【解決手段】入力電圧(Vin)から安定化電圧(Vout)を生成する電源回路(10A)は、Pチャネル型のMOSFETである出力トランジスタ(M1)及び充電用トランジスタ(M2)を備える。出力トランジスタのソースに入力電圧が加えられ、出力トランジスタのドレインは第1ノード(ND1)に接続される。制御回路(11)は第1ノードの電圧に応じたフィードバック電圧(Vfb)に基づき制御電圧(Vcnt)を生成し、制御電圧を出力及び充電用トランジスタのゲートに与える。フィルタ用の抵抗及びコンデンサ(R
)から成るフィルタ回路(FIL)は、第1ノードの電圧を平滑化することで第2ノード(ND2)に安定化電圧を発生させる。充電用トランジスタがオンのとき、充電用トランジスタを介して上記コンデンサが充電される。
前記第2ノードの電位から見た前記出力トランジスタの第2電極での電圧が前記第2充電用トランジスタのスレッショルド電圧以上であるときに、前記第2充電用トランジスタがオン状態となって、前記第2充電用トランジスタを介し前記フィルタ用コンデンサが充電される
ことを特徴とする請求項4に記載の電源回路。
前記第2ノードの電位から見た前記出力トランジスタの第2電極での電圧が前記充電用トランジスタのスレッショルド電圧以上であるときに、前記充電用トランジスタがオン状態となって、前記充電用トランジスタを介して前記フィルタ用コンデンサが充電される
ことを特徴とする請求項8に記載の電源回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、低消費電力化が求められるアプリケーションでは、前者の方法を採用し難い。後者の方法によれば、低消費電力化を実現しつつ良好なリップル除去特性を達成することができる。但し、フィルタ回路の存在により電源回路の起動速度が遅くなる(即ち、出力電圧が所望の目標電圧に達するまでの時間が長くなる)。
【0006】
本発明は、良好なリップル除去特性を維持しつつ起動速度を高めることが可能な電源回路及び電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電源回路は、入力電圧から安定化電圧を生成する電源回路であって、前記入力電圧を受ける第1電極と、第2電極と、制御電極を有する出力トランジスタと、前記出力トランジスタの第2電極に対して直接接続される又は挿入抵抗を介して接続される第1ノードと、前記第1ノードの電圧に応じたフィードバック電圧に基づく制御電圧を前記出力トランジスタの制御電極に供給することで前記出力トランジスタの状態を制御する制御回路と、フィルタ用抵抗及びフィルタ用コンデンサを有し、前記第1ノードの電圧を平滑化することで第2ノードに前記安定化電圧を発生させるフィルタ回路と、前記第1ノード及び前記第2ノード間に設けられ、前記制御電圧に基づいて状態が制御される充電用トランジスタと、を備え、前記充電用トランジスタがオン状態とされるとき、前記充電用トランジスタを介して前記フィルタ用コンデンサが充電される構成(第1の構成)である。
【0008】
上記第1の構成に係る電源回路において、当該電源回路は、前記安定化電圧が所定の目標電圧と一致するように前記出力トランジスタを制御するリニアレギュレータであって、前記制御回路は、前記入力電圧が前記目標電圧を下回る所定の第1状態において、前記フィードバック電圧に基づき前記出力トランジスタ及び前記充電用トランジスタの双方をオン状態とする電圧を前記制御電圧として生成し、前記入力電圧が前記目標電圧を上回る所定の第2状態において、前記フィードバック電圧に基づき前記出力トランジスタをオン状態とし且つ前記充電用トランジスタをオフ状態とする電圧を前記制御電圧として生成する構成(第2の構成)であっても良い。
【0009】
上記第1又は第2の構成に係る電源回路において、前記出力トランジスタ及び前記充電用トランジスタは、Pチャネル型のMOSFETとして構成され、前記出力トランジスタの第1電極、第2電極、制御電極は、夫々、前記出力トランジスタのソース、ドレイン、ゲートであり、前記充電用トランジスタのソース、ドレインが、夫々、前記第1ノード、前記第2ノードに接続され、前記出力トランジスタ及び前記充電用トランジスタの各ゲートに共通して前記制御電圧が加わる構成(第3の構成)であっても良い。
【0010】
