【解決手段】電子機器用筐体10は、第1の筐体部材と、第1の筐体部材と着脱可能に連結される第2の筐体部材と、第1の筐体部材の内面側から突出するように設けられ、第1の筐体部材に対してフローティング可能な状態で支持されたフック38と、第2の筐体部材の内面側に設けられ、フック38を係合可能な係合穴39と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、各筐体部材間は、それぞれの外周縁部に沿って設けられたねじや係合部によって連結されている。従って、この構成では、筐体の底面でねじが目立つことが抑えられ、外観品質が向上されている。
【0005】
ところで、上記のような電子機器は、薄型化が急速に進んでおり、筐体部材の板厚自体も薄型化されている。このため、上記特許文献1の構成のように、筐体部材間が外周縁部のみで連結された構成では、筐体部材の材質等にもよるが、例えば底面側の筐体部材の中央部が下方へと膨んでしまう可能性がある。このような変形を生じた場合、筐体部材は、底面の中央部が机等と擦れて擦り傷を生じる懸念がある。筐体部材が膨らむと、その内面と筐体内部の電子部品との間に隙間が形成され、この隙間に異物等が挟まってしまう懸念もある。ところが、筐体部材の中央部は、外観品質の問題からねじで締結されることは好ましくない。一方、筐体部材の中央部は、各部品の製造公差や製造誤差の影響が積算されるため、上記特許文献1に開示されたような一般的な係合部では、確実に係合させることが難しい場合もある。勿論、このような係合部での連結時の位置ずれは、筐体部材の中央部以外、例えば外周縁部でも生じる懸念がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、外観品質の低下を抑えながらも、筐体部材間を円滑に連結することができる電子機器用筐体及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器用筐体は、電子機器用筐体であって、第1の筐体部材と、前記第1の筐体部材と着脱可能に連結される第2の筐体部材と、前記第1の筐体部材の内面側から突出するように設けられ、該第1の筐体部材に対してフローティング可能な状態で支持されたフックと、前記第2の筐体部材の内面側に設けられ、前記フックを係合可能な係合穴と、を備える。
【0008】
このような構成によれば、各筐体部材間を連結する際、フックはフローティング作用によって係合穴に対してセンタリングされつつ、円滑に係合される。このため、当該電子機器用筐体は、各筐体部材の製造公差や製造誤差、或いは組付誤差等の影響でフックや係合穴が所望の設計位置よりも位置ずれしている場合であっても、両者を円滑に係合することができる。このようなフック及び係合穴による連結部は、当該電子機器用筐体の中央部や外周縁部等の各所に適宜配置できるため、ねじによる締結部の設置数を最小限としてその外観品質の低下を抑えることができる。
【0009】
前記フックは、ベース部と、前記ベース部から突出し、前記係合穴に係合されるフック本体と、を有し、前記第1の筐体部材には、前記ベース部をフローティング状態で支持するフローティング支持部が設けられた構成としてもよい。
【0010】
前記ベース部は、前記フローティング支持部に対して着脱可能に装着されていてもよい。
【0011】
前記フック本体は、前記ベース部から突出した基端部と、前記基端部から連続し、前記基端部の突出方向から逆方向に折り返すように湾曲した湾曲部と、前記湾曲部から連続し、前記基端部とは逆方向に延びることで、その内側面が前記基端部の内側面と対向する先端部と、前記基端部の外側面から突出し、前記係合穴の縁部に係止される第1爪部と、前記先端部の外側面から突出し、前記係合穴の縁部に係止される第2爪部と、を有する構成としてもよい。
【0012】
前記フローティング支持部は、前記フックを前記第1の筐体部材の内面に沿って移動可能な状態で支持した構成としてもよい。
【0013】
