【解決手段】タッチ検出回路200の第1端子P1、第2端子P2には、近接する第1電極E1、第2電極E2が接続される。容量センシング回路210は、(i)第1電極E1が第2電極E2を含む周囲との間に形成する第1静電容量をセンシングするとともに、(ii)第2端子P2の電圧を第1端子P1の電圧に追従させた状態で、自己容量方式によって第1電極E1が周囲との間に形成する第2静電容量Cbをセンシングする。信号処理部250は、第1静電容量Caと第2静電容量Cbの差分にもとづいて、第1電極E1および第2電極E2に付着する水を検出する。
前記信号処理部は、前記容量センシング回路の前記第1静電容量に対する感度と、前記容量センシング回路の前記第2静電容量に対する感度と、の誤差を補正することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタッチ検出回路。
前記信号処理部は、あるフレームにおいてタッチ判定をする際に、過去のフレームにおいて測定された前記第2静電容量にもとづいて補正値を生成し、当該補正値にもとづいて、タッチ検出用のしきい値と現在のフレームの前記第2静電容量の少なくとも一方を補正し、補正後の前記第2静電容量と前記しきい値の比較結果にもとづいて、前記第1電極へのタッチの有無を判定することを特徴とする請求項6に記載のタッチ検出回路。
あるフレームにおける前記第1電極へのタッチの有無の判定条件は、それより前のフレームにおける前記水の検出結果に応じて変化することを特徴とする請求項8に記載のタッチ検出回路。
前記容量センシング回路は、前記第1静電容量および前記第2静電容量に加えて、(iii)前記第2電極が、前記第1電極を含む周囲との間に形成する第3静電容量をセンシングするとともに、(iv)前記第1端子の電圧を前記第2端子の電圧に追従させた状態で、自己容量方式によって前記第2電極が周囲との間に形成する第4静電容量をセンシングすることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のタッチ検出回路。
前記第1端子および前記第2端子と前記容量センシング回路との間に設けられ、前記第1端子および前記第2端子と前記容量センシング回路の接続関係を入れ替えるセレクタをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のタッチ検出回路。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、タッチ検出回路に関する。タッチ検出回路は、第1電極が接続されるべき第1端子と、第1電極と近接する第2電極が接続されるべき第2端子と、(i)第1電極が第2電極を含む周囲との間に形成する第1静電容量をセンシングするとともに、(ii)第2端子の電圧を第1端子の電圧に追従させた状態で、自己容量方式によって第1電極が周囲との間に形成する第2静電容量をセンシングする容量センシング回路と、第1静電容量と第2静電容量の差分にもとづいて、第1電極および第2電極に付着する水を検出する信号処理部と、を備える。
【0012】
水が、第1電極と第2電極にまたがって存在する場合、その静電容量は、第1静電容量には含まれるが、第2静電容量には含まれない。そこで、第1静電容量と第2静電容量の差分をとることで、水の有無を判定できる。
【0013】
容量センシング回路は、自己容量方式によって第1静電容量をセンシングしてもよい。容量センシング回路は、相互容量方式によって第1静電容量をセンシングしてもよい。
【0014】
容量センシング回路は、第2電極の電圧が第1電極の電圧に追従するように第2端子を駆動するキャンセル回路を含んでもよい。キャンセル回路をイネーブルとした状態で、自己容量方式によって第2静電容量を測定してもよい。
【0015】
容量センシング回路の構成や検出方式によっては、第1静電容量の検出感度と第2静電容量の検出感度が大きく異なる状況が生じうる。この場合、信号処理部は、容量センシング回路の第1静電容量に対する感度と、容量センシング回路の第2静電容量に対する感度と、の誤差を補正してもよい。
【0016】
信号処理部は、第2静電容量にもとづいて、第1電極へのタッチの有無を判定してもよい。
【0017】
信号処理部は、あるフレームにおいてタッチ判定をする際に、過去のフレームにおいて測定された第2静電容量にもとづいて補正値を生成し、当該補正値を用いて、現在のフレームの第2静電容量およびタッチ検出用のしきい値の少なくとも一方を補正し、補正後の前記第2静電容量と前記しきい値の比較結果にもとづいて、第1電極へのタッチの有無を判定してもよい。これにより、電極に付着する水の静電容量の影響をキャンセルすることができる。
【0018】
第1電極へのタッチの有無の判定条件は、水の検出結果に応じて変化してもよい。
【0019】
あるフレームにおける第1電極へのタッチの有無の判定条件は、それより前のフレームにおける水の検出結果に応じて変化してもよい。
【0020】
容量センシング回路は、第1静電容量および第2静電容量に加えて、(iii)第2電極が、第1電極を含む周囲との間に形成する第3静電容量をセンシングするとともに、(iv)第1端子の電圧を第2端子の電圧に追従させた状態で、自己容量方式によって第2電極が周囲との間に形成する第4静電容量をセンシングする。これにより、第1電極に対するタッチ入力と、第2電極に対するタッチ入力を検出できる。
【0021】
タッチ検出回路は、第1端子および第2端子と容量センシング回路との間に設けられ、第1端子および第2端子と容量センシング回路の接続関係を入れ替えるセレクタをさらに備えてもよい。
