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特開2020-202289SiCエピタキシャルウェハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-202289(P2020-202289A)
(43)【公開日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】SiCエピタキシャルウェハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20201120BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20201120BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20201120BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20201120BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20201120BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   H01L21/205
   H01L21/66 J
   C23C16/42
   C23C16/02
   C30B29/36 A
   C30B25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-108114(P2019-108114)
(22)【出願日】2019年6月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】西原 禎孝
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
4M106
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB01
4G077BE08
4G077DB01
4G077ED06
4G077EE01
4G077EE04
4G077GA06
4G077GA10
4G077HA12
4G077TA04
4G077TK01
4G077TK04
4G077TK10
4K030AA06
4K030AA09
4K030BA37
4K030BB02
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA02
4K030DA03
4K030DA04
4K030FA10
4K030HA13
4K030LA12
4M106AA01
4M106BA05
4M106BA10
4M106CA38
4M106CA43
4M106DB08
4M106DB18
4M106DH32
4M106DH50
4M106DH55
4M106DJ38
5F045AB06
5F045AF02
5F045AF12
5F045BB12
5F045GB01
5F045GH02
5F045HA01
(57)【要約】
【課題】三角欠陥の形成を抑制することのできるSiCエピタキシャルウェハの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、SiC基板の主面を観察し、所定値以上の深さの傷または所定値以上の高さの突起または異物の有無を識別する観察工程と、前記観察工程で前記傷、前記突起または異物のいずれかがあると識別した場合に、前記SiC基板の主面を研磨する研磨工程と、前記SiC基板の主面上にSiCエピタキシャル層を形成する積層工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC基板の主面を観察し、所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起または異物の有無を識別する観察工程と、
前記観察工程で前記傷、前記突起または異物のいずれかがあると識別した場合に、前記SiC基板の主面を研磨する研磨工程と、
前記SiC基板の主面上にSiCエピタキシャル層を形成する積層工程と、を有する、SiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項2】
前記研磨工程を行った後、再度SiC基板の主面を観察し、所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起または異物の数を観察する再観察工程を有する、請求項1に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項3】
前記研磨工程は、チップ収率が90%以上となるように前記SiC基板の主面を研磨する、請求項1または2に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項4】
SiC基板を洗浄する洗浄工程と、
SiC基板の主面を観察し、所定値以上の高さの突起または異物の有無を識別する観察工程と、
前記観察工程で前記突起または異物があると識別した場合に、前記SiC基板を再度洗浄する再洗浄工程と、を有する、SiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項5】
