【課題】磁気センサが、所定の平面内で方向が変化する磁界を検出するのに適したMR素子を含み、検出対象磁界が、所定の平面外の方向を含む可変範囲内で方向が変化するものであっても、検出精度の低下を抑制できるようにする。
【解決手段】位置検出装置1は、検出対象磁界を発生する磁石2と、磁気センサ3を備えている。磁気センサ3は、検出対象磁界を検出して、磁石2の位置に対応する検出値を生成する。磁気センサ3は、MR素子と基板を含んでいる。基板は、主面を含んでいる。MR素子が受ける検出対象磁界は、第1の平面PL1内で変化する第1の方向D1を有している。MR素子は、主面に平行な第2の平面PL2内において変化可能な方向の第1の磁化を有する磁性層を含んでいる。第1の平面PL1と第2の平面PL2は、90°以外の二面角αをなして交差している。検出値は、第1の磁化の方向に依存する。
前記第1の磁性層は、前記第1の方向が前記可変範囲内の少なくとも一部の範囲内にあるときに、前記検出対象磁界によって前記第1の磁化が飽和状態になる特性を有することを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。
前記磁気抵抗効果素子は、更に、前記第2の平面に平行な方向の第2の磁化を有する第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の間に配置されたギャップ層とを含むことを特徴とする請求項1または2記載の位置検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された磁気センサでは、軟磁性体に起因して発生する不要な磁界や軟磁性体の磁気ヒステリシス特性によって、検知精度が低下する場合があるという問題点がある。
【0010】
次に、特許文献2ないし4に記載された装置における問題点について説明する。以下、特許文献3,4においてZ方向成分を検出するためのセンサを、Z方向センサと言う。また、特許文献2において磁気抵抗素子に印加される磁界と、特許文献3,4においてZ方向センサに印加される磁界を、印加磁界と言う。また、印加磁界の成分であって特許文献2における磁気抵抗素子が感度を有する成分と、印加磁界の成分であって特許文献3,4におけるZ方向センサが感度を有する成分を、感度成分と言う。
【0011】
印加磁界の強度には、装置の構成要素の配置のばらつき等によって、ばらつきが生じ得る。特許文献2ないし4に記載された装置では、印加磁界の強度のばらつきに対する検出精度の低下の程度が大きいという問題点がある。以下、これについて詳しく説明する。
【0012】
まず、感度成分の強度が小さくなるほど、印加磁界の強度のばらつきに対する検出精度の低下の程度が大きくなる。特許文献2に記載された装置では、印加磁界の方向は、傾斜面に垂直な磁界のふれ面内で変化する。そのため、この装置では、印加磁界の方向は、傾斜面に垂直な方向すなわち磁気抵抗素子が感度を有さない方向になり得る。従って、この装置では、感度成分の強度が0になり得る。
【0013】
また、特許文献3,4に記載された装置では、印加磁界の方向は、傾斜面に垂直な方向すなわちZ方向センサが感度を有さない方向になり得る。従って、この装置では、感度成分の強度が0になり得る。
【0014】
特許文献2ないし4に記載された装置では、特に、印加磁界の方向が、感度成分の強度が0または0に近い値になるような方向のときに、印加磁界の強度のばらつきに対する検出精度の低下の程度が大きくなる。
【0015】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、検出対象磁界を検出して検出値を生成する磁気センサを備えた位置検出装置であって、磁気センサが、所定の平面内で方向が変化する磁界を検出するのに適した磁気抵抗効果素子を含み、検出対象磁界が、所定の平面外の方向を含む可変範囲内で方向が変化するものであっても、検出精度の低下を抑制しながら検出値を生成できるようにした位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点の位置検出装置は、検出対象磁界を発生する磁界発生器と、磁気センサとを備えている。磁気センサは、検出対象磁界を検出して、磁気センサに対する磁界発生器の相対的な位置に対応する検出値を生成する。
【0017】
磁気センサは、磁気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子を支持する基板とを含んでいる。基板は、平面からなる主面を含んでいる。磁気抵抗効果素子が受ける検出対象磁界は、第1の平面内において第1の方向を有している。磁界発生器と磁気センサは、磁気センサに対する磁界発生器の相対的な位置が変化すると、第1の方向が第1の平面内において所定の可変範囲内で変化するように構成されている。磁気抵抗効果素子は、主面に平行な第2の平面内において変化可能な方向の第1の磁化を有する第1の磁性層を含んでいる。第1の平面と第2の平面は、90°以外の二面角をなして交差している。
【0018】
磁気抵抗効果素子が受ける検出対象磁界は、第2の平面に平行な面内成分と第2の平面に垂直な垂直成分に分けることができる。面内成分は、第1の方向の変化に応じて変化する第2の方向を有している。第1の磁化の方向は、第2の方向の変化に応じて変化する。検出値は、第1の磁化の方向に依存する。
【0019】
本発明の第1の観点の位置検出装置において、第1の磁性層は、第1の方向が可変範囲内の少なくとも一部の範囲内にあるときに、検出対象磁界によって第1の磁化が飽和状態になる特性を有していてもよい。
【0020】
