【解決手段】スルーホール4A、4B(即ち、内表面にメッキ膜4aが形成された貫通孔4h)を有する半導体基板3A、3Bが積層されている多層基板1Aであって、多層基板の平面視において、スルーホールが対向する位置に導電粒子が選択的に存在する。多層基板1Aにおいて、対向する第1半導体基板3Aのスルーホール4Aと第2半導体基板3Bのスルーホール4Bが導電粒子11により接続され、第1半導体基板3Aと第2半導体基板3Bが絶縁接着剤12により接着している。
スルーホールを有する第1半導体基板と、スルーホールを有する第2半導体基板とが積層されている多層基板であって、第1半導体基板のスルーホールと第2半導体基板のスルーホールが、それらの間に選択的に配置された導電粒子により接続されている請求項1記載の多層基板。
多層基板の最外層にヒートシンクを有し、ヒートシンクと、導電粒子で接続されることにより多層基板の積層方向に繋がったスルーホールとが接続している請求項1〜4のいずれかに記載の多層基板。
半導体基板に形成されたスルーホール同士を対向させて接合する多層基板の製造方法であって、スルーホールが対向する部分の多層基板の平面視における位置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置された異方導電性フィルムを、スルーホールを有する半導体基板同士の間に挟み、該異方導電性フィルムを加熱加圧することによりこれら半導体基板を異方導電性接続する多層基板の製造方法。
スルーホールを有する第1半導体基板と、スルーホールを有する第2半導体基板を、それらのスルーホール同士を対向させて接合する多層基板の製造方法であって、第1半導体基板と第2半導体基板との間に、スルーホールの配置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置された異方導電性フィルムを挟み、該異方導電性フィルムを加熱加圧することにより第1半導体基板と第2半導体基板を異方導電性接続する請求項6記載の多層基板の製造方法。
スルーホールを有する第3半導体基板を第2半導体基板に積層し、第1半導体基板のスルーホールと異方導電性接続した第2半導体基板のスルーホールと、第3半導体基板のスルーホールとの間に、スルーホールの配置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置された異方導電性フィルムを挟み、該異方導電性フィルムを加熱加圧することにより第2半導体基板と第3半導体基板を異方導電性接続する請求項7記載の多層基板の製造方法。
絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、異方導電性フィルムで接続するスルーホールの配置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置されている異方導電性フィルム。
絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、3個以上の導電粒子が近接した粒子群が形成されており、粒子群に、少なくとも大きさ又は種類が異なる複数の導電粒子が含まれている異方導電性フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、個々の半導体基板の貫通電極にバンプを形成し、対向する半導体基板の貫通電極をハンダのリフローにより接続し、半導体基板を積層していく方法は製造工程が煩雑である。
【0007】
対向する貫通電極を、異方導電性フィルムを使用して接続し、半導体基板を積層していく方法では、多層基板の製造工程をある程度簡略化することができるが、異方導電性フィルムが絶縁接着剤層に導電粒子をランダムに分散させたものであるため、対向する半導体基板の貫通電極間に異方導電性フィルムの導電粒子が十分に挟まれない場合があることにより導通特性がばらつくという問題がある。一方で、貫通電極の接続に寄与しない導電粒子が、対向する半導体基板間に多数存在することにより無用な導電粒子にコストがかかるという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、異方導電性フィルムを用いて半導体基板を積層し、導通特性に優れた多層基板を簡便な製造工程で低コストに提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、異方導電性フィルムを用いて半導体基板を積層し多層基板を製造するにあたり、貫通電極の形成の前段で形成するスルーホールに対して異方導電性フィルムの絶縁接着剤中の導電粒子を選択的に配置し、かかる異方導電性フィルムを用いて、対向する半導体基板のスルーホールを接続すると、対向するスルーホールを導電粒子で確実に接続することができ、また、接続に寄与しない導電粒子数を低減させ、多層基板の製造工程も顕著に簡略化し、多層基板の製造コストを下げられることを見出し、本発明を想到した。
