【課題】妨害磁界発生機構によって複雑な妨害磁界を発生させることが可能であっても、妨害磁界発生機構で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることが可能なカードリーダを提供する。
【解決手段】このカードリーダでは、妨害磁界発生機構11は、軟磁性材料で形成される直線状のコア部14a、コア部14bおよびコア部15aと、コア部14aに巻回されるコイル16と、コイル16と直列に接続されコア部14bに巻回されるコイル17と、コア部15aに巻回されるコイル18と、コイル16、17に交流を供給する第1駆動回路と、コイル18に交流を供給する第2駆動回路とを備えている。コア部15aは、コア部14aとコア部14bとの間に配置されている。また、コア部15aは、コア部14a、14bと別体で形成され、コア部14a、14bから分離されている。
磁気ストライプを有するカードが挿入されるカード挿入口と、前記カード挿入口から挿入される前記カードが移動するカード移動路と、前記磁気ストライプに記録された磁気データの不正な読取りを妨害するための磁界を発生させる妨害磁界発生機構とを備え、
前記妨害磁界発生機構は、軟磁性材料で形成される直線状の第1コア部、第2コア部および第3コア部と、前記第1コア部に巻回されるコイルである第1コイルと、前記第1コイルと直列に接続され前記第2コア部に巻回されるコイルである第2コイルと、前記第3コア部に巻回されるコイルである第3コイルと、前記第1コイルおよび前記第2コイルに交流を供給する第1駆動回路と、前記第3コイルに交流を供給する第2駆動回路とを備え、
前記第1コア部と前記第2コア部と前記第3コア部とは、前記カード移動路を移動する前記カードの厚さ方向において前記カード移動路よりも一方側に配置され、
前記カードの厚さ方向から見たときに、前記第3コア部は、前記第1コア部と前記第2コア部との間に配置され、
前記第1コイルおよび前記第2コイルに交流が供給されると、磁力線の向きが前記第1コア部の一方の端面である第1端面から前記第2コア部の一方の端面である第2端面に向かう方向と前記第2端面から前記第1端面に向かう方向とに変動する交流磁界が発生し、
前記第3コア部は、前記第1コア部および前記第2コア部と別体で形成され、前記第1コア部および前記第2コア部から分離されていることを特徴とするカードリーダ。
前記妨害磁界発生機構は、前記第1コア部と前記第2コア部とを繋ぐ連結コア部と前記第1コア部と前記第2コア部とを有する第1コアと、前記第3コア部を有する第2コアとを備え、
前記第1コアと前記第2コアとが別体で形成されていることを特徴とする請求項1記載のカードリーダ。
前記カードの幅方向から見たときに、前記カードの移動方向に対する前記第3コア部の傾斜角度は、前記カードの移動方向に対する前記第1コア部の傾斜角度および前記第2コア部の傾斜角度よりも大きくなっていることを特徴とする請求項7記載のカードリーダ。
【背景技術】
【0002】
従来、犯罪者がカードリーダのカード挿入部に磁気ヘッドを取り付けて、この磁気ヘッドでカードの磁気データを不正に取得するいわゆるスキミングを阻止することが可能なカードリーダが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカードリーダは、スキミング用の磁気ヘッド(以下、「スキミング用磁気ヘッド」とする。)での磁気データの読取りを阻止するための妨害磁界を発生させる妨害磁界発生機構を備えている。妨害磁界発生機構は、軟磁性材料で形成されるコアと、コアに巻回される励磁用の4個のコイルとを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のカードリーダでは、コアおよびコイルは、カードが移動するカード移動路よりも上側に配置されている。コアは、前後方向を長手方向として配置される棒状の第1コア部、第2コア部、第3コア部および第4コア部と、第1〜第4コア部の後端同士を繋ぐ棒状の連結コア部とから構成されている。すなわち、第1コア部と第2コア部と第3コア部と第4コア部とは一体となっている。第1〜第4コア部は、左右方向においてこの順番で配置されている。第1〜第4コア部のそれぞれには、コイルが巻回されている。
【0004】
第1コア部に巻回されるコイルである第1コイルと、第3コア部に巻回されるコイルである第3コイルとは直列に接続され、第2コア部に巻回されるコイルである第2コイルと、第4コア部に巻回されるコイルである第4コイルとは直列に接続されている。第1コイルおよび第3コイルに交流が供給されると、磁力線の向きが第1コア部の前端面から第3コア部の前端面に向かう方向と第3コア部の前端面から第1コア部の前端面に向かう方向とに変動する交流磁界が発生する。また、第2コイルおよび第4コイルに交流が供給されると、磁力線の向きが第2コア部の前端面から第4コア部の前端面に向かう方向と第4コア部の前端面から第2コア部の前端面に向かう方向とに変動する交流磁界が発生する。