前記フローティング支持部は、前記第1の筐体部材の内面との間で前記ベース部に設けられた板部を移動可能な状態で保持する天板部を有し、前記第1の筐体部材の内面と前記天板部との間は、前記板部を該内面から該天板部に向かう方向に対しては実質的に移動不能な状態で保持可能な間隔に設定された構成としてもよい。
【0014】
前記係合穴の開口縁部には、前記フックの係合方向に向かって次第に内径が縮小するテーパ面が設けられていてもよい。
【0015】
本発明の第2態様に係る電子機器用筐体は、電子機器用筐体であって、第1の筐体部材と、前記第1の筐体部材と着脱可能に連結される第2の筐体部材と、前記第1の筐体部材の内面側から突出したフックと、前記第2の筐体部材の内面側に設けられ、前記フックを係合可能な係合穴と、を備え、前記フックは、前記第1の筐体部材の内面側から突出するように設けられた基端部と、前記基端部から連続し、前記基端部の突出方向から逆方向に折り返すように湾曲した湾曲部と、前記湾曲部から連続し、前記基端部とは逆方向に延びることで、その内側面が前記基端部の内側面と対向する先端部と、前記基端部の外側面から突出し、前記係合穴の縁部に係止される第1爪部と、前記先端部の外側面から突出し、前記係合穴の縁部に係止される第2爪部と、を有する。
【0016】
このような構成によれば、フックは、係合穴への傾動時に円滑に弾性変形することができると共に、その突出長が最大化されることで高い強度が確保される。従って、当該電子機器用筐体は、各筐体部材の製造公差や製造誤差、或いは組付誤差等の影響でフックや係合穴が所望の設計位置よりも位置ずれしている場合であっても、両者を円滑に且つ破損することなく係合させることができる。このため、フック及び係合穴による連結部は、当該電子機器用筐体の中央部や外周縁部等の各所に配置することも可能であり、ねじによる締結部の設置数を最小限としてその外観品質の低下を抑えることができる。
【0017】
前記第1爪部は、前記係合穴の縁部に係止される第1係止面を有し、前記第2爪部は、前記係合穴の縁部に係止される第2係止面を有し、前記第2係止面は、前記第1係止面よりも前記係合穴に対する掛かり量が大きい構成としてもよい。
【0018】
前記第1の筐体部材及び前記第2の筐体部材は、それぞれ矩形状に構成され、前記第1爪部は、前記第1の筐体部材及び前記第2の筐体部材の一縁部側に配置され、前記第2爪部は、前記第1の筐体部材及び前記第2の筐体部材の前記一縁部側とは反対側の他縁部側に配置された構成としてもよい。
【0019】
前記第1の筐体部材及び前記第2の筐体部材は、前記フック及び前記係合穴による連結部を含む複数の連結部によって互いに連結されており、少なくとも前記一縁部に設けられた連結部は、前記第1の筐体部材及び前記第2の筐体部材の一方に設けられた突出片と、前記第1の筐体部材及び前記第2の筐体部材の他方に設けられ、前記突出片を前記他縁部から前記一縁部に向かう方向に挿入可能な挿入穴と、を有し、前記フック及び前記係合穴による連結部は、前記一縁部以外の部分に設けられた構成としてもよい。
【0020】
本発明の第3態様に係る電子機器は、上記構成の電子機器用筐体と、前記電子機器用筐体の内部に収容された電子部品と、前記電子機器用筐体の表面に設けられた入力操作部及び表示部の少なくとも一方と、を備え、前記第2の筐体部材は、前記電子機器用筐体の前記表面を構成し、前記第1の筐体部材は、前記電子機器用筐体の底面を構成している。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記態様によれば、観品質の低下を抑えながらも、筐体部材間を円滑に連結することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る電子機器用筐体及び電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、一実施形態に係る電子機器用筐体10を適用した電子機器12の平面図である。本実施形態では、電子機器用筐体10をノート型PCである電子機器12の本体筐体14に利用した構成を例示する。電子機器用筐体10は、ディスプレイ筐体16に利用されてもよい。電子機器12は、デスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォン又は携帯電話等であってもよい。
