル、2…流量調節弁、3…ガバナ、31…一次圧室、32…二次圧室、33…弁座、33a…弁孔、34…ダイヤフラム、35…背圧室、36…ガバナバルブ、37…バネ。
図1