【解決手段】貫通電極4Aを有する第1半導体基板3Aと、貫通電極4Bを有する第2半導体基板3Bとが積層されている多層基板1Aであって、多層基板1Aの平面視において貫通電極4A、4Bが対向する位置に導電粒子11が選択的に配置されている。対向する第1半導体基板3Aの貫通電極4Aと第2半導体基板3Bの貫通電極4Bが導電粒子11により接続され、第1半導体基板3Aと第2半導体基板3Bが絶縁接着剤12により接着している。
第1半導体基板と第2半導体基板の間で、対向する貫通電極に捕捉されていない導電粒子の数が第1半導体基板と第2半導体基板の間に存在する導電粒子の総数の5%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の多層基板。
多層基板の最外層にヒートシンクを有し、ヒートシンクと、導電粒子で接続されることにより多層基板の積層方向に繋がった貫通電極とが接続している請求項1〜4のいずれかに記載の多層基板。
半導体基板に形成された貫通電極同士を対向させて接合する多層基板の製造方法であって、貫通電極が対向する部分の多層基板の平面視における位置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置された異方導電性フィルムを、貫通電極を有する半導体基板同士の間に挟み、該異方導電性フィルムを加熱加圧することによりこれら半導体基板を異方導電性接続する多層基板の製造方法。
貫通電極を有する第1半導体基板と、貫通電極を有する第2半導体基板を、それらの貫通電極同士を対向させて接合する多層基板の製造方法であって、第1半導体基板と第2半導体基板との間に、貫通電極の配置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置された異方導電性フィルムを挟み、該異方導電性フィルムを加熱加圧することにより第1半導体基板と第2半導体基板を異方導電性接続する請求項6記載の多層基板の製造方法。
貫通電極を有する第3半導体基板を第2半導体基板に積層し、第1半導体基板の貫通電極と異方導電性接続した第2半導体基板の貫通電極と、第3半導体基板の貫通電極との間に、貫通電極の配置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置された異方導電性フィルムを挟み、該異方導電性フィルムを加熱加圧することにより第2半導体基板と第3半導体基板を異方導電性接続する請求項6又は7記載の多層基板の製造方法。
絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、異方導電性フィルムで接続する貫通電極の配置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置されている異方導電性フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、個々の半導体基板の貫通電極にバンプを形成し、対向する半導体基板の貫通電極をハンダのリフローにより接続し、半導体基板を積層していく方法は製造工程が煩雑である。
【0006】
対向する貫通電極を、異方導電性フィルムを使用して接続し、半導体基板を積層していく方法では、多層基板の製造工程を簡略化することができるが、異方導電性フィルムが絶縁接着剤層に導電粒子をランダムに分散させたものであるため、対向する半導体基板の貫通電極間に異方導電性フィルムの導電粒子が十分に挟まれない場合があることにより導通特性がばらつくという問題がある。一方で、貫通電極の接続に寄与しない導電粒子が、対向する半導体基板間に多数存在することにより、無用な導電粒子にコストがかかるという問題もあった。
【0007】
そこで、異方導電性フィルムを用いて半導体基板を積層し、導通特性に優れた多層基板を簡便な製造工程で低コストに提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、異方導電性フィルムを用いて半導体基板を積層し多層基板を製造するにあたり、異方導電性フィルムの絶縁接着剤中の導電粒子を、半導体基板の貫通電極の配置に対応して選択的に配置すると、対向する半導体基板の貫通電極を導電粒子で確実に接続することができ、また、接続に寄与しない導電粒子数を低減させて多層基板の製造コストを下げられることを見出し、本発明を想到した。
【0009】
即ち、本発明は、貫通電極を有する半導体基板が積層されている多層基板であって、
多層基板の平面視において、貫通電極が対向する位置に導電粒子が選択的に存在し、
対向する貫通電極が導電粒子により接続され、該貫通電極が形成されている半導体基板同士が絶縁接着剤により接着している接続構造を有する多層基板を提供する。