【0010】
即ち、本発明は、スルーホールを有する半導体基板が積層されている多層基板であって、多層基板の平面視において、スルーホールが対向する位置に導電粒子が選択的に存在し、
対向するスルーホールが導電粒子により接続され、該スルーホールが形成されている半導体基板同士が絶縁接着剤により接着している接続構造を有する多層基板を提供する。
【0011】
特に、この多層基板として、スルーホールを有する第1半導体基板と、スルーホールを有する第2半導体基板とが積層されている多層基板であって、
第1半導体基板のスルーホールと第2半導体基板のスルーホールが対向し、それらの間に選択的に配置された導電粒子により接続され、
第1半導体基板と第2半導体基板が絶縁接着剤により接着している接続構造を有する多層基板を提供する。
【0012】
また、本発明は、半導体基板に形成されたスルーホール同士を対向させて接合する多層基板の製造方法であって、スルーホールが対向する部分の多層基板の平面視における位置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置された異方導電性フィルムを、スルーホールを有する半導体基板同士の間に挟み、該異方導電性フィルムを加熱加圧することによりこれら半導体基板を異方導電性接続する多層基板の製造方法を提供する。
【0013】
特に、この多層基板の製造方法として、スルーホールを有する第1半導体基板と、スルーホールを有する第2半導体基板を、それらのスルーホール同士を対向させて接合する多層基板の製造方法であって、第1半導体基板と第2半導体基板との間に、スルーホールの配置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置された異方導電性フィルムを挟み、該異方導電性フィルムを加熱加圧することにより第1半導体基板と第2半導体基板を異方導電性接続する多層基板の製造方法を提供する。
【0014】
さらに、本発明は上述の多層基板の製造方法に使用する異方導電性フィルムとして、異方導電性フィルムで接続するスルーホールの配置に対応して導電粒子が絶縁接着剤層に選択的に配置されている異方導電性フィルムを提供する。
【0015】
また、上述の多層基板の製造方法に有用な異方導電性フィルムとして、絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に配置された導電粒子を含む異方導電性フィルムであって、2個以上の導電粒子が近接している導電粒子ユニットが形成されており、導電粒子ユニットに、少なくとも大きさ又は種類が異なる複数の導電粒子が含まれている異方導電性フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の多層基板によれば、半導体基板のスルーホール同士が導電粒子により確実に接続されているので導通特性が安定する。
【0017】
また、半導体基板に、スルーホール内に金属を充填して貫通電極を形成することなく、スルーホール同士を導電粒子で接続し、かつ、接続に寄与しない導電粒子が半導体基板間で低減しているので多層基板の製造コストが顕著に抑制される。また、同様の理由で、計装工数の削減にも効果がある。
【0018】
さらに、本発明の多層基板は、特定の異方導電性フィルムの使用により簡便な工程で製造することができる。
【0019】
特に半導体基板が3つ以上積層されている多層基板の場合に、積層する半導体基板間に、共通する異方導電性フィルムを使用すると、多層基板のトータルの製造コストを大きく削減することができる。したがって、本発明の多層基板をより一層低価格で提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0022】
<多層基板における接続構造>
図1は、本発明の一実施態様の多層基板1Aの断面図である。
この多層基板1Aは、配線基板2に3層の半導体基板3A、3B、3Cが積層されたものであり、各半導体基板3A、3B、3Cは、IC等の半導体部品が形成された半導体ウエハである。また、配線基板2にはスルーホール4Xが形成され、各半導体基板3A、3B、3Cにはスルーホール4A、4B、4Cが形成され、配線基板2の表面でスルーホール4Xが露出する部分や、スルーホール4A、4B、4Cが半導体基板の表面に露出する部分には、それぞれ電極パッド9が形成されている。なお、本発明において半導体基板3A、3B、3Cとしては、半導体チップを使用してもよい。また、本発明において、多層基板を構成する半導体基板の積層数に特に制限はない。
