【実施例】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。以後において、「地図」とは、従来の経路案内用の車載機が参照するデータに加えて、ADAS(Advanced Driver Assistance System)や自動運転に用いられるデータも含むものとする。
【0020】
[情報処理装置の構成]
図1は、本実施例における情報処理装置1の概略構成図を示す。情報処理装置1は、車両内で使用される据置型又は携帯型の装置、あるいは車両と一体となっている装置である。情報処理装置1は、主に、通信部11と、記憶部12と、入力部13と、制御部14と、車両に設けられたセンサ部7と電気的に接続するインターフェース15と、表示部16と、音出力部17とを有する。情報処理装置1内の各要素は、バスライン19を介して相互に接続されている。
【0021】
通信部11は、制御部14の制御に基づきデータ通信を行う。例えば、通信部11は、センサ部7の出力に基づき検出された物体等に関する情報を、データの収集及び配信を行うサーバ装置へ送信したり、現在位置周辺のエリアに対応する地図データなどを、上述のサーバ装置から受信したりする。また、通信部11は、車両を制御するための制御信号を車両に送信する処理、車両の状態に関する信号を車両から受信する処理、及び車車間通信による他車両とのデータの送受信処理などを行ってもよい。
【0022】
記憶部12は、制御部14が実行するプログラムや、制御部14が所定の処理を実行する為に必要な情報を記憶する。記憶部12は、情報処理装置1に接続又は内蔵されたハードディスクなどの外部記憶装置であってもよく、フラッシュメモリなどの記憶媒体であってもよい。なお、記憶部12は、情報処理装置1とデータ通信を行うサーバ装置であってもよい。この場合、記憶部12は、複数のサーバ装置から構成されてもよい。
【0023】
記憶部12は、地
図DB4と、センサデータキャッシュ6とを記憶する。
【0024】
地
図DB4は、例えば、道路情報、施設情報、及び地物情報などを含むデータベースである。道路情報には、経路探索用の車線ネットワークデータ、道路形状データ、交通法規データなどが含まれる。地物情報は、道路標識等の看板や停止線等の道路標示、センターライン等の道路区画線や道路沿いの構造物等の情報を含む。地
図DB4は、通信部11により図示しないサーバ装置から受信する更新データに基づき適宜更新が行われてもよい。地
図DB4のデータ構造については後述する。センサデータキャッシュ6は、センサ部7の出力データ(所謂生データ)を一時的に保持するキャッシュメモリである。
【0025】
入力部13は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、例えば、目的地などの経路探索の条件を指定する入力、自動運転のオン及びオフを指定する入力などを受け付け、生成した入力信号を制御部14へ供給する。
【0026】
インターフェース15は、センサ部7の出力データを制御部14やセンサデータキャッシュに供給するためのインターフェース動作を行う。センサ部7は、カメラ71などの車両の周辺環境を認識するための1又は複数の外界センサと、GPS受信機72、ジャイロセンサ73、加速度センサ74、速度センサ75などの内界センサを含む。カメラ71は、車両から撮影した画像を生成する。
【0027】
好適には、カメラ71は、撮影位置から2つの対象物までの仰角の差を、垂直方向の画素数の差から算出可能な画像(「角度対応画像Ia」とも呼ぶ。)を出力するカメラ(例えば360°円周カメラ)を含むとよい。この場合、角度対応画像Iaを出力するカメラは、例えば、1又は複数の魚眼レンズを含んでもよい。
【0028】
角度対応画像Iaは、少なくとも仰角の方向(ここでは画像の垂直方向)に対応する画素数の差が仰角の差に比例する画像であり、1つの画素が所定角度分の仰角(仰俯角)の差に対応している。従って、情報処理装置1は、対象物の仰角(即ち対象物の地表点から頂点までの仰角差)を算出する場合、角度対応画像Ia中の仰角に対応する方向に対象物が存在する画素数(即ち対象物の地表点から頂点までの画素数)を数え、当該画素数に所定の比例定数を乗じることで、好適に仰角を算出する。上述の比例定数は、1つの画素に対する仰角の差を示す定数であり、例えばカメラ71の仕様情報等として記憶部12に予め記憶されている。角度対応画像Iaは、車両の現在位置の算出に好適に用いられる。なお、角度対応画像Iaを出力するカメラ71を備える代わりに、制御部14は、画素と角度が対応しない通常のカメラが出力する画像に基づき、角度対応画像Ia又はこれに相当するデータを生成してもよい。
