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特開2020-202171リチウムイオン電池負極活物質、リチウムイオン電池負極及びリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-202171(P2020-202171A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池負極活物質、リチウムイオン電池負極及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20201120BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20201120BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20201120BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20201120BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20201120BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   H01M4/38 Z
   H01M4/134
   H01M4/62 Z
   H01M10/0566
   H01M10/052
   H01M4/36 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-228862(P2019-228862)
(22)【出願日】2019年12月19日
(31)【優先権主張番号】108120354
(32)【優先日】2019年6月12日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】513205226
【氏名又は名称】達興材料股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Daxin Materials Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】ジュイ‐シェン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ユン‐シャン ロ
(72)【発明者】
【氏名】クオ‐チェン フアン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AL11
5H029AL18
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ07
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA11
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA28
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン電池負極活物質を提供する。
【解決手段】シリコン、錫及び銅−亜鉛合金を含み、錫は実質的に元素状態であるリチウムイオン電池負極活物質。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン、錫及び銅−亜鉛合金を含み、錫は実質的に元素状態であるリチウムイオン電池負極活物質。
【請求項2】
シリコン、錫、銅及び亜鉛の総モル数を100%で計算すると、シリコンのモル分率は45%−90%であり、錫のモル分率は4%−45%であり、銅のモル分率は3%−20%であり、亜鉛のモル分率は3%−20%である請求項1に記載のリチウムイオン電池負極活物質。
【請求項3】
前記リチウムイオン電池負極活物質は錫合金を含まない請求項1に記載のリチウムイオン電池負極活物質。
【請求項4】
前記リチウムイオン電池負極活物質は銅−錫合金を含まない請求項1に記載のリチウムイオン電池負極活物質。
【請求項5】
前記リチウムイオン電池負極活物質の比表面積が10m/g未満である請求項1に記載のリチウムイオン電池負極活物質。
【請求項6】
前記銅−亜鉛合金はβ相、β’相、γ相、ε相、β+γ相、β’+γ相及びε+γ相の中の少なくとも1つの合金相を含む請求項1に記載のリチウムイオン電池負極活物質。
【請求項7】
前記銅−亜鉛合金の中で、銅(Cu)に対する亜鉛(Zn)の原子百分率比は1.03−4である請求項1に記載のリチウムイオン電池負極活物質。
【請求項8】
前記リチウムイオン電池負極活物質の二次粒径は2−10μmである請求項1に記載のリチウムイオン電池負極活物質。
【請求項9】
請求項1−8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池負極活物質を含むリチウムイオン電池負極。
【請求項10】
導電材と、
接着剤と、を更に含む請求項9に記載のリチウムイオン電池負極。
【請求項11】
