【解決手段】上記課題を解決するべく、本発明の光学デバイス1は、対向して配設された基板10と、該基板10の対向面内に形成された、隣接する空間を区切る隔壁20と、該隔壁によって区切られた空間内20bに充填された、電界制御材料を含む流動体30と、を備える光学デバイスであって、少なくとも一方の前記基板10と前記隔壁20との間に、微細な凹凸形状を有する微細凹凸層40及び該微細凹凸層40の形状に倣って形成された導電層50を、さらに備えることを特徴とする。
対向して配設された基板と、該基板の対向面内に形成された、隣接する空間を区切る隔壁と、該隔壁によって区切られた空間内に充填された、電界制御材料を含む流動体と、を備える光学デバイスであって、
少なくとも一方の前記基板と前記隔壁との間に、微細な凹凸形状を有する微細凹凸層及び該微細凹凸層の形状に倣って形成された導電層を、さらに備えることを特徴とする、光学デバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、隔壁と基板との間の密着性を高めることを目的として、例えば特許文献1には、ITO基板上に熱プロセスが必要な接着性樹脂を用い、フォトリソグラフィによって隔壁を形成する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1の技術では、ITO基板と隔壁との密着性は確保できるものの、隔壁の形成に要する時間がかかり、製造効率の悪化を招くという問題があった。
また、特許文献1の技術では、ITO基板と隔壁との間に接着性樹脂を設けていることから、その界面で反射することも考えられ、デバイスの光学性能が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、製造効率の低下を招くことなく、基板と隔壁との間の密着性を向上できるとともに、光学性能に優れた、光学デバイス及び光学デバイスの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明では、光学デバイスの耐久性及び光学性能に優れた電子機器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、対向して配設された基板と、該基板の対向面内に形成された、隣接する空間を区切る隔壁と、該隔壁によって区切られた空間内に充填された、電界制御材料を含む流動体と、を備える光学デバイスについて、上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた。そして、前記基板と前記隔壁との間に、微細な凹凸形状を有する微細凹凸層を、導電層とともに形成することによって、この微細凹凸層が反射防止構造体として働くため、光学性能を向上させることができ、さらに、微細な凹凸形状によってアンカー効果が得られるため、基板と隔壁との間の密着性についても改善できることを見出した。加えて、前記微細凹凸層については、インプリント等によっても形成できるため、フォトリソグラフィ等の技術を用いてパターンを形成する場合に比べ、製造コストや製造時間の負担が大きくなることがない。
【0009】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)対向して配設された基板と、該基板の対向面内に形成された、隣接する空間を区切る隔壁と、該隔壁によって区切られた空間内に充填された、電界制御材料を含む流動体と、を備える光学デバイスであって、
少なくとも一方の前記基板と前記隔壁との間に、微細な凹凸形状を有する微細凹凸層及び該微細凹凸層の形状に倣って形成された導電層を、さらに備えることを特徴とする、光学デバイス。
(2)前記微細凹凸層の凹凸の平均間隔が、50〜300nmであることを特徴とする、上記(1)に記載の光学デバイス。
(3)前記微細凹凸層の凹凸の平均高低差が、30nm以上であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の光学デバイス。
(4)前記微細凹凸層の凹凸形状が、インプリントによって形成されることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光学デバイス。
(5)前記微細凹凸層及び前記導電層は、両方の前記基板と前記隔壁との間に形成されていることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の光学デバイス。