【0010】
特に、この多層基板として、貫通電極を有する第1半導体基板と、貫通電極を有する第2半導体基板とが積層されている多層基板であって、
第1半導体基板の貫通電極と第2半導体基板の貫通電極が対向し、それらの間に選択的に配置された導電粒子により接続され、
第1半導体基板と第2半導体基板が絶縁接着剤により接着している接続構造を有する態様を提供する。
【0011】
また、本発明は、半導体基板に形成された貫通電極同士を対向させて接合する多層基板の製造方法であって、貫通電極が対向する部分の多層基板の平面視における位置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置された異方導電性フィルムを、貫通電極を有する半導体基板同士の間に挟み、該異方導電性フィルムを加熱加圧することによりこれら半導体基板を異方導電性接続する多層基板の製造方法を提供する。
【0012】
特に、この多層基板の製造方法として、貫通電極を有する第1半導体基板と、貫通電極を有する第2半導体基板を、それらの貫通電極同士を対向させて接合する多層基板の製造方法であって、第1半導体基板と第2半導体基板との間に、貫通電極の配置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置された異方導電性フィルムを挟み、該異方導電性フィルムを加熱加圧することにより第1半導体基板と第2半導体基板を異方導電性接続する態様を提供する。
【0013】
さらに、本発明は上述の多層基板の製造方法に使用する異方導電性フィルムとして、絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、異方導電性フィルムで接続する貫通電極の配置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置されている異方導電性フィルムを提供する。
【0014】
また、上述の多層基板の製造方法に有用な異方導電性フィルムとして、絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、2個以上の導電粒子が近接している導電粒子ユニットが形成されており、
該導電粒子ユニットにおいて、任意の導電粒子と、該導電粒子に最近接している導電粒子との距離が導電粒子径の0.2〜0.5倍である異方導電性フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多層基板によれば、半導体基板の貫通電極同士が導電粒子により確実に接続されているので導通特性が安定し、接続に寄与しない導電粒子が半導体基板間で低減しているので多層基板の製造コストが抑制される。また、同様の理由で、計装工数の削減にも効果がある。
【0016】
本発明の多層基板は、導電粒子が特定の位置に選択的に配置された異方導電性フィルムの使用により、簡便な工程で製造することができる。
【0017】
特に本発明の方法によって半導体基板が3つ以上積層されている多層基板を製造する場合に、積層する半導体基板間に、共通する異方導電性フィルムを使用すると、多層基板のトータルの製造コストを大きく削減することができる。したがって、本発明の多層基板を低価格で提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0020】
<多層基板における接続構造>
図1は、本発明の一実施態様の多層基板1Aの断面図である。
この多層基板1Aは、配線基板2に3層の半導体基板3A、3B、3Cが積層されたものであり、各半導体基板3A、3B、3Cは、IC等の半導体部品が形成された半導体ウエハである。配線基板2には貫通電極4Xが形成され、各半導体基板3A、3B、3Cには貫通電極4A、4B、4Cが形成されている。そして、配線基板2の表面で貫通電極4Xが露出する部分や、貫通電極4A、4B、4Cが半導体基板の表面に露出する部分には、それぞれ電極パッドが形成されている。なお、本発明において半導体基板3A、3B、3Cとしては、半導体チップを使用してもよい。また、本発明において、多層基板を構成する半導体基板の積層数に特に制限はない。
【0021】
多層基板1Aには、配線基板2の貫通電極4Xと第1半導体基板3Aの貫通電極4Aとが対向し、これら貫通電極4X、4Aが、これらの間に選択的に配置された導電粒子11により電気的に接続されている接続構造がある。また、第1半導体基板3Aの貫通電極4Aと第2半導体基板3Bの貫通電極4Bが対向し、これら貫通電極4A、4Bが、これらの間に選択的に配置された導電粒子11により電気的に接続されている接続構造がある。
