特開2020-201692(P2020-201692A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-201692カードリーダ及びカードリーダの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-201692(P2020-201692A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】カードリーダ及びカードリーダの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/08 20060101AFI20201120BHJP
   G06K 13/06 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   G06K7/08 040
   G06K13/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-107794(P2019-107794)
(22)【出願日】2019年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 啓志
【テーマコード(参考)】
5B023
【Fターム(参考)】
5B023GA07
(57)【要約】
【課題】磁気カードに対する磁気データの読み出し及び書き込みの少なくともいずれか一方を行うカードリーダにおいて、スキミング用の磁気ヘッドなどの異物を検出する際に、カードリーダ内に侵入した水分を異物として誤検出することを低減する。
【解決手段】カードリーダに、金属を含む異物を検出する金属検出センサと、金属検出センサの出力と所定の閾値とを比較して異常を判断する判断部と、判断部によって異常と判断された場合に、基準値と金属検出センサの出力との差を求め、その差が安定判定幅以内であれば異物であると判定する異常判定部と、を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに記録された磁気データの読み出し及び前記カードへの磁気データの書き込みの少なくともいずれか一方を行うカードリーダであって、
金属を含む異物を検出する金属検出センサと、
前記金属検出センサの出力と所定の閾値とを比較して異常を判断する判断部と、
前記判断部によって異常と判断された場合に、基準値と前記金属検出センサの出力との差を求め、該差が安定判定幅以内であれば異物であると判定する異常判定部と、
を有するカードリーダ。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記差が前記安定判定幅以内である事象が所定の時間を超えて継続した場合に前記異物であると判定する、請求項1に記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記判断部は、前記金属検出センサの出力と前記閾値との比較との結果、異常と判断しなかった場合に、前記金属検出センサの出力によって前記基準値を更新する、請求項1または2に記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記異常判定部は、前記差が前記安定判定幅以内でないときに、前記金属検出センサの出力によって前記基準値を更新する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカードリーダ。
【請求項5】
カードに記録された磁気データの読み出し及び前記カードへの磁気データの書き込みの少なくともいずれか一方を行うカードリーダの制御方法であって、
前記カードリーダに前記カードが挿入されていない状態において、金属を含む異物を検出する金属検出センサの出力値を取得し、
前記出力値と所定の閾値とを比較して異常を判断し、
前記異常と判断した場合に、基準値と前記出力値との差を求め、該差が安定判定幅以内であれば異物であると判定する、制御方法。
【請求項6】
前記カードリーダに前記カードが挿入されていない状態において、所定の時間間隔で、前記出力値の取得を繰り返す、請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記差が前記安定判定幅以内である事象が所定の時間を超えて継続した場合に前記異物であると判定する、請求項5または6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記出力値と前記閾値との比較との結果、異常と判断しなかった場合に、前記出力値によって前記基準値を更新する、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記差が前記安定判定幅以内でないときに、前記出力値によって前記基準値を更新する、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気カードに対する磁気データの読み出しと書き込みとの少なくとも一方を行うカードリーダと、カードリーダの制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気カードに記録された磁気データの読み出しや磁気カードへの磁気データの書き込みを行うカードリーダは、ATM(現金自動預け払い機;Automated teller machine)などにおいて広く用いられている。