【0029】
なお、センサ部7は、
図1に示した外界センサ及び内界センサ以外の任意の外界センサ及び内界センサを有してもよい。例えば、センサ部7は、外界センサとして、ライダ(測域センサ)、超音波センサ、赤外線センサ、その他電磁波を走査することで情報を取得するセンサを有してもよい。
【0030】
表示部16は、制御部14の制御に基づき、情報を表示する。例えば、表示部16は、目的地までの経路を示した地図を表示したり、運転を補助する情報などを表示したりする。音出力部17は、制御部14の制御に基づき、音を出力する。音出力部17は、例えば、運転を支援する案内音声、警告音、又は音楽等を出力する。
【0031】
制御部14は、所定のプログラムを実行するCPUなどを含み、情報処理装置1の全体を制御する。本実施例では、制御部14は、地
図DB4に高さ情報が含まれている地物を、位置の計測における基準(「基準部」とも呼ぶ。)として選定し、選定した基準部の仰角と高さとに基づき、現在位置を算出する。以後では、本実施例に基づき算出する車両の位置を、「自車位置P」とも呼ぶ。制御部14は、第1取得部、抽出部、第2取得部、第3取得部、算出部及びプログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0032】
ここで、基準部について補足説明する。基準部は、略鉛直方向に延在する地物(例えば柱状体の電柱や信号機等)に基づき決定される。なお、基準部は、地物そのものである必要はなく、地物における一部であってもよい。例えば、情報処理装置1は、信号機における柱部分のみを基準部とみなしてもよい。このように、基準部は、地表から略鉛直方向に延在する地物又は地物の一部であればよい。
【0033】
図2は、地
図DB4のデータ構造の一例である。
図2に示す地
図DB4は、主に、道路情報と、施設情報と、地物情報とを有する。地物情報は、地物毎に固有の識別情報である地物IDと、地物の種別を示す種別情報と、地物の位置を示す位置情報と、地物の高さを示す高さ情報と、地物の特徴に関する特徴情報とを含む。ここで、特徴情報は、情報処理装置1等が対象の地物の検出に用いる情報であって、対象の地物に特徴的な情報(パラメータ情報も含む)を示す。上述の特徴情報は、対象の地物の識別に好適な目印(マーク)に関する情報であってもよい。
【0034】
なお、地
図DB4のデータ構造は、
図2に示す構造に限定されない。例えば、地物情報は、対象の地物が基準部として適性があるか否かを示すフラグ情報などをさらに含んでもよい。他の例では、地
図DB4は、基準部に関する情報を示す基準部情報を、地物情報とは独立して含んでもよい。この場合、基準部情報は、基準部毎に生成され、各基準部の識別情報及び各基準部の高さ情報などを少なくとも含む。
【0035】
[自車位置の測定]
次に、本実施例に基づく自車位置Pの測定方法について説明する。概略的には、情報処理装置1は、少なくとも2つの基準部を選定し、当該基準部に関し、地
図DB4に含まれる位置情報及び高さ情報と、角度対応画像Iaから特定する仰角の情報とに基づき、自車位置Pを算出する。
【0036】
(1)
道路上での自車位置算出
まず、道路上での自車位置Pの算出方法について説明する。
【0037】
図3(A)は、車両周辺を水平方向から観察した図を示し、
図3(B)は、車両周辺の俯瞰図を示す。具体的には、
図3(A)は、車両が道路21上に存在する場合の自車位置Pを道路21の側面から観察した図であり、
図3(B)は、
図3(A)に対応する俯瞰図を示す。
図3(A)、(B)の例では、道路21に沿って第1柱状物と第2柱状物が存在し、第1柱状物は車両の前方に存在し、第2柱状物は車両の後方に存在する。
【0038】