前記接着剤はポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride;PVDF)、スチレンブタジエンゴムラテックス(styrene−butadiene rubber latex;SBR)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、ポリアクリレート(polyacrylate;PAA)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol;PVA)及びアルギン酸ナトリウムの中の少なくとも1種の構造を有するポリマー、コポリマー又は組成物を含む請求項10に記載のリチウムイオン電池負極。
【請求項12】
請求項9に記載のリチウムイオン電池負極を含むリチウムイオン電池。
【請求項13】
リチウムイオン電池正極と、
前記リチウムイオン電池負極と前記リチウムイオン電池正極との間に配置される電解液と、を更に含む請求項12に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池負極活物質、リチウムイオン電池負極及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、近年来の新規な電池であり、これは、高エネルギー密度、小さい自己放電、長いサイクル寿命、メモリー効果無し及び低い環境汚染という利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くのリチウムイオン電池負極材料の中で、シリコンは高い比容量を有する材料であるため、ますます多くの電池が負極としてシリコン含有材料を使用している。しかしながら、一般的に材料としてシリコンを使用するリチウムイオン電池負極の中で、電池の充放電過程中に体積が大幅に変わりやすく、電池構造を破裂させ、電池の寿命及び安全性に影響を及ぼす。このため、上記の体積変化という問題を改善する解決策を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、シリコン、錫及び銅−亜鉛合金を含み、錫が実質的に元素状態であるリチウムイオン電池負極活物質を提供する。
【0005】
本発明の1つ又は複数の実施形態によれば、シリコン、錫、銅及び亜鉛の総モル数を100%で計算すると、シリコンのモル分率は45%−90%であり、錫のモル分率は4%−45%であり、銅のモル分率は3%−20%であり、亜鉛のモル分率は3%−20%である。
【0006】
本発明の1つ又は複数の実施形態によれば、リチウムイオン電池負極活物質は錫合金を含まない。
【0007】
本発明の1つ又は複数の実施形態によれば、リチウムイオン電池負極活物質は銅−錫合金を含まない。
【0008】
本発明の1つ又は複数の実施形態によれば、リチウムイオン電池負極活物質の比表面積は10m/g未満である。
【0009】
本発明の1つ又は複数の実施形態によれば、銅−亜鉛合金はβ相、β’相、γ相、ε相、β+γ相、β’+γ相及びε+γ相の中の少なくとも1つの合金相を含む。
【0010】
本発明の1つ又は複数の実施形態によれば、銅−亜鉛合金では、銅(Cu)に対する亜鉛(Zn)の原子百分率比は1.034である。
【0011】
本発明の1つ又は複数の実施形態によれば、リチウムイオン電池負極活物質の二次粒径は2−10μmである。
【0012】
本発明の他の態様は、上記のリチウムイオン電池負極活物質を含むリチウムイオン電池負極を提供する。
【0013】
本発明の1つ又は複数の実施形態によれば、リチウムイオン電池負極は導電性材料と接着剤を更に含む。
【0014】
本発明の1つ又は複数の実施形態によれば、接着剤はポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride;PVDF)、スチレンブタジエンゴムラテックス(styrene−butadiene rubber latex;SBR)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、ポリアクリレート(polyacrylate;PAA)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN) 、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol;PVA)及びアルギン酸ナトリウムの中の少なくとも1種の構造を有するポリマー、コポリマー又は組成物を含む。
【0015】
本発明の別の態様は、上記のリチウムイオン電池負極を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0016】
本発明の1つ又は複数の実施形態によれば、リチウムイオン電池はリチウムイオン電池正極及び電解液を更に含む。電解液はリチウムイオン電池負極とリチウムイオン電池正極との間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
下記図面の説明は、本発明の前記、他の目的、特徴、メリット及び実施形態をより分かりやすくするためのものである。
図1】本発明の実施例1によるリチウムイオン電池負極活物質を示すX線回折図である。
図2】本発明の比較例1によるリチウムイオン電池負極活物質を示すX線回折図である。
図3】実施例1のリチウムイオン電池負極の初期表面の走査型電子顕微鏡(scanning electronmicroscope;SEM)写真である。