上記第1〜第3の構成の何れかに係る電源回路において、前記出力トランジスタの第2電極に対し前記挿入抵抗を介して前記第1ノードが接続され、前記第1ノード及び前記第2ノード間に設けられ、前記挿入抵抗での電圧降下に基づいて状態が制御される第2充電用トランジスタを更に備えた構成(第4の構成)であっても良い。
【0011】
上記第4の構成に係る電源回路において、前記第2ノードの電位から見た前記出力トランジスタの第2電極での電圧が前記第2充電用トランジスタのスレッショルド電圧以上であるときに、前記第2充電用トランジスタがオン状態となって、前記第2充電用トランジスタを介し前記フィルタ用コンデンサが充電される構成(第5の構成)であっても良い。
【0012】
上記第4又は第5の構成に係る電源回路において、前記第2充電用トランジスタは、Nチャネル型のMOSFETとして構成され、前記第2充電用トランジスタのドレイン、ソースは、夫々、前記第1ノード、前記第2ノードに接続され、前記第2充電用トランジスタのゲートは、前記出力トランジスタの第2電極に接続される構成(第6の構成)であっても良い。
【0013】
上記第1〜第6の構成の何れかに係る電源回路において、前記第1ノード及び前記第2ノード間に前記フィルタ用抵抗が設けられ、前記第2ノードにて前記フィルタ用抵抗及び前記フィルタ用コンデンサが互いに接続される構成(第7の構成)であっても良い。
【0014】
本発明に係る電源回路は、入力電圧から安定化電圧を生成する電源回路であって、前記入力電圧を受ける第1電極と、第2電極と、制御電極を有する出力トランジスタと、前記出力トランジスタの第2電極に対して挿入抵抗を介して接続される第1ノードと、前記第1ノードの電圧に応じたフィードバック電圧に基づく制御電圧を前記出力トランジスタの制御電極に供給することで前記出力トランジスタの状態を制御する制御回路と、フィルタ用抵抗及びフィルタ用コンデンサを有し、前記第1ノードの電圧を平滑化することで第2ノードに前記安定化電圧を発生させるフィルタ回路と、前記第1ノード及び前記第2ノード間に設けられ、前記挿入抵抗での電圧降下に基づいて状態が制御される充電用トランジスタと、を備え、前記充電用トランジスタがオン状態とされるとき、前記充電用トランジスタを介して前記フィルタ用コンデンサが充電される構成(第8の構成)であっても良い。
【0015】
上記第8の構成に係る電源回路において、前記第2ノードの電位から見た前記出力トランジスタの第2電極での電圧が前記充電用トランジスタのスレッショルド電圧以上であるときに、前記充電用トランジスタがオン状態となって、前記充電用トランジスタを介して前記フィルタ用コンデンサが充電される構成(第9の構成)であっても良い。
【0016】
上記第8又は第9の構成に係る電源回路において、前記充電用トランジスタは、Nチャネル型のMOSFETとして構成され、前記充電用トランジスタのドレイン、ソースは、夫々、前記第1ノード、前記第2ノードに接続され、前記充電用トランジスタのゲートは、前記出力トランジスタの第2電極に接続される構成(第10の構成)であっても良い。
【0017】
上記第8〜第10の構成の何れかに係る電源回路において、前記第1ノード及び前記第2ノード間に前記フィルタ用抵抗が設けられ、前記第2ノードにて前記フィルタ用抵抗及び前記フィルタ用コンデンサが互いに接続される構成(第11の構成)であっても良い。
【0018】
本発明に係る電源装置は、上記第1〜第11の構成の何れかに係る電源回路と、前記電源回路にて生成された前記安定化電圧をボルテージフォロアにて受けて出力電圧を生成する出力回路と、を備えた構成(第12の構成)である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好なリップル除去特性を維持しつつ起動速度を高めることが可能な電源回路及び電源装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“M2”によって参照される充電用トランジスタは(
図2参照)、充電用トランジスタM2と表記されることもあるし、トランジスタM2と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0022】