【0023】
多層基板1Aには、第1半導体基板3Aのスルーホール4Aと第2半導体基板3Bのスルーホール4Bが対向し、それらの間に選択的に配置された導電粒子11により電気的に接続されている接続構造がある。この接続構造において、スルーホール4A、4Bの対向する間に導電粒子11が選択的に配置されたとは、導電粒子11が平面視にてもっぱらスルーホール4A、4Bの対向面又はその近傍に存在し、スルーホール4A、4Bに1個以上の導電粒子11が捕捉されるように配置されていることをいう。1〜十数個捕捉されるように配置されていることが、コストと性能の両立の上では好ましい。フィルム厚方向には複数の導電粒子が重畳していてもよい。また、スルーホール4A、4Bの対向面に複数の導電粒子11が存在する場合に、その導電粒子の大きさ、種類等が異なっていてもよい。なお、スルーホール4A、4Bの対向面に複数の導電粒子11を配置する場合に、半導体基板3A、3Bと導電粒子11との位置合わせの精度を緩和することができる。
【0024】
第1半導体基板3Aと第2半導体基板3Bの対向面同士は絶縁接着剤12により接着されている。絶縁接着剤12は、後述する異方導電性フィルムの絶縁接着剤層から形成される。
【0025】
また、第1半導体基板3Aのスルーホール4Aと接続した第2半導体基板3Bのスルーホール4Bは、第3半導体基板3C側において、第3半導体基板3Cのスルーホール4Cとも対向しており、それらの間に選択的に配置された導電粒子11により第2半導体基板3Bのスルーホール4Bと第3半導体基板3Cのスルーホール4Cとが電気的に接続されている。この第2半導体基板3Bと第3半導体基板3Cの対向面同士も絶縁接着剤12により接着されている。また、配線基板2のスルーホール4Xと第1半導体基板3Aのスルーホール4Aも導電粒子11により同様に接続されている。このように、多層基板1Aは、配線基板2のスルーホール4Xと、3層の半導体基板のスルーホール4A、4B、4Cが多層基板の積層方向に直線状に繋がった接続構造を有する。この各層のスルーホールが直線状に繋がった接続構造によれば電気伝送の経路が短くなるので、伝送速度を向上させることができる。
【0026】
なお、多層基板1Aは、後述するように多層基板を構成する各層を、導電粒子が特定の配置を有する本発明の異方導電性フィルムを用いて接続することにより製造される。その場合、第1半導体基板3Aと第2半導体基板3Bの間には、対向するスルーホール4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11が存在するとしても、そのような導電粒子11の数は、第1半導体基板と第2半導体基板の間に存在する導電粒子の総数の好ましくは5%以下、より好ましくは0.5%以下、特に導電粒子11の略すべてがスルーホール4A、4Bで捕捉されているようにする。多層基板1Aを構成するその他の半導体基板間においても同様である。このようにスルーホール4A、4B、4Cの接続に寄与しない導電粒子11を低減させることにより、性能をシミュレーション解析しやすくなり、改善工数を削減することができる。
【0027】
<配線基板>
ここで、多層基板1Aを構成する配線基板2としては、FR4等のガラスエポキシ基板等を使用することができる。配線基板2として、ICチップもしくはIC形成用のシリコンウェーハーを用いてもよい。配線基板2は、多層基板1Aの用途等に応じて適宜選択される。
【0028】
また、配線基板2の電極部分には、必要に応じてハンダボール8を設けてもよい。
【0029】
<半導体基板>
半導体基板3A、3B、3Cとしては、スルーホール4A、4B、4Cを有するものであれば特に制限は無く、例えば、シリコン等一般的半導体材料等を使用することができる。
【0030】
スルーホール4A、4B、4Cの仕様は適宜設定できる。例えば、スルーホール4A、4B、4Cは、電極パッド9を備えていることが好ましい。また、半導体基板3A、3B、3Cを積層した場合に、各半導体基板3A、3B、3Cのスルーホール4A、4B、4Cが多層基板1Aの厚み方向に少なくとも2層の半導体基板にわたって直線状に繋がるように、好ましくは多層基板1Aの表裏に渡って直線状に繋がるように、スルーホール4A、4B、4Cが配置されるものが好ましい。
【0031】
<搭載部品>