(6)2つの対向する基板の対向面上に、微細凹凸層を形成する工程と、
前記微細凹凸層を覆うように導電層を形成する工程と、
前記導電層上に、隣接する空間を区切る隔壁構造をインプリントによって形成する工程と、
前記隔壁の区切られた空間内に、電界制御材料を含む流動体を充填する工程と、を備えることを特徴とする、光学デバイスの製造方法。
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学デバイスを有することを特徴とする、電子機器。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造効率の低下を招くことなく、基板と隔壁との間の密着性を向上できるとともに、光学性能に優れた、光学デバイス及び光学デバイスの製造方法を提供することが可能となる。また、本発明によれば、光学デバイスの耐久性及び光学性能に優れた電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、必要に応じて図面を用いながら具体的に説明する。
図1は、本発明の光学デバイスの一実施形態の断面を模式的に示したものであり、
図2は、本発明の光学デバイスの一実施形態の断面について、基板と隔壁との界面を拡大して模式的に示したものである。また、
図3は、本発明の光学デバイスの製造方法の一実施形態について、製造工程の流れの一例を示したものである。
なお、
図1〜
図3の中で開示した各部材については、説明の便宜のため、実際とは異なる縮尺及び形状で表しているものもある。
【0013】
<光学デバイス>
まず、本発明の光学デバイスの一実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る光学デバイスは、
図1に示すように、対向して配設された基板10と、該基板10の対向面内に形成された、隣接する空間を区切る隔壁20と、該隔壁20によって区切られた空間内に充填された、電界制御材料を含む流動体30と、を備える光学デバイス1である。
そして、本発明の一実施形態に係る光学デバイス1は、
図1に示すように、少なくとも一方(
図1では両方)の前記基板10と前記隔壁20との間に、微細な凹凸形状を有する微細凹凸層40及び該微細凹凸層40の形状に倣って形成された導電層50を、さらに備えることを特徴とする。
【0014】
微細凹凸層40の微細な凹凸形状が反射防止構造体として働くため、光学デバイス1の光学性能を高めることができることに加え、上述の凹凸形状によってアンカー効果が得られるため、基板10と隔壁20との間の密着性についても向上させることができる。さらに、前記微細凹凸層40については、フォトリソグラフィ等の煩雑なプロセスによって形成する必要はなく、インプリント等の効率的なプロセスによって形成できるため、光学デバイス1の製造効率の低下を招くこともない。
【0015】
ここで、本発明の光学デバイス1の種類については、上述した構成を有するものであれば特に限定はされない。例えば、本発明の光学デバイスの一実施形態を、電子ペーパーや、パーソナルコンピュータ、スマートフォン・タブレット等の携帯端末、車両等に搭載されるディスプレイの視野角制御デバイス、として用いることができる。
【0016】
次に、本発明の一実施形態に係る光学デバイス1を構成する各部材について説明する。
(基板)
本発明の一実施形態に係る光学デバイス1は、
図1に示すように、対向するように設けられた基板10を備える。
ここで、前記基板10は、透明基板であり、それぞれ対向する面とは反対の面10aに電極(図示せず)を有する。
なお、本明細書において「透明」とは、可視光帯域(おおよそ360nm〜830nm)に属する波長の光の透過率が高いことを意味し、例えば、当該光の透過率が70%以上であることを意味する。
【0017】
また、前記基板10を構成する材料については、特に限定はされず、光学デバイス1の種類や、要求される性能に応じて、適宜選択することができる。
前記基板10の材料として、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリイミド、塩化ビニル等の透明フィルムや、透明ガラス等の樹脂板が用いられる。
【0018】
さらに、前記基板10の表面については、必要に応じて、ハードコート、アンチグレアコート、易接着コート等の有機層や、バリア層、誘電体層、屈折率調整層等の金属膜又は金属化合物膜を、前記基板10の表面に形成することも可能である。
【0019】
