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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-201119(P2020-201119A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】器具および毛束形成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20201120BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20201120BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   G01N1/04 B
   G01N33/50 H
   G01N33/48 S
   G01N1/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-107916(P2019-107916)
(22)【出願日】2019年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】江藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】川添 豪哉
(72)【発明者】
【氏名】長井 港太
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045BB60
2G045CB16
2G045DA36
2G052AA28
2G052AB16
2G052BA02
2G052BA15
2G052EC02
2G052EC22
2G052JA04
2G052JA08
(57)【要約】
【課題】所望の範囲内の毛髪をより分けることが容易になる器具を実現する。
【解決手段】器具(1)は、互いに対向する一対の対向部(2)と、前記一対の対向部の間の空間を区切る一対の第1仕切り部(3)とを備え、前記一対の対向部が対向する方向および前記一対の第1仕切り部が対向する方向における前記一対の第1仕切り部の移動を可能とする第1移動機構が前記一対の対向部の少なくとも一方に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の対向部と、
前記一対の対向部の間の空間を区切る一対の第1仕切り部とを備え、
前記一対の対向部が対向する方向および前記一対の第1仕切り部が対向する方向における前記一対の第1仕切り部の移動を可能とする第1移動機構が前記一対の対向部の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする器具。
【請求項2】
前記一対の第1仕切り部は、互いに遠ざかる方向に移動可能であり、
前記一対の第1仕切り部の間において、前記一対の対向部の間の空間を区切る一対の第2仕切り部をさらに備え、
前記一対の対向部が対向する方向における前記第2仕切り部の移動を可能とする第2移動機構が前記一対の対向部の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記一対の第1仕切り部は、互いに近づく方向に移動可能であり、
前記一対の第1仕切り部の外側において、前記一対の対向部の間の空間を区切る一対の第2仕切り部をさらに備え、
前記一対の対向部が対向する方向における前記一対の第2仕切り部の移動を可能とする第2移動機構が前記一対の対向部の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記第2移動機構は、前記一対の第2仕切り部が対向する方向における前記一対の第2仕切り部の移動を可能とすることを特徴とする請求項2または3に記載の器具。
【請求項5】
前記一対の第1仕切り部は、前記一対の第1仕切り部の間の距離が、10mm〜30mmの範囲内において移動可能であることを特徴とする請求項2に記載の器具。
【請求項6】
前記一対の第1仕切り部は、前記一対の第1仕切り部の間の距離が1mm〜10mmの範囲内において移動可能であることを特徴とする請求項3に記載の器具。
【請求項7】
前記一対の第1仕切り部を前記対向部の少なくとも一方に対して固定する固定部材を有し、
前記一対の第1仕切り部が前記対向部の少なくとも一方に対して固定されたとき、前記一対の第2仕切り部との最も近い距離は、5mm〜10mmである、請求項5または6に記載の器具。
【請求項8】
前記一対の対向部は、第1対向部および第2対向部からなり、
前記第1対向部および前記第2対向部の、前記一対の対向部が対向する方向における幅をXとし、
