【解決手段】被測定物の同一面上に設けられた第1電極11及び第2電極12と、第1電極11及び第2電極12に接続された電気的特性測定回路と、を備える測定装置であり、第1電極11及び第2電極12は、長手方向に延びる縁部同士が対向する。第1電極11の幅をw1、第2電極12の幅をw2、第1電極11及び第2電極12の対向距離をg、被測定物90の厚みをtとした場合に、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のタイヤ摩耗検出装置では、計測した静電容量がタイヤの摩耗に応じて変化する。このため、計測した静電容量からタイヤの化学的性質の変化を推定するのは困難である。被測定物がタイヤ以外の場合や計測する電気的特性が静電容量以外の場合にも同様の問題がある。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、被測定物の化学的性質の変化を電気的特性の変化として好適に測定することの可能な測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、測定装置である。この測定装置は、
被測定物の同一面上に設けられた第1及び第2電極と、
前記第1及び第2電極に接続された電気的特性測定回路と、を備え、
前記第1及び第2電極は、長手方向に延びる縁部同士が対向し、
前記第1電極の幅をw1、前記第2電極の幅をw2、前記第1及び第2電極の対向距離をg、被測定物の厚みをtとした場合に、
w1+w2+g≦t
である。
【0007】
前記第1及び第2電極は、互いに略平行にスパイラル状に周回してもよい。
【0008】
前記電気的特性測定回路は、前記第1及び第2電極間の静電容量を測定してもよい。
【0009】
被測定物は、経年劣化が生じるもの、断続的に機械的負荷がかかるもの、あるいは粘弾性材であってもよい。
【0010】
前記電気的特性測定回路における測定結果を基に、被測定物の劣化状態を推定してもよい。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被測定物の化学的性質の変化を電気的特性の変化として好適に測定することの可能な測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る測定装置の第1電極11及び第2電極12の形状及び配置を示す平面図。
【
図4】第1電極11の幅w1及び第2電極12の幅w2を、w1=w2(=w)=2mmとした場合において、被測定物90の厚さtを、t=1mm、2mm、5mm、10mm、500mmとし、第1電極11及び第2電極12の対向距離gを、g=0.5mm、1mm、2mm、5mmとした各場合における、第1電極11及び第2電極12間の静電容量のシミュレーション結果をまとめた表。
【
図5】
図4の表に示す各静電容量値を、gの値ごとに、t=500mmの場合に対する変化率のパーセント表示に変換した表。
【
図6】
図5の表に示すgの各値を2w+gの各値に置換した表。
【
図7】w1=w2(=w)=1mmとした場合において、t及びgを
図4の場合と同様にした各場合における、第1電極11及び第2電極12間の静電容量のシミュレーション結果をまとめた表。
【
図8】
図7の表に示す各静電容量値を、gの値ごとに、t=500mmの場合に対する変化率のパーセント表示に変換した表。
【
図9】
図8の表に示すgの各値を2w+gの各値に置換した表。
【
図10】w1=w2(=w)=0.5mmとした場合において、t及びgを
図4の場合と同様にした各場合における、第1電極11及び第2電極12間の静電容量のシミュレーション結果をまとめた表。
【
図11】
図10の表に示す各静電容量値を、gの値ごとに、t=500mmの場合に対する変化率のパーセント表示に変換した表。
【
図12】
図11の表に示すgの各値を2w+gの各値に置換した表。
【
図13】
図6、
図9、
図12に示す(2w+g)/tの値(横軸)とt=500mmの場合に対する変化率(縦軸、絶対値表示)との組合せをプロットすると共に両者の関係の近似直線も併せて示したグラフ。
【
図14】本発明の実施の形態2に係る測定装置の第1電極11及び第2電極12の形状及び配置を示す平面図。
【
図15】本発明の実施の形態3に係る測定装置の第1電極11及び第2電極12の形状及び配置を示す、第1電極11及び第2電極12の高さ範囲内で切断した平断面図。
【
図16】本発明の実施の形態4に係る測定装置の第1電極11及び第2電極12の形状及び配置を示す、第1電極11及び第2電極12の高さ範囲内で切断した平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