【0022】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0024】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るタッチ検出回路200を備えるタッチ入力装置100のブロック図である。タッチ入力装置100は、ユーザの指2(あるいはスタイラス)によるタッチ操作(以下、近接も含む)を検出するユーザインタフェースである。
【0026】
タッチ入力装置100は、パネル110、ホストプロセッサ120およびタッチ検出回路200を備える。パネル110は、タッチパネルあるいはスイッチパネルであり、第1電極E1(以下、センス電極E
SNSという)と第2電極E2(以下、補助電極E
AUXという)を有する。センス電極E
SNSと補助電極E
AUXは、パネル110の表面に水が付着したときに、それらの両方が同じ水滴あるいは水溜まりと接触する程度に近接していることが望ましい。本実施の形態では、センス電極E
SNSに対するタッチ(近接を含む)の有無のみが判定され、補助電極E
AUXに対するタッチは検出対象外である。
【0027】
ホストプロセッサ120は、タッチ入力装置100が搭載される機器、装置、システムを統合的に制御する上位コントローラである。タッチ検出回路200は、パネル110の状態、より詳しくはパネル110に対する入力(近接)の有無および水の付着の有無をホストプロセッサ120に伝送可能に構成される。
【0028】
タッチ検出回路200は、第1端子P1(以下、センス端子P
SNSという)、第2端子P2(以下、補助端子P
AUXという)を有する。センス端子P
SNSには、タッチのセンシング対象となるセンス電極E
SNSと接続され、補助端子P
AUXには補助電極E
AUXが接続される。
【0029】
タッチ検出回路200は、容量センシング回路210、A/Dコンバータ230、信号処理部250、コントローラ270、インタフェース回路290を備える。
【0030】
容量センシング回路210は、(i)センス電極E
SNSが補助電極E
AUXを含む周囲との間に形成する第1静電容量Caをセンシングし、第1静電容量Caを示す第1検出信号VCaを生成する。また容量センシング回路210は、(ii)補助端子P
AUXの電圧Vyをセンス端子P
SNSの電圧Vxに追従させた状態で、自己容量方式によってセンス電極E
SNSが周囲との間に形成する第2静電容量Cbをセンシングし、第2静電容量Cbを示す第2検出信号VCbを生成する。第1静電容量Caのセンシングと第2静電容量Cbのセンシングは時分割で行われる。
【0031】
A/Dコンバータ230は、第1検出信号VCa、第2検出信号VCbそれぞれを第1デジタル信号DCa、第2デジタル信号DCbに変換する。信号処理部250は、第1デジタル信号DCa、第2デジタル信号DCbの少なくとも一方にもとづいて、センス電極E
SNSに対するタッチの有無を判定する。たとえば信号処理部250は、第2静電容量Cbがタッチ検出用のしきい値THtを超えたときに、タッチがあったものと判定してもよい。
【0032】
また信号処理部250は、第1デジタル信号DCaと第2デジタル信号DCbの差分、すなわち第1静電容量Caと第2静電容量Cbの差分にもとづいて、パネル110への水の付着の有無を判定する。具体的には信号処理部250は、第1静電容量Caと第2静電容量Cbの差分容量ΔCが水検出用のしきい値THwを超えたときに、水が付着しているものと判定してもよい。
【0033】
なお、容量センシング回路210の構成や検出方式によっては、第1静電容量Caの検出感度と第2静電容量Cbの検出感度が大きく異なる状況が生じうる。この場合、信号処理部250は、第1デジタル信号DCaと第2デジタル信号DCbの少なくとも一方を補正し、補正後の第1デジタル信号DCaと第2デジタル信号DCbにもとづいて、水検出およびタッチ検出を行うとよい。
【0034】
インタフェース回路290は、ホストプロセッサ120と接続されている。その限りでないが、たとえばインタフェース回路290は、I
2C(Inter IC)インタフェースや、SPI(Serial Peripheral Interface)などであり、信号処理部250による検出結果をホストプロセッサ120に送信する。
【0035】
図2は、容量センシング回路210の構成例を示す図である。容量センシング回路210は、自己容量方式の容量センサ211と、キャンセル回路240と、を備える。容量センサ211は、センス端子P
SNSを介してセンス電極E
SNSと接続されており、自己容量方式によってセンス電極E
SNSが周囲との間に形成する静電容量Csを検出する。
【0036】
容量センサ211の回路形式は特に限定されず、公知技術を用いればよい。容量センサ211によるセンシングの間、センス端子P
SNSおよびセンス電極E
SNSは実質的に同電位であり、その電圧Vxは変動する。
【0037】
キャンセル回路240の出力は、補助端子P
AUXを介して補助電極E
AUXと接続される。キャンセル回路240は、コントローラ270による制御によって、イネーブル、ディセーブルが切り替え可能である。キャンセル回路240は、第1静電容量Caを測定するときにディセーブル、第2静電容量Cbを測定するときにイネーブルとなる。
【0038】
キャンセル回路240は、ディセーブル状態において、出力がハイインピーダンスとなる。この状態において、容量センサ211が検出する静電容量Cs1には、センス電極E
SNSと指2の間の静電容量Cfと、センス電極E
SNSと補助電極E
AUXの間の寄生容量Cpが含まれる。また後述のように、センス電極E