なお、以後では、第1柱状物の地表位置を「B1」、第1柱状物の頂点位置を「T1」、第2柱状物の地表位置を「B2」、第2柱状物の頂点位置を「T2」とする。また、第1柱状物の高さ(位置B1から位置T1までの距離)を「L1」、第2柱状物の高さ(位置B2から位置T2までの距離)を「L2」とする。なお、ここでは、車両、第1柱状物、及び第2柱状物が存在する位置の標高は「X」であるものとする。また、自車位置Pから観察した第1柱状物の仰角(即ち位置B1と位置T1との仰角差)を「θ1」、自車位置Pから観察した第2柱状物の仰角(即ち位置B2と位置T2との仰角差)を「θ2」とする。また、第1柱状物と第2柱状物との道路21に沿った距離を「W」、位置B1と自車位置Pとの道路21に沿った距離を「d1」、自車位置Pと位置B2との道路21に沿った距離を「d2」とする。さらに、位置B1と自車位置Pとの直線距離を「r1」、自車位置Pと位置B2との直線距離を「r2」とする。また、道路21の幅方向における自車位置Pと位置B1及び位置B2との距離を「α」、第1柱状物及び第2柱状物が存在する側の道路21の縁から自車位置Pとの距離を「d3」とする。
【0039】
まず、情報処理装置1は、GPSなどのGNSSなどから得られる情報に基づき、暫定的な現在位置(「暫定自車位置Pg」とも呼ぶ。)を決定する。また、情報処理装置1は、地
図DB4の道路情報等を参照し、暫定自車位置Pgが道路上に存在しない場合には、暫定自車位置Pgから最も近い道路上に暫定自車位置Pgが存在するように暫定自車位置Pgを修正する。
【0040】
次に、情報処理装置1は、地
図DB4を参照し、暫定自車位置Pgの周辺に存在する第1柱状物及び第2柱状物を、基準部として定める。例えば、この場合、情報処理装置1は、暫定自車位置Pgよりも道路22沿いの車両前方において最も近くに存在する第1柱状物と、暫定自車位置Pgによりも道路22沿いにおいて車両後方において最も近くに存在する第2柱状物とを、それぞれ基準部として選定する。
【0041】
そして、情報処理装置1は、地
図DB4に含まれる第1柱状物の地物情報と第2柱状物の地物情報とを夫々参照することで、第1柱状物の位置B1及び高さL1及び第2柱状物の位置B2及び高さL2を取得する。また、情報処理装置1は、自車位置Pにおいてカメラ71から取得される角度対応画像Iaに基づき、第1柱状物に対する仰角θ1及び第2柱状物に対する仰角θ2を取得する。そして、情報処理装置1は、これらの取得した情報に基づき、道路上の位置を示す距離d1及び距離d2を算出する。
【0042】
ここで、仰角θ1及び仰角θ2の算出方法について補足説明する。例えば、情報処理装置1は、まず、暫定自車位置Pg及び第1柱状物の位置情報等に基づき、自車位置に対する第1柱状物のおよその相対位置を特定し、特定した位置に対応する角度対応画像Iaの位置に存在する鉛直方向に延びた物体領域を、第1柱状物の領域として抽出する。次に、情報処理装置1は、角度対応画像Iaにおける第1柱状物の領域が仰角の方向(画像の垂直方向)において存在する画素数を数える。この場合、情報処理装置1は、第1柱状物の位置B1及び位置T1に対応する画素をそれぞれ検出し、検出した画素間の仰角の方向(画像の垂直方向)における画素数を数えてもよい。そして、情報処理装置1は、数えた画素数に、角度対応画像Iaの1画素分に対応する角度を乗じることで、仰角θ1を算出する。また、情報処理装置1は、第2柱状物に対しても同様の処理を実行することで、角度対応画像Iaから仰角θ1を算出する。
【0043】
次に、距離d1及び距離d2の導出方法について具体的に説明する。
【0044】
まず、車両から第1柱状物までの直線距離である距離r1は、第1柱状物の高さL1と仰角θ1とを用いることで、以下の式(1)により表わされる。
r1=L1/tanθ1 (1)
【0045】
同様に、車両から第2柱状物までの直線距離である距離r2は、第2柱状物の高さL2と仰角θ2とを用いることで、以下の式(2)により表わされる。
r2=L2/tanθ2 (2)
【0046】
また、第1柱状物と第2柱状物の距離Wは、距離d1及び距離d2を用いて以下の式(3)により表わされる。
W=d1+d2 (3)
【0047】
ここで、自車位置Pは、第1柱状物の位置B1と第2柱状物の位置B2とを結ぶ直線よりも距離αだけ離れている。よって、三平方の定理に基づき、距離r1及び距離r2は、それぞれ、距離α、距離d1及び距離d2を用いて、以下の式(4)及び式(5)により表わされる。
r1
2=d1
2+α
2 (4)
r2
2=d2
2+α
2 (5)
【0048】
そして、式(4)の両辺をそれぞれ式(5)の両辺で減算することで距離αを消去し、式(3)により距離d2を消去すると、以下の式(6)が得られる。
r1
2−r2
2=d1
2−(W―d1)
2
=−W