前記再洗浄工程を行った後、再度SiC基板の主面を観察し、所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起または異物の数を観察する再観察工程を有する、請求項4に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項6】
前記再洗浄工程は、チップ収率が90%以上となるように前記SiC基板の主面を洗浄する、請求項4または5に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項7】
前記所定値は0.4μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項8】
前記観察工程を行う前に、SiC基板の主面を観察し、傷、突起または異物の大まかな位置を特定する予備観察工程を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCエピタキシャルウェハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きく、熱伝導率が3倍程度高い。そのため、炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。
【0003】
SiCデバイスの実用化の促進には、高品質のSiCエピタキシャルウェハ、及び高品質のエピタキシャル成長技術の確立が求められている。
【0004】
SiCエピタキシャルウェハには、種々の欠陥が存在する。SiCエピタキシャルウェハに存在する種々の欠陥は、品質悪化の要因となっている。種々の欠陥の中にはSiCデバイスの特性を劣化させるデバイスキラー欠陥がある。デバイスキラー欠陥には三角欠陥等がある。デバイスキラー欠陥は、SiCエピタキシャルウェハ上に存在するとその領域を使用することができなくなるため、歩留まりを低下させる大きな要因となっている。そのため、デバイスキラー欠陥の少ない高品質なSiCエピタキシャルウェハを製造する方法が検討されている。
【0005】
特許文献1には、SiCエピタキシャルウェハを製造するチャンバ内の部材の断面片がSiC基板の表面に落下すると三角欠陥が形成される場合があると記載されている。特許文献1に記載の発明は、チャンバ内に設置されるSiC基板と、シーリングとの間に遮蔽板を備えることでシーリングの部材がSiC基板上に落下することを抑制し、パーティクル起因の三角欠陥の形成を抑制すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6037671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、三角欠陥はエピタキシャル層の膜厚にもよるが、面積の大きなデバイスキラー欠陥であり、歩留まりを低下させる特に大きな要因である。
【0008】
そのため、パーティクル以外の要素が原因で形成される三角欠陥を抑制する方法が求められている。三角欠陥を形成する原因となるパーティクル以外の要素としては、例えばSiC基板の欠陥や傷等が挙げられる。しかしながら、SiC基板の欠陥や傷、パーティクルのスケールとSiCエピタキシャルウェハに形成される欠陥の種類との関係は分かっていない。SiC基板の欠陥や傷、パーティクルのうち三角欠陥となるものを識別し、三角欠陥となることを抑制することが求められている。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、三角欠陥の形成を抑制することのできるSiCエピタキシャルウェハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、SiC基板上に存在する0.4μm以上の深さ、または高さの傷、突起及び異物は、SiCエピタキシャル層を形成する際に三角欠陥形成の起点となることを見出した。
すなわち、本発明は上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
【0011】
(1)本発明の第1の態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、SiC基板の主面を観察し、所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起または異物の有無を識別する観察工程と、前記観察工程で前記傷、前記突起または異物のいずれかがあると識別した場合に、前記SiC基板の主面を研磨する研磨工程と、前記SiC基板の主面上にSiCエピタキシャル層を形成する積層工程と、を有する。
【0012】
(2)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、前記研磨工程を行った後、再度SiC基板の主面を観察し、所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起及び異物の数を観察する再観察工程を有していてもよい。
【0013】
(3)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法において、前記研磨工程は、チップ収率が90%以上となるように前記SiC基板の主面を研磨してもよい。