【0005】
特許文献1に記載のカードリーダでは、妨害磁界発生機構は、第1コイルおよび第3コイルに交流を供給する駆動回路と、第2コイルおよび第4コイルに交流を供給する駆動回路とを別々に備えており、第1コイルおよび第3コイルに供給される交流と第2コイルおよび第4コイルに供給される交流とでは、周波数や振幅が異なっている。そのため、特許文献1に記載のカードリーダでは、妨害磁界発生機構によって複雑な妨害磁界を発生させることが可能になっており、その結果、スキミング用磁気ヘッドでの磁気データの不正な読取りを効果的に防止することが可能になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、カードの挿入口から離れた位置にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられた場合でもスキミングを防止することを可能にするために、妨害磁界発生機構で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることを検討している。特許文献1に記載のカードリーダでは、第1〜第4コア部の後端同士が繋がっているため、第1コア部と第2コア部と第3コア部と第4コア部との間で磁路が形成されやすい。
【0008】
したがって、特許文献1に記載のカードリーダでは、第1コア部と第3コア部との間に配置される第2コア部の前端面から第1コア部の前端面または第3コア部の前端面に回り込む磁束や、第1コア部の前端面または第3コア部の前端面から第2コア部の前端面に回り込む磁束が発生しやすい。また、第2コア部と第4コア部との間に配置される第3コア部の前端面から、第2コア部の前端面または第4コア部の前端面に回り込む磁束や、第2コア部の前端面または第4コア部の前端面から第3コア部の前端面に回り込む磁束が発生しやすい。また、特許文献1に記載のカードリーダでは、このような磁束が発生しやすいため、妨害磁界発生機構で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることは困難であることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0009】
そこで、本発明の課題は、カードの磁気ストライプに記録された磁気データの不正な読取りを妨害するための磁界を発生させる妨害磁界発生機構を備えるカードリーダにおいて、妨害磁界発生機構によって複雑な妨害磁界を発生させることが可能であっても、妨害磁界発生機構で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることが可能なカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、磁気ストライプを有するカードが挿入されるカード挿入口と、カード挿入口から挿入されるカードが移動するカード移動路と、磁気ストライプに記録された磁気データの不正な読取りを妨害するための磁界を発生させる妨害磁界発生機構とを備え、妨害磁界発生機構は、軟磁性材料で形成される直線状の第1コア部、第2コア部および第3コア部と、第1コア部に巻回されるコイルである第1コイルと、第1コイルと直列に接続され第2コア部に巻回されるコイルである第2コイルと、第3コア部に巻回されるコイルである第3コイルと、第1コイルおよび第2コイルに交流を供給する第1駆動回路と、第3コイルに交流を供給する第2駆動回路とを備え、第1コア部と第2コア部と第3コア部とは、カード移動路を移動するカードの厚さ方向においてカード移動路よりも一方側に配置され、カードの厚さ方向から見たときに、第3コア部は、第1コア部と第2コア部との間に配置され、第1コイルおよび第2コイルに交流が供給されると、磁力線の向きが第1コア部の一方の端面である第1端面から第2コア部の一方の端面である第2端面に向かう方向と第2端面から第1端面に向かう方向とに変動する交流磁界が発生し、第3コア部は、第1コア部および第2コア部と別体で形成され、第1コア部および第2コア部から分離されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のカードリーダでは、妨害磁界発生機構は、第1コイルおよび第2コイルに交流を供給する第1駆動回路と、第3コイルに交流を供給する第2駆動回路とを備えている。そのため、本発明では、第1コイルおよび第2コイルに供給される交流と第3コイルに供給される交流とで、周波数や振幅を異ならせることが可能になる。したがって、本発明では、妨害磁界発生機構によって複雑な妨害磁界を発生させることが可能になる。
【0012】