また、本発明の第1の観点の位置検出装置において、磁気抵抗効果素子は、更に、第2の平面に平行な方向の第2の磁化を有する第2の磁性層と、第1の磁性層と第2の磁性層の間に配置されたギャップ層とを含んでいてもよい。
【0021】
また、本発明の第1の観点の位置検出装置において、二面角は、30°〜84°の範囲内であってもよい。
【0022】
また、本発明の第1の観点の位置検出装置において、磁界発生器は磁石であってもよい。磁気センサに対する磁界発生器の相対的な位置は、磁石中の所定の点が主面に平行な直線状の可動範囲内を移動するように変化可能であってもよい。磁石は、可動範囲を含み主面に垂直な垂直面に平行な方向の磁化を有していてもよい。磁気抵抗効果素子は、垂直面と交差しない位置に配置されていてもよい。
【0023】
本発明の第2の観点の位置検出装置は、検出対象磁界を発生する磁石と、磁気センサとを備えている。磁気センサは、検出対象磁界を検出して、磁気センサに対する磁石の相対的な位置に対応する検出値を生成する。磁気センサは、磁気抵抗効果素子と、磁気抵抗効果素子を支持する基板とを含んでいる。基板は、平面からなる主面を含んでいる。
【0024】
本発明の第2の観点の位置検出装置において、磁気抵抗効果素子は、主面に平行な基準平面内において磁気抵抗効果素子が受ける検出対象磁界の方向に応じて変化可能な方向の第1の磁化を有する第1の磁性層を含んでいる。磁気センサに対する磁石の相対的な位置は、磁石中の所定の点が主面に平行な直線状の可動範囲内を移動するように変化可能である。磁石は、可動範囲を含み主面に垂直な垂直面に平行な方向の磁化を有している。磁気抵抗効果素子は、垂直面と交差しない位置に配置されている。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の観点の位置検出装置では、第1の平面と第2の平面が90°以外の二面角をなして交差することにより、検出対象磁界が存在する限り、可変範囲内における第1の方向に関わらず、面内成分の強度が0になることはない。そのため、第1の観点の位置検出装置によれば、磁気センサが、所定の平面内で方向が変化する磁界を検出するのに適した磁気抵抗効果素子を含み、検出対象磁界が、所定の平面外の方向を含む可変範囲内で方向が変化するものであっても、検出精度の低下を抑制しながら検出値を生成することができるという効果を奏する。
【0026】
本発明の第2の観点の位置検出装置では、磁気センサに対する磁石の相対的な位置が、磁石中の所定の点が主面に平行な直線状の可動範囲内を移動するように変化可能であり、磁石が、可動範囲を含み主面に垂直な垂直面に平行な方向の磁化を有し、磁気抵抗効果素子が、垂直面と交差しない位置に配置されていることにより、検出対象磁界が存在する限り、検出対象磁界の、基準平面に平行な成分の強度が0になることはない。そのため、第2の観点の位置検出装置によれば、磁気センサが、所定の平面内で方向が変化する磁界を検出するのに適した磁気抵抗効果素子を含み、検出対象磁界が、所定の平面外の方向を含む可変範囲内で方向が変化するものであっても、検出精度の低下を抑制しながら検出値を生成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1および
図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る位置検出装置の概略について説明する。
図1および
図2に示したように、本実施の形態に係る位置検出装置1は、検出対象磁界を発生する磁界発生器2と、磁気センサ3とを備えている。磁気センサ3は、検出対象磁界を検出して、磁気センサ3に対する磁界発生器2の相対的な位置に対応する検出値θsを生成する。本実施の形態では特に、磁界発生器2は磁石である。以下、磁石についても符号2で表す。また、磁石2に関する説明は、磁界発生器2にも当てはまる。
【0029】
後で詳しく説明するが、磁気センサ3は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子(以下、MR素子と記す。)と、少なくとも1つのMR素子を支持する基板とを含んでいる。
【0030】
ここで、
図1および
図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、基板の主面に垂直な一方向(
図1および
図2では上側に向かう方向)をZ方向とする。X方向とY方向は、いずれも、基板の主面に対して平行な方向である。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とし、Z方向とは反対の方向を−Z方向とする。また、以下、基準の位置に対してZ方向の先にある位置を「上方」と言い、基準の位置に対して「上方」とは反対側にある位置を「下方」と言う。
【0031】
磁気センサ3に対する磁石2の相対的な位置は、磁石2中の所定の点が所定の可動範囲RM内を移動するように変化可能である。以下、磁気センサ3に対する磁石2の相対的な位置を、単に、磁石2の位置と言う。また、上記の磁石2中の所定の点を、位置基準点と言い、符号2Cで表す。位置基準点2Cは、例えば、磁石2の重心等の磁石2の内部の点であってもよいし、磁石2の表面上の点であってもよい。以下の説明では、磁石2の重心を位置基準点2Cとする。
【0032】
可動範囲RMは、主面に垂直な垂直面VP内に存在している。垂直面VPは、
図1に示している。また、
図2は垂直面VPを表している。本実施の形態では特に、垂直面VPはYZ平面である。可動範囲RMは、主面に平行な直線状である。
図2に示したように、可動範囲RMは、Y方向に平行な線分で表される。
【0033】
磁石2は、垂直面VPに平行な方向の磁化を有している。本実施の形態では特に、磁石2は、−Y方向の磁化を有している。