【0014】
(4)本発明の第2の態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、SiC基板を洗浄する洗浄工程と、SiC基板の主面を観察し、所定値以上の高さの突起または異物の有無を識別する観察工程と、前記観察工程で前記突起または異物があると識別した場合に、前記SiC基板を再度洗浄する再洗浄工程と、を有する。
【0015】
(5)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、前記再洗浄工程を行った後、再度SiC基板の主面を観察し、所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起または異物の数を観察する再観察工程を有していてもよい。
【0016】
(6)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法において、前記再洗浄工程は、チップ収率が90%以上となるように前記SiC基板の主面を洗浄してもよい。
【0017】
(7)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法において、前記所定値は0.4μmであってもよい。
【0018】
(8)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法において、前記観察工程を行う前に、SiC基板の主面を観察し、傷、突起または異物の大まかな位置を特定する予備観察工程を有していてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法によれば、三角欠陥の形成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法により製造することのできるSiCエピタキシャルウェハを概略的に示す斜視図である。
図2】主面上に円形の傷を有するSiC基板のSICA像である。
図3図2に示すSiC基板の主面上にSiCエピタキシャル層を積層したSiCエピタキシャルウェハのSICA像である。
図4】SiCエピタキシャルウェハの欠陥を拡大したSICA像である。
図5】SiC基板表面をSICAでラフネスマッピングした結果の一例である。
図6】SiC基板をレーザー顕微鏡で測定した結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一態様に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
<SiCエピタキシャルウェハの製造方法>(第1実施形態)
第1の実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、SiC基板の主面を観察し、所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起または異物の有無を識別する観察工程と、前記観察工程で所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起または異物があると識別した場合に、前記SiC基板の主面を研磨する研磨工程と、前記SiC基板の主面上にSiCエピタキシャル層を形成する積層工程と、を有する。
【0023】
図1は、本実施形態にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法により製造されるSiCエピタキシャルウェハ100の斜視図である。SiCエピタキシャルウェハ100は、SiC基板1とSiCエピタキシャル層2とを有する。SiC基板1は、昇華法等により作製されたSiC単結晶をスライスすること等により得られる。SiCエピタキシャル層2は、積層工程によりSiC基板1上に形成された層である。本明細書において、SiC基板1はエピタキシャル層2を形成されていないウェハを意味し、SiCエピタキシャルウェハ100はSiCエピタキシャル層2が形成されているウェハを意味する。
【0024】
以下、本明細書において、SiCエピタキシャルウェハ100の厚み方向をz方向といい、SiCエピタキシャルウェハ100の主面に平行な平面をxy平面といい、xy平面の方向のうち、z方向に垂直な一方向をx方向といい、x方向及びz方向に垂直な方向をy方向という場合がある。
【0025】
<観察工程>
観察工程は、SiC基板の主面を観察し、所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起または異物の有無を識別する工程である。すなわち、所定値以上の深さの傷の有無だけを識別してもよく、所定値以上の高さの突起の有無のみを識別してもよく、所定値以上の高さの異物の有無のみを識別してもよい。識別する対象を少なくすることで、観察を簡便に行うことができ、スループットを向上することができる。また、所定値以上の深さの傷と、所定値以上の高さの突起と、所定値以上の高さの異物と、の任意の組み合わせのいずれか2つの有無を識別することが、NGチップを低減する観点から好ましい。より好ましくは、所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起及び異物の有無を識別する。観察工程にて観察するSiC基板1は、この例に限らず公知のSiC基板を用いることができるが、例えばオフ角を有し、0.4°以上、8°以下のものであることが好ましい。典型的には、オフ角4°のものを用いることができる。SiC基板1の厚さは特に限定するものではないが、例えば、150μm以上550μm以下のものを用いることが好ましい。より好ましくは300μm以上400μm以下のものを用いることができる。SiC基板1のサイズとしては特に限定するものではないが、例えば、3インチ〜6インチのものを用いることができる。尚、SiC基板1は観察工程を行う前に洗浄されていてもよい。