なお、前記基板10の厚さについては、特に限定はされず、光学デバイス1の種類や、要求される性能に応じて、適宜選択することができる。また、前記基板の10の厚さは、2枚の基板10がいずれも同じ厚さであっても、異なる厚さであっても良い。
ここで、強度を確保しつつ、薄膜化を図る観点からは、前記基板10の厚さは、25〜200μmであることが好ましく、50〜150μmであることがより好ましい。
【0020】
(隔壁)
また、本発明の一実施形態に係る光学デバイス1は、
図1に示すように、前記基板10の対向面内に形成された、隣接する空間を区切る隔壁20をさらに備える。
ここで、前記隔壁20の「隣接する空間を区切る」とは、隔壁によって前記基板10の対向面内に存在する空間を区切ることを意味している。例えば、
図1では、隔壁20のうち、2つの基板10を結ぶ方向に延在する部分20aが、隣接する空間を区切っており、後述する流動体30を充填するための空間20b(「セル」とも呼ばれる)を形成している。
【0021】
ここで、前記隔壁20を構成する材料については、特に限定はされず、光学デバイス1の種類や、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、前記隔壁20の材料として、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、又はこれらを組み合わせた樹脂等を用いることができる。
【0022】
また、前記隔壁20を形成するための方法も、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、インプリントプロセスや、フォトリソグラフィ、射出成型等があげられる。これらの中でも、製造工程の効率化の観点からは、インプリントプロセスを用いることが好ましい。
なお、前記隔壁によって区切られる空間20bの形状(パターン)についても、特に限定はされず、光学デバイス1の種類や要求される性能に応じて、適宜選択することができる。
【0023】
(流動体)
また、本発明の一実施形態に係る光学デバイス1は、
図1に示すように、前記隔壁20によって区切られた空間20b充填された流動体30をさらに備える。
ここで、前記流動体30は、電界制御材料(図示せず)を含み、該電界制御材料が前記基板10間に電界をかけた際に移動することによって、画像表示を行うことができる。
【0024】
前記流動体30は、前記電界制御材料と、該電界制御材料を分散させるための分散媒体と、少なくとも含む。また、前記流動体30は、光学デバイスや、流動体30に要求される性能に応じて、他の成分も適宜含有することも可能である。
【0025】
前記電界制御材料は、電場に応答する材料であり、その種類や形状等は特に限定されず、光学デバイスの種類や、流動体30に要求される性能に応じて、適宜公知の電界制御を用いることができる。例えば、電荷粒子材料、液晶材料があり、電荷粒子材料には白や黒、カラー等の色づけされた粒子が電場に応答して移動するいわゆる電気泳動材料、粒子が二色に色分けされ電場により回転するツイストボールに代表される材料、又は、電場により移動するナノ粒子材料等がある。一方、液晶材料は、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)で知られる透過と散乱を電気的に制御する材料や、液晶に色素を混合した材料、コレステリック液晶材料等が挙げられる。前記電界制御材料として、求められる機能・用途に応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記分散媒体の種類についても特に限定はされず、光学デバイスや前記電界制御材料の種類に応じて、ガスや液体を適宜選択できる。
【0027】
(微細凹凸層、導電層)
そして、本発明の光学デバイス1は、
図1及び
図2に示すように、少なくとも一方の前記基板10と前記隔壁20との間に、微細な凹凸形状を有する微細凹凸層40及び該微細凹凸層40の形状に倣って形成された導電層50をさらに備える。
前記微細凹凸層40及び前記導電層50が微細な凹凸形状を有することで、これらの層が反射防止構造体として働くことができる結果、光学デバイス1の光学性能を高めることができ、さらに、前記微細凹凸層40及び前記導電層50の微細な凹凸形状によって、アンカー効果が得られるため、前記基板10と前記隔壁20との間の密着性についても向上させることができる。加えて、前記微細凹凸層40については、フォトリソグラフィ等の煩雑なプロセスによって形成する必要はなく、インプリント等の効率的なプロセスによって形成できるため、光学デバイス1の製造効率の低下招くこともない。