まず、本発明の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。本発明の実施形態において、ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略称である。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。0Vの電位をグラント電位と称することもある。本発明の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。
【0023】
FET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。以下、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
【0024】
以下に示される任意のMOSFETについて、特に記述無き限り、バッグゲートはソースに接続されているものとする。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解して良い。MOSFETとして構成された任意のトランジスタにおいて、ゲート−ソース間電圧とは、ソースの電位から見たゲートの電位を指す。
【0025】
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る電源回路10の回路図である。電源回路10は、与えられた入力電圧Vinから安定化電圧を出力電圧Voutとして生成する。入力電圧Vinは正の直流電圧であり、出力電圧Voutが一致すべき出力電圧Voutの目標電圧Vtgも正の直流電圧である。電源回路10は降圧型のリニアレギュレータであり、出力電圧Voutは入力電圧Vin以下となる。
【0026】
電源回路10は、Pチャネル型のMOSFETとして構成された出力トランジスタM1と、帰還抵抗R1及びR2と、フィルタ用抵抗である抵抗R
L及びフィルタ用コンデンサであるコンデンサC
Fと、制御回路11と、を備える。帰還抵抗R1及びR2にて帰還回路が形成される。抵抗R
L及びコンデンサC
FにてRCフィルタであるフィルタ回路FILが形成される。電源回路10には、
図1には示されない素子も設けられるが、当該素子の説明は後に設けることとし、まず
図1に示された構成について説明する。
【0027】
出力トランジスタM1のソースに入力電圧Vinが供給される。出力トランジスタM1のドレインはノードND1に接続される。
図1では、出力トランジスタM1のドレインがノードND1に直接接続されているが、出力トランジスタM1のドレインとノードND1との間に抵抗が挿入されることもある(詳細は後述する)。
【0028】
フィルタ回路FILは、ノードND1における電圧を平滑化し、平滑化後の電圧を出力電圧Vout(安定化電圧)として生成する。出力電圧VoutはノードND2に発生する。具体的には、ノードND1は抵抗R
Fの一端に接続され、抵抗R
Fの他端とコンデンサC
Fの一端がノードND2にて接続される。コンデンサC
Fの他端はグランドに接続される。このため、コンデンサC
Fの両端子間電圧(即ちコンデンサC
Fの充電電圧)が安定化電圧としての出力電圧Voutとなる。
【0029】
帰還抵抗R1及びR2から成る帰還回路は、ノードND1とグランドとの間に設けられ、ノードND1の電圧に応じたフィードバック電圧Vfbを生成する。具体的には、帰還抵抗R1の一端はノードND1に接続され、帰還抵抗R1の他端は帰還抵抗R2を介してグランドに接続される。帰還抵抗R1及びR2間の接続ノードにフィードバック電圧Vfbが生じる。フィードバック電圧Vfbは制御回路11に伝達される。コンデンサC
Fの放電電流が十分に小さく且つ電源回路10の安定状態では、ノードND1の電圧と出力電圧Voutは実質的に等しいため、フィードバック電圧Vfbは出力電圧Voutに比例する電圧であると解することができる。
【0030】
制御回路11は、入力電圧Vinに基づいて駆動し、フィードバック電圧Vfbが所定の基準電圧Vrefと一致するように出力トランジスタM1のゲート電圧を制御する。結果、帰還抵抗R1及びR2の抵抗値の比と基準電圧Vrefとで定まる電圧が目標電圧Vtgとして設定され、制御回路11は、出力電圧Voutが目標電圧Vtgと一致するように(厳密にはノードND1の電圧が目標電圧Vtgと一致するように)出力トランジスタM1のオン抵抗値を連続的に制御することになる。目標電圧Vtgは、“Vtg=Vref×(R1+R2)/R2”で表される。