また、本発明では、第3コア部は、第1コア部および第2コア部と別体で形成されており、第1コア部および第2コア部から分離されている。すなわち、本発明では、第3コア部は、第1コア部および第2コア部と繋がっていない。そのため、本発明では、第1コア部および第2コア部と、第3コア部との間で磁路が形成されにくい。したがって、本発明では、第1コア部と第2コア部との間に配置される第3コア部から、第1コア部または第2コア部に回り込む磁束や、第1コア部または第2コア部から第3コア部に回り込む磁束が発生しにくくなる。その結果、本発明では、妨害磁界発生機構で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることが可能になる。すなわち、本発明では、妨害磁界発生機構によって複雑な妨害磁界を発生させることが可能であっても、妨害磁界発生機構で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、妨害磁界発生機構は、第1コア部と第2コア部とを繋ぐ連結コア部と第1コア部と第2コア部とを有する第1コアと、第3コア部を有する第2コアとを備え、第1コアと第2コアとが別体で形成されている。この場合には、第1コア部と第2コア部とが連結コア部によって繋がれているため、第1コア部と第2コア部との間の磁束の漏れを抑制することが可能になる。したがって、第1コア部および第2コア部が発生させる妨害磁界の強度を高めることが可能になる。
【0014】
また、本発明において、妨害磁界発生機構は、第1コア部を有する第1コアと、第2コア部を有する第2コアと、第3コア部を有する第3コアとを備え、第1コアと第2コアと第3コアとが別体で形成されていても良い。
【0015】
本発明において、カード移動路を移動するカードの移動方向とカードの厚さ方向とに直交する方向をカードの幅方向とすると、たとえば、カードの厚さ方向から見たときに、直線状に形成される第1コア部の長手方向、直線状に形成される第2コア部の長手方向、および、直線状に形成される第3コア部の長手方向は、カードの移動方向と略平行になっており、第3コア部は、カードの幅方向において第1コア部と第2コア部との間に配置されている。この場合には、カードの厚さ方向から見たときに、第1コア部の長手方向、第2コア部の長手方向および第3コア部の長手方向がカードの移動方向に対して傾いている場合と比較して、カードリーダの前方のより遠い位置まで、妨害磁界発生機構で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることが可能になる。
【0016】
本発明において、第3コア部の長さは、第1コア部の長さおよび第2コア部の長さと異なっていることが好ましい。このように構成すると、第3コア部の一端を、第1コア部の一端および第2コア部の一端から遠ざけることが可能になるか、あるいは、第3コア部の両端を、第1コア部の両端および第2コア部の両端から遠ざけることが可能になる。したがって、第3コア部から第1コア部または第2コア部に回り込む磁束や、第1コア部または第2コア部から第3コア部に回り込む磁束がより発生しにくくなる。
【0017】
本発明において、たとえば、第3コア部の長さは、第1コア部の長さおよび第2コア部の長さよりも長くなっている。この場合には、第3コア部に巻回される第3コイルの巻き数を増やすことが可能になる。したがって、第3コア部が発生させる妨害磁界の強度を高めることが可能になる。
【0018】
本発明において、カード移動路を移動するカードの移動方向とカードの厚さ方向とに直交する方向をカードの幅方向とすると、カードの幅方向から見たときに、カードの移動方向に対する第3コア部の傾斜角度は、カードの移動方向に対する第1コア部の傾斜角度および第2コア部の傾斜角度と異なっていることが好ましい。このように構成すると、第3コア部の一端を、第1コア部の一端および第2コア部の一端から遠ざけることが可能になるか、あるいは、第3コア部の両端を、第1コア部の両端および第2コア部の両端から遠ざけることが可能になる。したがって、第3コア部から第1コア部または第2コア部に回り込む磁束や、第1コア部または第2コア部から第3コア部に回り込む磁束がより発生しにくくなる。
【0019】
本発明において、たとえば、カードの幅方向から見たときに、カードの移動方向に対する第3コア部の傾斜角度は、カードの移動方向に対する第1コア部の傾斜角度および第2コア部の傾斜角度よりも大きくなっている。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明では、カードの磁気ストライプに記録された磁気データの不正な読取りを妨害するための磁界を発生させる妨害磁界発生機構を備えるカードリーダにおいて、妨害磁界発生機構によって複雑な妨害磁界を発生させることが可能であっても、妨害磁界発生機構で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(カードリーダの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の構成を説明するための平面図である。