【0025】
図1は、ヒンジ18によってディスプレイ筐体16を本体筐体14から開いた状態(使用形態)を示している。以下、本体筐体14について、
図1に示す使用形態を基準とし、ディスプレイ20を見ながらキーボード装置22を操作する使用者から見た方向で、手前側を前、奥側を後、厚み方向を上下、幅方向を左右、と呼んで説明する。
【0026】
ディスプレイ筐体16は、本体筐体14の後縁部に対してヒンジ18を介して回動可能に連結されている。ディスプレイ20は、例えば液晶ディスプレイである。
【0027】
本体筐体14は、本実施形態に係る電子機器用筐体10で構成されている。本体筐体14は、矩形状の上カバー24と下カバー25とを上下に重ねて連結した構造であり、扁平な箱状を成している。キーボード装置22は、上カバー24に形成された開口から本体筐体14の上面14aに露出した入力操作部である。本体筐体14の上面14aには、キーボード装置22の前側にタッチパッド装置26等の入力操作部も設けられている。本体筐体14の内部には、図示しない演算処理装置やメモリが実装された基板27やバッテリ装置28等、各種電子部品が収納されている(
図3A参照)。
【0028】
次に、本実施形態に係る電子機器用筐体10を適用した本体筐体14の構成について具体的に説明する。
図2は、本体筐体14の底面図である。
図3Aは、本体筐体14の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図3Bは、
図3Aに示す下カバー25を上カバー24から取り外す動作を示す側面断面図である。
図3A及び
図3Bは、本体筐体14の上下をひっくり返して図示している。
【0029】
図2〜
図3Bに示すように、上カバー24は、本体筐体14の四周側面の一部及び上面14aを形成するプレート状の筐体部材である。下カバー25は、本体筐体14の四周側面の他部及び下面14bを形成するプレート状の筐体部材である。上カバー24及び下カバー25は、マグネシウムやアルミニウム等の金属材料、ABS樹脂やガラス繊維強化プラスチック等の樹脂材料、或いは炭素繊維強化プラスチック等のカーボン材料等で形成されている。上カバー24及び下カバー25の形状及び材質は、適宜変更可能である。
図2中の参照符号18aは、ヒンジ18の筐体部分が設置される切欠部である。
図2中の参照符号29は、ゴム足である。
【0030】
本実施形態の本体筐体14は、上カバー24と下カバー25とが3種類の連結部30,31,32によって連結されている。
【0031】
連結部30は、ねじ34と、ねじ34を螺合可能な雌ねじ穴が形成されたボス部35とで構成されたねじ締結部である。連結部30は、例えば本体筐体14の後縁部14c及び左右の側縁部14d,14eに近接した位置に設置されている。本実施形態の連結部30は、5カ所に設けられている。具体的には、連結部30は、後縁部14cに沿って左右に並んだ3カ所と、左右の側縁部14d,14eの中央よりもやや前寄りの位置のそれぞれ1カ所ずつとにある。ねじ34は、下カバー25の下面14b側から下カバー25に形成された図示しない締結孔を通してボス部35に螺合される。これによりねじ34は、下カバー25と上カバー24とを締結する。連結部30の設置数及び設置位置は適宜変更可能である。但し、連結部30は、ねじ34が下面14bで目立つことを抑えるため、
図2に示すように本体筐体14の四周縁部に近接した位置のみに利用されることが好ましい。
【0032】