カードリーダでは、磁気データの読み書きのために磁気ヘッドが設けられるが、正規の磁気ヘッドのほかに犯罪者が不正な磁気ヘッドをカードリーダ内に配置して磁気データを不正に取得するいわゆるスキミングが行われることがある。スキミング行為を検出するために、金属検出センサをカードリーダ内に設け、スキミング用の磁気ヘッドなどの異物が配置されたことを金属検出センサによって検出することが提案されている。金属検出センサとしては、例えば、磁性材料からなるコアに対し検出用コイルと一対の励磁用コイルとを巻回し、コアの近傍に金属を含む物体があると検出用コイルからの出力の電圧を上昇させるように構成されたものがある。カードリーダ内に磁気カードがない状態において金属検出センサの出力電圧値が閾値である異物検出スライスを超えているかを検出して、異物の有無を判定することができる。特許文献1には、周囲温度の変化による金属検出センサの出力の変動を補償して異物を検出できるようにするために、異物検出スライスと金属検出センサの出力とを比較するのではなく、金属検出センサによる現在の測定値Vと基準電圧値Vbとの差ΔVが基準値ΔVdを超えていれば異物検知と判定するとともに、ΔVが第2基準値ΔVb以下であれば、現在の測定値V自体を次回の異物検出に用いる基準電圧値Vbとすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−82307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水で濡れた磁気カードをカードリーダに挿入して抜き取った場合には、カードリーダ内に水滴が残ることがある。あるいは、風雨に曝される環境に設置されている場合には、カード挿入口からカードリーダ内に水滴が侵入することがある。カードリーダ内に水滴が侵入した場合、金属検出センサの特性によっては、侵入した水滴を異物として誤検出することがある。
【0005】
本発明の目的は、カードリーダ内に侵入した水分を異物として誤検出することを低減したカードリーダと、その制御方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカードリーダは、カードに記録された磁気データの読み出し及びカードへの磁気データの書き込みの少なくともいずれか一方を行うカードリーダであって、金属を含む異物を検出する金属検出センサと、金属検出センサの出力値と所定の閾値とを比較して異常を判断する判断部と、判断部によって異常と判断された場合に、基準値と金属検出センサの出力との差を求め、この差が安定判定幅以内であれば異物であると判定する異常判定部と、を有する。
【0007】
本発明のカードリーダでは、金属検出センサの出力と所定の閾値との比較により異常であると判断したときに、金属検出センサの出力と判定用の基準値との差を求めてこの差が安定判定幅内にあるときに異物であると判定することにより、カードリーダ内に侵入した水分を異物として誤検出することが低減され、カードリーダの信頼性を向上させることができる。
【0008】
本発明のカードリーダでは、異常判定部は、差が安定判定幅以内である事象が所定の時間を超えて継続した場合に異物であると判定することが好ましい。水分による誤検出の場合には、水分の排出などに伴って金属検出センサの出力の値が安定しないので、差が安定判定幅以内である事象が所定の時間を超えて継続した場合に異物であると判定することにより、誤検出を低減しつつ異物を確実に検出できるようになる。
【0009】
本発明のカードリーダでは、判断部は、金属検出センサの出力と閾値との比較との結果、異常と判断しなかった場合に、金属検出センサの出力によって基準値を更新することが好ましい。このように構成することによって、経時による金属検出センサの特性変化による影響を軽減することができる。また異常判定部は、差が安定判定幅以内でないときに、金属検出センサの出力によって基準値を更新することが好ましい。このように構成することよって、異物の検出か水滴などによる誤検出かを判別する基準値を実情に合わせて更新することができ、誤検出を低減することができる。
【0010】
本発明の制御方法は、カードに記録された磁気データの読み出し及びカードへの磁気データの書き込みの少なくともいずれか一方を行うカードリーダの制御方法であって、カードリーダにカードが挿入されていない状態において、金属を含む異物を検出する金属検出センサの出力値を取得し、出力値と所定の閾値とを比較して異常を判断し、異常と判断した場合に基準値と出力値との差を求め、この差が安定判定幅以内であれば異物であると判定する。
【0011】