前記第1対向部と前記第2対向部との間の最短距離をYとし、
前記一対の第1仕切り部および一対の第2仕切り部の、前記第1対向部の長軸に対して垂直な方向の長さをZとしたとき、
Y=5mm〜10mm、かつ、X>Z≧Yである、請求項1から7のいずれか一項に記載の器具。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の器具が備える前記一対の対向部の間に毛髪を嵌め込む工程と、
前記一対の対向部の少なくとも一方から前記一対の第1仕切り部を突出させる工程と、
前記一対の第1仕切り部が対向する方向に沿って、突出した前記一対の第1仕切り部のそれぞれを移動させ、前記一対の対向部の間に嵌め込まれた毛髪の一部をより分ける工程と、を含むことを特徴とする毛束形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は毛髪を採取するための器具および毛束形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、血液循環によって、体内の生理活性物質(例えばコルチゾール)を取り込み、蓄積しながら成長する。これに関連して、ストレスに伴い毛髪中のコルチゾール濃度が変化することが知られている。これを利用して、毛髪中のコルチゾール濃度を測定することによりストレスを計測する研究が行われている。また、毛髪の位置により、含まれるコルチゾールの濃度が異なることが報告されている。
【0003】
より正確に、また定期的に個人のストレスを計測するためには、経時的なコルチゾールの濃度変化を測定する必要がある。定期的に測定を行う場合、それぞれの測定において、頭部の同じ位置(同じ範囲内)から毛髪を採取する必要がある。例えば、それぞれの測定において、2cmφ内での1cm四方の毛髪を採取する必要がある。
【0004】
毛髪を採取する方法として、例えば、手作業によって頭部における所望の範囲の髪をより分け、毛束を形成した後、毛束を指でつまむ、またはヘアピンでとめ、その後、形成した毛束を鋏等で切ることで毛髪を採取する方法が用いられている。
【0005】
その他、毛髪をより分けるための器具として、特許文献1には、広げた毛束を指で挟んだ状態で、他方の手に保持した櫛を広げた毛束の下から上げることにより、上下に毛束を分けることができる櫛が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、縦櫛の歯の隙間に、出したり引っ込めたりできる、短い横歯を内蔵させて、当該横歯を引っ込めて毛髪の根元に挿し込み、それから少し横歯を出して、毛髪をすき上げることで、毛髪を立体的に固定することができる櫛が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−154625号公報
【特許文献2】特願平11−103092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のように、毛束を作成するときに指で毛髪をつまむ場合、またはヘアピンで毛髪を留める場合、所望の位置以外からの毛も巻き込んでしまうことがある。そのため、所望の位置のみの毛髪による毛束を作成することは難しいという問題があった。また、櫛でとかしたとしても、所望の位置以外の髪を除くことは容易ではないという問題があった。
【0009】
特許文献1の発明では、1方向において所望の範囲内の毛髪をより分けることはできるものの、別の方向(例えば、櫛歯が伸びる方向に対して90°回転した方向)における毛髪をより分けることができない。
【0010】
また、特許文献2の発明では、毛髪を固定することのみ想定されており、所望の範囲外の毛髪と所望の範囲内の毛髪とを分けることは想定されていない。そのため、毛束を採取するために使用すると、所望の範囲外の毛髪が混ざる可能性がある。
【0011】
本開示の一態様は、所望の範囲内の毛髪をより分けることが容易になる器具を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る器具は、互いに対向する一対の対向部と、前記一対の対向部の間の空間を区切る一対の第1仕切り部とを備え、前記一対の対向部が対向する方向および前記一対の第1仕切り部が対向する方向における前記一対の第1仕切り部の移動を可能とする第1移動機構が前記一対の対向部の少なくとも一方に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、所望の範囲内の毛髪をより分けることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の本実施形態1に係る器具の概略図である。