図1および
図2において、符号2Mを付した矢印は、磁石2の磁化の方向を表している。
【0034】
次に、
図3および
図4を参照して、磁気センサ3の構成の一例について説明する。
図3は、磁気センサ3の構成の一例を示す斜視図である。
図4は、磁気センサ3の回路構成の一例を示す回路図である。この例では、
図3に示したように、磁気センサ3は、4つのMR素子R1,R2,R3,R4と、MR素子R1,R2,R3,R4を支持する基板10とを含んでいる。基板10は、平板状である。基板10は、いずれも平面からなる上面10aおよび底面10bを有している。上面10aは、基板10におけるZ方向の端に位置する。底面10bは、基板10における−Z方向の端に位置する。上面10aおよび底面10bは、いずれもXY平面であり、前述の主面に相当する。MR素子R1,R2,R3,R4は、上面10a上に配置されている。
【0035】
以下、MR素子R1,R2,R3,R4のうちの任意のMR素子について説明する際には、そのMR素子を記号Rで表す。MR素子Rが受ける検出対象磁界は、第1の平面内において第1の方向を有している。磁石2と磁気センサ3は、磁石2の位置が変化すると、第1の方向が第1の平面内において所定の可変範囲内で変化するように構成されている。
【0036】
磁気センサ3が複数のMR素子Rを含む場合、上記の第1の平面と第1の方向はMR素子R毎に定義される。しかし、MR素子R1,R2,R3,R4は、検出対象磁界を受ける位置によって検出対象磁界の方向の実質的な相違が生じない領域内に配置されている。そのため、MR素子R1,R2,R3,R4が受ける検出対象磁界の方向は、実質的に同じである。また、MR素子R1,R2,R3,R4に対応する第1の平面は互いに平行である。そこで、以下の説明では、MR素子R毎の第1の平面を、記号PL1を付した1つの第1の平面で代表して表す。第1の平面PL1は、
図1に示している。第1の平面PL1は、MR素子R1,R2,R3,R4に対応する第1の平面と平行である。また、第1の平面PL1上の基準位置P0における検出対象磁界の方向を、第1の方向D1と言う。第1の方向D1は、MR素子R1,R2,R3,R4に対応する第1の方向と同じ方向である。以下、MR素子R毎の第1の方向を、第1の方向D1で代表して表す。
【0037】
MR素子Rは、主面に平行な第2の平面PL2内において変化可能な方向の第1の磁化を有する第1の磁性層を含んでいる。第2の平面PL2は、
図1に示している。本実施の形態では特に、第2の平面PL2はXY平面である。
【0038】
図1に示したように、第1の平面PL1と第2の平面PL2は、90°以外の二面角αをなして交差している。αは、0°よりも大きく90°よりも小さい角度である。
【0039】
ここで、Z方向からX方向に向かってαだけ回転した方向をV方向とする。また、V方向とは反対の方向を−V方向とする。第1の平面PL1は、Y方向およびV方向に平行な平面すなわちYV平面である。
【0040】
図1に示したように、磁気センサ3は、垂直面VPと交差しない位置に配置されている。従って、磁気センサ3に含まれるMR素子Rも、垂直面VPと交差しない位置に配置されている。具体的には、磁気センサ3およびMR素子Rは、垂直面VPと第2の平面PL2との交線に対して−X方向の先に位置している。磁石2は、第2の平面PL2の上方に位置している。
【0041】
MR素子Rが受ける検出対象磁界は、第2の平面PL2に平行な面内成分と第2の平面PL2に垂直な垂直成分に分けることができる。
【0042】
本実施の形態において、第2の平面PL2を基準平面RPとも言う。この基準平面RPを用いて表現すると、MR素子Rの第1の磁性層は、主面に平行な基準平面RP内において変化可能な方向の第1の磁化を有していると言える。また、第1の平面PL1と基準平面RPは、90°以外の二面角αをなして交差している。
【0043】
MR素子Rは、スピンバルブ型のMR素子であってもよいし、異方性MR素子であってもよい。本実施の形態では特に、MR素子Rは、スピンバルブ型のMR素子である。この場合、MR素子Rは、前述の第1の磁性層の他に、第2の平面PL2に平行な方向の第2の磁化を有する第2の磁性層と、第1の磁性層と第2の磁性層の間に配置されたギャップ層とを含んでいる。第2の磁化の方向は変化しない。スピンバルブ型のMR素子は、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよい。TMR素子では、ギャップ層はトンネルバリア層である。GMR素子では、ギャップ層は非磁性導電層である。MR素子Rでは、第1の磁性層の第1の磁化の方向が第2の磁性層の第2の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。
図3および
図4において、塗りつぶした矢印は、第2の磁化の方向を表している。
【0044】
本実施の形態では、MR素子R1,R4における第2の磁化の方向は−X方向であり、MR素子R2,R3における第2の磁化の方向はX方向である。第2の磁化の方向は、MR素子Rの作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
【0045】
図4に示したように、磁気センサ3は、更に、電源端V1と、グランド端Gと、第1の信号出力端E1と、第2の信号出力端E2を含んでいる。MR素子R1とMR素子R2は、信号出力端E1を介して直列に接続されている。MR素子R1は、電源端V1と第1の信号出力端E1との間に設けられている。MR素子R2は、第1の信号出力端E1とグランド端Gとの間に設けられている。MR素子R3とMR素子R4は、第2の信号出力端E2を介して直列に接続されている。MR素子R3は、電源端V1と第2の信号出力端E2との間に設けられている。MR素子R4は、第2の信号出力端E2とグランド端Gとの間に設けられている。電源端V1には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランド端Gはグランドに接続される。