【0028】
ここで、前記微細凹凸層40については、上述したように、本発明の光学デバイス1において、接着層及び屈折率調整層としての役目を担う層である。
前記微細凹凸層40を構成する材料については、特に限定はされないが、光の透過性及び密着性をより高めることができる観点から、光学部品用途に使用される、アクリルモノマー、アクリルオリゴマー等のアクリル樹脂、又は、エポキシ樹脂などを含有することが好ましい。
【0029】
また、前記微細凹凸層40は、
図2に示すように、凹凸の平均間隔Pが50〜300nmであることが好ましい。前記凹凸の間隔が300nm以下の場合、可視光線の波長以下となるため、より反射抑制効果が高まり、より優れた光学特性が得られるからである。一方、前記凹凸の平均間隔が50nm以上の場合には、より高いアンカー効果が得られ、前記基板10と前記隔壁20との間の密着性をより高めることができることに加え、インプリント成形しやすいためである。同様の観点から、前記微細凹凸層40の凹凸の平均間隔Pが、70〜280nmであることがより好ましく、80〜250nmであることが特に好ましい。
ここで、前記微細凹凸層40の凹凸の平均間隔Pは、隣り合う凸部間及び凹部間の間隔の算術平均値である。なお、前記微細凹凸層40の凹凸の平均間隔Pは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、あるいは断面透過型電子顕微鏡(断面TEM)などによって観察可能である。隣り合う凸部間及び凹部間の距離の算術平均値を導出する方法としては、例えば、隣り合う凸部の組み合わせ、及び/又は、隣り合う凹部の組み合わせをそれぞれ複数個ピックアップし、各組み合わせを構成する凸部間の距離および凹部間の距離を測定し、測定値を平均する方法が挙げられる。
【0030】
さらに、前記微細凹凸層40は、
図2に示すように、凹凸の平均高低差Hが、30nm以上であることが好ましい。前記微細凹凸層40の凹凸の平均高低差Hが30nm以上の場合、より高いアンカー効果が得られ、前記基板10と前記隔壁20との間の密着性をより高めることができるためである。同様の観点から、前記凹凸の平均高低差Hは、40nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
なお、前記微細凹凸層40の凹凸の高低差Hは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、あるいは断面透過型電子顕微鏡(断面TEM)などによって観察可能である。凹凸の高低差Hの算術平均値を導出する方法としては、例えば、前記微細凹凸層40の凹凸の高低差Hを複数個計測し、それらの測定値を平均する方法が挙げられる。
【0031】
なお、前記微細凹凸層40を形成する方法については、特に限定はされず、公知の成膜方法を適宜用いることができるが、製造効率をより高めることができる観点からは、インプリントによって形成されることが好ましい。
前記微細凹凸層40をインプリントによって形成する条件については、特に限定されず、公知のインプリント装置を用いて行うことができる。例えば、前記微細凹凸層40の材料として紫外線硬化樹脂を用いる場合、フィルムの巻出し及び巻取り機構を有する円筒状モールド型と、該モールド型に当接する調圧可能なニップロールと、を用い、紫外線硬化樹脂を円筒状モールドに押しあてながら、紫外線硬化を行った後、フィルムを巻き取ることによって、微細凹凸層40を形成できる。
【0032】
前記導電層50は、前記基板10に電極としての機能を付与するための層であり、前記微細凹凸層40の凹凸形状に倣って形成される。
【0033】
前記導電層50の材料については、導電性を有し、電極として使用できる材料であれば特に限定はされない。前記導電層50の材料として、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等が挙げられる。
【0034】
なお、前記導電層50の形成は、スパッタリングや真空蒸着法、化学気相法等によって形成することができる。
また、前記微細凹凸層40及び前記導電層50については、少なくとも一方の前記基板10と前記隔壁20との間に形成してもよいが、より密着性および光透過特性を向上させるためには、
図1に示すように、両方の前記基板10と前記隔壁20との間に形成されることが好ましい。
【0035】