連結部31は、突出片36と、突出片36を挿入可能な挿入穴37とで構成された係合部である。連結部31は、例えば本体筐体14の前縁部14fに近接した位置に設置されている。本実施形態の連結部31は、前縁部14fに沿うように左右に並んで5カ所に設けられている。突出片36は、下カバー25の前壁部から前方に突出した板片である。挿入穴37は、上カバー24の前壁部に形成され、後方に開口した矩形状の穴である。突出片36は、挿入穴37に挿入されると、少なくとも上下左右方向に移動不能となる。これにより上カバー24と下カバー25とが少なくとも上下左右方向に相対移動不能な状態で連結される。連結部31の設置数及び設置位置は適宜変更可能である。但し、連結部31は、突出片36を多少上下方向に傾いてもよいが、基本的には水平方向(前後方向)に移動させて挿入穴37に挿入する必要がある。このため、各連結部31は、本体筐体14の四周の縁部14c〜14fのうち、同一の縁部(本実施形態では前縁部14f)に設けられていることが好ましい。連結部31は、突出片36が上カバー24に設けられ、挿入穴37が下カバー25に設けられた構成としてもよい。
【0033】
連結部32は、フック38と、フック38を係合可能な係合穴39とで構成された係合部である。連結部32は、例えば本体筐体14の中央部やや前寄りの位置に設けられている。フック38は、下カバー25の内面25a側に設けられている。係合穴39は、上カバー24の内面24a側に設けられている。連結部32の設置数及び設置位置は適宜変更可能である。連結部32は、本体筐体14の中央部以外、例えば外周縁部に用いられてもよい。
【0034】
次に、連結部32の具体的な構成例を説明する。
図4Aは、下カバー25に対するフック38の取付動作を示す分解斜視図である。
図4Bは、
図4Aに示す状態からフック38を下カバー25に取り付けた状態を示す斜視図である。
図5Aは、
図4Bに示すフック38の平面図である。
図5Bは、
図5A中のVB−VB線に沿う斜視断面図である。
図6は、フック38を係合穴39に係合させた状態を模式的に示す側面断面図であり、本体筐体14内のフック38及びその周辺部を拡大した図である。
【0035】
図4A及び
図4Bに示すように、フック38は、係合穴39に係合されることで、上カバー24と下カバー25とを連結するものである。本実施形態のフック38は、下カバー25に対して着脱可能に取り付けられると共に、下カバー25に対してフローティング可能に支持されている。下カバー25の内面25aには、フック38をフローティング状態で支持するフローティング支持部40が設けられている。
【0036】
図4A〜
図6に示すように、フック38は、ベース部42と、フック本体44とを有する。フック38は、例えば樹脂材料で形成されている。
【0037】
ベース部42は、円板部42aと、左右一対のベース爪部42b,42cとを有する。円板部42aは、薄い円板状の板部である。円板部42aに代えて、矩形や多角形等の板部を用いてもよい。円板部42aは、その上面の略中央部にフック本体44が突設されている。ベース爪部42b,42cは、互いに並んで設けられており、円板部42aの外周面から前方に向かって突出している。ベース爪部42b,42cは、互いに左右対称形状である。ベース爪部42b,42cの先端には、相手側とは反対側の側面に矢じり形状の返し(掛かり)が設けられている。
【0038】
図5B及び
図6に示すように、フック本体44は、基端部44aと、湾曲部44bと、先端部44cとを有し、側面視で略J字形状(鉤状)である。
【0039】
基端部44aは、円板部42aから上方に突出した棒状部分である。湾曲部44bは、基端部44aから連続し、基端部44aの突出方向から逆方向(下方)に折り返すように湾曲している。先端部44cは、湾曲部44bから連続し、円板部42aに向かって下方に延びた棒状部分である。つまり先端部44cは、基端部44aと平行に設けられ、その内側面が基端部44aの内側面と対向している。先端部44cは、基端部44aよりも長さが短く構成され、その先端が円板部42aから離間した位置にある。これによりフック本体44は、J字形状を成している。
【0040】