【0031】
制御回路11は、演算増幅器であるアンプ12と、基準電圧Vrefを生成する基準電圧源13を備える。基準電圧Vrefは正の所定の直流電圧値(例えば0.5V)を有する。アンプ12の反転入力端子に基準電圧Vrefが入力され、アンプ12の非反転入力端子にフィードバック電圧Vfbが入力され、アンプ12の出力端子に出力トランジスタM1のゲートが接続される。このため、アンプ12は、フィードバック電圧Vfbが所定の基準電圧Vrefと一致するように出力トランジスタM1のゲート電圧を制御することになる。
【0032】
以下では、アンプ12の出力端子から出力される電圧を制御電圧Vcntと称する。用語“制御電圧Vcnt”を用いた場合、以下のように表現することもできる。制御回路11は、フィードバック電圧Vfb及び所定の基準電圧Vrefに基づき、フィードバック電圧Vfbを所定の基準電圧Vrefと一致させるための制御電圧Vcntを生成し、制御電圧Vcntを出力トランジスタM1のゲートに供給することで出力トランジスタM1の状態を制御する。尚、制御回路11の負側の電源電圧は0Vである。
【0033】
電源回路10は、RCフィルタによるフィルタ回路FILを備えているため、良好なリップル除去特性を有する。ここにおけるリップル除去特性とは、電源回路10の動作に起因して出力電圧Voutに重畳する微小ノイズを除去する特性であり、電源電圧変動除去比を含む。
【0034】
良好なリップル除去特性を実現できるものの、フィルタ回路FILを設けている分、電源回路10の起動速度が遅くなりがちである。即ち、電源回路10の起動時において、出力電圧Voutが目標電圧Vtgに上昇するまでに多くの時間がかかるおそれがある。
図1には示されていないが、電源回路10には、起動速度を高めるための回路が設けられている。
【0035】
第1実施形態に属する以下の実施例EX1_1〜EX1_3の中で、起動速度を高めるための回路の具体例等を説明する。第1実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の実施例EX1_1〜EX1_3に適用され、各実施例において、第1実施形態での上述事項と矛盾する事項については各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、実施例EX1_1〜EX1_3の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0036】
[実施例EX1_1]
実施例EX1_1を説明する。
図2は実施例EX1_1に係る電源回路10Aの回路図である。
図2の電源回路10Aは電源回路10の一例である。
図2の電源回路10Aは、
図1の電源回路10に対して充電用トランジスタM2を追加した構成を有し、当該追加を除き、
図2の電源回路10Aは
図1の電源回路10と同じものである。故に、実施例EX1_1では、以下、充電用トランジスタM2の追加に関わる構成及び動作のみについて説明する。
【0037】
充電用トランジスタM2はPチャネル型のMOSFETである。充電用トランジスタM2のソースはノードND1に接続され、充電用トランジスタM2のドレインはノードND2に接続される。充電用トランジスタM2のゲートはアンプ12の出力端子に接続される。故に、出力トランジスタM1及び充電用トランジスタM2の各ゲートには共通して制御電圧Vcntが加わり、出力トランジスタM1と同様、制御電圧Vcntに応じて充電用トランジスタM2の状態(オン/オフ状態)が制御されることになる。
【0038】
今、
図3に示す如く、入力電圧Vinが0Vである状態を起点に、入力電圧Vinが徐々に上昇してゆき4.0Vに至ることを考える。また、説明の具体化のため、目標電圧Vtgが2.8Vであるものとする。更に、出力トランジスタM1のスレッショルド電圧Vth[M1]及び充電用トランジスタM2のスレッショルド電圧Vth[M2]が共に“−0.7V”であると仮定する(
図4参照)。
【0039】