【0046】
磁気センサ3は、更に、差分検出器21と、検出値生成部22を含んでいる。差分検出器21は、信号出力端E1,E2の電位差に対応する検出信号S1を出力する。検出値生成部22は、検出信号S1に基づいて検出値θsを生成する。検出値生成部22は、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)あるいはマイクロコンピュータによって構成されている。
【0047】
ここで、
図5を参照して、MR素子Rの構成の一例について説明する。
図5は、MR素子Rの一部を示す斜視図である。この例では、MR素子Rは、複数の下部電極41と、複数のMR膜50と、複数の上部電極42とを有している。複数の下部電極41は、基板10の上面10a上に配置されている。個々の下部電極41は細長い形状を有している。下部電極41の長手方向に隣接する2つの下部電極41の間には、間隙が形成されている。
図5に示したように、下部電極41の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR膜50が配置されている。MR膜50は、下部電極41側から順に積層された第1の磁性層51、ギャップ層52、第2の磁性層53および反強磁性層54を含んでいる。第1の磁性層51は、下部電極41に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料よりなり、第2の磁性層53との間で交換結合を生じさせて、第2の磁性層53の磁化の方向を固定する。複数の上部電極42は、複数のMR膜50の上に配置されている。個々の上部電極42は細長い形状を有し、下部電極41の長手方向に隣接する2つの下部電極41上に配置されて隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。このような構成により、
図5に示したMR素子Rは、複数の下部電極41と複数の上部電極42とによって直列に接続された複数のMR膜50を有している。なお、MR膜50における層51〜54の配置は、
図5に示した配置とは上下が反対でもよい。
【0048】
次に、
図6ないし
図8を参照して、磁石2の位置と検出対象磁界との関係について説明する。
図6ないし
図8は、第1の平面PL1上の磁石2と磁気センサ3を示している。
図6ないし
図8において、点線は、検出対象磁界に対応する磁束の一部を表している。以下、磁石2の位置を位置基準点2Cの位置で表す。この場合、可動範囲RMは、磁石2の位置の可動範囲と言える。
図6は、磁石2が可動範囲RMの中央に位置する状態を表している。
図7は、磁石2が可動範囲RMの−Y方向の端に位置する状態を表している。
図8は、磁石2が可動範囲RMのY方向の端に位置する状態を表している。
【0049】
以下、基準位置P0における検出対象磁界を記号Hで表す。
図6に示したように、本実施の形態では、可動範囲RMの中央の点は、基準位置P0を通過しV方向に平行な仮想の直線L1上に位置している。
【0050】
図6ないし
図8に示したように、検出対象磁界Hは、V方向に平行な方向の第1の成分Hvと、Y方向に平行な方向の第2の成分Hyに分けることができる。なお、
図6に示した状態では、第1の成分Hvは0であり、第2の成分Hyは検出対象磁界Hと等しい。磁石2の位置が変化すると、検出対象磁界Hの方向すなわち第1の方向D1が変化する。以下、第1の方向D1が所定の基準方向に対してなす角度を第1の角度と言い、記号θ1で表す。本実施の形態では、V方向を基準方向とする。第1の角度θ1は、V方向からY方向に向けて回転する方向に見たときに正の値で表し、V方向から−Y方向に向けて回転する方向に見たときに負の値で表す。磁石2の位置が変化すると、第1の角度θ1が変化する。従って、第1の角度θ1は、磁石2の位置と対応関係を有する。
【0051】
次に、
図1を参照して、検出対象磁界と面内成分について説明する。磁石2の位置が可動範囲RM内で変化することにより、第1の方向D1は、第1の平面PL1内において所定の可変範囲内で変化する。
図1において、記号D1を付した矢印は、第1の方向D1と、基準位置P0における検出対象磁界Hの強度とを表している。記号D1を付した矢印の先端は、記号C1を付した円上を移動する。本実施の形態では、第1の方向D1の可変範囲の大きさは、180°以下である。第1の角度θ1の可変範囲は、最大で0°から180°までの範囲である。
【0052】
第2の平面PL2上の面内成分は、第1の方向D1の変化に応じて変化する第2の方向D2を有している。
図1において、記号D2を付した矢印は、第2の方向D2と、第2の平面PL2上の面内成分の強度とを表している。記号D2を付した矢印の先端は、記号C2を付した楕円上を移動する。第2の方向D2および楕円C2は、それぞれ、第1の方向D1および円C1を、第2の平面PL2に垂直投影したものである。
【0053】
以下、第2の方向D2がX方向に対してなす角度を第2の角度と言い、記号θ2で表す。第2の角度θ2は、X方向からY方向に向けて回転する方向に見たときに正の値で表し、X方向から−Y方向に向けて回転する方向に見たときに負の値で表す。第2の角度θ2は、第1の角度θ1と対応関係を有している。本実施の形態では、第2の方向D2の可変範囲の大きさは、180°以下である。第2の角度θ2の可変範囲は、最大で0°から180°までの範囲である。
