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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-201118(P2020-201118A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】車両用物体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/931 20200101AFI20201120BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   G01S13/93 220
   G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-107898(P2019-107898)
(22)【出願日】2019年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】由川 輝
【テーマコード(参考)】
5H181
5J070
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5J070AB01
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC13
5J070AE01
5J070AE07
5J070AF03
5J070AK15
5J070BF02
5J070BF03
5J070BF04
5J070BF09
(57)【要約】
【課題】車両の走行中にレーダ装置が検出対象をロストしやすくなるような状況を回避し、検出対象を確実に検出する。
【解決手段】レーダ送信波を反射する第1反射点及び第2反射点の自車両に対する相対速度が略同一の場合、レーダ装置10から第1反射点までの第1距離とレーダ装置10から第2反射点までの第2距離との差が設定範囲内か否かを反射点判断部31で判断する。第1距離と第2距離との差が設定範囲内と判断された場合、レーダ相対位置変更部32は、レーダ装置10が第1反射点と第2反射点とを結ぶ線分の垂直二等分線から外れるようレーダ装置10の第1反射点及び第2反射点に対する相対位置の変更を指示する。走行位置調整部23は、レーダ相対位置変更部32からの指示を受け、レーダ装置10の第1反射点及び第2反射点に対する相対位置が垂直二等分線から外れた位置となるように自車両の走行位置を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置からレーダ送信波を送出して物体で反射された反射波を受信し、自車両の周囲に存在する前記物体を検出する車両用物体検出装置であって、
前記レーダ装置により前記レーダ送信波を反射する第1反射点と第2反射点とを検出し、前記自車両に対する前記第1反射点及び前記第2反射点の相対速度が略同一の場合、前記レーダ装置から前記第1反射点までの第1距離と、前記レーダ装置から前記第2反射点までの第2距離との差が設定範囲内か否かを判断する反射点判断部と、
前記反射点判断部で前記第1距離と前記第2距離との差が前記設定範囲内と判断された場合、前記レーダ装置が前記第1反射点と前記第2反射点とを結ぶ線分の垂直二等分線から外れるよう、前記レーダ装置の前記第1反射点及び前記第2反射点に対する相対位置の変更を指示するレーダ相対位置変更部と、
前記レーダ相対位置変更部から前記指示を受けたとき、前記レーダ装置の前記第1反射点及び前記第2反射点に対する相対位置が前記垂直二等分線から外れた位置となるように前記自車両の走行位置を調整する走行位置調整部と
を備えることを特徴とする車両用物体検出装置。
【請求項2】
前記走行位置調整部は、前記垂直二等分線が前記自車両の進行方向と交差する交差角度を、直角を含む鋭角側の角度として、前記交差角度が設定角度以上の場合、前記自車両の走行位置を加減速制御によって調整し、前記交差角度が前記設定角度未満の場合、前記自車両の走行位置を操舵制御によって調整することを特徴とする請求項1に記載の車両用物体検出装置。
【請求項3】
前記走行位置調整部は、前記交差角度が前記設定角度未満の場合、前記自車両の走行ルートを横方向にオフセットさせることを特徴とする請求項2に記載の車両用物体検出装置。
【請求項4】