図2】第1対向部が備える構成を示す概略図である。
図3】第1移動機構および第2移動機構の動作の一例を示す図である。
図4】毛髪を採取する位置を特定する方法の一例を示す図である。
図5】頭皮上に器具を配置した状態を示す図である。
図6図5に示された状態の器具を図5における左方向から見た図である。
図7】第1仕切り部を互いに遠ざかる方向において移動させる様子を示す図である。
図8図7に示された状態の器具を図7における左方向から見た図である。
図9】第1仕切り部および第2仕切り部を移動させるための構成の別の例を示す図である。
図10】本開示の実施形態2に係る器具の構成を示す概略図である。
図11図10に示された状態の器具を図10における左方向から見た図である。
図12】実施形態2に係る第1移動機構および第2移動機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
<器具1の構成>
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本開示の実施形態1に係る器具1の概略図である。図1は、毛髪30を採取する採取者が毛髪30を採取される被採取者の頭皮40上に器具1を配置した状態において、頭皮40を上方から見た図である。図1に示すように、器具1は、対向部2、第1仕切り部3、および第2仕切り部4を備えている。以下、対向部2が備える第1対向部5と第2対向部6とが対向する方向を「横方向」、横方向に対して垂直な方向(図1における上下方向)を「縦方向」と称する。また、第2対向部6から第1対向部5へ向かう方向を「左方向」、第1対向部5から第2対向部6へ向かう方向を「右方向」と称する。
【0016】
器具1は、毛髪30を被採取者の頭皮40上に配置され、対向部2によって横方向の毛髪30をより分ける。また、第1仕切り部3および第2仕切り部4が対向部2の間に突出し、縦方向に移動することにより、縦方向の毛髪30をより分ける。これにより、採取者が破線によって示される所望の範囲50内の毛髪30のみを採取することを可能とする。
【0017】
ここで、所望の範囲50とは、例えば、毛髪30に含まれるコルチゾールの濃度の計測を行う場合、計測を行うことが可能となる量の毛髪30を採取するための範囲であり、(1)対向部2および対向部2から突出した第1仕切り部3によって囲まれる範囲、または、(2)対向部2および対向部2から突出した第2仕切り部4によって囲まれる範囲である。所望の範囲50は、例えば1cm×1cmの正方形である。また、採取者は、所望の範囲50よりも少し広い範囲(例えば3cm×3cmの正方形)内の毛髪を採取してもよい。複数採取を行う場合、採取者は初回採取時の採取範囲(所望の範囲50)よりも少し広い範囲(例えば3cm×3cmの正方形)内において、初回採取時の採取範囲と同一の形状かつ同一の大きさの範囲を、2回目以降の採取における所望の範囲50として毛髪30を採取してもよい。
【0018】
以下に、器具1が備える各構成要素の詳細について説明する。図1に示すように、対向部2は、基部7と、基部7から突出し、互いに平行に対向する第1対向部5および第2対向部6と、を有している。対向部2は、所望の範囲50の横方向の幅を規定する。第1対向部5と第2対向部6との間の距離は、例えば1cmである。また、第1対向部5には、第1仕切り部3、第2仕切り部4、後述する第1移動機構13および第2移動機構14を格納する空間が形成されている。
【0019】
第1仕切り部3は、一対の板3A・3Aを備えており、後述する第1移動機構13によって横方向および縦方向に移動することが可能である。
【0020】
第1仕切り部3は、第1対向部5内に格納されているときには、第1仕切り部3の右側の先端が第1対向部5の第2対向部6と対向する面から突出しない。また、第1仕切り部3は、第1移動機構13により、第1対向部5内に格納されている位置から、第1仕切り部3の右側の先端と第2対向部6とが接触する位置まで右方向に移動可能となっている。
【0021】
また、第1仕切り部3は、第1移動機構13により、第1仕切り部3の右側の先端が第2対向部6と接触している状態において、第1仕切り部3を構成する各板3Aが互いに遠ざかる方向に移動可能となっている。
【0022】
第2仕切り部4は、一対の板4A・4Aを備えており、第2移動機構14によって横方向に移動することが可能である。第2仕切り部4は、第1仕切り部3と同様に、第1対向部5内に格納されているとき、右側の先端が第1対向部5の第2対向部6と対向する面から突出しないよう構成されている。また、第2仕切り部4は、第2移動機構14により、第1対向部5内に格納されている位置から、第2仕切り部4の右側の先端と第2対向部6とが接触する位置まで右方向に移動可能となっている。