【0054】
第1の角度θ1が0°のときは第2の角度θ2も0°であり、第1の角度θ1が90°のときは第2の角度θ2も90°であり、第1の角度θ1が180°のときは第2の角度θ2も180°である。
【0055】
次に、第1および第2の角度θ1,θ2と検出信号S1との関係について説明する。まず、MR素子Rの抵抗値は、MR素子Rの第1の磁性層の第1の磁化の方向に依存する。MR素子Rの第1の磁性層の第1の磁化の方向は、第2の方向D2の変化すなわち第2の角度θ2の変化に応じて変化する。
図3および
図4に示した磁気センサ3では、第2の角度θ2が0°のときに、MR素子R1,R4の抵抗値は最大値になり、MR素子R2,R3の抵抗値は最小値になる。また、第2の角度θ2が180°のときに、MR素子R1,R4の抵抗値は最小値になり、MR素子R2,R3の抵抗値は最大値になる。
【0056】
このように、MR素子R1,R2,R3,R4の抵抗値は、第1の磁化の方向および第2の角度θ2に依存する。前述の通り、第2の角度θ2は、第1の角度θ1と対応関係を有している。従って、MR素子R1,R2,R3,R4の抵抗値は、第1の角度θ1にも依存する。
【0057】
検出信号S1は、信号出力端E1,E2の電位差に対応する。信号出力端E1の電位は、MR素子R1,R2の抵抗値に依存する。信号出力端E2の電位は、MR素子R3,R4の抵抗値に依存する。従って、検出信号S1は、MR素子R1,R2,R3,R4の抵抗値に依存する。
【0058】
以上のことから、検出信号S1は、第1の磁化の方向、第1の角度θ1および第2の角度θ2に依存する。
【0059】
なお、磁気センサ3の構成は、
図3および
図4に示した構成に限られない。例えば、磁気センサ3は、MR素子R1,R2を含むが、MR素子R3,R4を含まなくてもよい。この場合は、信号出力端E1の電位に対応する信号を、検出信号S1とすることができる。この場合の検出信号S1も、第1の磁化の方向、第1の角度θ1および第2の角度θ2に依存する。
【0060】
また、磁気センサ3は、MR素子R3,R4を含まないと共に、MR素子R1の代わりに、一定の抵抗値を有する抵抗器を含んでいてもよい。この場合も、信号出力端E1の電位に対応する信号を、検出信号S1とすることができる。この場合の検出信号S1も、第1の磁化の方向、第1の角度θ1および第2の角度θ2に依存する。
【0061】
次に、検出値生成部22が生成する検出値θsについて説明する。検出値θsは、検出信号S1に依存する。前述の通り、検出信号S1は、第1の磁化の方向、第1の角度θ1および第2の角度θ2に依存する。従って、検出値θsは、第1の磁化の方向、第1の角度θ1および第2の角度θ2に依存する。
【0062】
本実施の形態では特に、検出値θsは、第1の角度θ1を表す値である。前述のように、第1の角度θ1は、磁石2の位置と対応関係を有する。従って、検出値θsは、磁石2の位置に対応する。なお、検出値θsは、磁石2の位置そのものを表す値であってもよいし、第2の角度θ2を表す値であってもよい。前述のように、第2の角度θ2は第1の角度θ1と対応関係を有し、第1の角度θ1は磁石2の位置と対応関係を有する。従って、第2の角度θ2は磁石2の位置と対応関係を有し、第2の角度θ2を表す検出値θsも磁石2の位置と対応関係を有する。
【0063】
以下、
図9および
図10を参照して、検出値θsの生成方法について具体的に説明する。
図9は、第1の方向D1と第1の角度θ1と円C1を示している。
図10は、第2の方向D2と第2の角度θ2と楕円C2を示している。始めに、検出値θsの生成方法の概要について説明する。
図9に示した第1の方向D1を表す矢印は、基準位置P0を原点とするYV座標系において、MR素子Rが受ける検出対象磁界の方向と強度を表すベクトルを表していると言える。以下、このベクトルを第1のベクトルD1と言う。また、第1のベクトルD1のY成分とV成分をそれぞれY1,V1とする。
【0064】
図10に示した第2の方向D2を表す矢印は、基準位置P0を原点とするYX座標系において、MR素子Rが受ける面内成分の方向と強度を表すベクトルを表していると言える。以下、このベクトルを、第2のベクトルD2と言う。第2のベクトルD2は、第2の平面PL2に第1のベクトルD1を垂直投影したものである。第2のベクトルD2のY成分は、第1のベクトルD1のY成分と同じ値すなわちY1になる。以下、第2のベクトルD2のY成分とX成分をそれぞれY1,X1とする。
【0065】
V1は、X1と二面角αを用いて表すことができる。従って、比Y1/V1は、比Y1/X1と二面角αを用いて表すことができる。比Y1/V1と第1の角度θ1の関係と、比Y1/X1と第2の角度θ2の関係と、比Y1/V1と比Y1/X1の関係を利用すると、第1の角度θ1と第2の角度θ2の関係を表す式が得られる。
【0066】
また、第2の角度θ2を表す値θ2sは、検出信号S1を用いて求めることができる。本実施の形態では、検出値生成部22は、θ2sを求め、第1の角度θ1と第2の角度θ2の関係を表す式にθ2sを代入することによって、検出値θsを生成する。
【0067】
次に、検出値θsの具体的な計算方法について説明する。比Y1/V1および比Y1/X1は、それぞれ下記の式(1)、(2)で表される。
【0068】
Y1/V1=tanθ1 …(1)
Y1/X1=tanθ2 …(2)
【0069】
また、V1は、下記の式(3)で表される。
【0071】
式(1)を変形し、変形後の式に式(2)、(3)を代入すると、第1の角度θ1と第2の角度θ2の関係を表す下記の式(4)が得られる。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