前記走行位置調整部は、前記自車両を前記線分に対して平行な方向に移動させることにより、前記自車両の走行位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の車両用物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置を用いて車両周辺に存在する物体を検出する車両用物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、カメラやレーダ装置を搭載して車両外部に存在する物体を検出し、前方の障害物に対する衝突回避、先行車に対する追従制御、車両のふらつき及び車線逸脱に対する警報制御や操舵制御等のドライバに対する各種支援制御を実行するシステムが実用化され、またドライバの運転操作を必要としない自動運転システムが実用化されつつある。
【0003】
特に、レーダ装置は、カメラ等の可視光や赤外光を用いる画像センサと比較して、雨、雪、霧等の天候や逆光等による影響が小さく、様々に変化する環境下で走行する車両において外界の物体を検出するためのセンサとして有力視されている。
【0004】
しかしながら、レーダ装置は、レーダ波の周波数によって分解能が左右され、検出対象の物体を分離・識別することが困難な場合がある。このため、例えば特許文献1には、ガードレール等の道路の側方に存在する静止物と、側方を追い越す車両等の移動物とを識別することの可能なレーダ装置に係る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−81886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーダ装置は、自車両に対する物体の相対速度、距離、方位角を検出することができるが、自車両に対して同じ相対速度で同じ距離にある2つの物体のように、対象を検出できずにロストしやすくなるような状況になる場合がある。
【0007】
例えば、図7に示すように、自車両Cの右後方に後方車両等の物体B1が存在し、自車両Cの側方にガードレール等の物体B2が存在する場合、自車両Cに対する物体B1,B2の相対速度が略等しく、且つ自車両Cから物体B1までの距離D1と自車両Cから物体B2までの距離D2が略等しい場合、レーダ送信波に対する反射強度(反射波の受信強度)は、相対的に物体B2の反射強度が強く物体B1の反射強度が弱くなる場合がある。
【0008】
すなわち、図8に示すように、等距離にある2つの物体B1,B2の反射強度が異なる方位角上に分布する場合、物体B2では反射強度が検出の閾値Nを超えても、相対的に反射強度の弱い物体B1では、反射強度が閾値N以下となる場合がある。このため、閾値N以下の物体B1の信号がノイズとして除去されてしまい、検出対象の物体B1をロストする虞がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車両の走行中にレーダ装置が検出対象をロストしやすくなるような状況を回避し、検出対象を確実に検出することのできる車両用物体検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による車両用物体検出装置は、レーダ装置からレーダ送信波を送出して物体で反射された反射波を受信し、自車両の周囲に存在する前記物体を検出する車両用物体検出装置であって、前記レーダ装置により前記レーダ送信波を反射する第1反射点と第2反射点とを検出し、前記自車両に対する前記第1反射点及び前記第2反射点の相対速度が略同一の場合、前記レーダ装置から前記第1反射点までの第1距離と、前記レーダ装置から前記第2反射点までの第2距離との差が設定範囲内か否かを判断する反射点判断部と、前記反射点判断部で前記第1距離と前記第2距離との差が前記設定範囲内と判断された場合、前記レーダ装置が前記第1反射点と前記第2反射点とを結ぶ線分の垂直二等分線から外れるよう、前記レーダ装置の前記第1反射点及び前記第2反射点に対する相対位置の変更を指示するレーダ相対位置変更部と、前記レーダ相対位置変更部から前記指示を受けたとき、前記レーダ装置の前記第1反射点及び前記第2反射点に対する相対位置が前記垂直二等分線から外れた位置となるように前記自車両の走行位置を調整する走行位置調整部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の走行中にレーダ装置が検出対象をロストしやすくなるような状況を回避し、検出対象を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車両用物体検出装置の構成図
図2】レーダユニットと第1反射点と第2反射点とで形成される二等辺三角形を示す説明図
図3】加速による走行位置の調整を示す説明図
図4】走行ルートのオフセットによる走行位置の調整を示す説明図
図5】平行移動による走行位置の調整を示す説明図
図6】車両走行位置調整ルーチンのフローチャート
図7】レーダ装置から等距離にある2つの物体を示す説明図