(実施の形態1)
図1〜
図13を参照し、本発明の実施の形態1に係る測定装置を説明する。
図1及び
図2において、この測定装置における互いに直交するx、y、zの各方向を定義する。この測定装置は、被測定物90の電気的特性を測定する装置であって、第1電極11と、第2電極12と、を備える。
【0016】
第1電極11及び第2電極12は、被測定物90の同一面上に設けられる。被測定物90は、経年劣化が生じるもの、断続的に機械的負荷がかかるもの、あるいは粘弾性材である。被測定物90はタイヤであってもよく、第1電極11及び第2電極12の配置面はタイヤの内周面であってもよい。第1電極11及び第2電極12は、ここでは長手方向がx方向と平行な長方形であり、x方向に延びる縁部同士(長辺同士)が対向する。第1電極11及び第2電極12は、長方形に限定されず、長方形や三角形の角部を面取り又はR加工した形状や、楕円形等であってもよく、任意である。
【0017】
第1電極11の幅をw1、第2電極12の幅をw2、第1電極11及び第2電極12の対向距離をg、被測定物90の厚みをtとした場合に、
w1+w2+g≦t …式1
である。図示の例では、
w1=w2=w …式2
であり、式1は、
2w+g≦t …式3
となる。w1≠w2であってもよい。第1電極11及び第2電極12が、長手方向が互いに平行な長方形でない場合、式1の左辺の値がx方向位置において変化する。この場合、式1の左辺は、w1+w2+gの平均値であるものとすればよい。好ましくは、式1の左辺は、w1+w2+gの最大値であるものとする。
【0018】
図3に示すように、本実施の形態の測定装置は、第1電極11及び第2電極12に加えて、温度検出素子17と、湿度検出素子18と、電気的特性測定回路31と、温度・湿度検出手段(温度・湿度検出回路)32と、演算回路35と、検出結果出力手段39と、を備える。第1電極11及び第2電極12は、電気的特性測定回路31に接続される。温度検出素子17及び湿度検出素子18は、被測定物90に近接配置される。温度検出素子17及び湿度検出素子18は、温度・湿度検出手段32に接続される。電気的特性測定回路31は、第1電極11及び第2電極12間に例えば1kHz〜10MHzの範囲内の所定周波数の交流電圧を印加した結果により第1電極11及び第2電極12間の電気的特性、例えば静電容量を測定し、演算回路35に送信する。測定する電気的特性は、静電容量に替えて又は静電容量に加えて、寄生抵抗や誘電正接を含んでもよい。第1電極11及び第2電極12間の電気的特性は、被測定物90の劣化状態によって変化する。
【0019】
温度・湿度検出手段32は、温度検出素子17からの受信信号により被測定物90の周囲温度を検出し、湿度検出素子18からの受信信号により被測定物90の周囲湿度を検出し、検出結果を演算回路35に送信する。演算回路35は、電気的特性測定回路31から受信した第1電極11及び第2電極12間の電気的特性を、温度・湿度検出手段32の検出値(温度検出値及び湿度検出値)を基に補正する。この補正は、被測定物90の周囲温度及び周囲湿度が基準温度及び基準湿度と相違することによる被測定物90の電気的特性の変化を除去するものである。求められる仕様等によっては、周囲温度及び周囲湿度に基づく補正の一方又は両方を省略してもよい。演算回路35は、補正した電気的特性を基に被測定物90の劣化状態を推定する。演算回路35は、モニタ等の検出結果出力手段39により被測定物90の劣化状態を使用者に表示(報知)する。
【0020】
図3に示す測定装置の各構成部品が、外部から電源の取ることが困難な空間、例えばタイヤの内側に設けられる場合、同空間に電源として一次電池を設けてもよい。あるいは、圧電素子等の発電機構と、二次電池やキャパシタ等の蓄電手段と、の組合せを電源として同空間に設けてもよい。被測定物90がタイヤの場合、タイヤの外部に送電用アンテナ又は送電用コイルを配置しておき、タイヤの内部に設けた受電用アンテナ又は受電用コイルを電源としてもよい。送電用アンテナ又は送電用コイルは、例えばタイヤのエアバルブの外側に電源となる電池と共に設置される。あるいは、電力配線用コネクタをタイヤの内側に設け、エアバルブの外側等の交換しやすい場所に設置した電池から延びる電力配線を接続してもよい。電源が複数種類ある場合、電力マネジメント回路を設けていずれかの電源の電力を各回路に供給してもよい。また、検出結果出力手段39は、タイヤの外部に被測定物90の劣化状態を送信、好ましくは間欠的に送信する送信回路及び送信アンテナに替えてもよい。間欠的な送信とすることで、消費電力を抑制できる。
【0021】