【0023】
図2は、第1対向部5が備える第1移動機構13および第2移動機構14の構成を示す概略図であり、図2の符号1000〜1003は、第1対向部5の分解図を示し、図2の符号1004は、図2の符号1000〜1002に示す各構成要素を組み立てたものを示し、図2の符号1005は、図2の符号1000〜1003に示す各構成要素を組み立てたものを示す。図2の符号1000〜1003に示すように、第1対向部5は、第1部材11、第2部材12、第1操作部16および第2操作部17を有している。
【0024】
図2の符号1000に示すように、第1対向部5の第1部材11は、溝15aおよび溝15bが形成された板状の部材である。また、図2の符号1003に示すように、第2部材12は、矩形の穴18が形成された板状の部材である。
【0025】
図2の符号1002に示すように、第1操作部16は、第1仕切り部3と接続しており、第1操作部16が移動することで、第1仕切り部3も移動する。
【0026】
第1操作部16は、複数のピン19を備えている。第1操作部16は、ピン19が第1部材11の溝15aに差し込まれることにより、溝15aに沿って移動することが可能となる。
【0027】
図2の符号1001に示すように、第2操作部17は、第2仕切り部4と接続しており、第2操作部17が移動することで、第2仕切り部4も移動する。第2操作部17は、複数のピン19を備えている。第2操作部17は、ピン19が第1部材11の溝15bに差し込まれることにより、溝15bに沿って移動することが可能となる。なお、第2操作部17が備えるピン19は、ピン19同士が接続した板状の形状であってもよい。
【0028】
図2の符号1004は、第1部材11上に第1操作部16および第2操作部17を設置した状態を示し、図2の符号1005は、図2の符号1004の状態にさらに第2部材12を設置した状態を示す。図2の符号1005に示すように、第2部材12の穴18からは第2操作部17が露出している。穴18から露出している第2操作部17は、手動で移動させることが可能であり、これにより、採取者は第1仕切り部3および第2仕切り部4を移動させることができる。なお、第1部材11と第2部材12との間は、少なくとも上部は接続し、間が空かないよう構成されている。
【0029】
図2の符号1000〜1003に示すように、溝15aおよび第1操作部16によって第1移動機構13が形成され、溝15bおよび第2操作部17によって第2移動機構14が形成される。
【0030】
図3は、第1移動機構13および第2移動機構14の動作の一例を示す図である。なお、説明のために、図3には、実際は図3に示す状態に組み立てられたときには見えない溝15a、溝15b、およびピン19が図示されている。図3の符号1006に示すように、第1部材11上に第1操作部16および第2操作部17が設けられ、第1操作部16および第2操作部17のピン19は、第1部材11の溝15aおよび溝15bにそれぞれ差し込まれている。図3の符号1007に示すように、第2操作部17が溝15bに沿って移動すると、第2操作部17が第1操作部16を押圧する。これにより、第1操作部16も同時に溝15aに沿って移動し、図3の符号1008に示すように、第1仕切り部3および第2仕切り部4が第1対向部5から突出する。
【0031】
図3の符号1008に示すように、第1操作部16と第2操作部17との間には、第1操作部16および第2操作部17に対して縦方向の力を印加するバネ10が設けられている。第1操作部16および第2操作部17が横方向の溝15aおよび溝15b上に存在する場合、第1操作部16および第2操作部17によってバネ10は縮んだ状態である。第1操作部16および第2操作部17が、溝15aおよび溝15bの右の端部に到達すると、溝15aおよび溝15bは右の端部において縦方向に延びているため、バネ10が伸び、第1操作部16が溝15aに沿って互いに遠ざかる方向に移動する。これにより、第1仕切り部3も溝15aに沿って互いに遠ざかる方向に移動する。
【0032】
第1操作部16のピン19は、溝15aの縦方向の端部に到達すると、バネ10によって押圧されるため、溝15aの縦方向の端部に固定される。これにより、第1操作部16は、第1対向部5内においてピン19が溝15aの縦方向の端に到達したときの位置に固定される。従って、第1操作部16に接続している第1仕切り部3も、同様に固定される。つまり、第1仕切り部3は、バネ10によって第1対向部5に対して固定される。
【0033】