本発明の制御方法では、金属検出センサの出力値と所定の閾値との比較により異常であると判断したときに、出力値と判定用の基準値との差を求めてこの差が安定判定幅内にあるときに異物であると判定することにより、カードリーダ内に侵入した水分を異物として誤検出することが低減され、カードリーダの信頼性を向上させることができる。
【0012】
本発明の制御方法では、カードリーダにカードが挿入されていない状態において、所定の時間間隔で、出力値の取得を繰り返すことが好ましい。所定の時間間隔で繰り返す態様とすることにより、例えばマイクロプロセッサによって制御部が構成されている既存のカードリーダにおいて、ハードウェアの追加や改変を伴うことなく本発明の制御方法を実行することが可能になる。また本発明の制御方法では、差が安定判定幅以内である事象が所定の時間を超えて継続した場合に異物であると判定することが好ましい。水分による誤検出の場合には、水分の排出などに伴って金属検出センサの出力の値が安定しないので、差が安定判定幅以内である事象が所定の時間を超えて継続した場合に異物であると判定することにより、誤検出を低減しつつ異物を確実に検出できるようになる。
【0013】
本発明の制御方法では、出力値と閾値との比較との結果、異常と判断しなかった場合に、出力値によって基準値を更新することが好ましい。このように構成することによって、経時による金属検出センサの特性変化による影響を軽減することができる。また、差が安定判定幅以内でないときに、出力値によって基準値を更新することが好ましい。このように構成することよって、異物の検出か水滴などによる誤検出かを判別する基準値を実情に合わせて更新することができ、誤検出を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カードリーダ内に侵入した水分を異物として誤検出することが低減され、カードリーダの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の一形態のカードリーダの構成を示す概略図である。
図2】カードセンサと金属検出センサの出力の例を示す波形図である。
図3】カードセンサと金属検出センサの出力の例を示す波形図である。
図4】異物検出のための処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の一形態のカードリーダを示している。図1に示すカードリーダ1は、磁気カードであるカード2に記録された磁気データの読み取りとカード2への磁気データの記録との少なくとも一方を行うものであって、例えばATMなどの上位装置に搭載されて上位装置の上位制御部3との間でデータの交換を行い、上位制御部3によって制御されるものである。カード2は、例えば適切な厚さの塩化ビニール、ポリエチレンテレフタレートあるいは紙製のものであって、磁気データが記録される磁気ストライプが裏面側に形成された一般的なものである。カード2は、IC(集積回路)チップが埋め込まれたいわゆる磁気ストライプ付きICカードであってもよい。以下の説明では、カードリーダ1は、利用者が手動で装置内部にカード2を挿入し、また装置からカード2を引き抜くことでカード2に対する磁気データの読み書きが行われるいわゆるディップ式のものであるものとするが、本発明が適用可能なカードリーダはディップ式のものに限定されない。スキミングなど懸念されるカードリーダであれば、モータ式のカードリーダなどにも本発明を適用することができる。
【0017】
カードリーダ1は、カード2が差し込まれる挿入口11を備えており、挿入口11から挿入されたカード2が搬送路Lに沿ってカードリーダ1内を移動できるように構成されている。カードリーダ1の内部では、搬送路Lに沿って、カードリーダ1へのカード2の挿入の有無を検出するカードセンサ12と、カードリーダ2内に不正に配置された異物の検出を行う金属検出センサ13と、カード2の磁気ストライプに対して磁気データの読み書きを行う正規の磁気ヘッド14とが設けられている。金属検出センサ13は、金属を含む異物を検出するものであって、例えば、検出コイルと所定の周波数の交流電流が供給される1対の励磁コイルとが磁性材料からなるコアに巻回されたものである。金属検出センサ13は、その近傍に金属を含む異物が存在するときには、異物が存在しないときに比べて検出コイルに誘導される電圧が大きくなるように構成されている。金属検出センサ13は、検出コイルに誘導される交流電圧を直流電圧に変換して出力する。
【0018】
カードリーダ1は、上位制御部3に接続してカード2に対する磁気データの読み書きを制御し、カードリーダ1の動作を制御する制御部20をさらに備えている。制御部20には磁気ヘッド14が接続するとともに、カードセンサ12の検出結果と金属検出センサ13の検出結果も入力する。制御部20は、上位制御部3からの制御によって磁気ヘッド14を介してカード2に対して磁気データを読み書きする処理部21と、金属検出センサ13での現在の測定値である電圧Vと所定の閾値である異物検出スライスVeとを比較して異常の有無を判断する判断部22と、判断部22において異常であると判断したときに、現在の電圧Vと基準値Vdとの差を求めこの差の絶対値が安定判定幅Vs以内であるかどうかを判定し、|V−Vd|≦Vsであれば異物検出と判定する異常判定部23と、制御部20での処理に必要なプログラムやデータを格納する記憶部24と、を備えている。