図4】実施例1のリチウムイオン電池負極の50サイクル後の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
図5】比較例2のリチウムイオン電池負極の初期表面の走査型電子顕微鏡写真である。
図6】比較例2のリチウムイオン電池負極の50サイクル後の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
図7】実施例1のリチウムイオン電池負極の50サイクル後の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図8】比較例2のリチウムイオン電池負極の50サイクル後の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明が開示された内容の叙述をより詳しく且つ完備にさせるために、付いた図面及び以下の様々な実施形態又は実施例を参照することができる。
【0019】
内容に他の明確な主張がない限り、本明細書で使用される単数形の単語は複数の指示対象を含む。「一実施例」のような特定の指示を参照することによって、少なくとも1つの本発明の実施例において、1つの特定の特徴、構造又は特色を示すため、ところどころの「一実施例において」のような短い文が特別な指示によって現れる場合に、同様な実施形態を参照する必要がなく、更に、1つ又は複数の実施形態において、これらの特別な特徴、構造、又は特色は適切な場合によって互いに組み合わせることができる。
【0020】
一般的にシリコンを材料として使用するリチウムイオン電池負極の中で、電池の充放電過程中に体積が膨張収縮しやすく、電池の構造を破裂させ、電池の寿命及び安全性に影響を及ぼす。
【0021】
本発明はリチウムイオン電池負極活物質を提供し、シリコン、錫及び銅−亜鉛合金を含む。注意すべきなのは、本発明のリチウムイオン電池負極活物質の中の錫は実質的に元素状態であり、本文に使用された用語「実質的に元素状態である」は、意図的に添加又は加工してなる非ゼロ価の錫の成分を含まないことを意味する。
【0022】
いくつかの実施例において、元素状態の錫はシリコンと銅−亜鉛合金を接着することができるため、錫は接着剤として、リチウムイオン電池負極活物質の各成分(例えばシリコンと銅−亜鉛合金)をより緊密に接着させることができる。なお、延性を有する錫はシリコンと銅−亜鉛合金との間に配置されるため、電池の充放電過程中に、錫がシリコンの体積変化のバッファとして、シリコンの体積変化による電極構造の破裂を避けることもできる。
【0023】
ある実施例において、リチウムイオン電池負極活物質の中で、シリコン、錫、銅及び亜鉛の総モル数を100%で計算すると、シリコンのモル分率は45%−90%であり、例えば50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%又は85%であり、好ましくは65%−90%である。錫のモル分率は4%−45%であり、例えば5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%又は40%であり、好ましくは4%−25%である。銅のモル分率は3%−20%であり、例えば5%、10%又は15%であり、好ましくは3%−15%である。亜鉛のモル分率は3%−20%であり、例えば5%、10%又は15%であり、好ましくは3%−15%である。他の実施例において、シリコンのモル分率は60%−75%であり、錫のモル分率は10%−20%であり、銅のモル分率は5%−10%であり、亜鉛のモル分率は5%−10%である。
【0024】
シリコンのモル分率は45%−90%であり、錫のモル分率は4%−45%であり、銅のモル分率は3%−20%であり、亜鉛のモル分率は3%−20%である場合に、リチウムイオン電池負極活物質の比容量は1100mAh/g以上に達することができる。更に、シリコンのモル分率は65%−90%であり、錫のモル分率は4%−25%であり、銅のモル分率は3%−15%であり、亜鉛のモル分率は3%−15%である場合に、リチウムイオン電池負極活物質の比容量は1500mAh/g以上に達することができる。
【0025】
ある実施例において、錫の含有量が少なく過ぎ、例えばモル分率が4%より小さいと、上記のシリコンの体積変化のバッファとする効果は大幅に低下し、リチウムイオン電池負極の構造が充放電サイクルにおいて破裂しやすい。いくつかの実施例において、錫の含有量が多すぎ、例えばモル分率が45%より大きいと、シリコンのモル分率を減少させるため、リチウムイオン電池負極活物質の比容量に影響を及ぼす。
【0026】
いくつかの実施例において、上記のように、本発明の錫は実質的に元素状態であるため、本発明のリチウムイオン電池負極活物質は実質的に錫合金を含まなく、本文に使用された用語「実質的に錫合金を含まない」は、意図的に添加又は加工してなる錫の合金成分を含まないことを意味する。更なる実施例において、本発明のリチウムイオン電池負極活物質は銅−錫合金を含まない。
【0027】
詳しく言えば、リチウムイオン電池負極活物質の中の銅−亜鉛合金はβ相、β’相、γ相、ε相、β+γ相、β’+γ相及びε+γ相の中の少なくとも1つの合金相を含む。いくつかの実施例において、銅−亜鉛合金はβ’相を含む。他の実施例において、銅−亜鉛合金はβ’+γ相を含む。