本発明の多層基板には、必要に応じて種々の部品を搭載することができる。
例えば
図2に示す多層基板1Bは、各層のスルーホール4X、4A、4B、4Cが直線状に繋がった接続構造を有し、最外層にはスルーホール4Cに接続した放熱用のヒートシンク7を有する。したがって、多層基板1Bは、配線基板2や半導体基板3A、3B、3Cに形成されたIC等の電子部品等から放出される熱をヒートシンク7により効率的に放熱することが可能となる。
【0032】
<多層基板の製造方法>
本発明の多層基板の製造方法としては、例えば、
図2の多層基板1Bの場合、まず、
図3Aに示すように、スルーホール4Xを有する配線基板2とスルーホール4Aを有する半導体基板3Aとの間に、接続すべきスルーホール4X、4Aの配置に対応して導電粒子11が絶縁接着剤層12に選択的に配置された本発明の異方導電性フィルム10Aを挟み、異方導電性フィルム10Aを加熱加圧することにより配線基板2と第1半導体基板3Aを異方導電性接続し、
図3Bに示す2層の接続構造体を得る。より具体的には、配線基板2と異方導電性フィルム10Aを、接続すべきスルーホール4Xと導電粒子11の配置が合うように位置合わせして重ね、さらに第1半導体基板3Aも同様に位置合わせして重ね合わせ、加熱加圧してこれらを異方導電性接続する。この位置合わせは、異方性導電フィルムのスルーホールに対応する導電粒子(後述するように粒子群が形成されている場合には、その粒子群を構成する導電粒子)と、スルーホールとをCCDなどを用いて観測し、それらを重ね合わせることにより行ってもよい。
【0033】
同様にして、
図3Cに示すように、第1半導体基板3Aと異方導電性フィルム10Bを位置合わせして重ね、その上に第2半導体基板3Bを位置合わせして重ね、加熱加圧して異方導電性接続し、
図3Dに示す3層の接続構造を得る。さらに同様にして第2半導体基板3Bの上に異方導電性フィルムと第3半導体基板3Cを位置合わせして重ね、加熱加圧する。
【0034】
なお、異方導電性フィルムを用いて配線基板と半導体基板を接続する場合、あるいは、半導体基板同士を接続する場合に、まず、一方の基板と異方導電性フィルムを位置合わせして重ね、加熱加圧して異方導電性フィルムの導電粒子をその基板のスルーホールと接合することにより導電粒子をスルーホール内に進入させ、次に対向する基板を重ね合わせ、その基板を、先の基板のスルーホール及び導電粒子と接合することができる。
【0035】
その後、第3半導体基板3C上にヒートシンク7を熱伝導性テープ等により接続し、配線基板2の電極パッド9にハンダボール8を形成し、常法により多層基板1Bを得る。あるいは、ハンダボール8に代えて導電粒子を設けてもよい。
【0036】
なお、配線基板2又は半導体基板3A、3B、3Cと異方導電性フィルム10A、10Bとの位置合わせの方法としては、配線基板2、半導体基板3A、3B、3C及び異方導電性フィルム10A、10Bに、それぞれアライメントマークをつけておき、それらのアライメントマークを合わせることにより位置合わせを行うこともできる。
【0037】
即ち、従来、半導体基板を積層して多層基板を製造する場合、半導体基板には一例として数十μm〜数百μmの大きさのアライメントマークが形成され、CCD又はレーザーを用いて半導体基板同士の位置合わせが行われている。一方、異方導電性フィルムには導電粒子が単分散又は格子状に配置されているため異方導電性フィルムにアライメントマークはつけられていない。これに対し、本発明で使用する異方導電性フィルムは、接続すべきスルーホールの配置に対応して導電粒子11が絶縁接着剤層12に選択的に配置されたものであるから、導電粒子11の配置をアライメントマークの代替とすることができる。このような導電粒子の配置も含めて異方導電性フィルムには、何らかのアライメントマークを設けることが好ましい。
【0038】
<異方導電性フィルム>
本発明の多層基板の製造方法に使用する本発明の異方導電性フィルムは、接続すべきスルーホールの配置に対応して導電粒子11が絶縁接着剤層12に選択的に配置され、好ましくはアライメントマークが形成されたものである。アライメントマークとしては、導電粒子の配置により形成したものが好ましい。これにより、アライメントマークを明確に検出することができ、かつ異方導電性フィルムにアライメントマークをつけるための新たな工程の追加が不要となる。一方、アライメントマークは、レーザー照射などで絶縁接着剤層12を部分的に硬化させることにより形成してもよい。これによりアライメントマークを付する位置の変更が容易となる。
【0039】