第1操作部16および第1操作部16に接続している第1仕切り部3が第1対向部5に対して固定されたとき、第1仕切り部3と第2仕切り部4との最も近い距離は、5mm〜10mmであることが好ましい。第1操作部16および第2操作部17が固定された時点における第1仕切り部3と第2仕切り部4との距離を5mm以上とすることにより、採取者が所望の範囲50内の毛髪30のみに鋏を入れることが容易となる。また、第1操作部16および第2操作部17が固定された時点における第1仕切り部3と第2仕切り部4との距離を10mm以下とすることにより、より分けた所望の範囲50外の毛髪30の毛先が第1仕切り部3と第2仕切り部4との間に入る可能性を低減できる。
【0034】
<器具1を用いた毛髪30の採取方法の一例>
以下、図1および図4図8を用いて、器具1を用いて所望の範囲50内の毛髪30からなる毛束を形成し、毛髪30を採取する方法について説明する。図4は、毛髪30を採取する位置を特定する方法の一例を示す図である。図5は、頭皮40上に器具1を配置した状態を示す図である。図6は、図5の状態を図5における左方向から見た図である。図7は、第1仕切り部3を互いに遠ざかる方向において移動させる様子を示す図である。図8は、図7の状態を図7における左方向から見た図である。
【0035】
器具1を用いた毛髪30の採取では、まず採取者は、所望の範囲50を特定する。所望の範囲50を特定する方法として、例えば、(1)所望の範囲50を光で示す、(2)採取者がカメラ付眼鏡をかけ、眼鏡の視野内に、拡張現実により、所望の範囲50に目印を表示させる、(3)所望の範囲50を示す、物理的な目印を付ける、等が挙げられる。
【0036】
ここで、上記(1)の方法の一例として、範囲特定システムを用いる例について、具体的に説明する。
【0037】
まず、採取者は、3次元カメラまたは単一カメラ等の撮像装置を用いて、被採取者の頭部を撮像する。次に、範囲特定システムが、撮像した画像に基づいて、所望の範囲50を決定するための基準となる位置を検出する。上記基準となる位置とは、例えば被採取者の左右の耳の上端等である。基準位置を検出する方法としては、例えば、テンプレートマッチング、またはハフ変換(Hough Transform)等、一般的な画像認識技術を用いることができる。
【0038】
次に、範囲特定システムは、上記基準位置に基づいて、所望の範囲50の中心の座標を算出する。最後に、範囲特定システムは、範囲特定システムが備える光を照射可能な装置を用いて、算出した所望の範囲50の中心の座標または所望の範囲50に対して光を照射する。これにより、採取者は所望の範囲50を目視で確認することができる。
【0039】
次に、上記(3)の方法の一例について、具体的に説明する。まず、採取者が、所望の範囲50の中心を外し、図4に示すように矢印60が表示されたヘアピンを所望の範囲50の左右上下に配置する。この時、ヘアピンはより分けの邪魔にならない位置に配置される。矢印60の刺す仮想線の交点が所望の範囲50の中心となる。なお、矢印60が表示されるものは、ヘアピンに限られず、カチューシャのように頭に装着するものでも良い。
【0040】
所望の範囲50を特定した後、採取者は、所望の範囲50を含む毛髪30を立ち上げ、図5および図6に示すように、所望の範囲50の横方向の幅が、対向部2間の幅に重なるよう器具1を縦方向に移動させ、頭皮40上の頭皮40に近い位置に配置する。すなわち、採取者は第1対向部5と第2対向部6との間に所望の範囲50を含んだ箇所の毛髪30を嵌め込む。これにより、所望の範囲50内の横方向の毛髪30は、対向部2によってより分けられる。なお、この時、採取者は所望の範囲50の縦方向の幅が、第2仕切り部4の一対の板4A・4A同士の間の幅に重なるよう器具1を配置する。
【0041】
続いて、採取者は第1操作部16および第2操作部17を右方向に移動させることで、第1仕切り部3および第2仕切り部4を突出させ、第1仕切り部3および第2仕切り部4の右側の先端を第2対向部6に接触させる。これにより、所望の範囲50内の縦方向の毛髪30がより分けられる(図1参照)。
【0042】
次に、図7および図8に示すように、採取者は第1仕切り部3を、互いが遠ざかる方向すなわち縦方向に移動させ、第1対向部5と第2対向部6との間にはめ込まれた所望の範囲50内の毛髪30をさらにより分ける。また、採取者は器具1から所望の範囲50内の毛髪30が脱落しない程度に器具1を頭皮40から遠ざける。これにより、所望の範囲50内の毛髪30のみによる毛束が形成される。
【0043】
ここで、一対の板3A・3A間の距離が長くなりすぎると、一対の板3A・3A間に所望の範囲外の毛髪30が混ざる恐れがあるため、第1仕切り部3は、一対の板3A・3A間の最も短い距離が10mm〜30mmの範囲内において移動することが好ましい。例えば、第1仕切り部3が第1対向部5から突出する時、第1仕切り部3の一対の板3A・3A間の距離は所望の範囲50の縦方向の幅である。