【0022】
この接続構造において、貫通電極4A、4Bの対向する部位に導電粒子11が選択的に配置されたとは、導電粒子11がもっぱら貫通電極4A、4Bの対向面又はその近傍に存在し、貫通電極4A、4Bの対向面で1個以上の導電粒子11が捕捉されていることをいう。貫通電極4A、4Bの対向面における捕捉数は、1〜数個がコストの上では好ましい。異方導電性フィルムを用いて貫通電極4A、4Bの対向面に複数個の導電粒子を配置する場合、半導体基板3A、3Bと導電粒子11との位置合わせの精度を緩和することができる。一方、導通安定性の上からは貫通電極4A、4Bの対向面における捕捉数を10個以上とすることが好ましい。異方導電性フィルムを用いて貫通電極4A、4Bの対向面に導電粒子を配置する場合に、より安定して導電粒子が捕捉されるようにするため、異方導電性フィルムの対応する箇所には、貫通電極4A、4Bの対向面で捕捉させようとする所期の導電粒子数の等倍から数倍の導電粒子を配置してもよい。このようにすることで、位置あわせの精度を緩和させることができ、且つ半導体基板の製造に要する時間を削減する効果も期待できる。
【0023】
第1半導体基板3Aと第2半導体基板3Bの対向面同士は絶縁接着剤12により接着されている。絶縁接着剤12は、後述する異方導電性フィルム10Aの絶縁接着剤層から形成される。
【0024】
第1半導体基板3Aの貫通電極4Aと接続した第2半導体基板3Bの貫通電極4Bは、第3半導体基板3C側において、第3半導体基板3Cの貫通電極4Cとも対向しており、それらの間に選択的に配置された導電粒子11により第2半導体基板3Bの貫通電極4Bと第3半導体基板3Cの貫通電極4Cとが電気的に接続されている。この第2半導体基板3Bと第3半導体基板3Cの対向面同士も絶縁接着剤12により接着されている。
【0025】
このように、多層基板1Aは、配線基板2の貫通電極4Xと、3層の半導体基板の貫通電極4A、4B、4Cが多層基板の積層方向に直線状に繋がった接続構造を有する。この直線状に繋がった接続構造によれば電気伝送の経路が短くなるので、伝送速度を向上させることができる。
【0026】
<多層基板における導電粒子>
多層基板1Aは、後述するように多層基板を構成する各層を、導電粒子が特定の配置を有する本発明の異方導電性フィルムを用いて接続することにより製造される。異方導電性フィルムにおける導電粒子11の粒子径の大きさは、通常、貫通電極4A、4Bの対向面の径よりも小さいが、多層基板1Aでは、導電粒子11が当初の形状から潰れていることにより粒子径の大きさは、貫通電極4A、4Bの対向面の径と同程度となってもよい。これは、潰れた導電粒子11が貫通電極4A、4Bの対向面内に収まっていてもよく、外周部の少なくとも一部が、貫通電極4A、4Bの対向面からはみ出た状態でもよいことを意味する。なお、導電粒子11の構成素材にもよるが、導電粒子11は、多層基板1Aにおいても粒子形状を維持している場合がある。
【0027】
多層基板1Aの第1半導体基板3Aと第2半導体基板3Bの間では、上述のように貫通電極4A、4Bの対向する部位に導電粒子11が選択的に存在し、殆どの導電粒子11が対向する貫通電極4A、4Bに捕捉されている。このため、対向する貫通電極4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11が存在するとしても、そのような導電粒子11の数は、第1半導体基板3Aと第2半導体基板3Bの間に存在する導電粒子の総数の好ましくは5%以下、より好ましくは0.5%以下である。特に導電粒子11の略すべてが貫通電極4A、4Bで捕捉されているようにすることが好ましい。多層基板1Aを構成するその他の半導体基板間においても同様である。このように貫通電極4A、4B、4Cの接続に寄与しない導電粒子11を低減させることにより、性能をシミュレーション解析しやすくなり、改善工数を削減することができる。
【0028】
<配線基板>
ここで、多層基板1Aを構成する配線基板2としては、FR4等のガラスエポキシ基板等を使用することができる。配線基板2として、ICチップもしくはIC形成用のシリコンウェーハーを用いてもよい。配線基板2は、多層基板1Aの用途等に応じて適宜選択される。
配線基板2の電極部分には、必要に応じてハンダボール5が設けられる。
【0029】
<半導体基板>
半導体基板3A、3B、3Cとしては、貫通電極4A、4B、4Cを有するものであれば特に制限は無く、例えば、シリコン等一般的半導体材料を使用することができる。
【0030】