図8】同一距離におけるレーダ送信波の反射強度及び方位角を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は車両用物体検出装置の構成図である。図1に示す車両用物体検出装置1は、車載のレーダ装置10によって車両周辺の物体を検出するものであり、レーダ装置10と走行制御装置20とレーダ状態監視装置30とを通信バス100を介して双方向通信可能に接続して構成されている。
【0014】
レーダ装置10は、レーダ送信波として例えばミリ波を用い、周知のFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式或いはパルス方式により、自車両の周囲に存在する物体の自車両に対する相対速度、距離、方位を検出する。このレーダ装置10は、例えば複数のレーダユニット11を備えており、各レーダユニット11が車両の複数箇所に配置されている。図1においては、レーダ装置10は4個のレーダユニット11を備える例を示している。
【0015】
レーダユニット11は、レーダ送信波を空間に放射する送信アンテナとレーダ送信波が物体で反射されて戻ってきた反射波を受信する受信アンテナとを兼用或いは一体化し、信号処理用の回路基板とともにユニット化したものである。レーダユニット11は、例えば車両の前後バンパの左右のコーナー部に配設されている。
【0016】
レーダ装置10においては、物体の距離は、例えば、レーダ送信波と受信波の時間差に基づく信号処理アルゴリズムに基づいて算出することができる。また、物体の速度(相対速度)は、ドップラー効果や距離の変化に基づく信号処理アルゴリズムに基づいて算出することができる。更に、物体の方位は、受信波の振幅や位相を用いた信号処理アルゴリズムに基づいて算出することができる。このようなレーダ装置10を用いた物体の距離、速度、方位の算出処理は、一般的なアルゴリズムを用いて行うことができ、ここでは詳細な説明は省略する。
【0017】
走行制御装置20は、走行制御のための操舵制御部21及び加減速制御部22を備え、更に、自車両の走行位置を調整するための走行位置調整部23を備えている。走行位置調整部23については後述する。走行制御装置20は、操舵制御部21及び加減速制御部22による走行制御において、図示しない各種センサからの信号に基づいて、ドライバの運転を支援する運転支援制御やドライバの運転操作を要しない自動運転制御を含む走行制御を実行する。
【0018】
この場合、走行制御装置20は、レーダ装置10の各レーダユニット11で検出した物体に対して適切な距離や速度を維持して安全を確保しながら走行制御を実行する。例えば、前方の低速車両を追い越すために車線変更したり、分岐路への進路変更で車線変更するようなシーンにおいて、レーダユニット11によって後側方を走行する車両を検出した場合、走行制御装置20は、検出した車両と自車両との距離、相対速度、方位角から車線変更の危険性を判断する。
【0019】
そして、車線変更に危険性がないと判断される場合、走行制御装置20は、操舵制御部21による操作制御と加減速制御部22による加減速制御とを実行し、適切なタイミング、操舵角、速度で自車両を現在の車線から隣の車線に移動させる。一方、車線変更に危険性があると判断される場合には、走行制御装置20は、ドライバに警報を発したり、現在の進路を維持する等して安全を確保する。
【0020】
ここで、レーダ装置10の各レーダユニット11による物体検出では、レーダユニット11からのレーダ送信波を反射する2つの反射点が自車両に対して略同じ相対速度で略同じ距離である場合、2つの反射点が異なる物体の反射点であってもレーダ送信波に対する反射強度(反射波の受信強度)の弱い方をノイズとして除去してしまい、一方の物体をロストする可能性がある。このため、レーダ状態監視装置30は、レーダ装置10の各レーダユニット11が物体のロストを生じやすい状況になっているか否かを監視し、該当する状況になったとき、走行制御装置20の走行位置調整部23に指示する。
【0021】
具体的には、レーダ状態監視装置30から走行位置調整部23への指示は、自車両の走行位置を調整することにより、レーダ送信波を反射する2つの反射点に対するレーダユニット11の相対的な位置関係を変更する指示として出力される。このため、レーダ状態監視装置30は、反射点判断部31、レーダ相対位置変更部32を備えている。
【0022】
反射点判断部31は、レーダユニット11によって自車両に対する相対速度が略同一と見なせる2つの反射点(第1反射点、第2反射点)を検出した場合、レーダユニット11から第1反射点までの第1距離T1と、レーダユニット11から第2反射点までの第2距離T2との差が設定範囲内で略等距離であるか否かを判断する。尚、自車両に対する第1反射点の相対速度と自車両に対する第2反射点の相対速度が同一か否かは、例えば、レーダユニット11の距離分解から定めた範囲内か否かによって判断する。