【0044】
最後に、採取者は作成された上記毛束を手またはヘアピン等で留め、鋏等を用いて切断することで所望の範囲50内の毛髪30を採取する。
<器具1による効果>
以上のように、本実施形態における器具1は、互いに対向する一対の対向部としての第1対向部5および第2対向部6と、第1対向部5と第2対向部6との間の空間を区切る一対の第1仕切り部3とを備えている。また、第1対向部5と第2対向部6が対向する方向および第1仕切り部3の板3A・3Aが対向する方向における一対の第1仕切り部3の移動を可能とする第1移動機構13が第1対向部5に形成されている。
【0045】
上記の構成によれば、第1仕切り部3が、第1対向部5から突出し、第1仕切り部3が、互いに遠ざかる方向において移動することにより、所望の範囲50外の毛髪30をより確実に除いた毛束を作成することが可能となる。
【0046】
また、器具1は、一対の第1仕切り部3の間において、第1対向部5と第2対向部6との間の空間を区切る一対の第2仕切り部4を備えている。これにより、器具1は、第1仕切り部3および第2仕切り部4によって所望の範囲50内の毛髪30と所望の範囲50外の毛髪30とをより正確により分けることが可能となる。
【0047】
また、器具1では、第1仕切り部3および第2仕切り部4が、それぞれの先端が第2対向部6に接触するまで移動する。これにより、所望の範囲50外に存在する毛髪30が、所望の範囲50内に侵入することを防ぐことができる。
【0048】
また、本実施形態において、第1対向部5および第2対向部6の横方向の幅をX、第1対向部5と第2対向部6との間の距離をY、第1仕切り部3および第2仕切り部4の横方向の長さをZとすると、Yは5mm〜10mmであり、X>Z≧Yである。Zは、第1仕切り部3および第2仕切り部4の、第1対向部5の長軸に対して垂直な方向と言い換えることもできる。X>Zであることにより、第1仕切り部3および第2仕切り部4を第1対向部5または第2対向部6内に格納することが可能となる。また、Z≧Yであることにより、第1対向部5から突出した第1仕切り部3および第2仕切り部4の右側の先端と第2対向部6とが接触し、所望の範囲50内外の毛髪30が混ざることを防ぐことができる。
【0049】
なお、器具1は、所望の範囲50内の毛髪30をより分けることが可能であればよく、例えば器具1は、第2仕切り部4を備えず、第1仕切り部3のみによって毛髪30をより分ける構成としてもよい。
【0050】
また、上記の例では、第1操作部16が、バネ10の弾性力を利用して縦方向における移動を行ったが、第1操作部16は、手動で移動する構成としてもよい。
【0051】
また、第1操作部16および第2操作部17は第1対向部5内部に設けられる必要はなく、例えば図2の符号1004に示すような状態で第1対向部5上に設けられていてもよい。
【0052】
第1移動機構13および第2移動機構14は、必ずしも第1対向部5に設けられる必要はなく、第2対向部6に設けられてもよい。
【0053】
また、第1移動機構13および第2移動機構14の構成は上述したものに限られない。第1移動機構13および第2移動機構14は、第1仕切り部3および第2仕切り部4を任意の位置まで移動させることにより、所望の範囲50内の毛髪30をより分けることが可能であればよい。
【0054】
ピン19は、弾性体であり、且つ第1操作部16および第2操作部17側において太く、溝15aおよび溝15b側において細くなるよう形成されていてもよい。この場合、採取者はピン19を溝15aおよび溝15b側に押し込むことによって、第1操作部16および第2操作部17を、任意の位置において固定することができる。
【0055】
また、第1仕切り部3および第2仕切り部4の移動方向は、上記の例では縦方向および横方向としたが、これらに限られるものではない。上記移動方向は、所望の範囲50内の毛髪30をより分けることが可能であれば、どのような方向であってもよい。例えば、所望の範囲50が円形である場合、第1仕切り部3および第2仕切り部4は、第1対向部5から突出する際、弧を描くように移動してもよい。
【0056】
〔変形例〕
図9は、第1移動機構13および第2移動機構14の構成の別の例を示す図である。第1移動機構13aおよび第2移動機構14aは、第1対向部5に設けられている。図9の符号1009〜1012は、第1対向部5の分解図を示す。図9の符号1009〜1012に示すように、第1対向部5は、第1部材11a、第2部材12a、第1操作部16aおよび第2操作部17aを有している。
【0057】