このような異方導電性フィルムの製造方法としては、導電粒子11の配置に対応した凸部を有する金型を、金属プレートに機械加工、レーザー加工、フォトリソグラフィなどの公知の加工方法を行うことで作製し、その金型に硬化性樹脂を充填し、硬化させることにより凹凸が反転した樹脂型を製造し、その樹脂型の凹部に導電粒子を入れ、その上に絶縁接着剤層形成用組成物を充填し、硬化させ、型から取り出せばよい。
【0040】
また、絶縁接着剤層12に導電粒子11を特定の配置におくために、絶縁接着剤層形成組成物層の上に、貫通孔が所定の配置で形成されている部材を設け、その上から導電粒子11を供給し、貫通孔を通過させるなどの方法でもよい。
【0041】
<異方導電性フィルムを形成する導電粒子>
異方導電性フィルム10に使用する導電粒子11としては、公知の異方導電性フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。例えば、ハンダ、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。金属被覆樹脂粒子の金属被覆は、無電解メッキ法、スパッタリング法等の公知の金属膜形成方法を利用して形成することができる。金属被覆は、コア樹脂材の表面に形成されていれば特に制限はない。コア樹脂材は、樹脂のみから形成してもよく、導通信頼性の向上のために導電微粒子を含有させたものとしてもよい。
【0042】
導電粒子としては、上述した粒子のうち、導通信頼性とコストの点でハンダ粒子を使用することが好ましい。一方、後工程でリフロー工程が不要の場合等においては、金属被覆樹脂粒子を使用することが好ましい。本発明ではスルーホール同士の接続や半導体基板同士の接着を、絶縁性接着剤層に導電粒子が配置されている異方導電性フィルムの加熱加圧により行うため、導電粒子として金属被覆樹脂粒子を使用すると、加熱加圧を低温化することが可能になり、絶縁性接着剤の材料選択の幅が広がるためである。
【0043】
また、導電粒子としては、大きさ、種類等が異なる2種以上の粒子を併用することもできる。
【0044】
<異方導電性フィルムにおける導電粒子の配置>
異方導電性フィルムにおいて、導電粒子11の配置、粒子径及び種類は、スルーホール同士の接合の安定性の点からスルーホールの開口径等に応じて適宜選択される。
【0045】
例えば、
図3C、
図3Dに示したように、スルーホール4A、4Bの対向部位に1個の導電粒子11を配置する場合、導電粒子11の粒子径は、通常、スルーホール4A、4Xの開口径よりも大きくすることが好ましい。導電粒子11がハンダ粒子から形成されている場合には、
図4A、
図4Bに示すように、異方導電性接続時の加熱加圧により溶融したハンダ粒子でスルーホールのメッキ膜4aが濡れやすいが、この場合も導電粒子11の粒子径をスルーホール4A、4Bの開口径以上にすることが好ましい。これにより、スルーホール4A、4Bで導電粒子11が押圧され、スルーホール4A、4Bを導電粒子11で確実に接続することができる。
【0046】
また、導電粒子の粒子径がスルーホールの開口径よりも小さい場合には、
図5Aに示す異方導電性フィルム10のように、複数の導電粒子11を隣接させた粒子群11aの径をスルーホール4A、4Bの開口径よりも大きくし、
図5Bに示すように、対向するスルーホール4A、4Bが導電粒子11で確実に接続されるようにすることが好ましい。複数の導電粒子からなる粒子群11aで、スルーホール4A、4Bを接続することにより、一つずつの導電粒子で接続する場合に比して、接続後の導通抵抗をロバスト化させることもできる。
【0047】
図6Aに示す異方導電性フィルム10のように、複数の導電粒子11からなる粒子群11aが、異方導電性フィルム10の厚み方向に重畳するように配置してもよい。これにより、
図6Bに示すように、スルーホール4A、4Bのより深い位置まで導電粒子11を進入させることができる。
【0048】
スルーホールに対応させて複数の導電粒子11を隣接させた粒子群を形成する場合に、複数個の導電粒子は、大きさや種類が異なっていても良い。例えば、
図7Aに示す異方導電性フィルム10のように、大径の導電粒子11pをスルーホール4A、4Bに対向させ、小径の導電粒子11qを大径の導電粒子11pの周りで電極パッドに捕捉される位置に配置する。この場合に、大径の導電粒子11pは小径の導電粒子11qよりも変形しやすいものが好ましい。この異方導電性フィルム10を介して半導体基板3A、3Bを加熱加圧することにより、