【0023】
本実施の形態においては、反射点判断部31は、第1距離T1と第2距離T2との差の絶対値|T1−T2|を算出し、この距離の差の絶対値|T1−T2|を、等距離の設定範囲を定める閾値H(H>0)と比較する。閾値Hは、第1距離T1と第2距離T2とが等距離にあり、第1反射点と第2反射点とレーダユニット11とによって形成される三角形がレーダユニット11を頂点とする2等辺三角形となるか否かを判断するための閾値である。尚、この場合のレーダユニット11の位置は、測距の基準となる位置を代表するものとする。
【0024】
反射点判断部31は、|T1−T2|≧Hの場合、第1距離T1と第2距離T2との差が設定範囲外であり、該当するレーダユニット11は、正常に物体を検知可能とする。一方、|T1−T2|<Hの場合には、反射点判断部31は、第1距離T1と第2距離T2との差が設定範囲内にあって第1距離T1と第2距離T2とが等距離であり、第1反射点と第2反射点とレーダユニット11とによって形成される三角形がレーダユニット11を頂点とする2等辺三角形を形成すると判断してレーダ相対位置変更部32に通知する。
【0025】
レーダ相対位置変更部32は、反射点判断部31において、第1距離T1と第2距離T2との差(絶対値)が閾値H未満で、第1反射点と第2反射点とレーダユニット11とによって形成される三角形が2等辺三角形であると判断された場合、レーダユニット11が第1反射点と第2反射点とを結ぶ線分の垂直二等分線から外れるように走行位置調整部23に指示する。
【0026】
図2はレーダユニットと第1反射点と第2反射点による二等辺三角形を示す説明図である。図2においては、自車両Cが道路RDの中央車線を走行中、自車両Cの後部に配設したレーダユニット11に、自車両Cの右後方を走行する隣接車線の車両OBJ1からのレーダ反射波を受信すると共に、自車両Cの側方のガードレールや中央分離帯等の連続的な側方物体(静止物体)OBJ2からレーダ反射波を受信した場合を例示している。尚、自車両Cと車両OBJ1とは、同じ走行速度すなわち相対速度0であり、また、側方物体OBJ2は、自車両Cに対して相対速度0として検出される。
【0027】
ここで、レーダユニット11の位置(レーダ位置)をO、車両OBJ1のレーダ送信波の反射点を第1反射点P1、側方物体OBJ2のレーダ送信波の反射点を第2反射点P2、レーダ位置Oと第1反射点P1との距離を第1距離T1、レーダ位置Oと第2反射点P2との距離を第2距離T2とする。第1距離T1と第2距離T2が等しいと判断される場合(|T1−T2|<Hの場合)、レーダ位置Oを頂点とする三角形は2等辺三角形となる。従って、第1反射点P1と第2反射点P2とを結ぶ線分Lの垂直二等分線LHを想定すると、レーダ位置Oは、垂直二等分線LH上に位置することになる。
【0028】
レーダ位置Oが第1反射点P1と第2反射点P2とを結ぶ線分Lの垂直二等分線LH上に位置する状態は、該当するレーダユニット11の検知能力が低下する可能性が高くなる状態であり、第1反射点P1と第2反射点P2とが異なる物体の反射点であっても同一物体の反射点と誤判定する等して一方をロストする可能性が高くなる。図2の例では、同一距離における側方物体OBJ2の反射強度が車両OBJ1の反射強度よりも強くなり、相対的に反射強度が弱い車両OBJ1からの信号が無視(除去)されて車両OBJ1をロストする虞がある。
【0029】
レーダ相対位置変更部32は、走行位置調整部23に指示して自車両の走行位置を調整させ、第1反射点P1及び第2反射点P2に対してレーダ位置Oを相対的に移動させることにより、レーダ位置Oが垂直二等分線LHから外れるようにする。例えば、垂直二等分線LHを内部に含む所定の領域をレーダ検知不可領域として設定し、レーダ位置Oがレーダ検知不可領域の内部に留まらないように自車両の走行位置を調整する。レーダ検知不可領域は、各レーダユニット11の出力強度や受信強度、距離や角度の分解能等に応じて、予め実験やシミュレーション等によって設定しておく。
【0030】
レーダ相対位置変更部32からの指示を受けた走行位置調整部23は、自車両の現在の走行位置を調整して2つの反射点とレーダユニット11との相対的な位置関係を変更する。本実施の形態においては、走行位置調整部23は、操舵制御部21による操舵制御と加減速制御部22による加減速制御の少なくとも一方により、自車両の走行位置を調整する。
【0031】