図9の符号1009に示すように、第1部材11aは、溝15cが形成された板状の部材であり、図9の符号1012に示すように、第2部材12aは、矩形の穴18aが形成された板状の部材である。また、図9の符号1011に示すように、第1操作部16aは、複数のピン19aおよび紙面奥方向および手前方向に移動可能なストッパ20を備えている。また、図9の符号1010に示すように第2操作部17aは、溝15d、複数のピン19aおよびストッパ用穴21を備えている。
【0058】
図9の符号1009〜1012に示すように、溝15dおよび第1操作部16aによって第1移動機構13aが形成され、溝15cおよび第2操作部17aによって第2移動機構14aが形成される。
【0059】
図9の符号1013は、図9の符号1009〜1011に示す各構成要素を組み立てたものを示し、図9の符号1014は、図9の符号1009〜1012に示す各構成要素を組み立てたものを示す。
【0060】
図9の符号1013に示すように、第2操作部17aは、第1部材11a上に設けられ、第2操作部17aのピン19aは溝15cに差し込まれている。これにより、第2操作部17aは、溝15cに沿って移動することが可能である。
【0061】
第1操作部16aは、ピン19aが溝15dに差し込まれることにより、溝15dに沿って移動することが可能となる。また、ストッパ20は、ストッパ用穴21に差し込まれている。ストッパ20は、後述するバネ10aの動きを制限する。
【0062】
図9の符号1014に示すように、第2部材12aの穴18aからは、第1操作部16aおよび第2操作部17aが露出している。穴18aから露出している第2操作部17aは、手動で移動することが可能であり、これにより採取者は第1仕切り部3および第2仕切り部4を移動させることができる。
【0063】
第2操作部17aを溝15cに沿って移動させると、第2操作部17a上に設けられている第1操作部16aも移動する。これにより、第1仕切り部3および第2仕切り部4が、第1対向部5から突出する。第1操作部16a間には、図9の符号1013に示すように、第1操作部16aの板間に対して縦方向の力を印加するバネ10aが設けられている。第1操作部16aは、初めは、ストッパ用穴21に差し込まれたストッパ20によって縦方向の移動が制限されている。このため、第1仕切り部3および第2仕切り部4が第1対向部5から完全に突出したとしても、第1操作部16aが縦方向に移動することはない。第1仕切り部3および第2仕切り部4が完全に第1対向部5から突出した状態において採取者がストッパ20をストッパ用穴21から引き出すと、バネ10aが伸び、バネ10aの押圧力によって第1仕切り部3が溝15dに沿って互いに遠ざかる方向に移動する。
【0064】
なお、図9に示す例では、第1操作部16aと第2操作部17aとが重なっているため、第1仕切り部3を頭皮40方向に厚くすることで、第1仕切り部3と第2仕切り部4とが、頭皮40側と対向する面において水平になるよう構成することが好ましい。
【0065】
ストッパ20は、第1操作部16aの移動を制限することができるものであればよく、例えば円柱または直方体である。また、ストッパ20の数は、特に限定されない。例えばストッパ20は、第1操作部16aのそれぞれの板上に複数設けられていてもよい。
【0066】
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0067】
図10は、本開示の実施形態2に係る器具1aの構成を示す概略図である。また、図11は、図10の状態を図10における左方向から見た図である。図10に示すように、器具1aは、第2仕切り部4の間に第1仕切り部3aを備えている。
【0068】
本実施形態において、第1仕切り部3aは、第1対向部5aから突出した後、互いに近づく方向に移動する。また、第1仕切り部3aは、所望の範囲50内の毛髪30を十分により分けるために、一対の板3A・3A間の最も短い距離が1mm〜10mmの範囲内において移動することが好ましい。
【0069】
本実施形態における器具1の第1対向部5aは、内部に第1移動機構13bおよび第2移動機構14bを備えている。図12は、本実施形態に係る第1移動機構13bおよび第2移動機構14bの構成を示す図である。
【0070】
図12の符号1015〜1017は、第1対向部5aの分解図を示し、図12の符号1018は、図12の符号1015〜1017に示す各構成要素を組み立てたものを示す。図12の符号1015〜1017に示すように、第1対向部5aは、第1部材11a、第1操作部16aおよび第2操作部17bを有している。なお、第1対向部5aは、図12には示していないが、図9に示している第2部材12aも備えている。図12の符号1017に示す第2操作部17bは、溝15dの代わりに溝15eを備えること以外は図9の符号1010に示す第2操作部17aと同様の部材である。