【0019】
制御部20において、処理部21、判断部22、異常判定部23及び記憶部24の各々を個別のハードウェア要素として構成することもできるが、本実施形態では、制御部20の全体をマイクロプロセッサで構成し、処理部21、判断部22及び異常判定部23についてはそれらの機能に対応するソフトウェアをマイクロプロセッサ上で実行することによって実現することができる。
【0020】
図2及び図3は、本実施形態における異物検出を説明するための図であり、いずれも、カードセンサ12の出力と金属検出センサ13の出力Vの時間変化を示している。カードセンサ12の出力は、カード2がカードリーダ1に挿入されると上昇する。し、カード2がカードリーダ1から引き抜かれると元の値に戻る。金属検出センサ13の出力Vも、カード2がカードリーダ1に挿入されると上昇しする。カード2がカードリーダ1から引き抜かれると出力Vも元の値に戻るはずである。ところで、スキミング用の磁気ヘッドなどの異物は、カード2とともにカードリーダ1内に挿入され、その後、カード2だけを引き抜くことによってカードリーダ1内に配置されるものと考えられる。その結果、カード2とともに異物がカードリーダ1内に持ち込まれた後、カード2だけがカードリーダ1から引き抜かれたとすると、異物が残留するので、金属検出センサ13の出力Vは、図2に示すように、カード2の挿入前の元の値に戻らず、カード2の引き抜き後も大きな電圧値で一定の値を示すようになる。このときの金属検出センサ13の出力Vは、異物検出スライスVeよりも大きい。
【0021】
異物検出において誤検出の原因となる水滴も、例えば濡れたカード2がカードリーダ1に挿入されることによってカードリーダ1内に持ち込まれ、カード2を引く抜くときにそのままカードリーダ1内に残留するものと考えられる。しかしながら水滴等の侵入が想定される条件で使用されるカードリーダ1には、通常、排水機構が設けられている。したがって、カードリーダ1内に水が侵入しても、その水は徐々に排出され、カードリーダ1内に残存する水の量は時間の経過とともに低下する。金属検出センサ13は水滴に対しても反応するので、金属検出センサ13の出力Vは、図3に示すように、カード2の引き抜きの直後には異物検出スライスVeを超える大きな電圧値を示すが、カードリーダ1からの水の排出に伴って徐々に減少する。図では途中までしか描かれていないが、周囲温度の変化などによる金属検出センサ13の特性の変動の寄与を無視すれば、最終的には金属検出センサ13の出力Vは、カード2を挿入する前の元の値に収束するものと考えられる。
【0022】
そして本発明者らの検討によれば、異物を検出したことによる金属検出センサ13の出力Vの変動幅は、安定判定幅Vs以内であることが分かった。言い換えれば、カードリーダ1内に異物が存在しないことが分かっているときの金属出力センサ13の出力を基準値Vdとして、カードリーダ1へのカード2の挿入と引抜きとが行われたのちに金属出力センサ13の出力Vが異物検出スライスVeを超えて異物の存在が疑われるときであっても、|V−Vd|>Vsであれば、異物を検出したのではなく水滴による誤検出であると判断することができる。そこで本実施形態のカードリーダ1では、判断部22において、金属検出センサ13の出力の電圧Vと異物検出スライスVeとを比較し、V>Veであれば異常と判断し、判断部22において異常であると判断したときに、異常判定部23が、金属検出センサ13の現在の出力の電圧Vと基準値Vdとの差を求めこの差の絶対値が安定判定幅Vs以内である場合に、すなわち|V−Vd|≦Vsである場合に異物検出と判定している。
【0023】
さらに本実施形態では、金属検出センサ13が検出したものが異物ではなく水滴である場合には金属検出センサ13の出力Vが変動し、典型的には徐々に減少することに基づき、出力Vの時間変化を加味して異物判定を行うこともできる。図4は出力Vの時間変化を加味して異物判定を行う処理の手順を示している。まず、制御部20は、初期化処理としてステップ101〜102を実行する。ステップ101において、制御部20は、カードセンサ12の出力に基づき、カードリーダ1内にカード2が存在しないことを確認し、カードリーダ1内にカード2が存在しない状態となるまで待ち合わせる。カードリーダ1内にカード2が存在しない状態となれば、ステップ102において、金属検出センサ13の現在の電圧測定値を基準値Vdとし、安定検出時間Tdを0にクリアする。
【0024】