以下、第1電極11の幅w1、第2電極12の幅w2、第1電極11及び第2電極12の対向距離g、及び被測定物90の厚みtの関係を上記式1〜式3のように定める理由を説明する。第1電極11及び第2電極12間の電気的特性は、被測定物90の劣化状態によって変化するが、被測定物90の厚さtによっても変化する。第1電極11及び第2電極12間の電気的特性を基に被測定物90の劣化状態を推定する場合には、被測定物90の厚さtによる電気的特性の変化は小さいほど好ましい。上記式1〜式3は、第1電極11及び第2電極12間の電気的特性に対する被測定物90の厚さtの影響が小さくなる条件を示す。以下、被測定物90をゴム(比誘電率3.0)とした場合の具体例により説明する。
【0022】
図4は、w1=w2(=w)=2mmとした場合において、t=1mm、2mm、5mm、10mm、500mmとし、g=0.5mm、1mm、2mm、5mmとした各場合における、第1電極11及び第2電極12間の静電容量(以下、単に「静電容量」とも表記)のシミュレーション結果を示す表である。
図5は、
図4の表に示す各静電容量値を、gの値ごとに、t=500mmの場合に対する変化率のパーセント表示に変換した表である。
図6は、
図5の表に示すgの各値を2w+gの各値に置換した表である。
図7は、w1=w2(=w)=1mmとした場合において、t及びgを
図4の場合と同様にした各場合における静電容量のシミュレーション結果を示す表である。
図8は、
図7の表に示す各静電容量値を、gの値ごとに、t=500mmの場合に対する変化率のパーセント表示に変換した表である。
図9は、
図8の表に示すgの各値を2w+gの各値に置換した表である。
図10は、w1=w2(=w)=0.5mmとした場合において、t及びgを
図4の場合と同様にした各場合における静電容量のシミュレーション結果を示す表である。
図11は、
図10の表に示す各静電容量値を、gの値ごとに、t=500mmの場合に対する変化率のパーセント表示に変換した表である。
図12は、
図11の表に示すgの各値を2w+gの各値に置換した表である。
【0023】
図4〜
図12において、第1電極11及び第2電極12の長さLは、L=50mmに固定した。t=500mmの結果は、被測定物90の厚さが無限大である場合を擬似的に示すものである。なお、
図7〜
図13において、t=10mmの場合の静電容量がt=500mmの場合の静電容量より若干大きくなっている箇所があるが、これはシミュレーション精度の限界によるものである。
図4、
図7、
図10に示す結果より、wが大きいほど静電容量が大きくなる傾向、gが小さいほど静電容量が大きくなる傾向、及びtが大きいほど静電容量が大きくなる傾向が確認できた。図示は省略したが、第1電極11及び第2電極12の長さLが長いほど、静電容量は大きくなる。また、tについては、大きくしていった場合に静電容量が一定値に収束する傾向が確認できた。これは、tが大きくなるほど、第1電極11及び第2電極12間の電気力線のうち被測定物90の下側(−Z方向側)に突き抜けるものが少なくなり、最終的に被測定物90の下側に突き抜ける電気力線が無い場合(tが無限大の場合)の静電容量に近づいていくためである。
【0024】
図13は、
図6、
図9、
図12に示す(2w+g)/tの値(横軸)とt=500mmの場合に対する変化率(縦軸、絶対値表示)との組合せをプロットすると共に両者の関係の近似直線も併せて示したグラフである。
図13において、t=10mmの場合の静電容量がt=500mmの場合の静電容量よりも大きい結果となったものは、プロットを省略し、また近似直線を算出する場合の元データからも除外した。近似直線の式は、
y=3.3552x−1.3292 …式4
となった。ただし、yは、t=500mmの場合に対する静電容量の変化率の絶対値であり、xは、(2w+g)/tを置換したものである。式4においてy切片の値がマイナスのなったのは、シミュレーション精度の限界によるものである。
【0025】
図13より、(2w+g)/tが1以下、すなわち式3の関係が満たされる場合、t=500mmの場合に対する静電容量の変化率が2%程度以下、シミュレーション精度の限界を考慮しても3%程度以下に抑えられることが分かった。また、この場合、例えばtが摩耗により10%小さくなったとき、(2w+g)/tの値は約0.11以内の範囲で大きくなるが、このときの静電容量への影響は約0.37%(=0.11×3.3552)以内となる。同様に、tが摩耗により20%小さくなったときの静電容量への影響は約0.84%(=0.25×3.3552)以内、tが摩耗により30%小さくなったときの静電容量への影響は約1.44(=0.43×3.3552)%以内となる。w1≠w2の場合は、(w1+w2+g)/tが1以下、すなわち式1の関係が満たされる場合に、式3の関係が満たされる場合と同様の結果が得られる。また、第1電極11及び第2電極12間の静電容量以外の電気的特性、例えば寄生抵抗や誘電正接についても、式1あるいは式3の関係が満たされることで、同様の結果が得られる。
