【解決手段】与信管理装置100は、グループ全体での各取引先について、与信限度額及び計画保全率を設定する設定部102aと、グループを構成するサブグループ毎に、取引先別の債権債務担保情報を含む連携データを収集する収集部102bと、月次において、名寄せマスタを参照して、個別コードに紐付く統一コード単位であるグループ全体の取引先単位で、連携データを使用して、設定された与信限度額と計画保全率に対する実績を算出する月次処理部102cと、与信限度額と計画保全率に対する実績についての警告条件を設定した警告マスタを参照して、与信限度額と計画保全率に対する実績に基づいた警告候補を抽出して出力する警告部102dと、を備える。
前記複数のサブグループで構成されるグループは、複数の会社で構成されるグループ会社又は複数の事業部で構成される会社を含むことを特徴とする請求項1に記載の与信管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、与信管理装置、与信管理方法、及び与信管理プログラムの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。以下、具体的な構成及び動作について説明する。
【0014】
[1.概要]
従来、複数の会社で構成されるグループ会社の会社毎又は複数の事業部で構成される会社の事業部毎に、与信限度額・与信残高・担保を管理しているため、グループ会社全体又は会社全体で取引先別の与信限度額・与信残高・担保比率を可視化することができなかった。同一取引先であっても、グループ会社毎又は事業部毎に異なる顧客番号で管理している制約があるため、システムユーザーは、名寄せを行った上で債権・債務・担保の集計を行い与信残高集計する必要があった。
【0015】
また、月次締めのタイミングで上記チェックを行うが集計作業に時間を要するために、特定の取引先に対して過剰な販売を行い債権が膨らむリスクや保全不足があったり、与信限度警告有りにも関わらず対策が遅れる等、与信管理上の判断を行うまでに時間を要するという経営上の課題があった。
【0016】
そこで、本実施の形態の与信管理システムでは、グループ会社又は事業部制を採用している会社における取引先別に月次で与信管理し、警告基準内の候補先を抽出する仕組みを構築した。
【0017】
具体的には、与信管理の月次チェックにおいては、「グループ会社内・各事業部での取引先の名寄せ情報」及び「各グループ会社別・事業部別の各取引先の債権債務担保情報」を月末時点で集計し取引先別の与信残高・保全率の集計を行う。このように、債権情報に加えて債務・担保情報を加味することで精緻な与信余力を試算することが実現可能となった。
【0018】
また、与信チェック基準を超過している先だけではなく、警告基準内に含まれる候補先も抽出することができるようになり、与信管理上の課題についてもスピード感をもってアクションを起こせるようになった。
【0019】
本実施の形態では、複数の会社で構成されるグループ会社や複数の事業部で構成される会社等を、「複数のサブグループで構成されるグループ」と総称する。以下の説明では、「複数のサブグループで構成されるグループ」の一例として、複数の会社で構成されるグループ会社について説明するが、本発明はこれに限られるものではなく、複数の事業部で構成される会社等にも適用可能であることは言うまでもない。
【0020】
具体的には、以下では、グループ会社が、本社、子会社A、及び子会社Bから構成され、また、取引先が、××、××商事、及び××不動産である場合を一例として説明する。
【0021】
図1及び
図2を参照して、本実施の形態に係る与信管理システム100(「与信管理装置」ともいう)の概要を説明する。
図1は、データ連携の概要の一例を示す図である。
図2は、データ活用イメージ(受注チェック時のフロー)の一例を示す図である。
【0022】
本実施の形態に係る与信管理システム100においては、
図1に示すように、グループ会社を構成する会社(例えば、本社、子会社A、子会社B)の会計システム400・・・でそれぞれ管理する債権債務・受注残データ、担保・保証金データ及び取引先データ等を連携(取得)して、グループ会社全体で集約することができる。
【0023】
与信残高は、与信残高=与信限度額−(債権残高+受注残高)で算出することができる。例えば、与信限度額=1,000万、債権残高=600万円、受注残高=300万円の場合は、与信残高=100万円となる。
【0024】
本実施形態の与信管理システム100においては、
図2に示すように、まず、与信限度額及び計画保全率を設定する(1)。次に、月次(基準日)に各会計システム400を集計(債権残高、入金金額等を参照)して、グループ全体での与信枠を更新し(2)、特定の取引先に対して過剰な与信を与えていないかをチェックするために警告候補先を抽出することで、与信限度額等の見直しを行うことができる(3)。
【0025】
[2.構成]
本実施形態に係る与信管理システム(与信管理装置)100の構成の一例について、