基端部44aは、先端部44c側とは反対側の外側面44dから突出した第1爪部46を有する。先端部44cは、基端部44a側とは反対側の外側面44eから突出した第2爪部47を有する。各爪部46,47は、フック38の返し(掛かり)となる部分であり、矢じり形状を成している。各爪部46,47は、それぞれ係合穴39内でその縁部39aに係止される。本実施形態のフック38は、突出片36と挿入穴37とで構成された連結部31側(前側)に第2爪部47が配置され、後側に第1爪部46が配置されている。ここで、第2爪部47の係止面47aは、後側を向いた第1爪部46の係止面46aよりも縁部39aに対する掛かり量が大きい。つまりフック38は、係止面47aの縁部39aに対する係止可能な範囲(掛かり量)が、係止面46aの縁部39aに対する係止可能な範囲(掛かり量)よりも大きい構造となっている。
【0041】
図4A〜
図5Bに示すように、フローティング支持部40は、フック38を下カバー25の内面25aに沿って移動可能に支持する部分である。フローティング支持部40は、左右一対の壁部40a,40bと、壁部40a,40bの上部に設けられた天板部40cとを有する。フローティング支持部40は、下カバー25と一体成形で構成されてもよいし、別体で構成されてもよい。
【0042】
各壁部40a,40bは、下カバー25の内面25aから突出しており、互いに左右対称形状である。各壁部40a,40bは、前後方向に沿って延在すると共に、互いの前端部が互いに近接する方向に屈曲している。これにより各壁部40a,40bは、それぞれ平面視で略ブーメラン形状を成している。つまり各壁部40a,40bは、後端部40dから前端部40eに向かって互いに平行し、前端部40e付近では互いが次第に接近している。このため、各壁部40a,40bの内壁面40f,40f間は、後端部40dでの間隔よりも前端部40eでの間隔が狭い。内壁面40f,40f間の間隔は、後端部40d付近ではフック38の円板部42aの外径よりも広く、前端部40e付近では円板部42aの外径よりも狭い。
【0043】
天板部40cは、平面視略U字形状のプレート状部分であり、壁部40a,40bの上部に一体に設けられている。天板部40cには、壁部40a,40bの内壁面40f,40f間よりも幅狭な溝部40gが形成されている。溝部40gは、後方が開口し、前方が閉じた開口部である。溝部40gの左右幅は、フック本体44の左右幅よりも広く、円板部42aの外径よりも狭い(
図5A参照)。また、下カバー25の内面25aと天板部40cとの間の上下方向の間隔は、円板部42aの最大厚みよりも多少大きい(
図6参照)。
【0044】
フック38をフローティング支持部40に取り付ける場合は、
図4A及び
図4Bに示すように、ベース爪部42b,42cを先頭として、円板部42aを壁部40a,40b間に後端部40d側から進入させる。円板部42aが壁部40a,40b間で突き当たるまで押し込まれると、ベース爪部42b,42cが前端部40e,40e間で押圧されて弾性変形する。最終的には、ベース爪部42b,42cの返しが前端部40eを乗り越えると、ベース爪部42b,42cがフローティング支持部40に係止され、抜け止めされる。その結果、フック38は、円板部42aが壁部40a,40bと天板部40cとで囲まれた部分に配置され、フック本体44が溝部40gから上方に突出した状態となる。
【0045】
この状態では、
図5Aに示すように、円板部42aの外周面と壁部40a,40bの内壁面40fとの間に、ある程度の左右方向の隙間GXが形成される。また、ベース爪部42b,42cの返しと、壁部40a,40bの内壁面40fとの間にも、ある程度の前後方向の隙間GYが形成される。さらに、
図6に示すように、円板部42aと、内面25a或いは天板部40cとの間には、僅かな上下方向の隙間GZが形成される。その結果、フック38は、内面25aに沿って前後方向及び左右方向に移動可能な状態でフローティング支持部40に支持される。なお、上下方向の隙間GZは、フローティング支持部40に支持された円板部42aの前後方向の移動と、左右方向の移動と、前後方向及び左右方向に平行する平面内での回転とを許容するための隙間である。つまり内面25aと天板部40cとの間は、円板部42aが上下方向に対しては実質的に移動不能な間隔に設定されている。これによりフック38が、上カバー24と下カバー25との連結方向である上下方向に対してがたつきを生じることを防止できる。また、フック38は、下カバー25に対して着脱可能であることで、仮に破損等した際、容易に交換することができる。