図2は、
図1に示すカードリーダ1の前端部の構成を説明するための側面図である。
【0024】
本形態のカードリーダ1は、ユーザが手動でカード2を操作して、カード2に記録されたデータの読取りおよびカード2へのデータの記録の少なくともいずれか一方を行うための装置である。具体的には、カードリーダ1は、カードリーダ1へのカード2の挿入とカードリーダ1からのカード2の引抜きとを手動で行ってデータの読取りや記録を行ういわゆるディップ式のカードリーダである。このカードリーダ1は、所定の上位装置(図示省略)に搭載されて使用される。
【0025】
カードリーダ1には、カード2が挿入されるカード挿入口3と、カード挿入口3から挿入されるカード2が移動するカード移動路4とが形成されている。カード2は、カード移動路4を直線的に移動する。以下の説明では、カード移動路4を移動するカード2の移動方向である
図1等のX方向を前後方向とする。また、カード移動路4を移動するカード2の厚さ方向である
図1等のZ方向を上下方向とし、カード2の移動方向(前後方向)とカード2の厚さ方向(上下方向)とに直交するカード2の幅方向である
図1等のY方向を左右方向とする。
【0026】
また、前後方向のうちの、カード挿入口3からのカード2の抜取り方向側である
図1等のX1方向側を「前」側とし、カード挿入口3へのカード2の挿入方向側である
図1等のX2方向側を「後ろ」側とする。また、上下方向の一方側である
図2等のZ1方向側を「上」側とし、その反対側である
図2等のZ2方向側を「下」側とし、左右方向の一方側である
図1等のY1方向側を「右」側とし、その反対側である
図1等のY2方向側を「左」側とする。
【0027】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の略長方形状の塩化ビニール製のカードである。カード2の裏面には、磁気データが記録される磁気ストライプ2aが形成されている。磁気ストライプ2aは、略長方形状に形成されるカード2の長手方向に沿う細長い帯状に形成されている。また、カード2には、ICチップが内蔵されており、カード2のおもて面には、ICチップの外部接続端子が形成されている。なお、カード2には、通信用のアンテナが内蔵されていても良い。カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0028】
カード2は、カード2の裏面が下側を向いた状態で、カードリーダ1に挿入されて、カード移動路4を移動する。また、カード2は、カード2の長手方向と前後方向とが略一致した状態で、カードリーダ1に挿入されて、カード移動路4を移動する。カード移動路4は、左右方向から見たときの形状が直線状となるように形成されている。カード移動路4の前端は、カード挿入口3となっている。
【0029】
カードリーダ1の前端側の一部分は、ユーザによるカード2の挿入およびカード2の引抜きが可能となるように切り欠かれた切欠部5となっている。切欠部5は、カードリーダ1のフレームの前端から後ろ側に向かって切り欠かれるように形成されている。また、左右方向では、カードリーダ1のフレームの中間位置に切欠部5が形成されており、左右方向における切欠部5の両側には、突出部6、7が形成されている。突出部6は、切欠部5の右側に配置され、突出部7は、切欠部5の左側に配置されている。切欠部5の左右方向の幅は、ユーザの指が入る広さとなっている。
図1の2点鎖線で示すように、カードリーダ1の奥側に挿入されたカード2の一部は切欠部5において露出する。
【0030】
カードリーダ1は、カード2の外部接続端子に接触する複数のIC接点バネを有するIC接点ブロック8と、カード2に記録された磁気データの読取りおよびカード2への磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッド9と、カードリーダ1に挿入されたカード2の引抜きを防止するレバー部材10とを備えている。また、カードリーダ1は、カード2の磁気ストライプ2aに記録された磁気データの不正な読取りを妨害するための磁界を発生させる妨害磁界発生機構11を備えている。
【0031】
IC接点ブロック8は、カードリーダ1の奥端側部分に配置されている。また、IC接点ブロック8は、IC接点バネが上側からカード移動路4に臨むように配置されており、IC接点ブロック8は、カード移動路4の上側に配置されている。磁気ヘッド9は、突出部6に配置されている。また、磁気ヘッド9は、カード移動路4に下側から臨むように配置されている。磁気ヘッド9は、左右方向において、カード2の磁気ストライプ2aが通過する位置に配置されている。レバー部材10は、全体として細長い棒状に形成されており、レバー部材10の長手方向と前後方向とが略一致するように、カードリーダ1の右端側に配置されている。