貫通電極4A、4B、4Cの仕様は適宜設定することができる。例えば、貫通電極4A、4B、4Cは、電極パッドを備えたものでも、バンプを備えたものでもよい。ただし、半導体基板3A、3B、3Cを積層した場合に、各半導体基板3A、3B、3Cの貫通電極4A、4B、4Cが多層基板1Aの厚み方向に少なくとも2層の半導体基板にわたって直線状に繋がるように、好ましくは多層基板1Aの表裏に渡って直線状に繋がるように配置されているものを使用する。
【0031】
<搭載部品>
本発明の多層基板には、必要に応じて種々の部品を搭載することができる。
例えば
図2に示す多層基板1Bは、各層の貫通電極4X、4A、4B、4Cが直線状に繋がった接続構造を有し、最外層には貫通電極4Cに接続した放熱用のヒートシンク6を有する。したがって、多層基板1Bは、配線基板2や半導体基板3A、3B、3Cに形成されたIC等の電子部品等から放出される熱をヒートシンク6により効率的に放熱することが可能となる。
【0032】
<多層基板の製造方法>
本発明の多層基板の製造方法としては、例えば、
図2の多層基板1Bの場合、まず、
図3Aに示すように、貫通電極4Xを有する配線基板2と貫通電極4Aを有する半導体基板3Aとの間に、接続すべき貫通電極4X、4Aの配置に対応して導電粒子11が絶縁接着剤層12に選択的に配置された本発明の異方導電性フィルム10Aを挟み、異方導電性フィルム10Aを加熱加圧することにより配線基板2と第1半導体基板3Aを異方導電性接続し、
図3Bに示す2層の接続構造体を得る。より具体的には、配線基板2と異方導電性フィルム10Aを、接続すべき貫通電極4Xと導電粒子11の配置が合うように位置合わせして重ね、さらに第1半導体基板3Aも同様に位置合わせして重ね合わせ、加熱加圧してこれらを異方導電性接続する。
【0033】
同様にして、
図3Cに示すように、第1半導体基板3Aと異方導電性フィルム10Bを位置合わせして重ね、その上に第2半導体基板3Bを位置合わせして重ね、加熱加圧して異方導電性接続し、
図3Dに示す3層の接続構造を得る。さらに同様にして第2半導体基板3Bの上に異方導電性フィルムと第3半導体基板3Cを位置合わせして重ね、加熱加圧する。この位置合わせは、異方性導電フィルムの貫通電極に対応する導電粒子(後述するように導電粒子ユニットが形成されている場合には、その導電粒子ユニットを構成する導電粒子)と、貫通電極とをCCDなどを用いて観測し、それらを重ね合わせることにより行ってもよい。
【0034】
その後、第3半導体基板3C上にヒートシンク6を熱伝導性テープ等により接続し、配線基板2の電極パッドにハンダボール5を形成し、常法により多層基板1Bを得る。あるいは、ハンダボール5に代えて導電粒子を設けてもよい。
【0035】
なお、配線基板2又は半導体基板3A、3B、3Cと異方導電性フィルム10A、10Bとの位置合わせの方法としては、配線基板2、半導体基板3A、3B、3C及び異方導電性フィルム10A、10Bに、それぞれアライメントマークをつけておき、それらのアライメントマークを合わせることにより位置合わせを行うこともできる。
【0036】
即ち、従来、半導体基板を積層して多層基板を製造する場合、半導体基板には一例として数十μm〜数百μmの大きさのアライメントマークが形成され、CCD又はレーザーを用いて半導体基板同士の位置合わせが行われている。一方、異方導電性フィルムには導電粒子が単分散又は格子状に配置されているため異方導電性フィルムにアライメントマークはつけられていない。これに対し、本発明で使用する異方導電性フィルムは、接続すべき貫通電極の配置に対応して導電粒子11が絶縁接着剤層12に選択的に配置されたものであるから、導電粒子11の配置をアライメントマークの代替とすることができる。このような導電粒子の配置も含めて異方導電性フィルムには、何らかのアライメントマークを設けることが好ましい。
【0037】
<異方導電性フィルム>
本発明の多層基板の製造方法に使用する本発明の異方導電性フィルムは、接続すべき貫通電極の配置に対応して導電粒子11が絶縁接着剤層12に選択的に配置され、好ましくは導電粒子11によりアライメントマークが形成されたものである。アライメントマークとしては、導電粒子の配置により形成したものが好ましい。これにより、アライメントマークを明確に検出することができ、かつ異方導電性フィルムにアライメントマークをつけるための新たな工程の追加が不要となる。一方、アライメントマークは、レーザー照射などで絶縁接着剤層12を部分的に硬化させることにより形成してもよい。これによりアライメントマークを付する位置の変更が容易となる。
【0038】