図3を参照して説明する。
図3は、与信管理システム100の構成の一例を示すブロック図である。なお、以下の説明では、金額の単位は全て「千円」とし、単位の記載を省略する。
【0026】
与信管理システム100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータである。なお、与信管理システム100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。
【0027】
与信管理システム100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。与信管理システム100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0028】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置及び専用線等の有線又は無線の通信回線を介して、与信管理システム置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、与信管理システム100と、サーバ200やグループ会社を構成する各会社の会計システム400(例えば、本社、子会社A,子会社B)・・・とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。与信管理システム100は、通信インターフェース部104及びネットワーク300を介して、会計システム400から当該会社の取引先についての債権債務担保情報を収集(取得)することが可能となっている。なお、後述する各種マスタ等のデータは、例えばサーバ200に格納されてもよい。
【0029】
入出力インターフェース部108には、入力装置112及び出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112又はマウス112として記載する場合がある。
【0030】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブル及びファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び光ディスク等を用いることができる。
【0031】
記憶部106は、例えば、顧客マスタ106aと、名寄せマスタ106bと、与信設定マスタ106cと、警告マスタ106dと、連携データ106eと、集計データ106fと、を備えている。
図4は、顧客マスタ106a及び名寄せマスタ106bの構成例を示す図である。
図5は、与信設定マスタ106cの構成例を示す図である。
図6は、警告マスタ106dの構成例を示す図である。
【0032】
顧客マスタ106aは、各々の会社で個別に取引先を管理するためのマスタである。
図4においては、本社、子会社A、及び子会社Bそれぞれについての顧客マスタ106aを示している。顧客マスタ106aは、
図4に示すように、例えば、取引先を識別するために各々の会社で個別に用いる個別コードであるKEYと、取引先の会社名とを関連づけて登録したテーブル等で構成することができる。
【0033】
図4に示す顧客マスタ106aの例では、本社と子会社Aの間においては、××をKEY「200」、××商事をKEY「300」、××不動産をKEY「400」で管理しており、全てのKEYが共通である。これに対して、子会社Bにおいては、××をKEY「202」、××商事をKEY「302」、××不動産をKEY「402」で管理している点が異なる。このように、同一の取引先であるにも関わらず、会社間で異なるKEYを用いて取引先の管理を行うと、取引先毎に連携データを集約することができないため、同一の取引先に対しては同一のコードを付することにより取引先をまとめる(いわゆる名寄せする)ための名寄せマスタ106bが必要となる。
【0034】
名寄せマスタ106bは、グループ会社全体で統一して取引先を管理するためのマスタである。名寄せマスタ106bは、
図4に示すように、例えば、グループ会社を構成する会社を識別するための会社コードと、取引先を識別するためにグループ会社全体で統一して用いる統一コードと、KEYと、取引先の会社名等を関連づけて登録したテーブル等で構成することができる。
【0035】
図4の名寄せマスタ106bにおいては、本社、子会社A及び子会社Bの全てにおいて共通して、××を統一コード「100000001」、××商事を統一コード「100000002」、××不動産を統一コード「100000003」で管理しているため、同一の取引先に対しては同一のコードを付することにより取引先をまとめている(いわゆる名寄せしている)といえる。
【0036】
与信設定マスタ106cは、グループ会社全体での取引先別の与信限度額及び計画保全率を設定するためのマスタである。与信設定マスタ106cは、