【0032】
(妨害磁界発生機構の構成)
図3は、
図2に示す妨害磁界発生機構11の斜視図である。
図4は、
図2に示す妨害磁界発生機構11の平面図である。
図5は、
図2に示す妨害磁界発生機構11の構成を説明するためのブロック図である。
【0033】
妨害磁界発生機構11は、たとえば、カード挿入口3からカード2が挿入される際、および、カード挿入口3からカード2が引き抜かれる際に妨害磁界を発生させる。妨害磁界発生機構11は、軟磁性材料で形成される2個のコア14、15と、コア14に巻回される励磁用の2個のコイル16、17と、コア15に巻回される励磁用の1個のコイル18と、コイル16、17に交流を供給する駆動回路19と、コイル18に交流を供給する駆動回路20とを備えている。コア14とコア15とは、別体で形成されている。駆動回路19、20は、図示を省略する回路基板に実装されている。
【0034】
妨害磁界発生機構11は、突出部6を覆う中空状のカバー部材の内部に配置されている。すなわち、コア14、15およびコイル16〜18は、突出部6を覆うカバー部材の内部に配置されている。コア14、15およびコイル16〜18は、カード移動路4よりも上側に配置されている。また、コア14、15およびコイル16〜18は、突出部6の前側または突出部6の前端部の上側に配置されている。コア14、15およびコイル16〜18は、左右方向において、カード2の磁気ストライプ2aが通過する位置に配置されている。
【0035】
コア14は、直線状に形成されるコア部14aと、直線状に形成されるコア部14bと、コア部14aとコア部14bとを繋ぐ連結コア部14cとを備えている。本形態のコア14は、コア部14a、14bと連結コア部14cとから構成されている。コア部14a、14bは、棒状に形成されている。具体的には、コア部14a、14bは、四角柱状に形成されている。コア部14aとコア部14bとは、同形状に形成されており、コア部14aの長さとコア部14bの長さとは等しくなっている。コア部14aとコア部14bとは、略平行に配置されている。すなわち、コア部14aの長手方向とコア部14bの長手方向とは、略平行になっている。
【0036】
コア部14aとコア部14bとは、左右方向に間隔をあけた状態で配置されている。上下方向から見たときに、コア部14a、14bの長手方向は、前後方向と略平行になっている。コア部14aの前端とコア部14bの前端とは、前後方向において同じ位置に配置されている。左右方向から見たときに、コア部14aとコア部14bとは完全に重なっている。連結コア部14cは、コア部14aの後端とコア部14bの後端とを繋いでいる。連結コア部14cは、長方形の平板状に形成されている。連結コア部14cの長手方向(長辺方向)は、左右方向と平行になっている。すなわち、コア14は、U形状(コの字状)に形成されている。
【0037】
コイル16は、コア部14aに巻回され、コイル17は、コア部14bに巻回されている。具体的には、コイル16は、ボビン(図示省略)を介してコア部14aに巻回され、コイル17は、ボビン(図示省略)を介してコア部14bに巻回されている。コイル16とコイル17とは直列に接続されている。コイル16の巻回方向とコイル17の巻回方向とは逆方向になっている。駆動回路19からコイル16、17に交流が供給されると、磁力線の向きがコア部14aの前端面14eからコア部14bの前端面14fに向かう方向と前端面14fから前端面14eに向かう方向とに変動する妨害磁界(交流磁界)が発生する。
【0038】
本形態のコア14は、第1コアである。また、本形態のコア部14aは、第1コア部であり、コア部14bは、第2コア部であり、コイル16は、第1コイルであり、コイル17は、第2コイルであり、駆動回路19は、第1駆動回路である。また、本形態では、コア部14aの前端面14eは、コア部14aの一方の端面である第1端面となっており、コア部14bの前端面14fは、コア部14bの一方の端面である第2端面となっている。
【0039】
コア15は、直線状に形成されるコア部15aを備えている。コア部15aは、細長い長方形の平板状に形成されている。本形態のコア15は、コア部15aによって構成されており、コア15は、細長い長方形の平板状に形成されている。上下方向から見たときに、コア部15a(すなわち、コア15)の長手方向(長辺方向)は、前後方向と略平行になっている。すなわち、上下方向から見たときに、コア部15aの長手方向とコア部14a、14bの長手方向とは、略平行になっている。
【0040】
上下方向から見たときに、コア部15aは、コア部14aとコア部14bとの間に配置されている。すなわち、コア部15aは、左右方向においてコア部14aとコア部14bとの間に配置されている。上述のように、コア14とコア15とは、別体で形成されている。すなわち、コア部15aは、コア部14a、14bと別体で形成されており、コア部14a、14bから分離されている。すなわち、コア部15aは、コア部14a、14bと繋がっていない。