このような異方導電性フィルムの製造方法としては、導電粒子11の配置に対応した凸部を有する金型を、金属プレートに機械加工、レーザー加工、フォトリソグラフィなどの公知の加工方法を行うことで作製し、その金型に硬化性樹脂を充填し、硬化させることにより凹凸が反転した樹脂型を製造し、その樹脂型の凹部に導電粒子を入れ、その上に絶縁接着剤層形成用組成物を充填し、硬化させ、型から取り出せばよい。
【0039】
また、絶縁接着剤層12に導電粒子11を特定の配置におくために、絶縁接着剤層形成組成物層の上に、貫通孔が所定の配置で形成されている部材を設け、その上から導電粒子11を供給し、貫通孔を通過させるなどの方法でもよい。
【0040】
<異方導電性フィルムを形成する導電粒子>
異方導電性フィルム10A、10Bを形成する導電粒子としては、公知の異方導電性フィルムに用いられているものの中から適宜選択することができる。例えば、ハンダ、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。金属被覆樹脂粒子の金属被覆は、無電解メッキ法、スパッタリング法等の公知の金属膜形成方法を利用して形成することができる。金属被覆は、コア樹脂材の表面に形成されていれば特に制限はない。コア樹脂材は、樹脂のみから形成してもよく、導通信頼性の向上のために導電微粒子を含有させたものとしてもよい。
【0041】
導電粒子としては、上述した粒子のうち、導通信頼性とコストの点でハンダ粒子を使用することが好ましい。一方、後工程でリフロー工程が不要の場合等においては、金属被覆樹脂粒子を使用することが好ましい。本発明では貫通電極同士の接続や半導体基板同士の接着を、絶縁性接着剤層に導電粒子が配置されている異方導電性フィルムの加熱加圧により行うため、導電粒子として金属被覆樹脂粒子を使用すると、加熱加圧を低温化することが可能になり、絶縁性接着剤の材料選択の幅が広がるためである。
【0042】
また、導電粒子としては、2種以上の粒子を併用することもできる。
【0043】
導電粒子11の粒子径は、電極間接合の安定性の点から、好ましくは2〜40μmである。
【0044】
<異方導電性フィルムを形成する絶縁接着剤層>
絶縁接着剤層12としては、公知の異方導電性フィルムで使用される絶縁性樹脂層を適宜採用することができる。例えば、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂層、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂層等を使用することができる。また、これらの樹脂層は、必要に応じて、それぞれ重合したものとすることができる。また、絶縁接着剤層12を、複数の樹脂層から形成してもよい。
【0045】
ただし、多層基板1Aからチップが切り出される等の用途により、多層基板1Aの製造後に多層基板1Aが切断される場合には、絶縁接着剤層12は切断に耐える柔軟性と接着性を有することが好ましい。
【0046】
また、絶縁接着剤層12には、必要に応じてシリカ微粒子、アルミナ、水酸化アルミ等の絶縁性フィラーを加えても良い。絶縁性フィラーの配合量は、絶縁接着剤層を形成する樹脂100質量部に対して3〜40質量部とすることが好ましい。これにより、異方導電性接続時に絶縁接着剤層12が溶融しても、溶融した樹脂で導電粒子11が不用に移動することを抑制することができる。
絶縁性フィラーの大きさは、異方導電性接続を阻害しない大きさであることが望ましい。
【0047】
こうして製造した異方導電性フィルム10A、10Bでは、所定の位置以外に存在する導電粒子はほとんど存在しない。しかし、所定の位置に存在しても対向する貫通電極4A、4Bに捕捉されない導電粒子は存在しえる。したがって、この異方導電性フィルム10A、10Bを半導体基板3A、3Bの接続に使用した後において、対向する半導体基板3A、3Bの間で、貫通電極4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11の数は、対向する半導体基板3A、3Bの間に存在する導電粒子11の総数の好ましくは5%以下となる。
【0048】
<変形態様1>
本発明の多層基板は種々の態様をとることができる。
例えば、
図4に示す多層基板1Cは、