出力トランジスタM1においてゲート電位がソース電位よりも低く且つ出力トランジスタM1のゲート−ソース間電圧の絶対値が電圧値|Vth[M1]|以上であるとき、出力トランジスタM1はオン状態となり、そうでないとき、出力トランジスタM1はオフ状態となる。同様に、充電用トランジスタM2においてゲート電位がソース電位よりも低く且つ充電用トランジスタM2のゲート−ソース間電圧の絶対値が電圧値|Vth[M2]|以上であるとき、充電用トランジスタM2はオン状態となり、そうでないとき、充電用トランジスタM2はオフ状態となる。電圧値|Vth[M1]|、|Vth[M2]|、夫々、スレッショルド電圧Vth[M1]、Vth[M2]の絶対値を表す。出力トランジスタM1がオン状態であるときにおいて、出力トランジスタM1のゲート−ソース間電圧の絶対値が大きくなるほど、出力トランジスタM1のオン抵抗値は小さくなる。充電用トランジスタM2についても同様である。
【0040】
図4は、入力電圧Vinが2.0Vであるときにおける電源回路10Aの挙動を示す図である。制御回路11は、入力電圧Vinが2.0Vよりも低い所定の起動電圧以上であれば駆動できるよう構成されている。即ち、制御回路11は、入力電圧Vinが起動電圧以上であれば、フィードバック電圧Vfbを所定の基準電圧Vrefと一致させるための制御電圧Vcntを生成及び出力可能となっている。
【0041】
アンプ12は、ノードND1での電圧が低いほど制御電圧Vcntを低下させるよう動作する。このため、制御回路11の起動後、入力電圧Vinが目標電圧Vtgを十分に下回る状態においては、制御電圧Vcntは、アンプ12が出力可能な最低電圧と一致する。アンプ12が出力可能な最低電圧はアンプ12の負側の電源電圧と実質的に一致し、略0Vである。アンプ12が出力可能な最低電圧が制御電圧Vcntとなるとき、出力トランジスタM1はオン状態であって且つ出力トランジスタM1のオン抵抗値は最小化され、このときの出力トランジスタM1の状態を特にフルオン状態と称する。
【0042】
図4のように、入力電圧Vinが2.0Vであるとき、制御電圧Vcntはアンプ12が出力可能な最低電圧となり、出力トランジスタM1はフルオン状態となる。このときの出力トランジスタM1のオン抵抗値が十分に小さいと考えて、当該オン抵抗値を無視すればノードND1の電圧も2.0Vとなる。そうすると、充電用トランジスタM2もオン状態となるため、入力電圧Vinが加わる端子からの出力トランジスタM1を経由した電流は、抵抗R
Fを介さずに、充電用トランジスタM2を介してコンデンサC
Fへと流れ、コンデンサC
Fの充電に供される。
【0043】
図5は、入力電圧Vinが4.0Vであって出力電圧Voutが目標電圧Vtg(ここでは2.8V)にて安定化されているときの電源回路10Aの挙動を示す図である。入力電圧Vinが4.0Vとなっている安定状態において、アンプ12は、フィードバック電圧Vfbに基づき、ノードND1での電圧が目標電圧Vtgと一致するように(換言すれば出力電圧Voutが目標電圧Vtgと一致するように)制御電圧Vcntを生成するので、制御電圧Vcntは、(Vin−|Vth[M1]|)程度、即ち約3.3Vとなり、このとき、ノードND1及びND2での電圧は略2.8Vである。そうすると、充電用トランジスタM2に逆バイアスが加わるので、充電用トランジスタM2はオフ状態となる。故に、入力電圧Vinが4.0Vである状態でコンデンサC
Fに充電が流れるとき、充電電流は充電用トランジスタM2を介さず抵抗R
Fを介して流れることになる。
【0044】
このように、入力電圧Vinが目標電圧Vtgを下回る所定の第1状態(例えば
図4の“Vin=2.0V”の状態)において、制御回路11は、フィードバック電圧Vfbに基づき出力トランジスタM1及び充電用トランジスタM2の双方をオン状態とする電圧(例えばアンプ12が出力可能な最低電圧)を制御電圧Vcntとして生成する。一方、入力電圧Vinが目標電圧Vtgを上回る所定の第2状態(例えば
図5の“Vin=4.0V”の状態)においては、制御回路11は、フィードバック電圧Vfbに基づき出力トランジスタM1をオン状態とし且つ充電用トランジスタM2をオフ状態とする電圧(例えば3.3V)を制御電圧Vcntとして生成する。
【0045】
電圧Vin及びVtg間の差が微小であるとき、充電用トランジスタM2はアナログ素子として振る舞ってオン状態ともオフ状態とも言える中間状態にある。故に、上記所定の第1状態は、入力電圧Vinが目標電圧Vtgを下回っていて且つ電圧Vin及びVtg間の差が所定電圧値(例えば0.5V)以上である状態を指すと解して良く、同様に、上記所定の第2状態は、入力電圧Vinが目標電圧Vtgを上回っていて且つ電圧Vin及びVtg間の差が所定電圧値(例えば0.5V)以上である状態を指すと解して良い。所定の第1状態における制御電圧Vcntは、出力トランジスタM1をフルオン状態とするための電圧であると解しても良い。