【0041】
コイル18は、コア部15aに巻回されている。具体的には、コイル18は、ボビン(図示省略)を介してコア部15aに巻回されている。コイル18は、左右方向においてコイル16とコイル17との間に配置されている。駆動回路20からコイル18に交流が供給されると、磁力線の向きがコア部15aの前端面15bに向かう方向とコア部15aの後端面15cに向かう方向とに変動する妨害磁界(交流磁界)が発生する。本形態では、コイル16、17に供給される交流とコイル18に供給される交流とでは、周波数や振幅が異っている。本形態のコア15は、第2コアであり、コア部15aは、第3コア部であり、コイル18は、第3コイルであり、駆動回路20は、第2駆動回路である。
【0042】
図2に示すように、左右方向から見たときに、コア14、15は、前後方向に対して傾いている。すなわち、左右方向から見たときに、コア部14a、14b、15aは、前後方向に対して傾いている。具体的には、左右方向から見たときに、コア部14a、14b、15aは、後ろ側に向かうにしたがって上側に向かうように傾斜している。左右方向から見たときに、前後方向に対するコア部15aの傾斜角度θ1は、前後方向に対するコア部14a、14bの傾斜角度θ2と異なっている。本形態では、コア部15aの傾斜角度θ1は、コア部14a、14bの傾斜角度θ2よりも大きくなっている。たとえば、傾斜角度θ1は、22°程度であり、傾斜角度θ2は、2°程度である。
【0043】
コア部15aの長さは、コア部14a、14bの長さと異なっている。本形態では、コア部15aの長さは、コア部14a、14bの長さよりも長くなっている。たとえば、コア部15aの長さは、コア部14a、14bの長さの2倍程度となっている。前後方向において、コア部15aの前端は、コア部14a、14bの前端とほぼ同じ位置に配置されている。コア部15aの後端は、コア部14a、14bの後端よりも後ろ側に配置されている。なお、左右方向においてコア部14aとコア部14bとの間に配置されるコア部15aが連結コア部14cと干渉しないように、コア部15aの傾斜角度θ1およびコア部14a、14bの傾斜角度θ2が設定されている。
【0044】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、妨害磁界発生機構11は、コイル16、17に交流を供給する駆動回路19と、コイル18に交流を供給する駆動回路20とを備えており、コイル16、17に供給される交流とコイル18に供給される交流とでは、周波数や振幅が異なっている。そのため、本形態では、妨害磁界発生機構11によって複雑な妨害磁界を発生させることが可能になる。
【0045】
本形態では、コア部15aは、コア部14a、14bと別体で形成されており、コア部14a、14bと繋がっていない。そのため、本形態では、コア部14a、14bと、コア部15aとの間で磁路が形成されにくい。したがって、本形態では、コア部14aとコア部14bとの間に配置されるコア部15aから、コア部14aまたはコア部14bに回り込む磁束や、コア部14aまたはコア部14bからコア部15aに回り込む磁束が発生しにくくなる。その結果、本形態では、妨害磁界発生機構11で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることが可能になる。たとえば、コア部15aの前端面15bから、コア部14aの前端面14eまたはコア部14bの前端面14fに回り込む磁束が発生しにくくなるため、カードリーダ1の前方のより遠い位置まで、妨害磁界発生機構11で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることが可能になる。
【0046】
また、本形態では、コア部15aの長さがコア部14a、14bの長さと異なっているとともに、左右方向から見たときに、前後方向に対するコア部15aの傾斜角度θ1が前後方向に対するコア部14a、14bの傾斜角度θ2と異なっている。そのため、本形態では、コア部15aの後端をコア14の後端から遠ざけることが可能になる。したがって、本形態では、コア部15aの後端側において、コア部15aからコア14に回り込む磁束や、コア14からコア部15aに回り込む磁束がより発生しにくくなる。したがって、本形態では、妨害磁界発生機構11で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲をより広げることが可能になる。
【0047】