図1に示した多層基板1Aにおいて、配線基板2の貫通電極4Xと第1半導体基板3Aの貫通電極4Aとを接続する異方導電性フィルムと、第1半導体基板3Aの貫通電極4Aと第2半導体基板3Bの貫通電極4Bとを接続する異方導電性フィルムと、第2半導体基板3Bの貫通電極4Bと第3半導体基板3Cの貫通電極4Cとを接続する異方導電性フィルムとして、共通する異方導電性フィルムを使用することにより製造したものである。即ち、異方導電性フィルムとして、製造しようとする多層基板1Cの平面視において、配線基板2又は各半導体基板3A、3B、3Cの貫通電極同士が対向する位置に対応して導電粒子11が絶縁接着剤層12に選択的に配置されたものが使用される。これにより、多層基板1Cの平面視において、貫通電極4X、4A、4B、4Cが対向する位置に導電粒子11、11xが存在することになる。言い換えると、対向する貫通電極の間には、必ずしも該貫通電極のみに対して選択的に配置された導電粒子が存在するわけではない。例えば、半導体基板3Aと半導体基板3Bとの間には、これらに形成されている貫通電極4A、4Bが対向する位置に導電粒子11が選択的に配置されている他、半導体基板3Aの貫通電極4Aと半導体基板の貫通電極4Bとの接続には寄与しない導電粒子11xも存在する。よって、半導体基板3Aと半導体基板3Bとの間に存在する全導電粒子に対し、半導体基板3Aと半導体基板3Bとの間で貫通電極に捕捉されない導電粒子が5%を超えて存在し得る。しかし、半導体基板3Aと半導体基板3Bの間にあってこれらの接続に寄与していない導電粒子11xは、配線基板2の貫通電極4Xと第1半導体基板3Aの貫通電極4Aとの接続に寄与している。また、多層基板1Cの平面視において、貫通電極同士が対向しない位置には、導電粒子は配置されていない、あるいは実質的に存在していない。即ち、
図4に示す多層基板1Cにおいて、多層基板のフィルム厚方向の任意の断面の各半導体基板間には、全ての貫通電極と垂直方向に重なる位置に導電粒子が存在している状態が好ましい。
【0049】
このように各半導体基板を、共通する異方導電性フィルムを用いて接続すると、多層基板の製造に要するトータルコストを削減することができる。また、多層基板のラインアップの増加(仕様変更)にも容易に対応することができる。
【0050】
以上のように、本発明の多層基板では、多層基板の平面視において、貫通電極が対向する位置に導電粒子が選択的に存在する。そして、そのように配置された導電粒子により、対向する貫通電極が接続され、該貫通電極が形成されている半導体基板同士が絶縁接着剤により接着している。この場合に、対向する貫通電極は、
図1に示したように、該対向する貫通電極の間のみに選択的に配置された導電粒子11により接続されていてもよく、また、
図4に示したように、対向する貫通電極が形成されている半導体基板間に、該対向する貫通電極の接続に寄与しない導電粒子11xが含まれていてもよい。
【0051】
<変形態様2>
図5Aに示す多層基板1Dは、
図1に示した多層基板1Aにおいて、対向する貫通電極4X、4A、4B、4Cが、それぞれ2個以上の導電粒子11により接続されているものである。
図5Bは、この接続に使用する異方導電性フィルム10Dにおける導電粒子11の配置を示す平面図である。
【0052】
この異方導電性フィルム10Dでは、絶縁接着剤層12に2個以上の導電粒子4が近接して配置された導電粒子ユニット11uが形成されている。各導電粒子ユニット11uは、好ましくは、この異方導電性フィルム1Dで接続する貫通電極の配置に対応して配置され、導電粒子ユニット11uを構成する複数個の導電粒子11によって、対向する貫通電極が、接続されるようにする。対向する貫通電極を、導電粒子ユニット11uを構成する複数の導電粒子11で接続することにより、一つずつの導電粒子で接続する場合に比して、接続後の導通抵抗をロバスト化させることができる。
【0053】
異方導電性フィルムにおいて、導電粒子ユニット11uを構成する導電粒子数は、2個以上であり、3個以上が導通安定性の観点からより好ましい。また、異方導電性接続時に、対向する貫通電極の電極面内だけでなく、電極の外周にも導電粒子を存在させることでフィルムの貼り合せズレの許容範囲を広くすることができる点から、導電粒子ユニット11uを構成する導電粒子数は30個以下が好ましく、20個以下がより好ましい。
【0054】
また、貫通電極の対向部分に複数個の導電粒子を捕捉させやすくする点から、導電粒子ユニット11uにおいて、導電粒子ユニット11u内の任意の導電粒子と、その導電粒子に最近接している導電粒子との距離Lは、導電粒子径の0.5倍未満が好ましく、隣接する導電粒子同士が接触していてもよい。一方、異方導電性接続時により潰れた導電粒子11同士が干渉し合って導電粒子の配置が所期の位置からずれることを防止する点からは、導電粒子ユニット11uにおいて隣接する導電粒子は、導電粒子径の0.2倍以上離れていることが好ましい。
【0055】
<変形態様3>