2+2W・d1 (6)
【0049】
同様に、式(4)の両辺をそれぞれ式(5)の両辺で減算することで距離αを消去し、式(3)により距離d1を消去すると、以下の式(7)が得られる。
r1
2−r2
2=W
2−2W・d2 (7)
【0050】
従って、式(6)を距離d1について整理すると以下の式(8)が得られ、式(7)を距離d2について整理すると以下の式(9)が得られる。
d1=(r1
2−r2
2+W
2)/2W (8)
d2=(−r1
2+r2
2+W
2)/2W (9)
【0051】
従って、情報処理装置1は、式(1)、(2)、(8)、(9)を用いることで、第1柱状物の高さL1及び仰角θ1と、第2柱状物の高さL2及び仰角θ2と、第1及び第2柱状物の位置情報とに基づき、距離d1及び距離d2を好適に算出することができる。これにより、情報処理装置1は、道路上での自車位置Pを好適に特定することができる。なお、情報処理装置1は、距離Wを、例えば、第1柱状物の位置情報が示す絶対座標と第2柱状物の位置情報が示す絶対座標との距離を算出することで算出する。
【0052】
また、
α
2=r1
2+d1
2=r2
2+d2
2
が成立することから、求めた距離d1又は距離d2に基づき距離αを求めることができる。よって、例えば、道路21と第1柱状物又は第2柱状物との距離(=α−d3)に関する情報が地
図DB4に記憶されている場合には、情報処理装置1は、当該情報と距離αとに基づき、距離d3についても算出することが可能である。
【0053】
なお、情報処理装置1は、上述した式(1)、(2)、(8)、(9)に基づき道路上の自車位置Pを特定する代わりに、後述の
図4を参照して説明する円周角の定理に基づく方法により、自車位置Pを算出してもよい。
【0054】
また、上記の例ではセンサの取付位置の地表からの高さhを考慮していないが、高さhを考慮してもよい。この場合、情報処理装置1はセンサの取付位置の地表からの高さhを取得する。高さhは、例えば、記憶部12に予め記憶されている。そして、距離r1、r2は、それぞれ以下の式(1)’(2)’により表わされる。
r1=(L1―h)/tanθ1 (1)’
r2=(L2―h)/tanθ2 (2)’
【0055】
従って、情報処理装置1は、式(1)’、(2)’、(8)、(9)を用いることで、第1柱状物の高さL1及び仰角θ1と、第2柱状物の高さL2及び仰角θ2と、第1及び第2柱状物の位置情報と、センサの取付位置の地表からの高さhと、に基づき、距離d1及び距離d2を好適に算出することができる。
【0056】
(2)
円周角の定理に基づく自車位置算出
次に、円周角の定理に基づく自車位置Pの算出方法について説明する。
【0057】
図4(A)は、車両周辺を水平方向から観察した図を示し、
図4(B)は、車両周辺の俯瞰図を示す。具体的には、
図4(A)、(B)は、
図3(A)、(B)において、第1柱状物の位置B1を中心として自車位置Pを通る円CL1と、第2柱状物の位置B2を中心として自車位置Pを通る円CL2とを明示した図である。また、
図4(A)、(B)では、一例として、車両は、駐車場内に存在するものとし、第1柱状物には、近隣の柱状物と区別するための一本線の模様を有するマークM1が付されており、第2柱状物には、近隣の柱状物と区別するための2本線の模様を有するマークM2が付されている。また、
図4(A)及び
図4(B)の例では、距離d3は、第1柱状物の位置B1と第2柱状物の位置B2とを結ぶ直線と自車位置Pとの距離(即ち自車位置Pから当該直線への垂線の長さ)を示す。なお、
図4(A)、(B)に示すその他の記号は、
図3(A)、(B)の記号と同一のため、その説明を省略する。
【0058】
この場合、まず、情報処理装置1は、GPSなどのGNSSなどから得られる情報に基づき、暫定自車位置Pgを決定する。そして、情報処理装置1は、地
図DB4を参照し、暫定自車位置Pgの周辺に存在する2つの柱状物(第1柱状物及び第2柱状物)を、基準部として定める。
【0059】
なお、情報処理装置1は、車両の向きの情報を取得していない場合、車両に対する第1柱状物及び第2柱状物の方向が不明であるため、角度対応画像Iaにおいて検出する柱状物が第1柱状物と第2柱状物とのいずれであるかを識別する情報が必要となる。この場合、例えば、情報処理装置1は、第1柱状物の地物情報の特徴情報に基づき、一本線の模様を有する柱状物を第1柱状物、2本線の模様を有する柱状物を第2柱状物としてそれぞれ角度対応画像Iaから抽出する。