図5に示すように、例えば、統一コードと、取引先の会社名と、月次の集計を行う基準日と、グループ会社全体での取引先に対する与信の限度額である与信限度額と、グループ会社全体での取引先に対する債権についての目標の保全率である計画保全率と、を関連づけて登録してテーブル等で構成することができる。
【0037】
図5に示す例では、1行目が、統一コード「100000001」、会社名「××」、基準日「2019/3/31」、与信限度額「70,000」、及び計画保全率「60%」、2行目が、統一コード「100000002」、会社名「××商事」、基準日「2019/3/31」、与信限度額「4,000」、及び計画保全率「50%」、3行目が、統一コード「100000003」、会社名「××不動産」、基準日「2019/3/31」、与信限度額「20,000」、及び計画保全率「40%」となっている。
【0038】
警告マスタ106dは、設定される与信限度額に対する実績である与信限度率と、設定される計画保全率に対する実績である実績保全率に基づいた警告条件を規定して、警告候補を抽出するためのマスタである。警告マスタ106dは、
図6に示すように、例えば、警告コードと、警告内容である名称と、警告条件のデータを関連づけて登録したテーブル等で構成することができる。
【0039】
図6に示す例では、1行目が、警告コード「001」、名称「与信限度超過」、警告条件「与信限度率>100%」、2行目が、警告コード「002」、名称「与信限度警告」、条件「与信限度率>80% かつ 与信限度率≦100%」、3行目が、警告コード「101」、名称「計画保全未達」、警告条件「実績保全率>計画保全率」、4行目が、警告コード「102」、名称「実績保全不足」となっている。
【0040】
連携データ106eは、グループ会社を構成する会社それぞれの取引先別の債権債務担保情報(債権額、受注残、債務額及び担保額)を管理するためのデータである。連携データ106eは、例えば、会社コードと、KEYと、取引先の会社名と、月次処理を行う基準日と、グループ会社を構成する会社の取引先に対する債権の残額である債権残高と、グループ会社を構成する会社が提供するサービス又は商品であって取引先から受注したもののうち取引先に対して提供又は引渡しが未だ行われていないものの金額である受注残高と、グループ会社を構成する会社の取引先に対する債務の残額である債務残高と、グループ会社を構成する会社が取引先から取っている担保の額(例えば、保証金額)である担保額と、等を含んでいてもよい(
図8参照)。
【0041】
集計データ106fは、与信設定マスタ106cで設定されるグループ会社全体での取引先別の与信限度率及び保全率等を月次で管理するためのデータである。より具体的には、集計データ106fは、月次に、与信設定マスタ106cで設定されるグループ会社全体での取引先別の与信限度額及び計画保全率について、連携データ106eを使用して、グループ会社全体での取引先別の与信限度率及び実績保全率を算出して、警告候補に該当するかどうかを判定するためのデータである。
【0042】
集計データ106fは、例えば、統一コードと、基準日、取引先の会社名と、グループ会社全体での取引先に対する与信の限度額である与信限度額と、与信限度額の実績である与信限度率と、グループ会社全体での取引先に対する債権の目標の保全率である計画保全率と、計画保全率の実績である実績保全率と、連携データ106eを取引先別に集計した債権債務担保情報(債権額、受注残、債務額及び担保額)とを含んでいてもよい(
図8参照)。統一コード、会社名、基準日、与信限度額、計画保全率のデータは、与信設定マスタ106cのデータが書き込まれる。
【0043】
与信限度利率は、与信限度率=(債権残高+受注残高)/与信限度額で算出することができる。実績保全率は、実績保全率=(債務残高+担保額)/(債権残高+受注残高)で算出することができる。
【0044】
図3に戻り、制御部102は、与信管理システム100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0045】
制御部102は、機能概念的に、設定部102aと、収集部102bと、月次処理部102cと、警告部102dと、を備えている。
【0046】
設定部102aは、例えば、モニタ114に表示される不図示の入力画面上でのオペレータの操作に応じて、グループ会社全体での各取引先について、与信設定マスタ106cの統一コード、会社名、基準日、与信限度額、及び計画保全率を設定する。
【0047】
収集部102bは、本社、子会社A、子会社Bの会計システム400から各会社毎の債権債務担保情報である連携データ106eを収集する。連携データ106eの収集は、月次処理(月次チェック)を行う月末に行ってもよいし、より短い周期で行って最新のものに更新してもよい。
【0048】
月次処理部102cは、月次処理を行い、月次(基準日)において、名寄せマスタ106bを参照して、個別コードであるKEYに紐付く統一コード単位であるグループ会社全体の取引先単位で、連携データ106eを使用して、設定部102aで設定された与信限度額と計画保全率に対する実績を算出する。
【0049】