【0028】
なお、いくつかの実施例において、リチウムイオン電池負極活物質の銅−亜鉛合金の中で、銅(Cu)に対する亜鉛(Zn)の原子百分率比は1.03−4であり、例えば1.03−2.15であり、好ましくは1.03−1.50であり、より好ましくは1.03−1.05である。
【0029】
銅−亜鉛合金の中で、亜鉛に対する銅の原子百分率比が1.03−4である場合に、銅−亜鉛合金は主にβ’相、β’+γ相、γ相及びε+γ相である。亜鉛に対する銅の原子百分率比が1.03−2.15である場合に、銅−亜鉛合金は主にβ’相、β’+γ相及びγ相である。亜鉛に対する銅の原子百分率比が1.03−1.50である場合に、銅−亜鉛合金は主にβ’相及びβ’+γ相である。亜鉛に対する銅の原子百分率比が1.03−1.05である場合に、銅−亜鉛合金は主にβ’相である。
【0030】
いくつかの実施例において、リチウムイオン電池負極活物質の比表面積が10m/g未満であり、例えば8m/g、5m/g又は3m/g未満である。電極の活物質の比表面積は接着剤の使用量に関連し、活物質の比表面積が大きすぎると、多くの接着剤を必要とするため、電極における活物質の割合を減少して、電極容量も減る。このため、本発明のリチウムイオン電池負極活物質は優れた比容量を有するだけでなく、電極を作った場合に、高い割合で混合して、電極容量を向上させることができる。
【0031】
ある実施例において、高エネルギーボールミリング後のリチウムイオン電池負極活物質の一次粒径は200nm−500nmであり、例えば300nm又は400nmである。リチウムイオン電池負極活物質の二次粒径は0.8−50μmであり、好ましくは1−25μmであり、より好ましくは2−10μmであり、例えば4μm、6μm又は8μmである。一次粒径又は二次粒径が大きすぎると、リチウムイオン電池負極活物質の全体反応面積が小さくなり、リチウムイオン電池負極が受けることができる最大電流も小さい。一次粒径又は二次粒径が小さすぎると、リチウムイオン電池負極活物質はより多くの接着剤を必要とするため、活物質の電極の中での割合を低下することで、電極容量を減少してしまう。
【0032】
本発明のリチウムイオン電池負極活物質は高エネルギーボールミリング法によって形成されることができる。詳しく言えば、元素状態のシリコン、錫、銅及び亜鉛をボールミルに入れて混合し、高エネルギーボールミリング法によって粉と粉砕ボール(例えばジルコニウムボール)を互いに摩擦して発熱させるため、ボールミル内の温度は300℃に達することができる。このため、銅と亜鉛はボールミリング過程中に銅−亜鉛合金を形成する。なお、ボールミリング過程中に、高温で一部の錫を溶融させるため、シリコンと銅−亜鉛合金を接着する。
【0033】
しかしながら、シリコンとニッケル又はシリコンと銅のみを混合すると、シリコン−ニッケルの間又はシリコン−銅の間に金属間化合物相(intermetallic compound)を形成し、一部のシリコンが消耗され、活物質の比容量が低下する。更に、シリコン、錫、ニッケル又はシリコン、錫、銅のみを混合すると、シリコン−錫−ニッケル又はシリコン−錫−銅金属間化合物相(intermetallic compound)も形成し、一部のシリコンも消耗される。シリコン、錫、亜鉛のみを混合すると、錫―亜鉛の間は共晶現象を発生し、低融点の共晶合金をボールミル及び粉砕ボールに冷間溶接させて、活物質を損失する以外、粉砕ボールの使用寿命も大幅に短縮する。
【0034】
亜鉛は銅と銅−亜鉛合金を優先的に形成するため、本発明は以上に言及した錫−亜鉛の間の共晶現象又はシリコン−錫−銅の金属間化合物相(intermetallic compound)を発生しない。なお、銅はシリコンとCuSiを形成し、付加の電力損失を引き起こすが、亜鉛元素を入れると、銅は亜鉛と銅−亜鉛合金を優先的に形成するので、銅シリコン合金の生成を減少することができ、高い電力を維持するようにする。更に、ニッケルはシリコンとNiSi又はNiSi等の合金を形成し、上記の銅シリコン合金と比べて、より多くの電力を消耗する。以上のように、本発明の銅−亜鉛合金はシリコンとその他の金属が合金を生成することを避けることができるだけでなく、高い比容量を維持することができる。
【0035】
本発明はリチウムイオン電池負極活物質を提供し、場合に応じて炭素源を提供することができる炭素質材料又はセラミック材料を含んでもよく、リチウムイオン電池のサイクル寿命又は負極材料構造の安定性を増加し、上記の炭素質材料は定形炭素又は無定形炭素を含み、例えばカーボンブラック、活性炭、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーを含むが、これらに制限されなく、このような炭素質材料をシリコン、錫、銅及び亜鉛と共に高能ボールミリングして複合活物質を形成することができ、シリコン、錫、銅及び亜鉛を高能ボールミリングして調製した後に、更に炭素質材料とそれと共により穏やかな粉砕混和を行ってもよく、且つ形成された粒子表面にカーボン被覆構造を形成し、前記のセラミック材料が例えばシリカ、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄、炭化タンタル、炭化タングステンであるが、これらに制限されない。