【0072】
θ1=atan(Y1/V1)
=atan(Y1/(X1/cosα))
=atan(cosα・Y1/X1)
=atan(cosα・tanθ2) …(4)
【0073】
図3および
図4に示した磁気センサ3では、検出信号S1は、第2の角度θ2が0°のときに最小値になり、第2の角度θ2が180°のときに最大値になる。
【0074】
検出信号S1は、第2の角度θ2が0°のときに検出信号S1の値が−1になり、第2の角度θ2が90°のときに検出信号S1の値が0になり、第2の角度θ2が180°のときに検出信号S1の値が1になるように規格化することができる。この場合、検出信号S1は、下記の式(5)で表される。
【0076】
以下、第1の角度θ1の可変範囲が異なる第1の例と第2の例について説明する。第1の角度θ1の可変範囲は、第1の例では0°から180°までの範囲であり、第2の例では0°より大きく180°より小さい範囲である。
【0077】
第1および第2の例のいずれにおいても、検出値生成部22は、下記の式(6)によって値θ2sを算出する。値θ2sの範囲は、第1の例では、0°から180°までの範囲であり、第2の例では0°より大きく180°より小さい範囲である。式(6)は、式(5)におけるθ2をθ2sに置き換えて変形したものである。なお、“acos”は、アークコサインを表す。
【0078】
θ2s=acos(−S1) …(6)
【0079】
第1の例では、検出値生成部22は、後で説明する例外を除いて、下記の式(7)によって検出値θsを算出する。検出値θsの範囲は、0°から180°までの範囲である。式(7)は、式(4)におけるθ1,θ2を、それぞれθs,θ2sに置き換えたものである。
【0080】
θs=atan(cosα・tanθ2s) …(7)
【0081】
上記の例外とは、値θ2sが0°または180°のときである。値θ2sが0°または180°のときには、式(7)によるθsの解には、0°と180°の2つの解がある。そこで、検出値生成部22は、値θ2sが0°または180°のときには、値θ2sをそのまま検出値θsとする。これは、第1の角度θ1が0°のときは第2の角度θ2も0°であり、第1の角度θ1が180°のときは第2の角度θ2も180°であることを利用したものである。
【0082】
第2の例では、上記の例外は無く、検出値生成部22は、常に式(7)によって検出値θsを算出する。
【0083】
なお、検出値生成部22の処理内容は、上記の例に限られない。例えば、検出値生成部22は、検出信号S1と検出値θsとの対応関係を示すテーブルを保持し、このテーブルを参照して、検出信号S1から検出値θsを生成してもよい。上記テーブルにおける検出信号S1と検出値θsとの対応関係は、上述のように理論的に求められたものであってもよいし、実験によって求められたものであってもよい。
【0084】
次に、本実施の形態に係る位置検出装置1の作用および効果について説明する。位置検出装置1の磁気センサ3は、少なくとも1つのMR素子Rを含んでいる。各MR素子Rは、所定の平面すなわち第2の平面PL2内において変化可能な方向の第1の磁化を有する第1の磁性層を含んでいる。そのため、各MR素子Rは、所定の平面すなわち第2の平面PL2内で方向が変化する磁界を検出するのに適している。
【0085】
一方、MR素子Rが受ける検出対象磁界は、第1の平面内において第1の方向を有している。磁石2の位置が変化すると、第1の方向が第1の平面内において所定の可変範囲内で変化する。MR素子Rに対応する上記の第1の方向は、第1の平面PL1内の基準位置P0における検出対象磁界の方向である第1の方向D1と同じ方向である。また、MR素子Rに対応する第1の方向の可変範囲は、第1の方向D1の可変範囲と同じである。
【0086】
磁石2の位置が変化すると、MR素子Rに対応する第1の方向は、上記の所定の平面外の方向を含む可変範囲内で変化する。本実施の形態によれば、以下のようにして、磁気センサ3が、所定の平面内で方向が変化する磁界を検出するのに適したMR素子Rを含み、MR素子Rが受ける検出対象磁界が、所定の平面外の方向を含む可変範囲内で方向が変化するものであっても、検出精度の低下を抑制しながら、磁石2の位置に対応した検出値θsを生成することができる。
【0087】
すなわち、本実施の形態では、第1の平面PL1と第2の平面PL2は、90°以外の二面角αをなして交差している。これにより、各MR素子Rによって、検出対象磁界の一成分である面内成分を検出することができる。面内成分の方向である第2の方向D2は、第1の方向D1の変化に応じて変化する。第1の方向D1は、磁石2の位置の変化に応じて変化する。従って、第2の方向D2も、磁石2の位置の変化に応じて変化する。
【0088】
また、各MR素子Rにおいて、第1の磁化の方向は、第2の方向D2の変化に応じて変化する。検出値θsは、第1の磁化の方向に依存する。以上のことから、検出値θsは、第1の方向D1および第2の方向D2に依存すると共に、磁石2の位置に対応したものとなる。
【0089】
ところで、もし、第1の平面が第2の平面PL2と直交していたら、第1の方向D1次第では、面内成分の強度が0または0に近い値になる場合がある。第1の平面が第2の平面PL2と直交する場合の例としては、MR素子Rが垂直面VPと交差する位置に配置され、第1の平面が垂直面VPと一致している場合がある。この場合には、第1の方向D1が第2の平面PL2に垂直であるときに面内成分の強度が0になり、第1の方向D1が第2の平面PL2に垂直に近い方向であるときに面内成分の強度が0に近い値になる。このように、面内成分の強度が0または0に近い値になるときには、検出対象磁界の強度のばらつきに対する磁気センサ3の検出精度の低下の程度が大きくなる。