具体的には、走行位置調整部23は、第1反射点P1と第2反射点P2とを結ぶ線分Lの垂直二等分線LH、或いは線分L自体に基づいて、自車両を移動させて走行位置を調整する。但し、走行位置の調整に伴う自車両の移動は、自車両の現在の車線内に制限するものとする。
【0032】
例えば、線分Lの垂直二等分線LHに基づいて自車両の走行位置を調整する場合、走行位置調整部23は、垂直二等分線LHが自車両の進行方向と交差する交差角度Rを算出し、設定角度Rset(例えば、Rset=45°)と比較する。但し、交差角度Rは、直角の場合を含み、図2に示すように、鋭角側の角度とする。
【0033】
交差角度Rが設定角度Rset以上で自車両の進行方向に対して直角に近い側の角度である場合、走行位置調整部23は、加減速制御部22に指示して自車両を加速或いは減速させ、走行位置を調整する。
【0034】
一方、交差角度Rが設定角度Rset未満で自車両の進行方向に対して平行に近い側の角度である場合には、走行位置調整部23は、操舵制御部21に指示して現在の操舵角を修正し、自車両の現在の走行ルートを横方向にオフセットさせて走行位置を調整する。例えば、図2において、道路RDにガードレールなどの側方物体(静止物体)OBJ2がなく、自車両Cの後方に、隣接車線上の車両OBJ1と共に、図2に破線で示す自車線上の車両OBJ3を第2反射点P2-OBJ3として検出している場合、第1反射点P1と第2反射点P2-OBJ3とを結ぶ線分L3の垂直二等分線LH3は、自車両の進行方向に対して平行に近くなる。このようなシーンでは、加減速制御で自車両の走行位置を調整するよりも自車両の走行ルートを横方向にオフセットさせて走行位置を調整する方が好ましい。
【0035】
図3は加速による走行位置の調整を示す説明図である。図3においては、図2の自車両Cの位置を破線で示している。この破線の位置から自車両を加速して実線の位置に移動させ、レーダ位置Oから第1反射点P1までの第1距離T1を距離T1xに変化させることにより、車両OBJ1の第1反射点P1と側方物体OBJ2の第2反射点P2とを結ぶ線分Lの垂直二等分線LH上からレーダユニット11のレーダ位置Oを外すことができる。この場合の加減速による自車両の移動量は、レーダユニット11の位置が前述したレーダ検知不可領域の領域外となる移動量とする。尚、自車両を減速させる場合も同様である。
【0036】
一方、図4は走行ルートのオフセットによる走行位置の調整を示す説明図である。図4においては、図2の自車両Cの位置を破線で示しており、この破線の位置における走行ルートを横方向にオフセットさせてレーダ位置Oから第2反射点P2までの第2距離T2を距離T2yに変化させると共に、レーダ位置Oから第1反射点P1までの第1距離T1を距離T1yに変化させることにより、車両OBJ1の第1反射点P1と側方物体OBJ2の第2反射点P2とを結ぶ線分Lの垂直二等分線LH上からレーダユニット11のレーダ位置Oを外すことができる。この場合においても、現在の走行ルートに対するオフセット量は、レーダユニット11の位置がレーダ検知不可領域から外れるように調整する。尚、走行ルートのオフセットは、操舵制御のみでも良いが、加減速制御を併用しても良い。
【0037】
また、線分Lに基づいて自車両の走行位置を調整する場合には、走行位置調整部23は、操舵制御部21及び加減速制御部22に指示し、自車両を線分Lに対して平行な方向に移動させる。図5は平行移動による走行位置の調整を示す説明図である。
【0038】
図5に示すように、車両OBJ1の第1反射点P1と側方物体OBJ2の第2反射点P2とを結ぶ線分Lに平行な線分LPを想定し、この線分LPに沿って自車両Cを移動させることにより、レーダユニット11のレーダ位置Oを線分Lの垂直二等分線LH上から外し、レーダ検知不可領域の領域外となるように調整する。この線分Lと平行な方向への移動は、少ない移動量でレーダユニット11を迅速にレーダ検知不可領域の領域外とすることができる。
【0039】
次に、車両用物体検出装置1におけるレーダ相対位置変更に係る車両走行位置の調整処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。図6は車両走行位置調整ルーチンのフローチャートである。尚、図6は、自車両の後方領域をレーダユニット11で監視する場合の処理例を示すが、前方領域を監視する場合も同様である。
【0040】
この車両走行位置調整ルーチンは、レーダ状態監視装置30と走行制御装置20とが互いに通信して実行される処理である。先ず、最初のステップS1において、レーダ状態監視装置30は、車両後部のレーダユニット11により、自車両の後方に車両(後方車両)が検出されているか否かを調べる。ステップS1において後方車両が検出されていない場合、レーダ状態監視装置30は、ステップS1の処理を繰り返し、後方車両が検出されている場合、ステップS1からステップS2の処理に進む。