【0026】
深さが0.4μm以上の傷は、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK−9710)と同様の原理の装置を用いて傷の深さを観察することができる。
本明細書において「傷の深さ」とは、レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製のVK−9710)を用いて、深さ方向プロファイルを得て、そのプロファイルにおいて、SiCエピタキシャルウェハの表面から最深部までの深さを意味する。観察工程では、深さが0.4μm以上の傷の有無を観察する。尚、観察工程でSiC基板1上における有無を識別する傷は、深さが0.4μm以上の傷であれば任意の形状の傷であるが、幅が4μm以上20μm以下の傷で、結晶方位に寄らないものであることが好ましい。傷の形状としては、例えば円形や、線形の傷等が挙げられる。ここでいう幅とは、傷の短手方向の最小値である。
【0027】
高さが0.4μm以上の突起及び異物もレーザー顕微鏡により突起または異物の高さを観察することができる。
本明細書において「突起の高さ」、「異物の高さ」とは、それぞれレーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製のVK−9710)を用いて、高さ方向プロファイルを得て、そのプロファイルにおいて、SiCエピタキシャルウェハの表面から突起または異物の最高点までの高さを意味する。観察工程では、高さが0.4μm以上の突起または異物の有無を観察する。尚、観察工程でSiC基板1上における有無を識別する突起または異物は、高さが0.4μm以上の突起または異物であれば任意の形状であるが、幅が4μm以上20μm以下の突起または異物であることが好ましい。突起及び異物は結晶方位に寄らないことが好ましい。結晶方位に寄らないとは、突起の形成方向、異物の所在方向がSiC基板1の結晶方位に寄らないことをいう。突起の形状も異物の形状も任意の形状であるが、突起は例えば円形や、線形の突起等が挙げられる。ここでいう幅とは、突起、異物の短手方向の最小値である。
【0028】
SiC基板1の主面上の0.4μm以上の突起または異物のうち、パーティクルはSiC基板上にSiCエピタキシャル層を積層すると三角欠陥を形成する恐れのある欠陥である。
【0029】
図2は、SiC基板1の上面を共焦点顕微鏡とフォトルミネッセンス(PL)観察機能を併設した検査装置(レーザーテック株式会社製、SICA88)で観察して得られた顕微鏡像(以下、SICA像ということがある)である。図2に示すSiC基板1は、主面上に2つの傷A、Bを有する。傷Aは深さが0.4μm以上の傷であり、傷Bは、深さが0.4μm未満の傷である。
【0030】
図3は、図2に示すSiC基板1上にSiCエピタキシャル層を積層したSiCエピタキシャルウェハの上面のSICA像である。深さが0.4μm以上の傷Aの周辺には傷Aを起点とした三角欠陥が形成されており、深さが0.4μm未満の傷Bの周辺には三角欠陥が形成されていない。
【0031】
また、図4(a)〜(d)は同一のSiCエピタキシャルウェハ100のSICA像であり、図4(a)〜(d)に示すSiCエピタキシャルウェハ100は、傷A、C、D、E、欠陥F、Gを有する。欠陥F、GはそれぞれSiC基板1に存在していた傷A、Eを起点に成長している。図6は、図4(d)の傷EをSICAで観察した結果である。傷Eは、深さが0.44μmであり、幅が4.5μmであった。傷Eと同様に傷A、C、Dの深さを測定したところ傷Cの深さは0.27μmであり、図傷Dの深さは0.38μmであり、傷Aの深さは0.44μmであった。SiCエピタキシャル層を積層すると、傷Aおよび傷Eは、SiCエピタキシャル層2が形成されることでこの傷を起点として三角欠陥F、Gが形成された。
【0032】
SiC基板1の主面上に深さが0.4μm未満の傷および高さが0.4μm未満の突起及び異物は、SiCエピタキシャル層2を積層した場合でも三角欠陥を形成しない。一方、SiC基板1の主面上に深さが0.4μm以上の傷および高さが0.4μm以上の突起、異物は、SiCエピタキシャル層を積層時に三角欠陥を形成する恐れがある。そのため、所定値は0.4μmとすることが好ましい。
【0033】