(その他の部材)
本発明の光学デバイスの一実施形態では、上述した基板10、隔壁20、流動体30、微細凹凸層40及び導電層50の他にも、光学デバイスに要求される性能に応じて、その他の部材をさらに備えることもできる。
例えば、前記基板10の対向面とは反対の面10aに、ハードコート層、防曇層、粘着層、遮光層などが挙げられる。
【0036】
<光学デバイスの製造方法>
次に、本発明の光学デバイスの製造方法の一実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る光学デバイスの製造方法は、
図3に示すように、2つの対向する基板10の対向面上に、微細凹凸層40を形成する工程(
図3(a))と、前記微細凹凸層40を覆うように導電層50を形成する工程(
図3(b))と、前記導電層50上に、隣接する空間を区切る隔壁構造21をインプリントによって形成する工程(
図3(c)、(d))と、前記隔壁20の区切られた空間20b内に、電界制御材料を含む流動体30を充填する工程(
図3(e)、(f))と、を備えることを特徴とする。
上記工程を経ることで、製造効率の低下を招くことなく、基板10と隔壁20との間の密着性を向上できるとともに、光学性能に優れた光学デバイス1を得ることができる。
【0037】
前記基板10の対向面上に微細凹凸層40を形成する方法については、特に限定はされず、公知の成膜方法を適宜用いることができるが、製造効率をより高めることができる観点からは、インプリントによって形成されることが好ましい。
前記微細凹凸層40をインプリントによって形成する条件については、特に限定されず、公知のインプリント装置を用いて行うことができる。例えば、前記微細凹凸層40の材料として紫外線硬化樹脂を用いる場合、フィルムの巻出し及び巻取り機構を有する円筒状モールド型と、該モールド型に当接する調圧可能なニップロールと、を用い、紫外線硬化樹脂を円筒状モールドに押しあてながら、紫外線硬化を行った後、フィルムを巻き取ることによって、微細凹凸層40を形成できる。
【0038】
前記導電層50を形成する方法についても、前記微細凹凸層40を覆うように形成できる方法であれば特に限定はされない。例えば、スパッタリングや、塗工法、蒸着法等によって形成することができる。
【0039】
前記導電層50上の前記隔壁構造21は、インプリントによって形成される。インプリントを用いることによって、光学デバイス1の製造効率を高めることができる。また、前記隔壁構造21は、それぞれ接合することによって、隔壁20を形成することができる(
図3(d)、(e))。
【0040】
前記隔壁20の区切られた空間20b内に、流動体30を充填する方法については、特に限定はされず、公知の方法によって充填することができる。例えば、前記隔壁20の一部に孔を設け、流動体20を充填した後、孔を閉じる方法等が挙げられる。
【0041】
なお、本発明の一実施形態に係る光学デバイスの製造方法における、その他の条件については、特に限定はされない。例えば、上述した本発明の光学デバイスにおいて説明した条件と同様の条件とすることができる。
【0042】
<電子機器>
本発明の電子機器は、上述した本発明の光学デバイス1を有することを特徴とする。
本発明の電子機器は、基板と隔壁との間の密着性、及び、光学性能に優れた本発明の光学デバイス1を有するため、光学デバイスの耐久性が向上し、優れた光学性能を実現できる。
【0043】
なお、前記電子機器の種類については、特に限定はされない。例えば、電子ペーパーや、ディスプレイ装置、各種の画像表示装置、スマートフォン、コンピュータ機器等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1〜10、比較例1)
図1に示されるような、対向して配設された基板10と、該基板10の対向面上に形成された、微細凹凸層40と、該微細凹凸層40を覆うように形成された導電層50と、導電層の対向する面内に形成された隔壁20と、該隔壁20によって区切られた空間内に充填された、電界制御材料を含む流動体30と、を備えた光学デバイス1のサンプルを作製した。
【0046】
光学デバイス1のサンプルを構成する各部材の条件は以下のとおりである。
(1)基板
ポリエーテルテレフタレートからなる基板を2枚用意した。
(2)微細凹凸層
