【解決手段】実施形態に係る推定装置は、電圧が所定範囲外への端点に到達した場合に定電圧による充放電状態となるように制御される電池の充電率を推定する推定装置であって、制御部を備える。制御部は、上記電圧が所定範囲外であり、かつ、電池の充放電電流の絶対値が所定の電流閾値以下である場合に、少なくとも電池の温度を含む電池状態に応じて可変するように予め設定されたリセット値によって上記充電率をリセットする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する推定装置、推定システムおよび推定方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
また、以下では、実施形態に係る推定システム1が、車両に搭載されるLIB3(
図2A参照)の電池パック2(
図2A参照)を含み、実施形態に係る推定装置10がかかる電池パック2に含まれる場合を例に挙げて説明する。
【0015】
まず、実施形態に係る推定方法の概要について、
図1Aおよび
図1Bを用いて説明する。
図1Aは、実施形態に係る推定方法の概要説明図(その1)である。また、
図1Bは、実施形態に係る推定方法の概要説明図(その2)である。
【0016】
ところで、LIB3のSOCの0%や100%というものは、性能が保証されている所定の電圧範囲で定義されており、たとえば定電流(CC:Constant Current)モードおよび定電圧(CV:Constant Voltage)モードを組み合わせた方法で充放電が行われる。
【0017】
たとえば、セル電圧が所定の電圧に到達するまではCCモードで充放電が行われ、セル電圧が所定の電圧に到達したならば、過充放電保護のためにCVモードでの充放電が行われることとなる。実施形態に係る推定方法は、かかるCVモードでの充放電中に、CVモードであることにより充放電電流の変化量が絞られて充放電がされにくくなる特性に着目し、これを利用するものである。
【0018】
なお、以下では、CVモードでの充電を「CV充電」と言い、CVモードでの放電を「CV放電」と言い、まとめては「CV充放電」と言う場合がある。同様に、CCモードでの充電を「CC充電」と言い、CCモードでの放電を「CC放電」と言い、まとめては「CC充放電」と言う場合がある。
【0019】
具体的には、
図1Aに示すように、実施形態に係る推定方法では、まずCV充電時においては、セル電圧がCV充電領域に到達するとともに、これに応じて充放電電流の変化量が所定量以下である状態が継続するならば、実験等により事前に導出された電池状態とSOCリセット値との関係性を示す特性マップにおける当該条件成立時のSOCリセット値により、SOC推定値をリセットする。
【0020】
より具体的には、同図に示すように、実施形態に係る推定方法では、CV充電時においては、(セル電圧≧電圧閾値TH
V1)AND(充放電電流≦電流閾値TH
C1がn秒継続)との条件が成立したならば、電池状態−SOCリセット値特性マップにおける当該条件成立時のSOCリセット値でSOC推定値をリセットする。
【0021】
一方、
図1Bに示すように、CV放電時においては、実施形態に係る推定方法では、セル電圧がCV放電領域に到達するとともに、これに応じて充放電電流の変化量が所定量以下である状態が継続するならば、上述の特性マップにおける当該条件成立時のSOCリセット値により、SOC推定値をリセットする。
【0022】
より具体的には、同図に示すように、実施形態に係る推定方法では、CV放電時においては、(セル電圧≦電圧閾値TH
V2)AND(充放電電流≧電流閾値TH
C2がn秒継続)との条件が成立したならば、電池状態−SOCリセット値特性マップにおける当該条件成立時のSOCリセット値でSOC推定値をリセットする。なお、本実施形態においては、電流値の表記として、充電時を正、放電時を負として扱う。そのため、
図1Aでは充放電電流は正であるが、
図1Bでは充放電電流は負として表している。
【0023】
なお、電池状態−SOCリセット値特性マップは、たとえばCV充放電中の入力電流状態およびセル温度を各次元とする2次元マップ上にSOCリセット値をマッピングしたものとして構成される。その具体例については、後ほど
図3に示すこととする。
【0024】
このように、実施形態に係る推定方法では、セル電圧が所定範囲外への端点に到達して定電圧状態となるとともに、充放電電流の絶対値が所定値以下となった場合に、少なくともセル温度を含む電池状態に応じて可変するように予め設定されたSOCリセット値によってSOCをリセットすることとした。
【0025】
したがって、実施形態に係る推定方法によれば、OCV−SOC特性を利用するのみによってSOCをリセットする場合等に対して、リセットのタイミングを増加させ、たとえばCV充放電中にSOCのリセットを行うことができる。すなわち、実施形態に係る推定方法によれば、SOC推定の精度を向上させることができる。
