【解決手段】実施形態によると、磁気ディスク装置は、磁気ヘッドを含む磁気ヘッド部を動作させる第1のアクチュエータと、磁気ディスク上で磁気ディスクの半径方向に磁気ヘッドの位置を調整する第2のアクチュエータと、第2のアクチュエータのゲイン推定値と、第1の伝達関数を測定する際の第2アクチュエータへの入力電圧振幅とに応じて、第2の伝達関数を測定する際の入力振幅を決定し、第1の伝達関数と、第2の伝達関数とに基づいて、第2のアクチュエータのゲイン推定値を算出し、当該算出したゲイン推定値でゲイン推定値を更新する制御部と、を備える。
前記第2の伝達関数を測定する際の入力振幅は、前記第2のアクチュエータの前記ゲイン推定値と前記第1の伝達関数を測定する際の前記第2のアクチュエータへの入力電圧振幅の積である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気ディスク装置。
前記制御部は、前記第1の伝達関数と、前記第2の伝達関数とに基づいて算出される前記第2のアクチュエータの前記ゲイン推定値が所定値に収束するまで前記ゲイン推定値を更新する処理を行う、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の磁気ディスク装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に関する磁気ディスク装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0010】
磁気ディスク装置1は、ヘッド・ディスクアセンブリ(head-disk assembly:HDA)10、ヘッドアンプ集積回路(以下、ヘッドアンプIC)16と、システム・オン・チップ(SOC)20とからから構成されている。
【0011】
HDA10は、磁気ディスク11と、スピンドルモータ(SPM)12と、アーム13と、第1のアクチュエータであるボイスコイルモータ(VCM)PVとを有する。磁気ディスク11は、SPM12により回転する。アーム13の先端にロードビーム14が取り付けられ、ロードビーム14の先端に磁気ヘッド15が取り付けられる。アーム13はVCMPVの駆動により磁気ヘッド15を磁気ディスク11上の指定の位置まで移動制御する。さらに、アーム13の先端部のロードビーム14の取り付け部付近には一対の圧電素子(例えば、Pb(Zr,Ti)O3)であるPMが配置される。一対の圧電素子PMに電圧を加えることで左右の圧電素子がそれぞれ逆位相で伸縮し、ロードビーム14の先端の磁気ヘッド15を磁気ディスク11上の半径方向(クロストラック方向)に変位させることにより、磁気ディスク11上で磁気ディスク11の半径方向に磁気ヘッド15の位置を調整する。このように1段目となるVCM駆動のアームの先端に第2のアクチュエータである圧電素子駆動のロードビームを付加した二段アクチュエータが実現される。以下、圧電素子PMはマイクロアクチュエータ(以下、単に「MA」ともいう。)PMと称する。
【0012】
磁気ヘッド15は、リードヘッド素子とライトヘッド素子とが、1つのスライダ上に分離して実装されている構造である。リードヘッド素子は、磁気ディスク11に記録されているデータを読出す。ライトヘッド素子は、磁気ディスク11にデータを書き込む。
【0013】
ヘッドアンプIC16は、リードアンプ及びライトドライバを有する。リードアンプは、リードヘッド素子により読み出されたリード信号を増幅して、リード/ライト(R/W)チャネル22に伝送する。一方、ライトドライバは、R/Wチャネル22から出力されるライトデータに応じたライト電流をライトヘッド素子に伝送する。
【0014】
SOC20は、制御部であるマイクロプロセッサ(CPU)21と、R/Wチャネル22と、ディスクコントローラ23と、位置決めコントローラCVとを含む。CPU21は、ドライブのメインコントローラであり、位置決めコントローラCVを介して磁気ヘッド15の位置決めを行なうサーボ制御及びヘッドアンプIC16を介してデータのリード/ライト制御を実行する。R/Wチャネル22は、リードデータの信号処理を実行するリードチャネルと、ライトデータの信号処理を実行するライトチャネルとを含む。ディスクコントローラ23は、ホストシステム(図示せず)とR/Wチャネル22との間のデータ転送を制御するインタフェース制御を実行する。なお、位置決めコントローラCVはハードウェアとして実現してもよいし、ソフトウェア(ファームウェア)として実現してもよい。