SNSと補助電極E
AUXをまたいで水が付着している場合、水に起因する静電容量Cwも含まれる。
Cs1=Cf+Cp+Cw
この静電容量Cs1が、上述の第1静電容量Caに相当する。
【0039】
キャンセル回路240は、イネーブル状態において、センス端子P
SNSの電圧Vxに追従して、補助端子P
AUXの電圧Vyを変化させる。これにより、容量センサ211によるセンシングの間、センス電極E
SNSの電圧と補助電極E
AUXの電圧は等しくなる。したがって、センス電極E
SNSが、補助電極E
AUXとの間に形成する容量成分Cp,Cwは容量センサ211から見えなくなり、容量センサ211が検出する静電容量Cs2は、それ以外の成分(たとえば指との間の成分Cf)のみを含むこととなる。
Cs2=Cf
この静電容量Cs2が、上述の第2静電容量Cbに相当する。
【0040】
このように、
図2の容量センシング回路210によれば、第1静電容量Caと第2静電容量Cbを測定することができる。
【0041】
続いてタッチ入力装置100の動作を説明する。はじめに、理想状態での検出を説明する。
図3(a)〜(d)は、パネルの状態と第1静電容量Ca、第2静電容量Cbおよび差分容量ΔC(=Ca−Cb)の関係を示す図である。バーの長さは容量値を示すが、理解の容易化のために、それらの相対的な大小関係は実際のそれとは異なっている。
【0042】
図3(a)は、水がなく、指2の近接もない状態を示す。第1静電容量Caは、電極E
SNS−E
AUX間の寄生容量Cpを含み、第2静電容量Cbはゼロである。第1静電容量Caと第2静電容量Cbの差分容量ΔCは寄生容量Cpである。この例では、差分容量ΔCは水検出用のしきい値THwより小さいから、水は存在しない状態と判定される。
【0043】
図3(b)は、
図3(a)の状態において、指2が近接した状態を示す。第1静電容量Caは、寄生容量Cp、ならびに指との間の静電容量Cfを含み、第2静電容量Cbは指2との間の静電容量を含む。第1静電容量Caと第2静電容量Cbの差分容量ΔCは寄生容量Cpである。この例でも、差分容量ΔCは水検出用のしきい値THwより小さいから、水は存在しない状態と判定できる。また、第2静電容量Cbはタッチ検出用のしきい値THtを超えているため、タッチがあったものと判定できる。
【0044】
図3(c)は、センス電極E
SNSと補助電極E
AUXをまたいで水4が付着している場合を示す。第1静電容量Caは、電極E
SNS−E
AUX間の寄生容量Cpと水の静電容量Cwを含む。第2静電容量Cbはゼロである。第1静電容量Caと第2静電容量Cbの差分容量ΔCは寄生容量Cp+Cwである。この例では、差分容量ΔCは水検出用のしきい値THwを超えるため、水4が付着した状態と判定できる。また第2静電容量Cbは、タッチ検出用のしきい値THtより小さいから、タッチはないものと判定できる。
【0045】
図3(d)は、
図3(c)の状態において、指2が近接した状態を示す。第1静電容量Caは、Cp,Cw,Cfを含む。第2静電容量CbはCfを含む。差分容量ΔCは寄生容量Cpと水の静電容量Cwを含む。この例では、差分容量ΔCは水検出用のしきい値THwを超えるため、水4が付着した状態と判定できる。また第2静電容量Cbは、タッチ検出用のしきい値THtを超えるから、タッチがあったものと判定できる。
【0046】
以上がタッチ入力装置100の基本的な動作である。このタッチ入力装置100によれば、水4の付着の有無を判定することができ、またセンス電極E
SNSに対するタッチの有無を判定できる。
【0047】
続いて、タッチ判定に関する変形例を説明する。
【0048】
(変形例1)
水の有無によって指の検出の感度が変化する場合がある。
図4(a)、(b)は、水がないときの、タッチ検出を模式的に示す図であり、
図4(c)、(d)は、水があるときの、タッチ検出を模式的に示す図である。
【0049】
図4(a)、(b)に示すように、乾いたセンス電極E
SNSに指が接近する場合、指とセンス電極E
SNSの間は空気であるから、それらの間の空間の静電容量C
AIRは非常に小さい。したがって、指2とセンス電極E
SNSの距離がかなり近くならないと、第2静電容量Cbはタッチしきい値THtを超えることはない。
【0050】
図4(c)、(d)を参照する。水4の比誘電率は空気よりも大きい。したがって
図4(c)に示すように、センス電極E
SNSに水4が付着している場合、指2が水4に接触すると、指2がセンス電極E
SNSに接触していなくても、第2静電容量Cbがタッチしきい値THtを超え、タッチと判定される。
図4(d)に示すように、指2がセンス電極E
SNSに接触すると、第2静電容量Cbはさらに増大する。このように、水が付着している場合は、付着していない場合に比べて、指の検出感度が高くなりすぎる場合がある。
【0051】
このように水が付着しているときの検出感度は、センス電極E
SNSに付着している水の量と相関を有する。そこで変形例1においては、水の付着の有無に応じた補正処理を行い、タッチ判定の条件を変化させる。より好ましくは、水が付着されていると判定された場合(すなわちΔC>THwの場合)に、現在付着している水の静電容量を推定し、その推定値Cw^にもとづいた補正処理を行う。すでに説明したように、第1静電容量Caと第2静電容量Cbの差分容量ΔCは、水の量、言い換えれば水の静電容量Cwと相関を有している。そこで、差分容量ΔCに、所定の係数kを乗算することにより水の静電容量を推定してもよい。
Cw^=k×(Ca−Cb)
【0052】
あるいはより複雑な任意の関数f(Ca−Cb)を用いて、水の静電容量の推定値Cw^を計算してもよい。