【0036】
本発明は上記のリチウムイオン電池負極活物質を含むリチウムイオン電池負極を更に提供する。いくつかの実施例において、リチウムイオン電池負極は導電材及び接着剤を更に含み、リチウムイオン電池負極活物質は接着剤によって導電材に接着される。
【0037】
いくつかの実施例において、導電材は、例えばSUPER−P、KS−6、ケッチェンブラック、導電性グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンファイバー(vapor grown carbon fiber;VGCF)であってよい。ある実施例において、リチウムイオン電池負極が100%で計算されると、導電材の重量部は5−20%であり、より好ましくは15−20%であり、例えば16%、17%、18%又は19%である。
【0038】
いくつかの実施例において、接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride;PVDF)、スチレンブタジエンゴムラテックス(styrene−butadiene rubber latex;SBR)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、ポリアクリレート(polyacrylate;PAA)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol;PVA)及びアルギン酸ナトリウムの中の少なくとも1種の構造を有するポリマー、コポリマー又は組成物を含む。
【0039】
なお、本発明は上記のリチウムイオン電池負極を含むリチウムイオン電池を更に提供する。いくつかの実施例において、リチウムイオン電池はリチウムイオン電池正極及び電解液を更に含み、電解液がリチウムイオン電池負極とリチウムイオン電池正極との間に配置される。
【0040】
本発明の実施例1によるリチウムイオン電池負極活物質のX線回折図である図1を参照されたい。実施例1は元素状態のシリコン、錫、銅及び亜鉛を高能ボールミリングで混合する。図1に示すように、本発明のリチウムイオン電池負極活物質に銅−亜鉛合金を確実に含有し、且つ錫は実質的に元素状態であり、錫の合金を含まないことを発見した。
【0041】
本発明の比較例1によるリチウムイオン電池負極活物質のX線回折図である図2を参照されたい。詳しくは、比較例1は元素状態のシリコン、錫、銅及び亜鉛を単純に混合し、且つ高能ボールミリングを行わない。したがって、図2から分かるように、銅−亜鉛合金を形成していない。これによって、高能ボールミリングによって銅−亜鉛合金を形成することができることを確認することができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施例において、遊星ボールミルを使用して高能ボールミリングを行う。遊星ボールミルが運転する間に、粉砕ボールは粉砕タンク内で高速に運動し、摩擦力及び衝撃力により粉を粉砕する。粉砕された粉は冷間溶接によって大きな粒子を形成し、後続で粉砕ボールの摩擦及び衝撃によって粉砕され、このように繰り返して実行する。粉砕タンク内で、合金化に必要な活性化エネルギーは、結晶粒ナノ結晶化により減少する。粉は、粉砕ボールの摩擦及び衝撃による熱によってより容易に合金化することができる。
【0043】
高能ボールミリングの回転速度、粉砕ボールのサイズ及び密度、粉砕ボールの粉に対する重量比及びボールミリングの時間はすべてボールミリングの結果に影響を及ぼす。いくつかの実施例において、400rpmの回転速度でボールミリングし、且つ直径が10mmのジルコニアボールを粉砕ボールとして使用する。粉砕ボールの粉(シリコン、錫、銅、亜鉛の粉、元の粒径の何れも100μmより小さい)に対する重量比は7.5であり、ボールミリング時間は4時間である。
【0044】
本発明の電気的測定はすべて半電池を用いて試験される。リチウム半電池はリチウム電池の材料の電気的評価を行う際によく使用される方法であり、試験サンプルを作用電極として、相対電極(counter electrode)と参照電極(reference electrode)はリチウム金属である。主にリチウム金属をテストプラットフォームとして、試験サンプルを電気的評価する。ある実施例において、ボタン電池を組み立てるように、充放電を行う。
【0045】
リチウムイオン電池負極は76wt%のリチウムイオン電池負極活物質、9wt%の接着剤(例えばポリアクリレート)及び15wt%の導電材(例えばカーボンブラック)を含む。まず、リチウムイオン電池負極活物質と導電材とを混合して、プラネタリー消泡機を用いて1500rpmで15分間混合する。その後、溶剤及び接着剤を加え、且つプラネタリー消泡機によって2000rpmで20分間混合し続ける。混合したスラリーを銅箔に塗布して且つ乾燥とローリング圧延を行って、リチウムイオン電池負極を形成する。
【0046】
リチウムイオン電池負極を半電池に製造し、500mAh/gの電流密度で充放電サイクルを行い、電圧範囲を0.005V−1.5Vに制限する。
【0047】