警告部102dは、警告マスタ106dを参照して、集計データ106fの与信限度額と計画保全率の実績に基づいて警告先候補を抽出して出力する。
【0050】
債権債務担保情報は、債権残高、受注残高、債務残高、及び担保額を含み、与信限度額の実績は、(債権残高+受注残高)/与信限度額で算出される与信限度利率であり、計画保全率の実績は、(債務残高+担保額)/(債権残高+受注残高)で算出される実績保全率であることにしてもよい。債権債務担保情報は、債権残高、受注残高、債務残高、及び担保額に限られるものではなく、他の情報を使用してもよい。また、与信限度額及び計画保全率の実績は、与信限度利率及び実績保全率に限られるものではなく、他の実績値を使用してもよく、例えば、与信余力等を使用してもよい。
【0051】
[3.具体例]
本実施の形態に係る与信管理システム100の制御部102の処理の具体例について、
図3〜
図10を参照して説明する。
図7は、与信管理システム100の制御部102の全体の処理の流れの概略を説明するためのフローチャートである。
【0052】
図7を参照して、与信管理システム100の制御部102の全体の処理の流れの概略を説明する。
図7において、設定部102aは、例えば、モニタ114に表示される不図示の入力画面上でのオペレータの操作に応じて、与信設定マスタ106cのグループ会社全体での各取引先についての与信限度額及び計画保全率等を設定する(ステップS1)。
【0053】
収集部102bは、グループ会社を構成する会社(例えば、本社、子会社A、子会社B)の会計システム400・・・から会社毎に各取引先の債権債務担保情報である連携データ106eを収集する(ステップS2)。
【0054】
月次処理部102cは、月次(基準日)において、名寄せマスタ106bを参照して、個別コードであるKEYに紐付く統一コード単位であるグループ会社全体の取引先単位で、収集した連携データ106eを使用して、設定部102aで設定された与信限度額と計画保全率に対する実績を算出して集計データ106fを作成する(ステップS3)。
【0055】
警告部102dは、警告マスタ106dを参照して、集計データ106fの与信限度額と計画保全率の実績に基づいて警告先候補を抽出して出力する(ステップS4)。
【0056】
つぎに、
図4〜
図6のマスタの構成例と、
図8〜
図10のサンプルデータを参照して、
与信管理システム100の制御部102の処理の具体例を説明する。
図8は、連携データと集計データのサンプルデータを示す図である。
【0057】
以下の説明では、上述した
図3〜
図6に示す顧客マスタ106a、名寄せマスタ106b、及び警告マスタ106dのデータ例と、
図8に示す連携データ106eのデータ例を使用して、
図8に示す集計データ106fを作成する場合を説明する。
【0058】
図8に示す連携データ106eの例では、会社コード「100」の本社について、1行目が、KEY「200」、会社名「××」、基準日「2019/3/31」、債権残高「10,000」、受注残高「5,000」、債務残高「8,000」、担保額「12,000」、2行目が、KEY「300」、会社名「××商事」、基準日「2019/3/31」、債権残高「500」、受注残高「3,000」、債務残高「500」、担保額「1,000」となっている。
【0059】
会社コード「101」の子会社Aについて、3行目が、KEY「200」、会社名「××」、基準日「2019/3/31」、債権残高「12,000」、受注残高「2,000」、債務残高「7,000」、担保額「0」、4行目が、KEY「400」、会社名「××不動産」、基準日「2019/3/31」、債権残高「10,000」、受注残高「5,000」、債務残高「0」、担保額「10,000」となっている。
【0060】
会社コード「102」の子会社Bについて、5行目が、KEY「202」、会社名「××」、基準日「2019/3/31」、債権残高「14,000」、受注残高「1,000」、債務残高「2,000」、担保額「10,000」、6行目が、KEY「402」、会社名「××不動産」、基準日「2019/3/31」、債権残高「0」、受注残高「8,000」、債務残高「5,000」、担保額「0」となっている。
【0061】
つぎに、
図8に示す連携データ106eから
図8に示す集計データ106fの作成について説明する。以下、グループ会社全体での取引先「××」、「××商事」、「××不動産」に対する集計の順に説明する。
【0062】
まず、
図8において、月次処理部102cは、集計データ106fの1〜3行目に、
図5に示す与信設定マスタ106cの統一コード、会社名、基準日、与信限度額、及び計画保全率のデータを書き込む。
【0063】
(1.取引先「××」の集計)
図4の名寄せマスタ106bを参照すると、取引先「××」についての統一コードは「100000001」であり、統一コード「100000001」に対応するKEYは、「200」及び「202」である。
【0064】