Cw^=f(Ca−Cb)
あるいは差分容量ΔCと推定値Cw^の関係をテーブルに保持しておいてもよい。
【0053】
水の静電容量の推定値にもとづく補正処理をいくつか説明する。
第1の補正処理では、推定値Cw^にもとづいて、タッチ検出用のしきい値THtを動的にシフトさせる。シフト後のしきい値THt’は以下のように表される。
THt’=THt+Cw^
【0054】
図4(c)、(d)には、第1の補正処理が示される。水付着時のしきい値をTHt’で示す。水が付着している場合に、しきい値THt’を大きくすることで、
図4(c)のケースを非タッチ状態と判定し、
図4(d)のケースをタッチ状態と判定することができ、水のある場合と無い場合とで、検出感度を揃えることができる。
【0055】
第2の補正処理では、測定により得られた第2静電容量Cbから、推定値Cw^を減算することにより水4の影響を低減し、補正後の静電容量Cb’を、タッチ検出用の固定のしきい値THtと比較する。
Cb’=Cb−Cw^
【0056】
当業者によれば、第1補正処理と第2補正処理が等価なものであることが理解される。すなわち、水の静電容量の推定値Cw^にもとづいて、静電容量Cbとしきい値THtの少なくとも一方を補正し、補正後の静電容量Cbとしきい値THtの比較結果にもとづいてタッチ判定が行われる。
【0057】
(変形例2)
上述のように、本実施の形態に係るタッチ入力装置100によれば、水の有無を判定することができる。ところが、この水の検知は、指2の非タッチ状態においては正確であるが、指2がある程度、パネル110(センス電極E
SNS)に近接すると、水の検知が困難となる。
図5(a)〜(c)を参照して、指が遠方から近づくときの遷移を説明する。
図5(a)は、指2が非常に遠い状態、
図5(b)は指が接近した状態、
図5(c)は指がタッチした状態を示す図である。
【0058】
図5(a)は、パネルに水4が付着した状態であり、
図3(c)に対応する。このとき差分容量ΔCにもとづいて水を検出できる。
【0059】
図5(b)は、水4が付着したパネルに指2が接近する過程を示す。この状態では、第1静電容量Caを測定するときと、第2静電容量Cbを測定する場合とで、検出感度が異なる場合がある。この例では、指2の容量成分Cfは、第2静電容量Cbの測定時には相対的に大きく測定されるが、第1静電容量Caの測定時には相対的に小さくなる。その結果、差分容量Ca−Cbが水検出のしきい値THwを下回り、水4を検出できなくなる。CbはTHtより低いため、タッチは検出されない。
【0060】
図5(c)は指2がセンス電極E
SNSに接触した状態を示す。この状態においても、第1静電容量Caの測定時には指2の成分Cfが小さく、第2静電容量Cbの測定時には指2の成分Cfが大きく測定される。したがって、差分容量Ca−Cbはしきい値THwを下回り、水4を検出できない。CbはTHtよりは大きいため、タッチは検出することができる。
【0061】
このように、
図5(a)の状態では、水4の存在を検出できているが、指2がパネルに近づくことにより、タッチ入力装置100は水を見失う。変形例1や2で説明したように、水の有無を、タッチ検出の判定基準(しきい値THt’)に反映させる場合、水の有無が誤判定されると、タッチの検出精度が低下する。
【0062】
変形例2では、この問題を以下のようにして回避する。水の付着と、指の近接が同時に発生することは希であり、多くの場合、まずはじめに、水がパネルに付着し、その後、指がパネルに接近し、やがて接触する。つまり
図3(c)の状態から
図5(b)の状態に直接遷移することは現実的には起こりえず、通常は、
図5(a)の状態を経て、
図5(b)の状態に遷移する。この原則を、信号処理部250における水検出及びタッチ検出のアルゴリズムに組み込むとよい。
【0063】
タッチ入力装置100は、所定のフレームレートで、第1静電容量Caと第2静電容量Cbの検出を行うものとする。このとき、あるフレームにおいて、タッチの有無を判定するときの判定条件(たとえばタッチしきい値THt)は、それより前のフレーム(たとえば数フレーム前)に得られた水の有無の判定結果および水の量に応じて決めるとよい。
【0064】
あるフレームにおいて、
図5(a)の状態で水が正確に検出され、それに続くフレームでは、
図5(b)、(c)の状態が判定される。
図5(b)、(c)の状態をセンシングするフレームでは、
図5(a)をセンシングしたときの過去のフレームの水の検出状態が参照されるため、水4が存在するものとして、処理を行うことができる。
【0065】
図6(a)、(b)は、過去フレームを利用した補正処理を説明する図である。i番目(i=1,2…)のフレームにおいて得られた第1静電容量Ca、第2静電容量Cbを、Ca
i、Cb
iのように表記する。
【0066】
図6(a)は、過去のi番目のフレームを示しており、Ca
i−Cb
i>THwが成り立っているから、水4が検出される。このときの差分容量ΔC
i=Ca
i−Cb
iの値、もしくはそれから得られる水の静電容量の推定値Cw^
iは、破棄せずに、数フレームの間、保持される。
【0067】
図6(b)は、
図6(a)から数フレーム後のj番目のフレームを示している。指2が接近したことにより、差分容量ΔC
jの差分が水検出のしきい値THwより小さくなっているが、過去のi番目のフレームの検出結果が参照され、水4は存在するものとして処理され、現フレームの差分容量ΔC
j(もしくは推定値Cw^
j)はなく、保持しておいた過去フレームの差分容量ΔC
i(もしくは推定値Cw^
i)にもとづいて計算される。
【0068】