本形態では、上下方向から見たときに、直線状に形成されるコア部14a、14b、15aの長手方向は、前後方向と略平行になっている。そのため、本形態では、上下方向から見たときに、コア部14a、14b、15aの長手方向が前後方向に対して傾いている場合と比較して、カードリーダ1の前方のより遠い位置まで、妨害磁界発生機構11で発生した妨害磁界の影響が及ぶ範囲を広げることが可能になる。
【0048】
本形態では、コア部14aとコア部14bとが連結コア部14cによって繋がれている。そのため、本形態では、コア部14aとコア部14bとの間の磁束の漏れを抑制することが可能になる。したがって、本形態では、コア部14a、14bが発生させる妨害磁界の強度を高めることが可能になる。また、本形態では、コア部15aの長さがコア部14a、14bの長さよりも長くなっているため、コア部15aに巻回されるコイル18の巻き数を増やすことが可能になる。したがって、本形態では、コア部15aが発生させる妨害磁界の強度を高めることが可能になる。
【0049】
(コアの変形例)
図6、
図7は、本発明の他の実施の形態にかかる妨害磁界発生機構11の斜視図である。
【0050】
上述した形態において、
図6に示すように、コア部14aとコア部14bとが連結コア14cによって繋がれていなくても良い。この場合には、妨害磁界発生機構11は、コア部14aによって構成されるコア14と、コア部14bによって構成されるコア24と、コア部15aによって構成されるコア15とを備えており、コア14とコア24とコア15とが別体で形成されている。この場合のコア14は、第1コアであり、コア24は、第2コアであり、コア15は、第3コアである。なお、
図6では、上述した形態と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0051】
また、上述した形態において、
図7に示すように、コア15は、コア部15aと同形状に形成されるとともにコア部15aと平行に配置されるコア部15dと、コア部15aの後端とコア部15dの後端とを繋ぐ連結コア部15eとを備えていても良い。この場合には、左右方向においてコア部15aとコア部15dとの間にコア部14aが配置されている。また、コア部15dには、コイル28が巻回されている。コイル18とコイル28とは直列に接続されている。
【0052】
コイル18の巻回方向とコイル28の巻回方向とは逆方向になっている。駆動回路20は、コイル18、28に交流を供給する。駆動回路20からコイル18、28に交流が供給されると、磁力線の向きがコア部15aの前端面15bからコア部15dの前端面15fに向かう方向と前端面15fから前端面15bに向かう方向とに変動する妨害磁界(交流磁界)が発生する。なお、
図7では、上述した形態と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0053】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0054】
上述した形態において、コア部14a、14bの前端とコア部15aの前端とが前後方向においてずれていても良い。また、上述した形態において、コア部14aの前端とコア部14bの前端とが前後方向においてずれていても良い。また、コア部14aとコア部14bとは同形状に形成されていなくても良い。
【0055】
上述した形態において、コア部14a、14bの長さがコア部15aの長さより長くなっていても良い。この場合であっても、コア部15aの後端をコア14の後端から遠ざけることが可能になる。また、上述した形態において、コア部15aの長さとコア部14a、14bの長さとが等しくなっていても良い。
【0056】
上述した形態において、左右方向から見たときに、コア部14a、14bは、前後方向と平行になっていても良い。また、上述した形態において、コア部14a、14bの傾斜角度θ2がコア部15aの傾斜角度θ1より大きくなっていても良い。また、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2とが等しくなっていても良い。傾斜角度θ1と傾斜角度θ2とが等しい場合には、コア部15aの長さは、コア部14a、14bの長さよりも短くなっている。ただし、
図6に示す変形例においては、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2とが等しい場合に、コア部15aの長さがコア部14a、14bの長さより長くなっていても良い。
【0057】
上述した形態において、上下方向から見たときに、コア部14a、14b、15aの長手方向が前後方向に対して傾いていても良い。また、上述した形態において、妨害磁界発生機構11は、カード移動路4より下側に配置されていても良い。また、上述した形態では、カードリーダ1は、手動式のカードリーダであるが、本発明の構成が適用されるカードリーダは、カード2の搬送機構を有するカード搬送式のカードリーダであっても良い。