【0090】
これに対し、本実施の形態では、MR素子Rは垂直面VPと交差しない位置に配置され、それ結果、第1の平面PL1と第2の平面PL2は90°以外の二面角αをなして交差する。これにより、検出対象磁界が存在する限り、可変範囲内における第1の方向D1に関わらず、面内成分の強度が0になることはない。そのため、本実施の形態に係る位置検出装置1によれば、磁気センサ3が、所定の平面内で方向が変化する磁界を検出するのに適したMR素子Rを含み、MR素子Rが受ける検出対象磁界が、所定の平面外の方向を含む可変範囲内で方向が変化するものであっても、検出精度の低下を抑制しながら、磁石2の位置に対応した検出値θsを生成することができる。
【0091】
また、本実施の形態では、磁石2は、基板10の主面に垂直な垂直面VPに平行な方向の磁化を有している。また、磁石2の可動範囲RMは、主面に平行な直線状である。また、MR素子Rは、主面に平行な第2の平面PL2内において変化可能な方向の第1の磁化を有する第1の磁性層を含んでいる。このような位置関係により、本実施の形態によれば、磁気センサ3と磁石2の位置関係を容易に規定することが可能になる。
【0092】
以下、二面角αの好ましい範囲について説明する。検出対象磁界の強度をH1とすると、面内成分の強度の最小値は、H1cosαである。面内成分の強度の最小値は、H1の10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。そのため、二面角αは、84°以下であることが好ましく、73°以下であることより好ましい。一方、二面角αが小さすぎると、磁石2と磁気センサ3との間の距離が大きくなり過ぎ、MR素子Rが受ける検出対象磁界の強度が小さくなり過ぎる。磁石2と磁気センサ3との間の距離は、Z方向についての磁石2と磁気センサ3との間の距離の2倍以下であることが好ましく、1.5倍以下であることが好ましい。そのため、二面角αは、30°以上であることが好ましく、42°以上であることがより好ましい。以上のことから、二面角αは、30°〜84°の範囲内であることが好ましく、42°〜73°の範囲内であることがより好ましい。
【0093】
ところで、MR素子Rの第1の磁性層の第1の磁化の方向は、面内成分の第2の方向D2の変化に精度よく追従することが好ましい。そのためには、第1の磁性層は、検出対象磁界の第1の方向D1が可変範囲内の少なくとも一部の範囲内にあるときに、検出対象磁界によって第1の磁化が飽和状態になる特性を有することが好ましい。第1の磁性層は、第1の方向D1が可変範囲内のいずれの方向であっても、検出対象磁界によって第1の磁化が飽和状態になる特性を有することがより好ましい。
【0094】
また、MR素子Rがスピンバルブ型のMR素子である場合、第1の磁性層の第1の磁化の方向が第2の方向D2の変化に精度よく追従するためには、第1の磁性層の一軸磁気異方性は小さいことが好ましい。
【0095】
MR素子Rの第1の磁性層は、第1の方向D1が可変範囲内のいずれの方向であっても、検出対象磁界によって第1の磁化が飽和状態になる特性を有していてもよい。この場合には、検出対象磁界の強度の変動によって、第1の磁性層の第1の磁化の方向が変動することはない。そのため、この場合には、検出対象磁界の強度の変動による検出値θsの変動を抑制することができる。検出対象磁界の強度の変動は、例えば、環境温度の変化や、磁気センサ3と磁石2の位置関係の変動によって生じ得る。
【0096】
本実施の形態に係る位置検出装置1は、位置を検出したい対象物の動きに連動して磁石2が動くように構成することで、種々の対象物の位置を検出する装置として利用することができる。例えば、位置検出装置1は、以下のような光学式手振れ補正機構を備えたカメラモジュールに適用することができる。このカメラモジュールは、レンズと支持機構と駆動装置とを備えている。レンズの光軸方向は、本実施の形態におけるZ方向に平行な方向である。支持機構は、Z方向に垂直な第1および第2の方向にレンズが移動可能なように、レンズを支持している。駆動装置は、第1および第2の方向にレンズを移動させるための装置である。
【0097】
このカメラモジュールでは、第1の方向についてのレンズの位置と、第2の方向についてのレンズの位置を検出する必要がある。本実施の形態に係る位置検出装置1は、このレンズの位置を検出するために用いることができる。位置検出装置1を、第1の方向についてのレンズの位置を検出するために用いる場合には、レンズの第1の方向の動きに連動して磁石2が本実施の形態におけるY方向に平行な方向に動くように、位置検出装置1を構成すればよい。同様に、位置検出装置1を、第2の方向についてのレンズの位置を検出するために用いる場合には、レンズの第2の方向の動きに連動して磁石2が本実施の形態におけるY方向に平行な方向に動くように、位置検出装置1を構成すればよい。
【0098】
また、本実施の形態に係る位置検出装置1は、例えば、以下のようなオートフォーカス機構を備えたカメラモジュールに適用することができる。このカメラモジュールは、レンズと支持機構と駆動装置とを備えている。レンズの光軸方向は、本実施の形態におけるY方向に平行な方向である。支持機構は、Y方向に平行な方向にレンズが移動可能なように、レンズを支持している。駆動装置は、Y方向に平行な方向にレンズを移動させるための装置である。
【0099】
このカメラモジュールでは、Y方向に平行な方向についてのレンズの位置を検出する必要がある。本実施の形態に係る位置検出装置1は、このレンズの位置を検出するために用いることができる。この場合、レンズの動きに連動して磁石2がY方向に平行な方向に動くように、位置検出装置1を構成すればよい。