表1は本発明の実施例1及び各比較例の各組成比及びそれぞれの実験データである。実施例1及び比較例2−5はすべて高エネルギーボールミリング法によって混合し、比較例1は高エネルギーボールミリング法による混合がされない。比容量は初回充電の比容量であり、初回のクーロン効率(coulombic efficiency)は初回の充放電サイクルのクーロン効率である。クーロン効率とは電池放電容量と同じサイクル中の充電容量の比を指し、即ち放電容量と充電容量との割合である。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から分かるように、実施例1の比容量は比較例2−5よりもはるかに優れて、実施例1の初回のクーロン効率も各比較例よりも優れる。なお、高能ボールミリングを行わない比較例1の比容量は実施例1と近いが、比較例1の初回のクーロン効率は実施例1よりはるかに低い。以上のように、銅−亜鉛合金を形成するのは確実に比容量及び初回のクーロン効率を増加することができることが分かる。
【0050】
図3は実施例1のリチウムイオン電池負極の初期表面の走査型電子顕微鏡(scanning electronmicroscope;SEM)写真である。図4は実施例1のリチウムイオン電池負極の50サイクル後の表面の走査型電子顕微鏡写真である。図3及び図4を同時に参照すると、複数サイクルの後で実施例1のリチウムイオン電池負極の表面に依然として非常に平らであることを発見することができ、充放電過程中に、負極表面に形成された固体電解質界面フィルム(solid electrolyte interphase;SEI)が複数サイクル後に完全に保持されることを示す。完全な固体電解質界面フィルムはリチウムイオン電池のサイクル寿命を大幅に延長させることができる。
【0051】
図5は比較例2のリチウムイオン電池負極の初期表面の走査型電子顕微鏡写真である。図6は比較例2のリチウムイオン電池負極の50サイクル後の表面の走査型電子顕微鏡写真である。図5及び図6を同時に参照すると、複数サイクル後で、比較例2のリチウムイオン電池負極表面の破損は非常に深刻である。シリコンは充放電過程中に大きな体積変化を発生し、比較例2は体積変化のバッファとしての元素状態の錫もなく、負極表面に形成された固体電解質界面フィルムが破損され、したがって複数サイクル時に固体電解質界面フィルムを繰り返して絶えずに生成する。多すぎる固体電解質界面フィルムを生成することで多すぎるリチウムイオンを消耗して、リチウムイオン電池の容量を低下させ、サイクル寿命が減少してしまう。
【0052】
図7は実施例1のリチウムイオン電池負極の50サイクル後の断面の走査型電子顕微鏡写真である。図7では、リチウムイオン電池負極の満充電の厚さh1は約17.5μmである。初期厚さの約10μmと比べて、実施例1の膨脹率は約175%である。
【0053】
図8は比較例2のリチウムイオン電池負極の50サイクル後の断面の走査型電子顕微鏡写真である。比較例2のリチウムイオン電池負極の満充電の厚さh2は約47.5μmである。初期厚さの約13μmと比べて、比較例2の膨脹率は約365%である。
【0054】
したがって、図7及び図8の結果から発見するように、本発明の錫は実質的に元素状態であり、リチウムイオン電池負極が充放電過程中における膨脹範囲を確実に抑制することができる。
【0055】
表2は本発明の各実施例の各組成比及び様々な実験データである。上記のように、比容量は初回充電の比容量であり、初回のクーロン効率(coulombic efficiency)は初回の充放電サイクルのクーロン効率である。
【0056】
【表2】
【0057】
表2から分かるように、本発明の各実施例の何れも優れた比容量を有し、且つ初回のクーロン効率も85%以上に保持されることができる。実施例1、実施例3、実施例4、実施例6及び実施例7において、初回のクーロン効率は88%以上に更に達することができる。なお、各実施例の比容量は1600mAh/g以上に更に達することができる。シリコンと錫の比例で調整して、実施例5の比容量はひいては2500mAh/g以上に達することができる。
【0058】
本発明は、元素状態の錫によって、シリコン材料は充放電過程における体積変化による電極構造への影響を大幅に改善するリチウムイオン電池負極活物質を提供する。走査型電子顕微鏡写真から見られるように、充放電サイクル後で、本発明の電極表面は依然として平らかに保持され、固体電解質界面フィルムの破砕を避け、リチウムイオン電池のサイクル寿命を延長させる。なお、本発明の初回のクーロン効率はほぼ90%に達することができ、比容量はほぼ2500mAh/g以上に達することができる。
【0059】
本発明の開示内容はある実施形態を詳しく説明したが、その他の実施形態も可能である。したがって、付いた請求項の精神と範囲は本文に説明された実施形態に制限されるべきではない。
【0060】
本発明を実施形態によって前述の通りに開示したが、これは、本発明を限定するものではなく、当業者なら誰でも、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修正を加えることができ、したがって、本発明の保護範囲は、後に付いた特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0061】
h1、h2 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8