【0046】
図6に示すように、係合穴39は、上カバー24の内面24a側に設けられた円形の穴である。係合穴39は、挿入された爪部46,47を縁部39aによって係止することで、フック38を抜け止め可能な穴である。係合穴39は、円形以外であってもよい。但し、本実施形態のフック38は、フローティングするため、爪部46,47の位置が多少移動することがある。このため、係合穴39は、円形であると、爪部46,47の位置に関わらず、常にフック38を確実に係合させることができるため好ましい。
【0047】
係合穴39の縁部39aは、その開口側(開口縁部)に面取り形状のテーパ面39bを有する。テーパ面39bは、係合穴39の内径を係合穴39に対するフック38の係合方向(下から上に向かう方向)に向かって次第に縮小させた傾斜面である。テーパ面39bは、フック38の係合時、爪部46,47が円滑に縁部39aを乗り越えることを補助する。係合穴39の縁部39aは、その奥側には面取り部39cを有する。面取り部39cは、フック38を係合穴39から抜去する際の動作を円滑にするためのものである。但し、面取り部39cは、通常の係合時にフック38の脱落を防止しておく必要がある。このため、面取り部39cは、テーパ面39bよりも小さく、爪部46,47が容易には外れない大きさに設定されている。面取り部39cは省略されてもよい。
【0048】
次に、下カバー25の上カバー24に対する装着動作を説明する。この装着動作は、通常、本体筐体14の上下をひっくり返した状態で行う。
【0049】
先ず、
図3Bに示すように、下カバー25をその前端部を上カバー24側に傾けた傾斜姿勢とし、各突出片36を各挿入穴37に挿入する。続いて、下カバー25の後端部を
図3B中の破線の矢印で示すように上カバー24側へと近づける。そうすると、
図3Aに示すように、下カバー25が上カバー24上に全周で当接するまでの間に、フック38が係合穴39に係合し、下カバー25に形成された各ねじ34用の締結孔が各ボス部35に一致する。そこで、各ねじ34を各ボス部35に螺合させる。これにより下カバー25の上カバー24に対する装着動作が完了し、下カバー25が連結部30〜32を介して上カバー24と連結される。
【0050】
この装着動作時、例えば下カバー25や上カバー24の製造公差や製造誤差、或いは組付誤差等により、フック38が係合穴39の中心から多少ずれて配置されてしまう場合がある。この場合であっても、本実施形態のフック38は、フローティング支持部40を介して移動し、係合穴39に対して自動的にセンタリングされる。特に、本実施形態の係合穴39の縁部39aは、フック38の受入れ側の開口縁部にテーパ面39bを有する。このため、フック38は、各爪部46,47がテーパ面39bに摺接することで、より円滑にセンタリングされて係合穴39に導かれる。その結果、フック38は、湾曲部44bを介して先端部44cが弾性変形されつつ、爪部46,47が縁部39aを円滑に乗り越えるため、円滑に係合穴39に係合される(
図6参照)。なお、フック38は上記した形状以外、例えば従来から一般的に用いられているものであってもよい。すなわち、フック38が他の形状であっても、フローティング支持部40によるフローティング動作により、係合穴39に対する円滑な係合作用等は確保される。
【0051】
ところで、フック38は、爪部46,47の係止面46a,47aの大きさが異なっている。しかしながら、フック38は、フローティング支持部40によるセンタリング機能により、係合穴39に係合した直後にも再び係合穴39の中心に設定される。その結果、フック38が係合穴39に係合した状態では、各爪部46,47はその係止面46a,47aが係合穴39の縁部39aに確実に係止された状態となる。このため、仮に