図7Bに示す接続構造のように、大径の導電粒子11pをスルーホール4A、4B間に挟持させ、小径の導電粒子11qでスルーホール4A、4Bと大径の導電粒子11pとの間隙を埋めることができ、スルーホール4A、4Bと導電粒子との導通性を向上させることができる。また、粒子群11aにおいて、導電粒子同士を接触させておくことにより、スルーホール4A、4Bと導電粒子とが接触し易くなる。
【0049】
図7Bの接続構造を得るために、
図8に示すように、予め大径の導電粒子11pを有する異方導電性フィルム10pを一方の半導体基板3Aと仮接着し、小径の導電粒子11qを有する異方導電性フィルム10qを他方の半導体基板3Bと仮接着し、その後半導体基板3A、3Bを加熱加圧してもよい。
【0050】
また、
図7Aに示したように、異方導電性フィルムにおいて、導電粒子は絶縁接着剤層12から露出していてもよく、特に、スルーホール4A、4Bに挟持させる大径の導電粒子11pは露出させることが好ましい。導電粒子を絶縁接着剤層から露出させることにより、導電粒子とスルーホールとのアライメントが容易となり、また、導電粒子とスルーホールとの間に絶縁接着剤層12が介在しないことにより、導電粒子とスルーホールとの導通性が向上する。
【0051】
なお、異方導電性フィルムの導電粒子の露出面は、セパレータフィルムでカバーするなどにより保護しておき、異方導電性フィルムの使用時に導電粒子を露出させるようにしてもよい。
【0052】
<絶縁接着剤層>
異方導電性フィルムを形成する絶縁接着剤層12としては、公知の異方導電性フィルムで使用される絶縁性樹脂層を適宜採用することができる。例えば、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂層、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂層等を使用することができる。また、これらの樹脂層は、必要に応じて、それぞれ重合したものとすることができる。また、絶縁接着剤層12を、複数の樹脂層から形成してもよい。
【0053】
ただし、多層基板1Aからチップが切り出される等の用途により、多層基板1Aの製造後に多層基板1Aが切断される場合には、絶縁接着剤層12は切断に耐える柔軟性と接着性を有することが好ましい。
【0054】
また、絶縁接着剤層12には、必要に応じてシリカ微粒子、アルミナ、水酸化アルミ等の絶縁性フィラーを加えても良い。絶縁性フィラーの配合量は、絶縁接着剤層を形成する樹脂100質量部に対して3〜40質量部とすることが好ましい。これにより、異方導電性接続時に絶縁接着剤層12が溶融しても、溶融した樹脂で導電粒子11が不用に移動することを抑制することができる。
【0055】
また、絶縁接着剤層12には、必要に応じてスルーホールへの充填可能な粒子径の絶縁性スペーサーを加えても良い。これにより、異方導電性接続時の押込の均一性が確保しやすくなる。
【0056】
異方導電性接続の前に、導電粒子近傍の絶縁接着剤層の樹脂の一部を予め重合させてもよい。これにより、スルーホールと導電粒子とのアライメントが容易となり、ショートの発生リスクを低減させることができる。
【0057】
<変形態様>
上述した異方導電性フィルム10では、所定の位置以外に存在する導電粒子はほとんど存在しない。一方、所定の位置に存在しても対向するスルーホール4A、4Bに捕捉されない導電粒子は存在しえる。したがって、この異方導電性フィルム10を半導体基板3A、3Bの接続に使用した後において、対向する半導体基板3A、3Bの間で、スルーホール4A、4Bに捕捉されていない導電粒子11の数は、対向する半導体基板3A、3Bの間に存在する導電粒子11の総数の好ましくは5%以下となる。
【0058】
一方、
図9に示す多層基板1Cは、
図1に示した多層基板1Aにおいて、配線基板2のスルーホール4Xと第1半導体基板3Aのスルーホール4Aとを接続する異方導電性フィルムと、第1半導体基板3Aのスルーホール4Aと第2半導体基板3Bのスルーホール4Bとを接続する異方導電性フィルムと、第2半導体基板3Bのスルーホール4Bと第3半導体基板3Cのスルーホール4Cとを接続する異方導電性フィルムとして、共通する異方導電性フィルムを使用することにより製造したものである。即ち、異方導電性フィルムとして、製造しようとする多層基板1Cの平面視において、配線基板2又は各半導体基板3A、3B、3Cのスルーホール同士が対向する部分に対応して導電粒子11が絶縁接着剤層12に選択的に配置されたものが使用される。これにより、多層基板1Cの平面視において、スルーホール4X、4A、4B、4Cが対向する部分に導電粒子11、11xが存在することになる。