尚、観察工程は、傷、突起または異物の大まかな位置を特定した後に実施することが望ましい。大まかな位置の決定には、傷または突起、異物を検知することができる任意の装置を用いることができる。好ましくは、共焦点顕微鏡とフォトルミネッセンス(PL)観察機能を併設した検査装置(レーザーテック株式会社製、SICA88(以下、SICAという場合がある)と同様の原理の装置)に併設されている共焦点顕微鏡顕微鏡(と同様の原理の装置)を用いることができる。図5(a)はSICAに併設されている共焦点顕微鏡によりSiCエピタキシャルウェハをラフネスマッピングした画像である。図5(b)は図5(a)における領域Xの拡大図である。図5(a)、(b)における白色部はRq値が0.5nmを超える場所である。本実施形態に係る観察工程は、図5(a)、(b)に示されるSiCエピタキシャルウェハをラフネスマッピングした画像に存在する白色部のような傷または突起、異物と考えられる領域の大まかな位置を特定した後行われることが好ましい。
図5(c)は、図5(b)で拡大された部分の共焦点顕微鏡像である。図5(c)は、図5(b)と同倍率の像である。傷、突起または異物と考えられるものの大まかな位置を特定した後、図5(c)に見られる傷、突起または異物と考えられるものについて、観察工程により形状を詳細に調査する。調査した部分に深さが0.4μm以上の傷、高さが0.4μm以上の突起または異物のいずれかがあると識別した場合、SiC基板1の主面を研磨する。傷、突起または異物と考えられるものの位置を特定してから、特定した位置の深さまたは高さの測定をすることで、効率的に所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起及び異物を特定することができる。
また、観察工程によりSiCエピタキシャル層を積層後に三角欠陥が形成される位置を大まかに特定することができる。すなわちチップ収率を予測することができる。
【0034】
観察工程でSiC基板1の主面上に深さが所定値以上の傷、高さが所定値以上の突起または異物のいずれかがあると識別した場合、研磨工程を行う。研磨工程は、SiC基板1の主面を研磨する工程であり、SiC基板1の表面から深さ0.4μm以上の傷、高さ0.4μm以上の突起および異物を低減するように研磨する。チップ収率が80%以上となるように研磨することができ、好ましくはチップ収率が90%以上となるように研磨し、より好ましくはSiC基板1の主面上から深さ0.4μm以上の傷、高さ0.4μm以上の突起および異物がSiC基板1の主面上からなくなるように研磨する。
【0035】
研磨工程は、SiC基板1の主面全体または主面の一部を研磨することができる。SiC基板1の一部を研磨する場合、観察工程で識別した、深さが0.4μm以上の傷、高さ0.4μm以上の突起および異物の位置に基づいて研磨する部分を決定する。
【0036】
研磨工程は、SiC基板1の主面を研磨する公知の方法を行うことができる。この例に限定されず研磨する方法は任意に選択することができるが、例えばラップと呼ばれる粗研磨、ポリッシュとよばれる精密研磨、さらに超精密研磨である化学的機械研磨(以下、CMPという)など複数の研磨工程が含まれる研磨方法を行うことができる。この研磨方法を行う場合、例えば以下の条件で行うことができる。CMP前の機械研磨において加工圧力を350g/cm以下にし、直径5μm以下の砥粒を用いることによって、格子の歪みを抑えておくのが好ましく、さらにCMPにおいては、研磨スラリーとして平均粒子径が10nm〜150nmの研磨材粒子及び無機酸を含み、20℃におけるpHが2未満であるのが好ましく、研磨材粒子がシリカであって、1質量%から30質量%含むのがさらに好ましく、無機酸が塩酸、硝酸、燐酸、硫酸のうちの少なくとも1種類であるのがより好ましい。
【0037】
SiC基板1を研磨する際の加工圧力や研磨する時間や温度、研磨剤粒子や無機酸の種類、研磨スラリーの平均粒子径等は、傷や突起及び異物の大きさや数、求めるチップ収率等に応じて、任意に選択することができる。尚、過剰な強さで研磨することは、SiC基板1の破損や傷の増加を招く恐れがあり好ましくないため上述の範囲とする。
研磨工程によりSiC基板1の深さ0.4μm以上の傷、高さ0.4μm以上の突起または異物を低減することができる。例えば、深さが0.4μm以上の傷のみが存在していた場合、深さが0.4μm以上の傷の低減したSiC基板1を提供することができる。また、高さが0.4μm以上の傷のみが存在していた場合、高さが0.4μm以上の傷の低減したSiC基板1を提供することができる。また、深さが0.4μm以上の傷、高さが0.4μm以上の突起および異物が存在した場合、研磨工程により深さが0.4μm以上の傷、高さが0.4μm以上の突起および異物の何れも低減したSiC基板1を提供することができる。
【0038】
研磨工程を行った後、再度観察工程を行うことができる。再度観察工程を行うことで、研磨工程後のSiC基板1の主面上の突起、異物や傷の大きさや数を再度観察し、チップ収率を予想することができる。また、深さ0.4μm以上の傷や高さ0.4μm以上の突起、異物の大きさや数、チップ収率に応じて再度研磨工程を行うことができる。尚、ここでの観察工程は、深さ0.4μm以上の傷、高さ0.4μm以上の突起、または異物が1つでもあれば再度研磨工程を行うものに限定されず、所望のチップ収率等に応じて再度研磨工程を行うかどうか任意に選択することができる。例えば、チップ収率が90%未満や95%未満であった場合に再度研磨工程を行うことができる。
【0039】