【0046】
実施例EX1_1によれば、電源回路10Aの起動時(入力電圧Vinの立ち上がり時)において、抵抗R
Fを介さず充電用トランジスタM2を介してコンデンサC
Fが充電されるため、速やかに出力電圧Voutが立ち上がる。そして、入力電圧Vinが目標電圧Vtgを上回った後は、充電用トランジスタM2がオフ状態に固定されて抵抗R
Fを含むフィルタ回路FILが有効に機能する。このため、フィルタ回路FILによる良好なリップル除去特性を維持しながら起動速度を高めることが可能となる。
【0047】
尚、電源回路10Aにおいて、入力電圧Vinの上昇率やアンプ12の応答速度等によっては、充電用トランジスタM2を経由したコンデンサC
Fの充電機会が殆ど得られることなく、充電用トランジスタM2がオフ状態となることも有り得る。このため、入力電圧Vinの変化を検出する回路と、入力電圧Vinの0Vからの上昇開始が検知されたときには、フィードバック電圧Vfbの如何に拘らず一定時間分(例えば500マイクロ秒)、制御電圧Vcntを0Vに又は0V近辺に保つ回路とを制御回路11に含める、といった変形も可能である。
【0048】
[実施例EX1_2]
実施例EX1_2を説明する。
図6は実施例EX1_2に係る電源回路10Bの回路図である。
図6の電源回路10Bは電源回路10の一例である。
図6の電源回路10Bは、
図1の電源回路10に対して充電用トランジスタM3及び挿入抵抗R3を追加した構成を有し、当該追加を除き、
図6の電源回路10Bは
図1の電源回路10と同じものである。故に、実施例EX1_2では、以下、充電用トランジスタM3及び挿入抵抗R3の追加に関わる構成及び動作のみについて説明する。
【0049】
充電用トランジスタM3はNチャネル型のMOSFETである。充電用トランジスタM3のドレインはノードND1に接続され、充電用トランジスタM3のソースはノードND2に接続される。電源回路10Bでは、出力トランジスタM1のドレインとノードND1との間に挿入抵抗R3が設けられる。即ち、挿入抵抗R3の一端が出力トランジスタM1のドレインに接続され、挿入抵抗R3の他端がノードND1に接続される。挿入抵抗R3は、電源回路10Bの起動時において、充電用トランジスタM3をオン状態とするために設けられる。挿入抵抗R3に流れる電流を記号“I
R3”で表し、抵抗R
Fに流れる電流を記号“I
RF”で表す。
【0050】
図7を参照し、電源回路10Bの起動時における動作を説明する。
図7では、タイミングt1において入力電圧Vinが0Vから4.0Vに急峻に上昇することが想定されている。また、目標電圧Vtgは2.8Vであるものとする。入力電圧Vinの上昇に伴って制御回路11が起動する。制御回路11の起動直後において、出力電圧Vout及びフィードバック電圧Vfbは0Vであるので、アンプ12は、制御回路Vcntをアンプ12が出力可能な最低電圧に設定する。これにより、出力トランジスタM1はフルオン状態となる。
【0051】
フルオン状態を含む出力トランジスタM1のオン状態では、入力電圧Vinに基づく出力トランジスタM1及び挿入抵抗R3を経由した充電電流がコンデンサC
Fへと供給される。入力電圧Vinが4.0Vであるとき、出力電圧Voutが0Vから目標電圧Vtgに向けて上昇してゆく過程において、挿入抵抗R3での電圧降下が充電用トランジスタM3のスレッショルド電圧Vth[M3](例えば0.7V)以上となり、充電用トランジスタM3がオン状態となる。故に、上記充電電流は、抵抗R
Fではなく充電用トランジスタM3を経由してコンデンサC
Fに供給される。
図4のタイミングt1及びt2間は、挿入抵抗R3での電圧降下に基づき充電用トランジスタM3がオン状態とされる区間であり、当該区間では、上記充電電流が抵抗R
Fではなく充電用トランジスタM3を経由してコンデンサC
Fに供給される。
【0052】
タイミングt2において出力電圧Voutが目標電圧Vtgに達すると、フィードバック電圧Vfbに基づきアンプ12により制御電圧Vcntが上昇方向に変更され、結果、挿入抵抗R3の電圧降下の低下を通じて充電用トランジスタM3がオン状態からオフ状態に切り替わる。以後、コンデンサC