各半導体基板を、共通する異方導電性フィルムを用いて接続することにより多層基板の製造に要するトータルコストを削減する場合に、導電粒子ユニット11uが一面に配置されている異方導電性フィルムを使用して多層基板を製造してもよい。この場合、各導電粒子ユニット11uを構成する導電粒子数は3個以上、好ましくは12個以上、より好ましくは20個以上であり、各導電粒子ユニット内で導電粒子が一列ではなく、面状に配置されているものとする。導電粒子ユニット11u同士の間隔は、ショートの発生を回避するため、導電粒子径の1倍以上とし、半導体基板の電極間隔に応じて適宜定める。導電粒子ユニットの径もしくは最長辺の長さの、電極の径もしくは最長辺の長さに対する割合は、小さすぎると電極における導電粒子の捕捉性が劣り、大きすぎるとショートの発生が懸念されることから、下限が好ましくは0.3倍以上、より好ましくは0.5倍以上、さらに好ましくは0.7倍以上であり、上限が好ましくは3倍以下、より好ましくは2倍以下である。また、導電粒子ユニットの径もしくは最長辺の長さが、電極の径もしくは最長辺の長さの等倍未満であれば電極内に導電粒子ユニットが収まることになるため、導電粒子の挟待の状態は良好になり易く、等倍以上であれば導電粒子と電極の位置あわせにおけるマージンが広くなるので多層基板の製造時間の短縮を図ることができる。
【0056】
導電粒子ユニット11uが適当な間隔で一面に配置されている異方導電性フィルムを共通して用いることにより、接続する半導体基板ごとに導電粒子の配置が異なる異方導電性フィルムを使用する場合に比して、多層基板の製造コストを大きく低減させることができる。このような異方導電性フィルム、及びこれを用いた多層基板も本発明は包含する。
【0057】
本発明の多層基板は、高密度半導体パッケージ等を始めとして、高密度実装が要求される各種半導体の種々の用途に使用することができる。また、多層基板を所定のサイズにカットして使用してもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1〜3、比較例1
(1)半導体基板
多層基板を構成する半導体基板3として、外形が7mm□、厚み200μmの矩形で、
図6に示すように、クロム製電極パッドを有する貫通電極4がペリフェラル配置(φ30μm、85μmピッチ、280ピン)に形成されているものを用意した。半導体基板には、アライメントマークとして200μm□の四角形マークが形成されている。
【0059】
(2)異方導電性フィルムの製造
表1に示すように、所定の粒子径の導電粒子(微粉半田粉、三井金属鉱業(株))を、絶縁接着剤層にランダムに配置するか(比較例1、粒子密度17.1個/mm
2)、又は半導体基板の電極配置に対応させて配置した(実施例1〜3、85μmピッチ、280箇所)異方導電性フィルムを製造した。
【0060】
この場合、実施例1、2では、
図6に示すように、電極4の1カ所あたり1個の導電粒子11を配置し、実施例3では、
図7に示すように、電極4の1カ所あたり3個の導電粒子11を配置した。
【0061】
また、実施例1〜3では、アライメントマークを導電粒子の配列により形成した。この場合、導電粒子の配列の輪郭が半導体基板のアライメントマークの輪郭と略一致するようした。
【0062】
より具体的には、厚さ2mmのニッケルプレートを用意し、凸部(径25μm、高さ20μm)が上述の電極の配置となるようパターニングして転写原盤を作製し、転写原盤に、フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))60質量部、アクリレート樹脂(M208、東亞合成(株))29質量部、光重合開始剤(IRGACURE184、BASFジャパン(株))2質量部を含有する光重合性樹脂組成物を、乾燥厚みが30μmとなるように塗布し、80℃で5分間乾燥後、高圧水銀ランプにて1000mJ光照射することにより、凹部を有する転写型を作成した。
【0063】
一方、フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))60質量部、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))40質量部、及びカチオン系硬化剤(SI−60L、三新化学工業(株))2質量部から絶縁接着剤形成用組成物を調製し、それをフィルム厚50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に絶縁性樹脂からなる粘着層を5μmで形成した。
【0064】
前述の凹部を有する転写型に導電粒子を充填し、その上に上述の絶縁性樹脂の粘着層を被せ、紫外線を照射して絶縁性樹脂に含まれる硬化性樹脂を硬化させた。そして、型から絶縁性樹脂を剥離し、粘着層と同様に作製した絶縁性樹脂層(厚み15μm)を60℃、0.5MPaで積層し、各実施例の異方導電性フィルムを製造した。