このように過去フレームの検出結果を参照することにより、実際の水4の量を考慮して、指2のタッチの有無を正確に判定することができる。
【0069】
続いて容量センシング回路210の実装例を説明する。
【0070】
図7は、容量センシング回路210の第1実装例(210A)を示す回路図である。容量センシング回路210Aは、容量センサ211Aおよびキャンセル回路240Aを含む。容量センサ211Aは、複数のスイッチSW21〜SW26、オペアンプ212、基準容量Cref、帰還容量Cfbを含む。基準容量Crefは一端が接地される。基準容量Crefの他端は電荷転送スイッチSW25を介してセンス端子P
SNSと接続され、増幅用スイッチSW26を介してオペアンプ212の反転入力端子(−)と接続される。
【0071】
スイッチSW25、SW26、基準容量Cref、帰還容量Cfbおよびオペアンプ212は、スイッチドキャパシタを用いた積分器218を形成する。オペアンプ212の非反転入力端子(+)には基準電圧Vrefが入力され、オペアンプ212の出力と反転入力端子の間には帰還容量Cfbが設けられる。
【0072】
上側スイッチSW21と下側スイッチSW22のペアは、第1駆動部214を形成しており、センス端子P
SNSの電圧Vxを、電源電圧Vddと接地電圧0Vの2値で変化させる。
【0073】
上側スイッチSW23と下側スイッチSW24のペアは、第2駆動部216を形成しており、基準容量Crefの電圧Viを、電源電圧Vddと接地電圧0Vの2値で変化させる。
【0074】
スイッチSW21〜SW26はコントローラ270によって制御される。コントローラ270は、信号処理部250の一部であってもよい。Vref=Vdd/2とすることが好ましい。帰還容量Cfbと並列に、図示しない初期化スイッチを設けてもよい。
【0075】
容量センサ211は、(i)駆動期間において、電荷転送スイッチSW25をオフし、センス端子P
SNSと基準容量Crefを切り離した状態で、センス端子P
SNSに電源電圧Vddと接地電圧0Vの一方を印加し、基準容量Crefに電源電圧Vddと接地電圧0Vの他方を印加する。
【0076】
容量センサ211は続くセンス期間において、電荷転送スイッチSW25のみがオンとなり、センス端子P
SNSと基準容量Crefが接続される。その結果、静電容量Csと基準容量Crefの間で電荷の移動が発生する。直前の駆動期間においてセンス端子P
SNSに電源電圧Vddを、基準容量Crefに接地電圧0Vを印加したとすると、電荷保存の法則から、以下の式が成り立つ。
Cs×Vdd=Vi×(Cs+Cref) …(1)
Vi=Vdd×Cs/(Cs+Cref) …(2)
Viは、電荷移動完了後の基準容量Crefの電圧を表す。もしCs=Crefであれば、Vi=Vdd/2となる。
【0077】
続く増幅期間において、増幅用スイッチSW26がオンされる。その結果、オペアンプ212の反転入力端子の電圧がVrefとなるように帰還容量Cfbが充電され、以下の検出電圧Vsが得られる。
Vs=Vref−Cref/Cfb×(Vi−Vref) …(3)
【0078】
式(2)および(3)から、検出電圧Vsは、静電容量Csに依存することが分かる。
【0079】
キャンセル回路240Aの駆動補助回路244は、第1スイッチSW11および第2スイッチSW12を含む。第1スイッチSW11は、補助端子P
AUXと電源ラインの間に設けられ、第2スイッチSW12は、補助端子P
AUXと接地ラインの間に設けられる。第1スイッチSW11は第1駆動部214の上側スイッチSW21と連動してオンとなり、補助端子P
AUXの電圧Vyを、電源電圧Vddにプルアップする。また第2スイッチSW12は第1駆動部214の下側スイッチSW22と連動してオンとなり、補助端子P
AUXの電圧Vyを接地電圧0Vにプルダウンする。
【0080】
キャンセル回路240Aは、ディセーブル状態において、スイッチSW11〜SW3がオフに固定される。
【0081】
図8は、
図7の容量センサ211Aの動作波形図である。駆動期間T1において、上側スイッチSW21,下側スイッチSW24がオンとなり、センス端子P
SNSに電源電圧Vddが印加され、基準容量Crefに接地電圧0Vが印加される。続く転送期間T2において、電荷転送スイッチSW25がオンとなり、静電容量Csと基準容量Crefの電荷が平均化される。基準容量Crefの電圧Viは、以下の式で表される。
Vi=Vdd×Cs/(Cs+Cref)
【0082】
続く増幅期間T3において、電荷転送スイッチSW25がオフとなり、電圧Viがホールドされる。増幅用スイッチSW26がオンとなることで、検出電圧Vsが生成される。
【0083】
続く駆動期間T4において、下側スイッチSW22,上側スイッチSW23がオンとなり、センス端子P
SNSに接地電圧0Vが印加され、基準容量Crefに電源電圧Vddが印加される。続く転送期間T5において、電荷転送スイッチSW25がオンとなり、静電容量Csと基準容量Crefの電荷が平均化される。
Vi=Vdd×Cref/(Cs+Cref)
【0084】
続く増幅期間T6において、電荷転送スイッチSW25がオフとなり、電圧Viがホールドされる。増幅用スイッチSW26がオンとなることで、検出電圧Vsが生成される。
【0085】
図9は、容量センシング回路210Aによる第2静電容量Cbのセンシングを説明する図である。駆動期間T1において、センス端子P
SNSの電圧Vxは、電源電圧Vddに上昇する。これにあわせて、第1スイッチSW11がオンすることで、補助端子P
AUXの電圧Vyは、電圧Vxに追従して電源電圧Vddに上昇する。
【0086】