図6に示す状態で下カバー25に下方への外力が付与された場合であっても、フック38が係合穴39から脱落することを抑制できる。しかもフック38は、1本の棒状部材を折り返した片持ち構造となっており、基端(根元)から先端までの突出長が可及的に長い構造となっている。このため、フック38は、例えば本体筐体14の落下等による大きな衝撃を受けた場合であっても、受ける応力が分散し、局所的な応力集中による破損が抑制されている。
【0052】
また、本実施形態のフック38は、
図5B及び
図6に示すように、円板部42aの上面の一部に膨出部42dを有する。膨出部42dは、円板部42aの上面の前端部を上方に突出させた台状の部分であり、円板部42aの板厚を一部のみ厚肉化している。フック38は、円板部42aの膨出部42d以外の一段低い部分に設けられている。これによりフック38は、フック本体44の突出長を可能な限り長く確保できている。また、フック38は、円板部42aの大部分が膨出部42dよりも薄いため、フローティング支持部40に対して容易に挿抜することができる。しかもフローティング支持部40では、内面25aと天板部40cとの間の高さ寸法は、膨出部42dの上面を支持可能であればよく、ある程度大きな寸法に構成できる。このため、フローティング支持部40は、金属製の下カバー25に対しても一層容易に成形できる。
【0053】
なお、当該電子機器用筐体10は、フローティング支持部40を省略してもよい。この場合、フック38は、下カバー25に固定された構造となる。しかしながら、本実施形態のフック38は、
図6に示すように基端部44a、湾曲部44b及び先端部44cを備えたJ字形状により、特に先端部44cが弾性変形する。このため、係合穴39に対する円滑に係合させることは可能である。しかもフック38は、上記したJ字形状による高い強度を有する。このため、フック38は、仮に係合穴39に係合させる際に位置ずれによって大きな負荷を受けた場合であっても容易に破損することがなく、円滑に係合穴39へと導くことができる。
【0054】
次に、下カバー25の上カバー24からの取外動作を説明する。
図7Aは、
図6に示す状態からフック38が持ち上げられて、第1爪部46が係合穴39の縁部39aを乗り越えた状態を示す側面断面図である。
図7Bは、
図7Aに示す状態からフック38がさらに持ち上げられて、第2爪部47も係合穴39の縁部39aを乗り越えた状態を示す側面断面図である。この取外動作についても、通常、本体筐体14の上下をひっくり返した状態で行う。
【0055】
先ず、全てのねじ34を取り外して連結部30の連結状態を解除する。続いて、
図3B中の実線の矢印で示すように、各突出片36と各挿入穴37とが連結された前縁部14fの連結部31を回動中心とし、下カバー25の後端部を持ち上げる。これによりフック38が係合穴39から抜去され、連結部32の係合状態が解除される。そこで、下カバー25を後方へと引き寄せつつ持ち上げることで、各突出片36を各挿入穴37から抜去する。これにより全ての連結部30〜32の連結状態が解除され、下カバー25の上カバー24からの取外動作が完了する。
【0056】
この取外動作時、フック38は、下カバー25の後端部を上カバー24から持ち上げる回動動作時に
図7Aに示すように前側の第2爪部47側に傾く。つまりフック38は、前側の第2爪部47が係合穴39の前側の縁部39aに当接した状態で、後側の第1爪部46が後側の縁部39aを押圧する方向の外力を受ける。このためフック38は、湾曲部44b及び先端部44cが弾性変形しつつ、先ず、第1爪部46が縁部39aを乗り越える(
図7A参照)。フック38は、さらに上記の外力を受けることで、今度は第2爪部47も縁部39aを乗り越える(
図7B参照)。その結果、フック38と係合穴39との係合状態が解除され、連結部32の連結状態が解除される。
【0057】