【0026】
以下、上述した推定方法を適用した推定装置10を含む推定システム1について、さらに具体的に説明する。
【0027】
図2Aは、実施形態に係る推定システム1のブロック図である。また、
図2Bは、実施形態に係る推定装置10のブロック図である。なお、
図2Aおよび
図2Bでは、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0028】
換言すれば、
図2Aおよび
図2Bに図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0029】
図2Aに示すように、推定システム1は、電池パック2と、上位ECU(Electronic Control Unit)20とを含む。電池パック2は、LIB3と、電流センサ4と、電圧センサ5と、温度センサ6と、推定装置10とを備える。推定装置10は、記憶部11と、制御部12とを備える。
【0030】
LIB3は、車両に搭載されるリチウムイオン二次電池である。電流センサ4は、LIB3と推定装置10との間に設けられ、LIB3からの入力電流を検出して制御部12へ出力する。
【0031】
電圧センサ5は、LIB3と推定装置10との間など、LIB3への入力電流値が計測できる箇所に設けられ、LIB3のセル電圧を検出して制御部12へ出力する。温度センサ6は、LIB3と推定装置10との間に設けられ、LIB3のセル温度を検出して制御部12へ出力する。
【0032】
上位ECU20は、たとえば電池パック2の状態を監視するECUであって、制御部12によって推定され、制御部12から出力されるSOCを受け取る。
【0033】
つづいて、推定装置10について説明する。既に述べたが、
図2Bに示すように、推定装置10は、記憶部11と、制御部12とを備える。記憶部11は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、
図2Bの例では、特性マップ11aを記憶する。
【0034】
特性マップ11aは、上述した電池状態−SOCリセット値特性マップである。ここで、実施形態に係る特性マップ11aの具体的な構成例について
図3を用いて説明する。
図3は、実施形態に係る特性マップ11aの構成の一例を示す図である。
【0035】
図3に示すように、特性マップ11aは、たとえばCV充電中またはCV放電中それぞれにおける、入力電流状態およびセル温度を各次元とする2次元マップ上にSOCリセット値をマッピングしたものとして構成される。
【0036】
同図に示すように、入力電流状態は、入力電流値の絶対値が所定の閾値以下で所定時間継続することを示すものであって、かかる各入力状態と各セル温度との組み合わせごとに、事前の実験等により導出されたSOCリセット値がマッピングされる。なお、SOCリセット値は、かかる各入力状態と各セル温度との組み合わせに応じて、SOCリセット値が少なくとも可変となる、すなわち動的に変化するように設定される。
【0037】
なお、同図に示した各SOCリセット値は、あくまで一例を示すものであって、実際の設定値を限定するものではない。
【0038】
図2Bの説明に戻る。制御部12は、コントローラ(controller)であり、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部11を含む推定装置10内部の記憶デバイスに記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部12は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0039】
制御部12は、クーロンカウント部12aと、リセット制御部12bと、第1リセット部12cと、第2リセット部12dと、算出部12eとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0040】
クーロンカウント部12aは、電流センサ4によって検出された入力電流に基づく電流積算を実行し、積算値を算出部12eへ出力する。
【0041】
リセット制御部12bは、電流センサ4によって検出された入力電流、電圧センサ5によって検出されたセル電圧、および、温度センサ6によって検出されたセル温度に応じ、第1リセット部12cに第1リセット処理を、第2リセット部12dに第2リセット処理をそれぞれ実行させる。
【0042】
第1リセット部12cは、たとえば車両が安定状態にある場合に、セル電圧に基づき、OCV−SOC特性を利用したSOCリセット値を導出し、算出部12eへ出力する。
【0043】
第2リセット部12dは、
図1Aおよび