転送期間T2および増幅期間T3の間は、第3スイッチSW13がオンとなり、補助端子P
AUXはバッファ242の出力と接続される。その結果、バッファ242によって、補助端子P
AUXの電圧Vyは、センス端子P
SNSの電圧Vxと等しくされる。
【0087】
駆動期間T4において、センス端子P
SNSの電圧Vxは、接地電圧0Vに低下する。これにあわせて、第2スイッチSW12がオンすることで、補助端子P
AUXの電圧Vyは、電圧Vxに追従して接地電圧0Vに低下する。
【0088】
転送期間T5および増幅期間T6の間は、第3スイッチSW13がオンとなり、補助端子P
AUXはバッファ242の出力と接続される。その結果、バッファ242によって、補助端子P
AUXの電圧Vyは、センス端子P
SNSの電圧Vxと等しくされる。
【0089】
以上が容量センシング回路210Aの動作である。この容量センシング回路210Aによれば、補助端子P
AUXの電圧Vyを、高速にセンス端子P
SNSの電圧Vxに追従させることができ、センス電極E
SNSと補助電極E
AUXの間の寄生容量Cp、Cwの影響をキャンセルでき、第2静電容量Cbを測定できる。
【0090】
駆動期間T1の開始タイミングにおいて、バッファ242の代わりに、駆動補助回路244によって、電圧Vyを急峻に上昇させることができる。また駆動期間T4の開始タイミングにおいて、バッファ242の代わりに駆動補助回路244によって、電圧Vyを急峻に低下させることができる。
【0091】
図10は、容量センシング回路210Aの動作シーケンスの変形例を説明する図である。この変形例において、駆動期間T1から転送期間T2に遷移した直後、第1スイッチSW11と第2スイッチSW12の同時オン期間が設けられる。第1スイッチSW11と第2スイッチSW12のオン抵抗が等しいとき、補助端子P
AUXの電圧Vyは、駆動補助回路244によってVddと0Vの中点電圧(すなわち基準電圧Vref)まで瞬時に低下する。そして第1スイッチSW11、第2スイッチSW12が両方オフとなると、バッファ242によって、補助端子P
AUXの電圧Vyは、センス端子P
SNSの電圧Vxと等しくされる。
【0092】
同様に、駆動期間T4から転送期間T5に遷移した直後にも、第1スイッチSW11と第2スイッチSW12の同時オン期間が設けられる。これにより、補助端子P
AUXの電圧Vyは、駆動補助回路244によってVddと0Vの中点電圧(すなわち基準電圧Vref)まで瞬時に上昇する。そして第1スイッチSW11、第2スイッチSW12が両方オフとなると、バッファ242によって、補助端子P
AUXの電圧Vyは、センス端子P
SNSの電圧Vxと等しくされる。
【0093】
この変形例によれば、駆動期間T1の終了タイミングにおいても、バッファ242ではなく駆動補助回路244によって、電圧Vyを急峻に低下させることができる。また駆動期間T4の終了タイミングにおいても、バッファ242ではなく駆動補助回路244によって、電圧Vyを急峻に上昇させることができる。これにより、バッファ242に要求される駆動能力をさらに低くすることができ、回路面積、消費電力を削減できる。
【0094】
図11は、容量センシング回路210の第2実装例(210B)を示す回路図である。キャンセル回路240Bは、
図7のキャンセル回路240Aに加えて、バイアス回路246を備える。バイアス回路246は、駆動補助回路244のオフ状態(非アクティブ状態、すなわちSW11,SW12が両方オフ)であるときに、バッファ242の入力にバイアス電圧Vbiasを供給する。バイアス電圧Vbiasは、基準電圧Vrefと等しいか、またはその近傍に設定することが望ましい。
【0095】
バイアス回路246は、第4スイッチSW14、第5スイッチSW15、電圧源248を含む。たとえばVbias=Vdd/2とするとき、電圧源248は、電源電圧Vddを分圧比1/2で分圧する抵抗分圧回路で構成してもよい。第4スイッチSW14は、バッファ242の入力とセンス端子P
SNSの間に設けられる。また第5スイッチSW15は、バッファ242の入力と電圧源248の間に設けられる。
【0096】
図12は、
図11の容量センシング回路210Bの動作波形図である。
図12には、バッファ242の出力電圧Vzが示される。駆動期間T1、T4において、第4スイッチSW14がオフ、第5スイッチSW15がオンとなる。その結果、バッファ242の出力電圧Vzは、バイアス電圧Vbiasに維持される。転送期間T2、T5、増幅期間T3、T6において、第4スイッチSW14がオン、第5スイッチSW15がオフとなり、バッファ242の出力電圧Vzは、電圧Vxと等しくなる。
【0097】
このように、実装例2によれば、バッファ242の出力電圧Vzの変動範囲を狭めることができる。これにより、バッファ242の駆動能力を下げることができ、回路面積、消費電力を一層削減できる。
【0098】
図13は、容量センシング回路210の第3実装例(210C)の回路図である。キャンセル回路240Cのバイアス回路246Cは、サンプルホールド回路247を含む。サンプルホールド回路247は、転送期間T2(T5)、増幅期間T3(T6)におけるセンス端子P
SNSの電圧Vxをサンプリングし、ホールドする。バイアス回路246Cは、駆動期間T1,T4の間、ホールドした電圧をバイアス電圧Vbiasとして出力し、転送期間T2(T5)、増幅期間T3(T6)の間、センス端子P
SNSの電圧Vxを出力する。
【0099】
図14は、容量センシング回路210の第4実装例(210E)の回路図である。容量センサ211Eの回路形式が、