【0100】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図11は、本実施の形態に係る位置検出装置1の斜視図である。
図12は、本実施の形態に係る位置検出装置1の側面図である。以下、本実施の形態に係る位置検出装置1が第1の実施の形態に係る位置検出装置1と異なる点について説明する。本実施の形態に係る位置検出装置1は、第1の実施の形態における磁界発生器2の代わりに磁界発生器62を含んでいる。本実施の形態では特に、磁界発生器62は磁石である。以下、磁石についても符号62で表す。また、磁石62に関する説明は、磁界発生器62にも当てはまる。
【0101】
磁石62は、垂直面VPに平行な方向の磁化を有している。本実施の形態では特に、磁石62は、Z方向の磁化を有している。
図11および
図12において、符号62Mを付した矢印は、磁石62の磁化の方向を表している。
【0102】
第1の実施の形態と同様に、磁気センサ3に対する磁石62の相対的な位置を、単に、磁石62の位置と言う。磁石62の相対的な位置は、磁石62中の位置基準点62Cが可動範囲RM内を移動するように変化可能である。位置基準点62Cは、例えば磁石62の重心である。
【0103】
本実施の形態における可動範囲RMは、第1の実施の形態と同様である。すなわち、可動範囲RMは、主面に垂直な垂直面VP内に存在している。垂直面VPは、
図11に示している。また、
図12は垂直面VPを表している。可動範囲RMは、主面に平行な直線状である。
図12に示したように、可動範囲RMは、Y方向に平行な線分で表される。
【0104】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、MR素子R毎の第1の平面を代表して表す第1の平面PL1、基準位置P0、第1の方向D1、第1の角度θ1、第2の平面PL2、第2の方向D2、第2の角度θ2および基準平面RPが定義される。
【0105】
図13は、第1の平面PL1上の磁石62と磁気センサ3を示している。
図13において、複数の点線は、検出対象磁界に対応する磁束の一部を表している。
【0106】
可動範囲RM内で磁石62の位置が変化すると、基準位置P0における検出対象磁界Hの方向である第1の方向D1が第1の平面PL1内において所定の可変範囲内で変化する。これは、
図13から、容易に理解することができる。すなわち、可動範囲RM内で磁石62の位置が変化すると、基準位置P0を通過する磁束の方向すなわち第1の方向D1が変化する。
【0107】
第1の実施の形態と同様に、本実施の形態においても、第1の角度θ1および第2の角度θ2は、磁石62の位置と対応関係を有する。
【0108】
本実施の形態において、第1の方向D1の可変範囲の大きさは180°以下であり、第1の角度θ1の可変範囲は最大で−90°から90°までの範囲である。また、第2の方向D2の可変範囲の大きさは180°以下であり、第2の角度θ2の可変範囲は最大で−90°から90°までの範囲である。
【0109】
本実施の形態では、MR素子R1,R4における第2の磁化の方向はY方向であり、MR素子R2,R3における第2の磁化の方向は−Y方向である。検出信号S1は、第2の角度θ2が−90°のときに検出信号S1の値が−1になり、第2の角度θ2が0°のときに検出信号S1の値が0になり、第2の角度θ2が90°のときに検出信号S1の値が1になるように規格化することができる。この場合、検出信号S1は、第1の実施の形態における式(5)の代わりに、下記の式(8)で表される。
【0111】
本実施の形態における検出値生成部22は、第1の実施の形態における式(6)の代わりに、下記の式(9)によって値θ2sを算出する。なお、“asin”は、アークサインを表す。
【0113】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0114】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明において、磁石2の磁化の方向は、第1および第2の実施の形態に示した方向以外の、垂直面VPに平行な方向であってもよい。
してもよい。
信号出力端E1を介して直列に接続されている。MR素子R1は、電源端V1と第1の信号出力端E1との間に設けられている。MR素子R2は、第1の信号出力端E1とグランド端Gとの間に設けられている。MR素子R3とMR素子R4は、第2の信号出力端E2を介して直列に接続されている。MR素子R3は、電源端V1と第2の信号出力端E2との間に設けられている。MR素子R4は、第2の信号出力端E2とグランド端Gとの間に設けられている。電源端V1には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランド端Gはグランドに接続される。
結果、第1の平面PL1と第2の平面PL2は90°以外の二面角αをなして交差する。これにより、検出対象磁界が存在する限り、可変範囲内における第1の方向D1に関わらず、面内成分の強度が0になることはない。そのため、本実施の形態に係る位置検出装置1によれば、磁気センサ3が、所定の平面内で方向が変化する磁界を検出するのに適したMR素子Rを含み、MR素子Rが受ける検出対象磁界が、所定の平面外の方向を含む可変範囲内で方向が変化するものであっても、検出精度の低下を抑制しながら、磁石2の位置に対応した検出値θsを生成することができる。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明において、磁石2の磁化の方向は、第1および第2の実施の形態に示した方向以外の、垂直面VPに平行な方向であってもよい