ところで、フック38は、下カバー25の取外動作時の回動支点となる突出片36側に、第1爪部46の第1係止面46aよりも掛かり量の大きな第2係止面47aを持った第2爪部47を配置している。このため、下カバー25の後端部を持ち上げた際、第1爪部46をより円滑に且つ軽い力で係合穴39から抜去することができる。第2爪部47を係合穴39から抜去する際は、既に片方の第1爪部46が抜去されているため、大きな掛かり量の第2爪部47であっても容易に抜去することができる。なお、連結部31が前縁部14f以外に設けられている場合、フック38は、第2爪部47がこの連結部31側に配置されるとよい。
【0058】
以上のように、本実施形態の電子機器用筐体10は、下カバー25の内面25a側から突出するように設けられ、下カバー25に対してフローティング可能な状態で支持されたフック38と、上カバー24の内面24a側に設けられ、フック38を係合可能な係合穴39とを備える。従って、当該電子機器用筐体10は、上カバー24と下カバー25とを連結する際、フック38はフローティング作用によって係合穴39に対してセンタリングされつつ、円滑に係合される。このため、当該電子機器用筐体10は、例えば下カバー25や上カバー24の製造公差や製造誤差、或いは組付誤差等の影響でフック38や係合穴39が所望の設計位置よりも位置ずれしている場合であっても、両者を円滑に係合することができる。このため、フック38及び係合穴39による連結部32は、当該電子機器用筐体10の中央部だけでなく、外周縁部等の各所に配置された場合であっても、上カバー24と下カバー25との間の円滑な連結動作に寄与する。
【0059】
また、本実施形態の電子機器用筐体10は、下カバー25の内面25a側から突出したフック38と、上カバー24の内面24a側に設けられ、フック38を係合可能な係合穴39とを備える。そして、フック38は、基端部44aと、湾曲部44bと、先端部44cと、第1爪部46と、第2爪部47と、を有する構成となっている。このため、フック38は、係合穴39への傾動時に円滑に弾性変形することができると共に、その突出長が最大化されることで高い強度が確保されている。従って、当該電子機器用筐体10は、フック38が下カバー25に対して一体的に固定されていた場合であっても、上記構成のフック38を用いることで、フック38と係合穴39とを円滑に係合することができる。
【0060】
特に当該電子機器用筐体10では、フック38と係合穴39による連結部32を筐体中央部付近に設けている。このため、当該電子機器用筐体10は、外周縁部よりも製造公差の積算等の影響が出易い筐体中央部付近であっても連結部32の連結を円滑に行うことができる。しかも筐体中央部付近で上カバー24と下カバー25との間が連結される。これにより下カバー25が下方に膨らむことを抑制でき、例えばバッテリ装置28等の電子部品と下カバー25との間に異物を挟み込むような不具合の発生も抑制できる。
【0061】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0062】
上記では、上カバー24に係合穴39を設け、下カバー25にフック38を設けた構成を例示した。しかしながら、上カバー24にフック38を設け、下カバー25に係合穴39を設けた構成としてもよい。但し、フック38は、下カバー25側に設けられていると、下カバー25の取外動作時に下カバー25を適宜移動させつつ、フック38を係合穴39から抜き取り易いという利点がある。また、例えばノート型PCの本体筐体14に用いた電子機器用筐体10では、通常、ユーザはキーボード装置22や基板27等が搭載された上カバー24から、下カバー25を取り外してメンテナンス等を行う。そこで、フック38は、下カバー25側に設けられていると、破損時等の交換も容易となる。
【0063】
上記では、ノート型PCの電子機器12に電子機器用筐体10を用いた構成を例示した。電子機器用筐体10は、ノート型PC以外、例えばタブレット型PCやスマートフォンに用いる場合、ディスプレイを設けた上カバー24と、その裏面を塞ぐ下カバー25とに、係合穴39及びフック38を設ければよい。