【0060】
次に、情報処理装置1は、地
図DB4を参照することで、第1柱状物の位置B1及び高さL1及び第2柱状物の位置B2及び高さL2を取得し、角度対応画像Iaに基づき、第1柱状物に対する仰角θ1及び第2柱状物に対する仰角θ2を取得する。そして、情報処理装置1は、これらの取得した情報に基づき、道路上の位置を示す距離d1、距離d2及び距離d3を算出する。この場合の仰角θ1及び仰角θ2の算出方法は、「(1)
道路上での自車位置算出」のセクションで述べた方法と同一である。
【0061】
ここで、距離d1、距離d2及び距離d3の算出方法について具体的に説明する。
【0062】
まず、距離r1は、「(1)
道路上での自車位置算出」のセクションで述べたように、高さL1と仰角θ1から式(1)により算出可能であり、距離r2は、高さL2と仰角θ2から式(2)により算出可能である。
【0063】
ここで、第1柱状体の位置B1を水平面上におけるx−y座標の原点(0、0)とし、第2柱状体の位置B2を水平面上におけるx軸上の位置(W、0)とする。この場合、2つの円CL1及び円CL2は、以下の式(10)及び式(11)により、それぞれ表される。
x
2+y
2=r1
2 (10)
(x−W)
2+y
2=r2
2 (11)
【0064】
そして、自車位置Pは、この2つの円CL1及び円CL2の交点のいずれかに相当する。よって、式(10)及び式(11)の連立方程式の一つの解となるx、yの組み合わせは、d1とd3の組み合わせに相当する。ここで、式(10)の左辺を式(11)の左辺で減じ、式(10)の右辺を式(11)の右辺で減じると、以下の式が得られる。
2Wx−W
2=r1
2−r2
2
【0065】
そして、この式をxについて解くと、距離d1に関する以下の式(12)が得られる。
d1=x=(r1
2−r2
2+W
2)/2W (12)
【0066】
そして、式(12)に基づき式(10)からxを消去してyについて求めると、距離d3に関する以下の式(13)が得られる。
【0067】
【数1】
このように、情報処理装置1は、式(1)、式(2)、式(12)、式(13)を用いることで、第1柱状物の高さL1及び仰角θ1と第2柱状物の高さL2及び仰角θ2とに基づき、自車位置Pを特定するために必要な距離d1及び距離d3を好適に算出可能である。また、距離d2についても、式(3)を用いることで、距離d1と距離Wから容易に算出することが可能である。
【0068】
なお、
図4(A)、(B)の説明では、車両が駐車場に存在することを前提としたが、円周角の定理に基づく自車位置Pの算出方法の適用例は、これに限られない。情報処理装置1は、車両が駐車場以外の任意の場所に存在する場合においても、式(1)、式(2)、式(12)、式(13)を用いることで、自車位置Pを特定するために必要な距離d1、距離d2及び距離d3を算出することができる。
【0069】
式(13)においては、
図4(A)、(B)に従い、yが正値であることを前提としたが、実際には、情報処理装置1は、yが正値又は負値のいずれであるか(即ち自車位置Pが位置B1と位置B2とを結ぶ線の上側か下側か)を判定する必要がある。この場合、第1の判定方法では、情報処理装置1は、第3柱状物を基準部としてさらに追加し、第3柱状物に対して第3柱状物を中心として自車位置Pを通る円を仮定する。そして、情報処理装置1は、当該円と円CL1又は円CL2との交点を算出する。そして、情報処理装置1は、算出した当該交点と、円CL1と円CL2との交点とで共通する交点を、自車位置Pであると判定する。第2の判定方法では、情報処理装置1は、円CL1、CL2の2つの交点のうち、GNSSなどを用いた他の位置推定により特定される現在位置と近い方の交点を、自車位置Pであると判定する。
【0070】
(3)
処理フロー
図5は、本実施例において情報処理装置1が実行する自車位置Pの算出方法の手順を示すフローチャートである。
【0071】
まず、情報処理装置1は、GPS受信機72等の出力に基づき暫定自車位置Pgを取得する(ステップS11)。そして、情報処理装置1は、地
図DB4を参照し、暫定自車位置Pg周辺の少なくとも2つの基準部を選定する(ステップS12)。例えば、情報処理装置1は、少なくとも地
図DB4において位置情報及び高さ情報が登録されている地物を、基準部として選定する。