Fの蓄積電荷が減少して出力電圧Voutが目標電圧Vtgから低下した際には、抵抗R
Fを経由してコンデンサC
Fの充電電流が供給されることになる。
図7では、例として、ノードND2に接続された図示されない負荷が、微小電流だけ、コンデンサC
Fの蓄積電荷を継続的に引き込むことが想定されている。
【0053】
出力電圧Voutが目標電圧Vtgに達した時点で充電用トランジスタM3がオン状態からオフ状態に切り替わると上述したが、アンプ12の特性や入力電圧Vin等によっては出力電圧Voutが目標電圧Vtg(ここでは2.8V)に達する前に充電用トランジスタM3がオフ状態に切り替わることもある。例えば、タイミングt1以降の入力電圧Vinが3.0Vであるならば、充電用トランジスタM3のスレッショルド電圧Vth[M3]が0.7Vであるとすると、出力電圧Voutが2.3V程度に達する辺りで充電用トランジスタM3がオフ状態に切り替わり、以後、コンデンサC
Fの充電電流は抵抗R
Fを介して供給されることになる。
【0054】
このように、電源回路10Bでは、挿入抵抗R3の電圧降下に基づいて状態(オン/オフ状態)が制御される充電用トランジスタM3が、ノードND1及びND2間に設けられる。そして、ノードND2の電位から見た出力トランジスタM1のドレインでの電圧が充電用トランジスタM3のスレッショルド電圧Vth[M3]以上であるときに、充電用トランジスタM3がオン状態となって、充電用トランジスタM3を介しコンデンサC
Fが充電される。
【0055】
図7では、説明の便宜上、タイミングt1にて入力電圧Vinが0Vから4Vへと急峻に立ち上がることを想定したが、
図3に示す如く入力電圧Vinが緩やかに上昇する場合にあっても、挿入抵抗R3での電圧降下がスレッショルド電圧Vth[M3]以上となる区間では充電用トランジスタM3を通じて充電電流がコンデンサC
Fに供給される。
【0056】
実施例EX1_2によれば、電源回路10Bの起動時において、抵抗R
Fを介さず充電用トランジスタM3を介してコンデンサC
Fが充電されるため、速やかに出力電圧Voutが立ち上がる。そして、出力電圧Voutが目標電圧Vtgに達した後は、又は、出力電圧Voutが目標電圧Vtg近くまで達した後は、充電用トランジスタM3がオフ状態とされて抵抗R
Fを含むフィルタ回路FILが有効に機能する。このため、フィルタ回路FILによる良好なリップル除去特性を維持しながら起動速度を高めることが可能となる。
【0057】
尚、
図6では充電用トランジスタM3のバックゲートがソースに接続されているが、
図8に示す如く、充電用トランジスタM3のバックゲートをソースではなくグランドに接続するようにしても良い。これにより、基板バイアス効果に基づき、充電用トランジスタM3のスレッショルド電圧Vth[M3]を高めることが可能となる。また、充電用トランジスタM3の寄生ダイオードも生成されなくなるので、ノードND2からノードND1に向かう逆流電流の発生も抑止できる。
【0058】
[実施例EX1_3]
実施例EX1_3を説明する。
図9は実施例EX1_3に係る電源回路10Cの回路図である。
図9の電源回路10Cは電源回路10の一例である。電源回路10Cは、実施例EX1_1及びEX1_2の構成を組み合わせた構成を有する。即ち、
図9の電源回路10Cは、
図1の電源回路10に対して充電用トランジスタM2及びM3並びに挿入抵抗R3を追加した構成を有し、当該追加を除き、
図9の電源回路10Cは
図1の電源回路10と同じものである。
【0059】
充電用トランジスタM2と他の回路素子との接続関係、並びに、充電用トランジスタM2の構成及び動作は、実施例EX1_1にて示した通りである。充電用トランジスタM3及び挿入抵抗R3と他の回路素子との接続関係、並びに、充電用トランジスタM3の構成及び動作は、実施例EX1_2にて示した通りである。実施例EX1_3によれば、実施例EX1_1に示した作用・効果と実施例EX1_2に示した作用・効果を得ることができる。
【0060】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い。
【0061】
第2実施形態は以下の実施例EX2_1〜EX2_4を含む。矛盾無き限り、実施例EX2_1〜EX2_4の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0062】