【0041】
ステップS2では、レーダ状態監視装置30は、レーダユニット11からの信号に基づいて、自車両から後方車両までの距離(自車両のレーダ位置から後方車両のレーダ送信波の反射点までの距離;第1距離)T1を算出する。次に、ステップS3へ進み、レーダ状態監視装置30は、レーダユニット11により、自車両の側方に後方車両と略等速度の他の車両(側方車両)が検出されているか否かを調べる。尚、自車両の側方に、側壁や中央分離帯等の静止物体が存在する場合も側方車両と同様に扱う。
【0042】
ステップS3において側方車両が検出されていない場合、レーダ状態監視装置30は、ステップS1に処理を戻す。側方車両が検出されている場合、レーダ状態監視装置30は、ステップS3からステップS4の処理に進み、レーダユニット11からの信号に基づいて、自車両から側方車両までの距離(自車両のレーダ位置から側方車両のレーダ送信波の反射点までの距離;第2距離)T2を算出する。
【0043】
次に、ステップS5へ進み、レーダ状態監視装置30は、距離T1と距離T2との差の絶対値|T1−T2|を閾値Hと比較する。ステップS5において、|T1−T2|≧Hの場合、レーダ状態監視装置30は、ステップS1に処理を戻す。一方、ステップS5において、|T1−T2|<Hの場合には、レーダ状態監視装置30は、ステップS6の処理に進み、後方車両の反射点と側方車両の反射点とを結ぶ線分Lの垂直二等分線LHを算出し、ステップS7へ進む。
【0044】
ステップS7では、レーダ状態監視装置30は、自車両の進行方向と垂直二等分線LHとの交差角度Rを算出し、ステップS8で交差角度Rを設定角度Rsetと比較する。ステップS8においてR<Rsetの場合、レーダ状態監視装置30は走行制御装置20に自車両の走行ルートをオフセットさせて走行位置を調整する指示を出力し、ステップS9の走行制御装置20による処理に移行する。
【0045】
ステップS9は、走行制御装置20の処理であり、自車両の現在の走行ルートを横方向に所定量だけオフセットさせ、ステップS10へ進む。ステップS10では、走行制御装置20は、走行ルートをオフセットさせた後のレーダユニット11のレーダ位置が垂直二等分線LH上から外れたか否かを判断する。レーダ位置が垂直二等分線LH上から外れていない場合、走行制御装置20は、ステップS9に戻って自車両の走行ルートを更に横方向にオフセットさせ、ステップS10でレーダ位置が垂直二等分線LH上から外れたと判断した場合、本ルーチンを終了する。
【0046】
一方、ステップS8においてR≧Rsetの場合には、レーダ状態監視装置30は走行制御装置20に車速を加速或いは減速させて走行位置を調整する指示を出力し、ステップS11の走行制御装置20による処理に移行する。走行制御装置20は、ステップS11で車速を加速或いは減速させ、ステップS12で、レーダ位置が垂直二等分線LH上から外れたか否かを判断する。
【0047】
レーダ位置が垂直二等分線LH上から外れていない場合、走行制御装置20は、ステップS11に戻って更に車速を加速或いは減速させる。そして、ステップS12でレーダ位置が垂直二等分線LH上から外れたと判断した場合、本ルーチンを終了する。
【0048】
尚、上述の処理において、ステップS6で垂直二等分線LHを算出した後は、後方車両の反射点と側方車両の反射点とを結ぶ線分Lに平行な線分LPを算出し、この線分LPに沿って自車両を移動させ、レーダ位置を垂直二等分線LH上から外すようにしても良い。
【0049】
このように本実施の形態においては、第1反射点及び第2反射点の自車両に対する相対速度が略同一で、レーダユニット11から第1反射点までの第1距離とレーダユニット11から第2反射点までの第2距離との差が設定範囲内の場合、レーダユニット11の位置が第1反射点と第2反射点とを結ぶ線分の垂直二等分線から外れるよう、レーダ相対位置変更部32から走行位置調整部23に指示して自車両の位置を調整する。これにより、車両の走行中にレーダ装置10が検出対象をロストしやすくなるような状況を回避し、検出対象を確実に検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 車両用物体検出装置
10 レーダ装置
11 レーダユニット
20 走行制御装置
21 操舵制御部
22 加減速制御部
23 走行位置調整部
30 レーダ状態監視装置
31 反射点判断部
32 レーダ相対位置変更部
T1 第1距離
T2 第2距離
LH 垂直二等分線
P1 第1反射点
P2 第2反射点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8