【0072】
次に、情報処理装置1は、地
図DB4を参照し、各基準部の高さ情報及び位置情報を取得する(ステップS13)。例えば、情報処理装置1は、地
図DB4が
図2に示すデータ構造を有する場合には、基準部として選択した地物に対応する地物情報の高さ情報と位置情報とを地
図DB4から少なくとも抽出する。
【0073】
次に、情報処理装置1は、各基準部の仰角を算出する(ステップS14)。例えば、情報処理装置1は、カメラ71が出力する角度対応画像Iaから、各基準部の領域を抽出し、抽出した各領域が角度対応画像Iaの仰角の方向(画像の垂直方向)において存在する画素数を数える。そして、情報処理装置1は、基準部毎に数えた画素数に、角度対応画像Iaの1画素が対応する角度を乗じた値を、各基準部に対する仰角として算出する。
【0074】
そして、情報処理装置1は、ステップS13で取得した各基準部の高さ情報及び位置情報と、ステップS14で算出した各基準部の仰角の情報とに基づき、自車位置Pを算出する(ステップS15)。この場合、情報処理装置1は、地
図DB4及び暫定自車位置Pgに基づき、車両が道路上に存在すると判定した場合、
図3(A)、(B)を参照して説明した自車位置算出方法又は
図4(A)、(B)を参照して説明した自車位置算出方法のいずれかの方法を選択して自車位置Pを算出する。一方、情報処理装置1は、車両が道路以外に存在すると判定した場合、
図4(A)、(B)を参照して説明した自車位置算出方法に基づき自車位置Pを算出する。
【0075】
次に、本実施例による効果について補足説明する。
【0076】
現在考えられている高精度位置推定方法として、道路周辺の地物等の特徴点までの距離及び方向等を推定し、地図データに記録された特徴点の情報と比較することで、車両の現在位置及び姿勢を算出する方法が存在する。この場合、特徴点を検出する外界センサとしては、例えば、カメラ、ライダ、レーダなどを用いる。
【0077】
上述の位置推定方法の第1の問題点は、検出すべき特徴点を正確に測ることができる車両の位置が限られていることである。そのため、車両が移動して複数の特徴点を確認できるまでは、正確な位置推定ができない場合がある。上述の位置推定方法の第2の問題点は、特徴点を検出する外界センサの種類によって取得するデータが異なり、互換性の確保が難しいことである。上述の位置推定方法の第3の問題点は、道路周辺の地物等の特徴点が変化しやすいことである。特徴点として採用される広告看板や標識などは、変更されることが多い。また、路面ペイントは(特に雪国等において)劣化しやすく、描き直したペイントが前回のペイントと同一でない場合もある。上述の位置推定方法の第4の問題点は、特徴点の情報として地図データに記憶するデータ量が膨大になりやすいことである。例えば、ライダ等において用いられる占有格子地図(Occupancy Grid Map:OGM)、NDT(Normal Distributions Transform)データ等は、データ量が大きい。上述の位置推定方法の第5の問題点は、地図データに記憶する特徴点の情報を生成するのに車両を用いて実測する必要があり、手間がかかることである。
【0078】
これに対し、本実施例に係る自車位置Pの算出方法は、第1の問題点に関し、道路よりも遠い位置に存在する基準部を用いることができるため、自車位置Pの算出可能な範囲が広いという利点がある。また、第2の問題に関し、本実施例に係る自車位置Pの算出方法では、カメラを用いる実施例について説明したが、必要な基準部の仰角を検出可能な外界センサであればライダ等の他の外界センサを用いてもよく、使用する外界センサの種別に依存しないという利点がある。第3の問題に関し、本実施例に係る自車位置Pの算出方法では、電柱や信号機などの柱状物等を使用するため、看板や標識、建築物の壁の模様などが変わっても位置推定精度に影響がないという利点がある。
【0079】
第4の問題に関し、本実施例に係る自車位置Pの算出方法では、基準部となる地物に対する位置情報及び高さ情報が地図データに格納されていればよいため、必要なデータ量は、NDTデータ等と比較して遥かに小さい。第5の問題点に関し、本実施例に係る自車位置Pの算出方法では、電柱や信号機などの柱状物を基準部とし、地
図DB4にそれらの位置情報及び高さ情報を格納させる。この位置情報は、例えば航空写真計測により求めることも可能であり、車両を用いて実測することなく基準部の位置情報を生成することが可能である。また、高さ情報についても、車両を用いて実測を行う必要はなく、例えば柱状物の設置時の設計情報等を流用することも可能である。