月次処理部102cは、連携データ106eから、KEY「200」、「202」をキーとして、1行目、3行目、5行目の債権残高、受注残高、債務残高、担保額のデータを取得して、債権残高(36,000=10,000+12,000+14,000)、受注残高(8,000=5,000+2,000+1,00)、債務残高(17,000=8,000+7,000+2,000)、担保額(13,000=12,000+0+1,000)を集計して、集計結果を集計データ106fの1行目に書き込む。
【0065】
つぎに、月次処理部102cは、与信限度率=(債権残高「36,000」+受注残高「8,000」)/与信限度額「70,000」=62.9%を算出すると共に、実績保全率=(債務残高「17,000」+担保額「13,000」)/債権残高「36,000」+受注残高「8,000」))=68.2%を算出して1行目に書き込む。
【0066】
(2.取引先「××商事」の集計)
図4の名寄せマスタ106bを参照すると、取引先「××商事」についての統一コードは「100000002」であり、統一コード「100000002」と紐付くKEYは、「300」及び「302」である。
【0067】
月次処理部102cは、連携データ106eから、KEY「300」、「302」をキーとして、2行目の債権残高、受注残高、債務残高、担保額のデータを取得して、債権残高(500)、受注残高(3,000)、債務残高(500)、担保額(1,000)を2行目に書き込む(この場合は、1件しかヒットしないためそのまま書き込まれる)。
【0068】
つぎに、月次処理部102cは、与信限度率=(債権残高「500」+受注残高「3,000」)/与信限度額「4,000」=87.5%を算出すると共に、実績保全率=(債務残高「500」+担保額「1,000」)/(債権残高「500」+受注残高「3,000」)=42.9%を2行目に書き込む。
【0069】
(3.取引先「××不動産」の集計)
図4の名寄せマスタ106bを参照すると、取引先「××不動産」についての統一コードは「100000003」であり、統一コード「100000003」と紐付くKEYは、「400」及び「402」である。
【0070】
月次処理部102cは、連携データ106eから、KEY「400」、「402」をキーとして、4、6行目の債権残高、受注残高、債務残高、担保額のデータを取得して、債権残高(10,000=10,000+0)、受注残高(13,000=5,000+8,000)、債務残高(5,000=0+5,000)、担保額(10,000=10,000+0)を集計して、集計結果を3行目に書き込む。
【0071】
次ぎに、月次処理部102cは、与信限度率=(債権残高「10,000」+受注残高「13,000」)/与信限度額「20,000」=115.0%を算出すると共に、実績保全率=(債務残高「5,000」+担保額「10,000」)/(債権残高「10,000」+受注残高「13,000」)=65.2%を3行目に書き込む。
【0072】
(4.警告候補の抽出)
警告部102dは、
図6に示す警告マスタ106dを参照して、月次処理部102cで集計した集計データ106fの与信限度率及び実績保全率に基づいて警告候補を抽出する。
【0073】
集計データ106fの1行目の取引先「××」については、与信限度率「62.9%」、実績保全率「68.2%」であるので、警告マスタ106dの警告条件に該当しない。
【0074】
集計データ106fの2行目の取引先「××商事」については、与信限度率「87.5%」、実績保全率「42.9%」である。警告マスタ106dの警告コード「101」の「計画保全未達」の警告条件である「実績保全率(42.9%)>計画保全率(50%)」に該当するので、「計画保全未達」の警告候補として抽出する。また、警告マスタ106dの警告コード「102」の「与信限度警告」の警告条件「与信限度率(87.5%)>80% かつ 与信限度率(87.5%)≦100%」に該当するので、「与信限度警告」の警告候補として抽出する。
【0075】
集計データ106fの3行目の取引先「××不動産」については、与信限度率「115.0%」、実績保全率「65.2%」であるので、警告マスタ106dの警告コード「001」の「与信限度超過」の警告条件「与信限度率(115.0%)>100%」に該当するので、「与信限度超過」の警告候補として抽出する。
【0076】
図9は、警告部102dにより出力される、警告候補の帳票出力例を示す図である。警告の帳票出力例では、グループ会社の各取引先に対する警告候補の判定結果と、グループ会社を構成する会社の内訳が示されている。「××商事」については、「計画保全未達」であるので、対処法として、取引抑制や追加保証金を求めることが考えられる。また、「××商事」については、「与信限度警告」であるので、対処法として、与信限度額を変更申請することが考えられる。
【0077】
「××不動産」については、「与信限度額超過」であるので、対処法として、取引抑制や与信限度額を変更申請することが考えられる。このように、迅速に与信を保全するための対応が可能となる。