研磨工程により深さ0.4μm以上の傷、高さ0.4μm以上の突起または異物を低減したSiC基板1は、積層工程によりSiCエピタキシャル層2が形成される。
積層工程は、SiC基板1の主面上にSiCエピタキシャル層2を積層する工程である。SiCエピタキシャル層2の積層は、公知の方法で行うことができる。例えば、化学気相成長(CVD)法等によりSiC基板1の主面上にステップフロー成長(原子ステップから横方向に成長)してSiCエピタキシャル層2を積層し、SiCエピタキシャルウェハ100を得ることができる。
【0040】
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、所定値以上の深さの傷、所定値以上の高さの突起または異物を有するSiC基板を研磨してからSiCエピタキシャル層を積層することで、SiC基板1を平坦にすることができ、三角欠陥の形成を抑制することができる。
【0041】
(第2実施形態)
第2の実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、SiC基板を洗浄する洗浄工程と、SiC基板の主面を観察し、所定値以上の高さの突起または異物の有無を識別する観察工程と、前記観察工程で所定値以上の大きさの突起または異物があると識別した場合に、前記SiC基板を再度洗浄する再洗浄工程と、を有する。
【0042】
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、観察工程を行う前にSiC基板1を洗浄する洗浄工程を有する。SiC基板1の洗浄は、公知の方法で行うことができる。例えば、RCA洗浄や超音波洗浄等によりSiC基板1の洗浄を行うことができる。尚、ここでいうRCA洗浄とは、Siウェハに対して一般的に用いられている湿式洗浄方法である。RCA洗浄は、硫酸・アンモニア・塩酸と過酸化水素水を混合した溶液ならびにフッ化水素酸水溶液を用いる。洗浄工程により基板表面の突起の平坦化や異物の除去をすることができる。
【0043】
本実施形態に係る観察工程は、SiC基板1の主面上を観察し、第1実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法の観察工程で識別する欠陥のうち高さが0.4μm以上の突起または異物の有無を識別する。好ましくは、高さが0.4μm以上の突起及び異物の有無を識別する。その他の構成は、第1実施形態に係る観察工程と同様とすることができる。
【0044】
観察工程でSiC基板1の主面上に所定値以上の高さの突起または異物が有ると識別した場合、再洗浄工程を行う。再洗浄工程は、SiC基板1を再度洗浄する工程である。SiC基板1を洗浄する方法は、公知の方法とすることができる。例えば、超音波洗浄、洗浄槽の薬液のオーバーフロー循環、フィルタでのパーティクル除去等により、SiC基板1上に存在していた高さが0.4μm以上の突起または異物を所望の範囲に調整することができる。再洗浄工程は、傷、突起または異物の大きさや数、求めるチップ収率等に応じて時間、薬液の種類、超音波印加時間、周波数、フィルタの孔径等を任意に選択することができる。
例えば、用いることのできる薬液は、無機酸、無機アルカリ、有機酸、有機アルカリ等であり、超音波洗浄を行う周波数は20kHz以上2MHz以下、超音波洗浄を行う時間は1分以上30分以下とすることができ、フィルタの孔径は、50nm以上5μm以下とすることができる。好ましくはチップ収率が80%以上となるように再洗浄工程を行い、チップ収率が90%以上となるように行うことがより好ましい。
【0045】
再洗浄工程を行った後、再度観察工程を行うことができる。再度観察工程を行うことで、研磨工程後のSiC基板1の主面上の突起および異物や傷の大きさや数を再度観察し、チップ収率を予想することができる。また、深さ0.4μm以上の傷、高さ0.4μm以上の突起または異物の大きさや数、チップ収率に応じて再度研磨工程を行うことができる。尚、ここでの観察工程は、深さ0.4μm以上の傷、高さ0.4μm以上の突起または異物が1つでもあれば再度再洗浄工程を行うものに限定されず、所望のチップ収率等に応じて再度再洗浄工程を行うかどうか任意に選択することができる。例えば、チップ収率が90%未満や95%未満であった場合に再度研磨工程を行うことができる。
【0046】
再洗浄工程により高さ0.4μm以上の突起および異物を低減したSiC基板1は、積層工程によりSiCエピタキシャル層2が形成される。本実施形態に係る積層工程は、第1実施形態に係る積層工程と同様の操作によりSiC基板1の主面上にSiCエピタキシャル層2を積層することができる。
【0047】
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、所定値以上の高さの突起または異物を有するSiC基板1にSiCエピタキシャル層を積層する前に再洗浄工程を行うことで、所定値以上の高さの突起および異物を低減し、三角欠陥の形成を抑制したSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 SiC基板
2 SiCエピタキシャル層
100 SiCエピタキシャルウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6