【0080】
以上説明したように、本実施例に係る情報処理装置1は、車両周辺の地物を含む角度対応画像Iaを取得し、角度対応画像Ia中の地物に関連する少なくとも2つの基準部を抽出する。そして、情報処理装置1は、少なくとも2つの基準部の各々に対し、車両の位置を基準とした仰角に関する情報を取得する。そして、情報処理装置1は、地
図DB4から、少なくとも2つの基準部の高さに関する情報と、地図上における各々の基準部の位置情報と、を夫々取得する。そして、情報処理装置1は、上述の仰角に関する情報と、上述の高さに関する情報と、上述の位置情報と、から、地図上における車両の位置である自車位置Pを算出する。これにより、情報処理装置1は、自車位置Pを好適に算出することができる。
【0081】
[変形例]
次に、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0082】
(変形例1)
情報処理装置1は、カメラ71から取得した角度対応画像Iaを用いて各基準部の仰角を算出する代わりに、他の外界センサが出力するデータを用いて、各基準部の仰角を算出してもよい。例えば、情報処理装置1は、ライダの出力に基づき、各基準部の仰角を算出してもよい。
【0083】
この場合、例えば、ライダは、水平方向及び垂直方向において照射方向を変えてレーザ光の照射を行う照射部と、照射したレーザ光が物体で反射した反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づく走査情報(スキャンデータ)を出力する出力部とを有する。走査情報は、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、その照射方向での物体までの距離との組み合わせを示す点群データである。従って、情報処理装置1は、ライダが生成した点群データから、基準部に相当する点群データを抽出し、抽出した点群データが示す照射方向の仰角(仰俯角)から、各基準部に対する仰角を算出する。この場合、例えば、情報処理装置1は、対象の基準部の地表上の位置に相当する点群データが示す照射方向の仰角の平均値と、対象の基準部の頂点部分に相当する点群データが示す照射方向の仰角の平均値との差を、対象の基準部に対する仰角として算出する。
【0084】
この態様によっても、情報処理装置1は、本実施例における自車位置Pの算出に必要な、各基線の仰角を好適に算出することができる。
【0085】
(変形例2)
情報処理装置1が実行する自車位置Pの算出処理を、車両に存在する端末装置と通信を行うサーバ装置が実行してもよい。
【0086】
図9は、変形例2における自車位置算出システムの構成例を示す。
図9に示すように、変形例2に係る自車位置算出システムは、サーバ装置に相当する情報処理装置1Aと、車両と共に移動する端末装置1Bとを有する。情報処理装置1Aと端末装置1Bとは、通信網5を介してデータ通信を行う。また、端末装置1Bは、例えば、
図1に示す情報処理装置1と同等の構成を有し、カメラ71から角度対応画像Iaを取得する。
【0087】
この場合、情報処理装置1Aは、
図2に示す地
図DB4のデータ構造と同等のデータ構造を有する地図データを記憶しており、端末装置1Bから供給される情報に基づき、
図5のフローチャートの処理を実行する。この場合、情報処理装置1Aは、ステップS11において、端末装置1BからGPS等に基づく暫定自車位置Pgの情報を受信し、ステップS12において、地図データを参照して少なくとも2つの基準部を選定する。また、情報処理装置1Aは、ステップS13において、地図データを参照することで、各基準部の高さ情報及び位置情報を取得する。また、情報処理装置1Aは、ステップS14において、端末装置1Bから供給される角度対応画像Iaに基づき、各基準部に対する仰角を算出する。そして、情報処理装置1Aは、ステップS15において、各基準部の仰角に関する情報と、高さに関する情報と、位置情報とに基づき、自車位置Pを算出する。そして、情報処理装置1Aは、算出した自車位置Pの情報を端末装置1Bへ送信する。
【0088】
このように、情報処理装置1Aは、端末装置1Bから受信する情報に基づき、端末装置1Bが存在する車両に対する自車位置Pを算出することができる。