【0071】
図12の符号1018に示すように、溝15eおよび第1操作部16aによって第1移動機構13bが形成され、溝15cおよび第2操作部17bによって第2移動機構14bが形成される。
【0072】
採取者が第2操作部17bを溝15cに沿って移動させると、第2操作部17b上に設けられている第1操作部16aも右方向に移動する。これにより、第1仕切り部3aおよび第2仕切り部4が、第1対向部5aから突出する。
【0073】
本実施形態において、第1操作部16aと第2操作部17bとの間には、図12の符号1018に示すように、第1操作部16aの板間に対して縦方向の力を印加するバネ10bが設けられている。バネ10bの両端部は、各第1操作部16aを接続するように固定されている。第1操作部16aは、初めは、ストッパ用穴21に差し込まれたストッパ20によって縦方向の移動が制限されている。このため、第1仕切り部3aおよび第2仕切り部4が第1対向部5aから完全に突出したとしても、第1操作部16aが縦方向に移動することはない。第1仕切り部3aおよび第2仕切り部4が完全に第1対向部5aから突出した状態において採取者がストッパ20をストッパ用穴21から引き出すと、バネ10bが縮み、第1仕切り部3aが溝15eに沿って互いに近づく方向に移動する。
【0074】
第1操作部16aのピン19aは、溝15eの縦方向の端部に到達すると、バネ10bによって牽引されるため、溝15eの縦方向の端部に固定される。これにより、第1操作部16aは、第1対向部5a内においてピン19aが溝15eの縦方向の端に到達したときの位置に固定される。従って、第1操作部16aに接続している第1仕切り部3aも、同様に固定される。つまり、第1仕切り部3は、バネ10bによって第1対向部5に対して固定される。
【0075】
以上のように、本実施形態における器具1aは、互いに対向する一対の対向部としての第1対向部5aおよび第2対向部6と、第1対向部5aと第2対向部6との間の空間を区切る一対の第1仕切り部3aとを備えている。また、縦方向および横方向における一対の第1仕切り部3aの移動を可能とする第1移動機構13bが第1対向部5aに形成されている。第1仕切り部3aは、互いに近づく方向に移動可能となっている。
【0076】
上記構成により、所望の範囲50内の毛髪30の幅が狭まるため、採取者が所望の範囲50内の毛髪30による毛束を採取する際、採取者が手でつまむまたはヘアピンで留めることを簡単に行える。また、器具1aは、第1仕切り部3aをさらに狭められるよう構成されることにより、器具1aのみによって上記毛束を留めることも可能となる。これにより、採取者は毛髪30の採取をさらに簡便に行うことができる。
【0077】
また、器具1aは、一対の第1仕切り部3aの外側において、第1対向部5aと第2対向部6との間の空間を区切る一対の第2仕切り部4をさらに備え、縦方向における前記第2仕切り部4の移動を可能とする第2移動機構14bが第1対向部5aに形成されている。上記の構成によれば、器具1aは、第1仕切り部3aおよび第2仕切り部4によって所望の範囲50内の毛髪30と所望の範囲50外の毛髪30とをより正確により分けることが可能となる。
【0078】
第1移動機構13bによって第1仕切り部3aが移動した後、第1仕切り部3aが固定されたとき、第1仕切り部3aと第2仕切り部4との間の最も近い距離は、5mm〜10mmであることが好ましい。
【0079】
〔実施形態3〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0080】
実施形態1において、第2仕切り部4は横方向にのみ移動可能であったが、第2仕切り部4が、互いに近づく方向において移動することができる構成としてもよい。
【0081】
この場合、第1仕切り部3が互いに遠ざかる方向に移動し、また、第2仕切り部4が、互いに近づく方向において移動するため、器具1は、所望の範囲50内の毛髪30を、さらに確実により分けることが可能となる。
【0082】
なお、第2仕切り部4が互いに近づく方向において移動する際も、第2仕切り部4の右側の先端は、第2対向部6と接触した状態である。
【0083】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0084】
1、1a 器具
2 対向部
3 第1仕切り部
4 第2仕切り部
5 第1対向部
6 第2対向部
10、10a、10b バネ(固定部材)
13 第1移動機構
14 第2移動機構
30 毛髪
40 頭皮
50 所望の範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12