図7の容量センサ211Aと異なっている。容量センサ211Eは、リセットスイッチSW41、カレントミラー回路274、積分器276を備える。
【0100】
リセットスイッチSW41は、センス端子P
SNSと接地ラインの間に設けられる。カレントミラー回路274は、入力側のトランジスタM41がセンス端子P
SNSと接続される。カレントミラー回路274は、センススイッチSW42を含んでもよい。積分器276は、カレントミラー回路274の出力側のトランジスタM42に流れる電流Isを積分した検出電圧Vsを出力する。
【0101】
図15は、
図14の容量センサ211Eの動作波形図である。リセット区間T11においてリセットスイッチSW41がオンし、センス端子P
SNSに0Vが印加され、静電容量Csが放電される。続いて、センス区間T12においてセンススイッチSW42がオンすると、カレントミラー回路274の入力側のトランジスタに充電電流I
CHGが流れ始め、静電容量Csが充電電流I
CHGによって充電される。そして電圧Vxが電源電圧Vdd近傍まで上昇すると、カレントミラー回路274の入力側のトランジスタM41がカットオフし、充電が停止する。電圧Vxの変化幅ΔVは、電源電圧Vddとほぼ等しく、このときに静電容量Csに流れ込む総電荷Qは、
Q=Cs×ΔV=Cs×Vdd
となる。
【0102】
充電電流I
CHGはカレントミラー回路274によってコピーされ、コピーされた電流Isが積分器276によって積算される。出力電圧Vsには、電荷量Qに比例した、言い換えれば静電容量Csに比例した電圧変化が発生する。
【0103】
図14に戻る。キャンセル回路240Eは、補助端子P
AUXの電圧Vyを、
図15に示す電圧Vxに追従して変化させる。リセットスイッチSW41がターンオンしたときに、電圧Vxが急峻に変化する。この急峻な変化を、駆動補助回路244Eによって発生させ、センススイッチSW42がオンした後の電圧Vxの緩やかな変化を、バッファ242によって発生させるとよい。この場合、駆動補助回路244Eは、補助端子P
AUXと接地の間に設けられた第2スイッチSW12を含むことができる。
【0104】
図16は、
図14の容量センシング回路210Eの動作波形図である。リセット区間T11においてリセットスイッチSW41がオンとなり、補助端子P
AUXの電圧Vyが0Vにプルダウンされる。センス区間T12に移行すると、第3スイッチSW13がオンとなり、バッファ242により補助端子P
AUXの電圧Vyが、電圧Vxと等しくなるように駆動される。
【0105】
図14の容量センシング回路210Eにおいて、バッファ242の入力側に、バイアス回路246を追加することができる。
【0106】
(実施の形態2)
図17は、実施の形態2に係るタッチ検出回路200Fを備えるタッチ入力装置100のブロック図である。パネル110は、第1電極E1と第2電極E2を備える。タッチ検出回路200Fは、第1電極E1と接続される第1端子P1、第2電極E2と接続される第2端子P2を有する。
【0107】
タッチ検出回路200Fは、
図1のタッチ検出回路200に加えて、セレクタ280をさらに備える。セレクタ280は、第1端子P1および第2端子P2と容量センシング回路210との間に設けられる。セレクタ280は、第1端子P1および第2端子P2と容量センシング回路210の接続関係を入れ替え可能である。つまり、容量センシング回路210は、第1電極E1へのタッチ入力を検出対象とする測定モードと、第2電極E2へのタッチ入力を検出対象とする測定モードと、が切り替え可能となっている。
【0108】
以上がタッチ検出回路200Fの構成である。続いてその動作を説明する。はじめに、容量センシング回路210は、第1電極E1をセンス電極E
SNS、第2電極E2を補助電極E
AUXとして、第1静電容量Ca
1および第2静電容量Cb
1を測定する。そして第1静電容量Ca
1と第2静電容量Cb
1にもとづいて、水の有無およびタッチの有無を判定する。タッチ判定や補正に関する方法は第1の実施の形態と同様でよい。
【0109】
同様にして容量センシング回路210は、第2電極E2をセンス電極E
SNS、第1電極E1を補助電極E
AUXとして、第3静電容量Ca
2および第4静電容量Cb
2を測定する。第3静電容量Ca
2は、第2電極E2が、第1電極E1を含む周囲との間に形成する静電容量である。第4静電容量Cb
2は、第1端子P1の電圧を第2端子P2の電圧に追従させた状態で、自己容量方式によって第2電極E2が周囲との間に形成する静電容量であり、第1電極E1との間の静電容量が除外された静電容量である。
【0110】
図18(a)〜(c)は、
図17のタッチ検出回路200Fのセンシングを説明する図である。ここでは水の静電容量を考慮した補正として、第1の補正方法を採用するものとする。
【0111】
図18(a)は、第1電極E1をタッチしている状態を示す。はじめに、第1電極E1をセンス電極E
SNSとして、第1静電容量Ca
1、第2静電容量Cb
1が測定される。第2静電容量Cb
1は、タッチ検出のしきい値THt
1’を超えているため、第1電極E1へのタッチが検出できる。
【0112】
続いて、第2電極E2をセンス電極E
SNSとして、第3静電容量Ca
2、第4静電容量Cb
2が測定される。第2静電容量Cb
2は実質的にゼロであり、タッチ検出のしきい値THt
2’より小さいため、第2電極E2へのタッチは検出されない。
【0113】
図18(b)は、第2電極E2をタッチしている状態を示す。はじめに、第1電極E1をセンス電極E
SNSとして、第1静電容量Ca
1、第2静電容量Cb
1が測定される。第2静電容量Cb
1は実質的にゼロであり、タッチ検出のしきい値THt