【0065】
一方、導電粒子がランダムに分散している比較例1の異方導電性フィルムは、導電粒子と絶縁性樹脂を自転公転式混合装置((株)シンキー)で撹拌して導電粒子の分散物を得、その分散物の塗膜を20μmに形成することにより製造した。
【0066】
(3)多層基板の製造
(1)で用意した半導体基板を、(2)で製造した異方導電性フィルムを用いて表1に示した積層数で重ね合わせ、加熱加圧(180℃、40MPa、20秒)することにより多層基板を製造した。
【0067】
(4)評価
得られた多層基板について、(a)導通抵抗、(b)導通信頼性、(c)ショート発生
率、を次のように評価した。これらの結果を表1に示す。
【0068】
(a)導通抵抗
多層基板の表裏の電極間の導通抵抗を、デジタルマルチメータ(34401A、アジレント・テクノロジー(株))を使用し、4端子法にて、電流1mAを流して測定した。測定された抵抗値が5Ω以下をOKとし、5Ωを超えるものをNGとした。
【0069】
(b)導通信頼性
多層基板を温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、(a)と同様に測定し、その導通抵抗が10Ω以下をOKとし、10Ωを超えるものをNGとした。
【0070】
(c)ショート発生率
積層した半導体基板を一枚ずつ剥離し、隣り合う電極が導電粒子でショートしているか否かを観察し、ショートが無い場合をOK、1つでもあるとNGとした。
【0071】
【表1】
【0072】
表1から第1半導体基板と第2半導体基板を、導電粒子がランダムに分散した異方導電性フィルムを用いて接続した比較例1は導通抵抗や導通信頼性に劣るが、電極配置に対応させて導電粒子を選択的に配置した実施例1〜3では導通抵抗、導通信頼性、ショート発生率のいずれも良好であった。
【0073】
なお、実施例3では、貫通電極4内に3個の導電粒子11が配置されるようにしたため、異方導電性フィルムと半導体基板との位置合わせにマージンをとることができた。
【0074】
実施例4〜11
実施例4〜7では、実施例1において、導電粒子として表2に示す平均粒子径の金/ニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパール、積水化学工業(株))を使用し、電極あたりの導電粒子の個数と、電極に対する導電粒子の配置と、導電粒子間の最近接距離を表2に示すように変更し、導電粒子の配列によりアライメントマークを形成することなく導電粒子と電極とを直接位置合わせしてフィルムを貼り合わせた以外は、実施例1の操作を繰り返すことにより異方導電性フィルムを製造し、異方導電性フィルムを用いた多層基板を製造し、多層基板を評価した。その結果、実施例4〜7のいずれにおいても導通抵抗、導通信頼性、及びショート発生率が良好であった。なお、実施例5、7、9では、アライメントマークに対応する導電粒子の配列がなくても、電極の外周部にも導電粒子を存在させたため、フィルムの貼り合せ工程で位置ずれの許容範囲を広くすることができた。
【0075】
また、実施例8〜11では、半導体基板のペリフェラル配置の電極(85μmピッチ、280ピン)を構成する個々の電極4の外形をφ30μmの円形から30μm×50μmの矩形(電極の配列方向が30μm)に変更し、実施例4〜7と同様の操作を繰り返した。その結果、実施例8〜11のいずれにおいても導通抵抗、導通信頼性、及びショート発生率が良好であった。
【0076】
【表2】
【0077】
参考例1
実施例1において、導電粒子を平均粒子径10μmのニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパール、積水化学工業(株))とし、導電粒子の配置を、導電粒子間距離10μmの4方格子(導電粒子の個数密度:2500個/mm
2)とする以外は実施例1と同様の操作を繰り返すことにより異方導電性フィルムを製造し、異方導電性フィルムを用いた多層基板を製造し、多層基板を評価した。その結果、いずれの実施例も導通抵抗、導通信頼性、及びショート発生率が良好であった。
【0078】
参考例2
実施例1において、導電粒子を平均粒子径4μmのニッケル被覆樹脂粒子(ミクロパールAUL704、積水化学工業(株))とし、導電粒子の配置を、導電粒子間距離4μmの4方格子(導電粒子の個数密度:16000個/mm
2)とする以外は実施例1と同様の操作を繰り返すことにより異方導電性フィルムを製造し、異方導電性フィルムを用いた多層基板を製造し、多層基板を評価した。その結果、いずれの実施例も導通抵抗、導通信頼性、及びショート発生率が良好であった。