[実施例EX2_1]
実施例EX2_1を説明する。第1実施形態に示した電源回路10を含む電源装置を構成して良く、電源回路10を電源装置内の内部電源又は基準電圧源として利用することができる。
【0063】
図10に実施例EX2_1に係る電源装置100の構成を示す。電源装置100は、入力端子TM1、出力端子TM2及びグランド端子TM3と、電源回路10と、出力回路20と、を備える。電源装置100における電源回路10として、第1実施形態に示した電源回路10A、10B及び10Cの内の任意の何れかを用いることができる。入力端子TM1には上述の入力電圧Vinが加えられる。グランド端子TM3はグランドに接続される。出力端子TM2には、電源装置100の出力電圧V
OUTが加わる。
【0064】
出力回路20は演算増幅器であるアンプ21から成り、電源回路10の出力電圧Voutに基づき最終的な出力電圧V
OUTを生成する。アンプ21において、正側の電源電圧は入力電圧Vinであり、負側の電源電圧は0Vである。出力回路20ではアンプ21がボルテージフォロアとして用いられ、電源回路10の出力電圧Voutをインピーダンス変換した電圧が出力電圧V
OUTとして出力端子TM2から出力される。即ち、アンプ21の非反転入力端子はノードND2に接続され(
図4等も適宜参照)、アンプ21の反転入力端子及び出力端子は出力端子TM2に共通接続される。これにより、出力電圧Voutと同じ電圧値を有する出力電圧V
OUTが低インピーダンスで出力端子TM2から出力される。
【0065】
[実施例EX2_2]
実施例EX2_2を説明する。上述の電源回路10(10A、10B又は10C)の出力電圧Voutを任意の負荷装置に供給することができ、上述の電源装置100の出力電圧V
OUTを任意の負荷装置に供給することができる。以下では、電源装置100の出力電圧V
OUTを任意の負荷装置に供給することを考える。
【0066】
電源装置100及び負荷装置を含む任意の電気機器を構成して良い。負荷装置は電源装置100の出力電圧V
OUTに基づいて駆動する。当該電気機器は、自動車等の車両に搭載される機器(即ち車載機器)であっても良いし、産業機器、事務機器、家電機器、情報端末を含むポータブル機器などであっても良い。
【0067】
図11に、電源装置100及び負荷装置を含む電気機器の一例としてのスマートホン200の概略外観図を示す。スマートホン200は携帯電話機の一種であると共に情報端末の一種である。スマートホン200において、電源装置100の出力電圧V
OUTに基づいて駆動する負荷装置は、直流電力にて駆動する任意の負荷(プロセッサ、メモリ、液晶ドライバ、通信IC等)であって良い。
【0068】
[実施例EX2_3]
実施例EX2_3を説明する。電源装置100を電源ICの形態で形成しても良い。このとき、電源装置100としての電源ICは、電源装置100を構成する半導体集積回路が形成された半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体に取り付けられ且つ筐体から露出した複数の外部端子と、を備えた電子部品(半導体装置)であり、半導体チップを樹脂にて構成された筐体内に封入することで形成される。
図10の端子TM1〜TM3は上記複数の外部端子に含まれる。
【0069】
[実施例EX2_4]
実施例EX2_4を説明する。上述の主旨を損なわない範囲で、上述の各トランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、上述の主旨を損なわない範囲で、Pチャネル型のMOSFETをNチャネル型のMOSFETに置換する変形やNチャネル型のMOSFETをPチャネル型のMOSFETに置換する変形が可能であると共に、Pチャネル型のMOSFETをPNP型のバイポーラトランジスタに置換する変形及びNチャネル型のMOSFETをNPN型のバイポーラトランジスタに置換する変形も可能である。また、MOSFETを接合型FET又はIGBTに置換する変形も可能である。
【0070】
任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0071】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。