言い換えると、対向するスルーホールの間には、必ずしも該スルーホールのみに対して選択的に配置された導電粒子が存在するわけではない。例えば、半導体基板3Aと半導体基板3Bとの間には、これらに形成されているスルーホール4A、4Bが対向する位置に導電粒子11が選択的に配置されている他、半導体基板3Aのスルーホール4Aと半導体基板のスルーホール4Bとの接続には寄与しない導電粒子11xも存在する。よって、半導体基板3Aと半導体基板3Bとの間に存在する全導電粒子に対し、半導体基板3Aと半導体基板3Bとの間でスルーホールに捕捉されない導電粒子が5%を超えて存在し得る。しかし、半導体基板3Aと半導体基板3Bの間にあってこれらの接続に寄与していない導電粒子11xは、配線基板2のスルーホール4Xと第1半導体基板3Aのスルーホール4Aとの接続に寄与している。また、多層基板1Cの平面視において、スルーホール同士が対向しない位置には、導電粒子は配置されていない、あるいは実質的に存在していない。
【0059】
このように各半導体基板を、共通する異方導電性フィルムを用いて接続すると、多層基板の製造に要するトータルコストを削減することができる。また、多層基板のラインアップの増加(仕様変更)にも容易に対応することができる。なお、この異方導電性フィルムにおいても、導電粒子を、複数の導電粒子が近接した粒子群として配置することができる。
【0060】
また、各半導体基板を、共通する異方導電性フィルムを用いて接続することにより多層基板の製造に要するトータルコストを削減する場合に、粒子群11aが一面に配置されている異方導電性フィルムを使用して多層基板を製造してもよい。この場合、各粒子群11aを構成する導電粒子数は3個以上、好ましくは10個以上、より好ましくは12個以上とする。粒子群11a同士の間隔は、ショートの発生を回避するため、導電粒子径の1倍以上とし、半導体基板のスルーホール間隔に応じて適宜定める。接続する半導体基板ごとに、導電粒子の配置が異なる異方導電性フィルムを使用する場合に比して、粒子群11aが適当な間隔で一面に配置されている異方導電性フィルムを共通して用いることにより、多層基板の製造コストを大きく低減させることができる。
【0061】
各半導体基板に共通して使用する異方導電性フィルムにおいて、粒子群を構成する複数の導電粒子の配置、粒子径及び種類は、前述のようにスルーホール同士の接合の安定性の点から適宜選択され、一つの粒子群に、少なくとも大きさ又は種類が異なる複数の導電粒子が含まれていてもよく、一つの粒子群で複数の導電粒子が異方導電性フィルムのフィルム厚方向に重畳していてもよく、一つの粒子群で複数の導電粒子が異方導電性フィルムの面方向に配置されていてもよく、粒子群に含まれる導電粒子の少なくとも一部が絶縁接着剤層から露出していてもよい。
【0062】
以上のように、本発明の多層基板では、多層基板の平面視において、スルーホールが対向する位置に導電粒子が選択的に存在する。そして、そのように配置された導電粒子により、対向するスルーホールが接続され、該スルーホールが形成されている半導体基板同士が絶縁接着剤により接着している。この場合に、対向するスルーホールは、該対向するスルーホールの間のみに選択的に配置された導電粒子11により接続されていてもよく、また、対向するスルーホールが形成されている半導体基板3A、3B、3C間に、該対向するスルーホールの接続に寄与しない導電粒子11xが含まれていてもよい。
【0063】
本発明の多層基板は、高密度半導体パッケージ等を初めとして、高密実装が要求される各種半導体等の種々の用途に使用することができる。また、多層基板を所定のサイズにカットして使用してもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1〜6、比較例1
(1)半導体基板
多層基板を構成する半導体基板3として、外形が7mm□、厚み100μmの矩形で、
図7に示すように、クロム製電極パッドを有するスルーホール4がペリフェラル配置(φ30μm、85μmピッチ、280ピン)に形成されているものを用意した。
半導体基板には、アライメントマークとして200μm□の四角形マークが形成されている。
【0065】
(2)異方導電性フィルムの製造
表1に示すように、表1に示す粒子径の導電粒子(微粉半田粉、三井金属鉱業(株))を、絶縁接着剤層にランダムに分散させるか(比較例1、粒子密度60個/mm
2)、又は半導体基板のスルーホール4の配置に対応させて配置した(実施例1〜6、85μmピッチ、280箇所)異方導電性フィルムを製造した。
【0066】
この場合、実施例1、2、3では、