【0015】
メモリ24は、揮発性メモリおよび不揮発性メモリを含む。例えば、メモリ24は、DRAMからなるバッファメモリ、及びフラッシュメモリを含む。メモリ24の不揮発性メモリには、CPU21の処理に必要なプログラム等、及び後述するマイクロアクチュエータPMのゲイン推定処理を行った場合に、その処理結果(履歴情報,
図5参照)が記憶される。この処理結果は、磁気ディスク装置1から外部に出力可能に構成される。なお、当該処理結果はメモリ24に記憶されていなくても磁気ディスク装置1内のいずれかの記憶領域に記憶されていればよい。
【0016】
次に、伝達関数の測定処理について
図2、
図3を参照しながら説明する。
【0017】
図2は、マイクロアクチュエータPMを動作させたときの伝達関数の測定処理を説明するための図である。なお、
図2において、yは磁気ヘッド15の位置を示すヘッド位置信号、y
VはVCMPVの位置を示すVCM位置信号、y
MはマイクロアクチュエータPMの変位、u
MはマイクロアクチュエータPMの入力電圧、eは位置誤差信号、rは目標値を示す。ここで、ヘッド位置信号y、VCM位置信号y
V、マイクロアクチュエータの変位y
Mの単位は、トラック又は半径方向の距離であり、マイクロアクチュエータの入力電圧u
Mの単位はボルトとする。
【0018】
目標値rをゼロとして、端子31から位置誤差信号eを位置決めコントローラCVに入力する。位置決めコントローラCV出力がVCMPVに入力されると、VCMPVはVCM位置信号y
Vを端子32に入力する。一方、マイクロアクチュエータPMの入力電圧u
MがマイクロアクチュエータP
Mに入力されると、マイクロアクチュエータP
Mは、マイクロアクチュエータPMの変位y
Mを端子32に入力する。端子32からは、ヘッド位置信号yが磁気ヘッド15(
図2で図示省略)に入力されると共に、端子31に入力される。
【0019】
図2に示すマイクロアクチュエータPMの入力電圧u
Mからヘッド位置信号yまでの伝達関数(以下、「第1の伝達関数」という。)のゲインG1は、次の(1)式で求めることができる。
【数1】
【0020】
図3は、マイクロアクチュエータPMを動作させず、外乱を入力するときの伝達関数の測定処理を説明するための図である。なお、
図3において、yはヘッド位置信号、y
VはVCM位置信号、eは位置誤差信号、rは目標値を示すのは、
図2の場合と同様である。dは、外乱であり、dの単位はトラック又は半径方向の距離である。
【0021】
目標値rをゼロとして、端子31から位置誤差信号eを位置決めコントローラCVに入力する。位置決めコントローラCV出力がVCMPVに入力されると、VCMPVはVCM位置信号y
Vを端子32に出力する。一方、端子32には、外乱dが入力される。端子32からは、ヘッド位置信号yが磁気ヘッド15(
図3で図示省略)に入力されると共に、端子31に入力される。
【0022】
図3に示す外乱dからヘッド位置信号yまでの伝達関数(以下、「第2の伝達関数」という。)のゲインG2は、次の(2)式で求めることができる。
【数2】
【0023】
ここで、マイクロアクチュエータPMのゲイン(以下、「MAゲイン」ともいう。)は、既述の(1)式を、(2)式で除算することにより、具体的には、次の(3)式により求めることができる。
【数3】
【0024】
図4は、MAゲインを推定するゲイン推定処理の一例を示すフローチャートである。このゲイン推定処理は、例えば、磁気ディスク装置がコンピュータ等に設置された後、所定のタイミング毎に実行される。所定のタイミングは、本実施形態では、所定の期間が経過する毎に実行されることとする。また、所定の期間が経過する毎でなくても、任意のタイミングや所定のイベントが生じたタイミングでMAゲインのゲイン推定処理が実行されるようにしてもよい。つまり、ゲイン推定処理を実行するタイミングは、任意に設定することが可能である。さらに、磁気ディスク装置1に磁気ヘッド15が複数含まれる場合、磁気ヘッド15毎にゲイン推定処理が実行される。
【0025】
CPU21は、既述の
図2で説明したように、第1の伝達関数を測定する(ST101)。これにより、既述の(1)式により、第1ゲインを求めることができる。次に、CPU21は、変数iを0に設定する(ST102)。次に、CPU21は、マイクロアクチュエータPMのゲイン(MAゲイン)の初期値であるMAゲイン初期値α