続いて、カードリーダ1内にカード2が存在しない状態で一定の時間間隔Δtごとに異物の検出を行うために、制御部20は、ステップ103において、カードリーダ1内にカード2がないことを確かめ、カード2がある場合にはカードリーダ1からカード2が抜き去られるまで待ち合わせ、その後、ステップ104において、一定の時間間隔Δtが経過したかを判定し、経過していない場合にはステップ103を再度実行する。ステップ104において一定の時間間隔Δtが経過していたら、判断部22は、ステップ105において、金属検出センサ13の現在の出力の電圧をVとし、ステップ106において、Vと異物検出スライスVeとを比較する。V>Veであれば、判断部22は異常であると判断し、続いて異常判定部23が、ステップ107において、|V−Vd|≦Vsであるかどうかを判定する。|V−Vd|≦Vsであれば、この事象が安定判定時間Tsを超えて継続しているかどうかを判定するために、異常判定部23は、ステップ108において、時間間隔Δtを加算することによって安定検出時間Tdを更新し、ステップ109において、安定検出時間Tdが安定判定時間Tsよりも長くなっているかを判定する。安定検出時間Tdは、|V−Vd|≦Vsである状態の継続時間を示すパラメータである。異物判定部23は、Td>Tsであればステップ110において異物検出と判定し、Td≦Tsであればステップ111において異物不検出と判定する。ステップ110において異物検出と判断したときは、異常判定部23は、上位装置の上位制御部3に対するアラーム通知など、然るべき異常処理を実行する。ステップ111において異物不検出と判定したときは、カードリーダ1は全体として通常の処理を続行する。ステップ110,111の実行後は、異物検出の処理を繰り返すために処理はステップ103に戻る。異物検出の処理を繰り返しているので、実際に異物が存在するにも関わらすある時点でステップ109を実行した結果、Td≦Tsであるために異物不検出と判断した場合であっても、時間の経過によってTd>Tsを満たすようになれば、ステップ109を再度実行した結果、異物検出と判断されることになる。
【0025】
ステップ106においてV≦Veであった場合、すなわち現在の電圧Vが異物検出スライスVe以下であった場合には、ステップ121において、判断部22は、現在の電圧Vで基準値Vdを更新し、さらに、安定検出時間Tdを0にクリアする。V≦Veであって正常状態であるので、このときの電圧Vによって基準値Vdを更新することにより、周囲温度の変化などによる金属検出センサ13の特性の変化を補償でき、これ以降の異物検出において経時変化による影響を軽減できるようになる。ステップ121の実行後、処理はステップ109に移行するが、ステップ121においてTdを0としているので、ステップ109からは、処理は必ずステップ111すなわち異物不検出の側に処理は分岐する。
【0026】
ステップ107において|V−Vd|>Vsである場合、すなわち安定検出時間Tdを考慮することなく異常判定部23が異物検出ではないと判定した場合は、ステップ122において、異物判定部23は、現在の電圧Vで基準値Vdを更新し、さらに、安定検出時間Tdを0にクリアする。異物を検出したのか水滴などによる誤検出なのか判定するための基準値Vdを更新することによって、これ以降の異物検出における誤検出をさらに低減することができる。ステップ122の実行後、処理はステップ109に移行するが、ステップ121においてTdを0としているので、ステップ109からは、処理は必ずステップ111すなわち異物不検出の側に処理は分岐する。
【0027】
本実施形態のカードリーダ1において、安定判定幅Vsと安定判定時間Tsは、浸水に対するカードリーダ1の排水性や金属検出センサ13の感度等を考慮して予め定められる。特に、安定判定幅Vsは、異物検出スライスVeの絶対値を超えない範囲内で予め設定される。異物検出スライスVeが例えば+70mVである場合には、安定判定幅Vsは例えば5mVとされる。安定判定時間Tsは例えば15秒とされる。以上の説明においては、金属検出センサ13として、金属を含む異物を検出したときにその出力値あるいは出力の電圧が上昇するものを用いたが、本発明で利用可能な金属検出センサ13は、例えば、金属を含む異物を検出したときにその出力値あるいは出力の電圧が下降するものであってもよい。金属を含む異物を検出したときに出力値が低下する金属検出センサ13を用いる時は、適切な異物検出スライスVeを設定した上で、上記のステップ106においてV<Veかどうかを判定すればよい。また、特許文献1に記載されるように金属検出センサ13の出力の変化量に基づいて異物の検出を行う場合であっても本発明に基づく異物検出を適用することができる。
【0028】
以上説明した実施形態によれば、金属検出センサの出力値と異物検出スライスとの比較により異常と判断した場合において、金属を含む異物を実際に検出したのか水滴を誤検出したかに応じて金属検出センサの出力やその変動の挙動が異なることを利用して異物の検出を行うので、浸水による影響を回避してカードリーダ1内における異物の有無を安定的かつ確実に判定することが可能になる。また、制御部20をマイクロプロセッサで構成しているとすれば、既存のカードリーダのハードウェア構成を変更する必要がないのて、コストの上昇を抑えつつ、浸水による誤検出を低減することが可能になる。
【符号の説明】
【0029】
1…カードリーダ;2…カード;3…上位制御部;11…挿入口;12…カードセンサ;13…金属検出センサ;14…磁気ヘッド;20…制御部;21…処理部;22…判断部;23…異常判定部;24…記憶部。
図1
図2
図3
図4