図10に示すようにスルーホール4の端部電極1箇所あたり1個の導電粒子11を配置し、実施例4では、
図11に示すように絶縁接着剤層12を2層とし、各接着剤層12に導電粒子11を配置することにより、スルーホール4の端部電極の1箇所あたり2個の導電粒子をフィルム厚方向に並べて配置し、実施例5では、スルーホール4の端部電極の1箇所あたり2個の導電粒子11を
図12に示すようにフィルム面方向に並べて配置し、実施例6では、スルーホール4の端部電極の1箇所あたり9個の導電粒子を
図13に示すようにフィルム面方向に並べて配置した。
また、実施例1〜6では、アライメントマークを導電粒子により形成した。この場合、導電粒子の配列の輪郭が半導体基板3のアライメントマークの輪郭と略一致するようにした。
【0067】
より具体的には、厚さ2mmのニッケルプレートを用意し、凸部(径30〜45μm、高さ25μm〜40μm。例えば、実施例1では径45μm、高さ40μm)が上述の導電粒子の配置となるようにパターニングして転写原盤を作製した。また、フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))50質量部、マイクロカプセル化イミダゾール化合物潜在性硬化剤(ノバキュアHX3941HP、旭化成イーマテリアルズ(株))30質量部、及びヒュームドシリカ(アエロジルRY200、日本アエロジル(株))20質量部を混合したバインダーを、乾燥厚みが50μmとなるようにPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布し、このバインダーを上述の転写原盤に向けて重ね合わせ、80℃で5分間乾燥後、高圧水銀ランプにて1000mJ光照射することにより凹部を有する転写型を作成した。
【0068】
一方、フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))60質量部、エポキシ樹脂(jER828、三菱化学(株))40質量部、カチオン系硬化剤(SI−60L、三新化学工業(株))2質量部から絶縁接着剤形成用組成物を調製し、それをフィルム厚50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に絶縁性樹脂からなる粘着層を30μmで形成した。
【0069】
前述の凹部を有する転写型に導電粒子を充填し、その上に上述の絶縁性樹脂の粘着層を被せ、紫外線を照射して絶縁性樹脂に含まれる硬化性樹脂を硬化させた。そして、型から絶縁性樹脂を剥離し、導電粒子の端部と界面を揃えるように押し込むことで、実施例1〜3の異方性導電フィルムを製造した。実施例4では粘着層の厚みを25μmに変更し、同様に型から剥離し、剥離したもの同士を60℃、0.5MPaで積層することで絶縁接着剤層が2層の異方性導電フィルムを製造した。実施例5、6では粘着層の厚みを15μmに変更し、同様に型から剥離し、その上に粘着層と同様に作製した絶縁性樹脂層(厚み15μm)を60℃、0.5MPaで粘着層の導電粒子側に積層することで異方導電性フィルムを製造した。
【0070】
一方、導電粒子がランダムに分散している比較例1の異方導電性フィルムは、導電粒子と絶縁性樹脂を自転公転式混合装置((株)シンキー)で撹拌して導電粒子の分散物を得、その分散物の塗膜を30μmで形成することにより製造した。
【0071】
(3)多層基板の製造
(1)で用意した半導体基板を、(2)で製造した異方導電性フィルムを用いて表1に示した積層数で重ね合わせて押圧し、さらに加熱加圧(180℃、40MPa、20秒)することにより多層基板を製造した。
【0072】
(4)評価
得られた多層基板について、(a)充填の評価、(b)溶融の評価、を次のように行った。これらの結果を表1に示す。
【0073】
(a)充填の評価
半導体基板を重ね合わせ、押圧した状態で、対向するスルーホールの間に導電粒子が存在する場合をOK、存在しない場合をNGとした。
【0074】
(b)溶融の評価
多層基板の厚さ方向の断面を観察し、対向するスルーホールが導電粒子で接続され、さらにスルーホールの内壁に沿って導電粒子の溶融物が進入している場合をA、対向するスルーホールが導電粒子で接続されているが、スルーホールの内壁にそって導電粒子の溶融物が進入していない場合をBとした。
【0075】
【表1】
【0076】
比較例1の多層基板には、充填が不良になるスルーホールが多数発生したのに対し、実施例1〜6の多層基板は、いずれも充填が良好であり、導電粒子によりスルーホール同士を接続できることが確認できた。特に、実施例6では、スルーホールと導電粒子の配置の位置ズレの許容幅が大きかった。