0が有るか否かを判定する(ST103)。ここで、MAゲイン初期値α
0には、設計値や複数の同型の磁気ディスク装置から取得された測定値の平均値が採用される。また、MAゲイン初期値α
0が有るか否かの判定は、例えば、メモリ24の所定領域にMAゲイン初期値α
0のデータが格納されているか否かに基づいて実行される。
【0026】
マイクロアクチュエータPMのゲインのMAゲイン初期値α
0が有ると判定した場合(ST103:YES)、CPU21は、外乱|d|にMAゲイン初期値α
0|u
M|を設定する(ST104)。また、マイクロアクチュエータPMのMAゲイン初期値α
0が無いと判定した場合(ST103:NO)、CPU21は、外乱|d|を任意に設定する(ST105)。なお、この際のMAゲイン初期値α
0は、|d|/|u
M|から求めることができる(ST106)。
【0027】
以上のように、マイクロアクチュエータPMのMAゲイン初期値α
0が設定されると、次に、CPU21は、変数iに1を加算し(ST107)、第2の伝達関数を測定する(ST108)。これにより、既述の(2)式により、第2ゲインを求めることができる。次に、CPU21は、マイクロアクチュエータPMのMAゲイン推定値α
iを、既述の(3)式、つまり、|第1の伝達関数|/|第2の伝達関数|から求める(ST109)。言い換えると、MAゲイン推定値α
iをゲインG1/ゲインG2から求める。
【0028】
次に、CPU21は、|α
i−α
0|<所定値εを判定する(ST110)。ここで、所定値εは、十分小さい任意の値とする。|α
i−α
0|<所定値εでないと判定した場合(ST110:NO)、CPU21は、外乱|d|をα
i|u
M|に設定する(ST111)。そして、処理は、ステップST107の処理へ戻る。これにより、既述のステップST107からST110の処理が実行される。このように処理を繰り返すことにより、所定値εより小さい適切なMAゲイン推定値α
iを求めることが可能になる。そして、|α
i−α
0|<所定値εであると判定した場合(ST110:YES)、適切なMAゲインが求められたため、CPU21は、この処理を終了する。
【0029】
第1の伝達関数を測定する際のマイクロアクチュエータPMの入力電圧u
M、つまり、振幅は、実際に動作するときのマイクロアクチュエータPMの入力電圧に依存する。このため、マイクロアクチュエータPMの振幅に対応するように、
図4の処理により、外乱dを求めている。このように、外乱dの振幅と、マイクロアクチュエータPMのゲイン測定時のマイクロアクチュエータPMの変位y
Mを実質的に等しくすることで、伝達関数測定時の加振振幅に起因する測定誤差を低減することができる。なお、複数周波数でマイクロアクチュエータPMのゲインを推定する場合は、当該複数の周波数毎にマイクロアクチュエータPMのMAゲイン推定処理を実行するようにすればよい。
【0030】
図5は、MAゲインの推定処理の処理結果(履歴情報)Tの一例を示す図である。処理結果Tは、既述のように、例えば、メモリ24内の所定領域に記憶される。
【0031】
図5に示すように、処理結果Tは、日時と、当該日時でMAゲインの推定処理が実行されたときの各トラック又は磁気ディスク11の半径方向の距離である位置(位置A、位置B、…、位置N)でのα
iの値(例えば、X11、X12、…、X1N)が対応付けられている。
【0032】
また、この処理結果Tは、磁気ディスク装置1の外部、例えばホストシステム(図示省略)からの指示に基づいて、ホストシステムへ出力可能に構成されている。つまり、CPU21がホストシステムから処理結果Tの出力指示を受信した場合、CPU21は、メモリ24に記憶される処理結果Tを読み出し、ディスクコントローラ23を介してホストシステムへ処理結果Tを出力する。これにより、ホストシステムを操作するユーザは、マイクロアクチュエータPMのゲインの推定処理を行った処理結果Tを確認することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、磁気ディスク装置1は、
図5に示す処理結果Tがメモリ24に記憶される場合で説明したが、処理結果Tを履歴としてメモリ24に記憶しないように構成してもよい。
【0034】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。