微細凹凸層は、アクリル系の紫外線硬化性樹脂を材料として用い、インプリントプロセスにより形成した。アクリル系紫外線硬化樹脂については、以下の配合比の樹脂組成物から作製した。インプリントは、円筒状(直径150mm)の石英母材に対して、凹凸がフォトリソグラフィにより施されたモールドを用い、シート状の樹脂組成物に凹凸形状を施すとともに、紫外線を照射し、硬化させた。
モノマー(東亞合成「アロニックスM305」):45質量%
オリゴマー(日本合成化学「UV-1700」):20質量%
反応性希釈剤(KJ ケミカル「DMAA」):30質量%
光重合開始剤(BASFジャパン「イルガキュア184」):5質量%
また、作製した微細凹凸層の、凹凸の平均間隔P及び凹凸の平均高低差については、表1に示す条件とした。なお、比較例1のサンプルについては、微細凹凸層を形成していない。
(3)導電層
酸化インジウムスズ(スズ5%)の導電層をスパッタリングプロセスにより形成した。導電層の平均厚さは60nm、シート抵抗は150Ω/□である。
(4)隔壁
隔壁は、アクリル系の紫外線硬化性樹脂を材料として用い、インプリントプロセスにより形成した。アクリル系紫外線硬化樹脂については、以下の配合比の樹脂組成物から作製した。インプリントは、円筒状(直径150mm)の金属母材に対して、凹凸が切削加工により施されたモールドを用い、シート状の樹脂組成物に凹凸形状を施すとともに、紫外線を照射し、硬化させた。
モノマー(東亞合成「アロニックスM305」):30質量%
オリゴマー(日本合成化学「UV-1700」):30質量%
反応性希釈剤(KJ ケミカル「DMAA」):30質量%
光重合開始剤(BASFジャパン「イルガキュア184」):5質量%
また、作製した隔壁20は、
図1に示すように、基板10同士をつなぐ方向に延在し、延在する部分20aの、形成ピッチが100μm、厚さが30μm、長さが70μmである。
(5)流動体
流動体については、電界制御材料(ナノカーボン材料)を有機溶媒(シクロヘキサン)に分散させた溶液を用い、スキージにより隔壁の区切られた空間内へ充填した。
(評価)
作製した光学デバイスの各サンプルについて、以下の評価(1)〜(5)を実施し、評価結果を表1に示す。
【0047】
(1)微細凹凸層の転写性評価
光学デバイスの各サンプルの作製において、微細凹凸層をインプリントによって形成した際の、モールドの離型が良好に行われたか否かについて、以下の基準に従って評価した。
○:モールドの離型を良好に行えた
△:微細凹凸層の一部で離型不良発生することがあった
×:離型不良が発生して微細凹凸層の形成が困難であった
【0048】
(2)密着性評価
得られた光学デバイスの各サンプルについて、JIS K 5400(1990年)に準拠した鉛筆引っ掻き試験を実施し、試験後の基板と隔壁との間の剥がれの有無を確認し、剥がれなかったマスの割合(%)を算出し、以下の基準に従って評価した。
〇:90%以上
△:10%以上〜90%未満
×:1%未満
【0049】
(3)透過率評価
得られた光学デバイスの各サンプルについて、測定装置(日本分光(株)V-570)によって、視感透過率(%)を測定し、以下の基準に従って評価した。
〇:70%以上
△:60%以上〜70%未満
×:60%未満
さらに、得られた光学デバイスの各サンプルについて、波長に対する視感透過率(%)の値をグラフにしたものを
図5に示す。
【0050】
(4)回折光評価
得られた光学デバイスの各サンプルについて、暗室にて斜め(光学デバイスの表面に対して30°程度の角度)より白色光を照射し、回折光の有無を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。
〇:ほとんど回折光は視認されなかった
△:回折光は視認できるが、強い回折光は視認されなかった
×:強い回折光が視認された
【0051】
(5)総合評価
上述した評価(1)〜(4)の結果を踏まえて、以下の基準で総合評価を行った。
○:評価(1)〜(4)において、全ての評価結果が○であった
△:評価(1)〜(4)において、評価結果が△のものがあるが、×はなかった
×:評価(1)〜(4)において、評価結果が×のものがあった
【0052】
【表1】
【0053】
表1及び
図4の結果から、実施例の光学デバイスの各サンプルについては、不良な結果がなかった(総合評価が△以上)。特に、実施例の光学デバイスの各サンプルの中でも、微細凹凸層の凹凸間隔や高さについて適正化を図ったサンプルは、全ての評価項目で良好な結果を示すものもあった。
一方、微細凹凸層を設けていない比較例の光学デバイスのサンプルについては、光の透過性や基板と隔壁との密着性の点で、不良な結果を示すことがわかった。