【0026】
(w1+w2+g)/tを小さくするほど、t=500mmの場合に対する第1電極11及び第2電極12間の電気的特性の変化率を小さくでき、またtが摩耗等により小さくなった場合の第1電極11及び第2電極12間の電気的特性への影響も抑制できる。より好ましくは、
w1+w2+g≦t/1.5 …式5
とし、さらに好ましくは
w1+w2+g≦t/2 …式6
とする。
【0027】
本実施の形態によれば、第1電極11の幅w1、第2電極12の幅w2、第1電極11及び第2電極12の対向距離g、及び被測定物90の厚みtの関係を上記式1〜式3、又は式5もしくは式6のようにすることで、被測定物90の厚さtによる第1電極11及び第2電極12間の電気的特性の変化を微小レベルに抑制でき、被測定物90の劣化状態による第1電極11及び第2電極12間の電気的特性を高い精度で検出できる。このため、被測定物90の化学的性質の変化を電気的特性の変化として好適に測定することができ、被測定物90の劣化状態をより正確に推定することができる。
【0028】
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2に係る測定装置の第1電極11及び第2電極12の形状及び配置を示す平面図である。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明する。実施の形態1では第1電極11及び第2電極12が互いに略平行に一方向に延びるストレート形状であったが、本実施の形態では第1電極11及び第2電極12が互いに略平行なL字形状(屈曲形状)である。屈曲の角度は、図示の例では90度であるが、90度以外の任意の角度でもよい。また、屈曲形状は湾曲形状に替えてもよい。本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態によれば、第1電極11及び第2電極12を配置可能なx方向の範囲が第1電極11及び第2電極12に必要な長さに対して不足する場合でも、第1電極11及び第2電極12を好適に配置できる。
【0029】
(実施の形態3)
図15は、本発明の実施の形態3に係る測定装置の第1電極11及び第2電極12の形状及び配置を示す、第1電極11及び第2電極12の高さ範囲内で切断した平断面図である。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明する。本実施の形態では、第1電極11及び第2電極12が屈曲を繰り返して互いに略平行にスパイラル状に周回する。周回数は1.25ターンである。屈曲部は湾曲部に替えてもよい。本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態によれば、第1電極11及び第2電極12が実施の形態1のようなストレート形状の場合には電界結合しない辺同士が電界結合して
図15のA部にも容量が形成されるため、同じ長さであれば実施の形態1と比較して第1電極11及び第2電極12間の静電容量を大きくすることができ、同じ静電容量であれば実施の形態1と比較して第1電極11及び第2電極12の長さあるいは面積を小さくできる。
図15のA部においても、上記式1の関係を満たすことが望ましい。すなわち、第1電極11の両側に第2電極12が存在する場合、及び第2電極12の両側に第1電極11が存在する場合は、隣り合う第1電極11及び第2電極12の各々において上記式1が成立することが望ましい。
【0030】
(実施の形態4)
図16は、本発明の実施の形態4に係る測定装置の第1電極11及び第2電極12の形状及び配置を示す、第1電極11及び第2電極12の高さ範囲内で切断した平断面図である。本実施の形態は、第1電極11及び第2電極12の周回数が2.25ターンとなった以外は実施の形態3と同じである。本実施の形態によれば、第1電極11及び第2電極12の周回数を増やしたことで、同じ長さであれば実施の形態3と比較して第1電極11及び第2電極12間の静電容量を大きくすることができ、同じ静電容量であれば実施の形態3と比較して第1電極11及び第2電極12の長さあるいは面積を小さくできる。
【0031】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。