図1Bを用いて説明した実施形態に係る推定方法を適用した、CV充放電中におけるSOCのリセット処理を実行する。すなわち、第2リセット部12dは、入力電流、セル電圧およびセル温度に基づき、CV充放電中に所定の条件が成立した場合に(
図1Aおよび
図1B参照)、特性マップ11aにおける当該条件成立時のSOCリセット値を導出し、算出部12eへ出力する。
【0044】
算出部12eは、クーロンカウント部12aからの積算値を受け付けた場合に、かかる積算値に基づいてSOC推定値を算出し、上位ECU20へ出力する。また、算出部12eは、第1リセット部12cからのSOCリセット値を受け付けた場合に、SOC推定値をかかるSOCリセット値によりリセットして、上位ECU20へ出力する。
【0045】
また、算出部12eは、第2リセット部12dからのSOCリセット値を受け付けた場合に、SOC推定値をかかるSOCリセット値によりリセットして、上位ECU20へ出力する。
【0046】
次に、実施形態に係る第2リセット部12dが実行する処理手順について、
図4を用いて説明する。
図4は、実施形態に係る第2リセット部12dが実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
図4に示すように、第2リセット部12dは、セル電圧が所定範囲外への端点に到達したか否かを判定する(ステップS101)。ここで、セル電圧が所定範囲外への端点に到達した場合(ステップS101,Yes)、第2リセット部12dは、充放電電流の絶対値が所定の閾値以下の状態であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0048】
そして、充放電電流の絶対値が所定の閾値以下の状態である場合(ステップS102,Yes)、第2リセット部12dは、かかる状態が所定時間継続するか否かを判定する(ステップS103)。
【0049】
そして、かかる状態が所定時間継続する場合(ステップS103,Yes)、第2リセット部12dは、特性マップ11aにおいて当該状態に該当するSOCリセット値でSOC推定値をリセットさせる(ステップS104)。
【0050】
そして、第2リセット部12dは、ステップS101からの処理を繰り返す。なお、ステップS101,S102,S103の判定条件を満たさない場合も(ステップS101,No/ステップS102,No/ステップS103,No)、ステップS101からの処理を繰り返すこととなる。
【0051】
上述してきたように、実施形態に係る推定装置10は、電圧が所定範囲外への端点に到達した場合に定電圧による充放電状態となるように制御されるLIB3(「電池」の一例に相当)のSOC(「充電率」の一例に相当)を推定する推定装置10であって、制御部12を備える。制御部12は、上記電圧が所定範囲外であり、かつ、LIB3の充放電電流の絶対値が所定の電流閾値以下である場合に、少なくともLIB3の温度を含む電池状態に応じて可変するように予め設定されたSOCリセット値(「リセット値」の一例に相当)によってSOCをリセットする。
【0052】
したがって、実施形態に係る推定装置10によれば、SOC推定の精度を向上させることができる。
【0053】
また、上記電池状態は、複数の上記電流閾値で区切られる上記充放電電流の入力電流状態をさらに含み、制御部12は、上記入力電流状態のそれぞれと上記温度との組み合わせごとにSOCリセット値が予め設定された特性マップ11aに基づいてSOCリセット値を導出する。
【0054】
したがって、実施形態に係る推定装置10によれば、入力電流状態およびセル温度の組み合わせに基づく多様な電池状態に応じて可変するように設定された特性マップ11aのSOCリセット値によりSOC推定値をリセットすることで、SOC推定の精度を向上させることができる。
【0055】
また、制御部12は、上記絶対値が上記電流閾値以下である状態が所定時間継続する場合に、特性マップ11aに基づいてSOCリセット値を導出する。
【0056】
したがって、実施形態に係る推定装置10によれば、瞬間のノイズ的な挙動を示す電池状態においてはSOCのリセットを行わないようにすることができ、SOC推定の精度を向上させることができる。
【0057】
なお、上述した実施形態では、推定装置10が電池パック2に含まれる場合を例に挙げたが、無論、LIB3を含む電池パック2と、推定装置10とは、別体で構成されてもよい。
【0058】
また、上述した実施形態では、LIB3が搭載される機器が車両である場合を例に挙げたが、車両に限定されるものではない。たとえば、LIB3が、携帯電話やノートパソコンをはじめとする多様な電子機器・電気機器へ搭載される場合であってもよい。
【0059】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。