【0078】
図10は、警告部102dにより出力される、警告候補を纏めた出力例を示す図である。
図10に示す例では、
図9に示す帳票形式のものを件数ベースに纏めたものである。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態によれば、グループ全体で統一して取引先を識別するための統一コードと、複数のサブグループで個別に取引先を識別するための個別コードとを関連づけて登録した名寄せマスタ106bと、与信限度額と計画保全率に対する実績についての警告条件を設定した警告マスタ106dと、サブグループ毎に収集され、個別コードと取引先に対する債権債務担保情報とを含む連携データ106eと、グループ全体での各取引先について、与信限度額及び計画保全率を設定する設定部102aと、サブグループ毎に、連携データ106eを収集する収集部102bと、月次において、名寄せマスタ106bを参照して、個別コードに紐付く統一コード単位であるグループ全体の取引先単位で、連携データ106eを使用して、設定された与信限度額と計画保全率に対する実績を算出する月次処理部102cと、警告マスタ106dを参照して、与信限度額と計画保全率に対する実績に基づいた警告候補を抽出して出力する警告部102dと、を備えているので、複数のサブグループで構成されるグループ全体における取引先別の与信管理を迅速に行うことが可能となる。
【0080】
複数のサブグループで構成されるグループは、複数の会社で構成されるグループ会社又は複数の事業部で構成される会社を含むこととしたので、複数の会社で構成されるグループ会社全体又は複数の事業部で構成される会社全体における取引先別の与信管理を迅速に行うことが可能となる。
【0081】
[4.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0082】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0083】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0084】
また、与信管理システム100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0085】
例えば、与信管理システム100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部又は任意の一部を、CPU及び当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて与信管理システム100に機械的に読み取られる。すなわち、ROM又はHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0086】
また、このコンピュータプログラムは、与信管理システム100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部又は一部をダウンロードすることも可能である。
【0087】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto−Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及び、Blu−ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0088】
また、「プログラム」とは、任意の言語又は記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコード又はバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成及び読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0089】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、及び、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0090】
また、与信管理システム100は、既知のパーソナルコンピュータ又はワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、与信管理システム100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラム又はデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0091】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部又は一部を、各種の付加等に応じて又は機能負荷に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。