1’より小さいため、第1電極E1へのタッチは検出されない。
【0114】
続いて、第2電極E2をセンス電極E
SNSとして、第3静電容量Ca
2、第4静電容量Cb
2が測定される。第2静電容量C2bは、タッチ検出のしきい値THt
2’を超えているため、第2電極E2へのタッチが検出される。
【0115】
図18(c)は、第1電極E1、第2電極E2を2本の指2_1,2_2で同時タッチ(マルチタッチともいう)している状態を示す。この場合、第2静電容量Cb
1、第4静電容量Cb
2はいずれもタッチしきい値THt’を超えることとなるから、マルチタッチを検出できる。
【0116】
このように
図17のタッチ入力装置100fによれば、第1電極E1へのタッチ入力と、第2電極E2へのタッチ入力を個別に検出することができる。なお、この例では、しきい値THt
1’とTHt
2’が等しく示されるが、第1電極E1と第2電極E2とで、水の付着量が異なる場合、しきい値THt
1’とTHt
2’が異なる場合もあり得る。
【0117】
なお、
図17のタッチ入力装置100fにおいて、電極に付着する水の量によっては、シングルタッチが、マルチタッチと誤判定されるおそれがある。
図19(a)、(b)は、マルチタッチの誤検出を説明する図である。
図19(a)は、水が付着した電極E1,E2の一例を示しており、第1電極E1側に多くの水4が付着している。また指2は第2電極E2側をタッチしている。
【0118】
図19(b)は、
図19(a)のような状況において測定される可能性のある静電容量Cb
1,Cb
2の組み合わせを示す。ここでは、水の静電容量の推定値Cw^にもとづく補正として、第2の補正処理を採用するものとする。すなわち、第1電極E1側については、第2静電容量Cb
1から、水の推定値Cw^
1を減算し、補正後の第2静電容量Cb
1’が固定のしきい値THtと比較される。同様に第2電極E2側については、第4静電容量Cb
2から、水の推定値Cw^
2を減算し、補正後の第4静電容量Cb
2’が固定のしきい値THtと比較される。
Cb
1’=Cb
1−Cw^
1
Cb
2’=Cb
2−Cw^
2
【0119】
図19(b)の場合、Cb
1’とCb
2’の両方が、しきい値THtを超えている。すなわち、シングルタッチがマルチタッチと誤判定される。
図20は、マルチタッチの誤判定を防止するための、タッチ判定のフローチャートである。
【0120】
はじめに、電極E1,E2に付着している水の量が、所定量を超えているか否かが判定される(S100)。処理S100においては、いずれか一方の電極E1,E2における水の推定量Cw^
1,Cw^
2が、所定のしきい値THw2(水の有無の判定しきい値THwより大きい)より大きいかどうかを判定してもよい。
【0121】
そして、水の量が所定量より少ない場合(S100のN)、マルチタッチを許容したタッチ判定に移行する(S102)。具体的には、
(i)Cb
1’<THt、Cb
2’<THtの場合には、タッチ無し
(ii)Cb
1’>THt、Cb
2’<THtの場合には、E1のみシングルタッチ、
(iii)Cb
1’<THt、Cb
2’>THtの場合には、E2のみシングルタッチ、
(iv)Cb
1’>THt、Cb
2’>THtの場合には、E1、E2へのマルチタッチ
と判定される。
【0122】
処理S100において、水の量が所定量より多い場合(S100のY)、マルチタッチを許容しないタッチ判定に移行する(S104)。
【0123】
Cb
1’およびCb
2’がしきい値THtと比較される(S106)。(i)〜(iii)の場合、マルチタッチを許容する場合と同じ条件で、シングルタッチが判定される。
【0124】
Cb
1’>THtかつCb
2’>THtの場合(iv)には、以下の判定が行われる。
Cb
1’とCb
2’の差分|Cb
1’−Cb
2’|が所定のしきい値C
THより大きいか否かが判定される(S108)。そして差分|Cb
1’−Cb
2’|がしきい値C
THより大きい場合には(S108のY)、Cb
1’とCb
2’のうち、値が大きい電極がシングルタッチされたものと判定される(S110)。
【0125】
反対に、差分が|Cb
1’−Cb
2’|が所定のしきい値C
THより小さい場合には(S106のN)、Cb
1’とCb
2’のうち、いずれの電極E1,E2についてもタッチがないものと判定される(S112)。
【0126】
図21(a)〜(c)は、
図20のフローチャートにもとづく判定を説明する図である。
図21(a)の例では、Cb
1’<CthかつCb
1’<Cthであり、水の付着量が所定量より少ないと判定され、マルチタッチと判定される。
【0127】
図21(b)、(c)の例では、Cb
1’>Cthであり、水の付着量が所定量より多いと判定される。
図21(b)では、Cb
1’とCb
2’の差分が大きく、Cb
2’>Cb
1’であるため、第2電極E2へのシングルタッチと判定される。
図21(c)では、Cb
1’とCb
2’の差分が小さいため、タッチがないものと判定される。
【0128】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0129】
図22は、容量センシング回路210の変形例(210G)を示す回路図である。容量センシング回路210Gは、相互容量方式の容量センサ213をさらに備える。この変形例では、相互容量方式の容量センサ213によって、第1静電容量Ca(あるいは第3静電容量C2a)が測定される。また自己容量方式の容量センサ211とキャンセル回路240の組み合わせによって、第2静電容量Cb(または第4静電容量C2b)が測定される。